(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063238
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】自動車のシートベルト用アンカープリテンショナー
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
B60R22/46
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-270541(P2012-270541)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-46914(P2014-46914A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0095509
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 詩 烈
(72)【発明者】
【氏名】申 忠 植
(72)【発明者】
【氏名】韓 盛 竣
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−052542(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/105278(WO,A1)
【文献】
特開2011−173462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトのウェビングの下端にそれぞれ連結される第1ワイヤー及び第2ワイヤーと、
前記第1ワイヤーと第2ワイヤーの一端に結合されたピストンを有する駆動シリンダーと、
前記ピストンの前進のためのガス圧を駆動シリンダーに供給するガス発生器と、
ピストンの前進時に前記第1ワイヤーを車両の底面の傾斜方向に移動するように支持する第1ローラーと、
ピストンの前進時に前記第2ワイヤーを下方に移動するように支持する第2ローラーと、を含んで構成され、
車両の衝突発生時に前記ピストンが前進することにより、シートベルトのウェビングを第1ワイヤーの移動方向に引っ張ると共に第1ワイヤーの移動方向の直角方向にも引っ張ることを特徴とする自動車のシートベルト用アンカープリテンショナー。
【請求項2】
前記駆動シリンダーには、ピストンの後進を防止するためのボールストッパーが設置されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のシートベルト用アンカープリテンショナー。
【請求項3】
前記ガス発生器は、車両の衝突発生を認識するACU(Anchor pre−tensioner Control Unit)の信号により爆発する火薬の爆発力を用いてピストンを移動させることを特徴とする請求項1に記載の自動車のシートベルト用アンカープリテンショナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーに係り、より詳細には、衝突の発生時にシートベルトのウェビングが乗員の腹部に食い込む現象を改善するための自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車には衝突事故など各種外部衝撃に備えて運転者及び搭乗者が傷害を負うことを防止するためにシートベルトあるいは安全ベルトが設けられている。このようなシートベルトは、自動車の衝突エネルギーにより単独で運転者及び搭乗者などの乗員を保護するが、エアーバック装置の助けを借りて乗員をさらに安全に保護する役割もする。
【0003】
このようなシートベルトには、シートベルトを緩める習慣を有する乗員の安全を保障するために、リトラクタープリテンショナー(Retractor pre−tensioner)以外に、シートベルトのウェビングの弛み(slack)を除去する場合に効果的なアンカープリテンショナーが装着される。
【0004】
シートベルト用アンカープリテンショナーは、自動車の衝突事故の発生時にシートベルトに所定の張力を加えてウェビングの弛み(slack)を除去することにより、シートベルトの乗員初期拘束能力(Initial restraint ability)を向上させることで、乗員の衝突エネルギーを拘束装置(restraint system)が効率的に吸収するように助ける装置である。
【0005】
このようなシートベルトを用いる場合、車両の衝突発生時にサブマリン(Submarine)現象が発生する。サブマリン現象とは、ダミーがシートベルトを基準として相対的に下方に移動する現象である。このようなサブマリン現象が発生する過程で様々な問題が発生するが、そのうち、ダミーの下方移動によりシートベルトのウェビングが相対的に上方移動して腹部に食い込む現象、すなわち、シートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象がある。このようなシートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象は、主に骨盤が小さく、腹部が低い5%ileのダミー条件で発生する。
【0006】
北米NCAPは11MY(MODEL YEAR)車両による正面衝突試験時に5%ile女性ダミーを同乗席に着座して車両を評価しており、韓国では2013年から、ヨーロッパでは2015年からそれぞれ5%ile女性ダミーを同乗席に着座して車両を評価することにより、車両の安全性を強化しようとする。また、中国ではNCAPで2012年から後部座席に5%ileのダミーを着座した条件で車両を評価しており、傷害だけでなくサブマリンが発生したか否かを点検して評価に反映している。
【0007】
サブマリン現象による問題点であるシートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象は、車両衝突時にシートベルトのウェビング部分が上方移動してダミーの骨盤から腹部部位に相対的に移動することにより、筋骨格のない腹部を圧迫して腹部圧迫量が過多発生する現象であるが、上記ウェビングが剛性の弱い腹部にずりあがることにより、骨盤拘束力を低下させてダミーの骨盤移動量を増加させ、それによってダミーの膝傷害を増加させるだけでなく、ダミーの上体挙動を不安定(Instability)にして予測不能のダミー挙動を発生させ、実際現場での衝突事故時に腹部圧迫により乗員の腹部に腸破裂などの傷害を引き起こす虞がある。
【0008】
上述のようなシートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を引き起こす主要因は、車両の車体加速度とピッチング角度(腹部に食い込む現象が多く発生する時点でのピッチング角度)、シートベルトのAPT(Anchor pre−tensioner)交角とバックルの高さ、シートクッションの剛性などがある。
【0009】
したがって、車両の衝突発生時にシートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を改善するためには、上記要因を改善しなければならないが、次のような問題がある。車両の車体加速度は、衝突時に車両に装着された加速度センサにより測定される値であり、車体構造、サッシ構造、エンジンの大きさなどの全体的な車両特性から影響を受けるが、その水準を変更すると、シートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を改善することができる。しかし、車両構造に大きな変化を要求するため、実際にシートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を改善しにくい。
【0010】
車両のピッチング角度は、衝突時に車両の後方部が持ち上げられて回転する量であり、車体構造、サッシ構造、エンジンの大きさなどの全体的な車両特性から影響を受けるが、車両構造を改善することにより、シートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を一部改善することができる。しかし、改善時に車体の減加速度が悪化する問題がある。
【0011】
シートベルトのAPT交角は、アンカープリテンショナーの装着位置とダミーとの間の相対的位置により決められるが、アンカープリテンショナーは、通常Bピラー(Pillar)のそばに配置して装着空間を確保しなければならないため、一度位置が決定されると、部品干渉で位置の移動が困難であり、ダミーは、室内パッケージにより装着位置が決定されるため、その位置を変更しにくい。
【0012】
シートベルトのバックルの高さは、比較的変更が容易であるが、シートベルトのウェビングが腹部に食い込む現象を改善するためにバックルの高さを減らす場合、バックルの使い勝手が良くないなど、品質低下の虞がある。
【0013】
また、シートクッションの剛性は、変更を適用しにくいだけでなく、クッションの剛性を増大させる場合、乗り心地が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−130920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、シートベルトのウェビングが乗員の腹部に食い込む現象を改善するために考案したものであって、第1ワイヤーを用いてウェビングを車両の底面の傾斜方向に引っ張って拘束すると共に第2ワイヤーを用いてウェビングを下方に引っ張る拘束力を発生させて人為的にアンカープリテンショナーの交角を増加させることにより、シートベルトのウェビングが乗員の腹部に食い込むことを防止する自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明による自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーは、シートベルトのウェビングの下端にそれぞれ連結される第1ワイヤー及び第2ワイヤーと、前記第1ワイヤーと第2ワイヤーの一端に結合されたピストンを有する駆動シリンダーと、前記ピストンの前進のためのガス圧を駆動シリンダーに供給するガス発生器と、ピストンの前進時に前記第1ワイヤーを車両の底面の傾斜方向に移動するように支持する第1ローラーと、ピストンの前進時に前記第2ワイヤーを下方に移動するように支持する第2ローラーと、を含んで構成され、車両の衝突発生時に前記ピストンが前進することにより、シートベルトのウェビングを第1ワイヤーの移動方向に引っ張ると共に第1ワイヤーの移動方向の直角方向にも引っ張ることを特徴とする。好ましくは、前記駆動シリンダーには、ピストンの後進を防止するためのボールストッパーが設置構成され、前記ガス発生器は車両の衝突発生を認識するACU(Anchor pre−tensioner Control Unit)の信号により爆発する火薬の爆発力を用いてピストンを移動させるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーによれば、車両の衝突発生時にウェビングの弛み(slack)を除去してシートベルトの乗員拘束力を向上すると共に前記ウェビングを下方に引っ張って従来よりもアンカープリテンショナーの交角を増加させて乗員の腹部にウェビングが食い込む現象を改善することができる。したがって、本発明のシートベルト用アンカープリテンショナーは、車両の衝突事故発生時に乗員安全性を向上させ、また、車両衝突時の性能開発の効率性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による自動車のシートベルト用アンカープリテンショナーの一例を概略的に示す構成図である。
【
図2】本発明によるシートベルト用アンカープリテンショナーの作動形態を概略的に示す図面である。
【
図3】交角が増加する場合、乗員の腹部に作用する力が減少することを概略的に示す図面である。
【
図4】車両の衝突試験時、シートベルトのウェビングがダミーを拘束する荷重を示すグラフである。
【
図5】車両の衝突試験時、シートベルトのウェビングがダミーの右側大腿に作用する荷重を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。本発明は、従来、シートベルトのウェビングの下端部を車両の底面に固定して支持するアンカー部(アンカープリテンショナーを装着していない場合、ウェビングの下端部を車両の底面に固定して支持する部分)の位置に装着されるシートベルト用アンカープリテンショナーに関するもので、作動時にアンカープリテンショナーの交角(以下、交角)を増加させてシートベルトのウェビングが乗員の腹部に食い込む現象を改善することを主な特徴とする。本発明では、車両の衝突発生時に2つのワイヤーを用いてウェビングを車両の底面に対して斜めに傾いた方向に引っ張ると共に下方に引っ張って拘束することにより、作動時に意図的に交角を増加させてシートベルトのウェビングが乗員の腹部に食い込むことを防止する。
【0020】
図1に示したように、本実施形態によるシートベルト用アンカープリテンショナー100は、自動車のシートベルトのウェビング200の下端に連結されてウェビング200を引っ張るように構成されたもので、ウェビング200の下端に連結される第1ワイヤー110と第2ワイヤー120、第1及び第2ワイヤー110、120の一端に一体に結合されたピストン132を有する駆動シリンダー130、第1ワイヤー110を車両の底面の傾斜方向に移動するように支持する第1ローラー140、及び第2ワイヤー120を車両の下方に移動するように支持する第2ローラー150を含んで構成される。
【0021】
第1ワイヤー110と第2ワイヤー120は、それぞれウェビング200の下端とピストン132との間に連結されてピストン132の前進移動時にウェビング200を引っ張るもので、一端がピストン132に結合された形態で駆動シリンダー130内に設置される。
【0022】
駆動シリンダー130は、密閉型のシリンダー131、このシリンダー131内に線形移動可能に設置されるピストン132、このピストン132の後進移動を防止するためのボールストッパー133からなる。
【0023】
シリンダー131の後端にはピストン132の前進移動のためのガス圧を形成して供給するガス発生器160が連結構成される。
【0024】
ガス発生器160は、ACU(Anchor pre−tensioner Control Unit)の信号により作動するもので、車両の衝突発生を認識するACUの点火(firing)信号により爆発する火薬の爆発力を用いてガス圧を形成し、形成されたガス圧でピストン132を前進移動させる。
【0025】
例えば、ACUは、車両の衝突を感知する衝突感知センサから衝突信号を受信して車両の衝突発生を認識する。
【0026】
一例として、ガス発生器160は、ACUに連結された発火剤により爆発してガス圧を生成する火薬、この火薬を貯蔵する火薬貯蔵部162、及び火薬貯蔵部162を収容しているベースカートリッジ161で構成されており、ベースカートリッジ161は、火薬の爆発時に生成されるガス圧の流動のための中空部163を有し、シリンダー131にガスの移動が可能なように連結されることにより、火薬の爆発時に発生する多量のガスと熱量などで生成されたガス圧をピストン132及びシリンダー131内に供給してピストン132の前進移動を可能にする。
【0027】
このようにアンカープリテンショナー100が作動してピストン132が前進移動し、シートベルトのウェビング200が引っ張られると、ウェビング200の弛み(slack)が除去され、初期拘束力が向上してダミーの骨盤移動を減少させるようになり、結局、膝傷害の低減及び上体挙動の安定性を確保することができる。
【0028】
ボールストッパー133は、ピストン132の傾斜面とシリンダー131の内周面に外接して設置される。このボールストッパー133は、ピストン132の前進移動時にはピストン132と共に移動し、ピストン132の後進移動時にはピストン132の傾斜面とシリンダー131の内周面との間に挟まれてピストン132の後進移動を防止することにより、ワイヤー110,120の逆引っ張りを防止する。
【0029】
第1ローラー140と第2ローラー150は、それぞれ第1マウンティングブラケット141と第2マウンティングブラケット151によりシリンダー131の外側に回転可能に装着構成される。
【0030】
駆動シリンダー130の一側に装着されるに当たって、第1ローラー140は、第1ワイヤー110の移動経路を車両の底面の傾斜方向に誘導して形成するための位置に配置され、第2ローラー150は、第2ワイヤー120の移動経路を車両の下方に誘導して形成するための位置に配置される。
【0031】
図1に示すように、第1ローラー140は駆動シリンダー130の後端に配置され、第1ワイヤー110はこのような第1ローラー140により支持されて車両の底面に対して斜めに傾いた方向に移動経路を形成することにより、車両の衝突発生時にウェビング200を引っ張ってウェビングの弛み(slack)を除去することができる。
【0032】
第2ローラー150はベースカートリッジ161あるいは駆動シリンダー130の上端に配置され、第2ワイヤー120はこのような第2ローラー150により支持されて車両の下方に移動経路を形成することにより、車両の衝突発生時にウェビング200を引っ張ってウェビングが既存よりも相対的に下方に移動するようにして乗員の腹部に食い込むことを防止することができる。
【0033】
具体的には、第2ワイヤー120を引っ張る時にウェビング200に作用する力の一部が第1ワイヤー110の引張方向の直角方向にウェビングを拘束するように(あるいは引っ張るように)なり、
図2に示すように、シートベルトのウェビング200が第1ワイヤー110により傾斜方向に引っ張られると共に第2ワイヤー120により下方に引っ張られて第1ローラー140を基準として回転移動し、結果的に交角が増加する効果が得られる。
【0034】
図3に示すように、交角が増加する場合、腹部に作用するウェビングの拘束力(あるいは荷重)が減少してウェビングが乗員の腹部に食い込むことを防止することができる。
【0035】
ここで、第2ワイヤー120は第2ローラー150により支持されて移動方向を転換し、その後、第1ローラー140により支持されて駆動シリンダー130側に誘導されて第1ワイヤー110と共にピストン132に結合される。
【0036】
また、第1ワイヤー110と第2ワイヤー120は、それぞれ長手方向に圧縮及び復元可能な第1コルゲートホース111と第2コルゲートホース121内に配置され、コルゲートホース111、121の上端にワイヤー110、120の一端とウェビング200の下端が同時に結合されるリンク部170が構成されることにより、ワイヤー110、120と共にウェビング200が引っ張られるようになる。
【0037】
第1ローラー140は、第1マウンティングブラケット141とその後方に配置される補助マウンティングブラケット142との間に回転可能に装着され、第1コルゲートホース111は、補助マウンティングブラケット142の上端に載置して固定される。また、第2コルゲートホース121は、ベースカートリッジ161あるいはシリンダー131の上端に載置して固定される。
【0038】
第1コルゲートホース111と第2コルゲートホース121は、リンク部170に同時に結合されるが、相互干渉がないように左右あるいは前後の両側に配置される。
【0039】
さらに、
図2に示す「A」部分は、本実施形態のアンカープリテンショナー100で第2ワイヤー120を排除する場合、アンカープリテンショナーの作動形態を示すもので、第2ワイヤー120により下方に引っ張られる力が作用しないため、本実施形態の交角増加の効果を得ることができない。
【0040】
上記のように構成される本実施形態のシートベルト用アンカープリテンショナーは、作動時に交角が増加することにより、車体の減加速度、乗り心地などの他の性能の低下及び構造干渉を引き起こすことなく、シートベルトが腹部に食い込む現象を改善することができる。
【0041】
一方、交角の増加による効果を確認するために、従来のアンカープリテンショナーと本実施形態のアンカープリテンショナーを用いて、車両の衝突時、シートベルトのウェビングの拘束力とウェビングが腹部に食い込む現象の発生時点、太股及び膝に加えられる荷重などを測定した結果、
図4、
図5、及び下記表1のような結果が得られた。
【0042】
この際、従来のシートベルト用アンカープリテンショナーは、1つのワイヤーを用いてシートベルトのウェビングを車両の底面の傾斜方向にだけ引っ張って拘束するアンカープリテンショナーを用いた。
【0044】
図4、
図5、及び表1に示すように、本実施形態のアンカープリテンショナーを適用した場合、従来のアンカープリテンショナーを適用した場合に比して、腹部に食い込む現象の発生時点が遅く、太股及び膝に作用する荷重が減少し、上体挙動が安定的であることを確認することができた。
【0045】
通常、車両の衝突時にシートベルトのウェビングが腹部に食い込む時点が遅いほどダミーに及ぼす影響が小さく、65msec以後に腹部に食い込む現象の発生すると、ウェビングのダミーへの影響は微々たるものである。
【0046】
したがって、アンカープリテンショナーの交角が増加することにより、シートベルトのウェビングが乗員に及ぼす影響、特に、乗員の腹部に作用する力が顕著に減少することが分かる。
【0047】
図4は、車両の衝突試験時、シートベルトのウェビングがダミーを拘束する荷重を示すグラフであり、
図5は、車両の衝突試験時、シートベルトのウェビングがダミーの右側大腿に作用する荷重を測定して示すグラフである。
【0048】
以上、本発明の一実施形態に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲は上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲で定義する本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100 アンカープリテンショナー
110 第1ワイヤー
111 第1コルゲートホース
120 第2ワイヤー
121 第2コルゲートホース
130 駆動シリンダー
131 シリンダー
132 ピストン
133 ボールストッパー
140 第1ローラー
141 第1マウンティングブラケット
142 補助マウンティングブラケット
150 第2ローラー
151 第2マウンティングブラケット
160 ガス発生器
161 ベースカートリッジ
162 火薬貯蔵部
163 中空部
170 リンク部
200 シートベルトのウェビング