(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明の第1実施の形態における防振装置10が装着される防振ユニット1の平面図であり、
図1(b)は
図1(a)の矢印Ib方向から視た防振ユニット1の正面図である。
【0015】
防振ユニット1は、自動車のエンジン(図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジンの振動を車体(図示せず)へ伝達させないようにするための装置であり、ボス部材11と外筒部材12との間がゴム状弾性材から構成される防振基体13により連結された防振装置10(いずれも
図3参照)と、その防振装置10の外筒部材12を保持すると共にエンジン側に取り付けられる第1ブラケット20と、防振装置10のボス部材11が固定されると共に車体側に取り付けられる第2ブラケット30とを備えている。
【0016】
防振装置10は、軸方向を鉛直方向に一致させた縦姿勢に配置されると共にボス部材11側を下方とした倒立状態に配置され、第2ブラケット30に周囲が取り囲まれる。第1ブラケット20は、防振装置10の側方から径方向外方(軸直角方向、
図1(a)上方)へ向けて水平に張り出される。
【0017】
なお、第1ブラケット20及び第2ブラケット30には、それぞれ3ヶ所に取付穴h1,h2が穿設されており、それら各取付穴h1,h2に挿通されたボルトによりエンジン側および車体側に締結固定される。また、防振装置10及び第1ブラケット20には、ストッパゴムSGが装着され、防振装置10の上面側および第1ブラケット20の本体部21(
図2参照)の外周側がストッパゴムSGにより覆われる。
【0018】
次いで、
図2を参照して第1ブラケット20について説明する。
図2は第1ブラケット20の平面図である。なお、
図2の紙面垂直方向が、防振装置10の圧入方向(即ち、圧入後の軸O方向、
図2参照)に対応する。
【0019】
図2に示すように、第1ブラケット20は、平板状の本体部21と、その本体部21の一側(
図2右側)角部から斜めに延設されるブロック状の延設部22とを主に備える。本体部21の他側(
図2左側)角部および延設部22の両端には、上述した取付穴h1がそれぞれ穿設される。この取付穴h1に挿通されたボルトをエンジン側に螺合することで、下面側(
図2紙面奥側)が取付面となって、エンジン側に締結固定される。
【0020】
本体部21の下方には、上面視円形の圧入穴21aが穿設される。この圧入穴21aには、防振装置10の外筒部材12が軸O方向に圧入され、これにより、防振装置10(外筒部材12)が第1ブラケット20に保持される。また、本体部21の両側面(
図2右側および左側)には、平坦面として形成されるストッパ面21bが形成される。大変位入力時には、このストッパ面21bが、防振装置10に装着されたストッパゴムSG(
図1参照)を介して、第2ブラケット30の立設部材32に当接されることで、ストッパ作用が発揮される。
【0021】
また、防振ユニット1が自動車のエンジンを車体に支持固定した状態(いわゆる1W状態)では、エンジンの重量により、防振基体13が圧縮変形され、その分、防振装置10の上端側と第2ブラケット30の接続部材33との間に所定の隙間が形成される。
【0022】
次いで、
図3を参照して、防振ユニット1を構成する防振装置10について説明する。
図3は防振装置10の断面図であり、軸Oを含む平面で切断した縦断面に対応する。
図3に示すように、防振装置10は、第2ブラケット30(
図1参照)を介して車体側に取り付けられるボス部材11(
図1参照)と、第1ブラケット20を介してエンジン側に取り付けられる筒状の外筒部材12と、これら両部材11,12を連結すると共にゴム状弾性材から構成される防振基体13とを主に備える。
【0023】
ボス部材11は、上窄まりの断面略円錐台形状に形成される基部11aと、その基部11aの下面に凹設された孔部11bとを備えている。孔部11bは、下方(
図3下側)へ突出する軸部(図示せず)が螺着される部位であり、軸部は、軸部の突出先端から径方向外方へ向けて張り出す張出部(図示せず)を備えている。軸部および張出部はアルミニウム合金から一体に形成され、基部11a及び軸部は軸O回りに対称に形成される。
【0024】
外筒部材12は、鉄鋼材料から上下端(
図3上側および下側)が開口した筒状に形成され、ボス部材11の上方(
図3上側)に同軸状に配設される。なお、外筒部材12は、段差を有して構成されており、その段差の下側(
図3下側)に大径の筒部が、段差の上側(
図3上側)に小径の筒部が、それぞれ配設されると共に、大径の筒部が第1ブラケット20に軸方向に圧入され保持される。
【0025】
防振基体13は、ゴム状弾性材から軸O回りに対称な下窄まりの断面略円錐台形状に形成され、ボス部材11の基部11aにおける外面と外筒部材12の内壁面との間に加硫接着される。外筒部材12の上端側には、取付板14及びダイヤフラム16が配設され、外筒部材12の内部には、仕切部材17及び弾性仕切膜18が配設される。
【0026】
取付板14は、外筒部材12の先端側が固着される環状の板材であり、板厚方向(
図2上下方向)に貫通する貫通孔15が形成されている。ダイヤフラム16は、ゴム状弾性材から部分球状を有するゴム膜状に形成され、ゴム状弾性材により一体に形成された円環状の外周部16aが、取付板14の上面(
図3上側)及び内周面に加硫接着される。その結果、ダイヤフラム16の下面側と防振基体13の上面側との間に、液体が封入される液室が形成される。液室には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。
【0027】
ダイヤフラム16の外周部16aは、連通孔16bが厚さ方向に貫通形成される。連通孔16bは、取付板14に貫通形成された貫通孔15に対応する位置に設けられている。連通孔16bは、貫通孔15を通して液室に液体を注入するためのノズル(後述する)が挿入される部位である。
【0028】
仕切部材17は、液室を防振基体13側の第1液室L1とダイヤフラム側の第2液室L2とに仕切る部材であり、その外周側には、第1液室L1と第2液室L2とを連通させるオリフィス流路が形成される。防振装置10は、第1液室L1及び第2液室L2に充填された液体が、振動発生時にオリフィス流路を通過する際の抵抗によって振動を吸収する。
【0029】
また、仕切部材17の中央には、複数の開口がそれぞれ形成された一対の対向壁が対向配置され、その対向間にゴム状弾性材から円板状に形成された弾性仕切膜18が収納される。なお、防振装置10を倒立配置して、ボス部材11を車体側に取り付けると共に、外筒部材12を車体側に取り付けることで、仕切部材17から車体側までの振動伝達経路の一部を防振基体13によって構成することができる。よって、弾性仕切膜18が仕切部材17の対向壁に衝突して振動した場合には、その振動が車体側へ伝達されることを、振動伝達経路の一部を構成する防振基体13の振動絶縁効果により確実に抑制して異音の発生を低減できる。
【0030】
次に
図4を参照して、防振装置10へ液体を充填する液体充填装置40の動作について説明する。
図4は防振装置10に液体を充填する液体充填装置40の模式図である。液体充填装置40は、防振装置10の貫通孔15に接続されるノズル41と、ノズル41に連通する吸気管42と、吸気管42の基端部に接続され防振装置10内を減圧する真空ポンプ44と、ノズル41に連通する注液管45と、注液管45の基端部に接続され防振装置10内に供給する液体が貯留されるタンク47とを備えている。吸気管42を開閉する吸気バルブ43が吸気管42に配設され、注液管45を開閉する注液バルブ46が注液管45に配設されている。
【0031】
液体充填装置40は、まず、吸気バルブ43及び注液バルブ46を閉止した状態で、防振装置10の取付板14に形成された貫通孔15にノズル41の先端を接続した後、真空ポンプ44を作動すると共に吸気バルブ43を開放する。その結果、防振装置10の液室(第1液室L1及び第2液室L2)となる空間内の空気が徐々に排出され、この空間内が減圧される。
【0032】
次いで、吸気バルブ43を閉止すると共に真空ポンプ44の作動を停止した後、注液バルブ46を開放する。その結果、タンク47に貯留された液体が、注液管45及びノズル41を通って貫通孔15から防振装置10の空間内に注入(吸引)される。防振装置10の空間内に液体が充填されると、その空間が液室(第1液室L1及び第2液室L2)となる。
【0033】
必要量の液体が防振装置10に充填されたら、注液バルブ46を閉止した後、ノズル41を防振装置10から取り外す。次いで、公知の球状部材やブラインドリベット等の封止部材(図示せず)により貫通孔15を封止する。液体が液室(第1液室L1及び第2液室L2)に充填されると共に貫通孔15が封止された防振装置10は、第1ブラケット20及び第2ブラケット30を介してエンジン側(振動発生側)と車体側(振動受け側)との間に取り付けられる。
【0034】
なお、液体充填装置40を用いて防振装置10に液体を充填する場合には、ノズル41と貫通孔15との接続部から空気が混入しないように、その接続部のシール性を確保する必要がある。接続部のシール性が低下すると、真空ポンプ44を用いて防振装置10の空間内を減圧する場合に防振装置10内の真空度(減圧度)が低下し、タンク47から液体を注入する場合に防振装置10の液室に空気が混入する。防振装置10の液室に空気が混入すると、防振装置10の防振性能が低下するからである。
【0035】
次に
図5を参照して、液体を充填するときのシール性を確保するためのシール構造について説明する。
図5はダイヤフラム16及び取付板14の断面図である。なお、
図5は軸Oを含む平面で切断した縦断面の図示であるが、軸O(中心線)を中心とした一方(
図3左半分)の断面を図示し、他方(
図3右半分)の図示を省略している(以下、
図6から
図10について同じ)。
【0036】
図5に示すように、貫通孔15は、取付板14の上面14a側(一端側)の内周面にテーパ部15aが連成されている。テーパ部15aは、上面14a側(一端側)が下面側(他端側、
図5下側)より拡径される円錐状の部位であり、液体が充填された後に貫通孔15に圧入される球状部材Bからなる封止部材を係止可能に構成される部位である。後述するように球状部材Bを貫通孔15に圧入することで、貫通孔15を封止して液体を防振装置10に封入できる。
【0037】
外周部16aは、取付板14の上面14a及び内周面14bに加硫接着されている。取付板14の上面14aだけでなく内周面14bにも外周部16aを接着することで、取付板14の上面14aだけに外周部16aを接着する場合と比較して、取付板14に対する外周部16aの接着面積を増加させることができ、ダイヤフラム16(外周部16a)の接着強度を確保できる。
【0038】
外周部16aは、取付板14に形成された貫通孔15と連通する位置に連通孔16bが形成されている。連通孔16bはノズル41が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔15及びテーパ部15aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔16bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔15及びテーパ部15aと同心状に形成されている。
【0039】
また、外周部16aは、連通孔16bの内面から貫通孔15に向かってゴム膜状の延設部16cが延設されている。延設部16cは、環状に形成され取付板14の上面14aに加硫接着されている。延設部16cは、径方向内側の先端が、テーパ部15aの外周と間隔をあけて設けられているので、ゴム状弾性材のはみ出し(バリ)が生じた場合に、そのバリがテーパ部15a(貫通孔15)内に進入することを抑制できる。
【0040】
延設部16cの径方向内側の先端には、環状のリップ部16dが軸方向(
図5上下方向)に隆起されている。ダイヤフラム16、外周部16a、延設部16c及びリップ部16dはゴム状弾性材から一体に構成されており、外周部16a及び延設部16cは取付板14の上面14aに加硫接着されている。なお、本実施の形態では、リップ部16dは断面円弧状(半円状)に形成されている。
【0041】
延設部16cは、ダイヤフラム16(外周部16a)とリップ部16dとを連結するための部位である。延設部16cを省略する場合には、ゴム状弾性材をリップ部16dに注入するための注入口を加硫成形型に設ける必要があるところ、延設部16cによりダイヤフラム16(外周部16a)とリップ部16dとが連結されるので、リップ部16dに注入口を設けることを省略して、ダイヤフラム16、外周部16a、延設部16c及びリップ部16dをゴム状弾性材から一体に構成できる。
【0042】
ここで、連通孔16bの内径はノズル41の外径よりわずかに大きい値に設定されている。よって、連通孔16bにノズル41を挿入すると、連通孔16bと同心状に形成された貫通孔15にノズル41の先端を案内することができる。また、リップ部16dの外径(
図5左右方向における長さ)は、ノズル41の内径よりわずかに大きめに設定されており、連通孔16bとリップ部16dとの間隔(連通孔16bの内面とリップ部16dの外面との間隔)は、ノズル41の肉厚よりわずかに大きめに設定されている。これにより、ノズル41の端面を延設部16cに押し付けると、リップ部16dが径方向(
図5左右方向)に圧縮変形する。その結果、リップ部16d(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。
【0043】
また、リップ部16dが断面円弧状(半円状)に形成されているので、ノズル41によるリップ部16dの挟み込み(噛み込み)を防止しつつ、ノズル41の端面(内面)との面圧を確保できる。よって、リップ部16dによるシール性を安定して確保できる。
【0044】
なお、延設部16cが、軸方向(
図5上下方向)に圧縮変形可能な厚さに設定される場合には、ノズル41の端面を延設部16cに押し付けると、延設部16cが軸方向(
図5上下方向)に圧縮変形すると共に、リップ部16dが径方向(
図5左右方向)に圧縮変形する。その結果、延設部16c及びリップ部16d(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。
【0045】
この場合、リップ部16dは必ずしも必要ではない。延設部16cの厚さは軸方向に圧縮変形可能な厚さに設定されているので、ノズル41の端面を延設部16cに均等に押し付けることで、延設部16cによりシール性を確保できるからである。しかし、この場合、延設部16cに対してノズル41の端面が傾くと、延設部16cの面圧にばらつきが生じる。延設部16cの面圧にばらつきが生じると、面圧の小さいところから空気や液体が漏洩する可能性がある。リップ部16dを設けることで、この問題を解消することができ、延設部16cの面圧にばらつきが生じた場合でもリップ部16dがノズル41の端面に密着するので、シール性の低下を防止できる。
【0046】
また、延設部16c及びリップ部16d(シール部)は、貫通孔15aの一端側の周囲に加硫接着される外周部16aを構成するゴム状弾性材と一体的に形成されるので、液体充填装置40はノズル41に配置するOリングを省略できる。延設部16c及びリップ部16dは、ダイヤフラム16と一体的に形成されると共に、シール部として防振装置10の製造時に1度だけ使用されるので、シール部の脱落や繰返し使用によるシール部の劣化は生じない。よって、液体の充填作業におけるシール部の経時劣化や脱落によるシール性の低下を防止できる。さらに、Oリングの定期的な交換を不要にできるので、液体充填装置40のメンテナンスを簡素化できる。
【0047】
また、防振装置10は、環状の取付板14にダイヤフラム16の外周部16aが加硫接着され、取付板14の厚さ方向に貫通孔15が貫通形成されている。ダイヤフラム16の外周部16aの厚さ方向に連通孔16bが貫通形成され、連通孔16bは貫通孔15の一端側(上面14a側)で貫通孔15と連通している。延設部16c及びリップ部16d(シール部)は、ダイヤフラム16の外周部16aと一体に形成されているので、ダイヤフラム16の外周部16aを取付板14に加硫接着しつつ、取付板14の上面14a側にシール部を形成できる。取付板14の上面14aは液室(第2液室L2)の外面に相当するので、シール部の成形を容易にできる。
【0048】
これに対し、液室の内面にゴム状弾性体を設ける場合(第1実施の形態における防振装置10とは異なり、取付板14の下面(上面14aの反対面)にゴム状弾性体が加硫接着される場合)、ゴム状弾性体と一体的にシール部を液室の外面(取付板14の上面14a)に加硫成形するには、液室の内面のゴム状弾性体と液室の外面のシール部とを貫通孔15を通して連結する必要がある。即ち、貫通孔15の内面をゴム状弾性材で覆う必要がある。しかし、貫通孔15の孔径が小さいので、貫通孔15の内面をゴム状弾性材で覆うのは困難であると共に、貫通孔15がゴム状弾性材で閉塞されるのを防ぐための細いピンを加硫成形型に設ける必要がある。ピンは細くて折れ易いので、加硫成形型のメンテナンスが煩雑化する。本実施の形態における防振装置1によれば、これらの問題を解決でき、貫通孔15の内面をゴム状弾性材で覆うことなく液室の外面にシール部を容易に成形でき、さらに加硫成形型のメンテナンスを簡素化できる。
【0049】
また、外周部16aは連通孔16bが形成されることで、連通孔16bの周囲に堤部16a1が設けられる。堤部16a1は、液体充填装置40によって防振装置10に液体を充填してノズル41を引き上げるときにノズル41から漏れ出た液体(貫通孔15から溢れた液体)を貯留するための部位である。取付板14の上面14aに接着された外周部16aの上面14aからの厚さ(
図5上下方向)は、外周部16aの径方向外側(
図5左側)に対して径方向内側(
図5右側)が肉薄に形成されているので、堤部16a1は、外周部16aの径方向外側(
図5左側)に対して径方向内側(
図5右側)の高さが低く設定される。堤部16a1の高さまで液体を貯留できるので、防振装置10を水平に保った状態で貫通孔15から液体を注入したときの最高液位(液位の最大高)は、堤部16a1の高さと同一である。
【0050】
ここで、堤部16a1の高さ及びテーパ部15aの深さは、テーパ部15aに係止された球状部材B(封止部材)の上端が堤部16a1より低くなるように設定される。これにより、ノズル41を通して注入される液体を防振装置10に貯留すると、テーパ部15aに係止された球状部材Bを液体に没入させることができる。テーパ部15aに係止された球状部材Bの一部(上端側)が液体の液面から露呈して空気と接触している場合には、球状部材Bを貫通孔15に圧入するときに、球状部材Bと一緒に貫通孔15(液室)に空気が混入する可能性がある。液室に空気が混入すると、防振装置10の防振性能が低下するおそれがある。これに対し、液体に没入させた球状部材Bを貫通孔15に圧入することで、球状部材Bを貫通孔15に圧入するときに、貫通孔15内に空気が混入することを抑制できる。その結果、防振装置10の防振性能を安定的に確保できる。
【0051】
また、延設部16c及びリップ部16dは、ノズル41と干渉して弾性変形するが、球状部材B(封止部材)に対して非干渉とされる。球状部材Bに対して延設部16c及びリップ部16d(シール部)が干渉するときには、各部材の公差等が原因で、球状部材Bによるシール部の締め代を一定にできず、シール部の圧縮にばらつきが発生することがある。その結果、シール部の圧縮が不十分となるものが発生することがある。シール部の圧縮が不十分となると、貫通孔から液体が漏洩したり液室に空気が導入されたりする不具合の原因となる。
【0052】
これに対し、球状部材B(封止部材)に対して延設部16c及びリップ部16d(シール部)を非干渉とすることにより、球状部材Bによる貫通孔15のシール性にシール部が影響を与えなくなるので、球状部材B(封止部材)による貫通孔15のシール性を安定にできる。その結果、防振装置10に液体漏洩等の不具合が発生するのを防止できる。
【0053】
次に
図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、リップ部16dが断面円弧状(半円状)に形成されると共に、貫通孔15に形成されるテーパ部15aにより球状部材B(封止部材)が係止される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、リップ部116dが断面三角状に形成されると共に、貫通孔115に形成される段差部115aにより球状部材(図示せず)が係止される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第2実施の形態における防振装置110のダイヤフラム116及び取付板14の断面図である。
【0054】
図6に示すように、取付板14を厚さ方向に貫通する貫通孔115は、取付板14の上面14a側(一端側)の内周面に段差部115aが連成されている。段差部115aは、上面14a側(一端側)が下面側(貫通孔115)より拡径される円筒状の部位であり、液体が充填された後に貫通孔115に圧入される封止部材(図示せず)を係止可能に構成される部位である。
【0055】
ダイヤフラム116の外周部116aは、取付板14に形成された貫通孔115と連通する位置に連通孔116bが形成されている。連通孔116bはノズル41(
図5参照)が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔115及び段差部115aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔116bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔115及び段差部115aと同心状に形成されている。
【0056】
外周部116aは、連通孔116bの内面から貫通孔115に向かってゴム膜状の延設部116cが延設されている。延設部116cは、環状に形成され取付板14の上面14aに加硫接着されている。延設部116cの径方向内側の先端には、環状のリップ部116dが隆起されている。ダイヤフラム116、外周部116a、延設部116c及びリップ部116dはゴム状弾性材から一体に構成されており、外周部116a及び延設部116cは取付板14の上面14aに加硫接着されている。なお、本実施の形態では、リップ部116dは断面三角状に形成されている。
【0057】
ここで、連通孔116bの内径はノズル41(
図5参照)の外径よりわずかに大きい値に設定されている。よって、連通孔116bにノズル41を挿入すると、連通孔116bと同心状に形成された貫通孔115にノズル41の先端を案内することができる。また、リップ部116dの外径(
図6左右方向における長さ)は、ノズル41の内径よりわずかに大きめに設定されており、連通孔116bとリップ部116dとの間隔(連通孔116bの内面とリップ部116dの外面との間隔)は、ノズル41の肉厚よりわずかに大きめに設定されている。また、延設部116cの厚さは、軸方向(
図6上下方向)に圧縮変形可能な厚さに設定されている。
【0058】
これにより、ノズル41の端面を延設部116cに押し付けると、延設部116cが軸方向(
図6上下方向)に圧縮変形すると共に、リップ部116dが径方向(
図6左右方向)に圧縮変形する。その結果、延設部116c及びリップ部116d(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。また、リップ部116dは断面三角状に形成されているので、ノズル41によるリップ部116dの挟み込み(噛み込み)を防止して、リップ部116dによるシール性を確保できる。
【0059】
次に
図7を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、リップ部16dが断面円弧状(半円状)に形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、リップ部216dが断面矩形状に形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第3実施の形態における防振装置210のダイヤフラム216及び取付板14の断面図である。
【0060】
図7に示すように、ダイヤフラム216の外周部216aは、取付板14に形成された貫通孔15と連通する位置に連通孔216bが形成されている。連通孔216bはノズル41(
図5参照)が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔15及びテーパ部15aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔216bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔15及びテーパ部15aと同心状に形成されている。
【0061】
外周部216aは、連通孔216bの内面から貫通孔15に向かってゴム膜状の延設部216cが延設されている。延設部216cは、環状に形成され取付板14の上面14aに加硫接着されている。延設部216cの径方向内側の先端には、環状のリップ部216dが隆起されている。ダイヤフラム216、外周部216a、延設部216c及びリップ部216dはゴム状弾性材から一体に構成されており、外周部216a及び延設部216cは取付板14の上面14aに加硫接着されている。なお、本実施の形態では、リップ部216dは断面矩形状に形成されている。
【0062】
ここで、連通孔216bの内径はノズル41(
図5参照)の外径よりわずかに大きい値に設定されている。よって、連通孔216bにノズル41を挿入すると、連通孔216bと同心状に形成された貫通孔15にノズル41の先端を案内することができる。また、リップ部216dの外径(
図7左右方向における長さ)は、ノズル41の内径よりわずかに大きめに設定されており、連通孔216bとリップ部216dとの間隔(連通孔216bの内面とリップ部216dの外面との間隔)は、ノズル41の肉厚よりわずかに大きめに設定されている。また、延設部216cの厚さは、軸方向(
図7上下方向)に圧縮変形可能な厚さに設定されている。
【0063】
これにより、ノズル41の端面を延設部216cに押し付けると、延設部216cが軸方向(
図7上下方向)に圧縮変形すると共に、リップ部216dが径方向(
図7左右方向)に圧縮変形する。その結果、延設部216c及びリップ部216d(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。また、リップ部216dは断面矩形状に形成されているので、ノズル41の端面(内面)との接触面積を確保できる。よって、リップ部216dによるシール性を確保できる。
【0064】
次に
図8を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、リップ部16d,116d,216dが取付板14の上面14aに形成される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、リップ部316cが連通孔316bの内周面に突設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8は第4実施の形態における防振装置310のダイヤフラム316及び取付板14の断面図である。
【0065】
図8に示すように、ダイヤフラム316の外周部316aは、取付板14に形成された貫通孔15と連通する位置に連通孔316bが形成されている。連通孔316bはノズル41(
図5参照)が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔15及びテーパ部15aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔316bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔15及びテーパ部15aと同心状に形成されている。
【0066】
外周部316aは、連通孔316bの径方向内側に向かって連通孔316bの内面にリップ部316cが突設される。リップ部316cは、連通孔316bの周方向に連続して環状に形成される。ダイヤフラム316、外周部316a及びリップ部316cはゴム状弾性材から一体に構成されている。なお、本実施の形態では、リップ部316cは断面円弧状(半円状)に形成されており、周方向に亘って取付板14の上面14aから少し離れた位置に設けられている。
【0067】
リップ部316cの内径はノズル41(
図5参照)の外径より少し小さい値に設定されている。よって、連通孔316bにノズル41を挿入すると、ノズル41の外周面によって径方向外側(
図8左右方向)にリップ部316cが押し広げられて、リップ316cが圧縮変形する。その結果、リップ部316c(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。
【0068】
次に
図9を参照して第5実施の形態について説明する。第4実施の形態では、連通孔316bの内周に突設されるリップ部316cが、取付板14の上面14aから少し離れた位置にアンダーカット形状となるように設けられた場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、リップ部416cがアンダーカット形状となるのを防ぐため、取付板14の上面14aに接着される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図9は第5実施の形態における防振装置410のダイヤフラム416及び取付板14の断面図である。
【0069】
図9に示すように、ダイヤフラム416の外周部416aは、取付板14に形成された貫通孔15と連通する位置に連通孔416bが形成されている。連通孔416bはノズル41(
図5参照)が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔15及びテーパ部15aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔416bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔15及びテーパ部15aと同心状に形成されている。
【0070】
外周部416aは、連通孔416bの径方向内側に向かって連通孔416bの内面にリップ部416cが突設される。リップ部416cは、連通孔416bの周方向に連続して環状に形成されると共に、周方向に亘って取付板14の上面14aに加硫接着されている。アンダーカット形状となるのを防ぐため、連通孔416b及びリップ部416cは、取付板14の上面14aから離れるにつれて(高さが増すにつれて)、内径が同一ないしは大きくなるように設定されている。これにより、ダイヤフラム416及びリップ部416cの加硫成形のときに加硫成形型の型開き方向に離型できるので、加硫成形型の設計の自由度を確保できる。
【0071】
リップ部416cの内径はノズル41(
図5参照)の外径より少し小さい値に設定されている。よって、連通孔416bにノズル41を挿入すると、ノズル41の外周面によって径方向外側(
図9左右方向)にリップ部416cが押し広げられて、リップ416cが圧縮変形する。その結果、リップ部416c(シール部)によりノズル41に対するシール性を確保できる。
【0072】
次に
図10を参照して第6実施の形態について説明する。第1実施の形態から第5実施の形態では、連通孔16b,116b,216b,316b,416bの周囲の堤部の高さが、外周部16a,116a,216a,316a,416aの径方向外側で大きく、径方向内側で小さく形成される場合、即ち、堤部の高さが周方向(連通孔の周り)で異なる場合について説明した。これに対し第6実施の形態では、連通孔516bの周囲の堤部516a1の高さが、連通孔516bの周りで一定に設定される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図10は第6実施の形態における防振装置510のダイヤフラム516及び取付板14の断面図である。
【0073】
図10に示すように、ダイヤフラム516の外周部516aは、取付板14に形成された貫通孔15と連通する位置に連通孔516bが形成されている。取付板14の上面14aに位置する外周部516aの厚さは、外周部516aの径方向外側(
図10左側)から径方向内側(
図10右側)に亘って略同一の厚さに設定されている。従って、連通孔516bの周囲に位置する堤部516a1は、高さが、連通孔516bの周りで略一定となる。
【0074】
連通孔516bはノズル41(
図5参照)が挿入される部位であり、内径が、ノズル41の外径より大きい値で、且つ、貫通孔15及びテーパ部15aの内径よりも大きい値に設定されている。また、連通孔516bは、平面視して略円形状の孔部であり、貫通孔15及びテーパ部15aと同心状に形成されている。
【0075】
外周部516aは、連通孔516bの内面から貫通孔15に向かってゴム膜状の延設部516cが延設されている。延設部516cは、環状に形成され取付板14の上面14aに加硫接着されている。延設部516cの径方向内側の先端には、環状のリップ部516dが隆起されている。ダイヤフラム516、外周部516a、延設部516c及びリップ部516dはゴム状弾性材から一体に構成されており、外周部516a及び延設部516cは取付板14の上面14aに加硫接着されている。延設部516c及びリップ部516dの構成は、第1実施の形態から第3実施の形態で説明した延設部およびリップ部の構成と同様なので、以下の説明を省略する。
【0076】
防振装置510によれば、連通孔516bの周囲の堤部516a1の高さが、連通孔516bの周りで一定に設定されているので、防振装置510を水平に保った状態で貫通孔15から液体を注入したときの最高液位(堤部516a1に貯留される液位の最大高)を最大限に確保できる。また、堤部516a1の高さ及びテーパ部15aの深さは、テーパ部15aに係止された球状部材B(封止部材)の上端が堤部516a1より低くなるように設定される。これにより、テーパ部15aに係止された球状部材Bを、堤部516a1に貯留された液体に確実に没入させることができる。液体に没入させた球状部材Bを貫通孔15に圧入することで、球状部材Bを貫通孔15に圧入するときに、貫通孔15内に空気が混入することを抑制できる。その結果、防振装置510の防振性能を安定的に確保できる。
【0077】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0078】
また、上記の各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、一実施形態におけるリップ部16d,116d,216d,316c,416c,516dのいずれかを、他の実施形態における断面形状の異なるリップ部に置き換えることは可能である。従って、例えば、第4実施の形態(
図8参照)におけるリップ部316cの断面形状を略三角状や略矩形状等にすることは可能である。
【0079】
上記各実施の形態では、球状部材Bを圧入して貫通孔15,115を封止する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の公知の封止部材を用いて貫通孔15,115を封止することは当然可能である。他の封止部材としては、例えばブラインドリベットを挙げることができる。ブラインドリベット等の他の封止部材を用いる場合も、リップ部16d,116d,216d,316c,416c,516dは封止部材に対して非干渉とされる。これにより、リップ部16d,116d,216d,316c,416c,516dの面圧の小さいところから空気や液体が漏洩する不具合が生じることを防止できる。
【0080】
第6実施の形態(
図10参照)では、延設部516cやリップ部516dの弾性変形を利用してノズル41をシールする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。延設部516c及びリップ部516dを省略して、その代わりに、連通孔516bの孔径を、ノズル41の孔径より小さく、且つ、テーパ部15aの孔径より大きく設定して、堤部516a1にノズル41の端面を押し当てるようにすることは当然可能である。この場合は、ノズル41の端面により堤部516a1が軸方向(
図10上下方向)に圧縮されるので、その復元力を利用してシールを行うことができる。延設部516c及びリップ部516dを省略できるので、加硫成形型の構造を簡素化できる。
【0081】
なお、第6実施の形態(
図10参照)において、ノズル41よりも外径が大きく、堤部516a1に端面を当接することが可能な別のノズルを液体充填装置40に装着して、防振装置510の脱気および注液を行うことは可能である。防振装置510は、連通孔516bの周囲の堤部516a1の高さが連通孔516bの周りで一定に設定されているので、端面(先端)がフラットな汎用のノズルを用いて、堤部516a1とノズルの端面とを密接させることができる。
【0082】
上記各実施の形態では、テーパ部15aや段差部115aの内径よりノズル41の先端の外径を大きな値に設定して、ノズル41の先端が、テーパ部15aや段差部115a及び貫通孔15,115に挿入されないようにした。テーパ部15aや段差部115aにノズル41の先端が挿入されるものであると、テーパ部15aや段差部115aに挿入されたノズル41の嵩の分だけ、液室に注入される液体の量が目減りする。取付板14の上面14a(又は延設部16c,116c,216c,516c)にノズル41の先端が突き当たるようにすることで、テーパ部15aや段差部115aにノズル41の先端が挿入されることを阻止して、液室に注入される液体の量が目減りすることを防止できる。
【0083】
上記各実施の形態では、貫通孔15,115にテーパ部15a又は段差部115aが形成される場合について説明したが、テーパ部15aや段差部115aは必ずしも必要ではない。
【0084】
上記各実施の形態では、取付板14に貫通孔15が貫通形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、防振基体13を介して振動発生側(エンジン側)又は振動受け側(車体側)に連結される他の部材に、貫通孔を形成することは当然可能である。他の部材としては、例えば外筒部材12、基部11a等が挙げられる。外筒部材12、基部11a等は外表面が湾曲しているので、ノズル41の端面(先端面)の形状は、湾曲した外表面に対応する湾曲形状とする。
【0085】
上記各実施の形態では、防振装置10の外筒部材12や取付板14等の各部材が鉄鋼材料(金属材料)から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。防振装置10の外筒部材12や取付板14等の各部材を合成樹脂材料から形成することは当然可能である。合成樹脂材料としては、例えば、成形性に優れる熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックを用いることにより、機械的強度を向上させることができる。さらに、それら合成樹脂材料をガラス等の繊維により強化した繊維強化プラスチックを用いることは当然可能である。外筒部材12や取付板14等の各部材を合成樹脂材料から形成した場合には、それらの部材を圧入やカシメ等により接合するのではなく、溶着により接合することが可能である。
<その他>
<手段>
技術的思想1の防振装置は、振動発生側または振動受け側の一方に連結される第1取付部材と、振動発生側または振動受け側の他方に連結される第2取付部材と、前記第1取付部材および前記第2取付部材を弾性変形可能に連結しゴム状弾性材から構成される防振基体と、前記防振基体を隔壁の一部として液体が充填される液室と、前記液室に連通すると共に前記第1取付部材および前記第2取付部材のいずれかを貫通し、一端側からノズルを通して前記液室に液体を注入する貫通孔と、前記貫通孔の一端側から挿入され前記貫通孔を封止し前記液室に充填された液体の漏洩を阻止する封止部材とを備える防振装置において、前記貫通孔の一端側の周囲に配置されると共に、前記貫通孔の一端側の周囲に加硫接着されるゴム状弾性材と一体的に形成され、前記ノズルの端面または外周面と干渉して弾性変形するシール部を備えている。
技術的思想2の防振装置は、技術的思想1記載の防振装置であって、前記シール部は、前記封止部材に対して非干渉とする。
技術的思想3の防振装置は、技術的思想1又は2に記載の防振装置であって、前記液室は、前記防振基体を隔壁の一部として形成される第1液室と、オリフィス通路が形成された仕切部材により前記第1液室と連通しつつ区画されると共に、隔壁の少なくとも一部がゴム状弾性膜からなるダイヤフラムで形成される第2液室とを備え、前記ダイヤフラムの外周部が加硫接着される環状の取付板を備え、前記貫通孔は、前記取付板の厚さ方向に貫通形成されると共に、前記ダイヤフラムの外周部の厚さ方向に貫通形成される連通孔と前記貫通孔の一端側で連通し、前記シール部は、前記ダイヤフラムの外周部と一体に形成されている。
技術的思想4の防振装置は、技術的思想1から3のいずれかに記載の防振装置であって、前記封止部材は、前記貫通孔に圧入される球状部材であり、前記貫通孔は、一端側の内周面に形成されると共に一端側が他端側より拡径され、圧入される前の前記封止部材を係止可能に構成される段差部またはテーパ部を備え、前記シール部と一体に前記貫通孔の一端側の周囲に形成されると共に、前記ノズルを通して注入される液体を貯留し、前記段差部または前記テーパ部に係止される前記封止部材の上端より高く設定された堤部を備えている。
<効果>
技術的思想1記載の防振装置によれば、振動発生側または振動受け側の一方に第1取付部材が連結され、振動発生側または振動受け側の他方に第2取付部材が連結される。第1取付部材および第2取付部材が、ゴム状弾性材から構成される防振基体により弾性変形可能に連結され、防振基体を隔壁の一部とする液室に液体が充填される。液室に貫通孔が連通し、その貫通孔は、第1取付部材および第2取付部材のいずれかを貫通する。貫通孔の一端側から挿入される封止部材により貫通孔が封止され、液室に充填された液体の漏洩が阻止される。
液室への液体の注入は、貫通孔の一端側からノズルを通して行われる。貫通孔の一端側の周囲にシール部が配置され、そのシール部は、ノズルの端面または外周面と干渉して弾性変形するので、液室へ液体を注入するときのシール性を確保できる。また、シール部は、貫通孔の一端側の周囲に加硫接着されるゴム状弾性材と一体的に形成されるので、ノズルにOリングを配置するものと異なり、シール部の繰返し使用を防止できる。繰返し使用によるシール部の脱落や劣化を防止できるので、液体の充填作業におけるシール性の低下を防止できると共に、液体の充填作業に係る装置のメンテナンスを簡素化できる効果がある。
技術的思想2記載の防振装置によれば、シール部は、封止部材に対して非干渉とすることにより、技術的思想1の効果に加え、封止部材による貫通孔のシール性を安定にできる効果がある。即ち、封止部材に対してシール部が干渉するときには、各部材の公差等によりシール部の締め代を一定にできず、シール部の圧縮にばらつきが発生することがある。その結果、シール部の圧縮が不十分となるものが発生することがある。これに対し、封止部材に対してシール部を非干渉とすることにより、封止部材による貫通孔のシール性にシール部が影響を与えなくなるので、封止部材による貫通孔のシール性を安定にできる。
技術的思想3記載の防振装置によれば、液室は第1液室と第2液室とに区画され、第1液室は、防振基体が隔壁の一部として形成される。第2液室は、オリフィス通路が形成された仕切部材により第1液室と連通しつつ区画され、隔壁の少なくとも一部がゴム状弾性膜からなるダイヤフラムで形成される。環状の取付板にダイヤフラムの外周部が加硫接着され、取付板の厚さ方向に貫通孔が貫通形成される。ダイヤフラムの外周部の厚さ方向に連通孔が貫通形成され、連通孔は貫通孔の一端側で貫通孔と連通する。シール部は、ダイヤフラムの外周部と一体に形成されているので、ダイヤフラムの外周部を取付板に加硫接着しつつシール部を形成できる。これにより技術的思想1又は2の効果に加え、シール部の成形を容易にできる効果がある。
技術的思想4記載の防振装置によれば、封止部材は貫通孔に圧入される球状部材であり、貫通孔の一端側の内周面に段差部またはテーパ部が形成される。その段差部またはテーパ部は一端側が他端側より拡径され、段差部またはテーパ部に、圧入される前の封止部材が係止される。また、シール部と一体に貫通孔の一端側の周囲に堤部が形成される。堤部は、段差部またはテーパ部に係止される封止部材の上端より高く設定されているので、ノズルを通して注入される液体を貯留すると、段差部またはテーパ部に係止された封止部材を液体に没入させることができる。
ここで、段差部またはテーパ部に係止された封止部材の一部が液体の液面から露呈して空気と接触している場合には、封止部材を貫通孔に圧入すると、貫通孔(液室)に空気が混入し、防振性能が低下するおそれがある。これに対し、液体に没入させた封止部材を貫通孔に圧入することで貫通孔内に空気が混入することを抑制できるので、技術的思想1から3のいずれかの効果に加え、防振性能を安定的に確保できる効果がある。