(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波接合装置を説明するための概略図、
図2は、
図1に示されるアンビルの側面図、
図3は、
図2の線III−IIIに関する断面図、
図4は、超音波接合時における挙動を説明するための概念図、
図5は、アンビルの摩耗を説明するための断面図である。
【0011】
本実施の形態に係る超音波接合装置10は、
図1に示されるように、超音波接合部20および接合良否判定部50を有する。超音波接合部20は、台座部であるベースプレート15に配置された装置本体であり、被接合部材である板材W1、W2を超音波接合するために使用され、アンビル30およびホーン40を有する。
【0012】
アンビル30は、
図2および
図3に示されるように、略角柱状であり、板材W
1、W
2が載置される端面33および端面33に隣接する(取り囲んでいる)側面31を有し、先端部32、移行部34および基端部36から構成される。端面33は、先端部32に配置され、角錐形状を有する複数の突起が碁盤目状に形成されている。基端部36は、先端部32の断面形状より大きな断面形状を有する拡径部である。移行部34は、先端部32と基端部36とを連結している。
【0013】
先端部32の断面形状を小さくしたのは、先端部32の剛性(強度)を低下させ、アンビル30が振動する際の先端部32の振幅を大きくすることで、アンビルの振動の検出を容易とするためである。また、基端部36の断面形状を、先端部32の断面形状より大きくしたのは、基端部36の振幅(振動)は、検出感度に対する影響が小さいため、アンビル30全体としての剛性および耐久性を確保するためである。
【0014】
ホーン40は、アンビル30に載置される板材W
1、W
2を加圧しかつ振動を付与する端面43を有し、振幅および加圧力が一定に維持されように、制御される。端面43は、角錐形状を有する複数の突起が碁盤目状に形成されている。
【0015】
ホーン40(端面43)の振動は、
図4に示されるように、超音波接合の開始直後において、上方の板材W
1にのみ伝達されるため、ホーン40と板材W
1との摺動による摩擦熱、および、板材W
1と板材W
2との摺動による摩擦熱が発生する。そして、摩擦熱により、板材W
1と板材W
2とが接合し始めると、ホーン40の振動がアンビル30に伝達されることになり、アンビル30も振動することとなる。その後、板材W
1と板材W
2との接合が完了することにより、板材W
1と板材W
2とは摺動しなくなる。
【0016】
アンビル30の端面33は、超音波接合の繰り返しよって、
図5に示されるように、摩耗し、アンビル30の先端部32の長さが短く(高さが低く)なってくるため、アンビル30は、定期的に交換される。
【0017】
接合良否判定部50は、板材W
1、W
2の接合状態の良否を判定するために使用され、変位センサー52が取り付けられたマウント部60および解析装置54を有する。
【0018】
変位センサー52は、アンビル30の振動を非接触で検出する渦電流変位センサーからなり、アンビル30の振動データを解析装置54に送信する。渦電流変位センサーは、高分解能かつ高精度であり、応答速度が速く、また、センサヘッドが小さく、ほこり、水、油など耐環境性に優れている点で、好ましい。
【0019】
変位センサー52は、渦電流変位センサーによって構成する形態に限定されず、他の非接触式振動センサー(例えば、レーザードップラー変位計)を適宜適用することも可能である。なお、非接触式振動センサーは、接触式振動センサーと異なり、センサーの自重が振動状態に影響を与えることがないため、ノイズを減少させ、アンビル30の振動を高精度で検出することが可能であり、好ましい。
【0020】
解析装置54は、例えば、良否判定プログラムがインストールされたコンピュータからなる。良否判定プログラムは、超音波接合の際におけるアンビル30に伝達されるエネルギーを算出し、算出されたエネルギーが所定の値に達している場合、接合状態が良好であると判定するものであり、エネルギーは、アンビル30の振動データから生成される振動波形データを解析して算出される。良否判定プログラムは、上記形態に限定されない。
【0021】
次に、変位センサー52の配置位置を説明する。
【0022】
図6は、
図1に示される変位センサーの配置位置を説明する側面図、
図7は、
図1に示される変位センサーの配置位置とセンサー径との関係を説明する側面図である。
【0023】
変位センサー52は、
図6に示されるように、側面31における、アンビル30の端面33から、側面31と平行な方向へ所定距離L離間した部位に、相対するように位置決めされている。所定距離Lは、アンビル30の側面31の不連続(端面33の存在)による検出感度に対する影響が抑制されるように設定されている。つまり、アンビル30の側面31の不連続による検出感度に対する影響が抑制されるため、アンビル30の振動の検出精度を向上させることが可能である。
【0024】
また、所定距離Lは、アンビル30の端面33から境界Bまでの距離より小さいことが好ましい。境界Bは、アンビル30の先端部32と移行部34との境目であり、アンビル30の先端部32は、移行部34および基端部36に比較し、振動が大きい部位であるため、良好な検出感度が得られる。
【0025】
さらに、所定距離Lは、
図7に示されるように、変位センサー52のセンサー径Dの3倍より大きいことが好ましい。この場合、アンビル30の側面31の不連続による検出感度に対する影響が、確実に抑制されるため、良好な検出感度を確保される。
【0026】
アンビル30の端面33は、超音波接合の繰り返しよって、摩耗し、アンビル30の先端部32の長さが短く(高さが低く)なってくるため(
図5参照)、所定距離Lは、摩耗を考慮して設定することが好ましい。
【0027】
次に、変位センサー52が取り付けられるマウント部60を説明する。
【0028】
図8および
図9は、
図1に示されるマウント部を説明するための斜視図および平面図、
図10および
図11は、
図8および
図9に示される支持ブラケットを説明するための平面図および側面図、
図12は、
図8および
図9に示される上部プレートを説明するための平面図、
図13は、支持ブラケットの旋回を説明するための平面図である。
【0029】
マウント部60は、
図8および
図9に示されるように、下部プレート62、支持ブラケット70および上部プレート80を有する。
【0030】
下部プレート62は、ベースプレート15に固定され、上方に突出するピン64と、挿入孔66(
図13参照)とを有する。下部プレート62は、厚さが異なるものが複数用意されており、必要に応じて適宜選択されて、上方に配置される上部プレート80の高さを調整するために使用される。
【0031】
ピン64は、上部プレート80(および支持ブラケット70)の旋回範囲を規制するストッパー(回り止めピン)であり、例えば、上部プレート80(および支持ブラケット70)が回り過ぎて、近傍に配置されている装置や治具と干渉することを防ぐために設けられている。挿入孔66は、後述されるロケートピン95を挿入するために使用される。
【0032】
アンビル30は、取付ブラケット38を介し、ベースプレート15にボルト39によって締結(固定)されている。しかし、取付ブラケット38は、ベースプレート15に固定されている下部プレート62と一体化されておらず(分かれており)、アンビル30の振動が、下部プレート62を介して支持ブラケット70に直接伝達されないように設定されている。
【0033】
支持ブラケット70は、
図10および
図11に示されるように、先端部72、アーム部74および基端部76を有し、これらは、一体化されているため、支持ブラケット70の軽量化および寸法精度の確保が容易である。
【0034】
先端部72は、変位センサー52が取り付けられる一端であり、アーム部74から屈曲して立ち上がっており(上方に延長しており)、アンビル30の側面31に対して平行に延長する対向面72Aを有する。対向面72Aには、変位センサー52が配置されている。したがって、変位センサー52をアンビル30の側面31の近傍に容易かつ高精度に位置決めすることが可能である。変位センサー52は、ナット52Aおよびストッパースクリュー(不図示)によって位置調整可能に構成されており、ナット52Aおよびストッパースクリューを緩めることで、変位センサー52とアンビル30の側面31との間のクリアランスを調整することができる。
【0035】
対向面72Aには、ガイドバー73がさらに配置されている。ガイドバー73は、変位センサー52の近傍に位置し、対向面72Aからアンビル30の側面31に向かって突出しており、その突出量は、変位センサー52の突出量より大きく設定されている。したがって、例えば、アンビル30の振動が予期せぬ程大きい場合であっても、ガイドバー73の存在により、アンビル30と変位センサー52との接触が妨げられるため、変位センサー52の破損が防止される。ガイドバー73は、ナット73Aおよびストッパースクリュー(不図示)によって位置調整可能に構成されており、ナット73Aおよびストッパースクリューを緩めることで、ガイドバー73とアンビル30の側面31との間のクリアランスを調整することができる。
【0036】
アーム部74は、L字状であり、先端部72と基端部76とを連結しており、上部プレート80と略直交する方向に延長する直線部と、直線部から水平方向に略直角に屈曲している直線部と、から構成される。
【0037】
基端部76は、上部プレート80に取り付けられる他端であり、アーム部74から屈曲して降下しており(下方に延長しており)、上部プレート80に対して突き当たる対向面77を有する。つまり、支持ブラケット70の基端部76は、平面受けであり、支持ブラケット70のガタが抑制されるため、変位センサー52の検出精度の低下が防止される。なお、対向面77は、上部プレート80に締結するためのボルト孔78A,78Bを有する。
【0038】
上部プレート80は、支持ブラケット70を水平方向に旋回させるために使用される支持ベースである。支持ブラケット70の旋回は、
図13に示されるように、変位センサー52の初期位置P
1から退避位置P
2への移動および退避位置P
2から初期位置P
1への移動のために、実施される。初期位置P
1は、変位センサー52がアンビル30の振動を検出するための位置であり、退避位置P
2は、アンビル30の交換の際に変位センサー52とアンビル30とが干渉しない位置である。
【0039】
したがって、例えば、アンビル30を交換する直前、支持ブラケット70を、水平方向に旋回させることで、変位センサー52は、アンビル30の交換の際にアンビル30と干渉しない退避位置P
2に移動するため、アンビルの交換中における変位センサー52とアンビル30との干渉が、簡単に防止される。さらに、アンビルの交換完了後、支持ブラケット70を逆向きに水平方向に旋回(復動)させることにより、変位センサー52は、初期位置P
1に復帰する。つまり、アンビルの交換完了後において、変位センサー52とアンビル30との間の距離を一定に保って、アンビルの振動の検出精度を向上させることが容易である。
【0040】
なお、変位センサー52を水平方向に旋回させることは、変位センサー52の検出感度に対する影響が、垂直方向の位置ずれに比較し、水平方向の位置ずれの場合は小さい点で好ましい。
【0041】
上部プレート80は、ボルト86およびボルト93によって、下部プレート62に固定されている。つまり、上部プレート80は、下部プレート62およびベースプレート15を介して装置本体に固定自在である。したがって、変位センサー52によってアンビル30の振動を検出する際、上部プレート80を固定することにより、上部プレート80のガタが抑制され、上部プレート80のガタが支持ブラケット70に伝達されないため、変位センサー52の検出精度の低下が防止される。
【0042】
具体的には、上部プレート80は、基部82、中間部84および先端部90を有する。基部82は、ヒンジピン83によって下部プレート62に旋回自在に固定されており、ヒンジピン83は、上部プレート80(支持ブラケット70)の旋回中心となる。
【0043】
中間部84は、基部82と先端部90とを連結しており、ボルト孔85(
図12参照)および屈曲して立ち上がっている直立部87を有する。ボルト孔85は、中間部84をボルト86によって下部プレート62に固定するために利用される。直立部87は、ボルト孔88A,88B(
図10および
図11参照)を有し、支持ブラケット70の基端部76の対向面77が突き当てられる。ボルト孔88A,88Bとボルト孔78A,78Bとは位置合わせされており、ボルト89A,89Bが挿通されて、上部プレート80の中間部84と支持ブラケット70の基端部76とが締結される。
【0044】
先端部90は、
図12に示されるように、ボルト孔92および貫通孔94を有する。ボルト孔92は、ボルト93によって先端部90を下部プレート62に固定するために利用される。貫通孔94は、ロケートピン95を挿入するために利用され、下部プレート62の挿入孔66(
図13参照)と位置合わせされている。したがって、ロケートピン95は、先端部90の貫通孔94を通過し、下方に位置する下部プレート62の挿入孔66に嵌合することで、先端部90(上部プレート80)を下部プレート62に対して位置決めすることが可能である。
【0045】
次に、アンビル30の交換手順を詳述する。
【0046】
アンビル30を交換する際は、まず、ボルト86およびボルト93を外し、上部プレート80の中間部84および先端部90と、下部プレート62との締結を解消する。そして、ロケートピン95と下部プレート62の挿入孔66との嵌合を解除し、ロケートピン95を先端部90の貫通孔94から取り外すことにより、上部プレート80が旋回可能となる(
図12参照)。
【0047】
その後、上部プレート80の基部82に位置するヒンジピン83を中心として、上部プレート80を水平方向に旋回させる。これにより、上部プレート80によって支持されている支持ブラケット70は、水平方向に旋回し、アンビル30から離間する。その結果、支持ブラケット70の先端部72に取り付けられている変位センサー52は、初期位置P
1から退避位置P
2に移動する(
図13参照)。
【0048】
そして、ボルト39を外し、アンビル30の取付ブラケット38とベースプレート15との締結を解消し、使用により摩耗したアンビル30を、新品のアンビル30とを交換する。この際、変位センサー52は、退避位置P
2に移動しており、アンビル30の近傍に存在しないため、変位センサー52とアンビル30との干渉が簡単に防止され、アンビル30の交換がスムーズに実施される。
【0049】
アンビルの交換完了後、ボルト39を締結し、アンビル30の取付ブラケット38とベースプレート15とを固定する。そして、上部プレート80の基部82に配置されるヒンジピン83を中心として、上部プレート80を水平方向かつ逆向きに旋回(復動)させる。
【0050】
これにより、上部プレート80によって支持されている支持ブラケット70は、水平方向に旋回し、アンビル30に向かって近接する。その結果、支持ブラケット70の先端部72に取り付けられている変位センサー52は、退避位置P
2から初期位置P
1に復帰する(
図12参照)。したがって、変位センサー52とアンビル30との間の距離を一定に保って、アンビルの振動の検出精度を向上させることが容易である。なお、上部プレート80が過剰に旋回(復動)しようとする場合、下部プレート62に配置されるピン64に当接して制止される。そのため、アンビル30の近傍に配置されている装置や治具との予期せぬ干渉が防止される。
【0051】
その後、ロケートピン95を、上部プレート80の先端部90の貫通孔94に挿入し、下方に位置する下部プレート62の挿入孔66に嵌合することで、上部プレート80(先端部90)を下部プレート62に対して位置決めする。
【0052】
そして、ボルト86およびボルト93を締結し、上部プレート80の中間部84および先端部90と、下部プレート62とを固定する(
図8および
図9参照)。また、変位センサー52およびガイドバー73と、アンビル30との間のクリアランスを確認し、必要に応じて、ナット52A,73Aおよびストッパースクリューを緩めて、クリアランスを調整する。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては、アンビルの振動を非接触で検出するため、接触して検出する場合に比較し、ノイズを減少させることが可能である。また、アンビルの振動を非接触で検出する変位センサーは、アンビルの側面における、アンビルの端面から前記側面と平行な方向へ所定距離離間した部位に相対するように位置決めされており、側面の不連続による検出感度に対する影響が抑制される。したがって、アンビルの振動の検出精度を向上させることができる。つまり、アンビルの振動を高精度に検出し得る超音波接合装置を提供することが可能である。
【0054】
渦電流変位センサーは、高分解能かつ高精度であり、応答速度が速く、また、センサヘッドが小さく、ほこり、水、油など耐環境性に優れているため、変位センサーとして、渦電流変位センサーを利用することが好ましい。
【0055】
前記所定距離を、渦電流変位センサーのセンサー径の3倍より大きくする場合、側面の不連続による検出感度に対する影響が、確実に抑制されるため、良好な検出感度を確保することが可能である。
【0056】
前記所定距離を、端面から先端部と移行部との境界までの距離より小さくする場合、先端部は、移行部および基端部に比較し、振動が大きい部位であるため、良好な検出感度が得られる。
【0057】
支持ブラケットは、一体化されているため、軽量化および寸法精度の確保が容易である。また、アンビルを交換する直前、支持ブラケットを、水平方向に旋回させることで、変位センサーは、アンビルの交換の際にアンビルと干渉しない退避位置に移動するため、アンビルの交換中における変位センサーとアンビルとの干渉が、簡単に防止される。さらに、アンビルの交換完了後、支持ブラケットを逆向きに水平方向に旋回(復動)させることにより、変位センサーは、初期位置に復帰する。つまり、アンビルの交換完了後において、変位センサー52とアンビル30との間の距離を一定に保って、アンビルの振動の検出精度を向上させることが容易である。
【0058】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、上部プレート(支持ベース)の高さを調整するために使用される下部プレートは、必要に応じて省略することも可能である。