特許第6063259号(P6063259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063259
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】電気機械の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/51 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   H02K3/51 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-521906(P2012-521906)
(86)(22)【出願日】2010年6月25日
(65)【公表番号】特表2013-500694(P2013-500694A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】AT2010000231
(87)【国際公開番号】WO2011011801
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年4月4日
【審判番号】不服2015-8355(P2015-8355/J1)
【審判請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】A1189/2009
(32)【優先日】2009年7月29日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514183248
【氏名又は名称】アンドリッツ・ヒュードロ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】レクサー・アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムリンガー・シュテファン
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−149736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(1)が薄板成層鉄心(3)を備え、前記薄板成層鉄心内においてこの薄板成層鉄心の周囲にわたって分配された状態で巻線棒状体(5、6)が配置されており、
その際、前記巻線棒状体(5、6)が巻線端(7)を形成するために前記薄板成層鉄心(3)の軸方向端部を越えて延在している、電気機械の回転子において、
前記電気機械の回転子が、前記巻線端(7)の領域に外側リング(10)と内側リング(12)を備え、前記外側リングと前記内側リングとの間に、前記巻線棒状体(5、6)が、前記巻線端(7)の領域において配置されていること、
前記巻線端(7)の領域において周方向に、スペーサ(14)が、周方向で隣接する2つの前記巻線棒状体(5、6)の間に配置されており、このスペーサの半径方向の高さが前記巻線棒状体(5、6)よりも少しだけ高いこと、
その際、前記外側リング(10)が、前記スペーサ(14)を介して内側リング(12)と相互に締付けられた構造になっており、且つ、前記巻線端(7)の領域において、前記スペーサ(14)と前記内側リング(12)と前記巻線棒状体(5、6)と共に結合体を形成し、且つ、
前記外側リング(10)と前記内側リング(12)が、前記薄板成層鉄心(3)から離隔配置されており、従って、前記結合体が半径方向に動くことができること、
前記内側リング(12)に、前記巻線端(7)の半径方向運動を妨害することなくこの巻線端(7)の軸方向運動を防止する、保持装置(9)が設けられており、その際、前記保持装置(9)が、保持ブラケット(16)に固定されていること、および、
前記保持装置(9)が、突起を有する薄板として形成されており、
その際、この突起が、前記内側リング(12)の溝内に軸方向に動かないように嵌まり込んでおり、しかしながら、この薄板が前記内側リング(12)から半径方向に離隔されて配置されており、且つ従って、半径方向の動きが制限されないこと、
を特徴とする電気機械の回転子。
【請求項2】
前記スペーサ(14)が中空成形体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械の回転子。
【請求項3】
半径方向において、前記内側リング(12)と前記巻線棒状体(5、6)との間、および/または、前記外側リング(10)と前記巻線棒状体(5、6)との間において、絶縁挿入物(15)が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気機械の回転子。
【請求項4】
半径方向において、下側の巻線棒状体(6)と上側の巻線棒状体(5)が重なり合って配置され、且つ、2つの隣接する前記下側の巻線棒状体(6)および/または前記上側の巻線棒状体(5)との間において、前記スペーサ(14)が周方向に配置されており、
このスペーサの半径方向の高さが前記下側の巻線棒状体(6)または前記上側の巻線棒状体(5)よりも少しだけ高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気機械の回転子。
【請求項5】
半径方向において、前記下側の巻線棒状体(6)と前記上側の巻線棒状体(5)との間において、絶縁挿入物(15)が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電気機械の回転子。
【請求項6】
前記巻線端(7)の領域において、冷却空気が前記巻線棒状体(5、6)の間を、および/または前記スペーサ(14)を通って軸方向に外側へと案内可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気機械の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
回転子が薄板成層鉄心を備え、この薄板成層鉄心内において前記薄板成層鉄心の周囲にわたって分配された状態で巻線棒状体が配置されており、
その際、前記巻線棒状体が巻線端を形成するために前記薄板成層鉄心の軸方向端部を越えて延在している、電気機械の回転子に関する
【背景技術】
【0002】
電気機械の回転子が巻線棒状体を備えている場合、この巻線棒状体は、時として、特に高い回転数時に大きな遠心力を受ける。例えば、回転数可変の機械の回転子巻線は、往々にして巻線棒状体として形成されている。特に、回転数可変の揚水式発電所の機械は、高い回転数で運転され、従ってその巻線棒状体は大きな向心加速度に曝される。回転子本体の領域には、一般的に、周知のごとく、それぞれ2個の巻線棒状体が軸方向溝内に重なり合って配置され、遠心力に抗して半径方向で、溝−くさび結合によって保持される。巻線棒状体の必要な回路接続および必要な相互間隔を達成するために、巻線端の領域において巻線棒状体を軸方向に対して斜めに案内しなければならない。この場合、上側層と下側層の巻線棒状体は反対向きに斜めに延在するので、交叉している。巻線端領域における巻線棒状体の複雑な配置および形状に基づいて、回転子本体の領域のような溝内での案内、およびくさび止めは不可能である。従って、巻線端は、発生する遠心力によって負荷がかけられる。このことは、巻線端の半径方向の支持を必要とする。
【0003】
更に、同様に周知であるように、巻線端、または、巻線端の領域の巻線棒状体を冷却しなければならない。一般的に、この冷却は、巻線端を経て案内されるガス状冷却媒体によって行われる。
【0004】
従来技術から、巻線端を支持するためのいろいろな方式が知られている。いわゆる回転子キャップが慣用されている。この回転子キャップはほとんどが回転子本体に焼きばめされ、従って回転子本体に支持されている。その一例が特許文献1である。この場合、外側リングの歯が回転子溝を通って回転子本体に差し込まれ、続いて回転させられる。従って、歯が2つの溝の間に位置し、外側リングの軸方向の可動性が阻止される。この外側リングは半径方向において遠心力に抗して巻線端を支持する。特許文献2は類似の構造を示している。この構造の場合、2個のリングが外側へ巻線端に焼きばめされる。しかし、このリングは半径方向において回転子本体に再び支持される。このような構造の場合、特に電気機械の高出力範囲において、回転子本体に焼きばめされた回転子キャップによって、回転子の冷却のために部分薄板成層鉄心の間に配置した通風スリットが閉鎖され、それによって回転子本体の冷却がこの領域において妨げられるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第378920A1号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第1474439A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記の欠点が回避され、それにもかかわらず巻線端の十分な半径方向支持と、巻線端の十分な冷却が保証される、電気機械の回転子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明に従い、
回転子が薄板成層鉄心を備え、前記薄板成層鉄心内においてこの薄板成層鉄心の周囲にわたって分配された状態で巻線棒状体が配置されており、
その際、前記巻線棒状体が巻線端を形成するために前記薄板成層鉄心の軸方向端部を越えて延在している、電気機械の回転子において、
前記電気機械の回転子が、前記巻線端の領域に外側リングと内側リングを備え、前記外側リングと前記内側リングとの間に、前記巻線棒状体が、前記巻線端の領域において配置されていること、
前記巻線端の領域において周方向に、スペーサが、周方向で隣接する2つの前記巻線棒状体の間に配置されており、このスペーサが前記巻線棒状体よりも半径方向の高さに関して少しだけ高いこと、
その際、前記外側リングが、前記スペーサを介して内側リングと相互に締付けられた構造になっており、且つ、前記巻線端の領域において、前記スペーサと前記内側リングと前記巻線棒状体と共に結合体を形成し、且つ、
前記外側リングと前記内側リングが、前記薄板成層鉄心から離隔配置されており、従って、前記結合体が半径方向に動くことができること、
前記内側リングに、前記巻線端の半径方向運動を妨害することなくこの巻線端の軸方向運動を防止する、保持装置が設けられており、その際、前記保持装置が、保持ブラケットに固定されていること、および、
前記保持装置が、突起を有する薄板として形成されており、
その際、この突起が、前記内側リングの溝内に軸方向に動かないように嵌まり込んでおり、しかしながら、この薄板が前記内側リングから半径方向に離隔されて配置されており、且つ従って、半径方向の動きが制限されないことによって解決される。
【0008】
薄板成層鉄心から離隔された2つのリングのこの配置によって、薄板成層鉄心または薄板成層鉄心内の巻線棒状体の冷却が悪影響を受けない。
【0009】
外側リングと巻線棒状体と内側リングとから成る結合体の、寸法と素材を適切に選択することにより、停止時およびあらゆる運転状態の、回転子本体と巻線端との間の半径方向の相対運動が小さいままであり、且つ、巻線棒状体の曲げ応力または剪断応力が非常に小さい。
【0010】
巻線端の領域において周方向に、スペーサが、周方向で隣接する2つの巻線棒状体の間に配置されており、このスペーサが少なくとも前記巻線棒状体と同じ高さである、好ましくは前記巻線棒状体よりも半径方向の高さに関して少しだけ高い場合、半径方向の収縮力が巻線棒状体に伝達されない。
【0011】
スペーサが中空成形体として形成されていると、巻線端の冷却を極めて簡単にかつ効率的に行うことができる。冷却空気が中空成形体を通って軸方向に通過することができ、それによって巻線端の冷却が達成される。
【0012】
好ましくは、内側リングと巻線棒状体との間、および/または、外側リングと巻線棒状体との間において、絶縁挿入物が半径方向に配置されている。更に、下側の棒状体と上側の棒状体との間に、絶縁挿入物を配置することもできる。それによって、上側の棒状体と下側の棒状体との間で良好な電気的絶縁が達成される。
【0013】
下側の棒状体と上側の棒状体が半径方向において重なり合って配置され、隣接する2つの下側の棒状体および/または上側の棒状体との間においてスペーサが周方向に配置され、このスペーサが少なくとも下側の棒状体または上側の棒状体と同じ高さに、好ましくは下側の棒状体または上側の棒状体よりも半径方向の高さに関して少しだけ高く配置可能である場合、本発明に従う電気機械の回転子を使用することができる。
【0014】
内側リングの領域内に保持装置、例えば、保持板が設けられ、この保持装置が内側リングと協働し、巻線端の半径方向運動を妨害することなく、内側リングまたは巻線端の軸方向運動を防止することにより、内側リングの軸方向運動を極めて簡単に阻止することができる。
【0015】
同様に、保持板は内側リングの内面にある多数の半径方向溝に嵌まり込むことによって巻線端のセンタリングを可能にする。
【0016】
巻線端の領域において冷却空気が巻線棒状体の間および/またはスペーサを通って軸方向外側に案内可能であると有利であり、それによって巻線端の冷却が改善される。
【0017】
本発明の電気機械の回転子を組み立てるための方法において、この方法は次の方法ステップを含む:即ち、
a)内側リングが、回転子本体の薄板成層鉄心から離隔して配置され、
b)1つの巻線端を形成するために前記薄板成層鉄心の軸方向端部を越えて延在する、前記薄板成層鉄心の周囲にわたって分配された状態で配置された、下側の巻線棒状体が、前記薄板成層鉄心内へと挿入され、
c)前記巻線端の領域において、前記下側の巻線棒状体よりも半径方向の高さに関して少しだけ高いスペーサが、周方向で隣接する2つの前記下側の巻線棒状体の間に配置され、d)前記巻線端を形成するために前記薄板成層鉄心の軸方向端部を越えて延在する、前記薄板成層鉄心の周囲にわたって分配された状態で配置された、上側の巻線棒状体が、前記薄板成層鉄心内へと、前記下側の巻線棒状体の外側に挿入され、
e)前記巻線端の領域において、前記上側の巻線棒状体よりも半径方向の高さに関して少しだけ高いスペーサが、周方向で隣接する2つの前記上側の巻線棒状体の間に配置され、f)前記外側リングが、前記スペーサを介して内側リングに焼きばめされ、且つ、前記巻線端の領域において、前記スペーサと前記内側リングと巻線棒状体と共に結合体を形成し、且つ、
前記外側リングと前記内側リングが、前記薄板成層鉄心から離隔配置されており、従って、前記結合体が半径方向に動くことができる。
【0018】
それによって、巻線端が相互の締付けによって半径方向に支持され、そして運転中、発生する遠心力による機械的負荷に対して保護される。
【0019】
外側リングを焼きばめする前に、巻線端の領域において、好ましくは巻線棒状体よりも半径方向の高さに関して高いスペーサが周方向で隣接する2つの巻線棒状体の間に配置されると有利である。
【0020】
それによって、半径方向の収縮力が巻線棒状体に伝達されない。
【0021】
本発明の電気機械の回転子を組み立てるための方法の場合、巻線棒状体とスペーサを二層に配置することができる。
【0022】
例示的で概略的で非限定的な図1図3に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電気機械の回転子の縦断面図である。
図2】回転子の巻線端の横断面図である。
図3】回転子の巻線端を半径方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例えば、水力発電機のような図1に示した電気機械の回転子1は、星形ハブ2備えている。この星形ハブ上には、公知のごとく、回転子1の薄板成層鉄心3が配置されている。その際、薄板成層鉄心3は周知のプレスボルト4によってばらばらにならないように保持されている。星形ハブ2と薄板成層鉄心3は回転子1の回転子本体11を形成している。薄板成層鉄心3の半径方向外側領域には図示していない溝が設けられている。この溝には絶縁された巻線棒状体、ここでは上側の巻線棒状体(第二の層の巻線棒状体)5と下側の巻線棒状体(第一の層の巻線棒状体)6が挿入され、溝−くさび結合によって半径方向に保持される。このような構造は周知であるので、ここでは詳細に説明しない。巻線棒状体5、6は薄板成層鉄心3の両側から軸方向に突出し、薄板成層鉄心3の外側にいわゆる巻線端7を形成している。巻線棒状体5、6は周知のように、巻線端7の領域において軸方向に対して斜めに配置されている。この場合、上側の棒状体5と下側の棒状体6が逆向きに傾斜しているので、図3に略示するように、この上側の棒状体と下側の棒状体は交叉している。巻線を形成するために、上側の棒状体5と下側の棒状体6は好ましくはその軸方向端部において棒状体継手8によって互いに連結されている。
【0025】
巻線棒状体5、6は本発明に従い、巻線端7の領域において内側リング12と外側リング10との間に配置され、この両リングと共に結合体を形成している。両リング10、12は回転子本体11または薄板成層鉄心3から離隔されて配置され、好ましくは軸方向に離隔され、そしてこの回転子本体または薄板成層鉄心に接触していないか、またはこの回転子本体または薄板成層鉄心に連結されていない。それによって、両リング10、12は少なくとも半径方向において回転子本体11または薄板成層鉄心3あるいは他の場所に支持されておらず、半径方向に邪魔されずに拡大することができる。保持装置9、例えば保持ブラケット16に固定された保持板は、巻線端7がリング10、12と共に軸方向に摺動するのを防止し、かつ内側リング12を位置決めする働きをする。この保持装置9は結合体の自由な半径方向の拡大を妨害しない。保持装置9は(図1に示すように)突起を有する薄板として形成可能である。この場合、この突起は、内側リング12の溝内において軸方向に動かないように嵌まり込んでおり、しかしながら、この薄板が内側リング12から半径方向に離隔されて配置されており、従って、半径方向の動きが制限されない。
【0026】
外側リング10は巻線端7に焼きばめされ、そして内側リング12との相互の締付けによって結合体を形成している。その際、巻線棒状体5、6の絶縁体を損傷し得る力が巻線棒状体5、6に作用しないようにするために、(周方向に見て)巻線棒状体5、6の間にスペーサ14を配置することができる。このスペーサは高さが少なくとも巻線棒状体5、6と同じであり、好ましくは幾分高く、少なくとも収縮力が巻線棒状体5、6に伝達されないほど高い(例えば、巻線棒状体5、6よりも0.5〜1mm高い)。これは図2において極めて概略的にかつ大げさに示してある。巻線棒状体5、6と同様に、スペーサ14は逆向きに斜めに配置され、互いに交叉している(上記参照)。それによって、収縮力は外側リング10からスペーサ14を経て内側リングに案内され(実質的にスペーサ14の交差点を経て)、巻線棒状体5、6は、半径方向において収縮力をほぼ受けずに、ある程度半径方向に動くことができる。それによって、外側リング10とスペーサ14と内側リング12とから成る結合体が生じ、この場合、巻線棒状体5、6は、この結合体内に配置され、実質的に力を受けない。これらの部品の素材がその弾性係数、形状および/または収縮温度に従って適切に選定されると、巻線棒状体5、6は、巻線端7に対する遠心力によって巻線端領域において、回転子本体11の領域とほぼ同じ大きさだけ半径方向に移動する。それによって、巻線棒状体5、6は、機械的な負荷が最小となる。回転子本体11と巻線端7との間の半径方向の相対運動は、すべての運転状態において小さく保つことが可能である。従って、巻線棒状体5、6の曲げ応力または剪断応力の発生が極力抑えられる。
【0027】
もちろん、すべての巻線棒状体5、6間にスペーサ14を配置する必要はなく、例えば、冷却空気を通過案内することができる中間室を設けることが可能である。
【0028】
図2に示すように、スペーサ14が中空成形体として形成されていると、冷却空気を案内するためにこのスペーサを利用することができる。この中空成形体は縦方向に、すなわち巻線棒状体に対して平行に向いたリブを備えている。それに加えて、例えば、巻線端7の半径方向内側に、ラジアルファン13(図1に示す)が配置されている。このラジアルファンは図示していない熱交換器から低温の冷却空気を吸い込み、巻線端7に向けて半径方向外側に送風する。そこで冷却空気は、例えば、適当な案内板によって半径方向から軸方向に向きを変え、そしてスペーサ14の中空成形体の通路を通って軸方向外側に流れる。それによって、巻線端が冷却される。この冷却空気案内は図1図3において矢印で示してある。
【0029】
上側の棒状体5と下側の棒状体6の良好な電気的絶縁を達成するために、同様に、上側の棒状体5と下側の棒状体6との間、および/または、上側の棒状体5と外側リング10との間、および/または、下側の棒状体6と内側リング12との間に、例えば、硬質繊維織物から成る絶縁挿入物15を配置することができる。この絶縁挿入物15はもちろん結合体の一部である。
【0030】
本発明の電気機械の回転子の組み立ては次のように行われる。先ず最初に、巻線端7の領域に内側リング12が配置され、その後下側の棒状体6が溝に挿入および固定される。それに続いて、巻線端領域において下側の棒状体6の間にスペーサ14が挿入される。続いて、絶縁挿入物15をスペーサ14の間に配置することができる。それに続いて、上側の棒状体5が溝に挿入される。これら溝は、その後、溝−くさび結合によって閉鎖することができる。上側の棒状体5が挿入されると、巻線端領域において上側の棒状体の間に再びスペーサ14を配置することができる。組み立てのこの状態で、回路接続部、棒状体継手8および絶縁キャップを配置することができる。場合によっては他の絶縁挿入物15を上側の棒状体5の周りまたはスペーサ14の周りに配置することができる。続いて、所定の温度、例えば、160〜200°Cに加熱した外側リング10をかぶせて冷却する。それによって、外側リング10が収縮し、(スペーサ14を介して)内側リング12上に焼きばめされ、その結果、結合体が形成される。それに伴い、巻線端7が相互の締付けによって半径方向で支持され、運転中、発生する遠心力によってもたらされる機械的負荷に対して保護される。
【0031】
その際、内側リング12と、巻線棒状体5、6と、スペーサ14と、場合によっては絶縁層15とから成る結合体は、回転子本体11と巻線端7の半径方向相対運動がすべての運転状態で小さく、巻線棒状体5、6の曲げ応力または剪断応力ができるだけ生じないように設計することが可能である。
図1
図2
図3