(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063306
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】車載機器の封印構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20170106BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20170106BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B60R16/02 610A
G07C5/00 Z
H02G3/08 030
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-46897(P2013-46897)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-174746(P2014-174746A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】高森 徹示
【審査官】
角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−098647(JP,A)
【文献】
実公平5−021836(JP,Y2)
【文献】
特開平10−239089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 1/00−9/02
13/00−15/00
B60R 16/02
H02G 3/08−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板コネクタを実装した基板が内方に収容されて一体に固定される一対のケースハウジングを有するケース本体と、
前記ケースハウジングの少なくとも一方に形成され、前記基板コネクタに結合されるハーネスコネクタが挿入されるコネクタ装着穴と、
前記一対のケースハウジングのそれぞれに係合して前記コネクタ装着穴を覆うと共に前記ハーネスコネクタに接続された電線が挿通される切欠を有するコネクタカバーと、
前記コネクタカバーの上から前記ケースハウジングの少なくとも一方に貼り付けられる封印シールと、
を備えることを特徴とする車載機器の封印構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車載機器の封印構造であって、
前記コネクタカバーが、導電性金属により形成されると共に、前記基板のアース回路に接続されるアース接続部を有することを特徴とする車載機器の封印構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車載機器の封印構造であって、
前記コネクタ装着穴が、前記ケース本体の裏面及び側面に跨って開口し、
前記ケース本体の裏面及び側面に跨って覆う前記コネクタカバーの切欠きが、前記ケース本体の裏面及び側面に沿って開口していることを特徴とする車載機器の封印構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器の封印構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器として、車両の走行速度や走行距離といった情報を記録する運行記録計が知られている(例えば特許文献1参照)。運行記録計としては、従来より、インストルメントパネルに取り付けた本体に対して、時計や速度計等の計器が一体に収容されたケースを開閉する運行記録計が広く使用されていた。運行記録計においては、車両の走行速度を検出する走行センサからの走行パルスを取り込むための配線(ハーネスコネクタ)が、車内から目立たないコンソールボックスの裏側から接続できるように、ハーネスコネクタを接続するための基板コネクタを本体の後面に配置している。これに合わせて、基板コネクタを実装する基板が、本体内部の後端側に配置されている。
【0003】
この様な運行記録計の内部には、電圧変換後の走行パルスの検出感度を走行センサの特性に合わせて調整するために、検出基準電圧を調整するためのボリューム、つまり、可変抵抗が設けられている。この可変抵抗は、製品出荷前の最終試験時やメンテナンス時に調整可能とするために、本体の後部に開口を設けておいて、取り外し可能な板材等で普段は塞いでおくことが考えられる。しかし、可変抵抗の調整を必要がないのに勝手に行われてしまうと、記録紙に記録される走行情報の内容が実際とは異なる内容に変えられてしまい、走行情報の記録の改竄に結びついてしまうおそれがある。従って、簡単に可変抵抗が本体の外側に露出するような構成とするわけにもいかない。
【0004】
そこで、従来の運行記録計は、車両の走行センサからの走行パルスの検出感度を調整するために操作される可変抵抗が、
図6に示す本体501の後端に設けた開口部503から外方に露出させられる。本体501は、天板部505を有する上ケース(ケースハウジング)507と、底板部509を有する下ケース(ケースハウジング)511とからなる。上ケース507と下ケース511は、両側のそれぞれに取付板513が取り付けられ、前部に前面パネル515が取り付けられる。本体501は、開口部503を放熱板517により塞ぐに当たり、放熱板517の本体501へのネジ止めに用いる複数の取付ネジ519のうち1つの取付ネジ521を、上ケース507の外側から目隠し孔523に挿入した上で、本体501の内部で放熱板517の取付片525の通孔527に取付ネジ521の先端を挿入させて固定する。その後、目隠し孔523を、破壊しなければ外せない封印材である
図7に示すキャップ529で塞いで取付ネジ521が本体501の外側に露出しないようにする構成とした。これにより、走行情報の記録の改竄につながる内部の部品の操作を、必要な際には可能としつつ、通常は容易に行われないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−239089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両への上記運行記録計の取付時には、車両との電気的接続をする目的で、本体501の基板531にコネクタカバーである放熱板517のコネクタ装着穴533を通じて図示しないハーネスコネクタを結合させるが、ハーネスコネクタよりも放熱板517に設けたコネクタ装着穴533が大きいため、取付後、ハーネスコネクタを外すことが可能となってしまう。また、放熱板517が金属製である場合、静電気が流れて記録計内部の電装品に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、封印シールを剥がしてコネクタカバーを外さなければ、ケース本体を分解することも、ハーネスコネクタを外すこともできない車載機器の封印構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 基板コネクタを実装した基板が内方に収容されて一体に固定される一対のケースハウジングを有するケース本体と、前記ケースハウジングの少なくとも一方に形成され、前記基板コネクタに結合されるハーネスコネクタが挿入されるコネクタ装着穴と、前記一対のケースハウジングのそれぞれに係合して前記コネクタ装着穴を覆うと共に前記ハーネスコネクタに接続された電線が挿通される切欠を有するコネクタカバーと、前記コネクタカバーの上から前記ケースハウジングの少なくとも一方に貼り付けられる封印シールと、を備えることを特徴とする車載機器の封印構造。
【0009】
上記(1)の構成の車載機器の封印構造によれば、一体に固定された一対のケースハウジングのそれぞれにコネクタカバーが係合され、コネクタカバーの上からケースハウジングの少なくとも一方に封印シールが貼り付けられるので、ケース本体を分解するにはコネクタカバーの係合を解除しなければならず、コネクタカバーの係合を解除するには封印シールを剥がさなければならない。ケース本体のコネクタ装着穴から導出される電線は、コネクタ装着穴を覆っているコネクタカバーの切欠に挿通される。従って、ハーネスコネクタを基板コネクタから外すには、コネクタカバーをケース本体から外さなければならず、コネクタカバーを外すには封印シールを剥がさなければならない。即ち、開封の痕跡を残さずに密かにハーネスコネクタを基板コネクタから外すことは不可能となる。
【0010】
(2) 上記(1)の構成の車載機器の封印構造であって、前記コネクタカバーが、導電性金属により形成されると共に、前記基板のアース回路に接続されるアース接続部を有することを特徴とする車載機器の封印構造。
【0011】
上記(2)の構成の車載機器の封印構造によれば、コネクタカバーを導電性金属により形成することで、経時劣化に対する耐久性や機械的強度が高められ、軽量薄肉化が可能となる。また、コネクタカバーがアース接続部を有し、このアース接続部が車載機器に収容された基板のアース回路に接続されることで、車載機器内の電子部品がコネクタカバーに掛かる静電気から保護される。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)の構成の車載機器の封印構造であって、前記コネクタ装着穴が、前記ケースハウジングの裏面及び側面に跨って開口し、前記ケース本体の裏面及び側面に跨って覆う前記コネクタカバーの切欠きが、前記ケース本体の裏面及び側面に沿って開口することを特徴とする車載機器の封印構造。
【0013】
上記(3)の構成の車載機器の封印構造によれば、コネクタカバーの切欠が、ケース本体の裏面及び側面に繋がって設けられているため、電線は、ケース本体の裏面及び側面のどちらの方向でも取り出しが可能である。例えばケース本体の裏面がセンターコンソール等の壁面に取り付けられた後でも、電線及びコネクタカバーの抜き差しが側面方向から可能となり、ケース本体が車両に取付・封印された後であってもオプション機器の追加が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車載機器の封印構造によれば、封印シールを剥がしてコネクタカバーを外さなければ、ケース本体を分解することも、ハーネスコネクタを外すこともできない。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る封印構造を備える車載機器の
図2におけるA−A断面図である。
【
図2】(a)は
図1の車載機器を裏ケース側から見た斜視図、(b)は(a)の平面図である。
【
図3】(a)は
図1の車載機器を裏ケース側から見た分解斜視図、(b)は(a)のコネクタカバーを省略した平面図である。
【
図5】(a)は封印シールが貼られる前の車載機器の側面図、(b)は封印シールが貼られた後の車載機器の側面図である。
【
図7】
図6に示した車載機器の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る車載機器の封印構造は、車載機器である例えば運行記録計11として好適に用いられる。この他、封印構造は、ケース本体13を開けたことの痕跡が分かるようにしたい車載機器であればいずれのものに適用されてもよい。本実施形態では、封印構造を運行記録計11に適用した場合を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る運行記録計11の封印構造は、ケース本体13と、コネクタ装着穴15と、コネクタカバー17と、封印シール19と、を備える。
【0018】
本実施形態の運行記録計11は、インストルメントパネル(図示せず)に取り付けたケース本体13に対して、時計や速度計等の計器が一体に収容される。運行記録計11においては、車両の走行速度を検出する走行センサからの走行パルスを取り込むためのハーネスアッシー21が、車内から目立たないセンターコンソールの裏側から接続できるように、ハーネスコネクタ23を接続するための基板コネクタ25をケース本体13の内方に配置している。ハーネスアッシー21は、電線であるリード線27に、ハーネスコネクタ23を接続してなり、このハーネスコネクタ23がコネクタ装着穴15から挿入されて基板コネクタ25と結合される。
【0019】
これに合わせて、基板コネクタ25を実装する基板29が、ケース本体13に収容される。基板29にはアース表露出部31とアース裏露出部33とが形成されている。これらアース表露出部31及びアース裏露出部33は、基板29のアース回路に接続される。
【0020】
ケース本体13は、複数のネジ35によって一体に締結(固定)され、基板固定部に基板29が載置される。ケース本体13は、例えば樹脂製や板金製であり、一対のケースハウジングである表ケース37と裏ケース39とを有する。表ケース37の内方には裏ケース39に向かって突出する複数の固定柱(図示せず)が立設され、固定柱の先端には軸線方向に固定孔が形成される。固定柱の固定孔には、裏ケース39の外方から挿通されたネジ35が螺合される。これにより、表ケース37に裏ケース39が一体に締結固定される。
【0021】
表ケース37には、コネクタ装着穴15に接続する矩形開口部に短冊板状に起立してリブ41が形成される。また、裏ケース39にはリブ41に対応する位置に係止片45が設けられ、係止片45はコネクタ装着穴15に延出する。係止片45には係止爪47が突設されている(
図4参照)。更に、裏ケース39のコネクタ装着穴15を形成する両側壁には保持突起43が突設され、この保持突起43と係止片45との間には、コネクタカバー17の裏面板61が挿入されて保持される。
【0022】
ケース本体13には略矩形状のコネクタ装着穴15が形成される。コネクタ装着穴15は、ケース本体13の裏面49及び側面51に跨って開口される。コネクタ装着穴15は、基板29に実装された基板コネクタ25の結合開口部53を露出させる。コネクタ装着穴15は、結合開口部53に結合されるハーネスコネクタ23が挿入可能となるように形成される。また、基板コネクタ25と結合されたハーネスコネクタ23は、ケース本体13より外方へ突出することなく、コネクタ装着穴15内に収容される。
【0023】
コネクタ装着穴15は、ケース本体13を構成する表ケース37及び裏ケース39の少なくとも一方に形成され、基板コネクタ25に結合されるハーネスコネクタ23が挿入できるものであればよい。本実施形態におけるコネクタ装着穴15は、表ケース37及び裏ケース39の双方に形成される表ケース側コネクタ装着穴57と、裏ケース側コネクタ装着穴55とから構成されるものである(
図3参照)。この場合、表ケース側コネクタ装着穴57及び裏ケース側コネクタ装着穴55は、内周が開放する切欠穴として形成され、表ケース37と裏ケース39とが一体に固定されることで、相互が合わされ内周の閉じた一つのコネクタ装着穴15となる。また、表ケース側コネクタ装着穴57及び裏ケース側コネクタ装着穴55は、いずれか一方、或いは、双方が、除去可能な蓋部で仮閉鎖された穴(所謂ノックアウト穴)とされ、必要となった箇所の蓋部を破壊により除去して、リード線27の配索を可能とする構成であってもよい。
【0024】
コネクタカバー17は、一対の表ケース37及び裏ケース39のそれぞれに係合してコネクタ装着穴15を覆うと共にハーネスコネクタ23に接続された電線であるリード線27が挿通される複数(本実施形態では2つ)の切欠59を有する。コネクタカバー17は、
図3(a)に示すように、裏面板61と側面板63とが直角に曲げられたL字状に形成される。裏面板61には長穴65が穿設され、裏面板61は保持突起43と係止片45との間に挿入されて裏ケース39における係止片45の係止爪47に係止される。裏面板61と側面板63とには上記切欠59が形成され、切欠59はケース本体13の裏面49及び側面51に跨って、ケース本体13の裏面49及び側面51に沿って開口する。それぞれの切欠59の幅は、ハーネスコネクタ23の外形より小さく、リード線27の太さより大きく作られている。
【0025】
一対の切欠59の間にはU状に折り曲げられた湾曲部67が形成され、湾曲部67は平行な一対の対向壁を有する。対向壁の一方には突起状のアース接続部69が突設され、アース接続部69は基板29のアース表露出部31に接続される。対向壁の他方には同じく突起状のリブ係止部71が突設され、リブ係止部71は表ケース37のリブ41に係合される。コネクタカバー17は、一端側の裏面板61における長穴65を裏ケース39の係止片45に係止し、他端側のリブ係止部71を表ケース37のリブ41に係合することで、コネクタ装着穴15を覆うように固定される。リブ係止部71は、湾曲部67が弾性復元力よってリブ先端面を押圧することで、リブ41の背面に確実に係合される。これにより、コネクタカバー17は、コネクタ装着穴15からの離脱が規制されるようになっている。
【0026】
本実施形態のコネクタカバー17は、導電性金属により形成されており、コネクタ装着穴15を覆うように固定されると同時に、アース接続部69が基板29のアース表露出部31に押し付けられて電気的に確実に接続される。湾曲部67は、ケース本体13に固定された基板29とリブ41との間で弾性反発力によって固定される。そして、他端側の湾曲部67が固定されたコネクタカバー17は、一端側の裏面板61が係止片45と保持突起43とに挟まれて確実に固定される。
【0027】
このコネクタカバー17は、脱着する際、ケース本体13の側面51から、他端側の湾曲部67を更に湾曲させる方向に弾性変形させることで、リブ係止部71がリブ41から外れ、湾曲部67が手前に引き出し可能となる。コネクタカバー17は、この状態で、長穴65と係止爪47との係止を解除して、コネクタ装着穴15から脱着される。また、装着時には、ケース本体13の側面51から、裏面板61を係止片45と保持突起43との間に挿入し、長穴65を係止爪47に係止させるとともに、湾曲部67を基板29とリブ41との間に押し込むことにより、湾曲部67を弾性変形させて装着できる。即ち、コネクタカバー17は、ケース本体13の側面51のみが開放されていれば、着脱が行えるように構成されている。
【0028】
本実施形態の封印シール19は、運行記録計11とハーネスアッシー21を接続後、コネクタカバー17を封印する目的で使用される。封印シール19は、
図5に示すように、コネクタカバー17の上から表ケース37に貼り付けられる。封印シール19は、開封により例えば「開封済み」等の開封表示が出る改竄防止シールである。即ち、一旦剥がされれば、開封したことの痕跡が封印シール19に残ることになる。
【0029】
次に、上記構成を有する運行記録計11の封印構造の作用を説明する。
本実施形態に係る運行記録計11は、車体への取付時、運行記録計11の基板29に実装されている基板コネクタ25にハーネスアッシー21のハーネスコネクタ23を接続する。次に、ハーネスアッシー21のリード線27をコネクタカバー17の切欠59に通す。そして、コネクタカバー17の裏面板61を裏ケース39の保持突起43と係止片45の間に差し込むことで、コネクタカバー17の長穴65が裏ケース39の係止片45に嵌り込み、同時にコネクタカバー17のリブ係止部71が表ケース37のリブ41に嵌り込む。また同時にコネクタカバー17のアース接続部69が基板29のアース表露出部31に接触される。仮にコネクタカバー17を取り付ける前(或いは取り付け作業中)に、外部からコネクタカバー17に静電気が掛かっても、コネクタ装着穴15の奥で露出するアース裏露出部33にアース接続部69が接触して基板29のアース回路に接地されることで、基板29上の電子部品73を静電気から保護することができる。運用時、ハーネスアッシー21と基板コネクタ25との接続は、封印シール19をコネクタカバー17と表ケース37の上から貼り付けることで、封印がなされる。
【0030】
このように、本実施形態の運行記録計11の封印構造では、一体に固定された一対の表ケース37及び裏ケース39のそれぞれにコネクタカバー17が係合され、コネクタカバー17の上から表ケース37に封印シール19が貼り付けられる。ケース本体13を構成している表ケース37及び裏ケース39を分解するにはコネクタカバー17の係合を解除しなければならず、コネクタカバー17の係合を解除するには封印シール19を剥がさなければならない。
【0031】
また、コネクタカバー17は、ケース本体13のコネクタ装着穴15を覆っている。コネクタ装着穴15は、ハーネスコネクタ23よりも大きい。ケース本体13に収容された基板29にはハーネスコネクタ23が接続され、ハーネスコネクタ23に接続されるリード線27は、コネクタ装着穴15から外方へ導出される。このコネクタ装着穴15から導出されるリード線27は、コネクタ装着穴15を覆っているコネクタカバー17の切欠59に挿通される。切欠59は、ハーネスコネクタ23よりも小さい。
【0032】
従って、ハーネスコネクタ23を基板コネクタ25から外すには、コネクタカバー17をケース本体13から外さなければならず、コネクタカバー17をケース本体13から外すには封印シール19を剥がさなければならない。封印シール19は、剥がされれば、開封したことの痕跡が残る。即ち、開封の痕跡を残さずに密かにハーネスコネクタ23を基板コネクタ25から外すことは不可能となる。
【0033】
なお、本実施形態の運行記録計11の封印構造では、コネクタカバー17の切欠59が、リード線27の通る必要最低限の大きさでよいため、ケース本体13は、基板コネクタ25周辺の開口部を小さくでき、運行記録計11内への埃、虫等の侵入が低減され、運行記録計11の信頼性が向上する。
【0034】
また、本実施形態の運行記録計11の封印構造では、コネクタカバー17が導電性金属により形成されることで、経時劣化に対する耐久性や機械的強度が高められ、軽量薄肉化が可能となる。
即ち、例えば樹脂製のコネクタカバーが使用されると、季節によって高温・低温の温度差が激しく、長期間日光(照射熱、紫外線)に曝される厳しい車載環境下で、長期間常に応力の掛かる湾曲部67が応力緩和(一定の変形を与えてそのまま固定した場合に応力が時間とともにしだいに低下していくクリープ現象)を起こし、ケース本体13との固定が緩んでしまう可能性がある。また、樹脂製のコネクタカバーは、高温・低温が繰り返されることで、樹脂が膨張収縮し、コネクタカバーのケース本体13との固定が緩んでしまったり、長期間紫外線に曝されることで、樹脂表面にクラックが発生してしまったりする可能性がある。そこで、樹脂製のコネクタカバーを使用する際には、このような不具合を生じることがない好適な樹脂材料や成形形状を選択する必要がある。
【0035】
これに対し、導電性金属製のコネクタカバー17によれば、このような固定力の低下やクラックの発生がないので、設計が容易である。また、樹脂成形品に比べ、機械的強度が高いため、ハーネスコネクタ23を確実に保護する高い封印機能が得られる。そして、コネクタカバー17の湾曲部67に高い応力が掛けられる(強いバネ性を得ることができる)ため、ケース本体13との固定が強固となる。更に、同等強度の樹脂成形品に比べ、薄肉化が可能となり、運行記録計11の小型化、薄厚化が実現可能となる。
【0036】
また、本実施形態のコネクタカバー17は、基板29のアース回路に接続されるアース接続部69を有する。そこで、このアース接続部69がケース本体13に収容された基板29のアース回路に接続されることで、ケース本体13内の電子部品73が静電気から保護される。仮にコネクタカバー17に外部から静電気が掛かっても、接続されているアース表露出部31からアース回路に接地され、基板29の電子部品73が保護される。即ち、コネクタカバー17が導電性金属製であっても電気的にアースされているため、コネクタカバー17の取付前・後を問わずに静電気に強い構造とすることができる。
【0037】
更に、本実施形態に係る運行記録計11の封印構造では、コネクタカバー17の切欠59が、ケース本体13の裏面49及び側面51に繋がって設けられているため、リード線27は、運行記録計11の裏面49及び側面51のどちらの方向でも取り出しが可能となり、汎用性が高い。例えば、運行記録計11の裏面49がセンターコンソール等の壁面に取り付けられた後でも、リード線27及びコネクタカバー17の抜き差しが側面51の方向から可能となり、運行記録計11が車両に取付・封印された後であってもオプション機器の追加が容易となる。
【0038】
従って、本実施形態に係る車載機器の封印構造によれば、封印シール19を剥がしてコネクタカバー17をケース本体13から外さなければ、ケース本体13を構成する表ケース37及び裏ケース39を分解することも、ハーネスコネクタ23をケース本体13から外すこともできない。
なお、本発明の車載機器の封印構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0039】
11…運行記録計(車載機器)
13…ケース本体
15…コネクタ装着穴
17…コネクタカバー
19…封印シール
23…ハーネスコネクタ
25…基板コネクタ
27…リード線(電線)
29…基板
37…表ケース(ケースハウジング)
39…裏ケース(ケースハウジング)
49…裏面
51…側面
59…切欠
69…アース接続部