(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイヤフラムが前記第1の弁リフト領域にある状態では前記突出部が前記連通孔に進入し、前記ダイヤフラムが前記第2の弁リフト領域にある状態では前記突出部が前記連通孔より抜け出す請求項1に記載のチェック弁。
前記弁体が前記最大弁リフト位置に位置している状態では前記弁体の前記2次室側が前記弁ハウジングに当接することにより、当該弁体の前記2次室側の受圧面積を前記1次室側の受圧面積より小さい面積に減少する請求項1から3の何れか一項に記載のチェック弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車のウィンドシールドガラス用のウォッシャノズル等、ノズルより流体を噴出する流体回路に使用されるチェック弁は、ノズルよりの流体の噴出が勢いよく開始されるように、瞬時に大きい通路断面積をもって開弁する開弁特性を有していることを要求されることがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、チェック弁において、開弁が瞬時に大きい通路断面積をもって行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるチェック弁は、弁室(16、56)を画定し、前記弁室(16、56)に開口した入口ポート(20、60)及び出口ポート(22、62)とを有する弁ハウジング(10、50)と、前記入口ポート(20、60)の前記弁室(16、56)に対する開口端周りに形成された弁座部(24、64)と、前記弁室(16、56)内にあって前記入口ポート(20、60)を含む1次室(28、70)と前記出口ポート(22、62)を含む2次室(30、72)とに区分して前記1次室(28、70)側と前記2次室(30、72)側とに各々受圧面(A、B)を有し且つ前記弁座部(24、64)に着座した着座位置と前記弁座部(24、64)より離間した離間位置との間を移動可能であり、前記着座位置側に付勢された常閉型の弁体(26、66)とを有し、前記弁ハウジング(10、50)と前記弁体(26、66)は、当該両者間に、前記弁体(26、66)が前記着座位置より前記離間位置側に移動した第1の弁リフト領域にある状態では、前記1次室(28、70)と前記2次室(30、72)との連通を遮断あるいは比較的小さい第1の通路断面積をもって確立し、前記弁体(26、66)が前記第1の弁リフト領域より更に前記離間位置側に移動した最大弁リフト位置を含む第2の弁リフト領域にある状態では、前記1次室(28、70)と前記2次室(30、72)との連通を前記第1の通路断面積より大きい第2の通路断面積をもって確立する連通路(36、38、74)を構成する。
【0008】
この構成によれば、弁体(26、66)が弁座部(24、64)より離間し、弁体(26、66)が第1の弁リフト領域にある状態では、1次室(28、70)と2次室(30、72)との連通が遮断あるいは比較的小さい第1の通路断面積をもって行われるだけであるので、弁体(26、66)の1次室(28、70)側の受圧面Aの全体に入口ポート(20、60)の圧力が有効に作用し、弁体(26、66)が第2の弁リフト領域を急速に通過して最大弁リフト位置に位置する。これにより、開弁が瞬時に大きい通路断面積をもって行われる。
【0009】
本発明によるチェック弁は、好ましい一つの実施形態として、前記弁体は外周縁部(26A)を前記弁ハウジング(10)に固定された可撓性を有するダイヤフラム(26)によって構成され、前記連通路は、前記ダイヤフラム(26)に当該ダイヤフラム(26)を膜厚方向に貫通するよう形成された連通孔(36)と、前記弁ハウジング(10)に形成されて前記連通孔(36)に進入可能な突出部(38)とにより構成され、前記ダイヤフラム(26)の弁リフト位置に応じて前記連通孔(36)に対する前記突出部(38)の相対位置が変化し、通路断面積が変化する。また、前記ダイヤフラム(26)が前記第1の弁リフト領域にある状態では前記突出部(38)が前記連通孔(36)に進入し、前記ダイヤフラム(26)が前記第2の弁リフト領域にある状態では前記突出部(38)が前記連通孔(36)より抜け出す。
【0010】
この構成によれば、弁リフト量に応じて開閉あるいは通路断面積が増減するような1次室(28)と2次室(30)との連通路が、ダイヤフラム(26)に形成された連通孔(36)と弁ハウジング(10)に形成された突出部(38)とによって、部品点数の増加を招くことなく簡単に構成することができる。
【0011】
本発明によるチェック弁は、好ましいもう一つの実施形態として、前記弁体は、前記弁室(56)内に弁リフト方向に移動可能に設けられたピストン部材(66)によって構成され、前記連通路は、前記ピストン部材(66)の外周面(66C)と前記弁室(56)の内周面(56A、56B)との間に構成され、前記弁室(56)の内周面(56A、56B)が弁リフト方向の途中位置において弁リフト方向に直交する方向に拡張されていることにより、前記ピストン部材(66)が前記第1の弁リフト領域にある状態では前記ピストン部材(66)の外周面(66C)と前記弁室(56)の内周面(56A)との間隔がゼロあるいは小さく、前記ピストン部材(66)が前記第2の弁リフト領域にある状態では前記ピストン部材(66)の外周面(66C)と前記弁室(56)の内周面(56B)との間隔が前記第1の弁リフト領域にある場合に比して大きい。
【0012】
この構成によれば、弁リフト量に応じて開閉あるいは増減するような1次室(28)と2次室(30)との連通路が、弁室(56)の内周面(56A、56B)の形成を変化せるだけで、部品点数の増加を招くことなく簡単に構成することができる。
【0013】
本発明によるチェック弁は、好ましくは、且つ前記弁体(26、66)が前記最大弁リフト位置に位置している状態では前記弁体(26、66)の前記2次室(30、72)側が前記弁ハウジング(10、50)に当接する。
【0014】
この構成によれば、弁体(26、66)が最大弁リフト位置に位置すると、弁体(26、66)の2次室(30、72)側が弁ハウジング(10、50)に当接することにより、弁体(26、66)の2次室(30、72)側の受圧面積が1次室(28、70)側の受圧面積に比して小さくなり、弁体(26、66)のリフト位置が安定しないハンチング現象が生じることなく安定した全開状態が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるチェック弁によれば、弁体が弁座部より離間し、弁体が第1の弁リフト領域にある状態では、1次室と2次室との連通が遮断あるいは比較的小さい第1の通路断面積をもって行われるだけであるので、弁体の1次室側の受圧面の全体に入口ポートの圧力が有効に作用し、弁体が第2の弁リフト領域を急速に通過して最大弁リフト位置に位置する。これにより、開弁が瞬時に大きい通路断面積をもって行われる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明によるチェック弁の第1の実施形態を、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0018】
本実施形態のチェック弁は、入口側ハウジング12と出口側ハウジング14との結合体による弁ハウジング10を有する。弁ハウジング10は気密な円筒状の弁室16を画定している。入口側ハウジング12には入口側ハウジング12より弁室16内に突出した円筒体18によって弁室16に開口した入口ポート20が形成されている。出口側ハウジング14には弁室16に開口した出口ポート22が形成されている。入口ポート20の弁室16に対する開口端周り、つまり円筒体18の先端部は弁室16の中心部に位置する円環状の弁座部24になっている。
【0019】
弁ハウジング10には入口側ハウジング12と出口側ハウジング14とで厚肉の円環状の外周縁部26Aを両側から挟むようにしてダイヤフラム26が取り付けられている。ダイヤフラム26は、弁体をなすものであって、全体をゴム状弾性材等の可撓性材料により構成された膜体であり、弁ハウジング10との固定部である前述の外周縁部26Aと、外周縁部26Aの径方向内方にあって外周縁部26Aより十分に薄くて可撓性を有する円盤状のダイヤフラム面部26Bと、ダイヤフラム面部26Bの中心部にあってダイヤフラム面部26Bより厚肉で所要の剛性を有する弁体部26Cとを一体に有し、弁室16を入口ポート20を含む1次室28と出口ポート22を含む2次室30とに区分している。ダイヤフラム26は、1次室28に露呈する面全体が1次室側受圧面Aになっており、これとは反対に2次室30に露呈する面全体が2次室側受圧面Bになっている。1次室側受圧面Aと2次室側受圧面Bとはダイヤフラム26の表裏により互いに同じ面積である。
【0020】
弁体部26Cは、弁座部24と正対し、ダイヤフラム面部26Bの弾性変形によるダイヤフラム26の図にて上下方向、つまり弁リフト方向の変位のもとに、
図1に示されているように弁座部24に着座して入口ポート20を閉じる着座位置と、
図2、
図3に示されているように弁座部24より離間して入口ポート20を開く離間位置との間に移動可能である。
【0021】
出口側ハウジング14内にはばねリテーナ32が固定されている。ばねリテーナ32は、軸線方向の中間部に肩部(段差部)32Aを有する円筒形状のものである。肩部32Aと弁体部26Cとの間に圧縮コイルばねによる閉弁ばね34が取り付けられている。閉弁ばね34は、出口側ハウジング14とダイヤフラム26との間に作用し、ダイヤフラム26を弁座部24に着座する方向(図にて上方)に付勢する。
【0022】
なお、ばねリテーナ32には弁室16の2次室30側と出口ポート22とを連通する複数個の開口32Bが形成されている。
【0023】
ばねリテーナ32の先端は弁座部24より離間した弁体部26Cが選択的に着座する開弁着座部32Cになっている。開弁着座部32Cは弁体部26Cの着座位置より離間位置への移動の最大量、つまり弁リフト量の最大値を設定するものであり、弁体部26Cが開弁着座部32Cに着座したダイヤフラム26の位置が最大弁リフト位置である。
【0024】
ダイヤフラム26のダイヤフラム面部26Bには、平面形状が円弧状で膜厚方向に貫通した連通孔36が円周周りに等間隔に複数個形成されている。連通孔36は1次室28と2次室30とを連通している。入口側ハウジング12には弁リフト方向に各連通孔36に向けて突出した複数個の突出部38が一体形成されている。突出部38は、各連通孔36ごとに設けられており、各々、連通孔36に抜き差し可能なように、連通孔36の平面形状と同じ断面形状のものになっている。突出部38の外形寸法は、連通孔36の孔形寸法に等しいか、あるいはそれより少し小さければよい。
【0025】
突出部38は、
図1、
図2に示されているように、ダイヤフラム26が着座位置より離間位置側に最大弁リフト量より所定量小さい弁リフト量だけ移動した弁リフト領域、つまり第1の弁リフト領域にある状態では、連通孔36に進入して連通孔36による1次室28と2次室30との連通を実質的に遮断し、
図3に示されているように、ダイヤフラム26が第1の弁リフト領域より更に前記離間位置側に移動した、最大弁リフト位置を含む弁リフト領域、つまり第2の弁リフト領域にある状態では、連通孔36より完全に抜け出す。これにより、第2の弁リフト領域では、1次室28と2次室30とが複数個の連通孔36の開口面積の合計値による比較的大きい通路断面積をもって連通する。
【0026】
このようにして、弁ハウジング10とダイヤフラム26とで、当該両者間に1次室28と2次室30とを弁リフト位置に応じて選択的に連通・遮断する連通路が構成されている。
【0027】
出口側ハウジング14にはダイヤフラム26の2次室側受圧面Bに正対向する当接座部40が一体形成されている。当接座部40は、ダイヤフラム26と同心の円環状に設けられており、ダイヤフラム26が
図1および
図2に示されているように、着座位置および最大弁リフト位置を除く離間位置にある状態では、2次室側受圧面Bより離れている。この状態では、1次室側受圧面Aと2次室側受圧面Bとの有効面積は互いに同一である。
【0028】
これに対し、ダイヤフラム26が、
図3に示されているように、最大弁リフト位置に位置すると、当接座部40は2次室側受圧面Bの連通孔36より径方向外方の部位に円環状(閉ループ形状)に当接する。これにより、ダイヤフラム26が最大弁リフト位置にある状態では、2次室側受圧面Bのうち当接座部40との円環状の当接部位より径方向外方にある部位が2次室側の受圧面として無効になり、ダイヤフラム26が最大弁リフト位置以外の弁リフト位置にある場合に比して、その無効分だけ2次室側受圧面Bの有効面積が減少する。つまり、最大弁リフト位置では、ダイヤフラム26の2次室側受圧面Bが当接座部40に閉ループ形状をもって当接することにより、その当接部分より径方向外方の2次室側受圧面Bには2次室30の圧力が有効に作用しなくなり、2次室側受圧面Bの有効面積の減少分だけ2次室側受圧面Bの有効面積が1次室側受圧面Aの有効面積より小さくなる。
【0029】
上述の構成によれば、入口ポート20に流体が供給されておらず、入口ポート20の圧力と出口ポート22の圧力とが同じか、入口ポート20の圧力が出口ポート22の圧力より所定値以上高くない状態では、
図1に示されているように、閉弁ばね34のばね力によってダイヤフラム26は弁体部26Cが弁座部24に着座した着座位置に位置する。ダイヤフラム26が着座位置にある状態では、突出部38は、連通孔36に進入し、連通孔36に嵌合して連通孔36を実質的に閉じている。
【0030】
入口ポート20に流体が供給され、入口ポート20の圧力が出口ポート22の圧力より所定値以上高くなると、その圧力が入口ポート20の弁室16に対する開口端より弁座部24に着座しているダイヤフラム26の弁体部26Cに離間方向(開弁方向)に作用する。これにより、弁体部26Cがダイヤフラム26と共に閉弁ばね34のばね力に抗して弁座部24より離間する。
【0031】
弁体部26Cが弁座部24より離間し、ダイヤフラム26が第1の弁リフト領域にある状態では、
図2に示されているように、突出部38が連通孔36に進入して連通孔36による1次室28と2次室30との連通を実質的に遮断した状態が継続している。
【0032】
これにより、第1の弁リフト領域では1次室28より連通孔36を通って2次室30へ流体が流れることがなく、あるいは極く少なく、ダイヤフラム26の1次室側受圧面Aの全体に入口ポート20の圧力が実質的に圧力低下を生じることなく有効に作用する。このことによってダイヤフラム26の1次室側受圧面Aの全体に作用している入口ポート20の圧力と2次室側受圧面Bの全体に作用している圧力(例えば大気圧)とに大きい差圧が生じ、この大きい差圧によってダイヤフラム26が第1の弁リフト領域より第2の弁リフト領域を急速に通過して一気に最大弁リフト位置に位置する。
【0033】
ダイヤフラム26が最大弁リフト位置に位置した時には、突出部38が連通孔36より完全に抜け出し、1次室28と2次室30とが複数個の連通孔36の開口面積の合計値による比較的大きい通路断面積をもって連通する。これにより、チェック弁が瞬時に大きい通路断面積をもって全開した状態になり、入口ポート20より1次室28、連通孔36、2次室30を経て出口ポート22へ流体が大きい圧損を生じることなく流れる。
【0034】
このようにチェック弁が瞬時に大きい通路断面積をもって全開した状態になるので、入口ポート20(弁座部24)より弁体部26Cが少し離れた低開度である状態の時にダイヤフラム26の弁リフト位置が安定せずに弁リフト量が細かく繰り返し増減するハンチング現象を生じる虞がある時期が瞬時に終わり、実質的なハンチング現象を生じることがない。
【0035】
ダイヤフラム26が最大弁リフト位置に位置すると、ダイヤフラム26の2次室側受圧面Bの連通孔36より径方向外方の部位に円環状に当接座部40が当接することにより、その当接部分より径方向外方の2次室側受圧面Bには2次室30の圧力が有効に作用しなくなり、2次室側受圧面Bの有効面積の減少分だけ2次室側受圧面Bの有効面積が1次室側受圧面Aの有効面積より小さくなる。
【0036】
これにより、低圧損仕様であることによって全開時の1次室28の圧力と2次室30の圧力とがほぼ等しくなっても、有効面積差によって2次室側受圧面Bに作用する閉弁方向の荷重が1次室側受圧面Aに作用する開弁方向の荷重より小さくなっているので、開弁と閉弁とを繰り返すハンチング現象を生じることなく安定した全開状態が得られる。
【0037】
本実施形態では、弁体部26Cがダイヤフラム26の中心位置にあり、当接座部40がダイヤフラム26と同心の円環状に設けられているから、当接座部40によるダイヤフラム26の支えが中心周りに均等なものになり、ダイヤフラム26が当接座部40に着座した状態の時にダイヤフラム26に捩れ変形が生じることがない。これにより、ダイヤフラム26の耐久性の低下が回避される。
【0038】
つぎに、本発明によるチェック弁の第2の実施形態を、
図4〜
図7を参照して説明する。なお、
図4〜
図7において、
図1〜
図3に対応する部分は、
図1〜
図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0039】
この実施形態では、ダイヤフラム26は、全体をゴム等の弾性材により構成され、ダイヤフラム面部26Bが着座方向の付勢力を生じるように、ダイヤフラム面部26Bに初期弾性変形を与えた状態で弁ハウジング10に組み付けられている。これにより、弁体部26Cは、ダイヤフラム面部26B部分の弾性変形によって生じる復元力(弾性力)によって着座位置の方向へ付勢され、常閉型の弁体をなしている。
【0040】
出口側ハウジング14には2次室30の内周面より中央側に張り出した板状部42が中心軸線周りの3箇所に等間隔で形成されている。板状部42の上面44は弁体部26Cに対向している。ダイヤフラム面部26B部分の弾性力に抗した弁体部26Cの開弁方向の移動は、弁体部26Cが板状部42の上面44に当接することにより制限される。これにより、ダイヤフラム26の最大弁リフト量(最大弁リフト位置)が設定される。
【0041】
この実施形態では、閉弁ばね34を省略することができ、部品点数の削減が図られる。このこと以外は、第1の実施形態と同じ構成であるから、第2の実施形態においても第1の実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0042】
つぎに、本発明によるチェック弁の第3の実施形態を、
図8〜
図10を参照して説明する。
【0043】
本実施形態のチェック弁は、入口側ハウジング52と出口側ハウジング54との結合体による弁ハウジング50を有する。弁ハウジング50は気密な円筒状の弁室56を画定している。入口側ハウジング52には入口側ハウジング52より弁室56内に突出した円筒体58によって弁室56に開口した入口ポート60が形成されている。出口側ハウジング54には弁室56に開口した出口ポート62が形成されている。入口ポート60の弁室56に対する開口端周り、つまり円筒体58の先端部は弁室56の中心部に位置する円環状の弁座部64になっている。
【0044】
弁室56には弁体としてカップ形状のピストン部材66が配置されている。ピストン部材66は、図示されていない案内部に案内されて、
図8に示されているように頂面66Aが弁座部64に着座して入口ポート60を閉じる着座位置と、
図9、
図10に示されているように頂面66Aが弁座部64より離間して入口ポート60を開く離間位置との間に移動可能である。ピストン部材66の最大離間位置、つまり最大弁リフト量は、
図10に示されているようにピストン部材66の頂面66Aとは軸線方向に見て反対側の円環端面66Bが出口側ハウジング54の端面がなす当接座部68に当接する弁リフト方向の位置によって決まる。ピストン部材66の周壁部には、円環端面66Bが当接座部68に当接した最大弁リフト位置にピストン部材66が位置している状態で弁室56と出口ポート62との連通を確保するために、複数個の開口66Dが形成されている。
【0045】
出口側ハウジング54とピストン部材66との間に圧縮コイルばねによる閉弁ばね76が取り付けられている。閉弁ばね76は、出口側ハウジング54とピストン部材66との間に作用し、ピストン部材66を弁座部64に着座する方向(図にて上方)に付勢する。
【0046】
ピストン部材66は弁室56を入口ポート60を含む1次室70と出口ポート62を含む2次室72とに区分している。ピストン部材66は、1次室70に露呈する面全体が1次室側受圧面Aになっており、これとは反対に2次室72に露呈する面全体が2次室側受圧面Bになっている。ここで云う1次室側受圧面Aと2次室側受圧面Bとはピストン部材66の弁リフト方向の移動に関与する圧力をピストン部材66が受ける面である。1次室側受圧面Aはピストン部材66の頂面66Aの全体であり、2次室側受圧面Bはピストン部材66の下底面の全体であり、この実施形態でも1次室側受圧面Aの面積と2次室側受圧面Bと面積とは、互いに同一である。
【0047】
弁室56は弁リフト方向の途中位置において当接座部68側が弁座部64側より大径になるように拡径されている。これにより、弁室56の内周面は、弁座部64側の小径内周面56Aと、当接座部68側の大径内周面56Bとにより構成されている。
【0048】
ピストン部材66は、自身の外周面66Cと弁室56の小径内周面56Aおよび大径内周面56Bとの間に、1次室70と2次室72とを連通する連通路74を構成している。これにより、
図8、
図9に示されているように、ピストン部材66が着座位置より離間位置側に最大弁リフト量より所定量小さい弁リフト量だけ移動し、ピストン部材66の外周面66Cが小径内周面56Aに対応する弁リフト領域、つまり第1の弁リフト領域にある状態では、ピストン部材66の外周面66Cと弁室56の内周面(小径内周面56A)との間隔(連通路74)がゼロあるいは極く小さい。
【0049】
これに対し、
図10に示されているように、ピストン部材66が第1の弁リフト領域より更に離間位置側に移動した最大弁リフト位置を含んでピストン部材66の外周面66Cが大径内周面56Bに対応する弁リフト領域、つまり、第2の弁リフト領域にある状態ではピストン部材66の外周面66Cと弁室56の内周面(大径内周面56B)との間隔が第1の弁リフト領域にある場合に比して大きい。
【0050】
上述の構成によれば、入口ポート60に流体が供給されておらず、入口ポート60の圧力と出口ポート62の圧力とが同じか、入口ポート60の圧力が出口ポート62の圧力より所定値以上高くない状態では、
図8に示されているように、閉弁ばね76のばね力によってピストン部材66は頂面66Aが弁座部64に着座した着座位置に位置する。ピストン部材66が着座位置にある状態では、ピストン部材66の外周面66Cが小径内周面56Aに対応していることにより、連通路74の流路断面積はゼロあるいは極く小さい。
【0051】
入口ポート60に流体が供給され、入口ポート60の圧力が出口ポート62の圧力より所定値以上高くなると、その圧力が入口ポート60の弁室56に対する開口端より弁座部64に着座しているピストン部材66に離間方向(開弁方向)に作用する。これにより、ピストン部材66が閉弁ばね76のばね力に抗して弁座部64より離間する。
【0052】
ピストン部材66が弁座部64より離間し、ピストン部材66が前記第1の弁リフト領域にある状態では、
図9に示されているように、ピストン部材66の外周面66Cが小径内周面56Aに対応していることにより、連通路74の流路断面積はゼロあるいは極く小さい状態が継続している。
【0053】
これにより、第1の弁リフト領域では1次室70より連通路74を通って2次室72へ流体が流れることがなく、あるいは極く少なく、ピストン部材66の1次室側受圧面Aの全体に入口ポート60の圧力が実質的に圧力低下を生じることなく有効に作用する。このことによってピストン部材66の1次室側受圧面Aの全体に作用している入口ポート60の圧力とピストン部材66の2次室側受圧面Bの全体に作用している圧力(例えば大気圧)とに大きい差圧が生じ、この大きい差圧によってピストン部材66が第1の弁リフト領域より第2の弁リフト領域を急速に通過して一気に最大弁リフト位置に位置する。
【0054】
図10に示されているように、ピストン部材66が最大弁リフト位置に位置した時には、ピストン部材66の外周面66Cが大径内周面56Bに対応していることにより、連通路74の流路断面積が大きく、1次室70と2次室72とが大きい通路断面積をもって連通する。これにより、チェック弁が瞬時に大きい通路断面積をもって全開した状態になり、入口ポート60より1次室70、連通路74、2次室72を経て出口ポート62へ流体が大きい圧損を生じることなく流れる。
【0055】
このようにチェック弁が瞬時に大きい通路断面積をもって全開した状態になるので、入口ポート60(弁座部64)よりピストン部材66の頂面66Aが少し離れた低開度である状態の時にピストン部材66の弁リフト位置が安定せずに弁リフト量が細かく繰り返し増減するハンチング現象を生じる虞がある時期が瞬時に終わり、実質的なハンチング現象を生じることがない。
【0056】
ピストン部材66が最大弁リフト位置に位置すると、ピストン部材66の円環端面66Bが当接座部68に当接することにより、当接座部68に当接した円環端面66Bの面積分、2次室側受圧面Bの有効面積が減少し、2次室側受圧面Bの有効面積が1次室側受圧面Aの有効面積より小さくなる。
【0057】
これにより、低圧損仕様であることによって全開時の1次室70の圧力と2次室72の圧力とがほぼ等しくなっても、有効面積差によって2次室側受圧面Bに作用する閉弁方向の荷重が1次室側受圧面Aに作用する開弁方向の荷重より小さくなっているので、開弁と閉弁とを繰り返すハンチング現象を生じることなく安定した全開状態が得られる。
【0058】
以上、本発明をその好適な実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。たとえば、弁体が第1の弁リフト領域にある状態での1次室と2次室との連通は完全に遮断されることが、急速な開弁特性を得る上で好適であるが、必ずしも完全に遮断される必要はなく、弁体が第2の弁リフト領域にある状態よりも1次室と2次室との連通が小さい流路断面積によって行われてもよい。
【0059】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。