【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0041】
[ワニスの調製]
製造例1
ロジン変性フェノール樹脂R1(重量平均分子量57,000、ヘプタントレランス7.9ml、ハリマ化成(株)製)37.5部、トール油脂肪酸ブチルエステル(ハートールBU、ハリマ化成(株)製)31部、大豆白絞油31部、アルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.4部およびジブチルヒドロキシトルエン0.1部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV1を得た。
【0042】
製造例2
ロジン変性フェノール樹脂R2(重量平均分子量220,000、ヘプタントレランス8.0ml、ハリマ化成(株)製)35.7部、トール油脂肪酸ブチルエステル(ハートールBU、ハリマ化成(株)製)32部、大豆白絞油32部、アルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.2部およびジブチルヒドロキシトルエン0.1部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV2を得た。
【0043】
製造例3
ロジン変性フェノール樹脂R3(重量平均分子量63,000、ヘプタントレランス8.1ml、ハリマ化成(株)製)37.1部、トール油脂肪酸ブチルエステル(ハートールBU、ハリマ化成(株)製)31.2部、大豆白絞油31.2部、アルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.4部およびジブチルヒドロキシトルエン0.1部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV3を得た。
【0044】
製造例4
ロジン変性フェノール樹脂R6(重量平均分子量90,000、ヘプタントレランス11.8ml、荒川化学工業(株)製)41.4部、大豆油脂肪酸ブチルエステル(SFB−2、東新油脂(株)製)33部、大豆白絞油25部、およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.5部およびジブチルヒドロキシトルエン0.1部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV4を得た。
【0045】
製造例5
ロジン変性フェノール樹脂R4(重量平均分子量148,000、ヘプタントレランス50ml、荒川化学工業(株)製)25部、ロジン変性フェノール樹脂R5(重量平均分子量122,000、ヘプタントレランス30ml、荒川化学工業(株)製)15部、大豆白絞油10部、AFソルベント7(新日本石油社製)49.25部、およびアルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル社製)0.65部およびジブチルヒドロキシトルエン0.1部を反応容器中に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら185℃に昇温し、60分撹拌混合して、ワニスV5を得た。
【0046】
実施例1〜3
表1に示したように、ワニス、シアニンブルー(GBK19SD、DIC(株)製)、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)、大豆油脂肪酸ブチルエステル(SFB−2、東新油脂(株)製)を添加して混合し、さらに、3本ロールミルで練肉して、インキベースを得、さらにワニス、ワックス(シャムロック社製、フロロスパース153DM)および大豆油脂肪酸ブチルエステル(SFB−2、東新油脂(株)製)を添加、混合し、L型粘度計(25℃)による粘度値が17〜22Pa・sの実施例1〜3の印刷インキ組成物を得た。
【0047】
比較例1
植物油の脂肪酸エステルと9mlを超えるロジン変性フェノール樹脂とを併用した例で、実施例1と同様の操作を実施し、比較例1の印刷インキ組成物を得た。配合は、表1に示した。
【0048】
比較例2
植物油の脂肪酸エステルをAFソルベント7および大豆白絞油に置換し、9mlを超えるロジン変性フェノール樹脂とを併用した従来品の例で、実施例1と同様の操作を実施し、比較例2の印刷インキ組成物を得た。配合は、表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1(実施例1〜3および比較例1〜2)の印刷インキ組成物について、下記のテーブルテストを行った。その結果を表2に示す。
【0051】
[セット性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をRIテスター((株)明製作所製)でコート紙に展色し、すぐに自動インキセット試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、展色面に重ねた上質紙への印刷インキ組成物の付着度を目視により確認し、付着が認められなくなるまでに要した時間を測定した。この時間が短いほど、セット性が優れる。
【0052】
[乾燥性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をプリューフバウ印刷適性試験機(MZ−II、プリューフバウ(株)社製)を用い、印圧400N、印刷速度10m/秒の条件で、印刷インキ組成物0.2ccをコート紙に展色し、紙面乾燥温度を110〜120℃になるように調節して、試料片を乾燥させた。乾燥させた試料片をすぐに取り出し、指触にて試料片のべた付き具合を評価した。べた付きがないほど、乾燥性が優れる。
べた付きの程度について、○:べた付きがないもの、△:ややべた付きがあるもの(実用上問題ない程度)、×:べた付きがあり、実用できない、の3段階で評価した。
なお、プリューフバウ印刷適性試験機はドイツのFOGRA印刷製版研究所で開発された試験機で印刷インキ組成物の評価に広く用いられている。
【0053】
[タック]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量1.31cc、室温25℃、ローラー温度30℃、回転数400rpmの条件下で1分後の数値(タック値)を測定した。タック値が低いほど、紙剥けしにくくなり、優れる。
【0054】
[機上安定性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量1.31cc、室温25℃、ローラー温度30℃、回転数1200rpmの条件下で0分のタック値と10分後のタック値の差(タック変化)を測定し、評価した。タック変化がより少ないものほど、機上安定性が優れる。
タック変化について、○:4.0未満(機上安定性最良)、△:4.0以上7.0未満(機上安定性良好、実用上問題ない)、×:7.0以上(機上安定性が劣り、実用できない)、の3段階で評価した。
【0055】
上記の他、その他の印刷適性について、以下のテストを行なった。
【0056】
[流動性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をスプレッドメーター((株)東洋精機製作所製)によってインキの広がり(直径;mm)1分値を測定、評価した。広がり直径について、○:39.0mm以上41.0mm未満(実用上最適)、△:38.0mm以上39.0mm未満又は41.0mm以上42.0mm未満(実用上問題ない)、×:38.0mm未満または42.0mm以上(流動性不足または流動性過多により、実用できない)、の3段階で評価した。
【0057】
[光沢]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をRIテスター((株)明製作所製)でコート紙に展色し、光沢度計PG−1(日本電色工業(株)社製、60°)による測定値を評価した。光沢値が高いほど優れる。
光沢値について、○:55.0以上、△:48.0以上、55.0未満(実用上問題ない)、×:48.0未満(光沢が低く、実用できない)、の3段階で評価した。
【0058】
[ミスチング]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量2.62cc、室温25℃、ローラー温度35℃、回転数2000rpmの条件下で、1分間運転した後のインコメーターロールの背面に設置した白紙へ飛散したインキの飛散状態を目視にて評価した。飛散量が少ないほど、ミスチングが優れる。飛散状態について、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の3段階で評価した。
【0059】
[耐摩擦性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物をRIテスター((株)明製作所製)でコート紙に展色し、すぐに温度調整可能なオーブンを用いて、120℃、10秒間、試料片を加熱し、乾燥させた。加熱後、試料片を1分間放冷し、放冷した試料片のインキ面を学振型耐摩擦性試験機にて白紙で擦り、色落ちの程度を目視にて評価した。色落ちが少ないものほど、耐摩擦性が優れる。色落ちの程度について、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の3段階で評価した。
【0060】
[乳化試験]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物についてリソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を使用し、インキ25gを40℃において回転数1200rpmで、インキ25gに対して、2ml/分の速度で水を添加していき、インキが飽和した時点の水分量を測定し、インキ25gに対する重量%とし、評価した。
乳化率(%)=100×(飽和時点の水分量g)/(インキ量g)
乳化率は、印刷機による印刷試験において、概ね30〜50%の範囲であることが好ましい効果が得られることが確認されている。
【0061】
【表2】
【0062】
表2によると、実施例1〜3の印刷インキ組成物と比較して、比較例1の特許文献3に類似したヘプタントレランスが9mlより大きい樹脂を使用した印刷インキ組成物は、セット性、乾燥性、耐摩性が劣り、また流動性が過多となり、ミスチングが劣る結果であった。また、比較例2の従来品の例である印刷インキ組成物は、乾燥性、流動性、光沢、ミスチング、耐摩擦性、乳化の適性については、同等か遜色のないレベルであるが、セット性および機上安定性が劣り、タックが高い結果であった。
【0063】
[実機印刷試験:擦れ汚れ]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物を、4色オフセット輪転機を使用して印刷試験を行ない、擦れ汚れが発生しない紙面温度を調べた。なお、擦れ汚れが発生しない紙面温度とは、ある紙面温度において、印刷機折機から排出された印刷直後の印刷物を適当部数抜き取り、すぐにベタ画像部を指で擦り、その擦れ具合を目視にて判定し、擦れ汚れが発生しなかった場合、乾燥機の設定温度を下げ、同様の作業を擦れ汚れが発生するまで繰り返し行い、擦れ汚れが発生しなかったときの最低の紙面温度とした。
印刷機:(株)小森コーポレーション製 4色オフセット輪転機
印刷回転数:600rpm
印刷版:CTP版
用紙:微塗工紙
紙面温度は、放射温度計IT−540(堀場製作所(株)製)を使用し、乾燥機出口を通過直後の紙面上の温度を測定した。また、同時にその時の乾燥機の設定温度も記録した。
【0064】
[実機印刷試験:着肉性]
実施例1〜3および比較例1〜2の各印刷インキ組成物について、標準的な濃度の印刷物を与えることのできるインキの送り量を測定し、比較例2の従来品を基準として、その増減を%で表示した。
【0065】
[実機印刷試験:ドットゲイン]
上記着肉性試験で得られた印刷物を倍率100倍顕微鏡で網点の太りを観察し、比較例2の従来品を基準として、○:基準より細い、×:基準より太っている、の2段階で評価した。
【0066】
【表3】
【0067】
表3によると、実施例1〜3の印刷インキ組成物は、比較例1〜2と乾燥温度は同程度であるが、着肉性、ドットゲインは明らかに優れていることが分かった。これらの結果から、特定の樹脂と植物油の脂肪酸エステルを併用することで、従来品と同等の乾燥温度において、着肉性が向上しインキ送り量が抑えられることにより、ロングラン印刷時のブランケット上のインキパイリング(ブランパイリング)が軽減し、ブランケット洗浄回数の減少や不要な機械停止の低減など生産効率の向上に寄与するとともに、網点の太りが発生しないことにより、鮮明な印刷物を与えることができ、品質の向上に貢献するという効果を奏する。