特許第6063244号(P6063244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063244
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】フィルタエレメント
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20170106BHJP
   B01D 29/07 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B01D46/52 A
   B01D29/06 510A
   B01D29/06 510F
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-279893(P2012-279893)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-121687(P2014-121687A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】芳野 穂高
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0022069(US,A1)
【文献】 特開平10−328517(JP,A)
【文献】 特開2004−301121(JP,A)
【文献】 特開2007−077522(JP,A)
【文献】 米国特許第07300486(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0194441(US,A1)
【文献】 特開2010−264332(JP,A)
【文献】 特開2001−046824(JP,A)
【文献】 特開2004−003418(JP,A)
【文献】 特開平10−263348(JP,A)
【文献】 特開平11−280570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/07
B01D 39/00−41/04
B01D 46/00−46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層を積層した不織布を幅方向に沿って所定の大きさにプリーツ折りして形成された濾材と、
軟質材からなると共に、前記濾材の外縁に沿って形成された保持枠と、を備えるフィルタエレメントであって、
一端が前記保持枠の前記幅方向に沿った第1枠と連続すると共に、他端は開放端に形成され、前記幅方向と交差する方向に沿って延びる補強部を備え
前記補強部は、前記一端側で前記濾材の少なくとも前記補強部の延設方向に沿った端部と一体に形成されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタエレメントにおいて、
前記補強部は、一対の前記第1枠と其々連続すると共に、少なくとも一対形成されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタエレメントにおいて、
前記補強部は、前記開放端が夫々相対するように配置されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタエレメントにおいて、
前記補強部は、前記プリーツ折りして形成された濾材の少なくとも3山分に渡って延設されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタエレメントにおいて、
前記保持枠及び前記補強部は、同一の軟質材で一体に形成されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタエレメントにおいて、
前記軟質材は、熱可塑性エラストマであることを特徴とするフィルタエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメントに係り、特に、内燃機関に適用されるエアクリーナ等に用いられるフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布やろ紙等を幅方向に沿ってプリーツ折りした濾材と、該濾材の外縁部を保持する保持枠を備えたフィルタエレメントが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−263348号公報
【0004】
特許文献1に記載されたフィルタエレメントは、濾材と前記濾材を保持する保持枠とを備えたフィルタエレメントであって、前記保持枠の周囲には、パッキンが射出成形によって一体に設けられていることを特徴とする。
【0005】
このように特許文献1に記載されたフィルタエレメントは、パッキンが射出成形によって保持枠の周囲に一体に設けられるため、パッキン嵌め合わせ作業の削減や、部品点数の削減を図ることができ、フィルタエレメントの組立作業性の向上及び製造コストの抑制に寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のフィルタエレメントは、保持枠を熱可塑性の合成樹脂(ポリプロピレンやナイロン等)で構成されている。特に、特許文献1に記載されたフィルタエレメントは、保持枠の周囲にパッキンを一体に形成しているため、保持枠の材料として熱可塑性エラストマが好適に用いられる。
【0007】
また、特許文献1に記載されたフィルタエレメントは、保持枠の補強のためにリブが長手方向に沿って一連に形成されている。このリブは保持枠の補強という作用に加え、プリーツ折りされた濾材の隣り合う襞が接触して張り付くことによって濾過面積が低下することを防止するために、襞間隔を保持するという作用も奏する。
【0008】
このように構成されたフィルタエレメントにおいて、濾材に複数層を接着によって積層した不織布を適用した場合、保持枠が熱可塑性エラストマ等の軟質材で構成されていると、フィルタエレメントを故意に捻じ曲げたり、屈曲させたりすることで、濾材の端部に外力が集中して加わる。このように、濾材の端部に外力が集中すると、端部が変形することによって端部の位置が変位し、該変位によって、接着された積層不織布が剥離する層間剥離や、不織布と保持枠との剥離が生じてしまうという課題を有していた。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数層を接着により積層した不織布を濾材に適用し、軟質材を保持枠に適用したフィルタエレメントに対して、故意に外力が保持枠に加わっても、層間剥離及び不織布と保持枠との剥離を生じることがなく、通気抵抗を増大させることのないフィルタエレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルタエレメントは、複数層を積層した不織布を幅方向に沿って所定の大きさにプリーツ折りして形成された濾材と、軟質材からなると共に、前記濾材の外縁に沿って形成された保持枠と、を備えるフィルタエレメントであって、一端が前記保持枠の前記幅方向に沿った第1枠と連続すると共に、他端は開放端に形成され、前記幅方向と交差する方向に沿って延びる補強部を備え、前記補強部は、前記一端側で前記濾材の少なくとも前記補強部の延設方向に沿った端部と一体に形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記補強部は、一対の前記第1枠と其々連続すると共に、少なくとも一対形成されると好適である。
【0012】
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記補強部は、前記開放端が夫々相対するように配置されると好適である。
【0013】
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記補強部は、前記プリーツ折りして形成された濾材の少なくとも3山分に渡って延設されると好適である。
【0014】
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記保持枠及び前記補強部は、同一の軟質材で一体に形成されると好適である。
【0015】
また、本発明に係るフィルタエレメントにおいて、前記軟質材は、熱可塑性エラストマであると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフィルタエレメントは、一端が前記保持枠の前記幅方向に沿った第1枠と連続すると共に、他端は開放端に形成され、前記幅方向と交差する方向に沿って延びる補強部を備えているので、通気抵抗を大幅に増大させることなく、保持枠に故意に外力が加わった場合であっても濾材端部における層間剥離及び不織布と保持枠との剥離を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係るフィルタエレメントは、補強部は、一対の第1枠と其々連続すると共に、少なくとも一対形成されているので、濾材の両端部における層間剥離及び不織布と保持枠との剥離を防止することができる。
【0019】
また、本発明に係るフィルタエレメントは、補強部は、開放端が夫々相対するように配置されているので、通気抵抗を増大させることがなく、濾過面積を確保することができると共に、濾材端部の補強を確実に行うことができる。
【0020】
また、本発明に係るフィルタエレメントは、補強部がプリーツ折りして形成された濾材の少なくとも3山分に渡って延設されているので、通気抵抗を増大させることがなく、濾過面積を確保することができる。
【0021】
また、本発明に係るフィルタエレメントは、保持枠と補強部が同一の軟質材で一体に形成されているので、部品点数の削減や製造コストの抑制を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係るフィルタエレメントは、軟質材が熱可塑性エラストマで構成されているので、射出成形によって、保持枠と補強部を一体に形成すると共に、保持枠及び補強部に濾材をインサート成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るフィルタエレメントの構成を説明するための斜視図。
図2図1におけるA−A断面図。
図3図2におけるB部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るフィルタエレメントの構成を説明するための斜視図であり、図2は、図1におけるA−A断面図であり、図3は、図2におけるB部拡大図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るフィルタエレメント10は、シート状の不織布を幅方向に沿って所定の山部及び谷部を互い違いに配置するようにプリーツ折りして形成された濾材20と、濾材20の幅方向に沿った外縁に形成された一対の第1枠31と、濾材20の長手方向に沿った外縁に形成された一対の第2枠32とからなる保持枠30を備えている。
【0027】
濾材20は、図3に示すように、例えば、ダストサイド側に設置された粗層21と、クリーンサイド側に設置された密層22とを接着によって積層して形成した積層不織布によって構成されている。フィルタエレメント10は、エアクリーナ等に組み込まれることで、エアクリーナ内をダストサイドとクリーンサイドとに区画している。濾材20は、ダストサイド側の流体を通過させることで、該流体を濾過してクリーンサイド側へ通過させる作用を奏する。この時、濾材20はプリーツ折りされているため、濾過面積を大きく確保することができ、濾過性能の向上とともに、通気抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0028】
保持枠30の外周には、第1枠31及び第2枠32と一体に形成されたシール部33が形成されており、該シール部33によって、エアクリーナ内においてダストサイドとクリーンサイドとを相互にシールしている。なお、本実施形態に係るフィルタエレメント10は、幅方向が長手方向よりも短い細長形状に形成されているため、プリーツ折りされた濾材20の隣り合う襞同士が張り付きにくい構造となっている。
【0029】
また、第1枠31の内周側には、一端が第1枠31と連続すると共に、他端が開放端に形成された補強部40が幅方向と交差する方向に沿って延設されている。さらに、補強部40は、対向する一対の第1枠31から相対するように形成されている。
【0030】
図2に示すように、補強部40は、プリーツ折りされた濾材20の少なくとも3山分に渡って延設されている。このように、補強部40は、一対の補強部の相対する他端が開放端に形成されているため、補強部40を長手方向に沿って一連に形成した場合に比べて濾材20の濾過面積を大きく確保することができると共に、通気抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0031】
なお、保持枠30及び補強部40は軟質材によって構成されており、濾材20をインサート成形すると共に、保持枠30,補強部40及びシール部33を射出成形によって一体に構成することができる。
【0032】
軟質材としては、加硫ゴムと同様な弾性を有する熱可塑性エラストマが好適に用いられ、具体的には、スチレン系熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、ポリエステル系熱可塑性エラストマ、ポリアミド系熱可塑性エラストマ、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマ、塩ビ系熱可塑性エラストマ、またはフッ素系熱可塑性エラストマを用いることができる。これらの熱可塑性エラストマは射出成型機を用いることができ、ゴムと相違して加硫する必要がないため、保持枠30,補強部40及びシール部材33を射出成形によって一体に形成する際の材料として好適である。
【0033】
このように、本実施形態に係るフィルタエレメント10は、補強部40が、一対の補強部の相対する他端が開放端に形成されているため、濾材20が複数層を接着によって積層した不織布で構成し、保持枠30を軟質材で構成した場合であっても、濾材20の端部による層間剥離や不織布と保持枠との剥離を防止すると共に、補強部40を長手方向に沿って一連に形成した場合に比べて濾材20の濾過面積を大きく確保することができ、通気抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0034】
以上説明した本実施形態に係るフィルタエレメントにおいて、濾材20は、粗層21と密層22とを積層した不織布を用いた場合について説明を行ったが、濾材は、これに限られず、例えば、3層以上に構成しても構わない。
【0035】
さらに、本実施形態に係るフィルタエレメントにおいて、濾材20は、接着によって粗層21と密層22とを積層した場合について説明を行ったが、濾材の積層方法はこれに限られず、例えば、熱や超音波を用いた融着やニードルパンチ法を用いて積層した不織布を用いることも可能である。
【0036】
また、本実施形態に係るフィルタエレメントにおいて、補強部40を其々一対形成した場合について説明を行ったが、補強部40の数はこれに限られず、幅広なフィルタエレメントや大型のフィルタエレメントに対しては、例えば、補強部を二対以上形成しても構わない。この場合、フィルタエレメントの幅寸法に応じて、濾材の開口幅が長手方向以下となるように、適宜長手方向に一連に形成したセンターリブを形成することで、隣り合う襞同士の張り付きを防止すると好適である。
【0037】
また、補強部は、一方の第1枠のみから連続するように形成しても構わないし、互いの開放端が相対せずに、幅方向にオフセットして配置しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
10 フィルタエレメント, 20 濾材, 21 粗層, 22 密層, 30 保持枠, 31 第1枠, 32 第2枠, 33 シール部, 40 補強部。
図1
図2
図3