(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉粒状のセメント原料を排ガスを利用して予熱し、排ガス中に混合されたセメント原料を多段に配置されるサイクロンによって分離捕集するセメント原料予熱装置に設けられるセメントプラントの脱硝装置であって、
前記予熱装置内のセメント原料が分離された排ガスが通る部分に設けられ、前記セメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を噴霧して脱硝する脱硝ノズルを備え、
前記予熱装置は、排ガス中に混合されたセメント原料を加熱する仮焼炉を備え、
前記仮焼炉で加熱されたセメント原料が流入する下段の前記サイクロンの上側出口部に前記脱硝ノズルが設けられ、
前記脱硝ノズルは、前記上側出口部内のセメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を噴霧することを特徴とするセメントプラントの脱硝装置。
前記脱硝ノズルが設けられる前記上側出口部には、丸ダクトが接続し、この丸ダクトの下端部には、円筒部の上端が結合し、この円筒部は、下段の前記サイクロンの内側に挿入され、
前記脱硝ノズルは、前記丸ダクトの円周に沿って略等間隔に複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセメントプラントの脱硝装置。
前記脱硝ノズルは、脱硝薬剤を前記丸ダクトの中心に向かって、水平面に対して20〜40°の角度を成す斜め下方向に吹き込むように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のセメントプラントの脱硝装置。
前記制御部は、前記窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度が所定の規制値以下となるように前記流量制御弁を制御することを特徴とする請求項4に記載のセメントプラントの脱硝装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の有機性廃棄物の利用方法の発明は、有機性廃棄物のガス化によって生成されたガス(還元性ガス)を、排ガス中の窒素酸化物の量を低減するのに有効に利用できるようにするものであるが、イニシャルコストが低く、メンテナンスのし易い選択式無触媒還元法を使用し、しかも、脱硝効率が高く、脱硝薬剤の使用量が少なくて済むようにすることを目的とした発明ではなく、そのような技術は、開示されてはいない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、脱硝効率が高く、脱硝薬剤の使用量が少なくて済むセメントプラントの脱硝装置及びそれを備えるセメントプラントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセメントプラントの脱硝装置は、粉粒状のセメント原料を排ガスを利用して予熱し、排ガス中に混合されたセメント原料を多段に配置されるサイクロンによって分離捕集するセメント原料予熱装置に設けられるセメントプラントの脱硝装置であって、前記予熱装置内のセメント原料が分離された排ガスが通る部分に設けられる脱硝ノズルを備え、前記脱硝ノズルは、前記セメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を吹き込んで脱硝することを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置によると、セメント原料予熱装置内におけるセメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を脱硝ノズルで吹き込むことができる。これによって、排ガス中の窒素酸化物(NO
X)を分解することができる。
【0010】
また、セメント原料が分離された排ガスが通る部分に脱硝ノズルが設けられているので、セメント原料の脱硝ノズルへの付着量や脱硝ノズルの摩耗量を低減することができる。これによって、脱硝ノズルの損傷や劣化を抑制することができ、脱硝ノズルの長寿命化を図ることができる。
【0011】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置において、前記予熱装置は、排ガス中に混合されたセメント原料を加熱する仮焼炉を備え、前記仮焼炉で加熱されたセメント原料が流入する下段の前記サイクロンの上側出口部に前記脱硝ノズルが設けられ、前記脱硝ノズルは、前記上側出口部内のセメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を吹き込むものとするとよい。
【0012】
このように、下段のサイクロンの上側出口部内のセメント原料が分離された排ガス中に脱硝薬剤を脱硝ノズルで吹き込むことによって、排ガスの窒素酸化物(NO
X)を効果的に分解することができる。
【0013】
その理由は、次のとおりである。仮焼炉で加熱されたセメント原料は、下段のサイクロンに流入して、この下段サイクロン内で粉粒状のセメント原料と排ガスとに分離され、この分離された粉粒状のセメント原料は、この下段サイクロンの下側排出口部から排出される。そして、セメント原料から分離された排ガスは、下段サイクロンの上側出口部から排出される。そして、この上側出口部から排出される排ガスは、窒素酸化物濃度が高濃度となっているので、この排ガス中に脱硝薬剤を吹き込むことによって排ガスの窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0014】
そして、この上側出口部から排出される排ガスは、仮焼炉で生成された排ガスを含むので、この排ガスの酸素濃度は低く、この排ガス中に脱硝薬剤を吹き込むことによって、窒素酸化物の再合成を阻止することができ、その結果、排ガスの窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0015】
また、この上側出口部から排出される排ガスの温度は、仮焼炉内でセメント原料を適切に加熱することができるように、この予熱装置によって例えば略850℃に温度管理されている。そして、800〜900℃の温度範囲では、効率よく脱硝反応が行われるので、この排ガスの窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0016】
そして、脱硝ノズルは、仮焼炉で加熱されたセメント原料が流入する下段サイクロンの上側出口部に設けられ、この下段サイクロンは、予熱装置の比較的低い位置に設けられるので、脱硝ノズル及びこれを含む脱硝装置の取付けやメンテナンスのための労力の低減を図ることができる。
【0017】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置において、前記脱硝ノズルが設けられる前記上側出口部には、丸ダクトが接続し、この丸ダクトの下端部には、円筒部の上端が結合し、この円筒部は、下段の前記サイクロンの内側に挿入され、前記脱硝ノズルは、前記丸ダクトの円周に沿って略等間隔に複数配置されているものとするとよい。
【0018】
このように、脱硝ノズルが設けられる上側出口部には、丸ダクトが接続され、この丸ダクトの下端部には、円筒部の上端が結合し、この円筒部は、当該下段サイクロンの内側に挿入されているので、これら円筒部及び丸ダクト内を通って排出される排ガスは、十分な整流(旋回流)域をもち、均一な流れとなり、この排ガスに乱流が生じ難くいようにすることができる。これによって、脱硝薬剤をこの排ガス中で略均一に分散して排ガスと混合するように吹き込むことができ、その結果、排ガス中の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0019】
つまり、層流の排ガス中に脱硝薬剤を吹き込む場合は、乱流の排ガス中に脱硝薬剤を吹き込む場合と比較して、脱硝薬剤が排ガス中で分散するときのばらつきを小さくすることができ、脱硝効果のばらつきも小さくなる。
【0020】
従って、乱流が生じ難くいようにした丸ダクト内の排ガス中に脱硝薬剤を吹き込むことによって、排ガス中の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0021】
そして、脱硝ノズルは、丸ダクトの円周に沿って略等間隔に複数配置されているので、複数の各脱硝ノズルから吹き出される脱硝薬剤の吹出し範囲を分散させることができ、丸ダクト(排ガス流路)の断面積に占める脱硝薬剤の噴霧断面積を大きくすることができる。これによって、脱硝薬剤をこの排ガス中で略均一に分散して排ガスと混合するように吹き込むことができ、その結果、排ガス中の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0022】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置において、前記脱硝ノズルは、脱硝薬剤を前記丸ダクトの中心に向かって、水平面に対して20〜40°の角度を成す斜め下方向に吹き込むように設定されているものとするとよい。
【0023】
このように、脱硝薬剤を丸ダクトの中心に向かって、水平面に対して20〜40°の角度を成す斜め下方向に吹き込むように設定することによって、円筒部及び丸ダクト内を通って排出される排ガスの排出方向と逆方向に適切な角度で脱硝薬剤を吹き込むことができる。これによって、脱硝薬剤を前記上側出口部内で排ガスに十分混合させて脱硝反応を行わせることができる。つまり、脱硝薬剤の吹出し方向が水平面に対して20°の角度よりも小さいとき及び40°の角度よりも大きいときは、吹出された脱硝薬剤が丸ダクトを流れる排ガス流の中心まで届き難くいので、脱硝薬剤を上側出口部内で排ガスに十分混合させて脱硝反応を行わせることができない可能性がある。
【0024】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置において、前記脱硝薬剤が吹き込まれた排ガスが通る前記予熱装置の排ガス出口、前記セメントプラントが備える原料ミルの排ガス出口、又は前記セメントプラントの排出煙突から排出される排ガス中の窒素酸化物濃度を検出する窒素酸化物濃度検出器と、前記脱硝ノズルから吹き出される脱硝薬剤の吹出し流量を調整するための流量制御弁と、前記窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度に基づいて前記流量制御弁を制御して、前記脱硝ノズルから吹き出される脱硝薬剤の吹出し流量を制御する制御部とを備えるものとするとよい。
【0025】
このようにすると、窒素酸化物濃度検出器は、脱硝薬剤が吹き込まれた排ガスが通る予熱装置の排ガス出口、セメントプラントが備える原料ミルの排ガス出口、又はセメントプラントの排出煙突から排出される排ガス中の窒素酸化物濃度を検出することができる。そして、制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度に基づいて流量制御弁を制御して、脱硝ノズルから吹き出される脱硝薬剤の吹出し流量を制御することができる。
【0026】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置において、前記制御部は、前記窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度が所定の規制値以下となるように前記流量制御弁を制御するものとするとよい。
【0027】
このようにすると、制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度が所定の規制値以下となるように流量制御弁を制御することができる。これによって、脱硝前の排ガスの窒素酸化物濃度が変化することがあっても、窒素酸化物濃度が所定の規制値以下に低減された排ガスを大気中に放出することができる。
【0028】
本発明に係るセメントプラントは、本発明に係るセメントプラントの脱硝装置を備えることを特徴とするものである。
【0029】
本発明に係るセメントプラントは、本発明に係るセメントプラントの脱硝装置を備えており、このセメントプラントの脱硝装置は、上記と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係るセメントプラントの脱硝装置によると、排ガス中に吹き込まれた脱硝薬剤が窒素酸化物との間で効率よく脱硝反応を行うことができる構成としたので、比較的少ない脱硝薬剤を使用して、排ガスの窒素酸化物を大幅に分解することができ、そして、このように窒素酸化物が大幅に分解された排ガスを大気中に放出することができる。これによって、燃焼排ガス中の窒素酸化物の分解を促進するための触媒反応設備を省略したり、小型化することができるので、その分の費用の低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るセメントプラントの脱硝装置及びそれを備えるセメントプラントの一実施形態を、
図1、
図2、
図3、及び
図5を参照して説明する。このセメントプラントは、
図1に示すセメント原料予熱装置9を備えており、このセメント原料予熱装置9に
図2に示すセメントプラントの脱硝装置10が設けられている。
【0033】
図1に示すように、セメント原料予熱装置9は、仮焼炉PCを有するいわゆるニューサスペンションプレヒータ方式(NSP方式)のものである。このセメント原料予熱装置9は、C1〜C5で示す多段(
図1では一例として5段のものを示す)のサイクロン11、12、13、14、15によって構成されている。第4段目のサイクロン14と第5段目のサイクロン15との間のダクトT1に原料投入部16が設けられている。第1段目のサイクロン11には、ロータリキルン17から約1100℃の排ガス2がダクトT2、仮焼炉PC、及びダクトT11を介して導かれ、このサイクロン11では、セメント原料3を捕集する際には、原料3の仮焼炉PCでの仮焼により、略900℃まで温度が低下する。
【0034】
つまり、仮焼炉PC内で排ガス2中に混合されたセメント原料3をバーナ18の火炎で仮焼するときの温度は、仮焼炉PC内でセメント原料3を適切に加熱することができるように、予熱装置9の制御部によって、略900℃に温度管理されている。よって、最下段(第1段目)のサイクロン11の上側出口部19を通ってダクトT3に排出される排ガス2の温度は、略850℃である。
【0035】
そして、略850℃に温度管理された排ガス2は、第2段目のサイクロン12にダクトT3を介して導かれ、このサイクロン12では、約750℃まで温度が低下する。約750℃の排ガス2は第3段目のサイクロン13にダクトT4を介して導かれ、このサイクロン13では、約600℃まで温度が低下する。約600℃の排ガス2は第4段目のサイクロン14にダクトT5を介して導かれ、このサイクロン14では、約450℃まで温度が低下する。約450℃の排ガス2は、第5段目のサイクロン15にダクトT1を介して導かれ、そのダクトT1の途中で原料投入部16から粉粒状のセメント原料3が投入される。セメント原料3と共に第5段目のサイクロン15に導入された排ガス2は、約310℃まで温度が低下し、系外に排出される。
【0036】
そして、第5段目のサイクロン15で捕集されたセメント原料3は、ダクトT6で導かれ、第3段目のサイクロン13から第4段目のサイクロン14にダクトT5を介して導かれる排ガス2中に混入され、第4段目のサイクロン14で排ガス2と分離される。分離されたセメント原料3は、ダクトT7で導かれ、第2段目のサイクロン12から第3段目のサイクロン13にダクトT4を介して導かれる排ガス2中に混入され、第3段目のサイクロン13で排ガス2と分離される。分離されたセメント原料3は、ダクトT8で導かれ、第1段目のサイクロン11から第2段目のサイクロン12に排ガス2を導くダクトT3に供給されて、このダクトT3内で混入され、第2段目のサイクロン12で排ガス2から分離される。分離されたセメント原料3は、ダクトT9で導かれて仮焼炉PCに導入され、仮焼炉PCに導入された原料3は、ロータリキルン17から仮焼炉PCにダクトT2を介して導入される排ガス2中に混入される。そして、この原料3及び排ガス2は、ダクトT11を介して第1段目のサイクロン11に導入され、原料3は、第1段目のサイクロン11で排ガス2と分離されてダクトT10を介してロータリキルン17に導入される。
【0037】
そして、上記のように、最下段(第1段目)のサイクロン11内の略850〜900℃に温度管理された排ガス2は、上側出口部19及びダクトT3を介して第2段目のサイクロン12に導かれる。
【0038】
次に、セメントプラントの脱硝装置10について説明する。この脱硝装置10は、
図2及び
図3に示すように、複数の例えば6つの脱硝ノズル20を備えている。
【0039】
この複数の脱硝ノズル20は、
図1に示すセメント原料予熱装置9において、仮焼炉PCで加熱されたセメント原料3が流入する最下段(第1段目)のサイクロン11の上側出口部19に設けられている。そして、
図2に示すように、脱硝ノズル20は、上側出口部19内のセメント原料3が分離された排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込んで脱硝することができるように設けられている。
【0040】
なお、この実施形態の脱硝ノズル20は、セメント原料3が分離された排ガス2中に脱硝薬剤21を噴霧する状態で吹き込んでいる。また、脱硝薬剤21は、例えばアンモニア水や尿素水である。
【0041】
また、
図2及び
図3に示すように、複数の脱硝ノズル20が設けられる上側出口部19の丸ダクトT3は、その上方に設けられた第2段目のサイクロン12の側面流入口部12aに接続している。そして、この丸ダクトT3の下端部には、円筒部22の上端が結合し、この円筒部22は、最下段(第1段目)のサイクロン11の内側に挿入されている。また、
図3に示すように、6つの脱硝ノズル20は、丸ダクトT3の下端部の円周に沿って略等間隔に配置されている。
【0042】
更に、
図5に示すように、6つの各脱硝ノズル20は、丸ダクトT3の周壁部に貫通して形成された装着孔に装着されて取り付けられている。そして、各脱硝ノズル20は、脱硝薬剤21を丸ダクトT3の中心に向かって、水平面に対して20〜40°、好ましくは、略30°の角度θを成す斜め下方向に吹き込むように設定されている。
図2〜
図5に示す21は、丸ダクトT3内に噴霧された脱硝薬剤である。
【0043】
そして、
図5及び
図2に示すように、脱硝薬剤21は、供給ライン23c、環状ライン23aそして接続管24aを通り、6つの各脱硝ノズル20から噴霧され、噴霧されずに残った脱硝薬剤21は、接続管24b、環状ライン23bそして戻りライン23dを通ってタンクに戻り、再び供給ライン23cを通って噴霧されるようになっている。2つの環状ライン23a、23bは、最下段(第1段目)のサイクロン11の天井壁部11aの上面に支持台28を介して取り付けられている。
【0044】
次に、脱硝薬剤21を丸ダクトT3内に噴霧するための脱硝薬剤噴霧装置25について説明する。この脱硝薬剤噴霧装置25は、
図5に示すように、脱硝薬剤21を循環させることができる環状ライン23a、23bと供給ライン23cと戻りライン23dとを備えており、この供給ライン23cに薬剤供給ポンプ、環状ライン23a、23bに脱硝ノズル20、そして戻りライン23dに流量制御弁がそれぞれ接続されている。
【0045】
薬剤供給ポンプは、供給ライン23cに直列に接続され、脱硝薬剤21を噴霧し、噴霧せずに残った脱硝薬剤21を戻りライン23dを通してタンクまで戻すためのものである。
【0046】
流量制御弁は、戻りライン23dに直列に接続され、この戻りラインを流れる脱硝薬剤21の戻り流量を調整するためのものである。
【0047】
このように、環状ライン23a、23bに脱硝ノズル20、供給ライン23cに薬剤供給ポンプ、戻りライン23dに流量制御弁が接続されている構成とすると、流量制御弁の開口度を制御部が制御することによって、それぞれの脱硝ノズル20から噴霧される脱硝薬剤21の流量のばらつきを低く抑えることができる。その結果、脱硝効果のばらつきを抑えた連続的、かつ、経済的な脱硝作用を実現することができる。そして、このシステムにおいて、流量制御弁による流量制御に加え、着脱自在に取り付けられた脱硝ノズル20の取付け本数を変更することによって、流量制御することも可能である。
【0048】
また、脱硝薬剤噴霧装置25は、窒素酸化物濃度検出器、及び制御部を備えている。
【0049】
窒素酸化物濃度検出器は、脱硝薬剤21が吹き込まれた排ガス2が通る予熱装置9の排ガス出口、セメントプラントが備える原料ミルの排ガス出口、又はセメントプラントの排出煙突から排出される排ガス2中の窒素酸化物濃度を検出するためのものである。
【0050】
ここで、予熱装置9の排ガス出口とは、
図1に示す第5段目のサイクロン15の上側出口部に接続されている排ガス出口ダクト26で形成されている出口である。
【0051】
原料ミルの排ガス出口とは、
図1に示す予熱装置9の上流側(原料の流れから見た上流側)に設けられている原料ミルから排ガス2が排出される排ガス出口ダクトで形成されている出口である。この原料ミルは、セメント原料3を所定の粒度になるように粉砕するためのものであり、排ガス2を原料の乾燥などに使用する。
【0052】
制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度に基づいて流量制御弁を制御して、脱硝ノズル20から吹き出される脱硝薬剤21の吹出し流量を制御するためのものである。
【0053】
そして、この制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度が所定の規制値以下となるように前記流量制御弁を制御するように構成されている。
【0054】
次に、上記のように構成されたセメントプラントの脱硝装置10及びそれを備えるセメントプラントの作用を説明する。
図2に示すセメントプラントの脱硝装置10によると、セメント原料予熱装置9内におけるセメント原料3が分離された排ガス2中に脱硝薬剤21を脱硝ノズル20で吹き込むことができる。
【0055】
これによって、排ガス2中の窒素酸化物(NO
X)を分解することができる。そして、セメント原料3が分離された排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込んでいるので、排ガス2中に吹き込まれた脱硝薬剤21が窒素酸化物との間で効率よく脱硝反応を行うことができる。
【0056】
また、セメント原料3が分離された排ガス2が通る部分に脱硝ノズル20が設けられているので、セメント原料3の脱硝ノズル20への付着量や脱硝ノズル20の摩耗量を低減することができる。これによって、脱硝ノズル20の損傷や劣化を抑制することができ、脱硝ノズル20の長寿命化を図ることができる。
【0057】
そして、上記のように、排ガス2中に吹き込まれた脱硝薬剤21が窒素酸化物との間で効率よく脱硝反応を行うことができるので、比較的少ない脱硝薬剤21を使用して、排ガス2の窒素酸化物を大幅に分解することができ、そして、このように窒素酸化物が大幅に分解された排ガス2を大気中に放出することができる。これによって、燃焼排ガス2中の窒素酸化物の分解を促進するための触媒反応設備を省略したり、小型化することができるので、その分の費用の低減を図ることができる。
【0058】
また、
図2に示す最下段(第1段目)のサイクロン11の上側出口部19内のセメント原料3が分離された排ガス2中に脱硝薬剤21を脱硝ノズル20で吹き込むことによって、排ガス2の窒素酸化物(NO
X)を効果的に分解することができる。
【0059】
その理由は、次の通りである。
図2に示す仮焼炉PCのバーナ18の火炎で加熱された排ガス2中のセメント原料3は、第1段目のサイクロン11に流入して、この第1段目のサイクロン11内で粉粒状のセメント原料3と排ガス2とに分離され、この分離された粉粒状のセメント原料3は、この第1段目のサイクロン11の下側排出口部から排出される。そして、セメント原料3から分離された排ガス2は、第1段目のサイクロン11の上側出口部19から排出される。そして、この上側出口部19から排出される排ガス2は、キルンで発生したNO
X濃度略1000〜2000ppmの排ガスが仮焼炉内で原燃料からの生成ガスにより一部脱硝と生成ガスにより希釈されるが、窒素酸化物濃度が略300〜600ppmと高濃度となっているので、この排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込むことによって排ガス2の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0060】
そして、この上側出口部19から排出される排ガス2は、仮焼炉PCで生成された排ガス2を含むので、この排ガス2の酸素濃度は低く、この排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込むことによって、窒素酸化物の再合成を阻止することができ、その結果、排ガス2の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0061】
また、この上側出口部19から排出される排ガス2の温度は、仮焼炉PC内でセメント原料3を適切に加熱することができるように、この予熱装置9の制御部によって例えば略850℃に温度管理されている。そして、800〜900℃の温度範囲では、効率よく脱硝反応が行われるので、この略850℃に温度管理されている排ガス2の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0062】
更に、排ガス2は、セメントプラントが備えるロータリキルン17から排出されたものを含むものであるので、ロータリキルン17から排出される排ガス2の脱硝処理をすることができる。
【0063】
そして、脱硝ノズル20は、仮焼炉PCで加熱されたセメント原料3が流入する第1段目のサイクロン11の上側出口部19に設けられ、この第1段目のサイクロン11は、
図2に示すように、予熱装置9の床面27に近い比較的低い位置に設けられるので、脱硝ノズル20及びこれを含む脱硝装置10の取付けやメンテナンスのための労力の低減を図ることができる。
【0064】
また、
図2に示すように、第1段目のサイクロン11の天井壁部11aは、円環状の板状体で形成されているので、脱硝ノズル20及びこれを含む脱硝装置10の取付けやメンテナンスの際には、作業者は、この天井壁部11a上で作業することができ、これによっても労力の低減を図ることができる。
【0065】
更に、
図2に示す脱硝ノズル20が設けられる上側出口部19には、丸ダクトT3が接続され、この丸ダクトT3の下端部には、円筒部22の上端が結合し、この円筒部22は、当該第1段目のサイクロン11の内側に挿入されているので、これら円筒部22及び丸ダクトT3内を通って排出される排ガス2は、十分な整流(旋回流)域をもち、均一な流れとなり、この排ガス2に乱流が生じ難くいようにすることができる。これによって、脱硝薬剤21をこの排ガス2中で略均一に分散して排ガス2と混合するように吹き込むことができ、その結果、排ガス2中の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0066】
つまり、層流の排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込む場合は、乱流の排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込む場合と比較して、脱硝薬剤21が排ガス2中で分散するときのばらつきを小さくすることができ、脱硝効果のばらつきも小さくなる。
【0067】
従って、乱流が生じ難くいようにした丸ダクトT3内の排ガス2中に脱硝薬剤21を吹き込むことによって、排ガス2中の窒素酸化物濃度を予め定めた濃度に確実に低減することができる。
【0068】
そして、脱硝ノズル20は、丸ダクトT3の円周に沿って略等間隔に複数配置されているので、複数の各脱硝ノズル20から吹き出される脱硝薬剤21の吹出し範囲を、
図3に示すように分散させることができ、丸ダクトT3(排ガス流路)の断面積に占める脱硝薬剤21の噴霧断面積を大きくすることができる。これによって、脱硝薬剤21をこの排ガス2中で略均一に分散して排ガス2と混合するように吹き込むことができ、その結果、排ガス2中の窒素酸化物を効果的に分解することができる。
【0069】
また、
図2及び
図5に示すように、脱硝薬剤21を丸ダクトT3の中心に向かって、水平面に対して20〜40°、好ましくは、略30°の角度θを成す斜め下方向に吹き込むように設定することによって、円筒部22及び丸ダクトT3内を通って排出される排ガス2の排出方向と逆方向に適切な角度で脱硝薬剤21を吹き込むことができる。これによって、脱硝薬剤21を前記上側出口部19内で排ガス2に十分混合させて脱硝反応を行わせることができる。つまり、脱硝薬剤21の吹出し方向が水平面に対して20°の角度よりも小さいとき及び40°の角度よりも大きいときは、吹出された脱硝薬剤21が丸ダクトT3を流れる排ガス流の中心まで届き難くいので、脱硝薬剤21を上側出口部19内で排ガス2に十分混合させて脱硝反応を行わせることができない可能性がある。
【0070】
次に、この脱硝装置10が備えている脱硝薬剤噴霧装置25の作用を説明する。
図5に示す脱硝薬剤噴霧装置25によると、図示しない薬剤供給ポンプを作動させることによって、脱硝薬剤21を供給ライン23c、環状ライン23aそして接続管24aを介して脱硝ノズル20から噴霧させ、噴霧されずに残った脱硝薬剤21を、接続管24b、環状ライン23bそして戻りライン23dを介して図示しないタンクに戻すことができる。
循環ライン23内で循環させることができ、この循環する脱硝薬剤21の一部を脱硝ノズル20から吹き出す(噴霧する)ことができる。
【0071】
そして、この脱硝薬剤噴霧装置25によると、窒素酸化物濃度検出器は、脱硝薬剤21が吹き込まれた排ガス2が通る予熱装置9の排ガス出口ダクト26、セメントプラントが備える原料ミルの排ガス出口、又はセメントプラントの排出煙突から排出される排ガス2中の窒素酸化物濃度を検出することができる。そして、制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度に基づいて流量制御弁を制御して、脱硝ノズル20から吹き出される脱硝薬剤21の吹出し流量を制御することができる。
【0072】
また、制御部は、窒素酸化物濃度検出器によって検出して得られた検出窒素酸化物濃度が所定の規制値以下となるように流量制御弁を制御することができる。これによって、脱硝前の排ガス2の窒素酸化物濃度が変化することがあっても、窒素酸化物濃度が所定の規制値以下に低減された排ガス2を大気中に放出することができる。
【0073】
ただし、上記実施形態では、
図3に示すように、6つの脱硝ノズル20を丸ダクトT3の下端部の円周に沿って略等間隔に設けたが、これに代えて、6つ以外の数の脱硝ノズル20を丸ダクトT3の下端部に設けてもよい。例えば
図4に示すように、3つの脱硝ノズル20を丸ダクトT3の下端部の円周に沿って略等間隔に設けてもよい。
【0074】
そして、上記実施形態では、仮焼炉PCを備えるセメント原料予熱装置9に対して脱硝装置10を設けたが、これに代えて、仮焼炉PCを備えていないセメント原料予熱装置に対して脱硝装置10を設けてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、最下段(第1段目)のサイクロン11の上側出口部19から排出される排ガス2に脱硝薬剤21を吹き込む構成としたが、800〜900℃の領域があれば、これに代えて、第2〜第5段目のサイクロンのうちのいずれかのサイクロンの上側出口部から排出される排ガス2に脱硝薬剤21を吹き込む構成としてもよい。