特許第6063228号(P6063228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063228
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20170106BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08F220/30
   C08F2/48
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-263724(P2012-263724)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108983(P2014-108983A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】深尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】依田 公彦
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111931(JP,A)
【文献】 特開2003−322706(JP,A)
【文献】 特開2012−140551(JP,A)
【文献】 特開2013−227392(JP,A)
【文献】 特表2012−523485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/30
C08F 2/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物、
【化1】
(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。尚、一般式(2)又は一般式(3)で示される置換基はベンゼン環における置換可能な炭素原子のいずれと結合してもよい。)
【化4】
【化5】
(B)成分として、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上
(C)成分として、ベンジル(メタ)アクリレート及び/又はフェノキシエチル(メタ)アクリレート
(D)成分として、光ラジカル重合開始剤、
を含有し、(A)〜(C)成分の合計100質量部中、前記(A)成分の含有割合が10〜70質量部であり、前記(B)成分の含有割合が5〜65質量部であり、前記(C)成分の含有割合が5〜65質量部である光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分の含有割合が、(A)〜(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
更に(E)成分として、シランカップリング剤を含有する請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)成分は、フェニル基又は(メタ)アクリロイル基から選ばれる1個以上の官能基を有するシランカップリング剤であり、(B)成分は、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上180℃以下であり、温度25℃、波長589nmでの液屈折率が1.50以上であり、硬化物屈折率が1.53以上である請求項3に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び/又は、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレンであり、(B)成分が、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートであり、(D)成分が、アルキルアセトフェノン誘導体、α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体からなる1種以上であり、(D)成分の含有割合が、(A)〜(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、(A)〜(C)成分の合計100質量部中、前記(A)成分の含有割合が30〜50質量部であり、前記(B)成分の含有割合が25〜45質量部であり、前記(C)成分の含有割合が15〜45質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
エチレングリコール鎖を有するジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート、2つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート、分子内にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート共重合体であるアルカリ可溶性樹脂及びシリカ微粒子、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能硬化性モノマーを含有しない請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物からなる被覆材。
【請求項8】
請求項に記載の被覆材を有する基材。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物からなる層を基板上に形成した後に、前記の光硬化性樹脂組成物より低い屈折率を有する層を形成してなる膜を有する基材。
【請求項10】
請求項9に記載の基材を有する素子。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項12】
請求項11に記載の接着剤で接着された接合体。
【請求項13】
請求項12に記載の接合体を有する光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD、CMOS等のセンサー素子や、ディスプレイ等の表示素子に用いられるガラス、フィルム及びシートの表面には、表面を保護する目的で、無機物又は有機物からなる被覆層が設けられている。近年では、前記の表面保護層に、反射防止や光導波等の機能を付与する目的で高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した被覆層等が用いられている。この高屈折率層には、チタニア、ジルコニア及びアルミナといったセラミックスを蒸着等により形成した高屈折率無機膜や、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート等のラジカル重合性モノマーを配合し、塗布した後に、紫外線等のエネルギー線を照射して硬化膜とする高屈折率有機膜が、目的に応じて用いられている。前者の無機膜では、基材がフィルムやシートの場合に、密着性が不足したり、膜が脆く、フィルムを曲げた際に割れてしまったりする等の課題があった。近年ではラジカル重合性モノマーを配合した光硬化型の高屈折率有機膜が広く使用されるようになっている。
【0003】
カメラや顕微鏡等の光学機器の組立てにおいては、レンズやプリズム等を接合するため、バルサムやエポキシ樹脂等の透明樹脂が接着剤として用いられていた。近年、オプトエレクトロニクス産業の発展に伴い、光ファイバーやマイクロレンズ等の高度な光学機能を持った光学素子類を接合する用途が増大している。光学素子類を接合するために、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート等のラジカル重合性モノマーを配合した接着剤も広く使用されるようになっている。特に、光導波路素子とマイクロレンズや光ファイバー等を接合して、光変調器や光スイッチ等の光回路を作製する場合や、薄型レンズの接合等の、高度な光学特性を必要とする光学部品を接合する場合において、高屈折率を有する接着剤が必要とされている。
【0004】
上述のような反射防止膜や光導波路膜に用いられる高屈折率層に適用可能な、高屈折率を有する樹脂組成物や、接着剤に用いられる樹脂組成物としては、硫黄含有(メタ)アクリレートを用いた接着剤組成物及び光硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献1〜3)。特許文献4には、ジフェニルスルフォン構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いた活性エネルギー線硬化性組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、前記の特許文献に記載の主成分である、硫黄含有(メタ)アクリレートや、ジフェニルスルフォン構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートは、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香環を有する化合物よりは高い屈折率を有してはいるものの、これら化合物は一般に波長450nm以下の光を吸収するため、黄色く着色し、透明性が低下しやすい、フィルムと密着しにくいといった課題があった。
【0006】
前記の様な課題に対して高い屈折率を有する化合物として、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートを用いた光硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献5〜9)。しかしながら、特許文献5の実施例は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート以外の成分として、エチレングリコール鎖を有するジメタクリレート及び/又はビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレートを使用しているため、密着性、耐光性が低いといった課題があった。
【0007】
特許文献6の実施例は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート以外の成分として、2つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を使用しているため、高い屈折率は得られているものの、密着性、透明性、耐光性が低いといった課題があった。
【0008】
特許文献7の実施例は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート以外の成分として、2つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート及び/又は1つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレートを使用しているため、高い屈折率は得られているものの、密着性、透明性、耐光性が低いといった課題があった。
【0009】
特許文献8の実施例は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート以外の成分として、分子内にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート共重合体であるアルカリ可溶性樹脂及びシリカ微粒子を使用しているため、屈折率が低くなるといった課題があった。
【0010】
特許文献9の実施例は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート以外の成分として、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能硬化性モノマーを使用しているため、密着性、接着性が低いといった課題があった。
【0011】
特許文献5〜9は、希釈等の目的で単官能(メタ)アクリレートを使用できる旨の記載があるが、組成比に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−5952号公報
【特許文献2】特開2002−97224号公報
【特許文献3】特表2006−526037号公報
【特許文献4】特開2011−157543号公報
【特許文献5】特開2004−294720号公報
【特許文献6】特開2008−94987号公報
【特許文献7】特開2010−248358号公報
【特許文献8】特開2011−39165号公報
【特許文献9】特開2012−111931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明は、特定量の単官能(メタ)アクリレートを使用する。本発明により、特許文献5〜9記載の、エチレングリコール鎖を有するジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート、2つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート、分子内にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート共重合体であるアルカリ可溶性樹脂及びシリカ微粒子、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能硬化性モノマーを使用しなくても、優れた効果を有する。本発明は、高い屈折率と高い透明性を有し、固着時間が短い光硬化性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の通りである。
<1>(A)成分として、下記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物、
【化2】
(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。尚、一般式(2)又は一般式(3)で示される置換基はベンゼン環における置換可能な炭素原子のいずれと結合してもよい。)
【化6】
【化7】
(B)成分として、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上
(C)成分として、ベンジル(メタ)アクリレート及び/又はフェノキシエチル(メタ)アクリレート
(D)成分として、光ラジカル重合開始剤、
を含有し、(A)〜(C)成分の合計100質量部中、前記(A)成分の含有割合が10〜70質量部であり、前記(B)成分の含有割合が5〜65質量部であり、前記(C)成分の含有割合が5〜65質量部である光硬化性樹脂組成物である。
<2>(D)成分の含有割合が、(A)〜(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である光硬化性樹脂組成物が好ましい。
<3>更に(E)成分として、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
<4>(E)成分は、フェニル基又は(メタ)アクリロイル基から選ばれる1個以上の官能基を有するシランカップリング剤であり、(B)成分は、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上180℃以下であり、温度25℃、波長589nmでの液屈折率が1.50以上であり、硬化物屈折率が1.53以上である光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
<5>(A)成分が、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び/又は、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレンであり、(B)成分が、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートであり、(D)成分が、アルキルアセトフェノン誘導体、α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体からなる1種以上であり、(D)成分の含有割合が、(A)〜(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、(A)〜(C)成分の合計100質量部中、前記(A)成分の含有割合が30〜50質量部であり、前記(B)成分の含有割合が25〜45質量部であり、前記(C)成分の含有割合が15〜45質量部である光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
<6>エチレングリコール鎖を有するジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート、2つの芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート、分子内にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート共重合体であるアルカリ可溶性樹脂及びシリカ微粒子、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能硬化性モノマーを含有しない光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
<7>光硬化性樹脂組成物からなる被覆材であることが好ましい。
<8>被覆材を有する基材であることが好ましい。
<9>光硬化性樹脂組成物からなる層を基板上に形成した後に、前記の光硬化性樹脂組成物より低い屈折率を有する層を形成してなる膜であることが好ましい。
<10>基材を有する素子であることが好ましい。
<11>光硬化性樹脂組成物からなる接着剤であることが好ましい。
<12>接着剤で接着された接合体であることが好ましい。
<13>接合体を有する光学部品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、高い屈折率と高い透明性を有し、固着時間が短い、といった効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<用語の説明>
本明細書において、被覆材とは、ガラス基板、プラスチックフィルム、プラスチックシート等の基材上を、表面保護や意匠性を付与したり、及び反射防止や光導波といった機能性を付与したりすることを目的に被覆する材料を意味する。
【0017】
本明細書において、接着剤とは、部品と部品等を貼り合わせるための接着剤、特に光学部品の接着に好適に用いられる接着剤を意味する。
【0018】
本実施形態に係る樹脂組成物の成分について説明する。
【0019】
<(A)成分:フルオレン系化合物>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、下記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物を有する。
【化3】
(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。尚、一般式(2)又は一般式(3)で示される置換基はベンゼン環における置換可能な炭素原子のいずれと結合してもよい。)
【化8】
【化9】
【0020】
上記フルオレン系化合物としては、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[モノ又はジC1−4アルキル−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン;9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[3,4,5−トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;これらの化合物においてC2−4アルコキシ基がポリアルコキシ基(ジエトキシ、トリエトキシ基等)で置換された化合物(9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類等);更にはこれらの化合物において、フェニル基をビフェニル基で置換してビフェニル基を形成した化合物(9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の9,9−ビス[フェニル−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル]フルオレン類等);これらの化合物においてナフチル基である化合物(9,9−ビス[5又は6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[5又は6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1又は2−ナフチル)]フルオレン等の9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)ナフチル]フルオレン類等)等が挙げられる。これらの中では、透明性、基材との密着性の点で、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び/又は、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。ここで、Cは炭素をいう。例えば、C1−4とは、炭素数が1〜4個であることをいう。
【0021】
(A)成分の含有割合は、屈折率、透明性、密着性の点で、樹脂組成物の総量((A)〜(C)の合計100質量部)に対して10〜70質量部が好ましく、20〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部が最も好ましい。
【0022】
上記フルオレン系化合物は、公知の製造方法をもって製造されたものを使用できる。具体的には大阪ガスケミカル社製のオクゾールシリーズや、新中村化学工業社製の「NKエステル A−BPFE」等を用いることができる。
【0023】
<(B)成分:脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート>
本発明の樹脂組成物は(B)成分として、脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する。
【0024】
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、水素添加ビスフェノールA型エポキシモノ(メタ)アクリレート、水素添加ビスフェノールF型エポキシモノ(メタ)アクリレート、水素添加ビフェニル型エポキシモノ(メタ)アクリレート、及び、これらエポキシモノ(メタ)アクリレートのEO(エチレンオキシド)変性体又はPO(プロピレンオキシド)変性体等が挙げられる。これらの中では、屈折率、透明性、密着性の点で、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0025】
(B)成分は、密着性、耐光性の点で、ホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgという)が、40℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、J.Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 2nd Ed.,J. Wiley, New York 1975、光硬化技術データブック(テクノネットブックス社)等に記載されている。本発明は、光硬化技術データブック記載の値を使用した。
【0027】
ガラス転移温度の測定は、示差熱量計(以下、DSCという)や動的粘弾性(以下、DMAという)等公知の手法で測定できるが、DSCを用いた測定が好ましい。
【0028】
(B)成分の含有割合は、屈折率、透明性、基材との密着性の点で、樹脂組成物の総量((A)〜(C)の合計100質量部)に対して5〜65質量部が好ましく、15〜55質量部がより好ましく、25〜45質量部が最も好ましい。
【0029】
<(C)成分:芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート>
本発明の樹脂組成物は(C)成分として、より屈折率を高めることを目的に1個以上の芳香環を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する。芳香環の数は、1〜3個が好ましくは、1個がより好ましい。
【0030】
上記1個以上の芳香環を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、フタル酸変性(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、(A)成分との相溶性、屈折率、透明性の点で、ベンジル(メタ)アクリレート及び/又はフェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
(C)成分の含有割合は、屈折率、透明性、密着性、耐光性の点で、樹脂組成物の総量((A)〜(C)の合計100質量部)に対して5〜65質量部が好ましく、10〜55質量部がより好ましく、15〜45質量部が最も好ましい。
【0032】
<(D)成分:光ラジカル重合開始剤>
本実施の樹脂組成物は、(D)光ラジカル重合開始剤を含有する。光ラジカル重合開始剤は、エネルギー線を照射することによりラジカルが発生する化合物であれば、特に制限されない。
【0033】
上記光ラジカル重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアルキルアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2-ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1等のα−アミノアルキルアセトフェノン誘導体、イソブチリル−メチルフォスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、p−3級ブチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、ビバロイル−(4−メチルフェニル)−フォスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルフォスフィン酸ビニルエステル、アクリロイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、1−メチル−1−シクロヘキサノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、p−3級ブチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、(メタ)アクリロイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2−ジメチル−ヘプタノイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、テレフタロイル−ビス−ジフェニルフォスフィンオキサイド、アジポイル−ビス−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−トリフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸エステル、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,4,6−テトラメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジブロムベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイル−若しくは2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体、1,2−オクタンジオン,1−〔−4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物が挙げられる。これらの中では、反応性、透明性に優れる点で、アルキルアセトフェノン誘導体、α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体からなる1種以上が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(D)成分の含有割合は、樹脂組成物の総量((A)〜(C)の合計100質量部)に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。0.1〜10質量部の範囲にあれば硬化性が悪くなることもないし、透明性も低下させることもない。
【0035】
<(E)成分:シランカップリング剤>
本発明の樹脂組成物は、ガラス面への密着性を一層向上させることを目的に、(E)成分として、シランカップリング剤を更に含有することができる。シランカップリングとしては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、フェニル基を有するシランカップリング剤からなる群のうちの1種以上が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤とフェニル基を有するシランカップリング剤からなる群のうちの1種以上がより好ましい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。フェニル基を有するシランカップリング剤としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
(E)成分の含有割合は、屈折率、透明性、密着性の点で、樹脂組成物の総量((A)〜(C)の合計100質量部)に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の単官能(メタ)アクリレート化合物や、多官能の(メタ)アクリレートを含有しても良い。
【0038】
<その他の添加剤>
本実施形態の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、アクリルゴム、ウレタンゴム等の各種エラストマー、光増感剤、光安定剤、溶剤、増量材、充填剤、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法については、上記の材料を十分に混合できれば特に制限はない。材料の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行えるので好ましい。
【0040】
上記の混合を行った後、下記の光源を用いたエネルギー線の照射により、樹脂組成物の硬化を行うことができる。
【0041】
本実施形態において、樹脂組成物の硬化に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光ラジカル重合開始剤の反応波長に対応したエネルギー線の照射を効率よく行う点で、好ましい。
【0042】
上記光源は、各々放射波長、エネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0043】
上記光源は、直接照射、反射鏡等による集光照射、ファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0044】
上記構成からなる樹脂組成物は、エネルギー線の照射により速やかに硬化するため、高透明性、高屈折率等の光学特性に優れた硬化体を提供することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物の屈折率は、温度25℃、波長589nmでの液屈折率が1.50以上であることが好ましく、1.51以上であることがより好ましく、1.52以上であることが最も好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物の屈折率は、温度25℃、波長589nmでの硬化物屈折率が1.53以上であることが好ましく、1.54以上であることがより好ましく、1.55以上であることが最も好ましい。
【0047】
屈折率の測定は、アッベ式屈折率計、プリズムカプラー、エリプソメーター等、公知の手法にて測定できる。これらの中では、アッベ式屈折率計を用いた測定が好ましい。
【0048】
上記構成からなる樹脂組成物は、高透明性、高屈折率等の光学特性に優れ、ガラス、プラスチックフィルム、プラスチックシート等の基材への密着性が優れるため、これら基材の被覆材として提供することができる。
【0049】
上記構成からなる樹脂組成物は、高透明性、高屈折率等、光学特性に優れるため、反射防止膜や光導波膜の高屈折率層として用いることができる。そのため、上記構成からなる樹脂組成物は、優れた反射防止膜や光導波路膜を提供できる。
【0050】
反射防止膜及び光導波路膜は、ガラス、プラスチックフィルム、プラスチックシート等の各種基材の上に、本発明の樹脂組成物からなる層(以下、高屈折率層という)を塗布し、エネルギー線照射により硬化した後、高屈折率層上に、高屈折率層より低い屈折率を有する層(以下、低屈折率層という)を形成することにより、作製される。
【0051】
基材としては、無アルカリガラス、アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英等のガラス基材や、シリカ、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス基材、シリコーン、アルミ、ステンレス、鉄、銅、銀等の金属基材、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂からなるフィルム基材、シート基材等を用いることができる。
【0052】
低屈折率層としては、無機膜や有機膜が挙げられる。無機膜としては、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム等のアルカリ金属のフッ化物や、シリカ等が挙げられる。有機膜としては、ポリパーフルオロエチレン、パーフルオロシクロオレフィン等のフッ素樹脂、ポリエチレングリコール等のポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及び、それらのフッ素変性樹脂等が挙げられる。
【0053】
上記構成からなる樹脂組成物は、高透明性、高屈折率等光学特性に優れるため、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、タッチパネル、プロジェクター、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルムービーの表示素子や、CCD、CMOS、バイオチップ等の各種センサー部品、フラッシュメモリー、DRAM、半導体レーザー等の半導体素子の被覆材、更には反射防止膜や光導波膜の高屈折率層として用いることができる。
【0054】
上記構成からなる樹脂組成物は、高い屈折率と高い透明性を兼ね備えることから、光学部品を接着するのに好適な接着剤を提供できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例では、以下の化合物を使用した。
【0057】
(A)フルオレン系化合物
(A−1)9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル社製「BPFEA」)
(A−2)9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル社製「オクゾールEA−0200」)
【0058】
(B)脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート
(B−1)ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業社製「ファンクリルFA−512M」、ホモポリマーTg:46℃)
(B−2)シクロヘキシルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルCH」、ホモポリマーTg:66℃)
(B−3)イソボルニルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートIB−XA」、ホモポリマーTg:94℃)
(B−4)ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業社製「ファンクリルFA−511AS」、ホモポリマーTg:120℃)
(B−5)2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(出光興産社製「アダマンテートMM」、ホモポリマーTg:170℃)
(B−6)ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業社製「ファンクリルFA−513M」、ホモポリマーTg:175℃)
(B−7)イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルIB−X」、ホモポリマーTg:180℃)
【0059】
(C)芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート
(C−1)フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートPO−A」)
(C−2)フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルPO」)
(C−3)ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製「ビスコート#160」)
(C−4)ベンジルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルBZ」)
(C−5)2−(o−フェニルフェノキシ)エチルアクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA−LEN−10」)
【0060】
(D)光ラジカル重合開始剤
(D−1)1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュアー184」)
(D−2)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「イルガキュアー819」)
(D−3)ベンジルジメチルケタール(BASF社製「イルガキュアー651」)
【0061】
(E)シランカップリング剤
(E−1)γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM−503」)
(E−2)フェニルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM−103」)
(E−3)フェニルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE−103」)
【0062】
比較として、下記を用いた。
(F−1)2−エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルEH」、ホモポリマーTg:−10℃)
(F−2)ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成社製「アロニックスM−211B」)
(F−3)ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成社製「アロニックスM−208」)
(F−4)エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製「NKエステル1G」
【0063】
(実施例1〜31、比較例1〜8)
表1〜表4に示す種類の原材料を、表1〜表4に示す組成割合(単位は質量部)で混合し、被覆材用樹脂組成物を調製し、後述の評価を実施した。各種評価結果を表1〜表4に示す。特記しない限り、23℃、湿度50%の環境下で実施した。
【0064】
【表1】




【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】




【0068】
〔評価方法〕
〔粘度〕
E型粘度計を用いて、温度25℃のときの粘度を測定した。
〔固着時間〕
耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、25mm×25mm×2.0mm)を使用した。一方の耐熱ガラスに接着剤を膜厚30μmで塗布した後に、他方の耐熱ガラスを重ねた。超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cmの条件で、紫外線を照射させながら、耐熱ガラスに4kgの荷重を負荷し、耐熱ガラスを動かした。紫外線を照射してから、荷重を負荷しても耐熱ガラスが動かなくなるまでの時間を測定した。
【0069】
〔屈折率の評価〕
(1)液屈折率
液屈折率の評価は、多波長アッベ屈折率計(アタゴ社製「DR−M2」)を用いて、温度25℃、波長589nmにおける屈折率を測定した。
(2)硬化物屈折率
接着剤組成物を容積15mm×15mm×1.0mmのシリコーンゴム製の型枠に流し込んだ。超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cm、積算光量3,000mJ/cmの条件にて硬化した硬化物試験片を作製し、屈折率を評価した。屈折率の評価は、多波長アッベ屈折率計(アタゴ社製「DR−M2」)を用いて、温度25℃、波長589nmにおける屈折率を測定した。
【0070】
〔分光透過率の評価〕
樹脂組成物を耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、25mm×25mm×2.0mm)上に膜厚30μmで塗布した後に、超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cm、積算光量3,000mJ/cmの条件にて硬化した試験片を作製した。紫外−可視分光光度計(島津製作所社製「UV−2550」)を用いて、リファレンスを耐熱ガラスとして、400nmの透過率を測定した。
【0071】
〔密着性評価(クロスカット試験)〕
125μm厚のポリエステルフィルム(東洋紡績社製「コスモシャインA4100」)上に、超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cm、積算光量3,000mJ/cm、窒素雰囲気下の条件にて、樹脂組成物を硬化し、形状が20mm×20mm×80μmの樹脂組成物の硬化膜を形成した試験片を作製した。
このようにして得られた各試験片に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、硬化膜に縦2mm×横2mm×25マスになるようにカットラインを入れた後、セロファンテープ(ニチバン社製型式CT−405AP:幅24mm、粘着力23N/10mm)を貼り付けて180°剥離を実施した。180°剥離後に残ったマスの数を数え、評価した。その他、特に明示のない条件はJIS K 5600−5−6に従った。
【0072】
〔引張剪断接着強さの評価〕
耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、25mm×25mm×2.0mm)上に、樹脂組成物を、直径8mmの円状に膜厚80μmで塗布した後に、超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cm、積算光量3,000mJ/cmの条件にて硬化した試験片を作製した。作製した試験片は、23℃、湿度50%RHの環境で、引張試験機を使用して、引張速度10mm/分で引張せん断接着強さを測定した。
【0073】
〔耐光性の評価(耐光試験)〕
耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、25mm×25mm×2.0mm)上に、樹脂組成物を、膜厚30μmで塗布した後に、超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度30mW/cm、積算光量3,000mJ/cmの条件にて硬化した試験片を作製した。耐光試験機(スガ試験機社製「キセノンウェザメーターX75」)を用いて、照度50W/mの光を、作製した試験片の樹脂側に100時間連続照射した。照射後の試験片について、紫外−可視分光光度計(島津製作所社製「UV−2550」)を用いて、400nmの透過率を測定した。尚、リファレンスには耐熱ガラスを用いた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、高い屈折率と高い透明性を有し、固着時間が短く、密着性及び耐光性に優れる。本発明は、低粘度であり、作業性に優れる。
【0075】
本発明は、各種センサー素子、表示素子、光学部品等に用いられる。本発明は、センサー素子、表示素子等の表面保護や、反射防止膜、光導波路膜及び光学部品の接着剤等に用いられる。本発明は、反射防止膜や光導波路膜の高屈折率層に用いられる。本発明は、光レンズ、プリズム、光導波路等の光学素子の接着に用いる光学部品用接着剤組成物に用いられる。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、高透明性、高屈折率等光学特性に優れるため、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、タッチパネル、プロジェクター、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルムービー等の表示素子や、CCD、CMOS、バイオチップ等の各種センサー部品のセンサー素子、フラッシュメモリー、DRAM、半導体レーザー等の半導体素子に用いられる被覆材、更には反射防止膜や光導波膜の高屈折率層として好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物は、密着性、耐光性に優れるため、光学部品用の接着剤としても好適に用いることができる。本発明は、産業上非常に有用である。