(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0020】
≪油圧緩衝器の構成≫
油圧緩衝器100Aの構成を説明する。
油圧緩衝器100Aは、例えば車両に搭載され、これに外挿するスプリング等と共に、サスペンション装置を構成するものである。油圧緩衝器100Aは、3本のチューブが三重で配置されたトリプルチューブ型(三重管構造型)であって、ダンパケース111、外筒体112及びシリンダ113と、ピストン121と、ピストンロッド131と、第1ボトムバルブ200(第1弁装置)と、第2ボトムバルブ300(第2弁装置)と、ニードル弁10(第3弁装置、(弁装置))と、モータ31(電気駆動装置)と、給電線50A(給電体)と、を備えている。
【0021】
<ダンパケース、外筒体、シリンダ>
ダンパケース111、外筒体112及びシリンダ113は、円筒状の部品であり、同一中心軸線で配置されると共に、径方向内側から外側に向かって、シリンダ113、外筒体112、ダンパケース111の順で配置されている。
【0022】
ダンパケース111の上側はロッドガイド114に外嵌しており、外筒体112及びシリンダ113の上端は、ロッドガイド114の段違いで下方に突出した下面に差し込まれている。
【0023】
ロッドガイド114は、その中心を上下方向において貫通するピストンロッド131を、軸方向(上下方向)においてガイドするリング状の部品である。ロッドガイド114とピストンロッド131との間にはスリーブ114bが介設されている。ロッドガイド114の上方には、ピストンロッド131を液密にシールするオイルシール115が設けられている。オイルシール115の上方にはケース上蓋116が設けられ、ダンパケース111の上端がケース上蓋116にかしめられている。
【0024】
ダンパケース111の下端は、ケース下蓋117に外嵌している。外筒体112及びシリンダ113の下端は、後記する第1ベース210の段違いで上方に突出した上面に差し込まれている。なお、ケース下蓋117は、車輪側のブラケット等に固定されている。
【0025】
また、ダンパケース111は、接地されており、同様に接地された外部電源900と電気的に接続している。なお、ダンパケース111は、ケース下蓋117、第1ベース210、軸部材410、ガイド体11、ブラケット32を介して、モータ31のマイナス端子(他方極)と電気的に接続されている(
図3参照)。すなわち、外部電源900からモータ31に給電するマイナス側の給電経路(他の給電線)は、ダンパケース111を含んでいる。
【0026】
<ピストン>
ピストン121は、シリンダ113の内周面に摺動自在に配置されると共にシリンダ113内を、ピストン121の上側(ピストンロッド131の挿入側)のロッド側油室S1と、ピストン121の下側(ピストンロッド131の挿入側の反対側)のピストン側油室S2と、に区画している。すなわち、ピストン121、シリンダ113及びロッドガイド114で囲まれた空間は、ロッド側油室S1を構成している。そして、ピストン121、シリンダ113及び第2ボトムバルブ300で囲まれた空間は、ピストン側油室S2を構成している。
【0027】
<ピストンロッド>
ピストンロッド131は、中空部131aを有する細長の円筒状部品であり、ケース上蓋116、オイルシール115及びロッドガイド114を貫通し、上方からシリンダ113内に挿入されている。ピストンロッド131の下端部131bは、ピストン121を貫通し、ピストン121の下方に突出している。そして、この突出した部分はナット132と螺合しており、これにより、ピストンロッド131はピストン121に固定されている。中空部131aは、軸方向に延びると共にピストン側油室S2と外部とを連通している。なお、ピストンロッド131の上端は、車体側のブラケット等に固定されている。
【0028】
<第1ボトムバルブ>
第1ボトムバルブ200は、油圧緩衝器100Aのボトム側に配置された第1弁装置であり、第1ベース210と、第1圧側バルブシート220と、第1伸側バルブシート230と、を備えている。
【0029】
<第1ボトムバルブ−第1ベース>
第1ベース210は、シリンダ113及び外筒体112の下端に差し込まれている。そして、第1ベース210の下方には、第1ベース210及びケース下蓋117で囲まれた第1ボトム油室S3が形成されている。一方、第1ベース210の上方には、第1ベース210、後記する第2ベース310及びシリンダ113で囲まれた第2ボトム油室S4が形成されている。
【0030】
第1ベース210には、第1圧側ポート211、リザーバ室用ポート212、第1伸側ポート213、還流室用ポート214が形成されている。第1圧側ポート211は、軸方向に延び、第1ボトム油室S3と第2ボトム油室S4とを連通している。リザーバ室用ポート212は、径方向に延び、第1圧側ポート211とリザーバ室S6とを常時に連通している。第1伸側ポート213は、軸方向に延び、第1ボトム油室S3と第2ボトム油室S4とを連通している。還流室用ポート214は、軸方向に延び、第1ボトム油室S3と還流室S5とを常時に連通している。
【0031】
<第1ボトムバルブ−第1圧側バルブシート>
第1圧側バルブシート220は、第1圧側ポート211の第1ボトム油室S3側開口を塞ぐように設けられている。第1圧側バルブシート220は、弾性変形可能な金属製の薄板で構成されており、圧側行程時、第2ボトム油室S4の油圧に対応して弾性変形することで、第1圧側ポート211と第1ボトム油室S3との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0032】
<第1ボトムバルブ−第1伸側バルブシート>
第1伸側バルブシート230は、第1伸側ポート213の第2ボトム油室S4側開口を塞ぐように設けられている。第1伸側バルブシート230は、弾性変形可能な金属製の薄板で構成されており、伸側行程時、第1ボトム油室S3の油圧に対応して弾性変形することで、第1伸側ポート213と第2ボトム油室S4との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0033】
<第2ボトムバルブ>
第2ボトムバルブ300は、油圧緩衝器100Aのボトム側において第1ボトムバルブ200よりも上方に第2ボトム油室S4を隔てて配置された第2弁装置であり、第2ベース310と、第2圧側バルブシート320と、第2伸側バルブシート330と、を備えている。
【0034】
<第2ボトムバルブ−第2ベース>
第2ベース310には、第2圧側ポート311、第2伸側ポート312が形成されている。第2圧側ポート311及び第2伸側ポート312は、それぞれ軸方向に延び、ピストン側油室S2と第2ボトム油室S4とをそれぞれ連通している。
【0035】
<第2ボトムバルブ−第2圧側バルブシート>
第2圧側バルブシート320は、第2圧側ポート311の第2ボトム油室S4側開口を塞ぐように設けられている。第2圧側バルブシート320は、弾性変形可能な金属製の薄板で構成されており、圧側行程時、ピストン側油室S2の油圧に対応して弾性変形することで、第2圧側ポート311と第2ボトム油室S4との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0036】
<第2ボトムバルブ−第2伸側バルブシート>
第2伸側バルブシート330は、第2伸側ポート312のピストン側油室S2側開口を塞ぐように設けられている。第2伸側バルブシート330は、弾性変形可能な金属製の薄板で構成されており、伸側行程時、第2ボトム油室S4の油圧に対応して弾性変形することで、第2伸側ポート312とピストン側油室S2との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0037】
<第1ボトムバルブ、第2ボトムバルブ−その他>
軸方向において、第1ボトムバルブ200、第2ボトムバルブ300を、軸部材410(ボトムボルト)が貫通している。軸部材410は、第1ベース210及び第2ベース310を貫通する軸部411と、軸部411の下部に形成された大径の頭部412と、を備えている。
【0038】
軸方向において、第1ボトムバルブ200及び第2ボトムバルブ300の間にはスペーサ(図示しない)等が介設され、第1ボトムバルブ200及び第2ボトムバルブ300が所定間隔で保持されている。第2ボトムバルブ300から上方に突出した軸部411には、プレート421、ナット422が取り付けられている。
【0039】
軸部411には、軸方向に延びる第1ポート413が形成されており、第1ポート413の上端はピストン側油室S2と連通している。また、軸部材410には、第1ポート413の下端から径方向外向きに延びる第2ポート414が形成されている。
【0040】
第2ポート414の第2ボトム油室S4側開口には、パイプ415が差し込まれている。そして、第2ポート414は、パイプ415の中空部415aを介して、第2ボトム油室S4と常時に連通している。
【0041】
<ニードル弁>
ニードル弁10は、ピストンロッド131の挿入側(上側)の反対側(下側)でダンパケース111内に設けられ、作動することでピストン側油室S2と第2ボトム油室S4との間における油量を可変し、減衰力を可変する弁装置である。具体的には、ニードル弁10は、第1ポート413の上側の開口面積を可変することで、減衰力を可変する弁装置である。ニードル弁10は、第1ポート413の上側の開口面積を可変するニードル20と、ニードル20を軸方向においてガイドするガイド体11と、を備えている(
図3参照)。
【0042】
ガイド体11は、略円筒状を呈しており、その下部がナット422から上方に突出した軸部411に螺合している。ガイド体11には、ピストン側油室S2と第1ポート413とを連通させる複数(例えば4つ)の連通ポート12が形成されている。複数の連通ポート12は周方向において等間隔で配置されると共に、各連通ポート12は径方向に延びている。
【0043】
ニードル20は、第1ポート413の上側の開口に差し込まれる先端部21と、先端部21から上方に延びると共にガイド体11によって軸方向にガイドされる基部22と、を備えている。基部22及びガイド体11には、軸方向に延びるキー及びキー溝が形成されており、基部22(ニードル20)がガイド体11に対して相対回転しないようになっている。基部22には、上方に開口した雌ねじ穴22aが形成されている。
【0044】
<モータ>
モータ31は、ピストンロッド131の挿入側(上側)の反対側(下側)で、その全体がダンパケース111内に設けられ、通電することでニードル弁10を作動する電気駆動装置である。このようなモータ31は、例えば、ステッピングモータで構成される。
【0045】
モータ31の出力軸31aには雄ねじ部が形成されており、雄ねじ部は前記雌ねじ穴22aに螺合している。そして、モータ31の回転角度に対応して、ニードル20が上下し、第1ポート413の上側の開口面積が0を含めて可変するように構成されている。
【0046】
具体的には、モータ31は、逆U字形のブラケット32を介して、ガイド体11に固定されている。また、モータ31の外側には、縦断面視で逆U字形を呈するカバー33が設けられており、ピストン側油室S2の油が遮断されている。詳細には、カバー33の下部はガイド体11の上部に外嵌すると共に、溶接部33aで固定されている。ただし、カバー33がガイド体11に螺合する構成としてもよい。カバー33及びガイド体11の間には、油をシールするOリング33b(シール部材)が設けられている。
【0047】
<給電線>
給電線50Aは、外部電源900からモータ31に給電すると共に、ピストンロッド131の中空部131aを延びる部品である。具体的には、給電線50Aは、モータ31と外部電源900とのプラス側の給電経路を構成しており、ピストンロッド131を貫通し、上端及び下端はピストンロッド131から突出している。なお、給電線50Aの表面には、ピストンロッド131等と電気的に絶縁するための絶縁膜(図示しない)が形成されている。後記する給電線50B、給電線50Cについても同様に絶縁膜が形成されている。
【0048】
給電線50Aは剛体であり、その下端はモータ31のプラス端子(一方極)に電気的に接続されており、その上端はカプラ(図示しない)を介して外部電源900のプラス端子に電気的に接続されている。給電線50Aの長さは、油圧緩衝器100Aが伸長しピストンロッド131が上方に移動しても、給電線50Aの上端が外部に露出する長さに設定されている(
図2参照)。つまり、ピストン121が下がり、油圧緩衝器100Aが縮退すると、ケース上蓋116からの給電線50Aの突出長さが長くなる(
図1参照)。給電線50Aとピストンロッド131の下端部131bとの間には、油をシールするOリング131cが設けられている。
【0049】
<油室>
ここで、油室について説明する。
過剰な油を一時的に貯溜するリザーバ室S6は、ダンパケース111、外筒体112、ロッドガイド114、ケース下蓋117及び第1ベース210で囲まれた空間で構成されている。なお、リザーバ室S6において、油溜まりの上方には、ガス溜まりS7が形成されている。
【0050】
シリンダ113の径方向外側で油を還流させる還流室S5は、外筒体112、シリンダ113、ロッドガイド114及び第1ベース210で囲まれた空間で構成されている。なお、還流室S5は、その上側で、ロッドガイド114に形成された切欠114aを介して、ロッド側油室S1と連通している。
【0051】
ロッド側油室S1、ピストン側油室S2、第1ボトム油室S3、第2ボトム油室S4については前記したとおりである。
【0052】
≪油圧緩衝器の作用効果≫
油圧緩衝器100Aの作用効果を説明する。
【0053】
<圧側行程>
図3を参照して、圧側行程について説明する。
ピストンロッド131及びピストン121が下方に移動すると、ピストン側油室S2の油圧が上昇し、第2圧側バルブシート320が弾性変形する。そうすると、ピストン側油室S2の油が第2圧側ポート311を通って第2ボトム油室S4に流入する。
【0054】
これに並行して、モータ31はニードル弁10を開く。そうすると、ピストン側油室S2の油は、第1ポート413、第2ポート414、中空部415aを通って、第2ボトム油室S4に流入する。
【0055】
次いで、第2ボトム油室S4の油圧が上昇し、第1圧側バルブシート220が弾性変形する。そうすると、第2ボトム油室S4の油が、第1圧側ポート211を通って第1ボトム油室S3に流入する。これと同時に、第2ボトム油室S4の油の一部は、第1圧側ポート211、リザーバ室用ポート212を通って、リザーバ室S6に流入する。
【0056】
次いで、第1ボトム油室S3の油は、還流室用ポート214、還流室S5、ロッドガイド114の切欠114aを通って、ロッド側油室S1に流入する。
【0057】
このようにして、第2圧側バルブシート320の弾性変形量、第1圧側バルブシート220の弾性変形量、第1ポート413の開口面積に対応して、圧側行程時の減衰力が発生する。
【0058】
<伸側行程>
図4を参照して、伸側行程について説明する。
ピストンロッド131及びピストン121が上方に移動すると、ロッド側油室S1(
図1参照)の油圧が上昇し、ロッド側油室S1の油が、ロッドガイド114の切欠114a、還流室S5、還流室用ポート214を通って、第1ボトム油室S3に流入する。そうすると、第1ボトム油室S3の油圧が上昇し、第1伸側バルブシート230が弾性変形する。これにより、第1ボトム油室S3の油が、第1伸側ポート213を通って、第2ボトム油室S4に流入する。
【0059】
これに並行して、リザーバ室S6の油が、リザーバ室用ポート212、第1圧側ポート211、を通って、第2ボトム油室S4に流入する。
【0060】
次いで、第2ボトム油室S4の油圧が上昇し、第2伸側バルブシート330が弾性変形する。そうすると、第2ボトム油室S4の油が、第2伸側ポート312を通ってピストン側油室S2に流入する。
【0061】
なお、伸側行程では、ニードル弁10は閉じたままである。
【0062】
このようにして、第1伸側バルブシート230の弾性変形量、第2伸側バルブシート330の弾性変形量に対応して、伸側行程時の減衰力が発生する。
【0063】
<その他効果>
モータ31の全体がダンパケース111内に設けられた構成であるので、モータ31がブラケット等の外装部品から取付位置の制約を受けることはない。また、外部電源900からモータ31に給電する給電線50Aが、ピストンロッド131の中空部131aを延びる構成であるので、給電線50Aの取り回しは容易となる。
【0064】
さらに、マイナス側の給電線を備えず、ダンパケース111等を給電経路として使用するので、部品点数が削減される。
【0065】
≪第1実施形態−変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更してもよいし、後記する実施形態の構成と適宜に組み合わせてもよい。
【0066】
前記した実施形態では、伸側行程時、モータ31が作動せず、ニードル弁10が閉じたままである構成を例示したが、伸側行程時もモータ31が作動し、ニードル弁10が開き、減衰力が可変する構成とてもよい。また、圧側行程時及び/又は伸側行程時、ニードル弁10の開度を連続的に可変する構成としてもよい。
【0067】
前記した実施形態では、ニードル弁10を作動させる電気駆動装置が通電することで回転運動するモータ31である構成を例示したが、その他に例えば、通電により可動コアが往復運動するソレノイドである構成でもよい。
【0068】
前記した実施形態では、ニードル20が上下することで、第1ポート413の上側の開口面積を可変し油量を可変する構成を例示したが(
図3参照)、その他に例えば、連通ポート12を周方向において異なる大きさにすると共に、モータ31の出力軸31aにロータリ弁体を取り付け、モータ31が回転することで前記ロータリ弁体が異なる大きさの連通ポート12を開閉し、油量を可変する構成としてもよい。
【0069】
前記した実施形態では、ピストンロッド131の挿入側が鉛直上側である構成を例示したが、ピストンロッド131の挿入側が鉛直下側ある構成でもよい。また、油圧緩衝器100Aの軸方向が鉛直方向である構成を例示したが、油圧緩衝器100Aの軸方向が水平方向である構成でもよい。すなわち、油圧緩衝器100Aの姿勢はどのようでもよい。
【0070】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態について、
図5〜
図6を参照して説明する。なお、第1実施形態と異なる部分を説明する。後記する第3実施形態等についても同様である。
【0071】
≪給電線≫
第2実施形態に係る油圧緩衝器100Bは、給電線50Aに代えて、ピストン121及びピストンロッド131の移動に対応して伸縮する給電線50Bを備えている。給電線50Bは、大径の円筒状を呈するロッド側給電線51(ロッド側給電体)と、ロッド側給電線51と同軸で配置されると共に小径の円筒状を呈する駆動装置側給電線52(駆動装置側給電体)と、を備えている。
【0072】
<給電線−ロッド側給電線>
ロッド側給電線51は、ピストンロッド131の中空部131aを延びると共に、中空部131aを囲む内周面131dに、例えば、接着剤等で固定されている。ロッド側給電線51の上端は、ピストンロッド131から突出し、外部電源900のプラス端子と電気的に接続されている。ロッド側給電線51の下端部51aは、肉厚で形成されており、駆動装置側給電線52と電気的に導通可能であると共に摺接している。
【0073】
<給電線−駆動装置側給電線>
駆動装置側給電線52は、ロッド側給電線51の内側で、モータ31からピストンロッド131の挿入側(上側)に向けて軸方向で延びている。そして、駆動装置側給電線52の下端は、モータ31のプラス端子(一方極)に電気的に接続されている。したがって、駆動装置側給電線52は、ピストン121が上下しても、その軸方向位置は変化しない。
【0074】
駆動装置側給電線52の上部52aは、ピストンロッド131の下端部131bを貫通し、中空部131aを上方に延びている。そして、上部52aは、前記したロッド側給電線51の下端部51aと導通可能である共に摺接している。駆動装置側給電線52と下端部131bとの間には、Oリング131cが介設されている。
【0075】
なお、ダンパケース111は、第1実施形態と同様に接地されている。つまり、マイナス極側の給電経路は、ダンパケース111を含んでいる。また、油圧緩衝器100B、後記する第3実施形態に係る油圧緩衝器100Cの流路構成は、第1実施形態と同様である。
【0076】
≪第2実施形態−作用効果≫
第2実施形態によれば次の作用効果を得る。
モータ31の全体がダンパケース111内に設けられた構成であるので、モータ31が外装部品から取付位置の制約を受けることはない。また、給電線50Bが、ピストンロッド131の中空部131aを延びる構成であるので、その取り回しは容易となる。さらに、マイナス側の専用の給電線を備えないので、部品点数が削減される。
【0077】
しかも、本実施形態では、ロッド側給電線51と駆動装置側給電線52とは導通可能であると共に摺接しているので、ピストン121及びピストンロッド131と共に、ロッド側給電線51が軸方向(上下方向)に移動しても、ロッド側給電線51と駆動装置側給電線52との電気的接続は維持される。
【0078】
また、ロッド側給電線51がピストンロッド131に固定されているので、油圧緩衝器100Bが縮退しても、ロッド側給電線51(給電線50B)のピストンロッド131からの突出量(長さ)は一定であり(
図5、
図6参照)、第1実施形態のように給電線50Aの突出量が大きくなることはない(
図1参照)。
【0079】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態について、
図7〜
図8を参照して説明する。
【0080】
≪給電線≫
第3実施形態に係る油圧緩衝器100Cは、第2実施形態に係る給電線50B(第1給電体)と、給電線50C(第2給電体)と、を備えている。給電線50Bについては、第2実施形態と同様である。そして、例えば、給電線50Bがプラス極側の給電線を構成しており、給電線50Cがマイナス極側の給電線を構成している。また、第3実施形態では、ダンパケース111を接地する必要がなく、アース部材(車両のフレーム)等を考慮せずに、油圧緩衝器100Cをレイアウト可能である。
【0081】
給電線50Cは、少なくとも一部にピストン121の移動に対応して伸縮可能である第B伸縮給電線54(伸縮部分)を備えている。具体的には、給電線50Cは、上側から下側に向かって、第A給電線53と、第B伸縮給電線54と、第C給電線55と、を備えている。ただし、給電線50Cは、(1)全体が伸縮可能な構成でもよいし、(2)複数の伸縮部分を備える構成でもよい。
【0082】
第A給電線53の上端は外部電源900と接続されており、下端は第B伸縮給電線54の上端に接続されている。第C給電線55の上端は第B伸縮給電線54の下端に接続されており、下端はモータ31に接続されている。第A給電線53及び第C給電線55は、剛性を有しており伸縮しない。
【0083】
また、第A給電線53は、電気的絶縁性を有するスペーサ(図示しない)を介して、ロッド側給電線51に固定されている。すなわち、第A給電線53は、前記スペーサ、ロッド側給電線51を介して、ピストンロッド131に固定されている。これにより、第A給電線53とピストンロッド131との相対位置関係は固定であり、油圧緩衝器100Cが縮退しても、第A給電線53のピストンロッド131からの突出量(長さ)は一定である(
図7参照)。
【0084】
<第B伸縮給電線>
第B伸縮給電線54は、ピストンロッド131の上下により第A給電線53の軸方向位置が変化しても、これに追従して伸縮することで、第A給電線53と第C給電線55との電気的接続を維持するものである。なお、第B伸縮給電線54は、ピストンロッド131の中空部131aに配置されることが好ましい。
【0085】
第B伸縮給電線54は、例えば、導線を、螺旋ばね状、蛇腹状、フィルム状としたもので構成される。その他、第B伸縮給電線54は、アンテナ構造(振り出し構造)とされる。
【0086】
≪第3実施形態−作用効果≫
このような第3実施形態によれば、次の作用効果を得る。
モータ31の全体がダンパケース111内に設けられた構成であるので、モータ31が外装部品から取付位置の制約を受けることはない。また、給電線50B、給電線50Cが、ピストンロッド131の中空部131aを延びる構成であるので、その取り回しは容易となる。具体的には、外部電源900から、給電線50B(第1給電体)及び給電線50C(第2給電体)を介して、モータ31に給電できる。
【0087】
第B伸縮給電線54がピストン121の移動に対応して伸縮するので、外部電源900とモータ31との電気的接続が良好に維持される。すなわち、油圧緩衝器100Cが縮退し、ピストン121及びピストンロッド131が下方に移動すると、第B伸縮給電線54が縮退する(
図7参照)。一方、油圧緩衝器100Cが伸長し、ピストン121及びピストンロッド131が上方に移動すると、第B伸縮給電線54が伸長する(
図8参照)。
【0088】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態について、
図9〜
図10を参照して説明する。
【0089】
≪油圧緩衝器の構成≫
油圧緩衝器100Dは、2本のチューブが二重で配置されたダブルチューブ型(二重管構造型)であって、ダンパケース111及びシリンダ113と、ピストン121と、ピストンロッド131と、第1ボトムバルブ200と、ピストンバルブ500と、ニードル弁10(弁装置)と、モータ31(電気駆動装置)と、給電線50B(第1給電線)と、給電線50C(第2給電線)と、を備えている。なお、ピストンロッド131は、アダプタ133を介してピストン121に固定されている。そして、アダプタ133と給電線50Bの駆動装置側給電線52との間には、Oリング134(オイルシール)が設けられている。
【0090】
<ピストンバルブ>
ピストンバルブ500は、圧側ポート122及び伸側ポート123と、圧側バルブシート510と、伸側バルブシート520と、を備えている。圧側ポート122及び伸側ポート123は、ピストン121に軸方向で形成されており、ロッド側油室S1とピストン側油室S2とを連通している。
【0091】
圧側バルブシート510は、圧側ポート122のロッド側油室S1側開口を塞ぐように設けられている。圧側バルブシート510は、圧側行程時、ピストン側油室S2の油圧に対応して弾性変形することで、圧側ポート122とロッド側油室S1との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0092】
伸側バルブシート520は、伸側ポート123のピストン側油室S2開口を塞ぐように設けられている。伸側バルブシート520は、伸側行程時、ロッド側油室S1の油圧に対応して弾性変形することで、伸側ポート123とピストン側油室S2との連通断面積が変化し、減衰力が発生するようになっている。
【0093】
<その他異なる構成>
ピストン側油室S2は、軸部材410(ボトムボルト)の第1ポート413及び第2ポート416を介して、第1ボトム油室S3と連通している。第1ボトム油室S3は、第1ベース210のリザーバ室用ポート215を介して、リザーバ室S6と連通している。
【0094】
≪油圧緩衝器の作用効果≫
油圧緩衝器100Dの作用効果を説明する。
【0095】
<圧側行程>
ピストンロッド131及びピストン121が下方に移動すると、ピストン側油室S2の油圧が上昇し、圧側バルブシート510が弾性変形する。そうすると、ピストン側油室S2の油が圧側ポート122を通ってロッド側油室S1に流入する。これと同時に、第1圧側バルブシート220が弾性変形する。そうすると、ピストン側油室S2の油が、第1圧側ポート211、第1ボトム油室S3、リザーバ室用ポート215を通って、リザーバ室S6に流入する。
【0096】
これに並行して、モータ31はニードル弁10を開く。そうすると、ピストン側油室S2の油は、第1ポート413、第2ポート416、第2ボトム油室S4、リザーバ室用ポート215を通って、リザーバ室S6に流入する。
【0097】
<伸側行程>
伸側行程について説明する。
ピストンロッド131及びピストン121が上方に移動すると、ロッド側油室S1の油圧が上昇し、伸側バルブシート520が弾性変形する。そうすると、ロッド側油室S1の油が伸側ポート123を通ってピストン側油室S2に流入する。これと同時に、第1伸側バルブシート230が弾性変形する。そうすると、リザーバ室S6の油が、リザーバ室用ポート215、ピストン側油室S2の油が、リザーバ室用ポート215、第1ボトム油室S3、第1圧側ポート211を通って、ピストン側油室S2に流入する。
【0098】
<その他効果>
モータ31の全体がダンパケース111内に設けられた構成であるので、モータ31が外装部品から取付位置の制約を受けることはない。また、給電線50B、給電線50Cが、ピストンロッド131の中空部131aを延びる構成であるので、その取り回しは容易となる。
【0099】
そして、第3実施形態と同様に、外部電源900から、給電線50B(第1給電線)及び給電線50C(第2給電線)を介して、モータ31に給電できる。また、第B伸縮給電線54がピストン121の移動に対応して伸縮するので、外部電源900とモータ31との電気的接続が良好に維持される。
【0100】
≪第4実施形態−変形例≫
油圧緩衝器100Dは、給電線50B及び給電線50Cを備える構成としたが、(1)給電線50Bのみを備える構成、(2)給電線50Cのみを備える構成、(3)給電線50A(
図1参照)のみを備える構成に変更してもよい。