(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、本発明に先立って、カテーテルシャフトの先端を振動させる方法として、(1)偏心錘を回転させる方法、(2)圧電素子を用いる方法、(3)カテーテルシャフトを屈曲させるためのワイヤを利用する方法などを検討した。
【0016】
方法(1)では、カテーテルシャフトの先端に偏心錘を収納し、当該偏心錘を回転させる。偏心錘の質量及び偏心量を大きくするほど、発生する振動エネルギーが大きくなり、冷却効果が向上する。しかしながら、所望する冷却効果を得るために必要な質量及び偏心量を有する偏心錘を、小さな外径を有するカテーテルシャフトの先端に収納することは困難である。
【0017】
方法(2)では、積層型圧電素子をカテーテルシャフトの先端に収納する。積層型圧電素子にパルス状電圧を印加して積層型圧電素子を寸法変化させることにより、カテーテルシャフトの先端を振動させる。しかしながら、積層型圧電素子の寸法変化量は一般に小さいので、カテーテルシャフトの先端に発生する振動の振幅は小さく、有効な冷却効果を得ることは困難である。
【0018】
方法(3)では、カテーテルシャフトを屈曲させてその先端の向きを変えるためにカテーテルシャフトに一般的に内蔵されているワイヤを高速で交互に緊張及び弛緩させる。これにより、カテーテルシャフトの先端を屈曲振動させることができる。この方法は、上記の方法(1)及び(2)と異なり、カテーテルシャフトの先端に振動を発生させるための機構を新たに収納する必要がないので、カテーテルシャフトの先端の外径を小さくすることができる。しかしながら、カテーテルシャフトの屈曲及び振動の両方を行うために共通するワイヤを使用するので、ワイヤを引っ張ってカテーテルシャフトを屈曲させた状態では、ワイヤを交互に緊張及び弛緩させても、カテーテルシャフトの先端に発生する振動の振幅が著しく小さくなってしまい、所望する冷却効果が得られない。
【0019】
本発明者らは、上記の各方法が有する課題を解決しうる新たな方法を検討した。その結果、カテーテルシャフトの先端に振動発生機構を内蔵させ、カテーテルシャフト内に収納した回転伝達ワイヤを通じてカテーテルシャフト外から振動発生機構に回転動力を伝達する方法が、上記の目的を達成することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明のアブレーションカテーテルは、生体組織を焼灼するための電極をその先端に有するカテーテルシャフトと、前記電極を含む電極装置が搭載され且つ前記カテーテルシャフト内に収納された振動発生機構と、前記カテーテルシャフト内に回転可能に収納され、その一端が前記振動発生機構に接続され、その他端が前記カテーテルシャフトの末端から導出された回転伝達ワイヤとを備える。前記回転伝達ワイヤは、その前記他端に入力された回転運動を前記振動発生機構に伝達する。前記振動発生機構は、前記回転伝達ワイヤの回転運動により揺動する。前記振動発生機構の揺動により前記電極が振動する。
【0021】
上記の本発明のアブレーションカテーテルが、前記カテーテルシャフト内に収納された少なくとも1本の屈曲用ワイヤを含む屈曲機構を更に備えてもよい。この場合、前記カテーテルシャフトの前記末端から導出された前記少なくとも1本の屈曲用ワイヤが引っ張られると、前記屈曲機構は、前記電極が所望する向きに向くように前記カテーテルシャフトを屈曲変形させることが好ましい。これにより、簡単な構造により、電極が所望する向きに向くように本発明のカテーテルシャフトを屈曲変形させることができる。また、振動発生機構及び回転伝達ワイヤは、屈曲機構とは機構上独立しているので、屈曲機構によるカテーテルシャフトの屈曲状態とは無関係に常に安定した冷却効果を得ることができる。
【0022】
上記において、前記電極が振動する方向が、前記屈曲機構によって前記カテーテルシャフトが屈曲変形する方向に対して略垂直であってもよい。これにより、屈曲機構を用いてカテーテルシャフトを屈曲させて電極を被焼灼面に押し当てた状態でカテーテルシャフトをその長手方向に沿って掃引する場合、電極が振動する方向が、被焼灼面の法線方向に沿って見たときに電極の掃引方向に対して略直交させることができる。
【0023】
前記振動発生機構は、前記屈曲機構に対して前記電極側に配置されていることが好ましい。これにより、振動発生機構を備えることによってカテーテルシャフトが大径化するのを防ぐことができる。
【0024】
前記振動発生機構は、弾性的に屈曲変形可能なヒンジバネと、前記ヒンジバネによって保持された揺動ヘッドと、前記回転伝達ワイヤの回転運動により、円軌道に沿って変位するクランクピンとを備えてもよい。この場合、前記揺動ヘッドには、前記ヒンジバネの屈曲面に垂直な方向に沿って延びた溝が形成されていることが好ましい。前記クランクピンが前記揺動ヘッドの前記溝に係合していることが好ましい。これにより、いわゆるスコッチヨーク機構が構成され、回転運動を揺動ヘッドの揺動運動(振動)に変換する、簡単且つ高信頼性の振動発生機構を実現することができる。
【0025】
上記の本発明のアブレーションカテーテルが、前記カテーテルシャフトの前記末端を保持するハンドルと、前記回転伝達ワイヤを回転させるための回転運動を出力する回転駆動源とを更に備えてもよい。この場合、前記回転駆動源は、前記ハンドルの外に配置されていてもよい。この構成は、ハンドル内に回転駆動源が収納されないので、施術者が把持するハンドルの小型化且つ軽量化に有利である。また、回転駆動源の寸法や重量に関する制約が更に緩和されるので、冷却効果を更に向上させるのに有利である。
【0026】
前記回転伝達ワイヤは、保護チューブ内に回転可能に収納されてもよい。この場合、前記保護チューブ内に収納された前記回転伝達ワイヤが前記カテーテルシャフト内に収納されていてもよい。これにより、カテーテルシャフトの湾曲の如何に関わらず、回転伝達ワイヤがカテーテルシャフト内の他の部材に接触するのが回避される。これは、回転伝達ワイヤの回転動力損失が低減されるので、安定した冷却効果を得るのに有利である。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図では、実際の部材の寸法および各部材の寸法比率等は忠実に表されていない。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるアブレーションカテーテル(以下、単に「カテーテル」という)1の斜視図である。カテーテル1は、ハンドル10と、ハンドル10の長手方向の一端に保持されたカテーテルシャフト20とを備える。ハンドル10は、施術者が保持する部分であり、全体として略棒状形状を有する。カテーテルシャフト20は、従来のアブレーションカテーテルに使用されるカテーテルシャフトと同程度の長さ及び外径を有するとともに、自由に湾曲させることができる柔軟性を有している。図面を簡単化するために、
図1では、ハンドル10の長手方向に沿って直線状に延ばされたカテーテルシャフト20の中間部分を省略している。以下の説明の便宜のために、ハンドル10及び一直線に延ばされたカテーテルシャフト20の長手方向に平行な軸をY軸とするXYZ直交座標系を設定する。Z軸は、ハンドル10に設けられたワイヤグリップ15の回動軸12(
図5参照、詳細は後述する)と平行である。Y軸方向においてカテーテルシャフト20の先端の電極27e側を、「前」側または「先端」側と呼び、これと反対側を「後ろ」側または「末端」側と呼ぶ。また、Z軸方向を「上下方向」と呼び、Z軸と直交する方向(XY面と平行な方向)を「水平方向」と呼ぶ。但し、この「上下方向」及び「水平方向」は、カテーテル1の使用時の向きを意味するものではない。
【0029】
本実施形態1のカテーテル1では、カテーテルシャフト20の先端の電極27eが所望する向きに向くように、カテーテルシャフト20の電極27eの近傍の部分(
図6の屈曲部分21)を矢印21a,21bの向きに水平方向に屈曲させることができる。これに加えて、カテーテルシャフト20の電極27eを矢印22の向きに上下方向に振動させることができる。
【0030】
[カテーテルシャフトの構成]
カテーテルシャフト20の構成を説明する。
図2は、カテーテルシャフト20の先端及びその近傍の透視斜視図である。
図2において、二点鎖線25は、カテーテルシャフト20を覆う筒状のカバーである。
図2は、カバー25内に収納された部材を透視して示している。カテーテルシャフト20は、その先端側から、電極装置27、振動発生機構30、屈曲機構40をこの順に備えている。カバー25は、従来のカテーテルと同様に、柔軟性を有する材料(例えば樹脂材料)からなり、振動発生機構30及び屈曲機構40を含むカテーテルシャフト20内の部材を外界から液密にシールする。
【0031】
図3は、カテーテルシャフト20の先端及びその近傍においてカバー25内に収納された部材の分解斜視図である。
図4は、
図2及び
図3とは異なる向きから見た電極装置27及び振動発生機構30の斜視図である。
図4では、理解を容易にするために、屈曲機構40を取り除いている。
【0032】
電極装置27は、カテーテルシャフト20の先端に設けられる。電極装置27は、その先端に、生体組織に高周波電流を印加し焼灼するための電極27eを備える。電極27eは、生体組織に接触することができるように、カテーテルシャフト20の先端に外界に露出している。電極装置27が、生体組織に対する接触の有無や押力を検知するための感圧センサや、周囲の温度を検知するための温度センサなどの各種センサを備えていてもよく、あるいは、これら以外のアブレーションカテーテルにおいて公知の機能素子を備えていてもよい。
【0033】
カテーテルシャフト20の電極27eを振動させる振動発生機構30を説明する。本実施形態1の振動発生機構30は、回転シャフト31、ベース32、揺動ヘッド33、ヒンジバネ34を含む。
【0034】
回転シャフト31は、後ろ側(電極装置27とは反対側)から、入力軸31a、シャフト基部31b、クランクピン31cをこの順に備える。入力軸31aは、棒状の部材である。シャフト基部31bは、入力軸31aより大径の円柱形状を有する。クランクピン31cは、シャフト基部31bより小径の棒状の部材である。入力軸31aは、シャフト基部31bの後端に、シャフト基部31bと同軸に接続されている。一方、クランクピン31cは、シャフト基部31bの前端に、入力軸31a及びシャフト基部31bに対して偏心して接続されている。
【0035】
ベース32は略円柱形状を有する。ベース32には、その軸方向(Y軸方向)にベース32を貫通する2つの貫通孔32a,32bが形成されている。2つの貫通孔32a,32bのうちの一方である軸受け孔32aに回転シャフト31の入力軸31aが挿入されて、回転シャフト31は軸受け孔32aによって回転可能に支持されている。軸受け孔32aを貫通してベース32から後方に向かって突出した回転シャフト31の入力軸31aの先端は、スリーブ35を用いて回転伝達ワイヤ36の先端と連結される。回転伝達ワイヤ36は、柔軟な保護チューブ37内に回転可能に収納されている。保護チューブ37は、例えば可撓性を有する樹脂材料からなる。回転伝達ワイヤ36及びこれを収納した保護チューブ37は、カテーテルシャフト20のカバー25内に収納される。
【0036】
揺動ヘッド33は、ベース32と略同一外径を有する略円柱形状を有する。揺動ヘッド33には、その軸方向(Y軸方向)に揺動ヘッド33を貫通する貫通孔33bが形成されている。揺動ヘッド33のベース32とは反対側の端面に電極装置27が搭載される。
【0037】
ヒンジバネ34がベース32と揺動ヘッド33とを連結している。より詳細には、ヒンジバネ34の後端は、ベース32の外表面に形成された平坦な固定面32cに固定され、ヒンジバネ34の前端は、揺動ヘッド33の外表面に形成された平坦な固定面33cに固定されている。ヒンジバネ34は、短冊状の薄板であり、その長手方向はカテーテルシャフト36の長手方向に一致し、且つ、その主面(即ち、面積が最大である面)はXY面に平行になるように配置されている。ヒンジバネ34は、その長手方向と平行で且つその主面と垂直な面(YZ面。以下、「屈曲面」という)内で弾性的に屈曲変形可能である。ヒンジバネ34が屈曲変形すると、揺動ヘッド33はヒンジバネ34の屈曲面内でベース32に対して揺動する。回転シャフト31は、ヒンジバネ34の主面に対向して配置されている。
【0038】
図4に示されているように、揺動ヘッド33のベース32に対向する端面には、ヒンジバネ34の屈曲面に垂直な方向(X軸方向)に沿って延びた溝(スロット状の凹部)33aが形成されている。回転シャフト31のクランクピン31cは、溝33a内に挿入されて溝33aと係合している。
【0039】
回転伝達ワイヤ36を一方向(例えば後ろ側から見て時計回り方向R)に回転させると、スリーブ35を介して回転シャフト31がベース32の軸受け孔32a内で回転伝達ワイヤ36と同方向に回転する。クランクピン31cは、回転シャフト31の回転中心軸に対して偏心しているから、クランクピン31cは、回転シャフト31の回転中心軸を中心とする円軌道に沿って変位する。クランクピン31cは、揺動ヘッド33の溝33a内に挿入されている。従って、クランクピン31cの円軌道に沿った変位のうち、溝33aの長手方向に対して垂直な方向(Z軸方向)の変位が揺動ヘッド33に伝達される。即ち、クランクピン31cは、揺動ヘッド33の溝33a内を溝33aの長手方向(X軸方向)に沿って往復移動しながら、揺動ヘッド33を溝33aと直交する方向(Z軸方向)に沿って揺動させる。揺動ヘッド33が揺動する際、ヒンジバネ34はその屈曲面内で弾性的に屈曲変形を繰り返す。このように、本実施形態1の振動発生機構30は、いわゆるスコッチヨーク機構と同様の構成を有し、回転伝達ワイヤ36から回転シャフト31の入力軸31aに入力される回転運動を、揺動ヘッド33の揺動運動に変換する。回転伝達ワイヤ36を一定の回転速度で連続的に回転させることにより、揺動ヘッド33及び電極装置27が上下方向に(矢印22の向きに)一定周期で振動する。
【0040】
図4に示されているように、揺動ヘッド33の貫通孔33bとベース32の貫通孔32bとは共通する一直線に沿って配置されている。電極装置27に接続された配線(図示せず)は、貫通孔33b及び貫通孔32bに挿通され、カテーテルシャフト20のカバー25内に収納されて、ハンドル10へ案内される。
【0041】
なお、
図4では、理解を容易にするために、実際にはハンドル10内にまで延びている回転伝達ワイヤ36及びこれを収納する保護チューブ37を途中で切断している。
【0042】
次に、カテーテルシャフト20の電極27eが所望する向きに向くようにカテーテルシャフト20を屈曲させる屈曲機構40を説明する。本実施形態1の屈曲機構40は、板バネ41、一対の屈曲用ワイヤ42a,42bを含む。
【0043】
図2及び
図3に示されているように、板バネ41は、短冊状の薄板であり、その長手方向はカテーテルシャフト36の長手方向に一致し、且つ、その主面(即ち、面積が最大である面)がYZ面に平行になるように配置されている。板バネ41は、その長手方向と平行で且つその主面と垂直な面(XY面。以下、「屈曲面」という)内で弾性的に屈曲変形可能である。
【0044】
屈曲用ワイヤ42a,42bは、板バネ41を挟んでその両側に配置されている。ワイヤ42a,42bのベース32側の先端は、板バネ41の前端41aの近傍の位置に固定されている。ワイヤ42a,42bの板バネ41に対する固定方法は特に制限はないが、例えば溶接法を用いることができる。
【0045】
板バネ41の前端41aは、ベース32の貫通孔33bに挿入され、後端41bは、ガイドチューブ43に挿入される。板バネ41の両端41a,41bの部分が、これらの間の部分よりやや狭幅となるように、板バネ41の両側辺に段差が形成されている。この段差が、板バネ41のベース32及びガイドチューブ43に対する挿入深さを規制する。ワイヤ42a,42bは、ガイドチューブ43内に収納される。ワイヤ42a,42b及びこれを収納したガイドチューブ43は、カテーテルシャフト20のカバー25内に収納される。ガイドチューブ43は、自由に湾曲させることができる柔軟性を有することに加えて、その長手方向に沿った圧縮及びねじりに対して高い剛性を有していることが望ましい。
【0046】
図2に示されているように、回転伝達ワイヤ36を収納した保護チューブ37と、ワイヤ42a,42bを収納したガイドチューブ43とは、カバー25内に収納される。カバー25の先端の開口は電極装置27で液密にシールされる。
【0047】
[ハンドルの構成]
ハンドル10の構成を説明する。
図5は、ハンドル10の分解斜視図である。
【0048】
上ケース11aと下ケース11bとがZ軸方向に重ね合わされて、ハンドル10の筐体11が構成される。略円板形状のワイヤグリップ15が、ハンドル10の筐体11内に収納されている。下ケース11bの内面にZ軸と平行に立設された支軸12がワイヤグリップ15の中央の貫通孔を貫通している。ワイヤグリップ15の外周縁から一対の操作アーム15a,15bが突出している。操作アーム15a,15bは、支軸12と直交する直線に沿って延び、上ケース11a及び下ケース11bにそれぞれ形成された切り欠きを介して、筐体11外に突出している(
図1参照)。操作アーム15a,15bを操作することにより、ワイヤグリップ15を支軸12の周りに回動させることができる。
【0049】
カテーテルシャフト20が、上ケース11aと下ケース11bとに挟持されて、ハンドル10の前端から導出されている。カテーテルシャフト20のカバー25の末端から、回転伝達ワイヤ36を収納した保護チューブ37及び屈曲用ワイヤ42a,42bが導出されている。
【0050】
回転伝達ワイヤ36を収納した保護チューブ37は、ワイヤグリップ15と下ケース11bとの間の空間を通過し、ガイド13に案内されて、下ケース11bの下面に設けられた第1コネクタ19aに達している。第1コネクタ19aには、回転伝達ケーブル14の一端が着脱可能に接続され、回転伝達ケーブル14の他端は回転駆動源38(
図1参照)に接続されている。回転駆動源38は、回転運動を出力することができればその構成は任意である。例えば、動力源としてのモータと、モータの回転軸から出力端へ動力伝達を行う歯車機構とで構成することができる。出力される回転運動の回転速度を任意に変更することができるように、コントローラによって回転駆動源38が制御されてもよい。回転伝達ケーブル14は、自由に湾曲することができる柔軟性を有し、回転駆動源38から出力された回転運動を第1コネクタ19aを介して回転伝達ワイヤ36に伝達する。
【0051】
屈曲用ワイヤ42a,42bは、ワイヤグリップ15の前側の外周面に固定されている。ワイヤ42aは操作アーム15aに近い位置に、また、ワイヤ42bは操作アーム15bに近い位置に、互いに離間してそれぞれワイヤグリップ15に固定されている。
【0052】
ワイヤグリップ15を貫通しこれから突出した支軸12の先端に雄ネジ12aが形成されている。上ケース11aには、支軸12が貫通する孔が形成されている。上ケース11aを下ケース11bに重ね合わせたときに上ケース11aから支軸12の雄ネジ12aが突出する。固定つまみ17の下面(ワイヤグリップ15側の面)に形成された雌ネジ(図示せず)が、支軸12の雄ネジ12aに螺合される。固定つまみ17を回して雄ネジ12aに締め付けると、ワイヤグリップ15を上ケース11aと下ケース11bとの間で挟んで固定することができる。固定つまみ17を逆方向に回すと、上ケース11a及び下ケース11bによるワイヤグリップ15の固定を解除することができる。
【0053】
ハンドル10の後端に、第2コネクタ19bが設けられている。カテーテルシャフト20の先端に設けられた電極装置27に接続された配線(図示せず)は、カバー25の末端から導出され、ワイヤグリップ15と下ケース11bとの間の空間を通過して、第2コネクタ19bに接続される。電極27eへの電力の供給や、電極装置27に設けられた各種センサに対する電気信号の授受は、第2コネクタ19bを電気ケーブル(図示せず)を介して制御装置(図示せず)に電気的に接続することにより行われる。
【0054】
[使用方法]
本実施形態1のカテーテル1の使用方法を説明する。
【0055】
本実施形態1のカテーテル1は、例えば上述した特許文献1のカテーテルと同様に、以下のように使用することができる。
【0056】
最初に、カテーテルシャフト20を患者の足の付け根にある太い血管(例えば大腿動脈又は大腿静脈)に挿入し、その先端の電極27eを心臓内に到達させる。この過程において、従来のカテーテルと同様に、カテーテルシャフト20の先端の電極27eが所望する向きに向くように、カテーテルシャフト20を適宜屈曲させる。本実施形態1のカテーテル1では、カテーテルシャフト20の屈曲は、ハンドル10から突出した一対の操作アーム15a,15bを操作することで行う。
【0057】
カテーテルシャフト20を屈曲させる操作を
図6を用いて説明する。
【0058】
図6は、理解を容易にするために上ケース11a及び固定つまみ17を取り除いたカテーテル1の平面図である。
【0059】
図6に示すように、一対の操作アーム15a,15bを結ぶ方向がハンドル10の長手方向(Y軸方向)と直交するとき、カテーテルシャフト20の屈曲部分21は、実線で示すように直線状に延びている。従って、電極27eは、
図6において上向き(Y軸の矢印の向き)を向く。
【0060】
一対の操作アーム15a,15bを矢印16aの向きに操作してワイヤグリップ15を時計回り方向に回動させると、2本のワイヤ42a,42bのうち操作アーム15aに近い側に固定されたワイヤ42aが引っ張られカテーテルシャフト20からわずかに引き出され、これとは逆のワイヤ42bが緩みカテーテルシャフト20にわずかに引き込まれる。上述したように、ワイヤ42a,42bの先端は、板バネ41の互いに異なる面にそれぞれ固定されている。ワイヤ42aが引っ張られると、板バネ41はワイヤ42aが固定された側の面が凹状になるように屈曲する。従って、カテーテルシャフト20の先端近傍の板バネ41が内蔵された部分(即ち、屈曲部分21)は二点鎖線20aに示したように矢印21aの向きに屈曲し、電極27eは
図6において右側(X軸の矢印の側)を向く。屈曲部分21でのカテーテルシャフト20の屈曲角度は、ワイヤグリップ15(または操作アーム15a,15b)の時計回り方向16aへの回動角度により調整することができる。
【0061】
上記とは逆に、一対の操作アーム15a,15bを矢印16bの向きに操作してワイヤグリップ15を反時計回り方向に回動させると、2本のワイヤ42a,42bのうち操作アーム15bに近い側に固定されたワイヤ42bが引っ張られカテーテルシャフト20からわずかに引き出され、これとは逆のワイヤ42aが緩みカテーテルシャフト20にわずかに引き込まれる。これにより、上記とは逆に、板バネ41はワイヤ42bが固定された側の面が凹状になるように屈曲する。従って、カテーテルシャフト20の先端近傍の板バネ41が内蔵された部分(即ち、屈曲部分21)は二点鎖線20bに示したように矢印21bの向きに屈曲し、電極27eは
図6において左側(X軸の矢印とは反対側)を向く。屈曲部分21でのカテーテルシャフト20の屈曲角度は、ワイヤグリップ15(または操作アーム15a,15b)の反時計回り方向16bへの回動角度により調整することができる。
【0062】
ハンドル10の固定つまみ17(
図1、
図5参照)を回すことにより、上ケース11aと下ケース11bとの間でワイヤグリップ15を挟んで固定し、または、その固定を解除することができる。例えば、操作アーム15a,15bを操作してカテーテルシャフト20の屈曲部分21を所望する角度に屈曲させた状態で固定つまみ17を回すと、ワイヤグリップ15が固定され、ワイヤグリップ15を回動させることができなくなる。これにより、カテーテルシャフト20の屈曲部分21の屈曲角度を保持することができる。
【0063】
上記のように操作アーム15a,15bを操作してカテーテルシャフト20の屈曲部分21を適宜屈曲させてカテーテルシャフト20の先端を心臓内に挿入し、心臓内壁内の異常部位を探索する。異常部位が発見されると、先端の電極27eを心臓内壁面に接触させながら電極27eを介して心臓内壁面に高周波電流を印加し、心臓内壁を焼灼する。これと同時に電極27eを振動させる。これにより、電極27eの周囲の血液が攪拌され、焼灼部位及びその近傍の血液の温度上昇が抑制される。このように心臓内壁の表面及びその近傍の温度を適切に管理しながら、深部の病巣組織を焼灼することができる。
【0064】
電極27eの振動は、回転伝達ワイヤ36を回転駆動源38を用いて回転させることにより行う。回転伝達ワイヤ36の末端に入力された回転運動が回転伝達ワイヤ36を介して上述した振動発生機構30に伝達され、揺動ヘッド33が揺動する。これにより、揺動ヘッド33上に設けられた電極27eがZ軸方向(
図1の矢印22の方向)に振動する。電極27eを振動させることによる冷却効果は、電極27eの振動数、即ち、回転伝達ワイヤ36の回転数を変更することで調整することができる。
【0065】
以上のように、本実施形態1のカテーテル1は、カテーテルシャフト20の先端近傍に、回転運動を振動(揺動運動)に変換する振動発生機構30が内蔵されている。振動発生機構30を駆動するための回転駆動源38はカテーテルシャフト20外に配置され、当該回転駆動源38が発生する回転運動は、カテーテルシャフト20内に挿入された回転伝達ワイヤ36を通じて振動発生機構30に入力される。従って、カテーテルシャフト20の外径を大きくすることなく、その先端の電極27eを振動させることができる。
【0066】
電極27eが振動することによる冷却効果は、電極27eの振動数や振幅などにより変化する。電極27eの振動数は、回転伝達ワイヤ36の回転速度に依存する。電極27eの振動数を大きくするためには、回転伝達ワイヤ36を高速で回転させる必要がある。一方、電極27eの振幅は、例えば、回転シャフト31の入力軸31aに対するクランクピン31cの偏心量や、クランクピン31cから電極27eまでの距離などを調整することにより変更することができる。電極27eの振動数や振幅を大きくするためには、大きな動力を発生させる駆動源が必要である。本実施形態1では、回転駆動源38をカテーテルシャフト20及びハンドル10の外に配置するので、回転駆動源38の寸法に関する制約が少ない。従って、高回転数且つ高出力の回転駆動源38を用いることが容易である。その結果、カテーテルシャフト20を大径化することなく、冷却効果の高いカテーテル1を実現できる。また、回転駆動源38がハンドル10の外に配置されることは、ハンドル10が小型化且つ軽量化されるので、カテーテル1の操作性の向上や施術者の作業負担の軽減にも有利である。
【0067】
電極27eを振動させるための振動発生機構30及び回転伝達ワイヤ36は、カテーテルシャフト20を屈曲させるための屈曲機構40から機構上独立している。従って、電極27eを振動させる機能を付与したことにより、電極27eが所望する向きを向くようにカテーテルシャフト20を屈曲させるという、カテーテルに要求される基本的な特性が損なわれることはない。また、カテーテルシャフト20の長手方向に沿って、振動発生機構30を、屈曲機構40よりも電極27e側に配置することが可能になり、これは、カテーテルシャフト20の大径化を回避するのに有利である。
【0068】
カテーテルシャフト20の湾曲に応じてその中に収納された回転伝達ワイヤ36も湾曲する。回転伝達ワイヤ36は保護チューブ37内に収納されているので、カテーテルシャフト20の湾曲の如何に関わらず、回転伝達ワイヤ36が他の部材(例えばカバー25やガイドチューブ43等)に接触するのが回避される。従って、回転伝達ワイヤ36の回転動力損失が低減され、カテーテルシャフト20の湾曲状態に関わらず常に安定した冷却効果が得られる。
【0069】
本発明者らは、先端の電極27eが振幅±0.5mm、振動数60Hzで振動する、電極装置27及びカバー25の外径がφ2.4mmのカテーテルシャフト20を備えたカテーテル1を既に試作している。
【0070】
回転伝達ワイヤ36は、屈曲用ワイヤ42a,42bを収納したガイドチューブ43や電気配線とともに小径のカバー25内に収納される。従って、回転伝達ワイヤ36は可能な限り小径であることが望まれる。更に、回転伝達ワイヤ36は、カテーテルシャフト20のほぼ全長以上の比較的長い距離に亘って回転運動を伝達する必要があるため、回転追従性(一端を回転させると、他端が一端の回転と同じだけ直ちに回転する特性)やトルク伝達特性に優れていることが望まれる。更に、回転伝達ワイヤ36は、高い防錆特性と、自由に湾曲可能な柔軟性を有していることも望まれる。このような要望を満足する回転伝達ワイヤ36としては、特に制限はないが、例えば外径がφ0.30mm〜φ0.90mm程度のDMCスピンロープを用いることができる。
【0071】
本実施形態1では、屈曲機構40を構成する板バネ41の主面と、振動発生機構30を構成するヒンジバネ34の主面とが互いに直交している(
図2、
図3)。従って、
図1に示されているように、屈曲機構40によるカテーテルシャフト20の屈曲方向21a,21bと、振動発生機構30による電極27eの振動方向22とが互いに直交する。この構成では、
図7に示すように、カテーテルシャフト20を屈曲させて電極27eを被焼灼面(図示せず)に押し当てた状態でカテーテルシャフト20をその長手方向D1に沿って掃引する場合に、電極27eが振動する方向22が、被焼灼面の法線方向に沿って見たときに電極27eの掃引方向D1に対して略直交する。これにより、電極27eを方向D1に沿って移動させるだけで、電極27eの振幅に応じた幅を有するストライプ状の領域を焼灼することができる。これは、焼灼効率の向上や局所的な異常加熱の回避に有利である。また、電極27eを振動させることにより電極27eが被焼灼面に対して接離を繰り返すという現象が起こる可能が低くなるので、より安定した焼灼を行うことができる。また、電極27eを振動させたときの電極27eの周囲の血液の攪拌効果が増大するので、より高い冷却効果を得ることができる。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態2は、カテーテルシャフト20に内蔵される振動発生機構の構成に関して実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態2のカテーテルを説明する。
【0073】
図8は、本実施形態2の振動発生機構230を概念的に示した分解斜視図である。本実施形態2の振動発生機構230は、回転シャフト231、ベース232、揺動ヘッド233、ヒンジバネ234、連接部材235を含む。
【0074】
回転シャフト231は、実施形態1の回転シャフト31と同様に、ハンドル10側(
図8の下側)から、入力軸231a、シャフト基部231b、クランクピン231cをこの順に備える。入力軸231aとシャフト基部231bとは同軸に接続され、クランクピン231cは、これらに対して偏心してシャフト基部231bに接続されている。
【0075】
実施形態1と同様に、いずれもが略円柱形状を有するベース232と揺動ヘッド233とが、ヒンジバネ234を介して連結されている。ヒンジバネ234は、YZ面と平行な屈曲面内で弾性的に屈曲変形可能である。ベース232を貫通する軸受け孔232aに入力軸231aが挿入されて、回転シャフト231は軸受け孔232aによって回転可能に支持される。軸受け孔232aを貫通してベース233から突出した入力軸231aの先端は、実施形態1と同様に回転伝達ワイヤ36(図示せず)と連結される。
【0076】
揺動ヘッド233のベース232に対向する面に、連接ピン233aが突出している。連接部材235には、XZ面における位置が異なる2つの貫通孔235a,235bが形成されている。第1貫通孔235aにはクランクピン231cが挿入され、第2貫通孔235bには連接ピン233aが挿入される。
【0077】
回転伝達ワイヤ36を介して回転シャフト231が一方向に回転すると、クランクピン231cは、回転シャフト231の回転中心軸を中心とする円軌道に沿って変位する。連接部材235は、クランクピン231cの円軌道に沿った変位のうち、ヒンジバネ234の屈曲面に平行な方向(Z軸方向)の変位を連接ピン233aに伝達する。その結果、揺動ヘッド233はZ軸方向に揺動する。揺動ヘッド233が揺動する際、ヒンジバネ234はその屈曲面内で弾性的に屈曲変形を繰り返す。このように、本実施形態2の振動発生機構230は、いわゆるクランク機構を有し、回転伝達ワイヤ36から回転シャフト231の入力軸231aに入力される回転運動を、揺動ヘッド233の揺動運動に変換する。回転伝達ワイヤ36を一定の回転速度で連続的に回転させることにより、揺動ヘッド233に搭載される電極装置27(図示せず)が一定周期で振動する。
【0078】
実施形態1の貫通孔32b,33b(
図4参照)と同様に、ベース232の貫通孔232b及び揺動ヘッド233の貫通孔233bに電極装置27に接続された配線が挿通される。
【0079】
本実施形態2のカテーテルは、実施形態1のカテーテル1の振動発生機構30に代えて上記の振動発生機構230を用いて構成される。本実施形態2のカテーテルにおいても、カテーテルシャフト20の先端近傍に、回転運動を振動(揺動運動)に変換する振動発生機構230が内蔵される。従って、実施形態1と同様に、カテーテルシャフト20の外径を大きくすることなく、その先端の電極27eを振動させることができる。
【0080】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0081】
(実施形態3)
本実施形態3は、カテーテルシャフト20に内蔵される振動発生機構の構成に関して実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態3のカテーテルを説明する。
【0082】
図9は、本実施形態3の振動発生機構330を概念的に示した分解斜視図である。本実施形態3の振動発生機構330は、回転シャフト331、ベース332、揺動ヘッド333、スライドカム334、連結ネジ335、圧縮コイルバネ336、第1揺動ピン337a、第2揺動ピン337bを含む。
【0083】
回転シャフト331は、ハンドル10側(
図9の下側)から、入力軸331a、シャフト基部331bをこの順に備える。入力軸331aとシャフト基部331bとは同軸に接続されている。
【0084】
スライドカム334が、回転シャフト331と同軸に且つ回転シャフト331に対して軸方向に対向して配置されている。シャフト基部331b及びスライドカム334の互いに相手方に対向する端面には、螺旋状のカム面がそれぞれ形成されている。螺旋状のカム面は、中心軸に対して360度の回転範囲にわたって徐々に上昇する、連続する傾斜面を有し、傾斜面の頂部(終端)は段差(落差)を介して傾斜面の底部(始端)と隣接している。
【0085】
スライドカム334を軸方向に貫通する貫通孔334aに、回転シャフト331とは反対側から、圧縮コイルバネ336及び連結ネジ335がこの順に挿入される。連結ネジ335は、圧縮コイルバネ336及びスライドカム334を順に貫通して、回転シャフト331に螺合される。その結果、圧縮コイルバネ336が、スライドカム334を回転シャフト331に向かって付勢する。
【0086】
ベース332を貫通する軸受け孔332aに入力軸331aが挿入されて、回転シャフト331は軸受け孔332aによって回転可能に支持される。軸受け孔332aを貫通してベース332から突出した入力軸331aの先端は、実施形態1と同様に回転伝達ワイヤ36(図示せず)と連結される。
【0087】
いずれもが略円筒面状の外周面を有するベース332と揺動ヘッド333とが、第1揺動ピン337aを介して連結される。揺動ヘッド333はベース332に対して、第1揺動ピン337aを軸として揺動可能である。
【0088】
スライドカム334は、第2揺動ピン337bを介して揺動ヘッド333に連結される。揺動ヘッド333はスライドカム334に対して、第2揺動ピン337bを軸として揺動可能である。第2揺動ピン337bは、第1揺動ピン337aに対して平行である。
【0089】
回転伝達ワイヤ36を介して回転シャフト331は矢印R方向に回転する。一方、スライドカム334は、第2揺動ピン337bを介して揺動ヘッド333に連結されているので回転することはできない。従って、回転シャフト331のシャフト基部331bに形成された螺旋状のカム面上を、スライドカム334に形成された螺旋状のカム面が摺動する。回転シャフト331が回転するにしたがって、スライドカム334は回転シャフト331から離れる向きに移動し、スライドカム334の螺旋状のカム面の頂部が、シャフト基部331bの螺旋状のカム面の頂部を越えると、圧縮コイルバネ336の付勢力により、スライドカム334は回転シャフト331の側に変位する。回転シャフト331が連続的に回転すると、スライドカム334は、回転シャフト331の回転軸方向に沿って往復移動する。スライドカム334のこの往復移動により、スライドカム334に連結された揺動ヘッド333が、第1揺動ピン337aを中心として、ベース332に対して揺動する。
【0090】
このように、本実施形態3の振動発生機構330は、回転伝達ワイヤ36から回転シャフト331の入力軸331aに入力される回転運動を、揺動ヘッド333の揺動運動に変換する。回転伝達ワイヤ36を一定の回転速度で連続的に回転させることにより、揺動ヘッド333に搭載される電極装置27(図示せず)が一定周期で振動する。
【0091】
実施形態1の貫通孔32b,33b(
図4参照)と同様に、ベース332の貫通孔332b及び揺動ヘッド333の貫通孔333bに電極装置27に接続された配線が挿通される。
【0092】
本実施形態3のカテーテルは、実施形態1のカテーテル1の振動発生機構30に代えて上記の振動発生機構330を用いて構成される。本実施形態3のカテーテルにおいても、カテーテルシャフト20の先端近傍に、回転運動を振動(揺動運動)に変換する振動発生機構330が内蔵される。従って、実施形態1と同様に、カテーテルシャフト20の外径を大きくすることなく、その先端の電極27eを振動させることができる。
【0093】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0094】
図9では、回転シャフト331及びスライドカム334の互いに対向する面に螺旋状のカム面が形成されていたが、カム面の形状はこれに限定されず、任意に設定することができる。例えば、カム面が、中心軸を取り囲む円周に沿ってY軸方向の位置が正弦波状に変化する滑らかな曲面であってもよい。回転シャフト331及びスライドカム334の互いに対向する面の両方に同一形状のカム面が形成されている必要はない。回転シャフト331及びスライドカム334のうちの一方には、その他方に対向する面に所定形状のカム面が形成され、他方には前記一方のカム面上を摺動する突起(カム)が形成されていてもよい。この場合、スライドカム334を省略し、当該突起(カム)を、揺動ヘッド333に直接形成してもよい。
【0095】
スライドカム334を回転シャフト331に向かって付勢する手段は、圧縮コイルバネ336に限定されない。例えば、実施形態1,2に示したヒンジバネ34,234と同様の板バネを用いてベース332と揺動ヘッド333とを連結し、当該板バネの弾性力を利用してスライドカム334を回転シャフト331に向かって付勢してもよい。
【0096】
上記の実施形態1〜3は例示にすぎない。本発明はこれらの実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0097】
上記の実施形態1〜3では、振動発生機構30,230,330によって電極27eが振動する方向20は、屈曲機構40によってカテーテルシャフト20の屈曲部分21が屈曲する方向21a,21bに対して垂直であった(
図1参照)。しかしながら、電極27eの振動方向20は、カテーテルシャフト20の屈曲方向21a,21bに対して垂直である必要はなく、例えば平行であってもよく、これ以外の任意の角度で傾斜していてもよい。また、カテーテルシャフト20の屈曲方向21a,21bに対する電極27eの振動方向20を、施術者が任意に設定することができるように、屈曲機構40に対して振動発生機構30,230,330を回動することができる機構が設けられていてもよい。本発明では、振動発生機構30,230,330と屈曲機構40とが機構上互いに独立しているので、カテーテルシャフト20の屈曲方向21a,21bに対する電極27eの振動方向20を任意に設定することができる。
【0098】
振動発生機構の構成は、上記の実施形態1〜3に限定されない。回転伝達ワイヤ36の回転運動を揺動(振動)に変換することができる任意の機構を採用することができる。但し、実施形態1に示したスコッチヨーク機構を利用した振動発生機構30は、部品点数が少なく且つ構造が簡単であるので、信頼性や耐久性に優れている。
【0099】
上記の実施形態1〜3では、ハンドル10に、回転運動を伝達するための第1コネクタ19aと電気的接続を行うための第2コネクタ19bとが設けられていたが、共通する1つのコネクタで回転運動の伝達と電気接続とを行ってもよい。この共通するコネクタには、回転動力の伝達と電気信号の授受とを行う1本のケーブルが着脱可能に接続される。この構成によれば、ハンドル10に接続されるケーブルの数を少なくすることができる。
【0100】
回転駆動源38がハンドル10内に収納されていてもよい。この構成によれば、回転動力を伝達するための第1コネクタ19a及び回転伝達ケーブル14(
図1参照)が不要になる。
【0101】
カテーテルシャフト20を屈曲させるための屈曲機構の構成は、上記の実施形態1〜3に限定されない。例えば2本のワイヤ42a,42bのうちの一方(ワイヤ42b)を省略することができる。この場合、ワイヤ42aに張力を印加すると、ワイヤ42aがカテーテルシャフト20から引き出され、屈曲部分21は矢印21a(
図1参照)の向きに屈曲し、張力を解除すると、ワイヤ42aは板バネ41の弾性回復力によってカテーテルシャフト20に引き込まれ、屈曲部分21は初期状態に復帰する。この他、カテーテルとして公知の屈曲機構を本発明のカテーテルに適用することができる。