(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加工順決定ステップで用いる前記使用優先順は、前記加工ツールの属性、前記形状要素部分の加工時間計算結果または前記加工装置のツール装着構造の少なくとも一つに基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のレンズ加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態では、以下の順序で項分けをして説明を行う。
1.レンズ加工システム全体の概略構成
2.レンズ加工システムにおける機能構成
3.レンズ加工システムにおける処理動作例
3−1.処理動作の概要
3−2.形状分割処理の手順
3−3.外形サイズ決定処理の手順
3−4.加工ツール割り当て処理の手順
3−5.レンズ加工処理の手順
4.本実施形態の効果
5.変形例等
【0014】
<1.レンズ加工システム全体の概略構成>
先ず、本実施形態におけるレンズ加工システム全体の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態におけるレンズ加工システム全体の概略構成例を示すブロック図である。
レンズ加工システムは、眼鏡レンズの周縁部を眼鏡フレームに枠入れ可能な形状に縁摺り加工するものである。
【0015】
そのために、レンズ加工システムは、複数のレンズ周縁加工装置1を備えている。
各レンズ周縁加工装置1は、いずれも、眼鏡レンズの縁摺り加工を行うものである。縁摺り加工は、所定外形形状(例えば円形状)を有したアンカットレンズ(未加工レンズ)に対して行う。縁摺り加工を行うと、アンカットレンズの周縁部は、眼鏡フレームに枠入れ可能な形状に加工される。このような縁摺り加工を、レンズ周縁加工装置1は、複数種類の加工ツールを選択的に用いて行う。なお、本実施形態では、眼鏡レンズの縁摺り加工の生産性向上を図るべく複数のレンズ周縁加工装置1を備えている場合を例に挙げているが、システム内には少なくとも一つのレンズ周縁加工装置1があればよい。
【0016】
各レンズ周縁加工装置1は、LAN(Local Area Network)等の通信回線2を介して加工制御装置3に接続されている。ただし、加工制御装置3は、LAN接続等による別体のものではなく、レンズ周縁加工装置1と一体に構成されたものであってもよい。
加工制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信I/F(interface)部等を有して構成されたコンピュータ装置からなるもので、各レンズ周縁加工装置1に縁摺り加工を行わせるために必要な処理を行うものである。縁摺り加工のために必要な処理としては、様々な処理が挙げられるが、その一例として加工後のレンズ形状を特定するデータに基づきレンズ周縁加工装置1に加工動作を行わせるための加工データを生成する処理がある。このようなデータ処理を行う加工制御装置3については、以下「データ処理装置」とも称す。
【0017】
加工制御装置(データ処理装置)3には、インターネット等の広域通信回線網4を介してレンズ発注側端末装置5が接続されている。
レンズ発注側端末装置5は、例えば眼鏡店に設置されたパーソナルコンピュータ等の端末装置からなるもので、眼鏡レンズの縁摺り加工をデータ処理装置3およびこれと接続するレンズ周縁加工装置1に対して発注するものである。この発注により、レンズ発注側端末装置5からは、発注情報が発信される。発注情報には、眼鏡レンズが枠入れされる眼鏡フレームのフレーム型番、その眼鏡レンズの処方値を特定する処方データ、その眼鏡レンズのメーカーや材質等を特定するレンズ情報、その他の各種情報が含まれているものとする。このような発注情報は、データ処理装置3の側で受信すると、受注情報として取り扱われる。
【0018】
また、データ処理装置3には、通信回線2を介してデータ記憶装置6が接続されている。
データ記憶装置6は、HDD(Hard Disk Drive)等の大容量記憶装置からなるもので、データ処理装置3でのデータ処理に必要となるデータを記憶保持するものである。データ処理装置3でのデータ処理に必要なデータとしては、レンズ発注側端末装置5から受信した受注情報をはじめとする様々なデータが挙げられるが、その一つの例として加工後の立体的なレンズ形状を特定する三次元CAD(Computer Aided Design)データがある。なお、データ記憶装置6は、データ処理装置3がアクセス可能であれば、通信回線2上ではなく、広域通信回線網4上に存在していてもよい。
【0019】
<2.レンズ加工システムにおける機能構成>
続いて、上述した構成のレンズ加工システムにおける機能構成について説明する。
図2は、本実施形態のレンズ加工システムにおける機能構成例を示すブロック図である。
【0020】
(レンズ周縁加工装置)
レンズ加工システムを構成するレンズ周縁加工装置1は、複数種類の加工ツール11を選択的に用いて眼鏡レンズの縁摺り加工を行う周縁加工部12と、この周縁加工部12における加工処理動作を制御する加工制御部13としての機能を備えている。これら周縁加工部12および加工制御部13の詳細については、公知技術を利用して構成されたものであればよく、ここではその説明を省略する。
【0021】
(データ処理装置)
このようなレンズ周縁加工装置1と接続するデータ処理装置3は、以下のような機能構成を備えている。すなわち、データ処理装置3は、データ取得部31、形状分割処理部32、サイズ決定部33、ツール割当部34、加工指示部35、および、データベース部36としての機能を備えて構成されている。
【0022】
データ取得部31は、データ処理装置3でのデータ処理に必要なデータを取得するものである。具体的には、必要なデータの一つとして、例えば、レンズ周縁加工装置1が加工すべき眼鏡レンズの加工後におけるレンズ形状を特定する三次元CADデータを、データ記憶装置6から読み出して取得するようになっている。なお、データ取得部31は、三次元CADデータに加えて、さらに他のデータを取得するものであってもよい。
【0023】
形状分割処理部32は、レンズ周縁加工装置1が複数種類の加工ツール11を選択的に用いて眼鏡レンズの縁摺り加工を行い得るようにすべく、データ取得部31が取得した眼鏡レンズの三次元CADデータに基づいて、当該眼鏡レンズの縁摺り加工の際に加工すべき被加工部位を、複数の形状要素部分に分割するものである。ここでいう「形状要素部分」とは、眼鏡レンズの周縁における被加工部位を構成する形状要素のうち、同一ツールで加工すべき形状の部分のことをいう。この形状要素部分の具体例については、詳細を後述する。
【0024】
サイズ決定部33は、形状分割処理部32による形状分割の結果を基に、レンズ周縁加工装置1が縁摺り加工を行うアンカットレンズ(未加工レンズ)の外形サイズを決定するものである。
【0025】
ツール割当部34は、形状分割処理部32が分割した複数の形状要素部分の各々について、それぞれの形状要素部分の加工に用いる加工ツール11を、予め設定されたツール選択基準に従いつつ、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の加工ツール11の中から割り当てるものである。さらに、ツール割当部34は、複数の形状要素部分の各々に割り当てた各加工ツール11の使用順を、予め設定された使用優先順に従って決定するものである。なお、予め設定されたツール選択基準および使用優先順については、詳細を後述する。
【0026】
加工指示部35は、レンズ周縁加工装置1に加工指示を与えることで、そのレンズ周縁加工装置1に眼鏡レンズの縁摺り加工を行わせるものである。このとき、加工指示部35は、サイズ決定部33が決定した外形サイズのアンカットレンズに対して、ツール割当部34が割り当てた各加工ツール11を同じくツール割当部34が決定した使用順で用いるように、縁摺り加工の加工指示を行うようになっている。
【0027】
データベース部36は、上記の各部31〜35での処理に必要となるデータや当該処理によって得られたデータ等を所定記憶領域内に登録することによって、そのデータ等の記憶保持を行うものである。このデータベース部36によって登録されるデータの具体例については、詳細を後述する。なお、データベース部36が用いる所定記憶領域は、データ処理装置3内に構築されたものであってもよいし、データ記憶装置6内に構築されたものであってもよい。
【0028】
(プログラム)
データ処理装置3におけるこれらの各部31〜36は、コンピュータ装置としての機能を有するデータ処理装置3が、所定のソフトウエアプログラムを実行することによって実現される。その場合に、所定のソフトウエアプログラムは、データ処理装置3にインストールされて用いられることになるが、そのインストールに先立ち、データ処理装置3と接続する広域通信回線網4を通じて提供されるものであってもよいし、あるいはデータ処理装置3で読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
【0029】
<3.レンズ加工システムにおける処理動作例>
次に、上述した構成のレンズ加工システムにおける処理動作例について説明する。
【0030】
[3−1.処理動作の概要]
先ず、レンズ加工システムでの処理動作の手順の概要を説明する。
図3は、本実施形態のレンズ加工システムでの処理動作の手順の概要を示すフローチャートである。
【0031】
上述した構成のレンズ加工システムでは、レンズ発注側端末装置5から眼鏡レンズの縁摺り加工の依頼があると(S10)、その加工依頼をデータ処理装置3が受け付けてジョブとして管理する。そして、データ処理装置3は、依頼されたジョブについて、詳細を後述する形状分割処理(S20)および外形サイズ決定処理(S30)を行う。外形サイズ決定処理(S30)では、レンズ発注端末装置5からのレンズ情報からの特注レンズか在庫レンズかの指定を基に、最適なレンズ選択等を行う。その後、データ処理装置3は、詳細を後述する加工ツール割り当て処理(S40)を行った後に、外形サイズ決定処理(S30)で選択等したアンカットレンズへのジョブを実行するレンズ周縁加工装置1に対して眼鏡レンズの縁摺り加工を指示する加工指示処理を行う(S50)。データ処理装置3からの加工指示があると、その加工指示を受けたレンズ周縁加工装置1は、指示された内容に従いつつ、そのレンズ周縁加工装置1にセットされたアンカットレンズに対して、複数種類の加工ツール11を選択的に用いて縁摺り加工を行う(S60)。
【0032】
以下、上述した一連の手順のうち、データ処理装置3で行う形状分割処理(S20)、外形サイズ決定処理(S30)および加工ツール割り当て処理(S40)について、さらに詳しく説明する。
【0033】
[3−2.形状分割処理の手順]
先ず、データ処理装置3で行う形状分割処理(S20)について説明する。
【0034】
形状分割処理(S20)は、主としてデータ処理装置3の形状分割処理部32によって行われる処理で、縁摺り加工の依頼があった眼鏡レンズに関して、その眼鏡レンズの加工後のレンズ形状を特定する三次元CADデータを、当該縁摺り加工に用いられる複数の形状要素部分に関するデータに分割する処理である。このような形状分割処理(S20)を、形状分割処理部32は、以下に説明するような予め設定した一定の基準(具体的には予めプログラミングされた分割規則)に則して行う。
【0035】
図4および
図5は、本実施形態における形状分割処理の手順を示すフローチャートである。
図例のように、形状分割処理(S20)は、大別すると、外形形状取得ステップ(S210)と、投影形状取得ステップ(S220)と、最外形抽出ステップ(S230)と、貫通加工形状抽出ステップ(S240)と、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)と、を順に経て行われる。
【0036】
(外形形状取得ステップ)
外形形状取得ステップ(S210)において、形状分割処理部32は、先ず、依頼されたジョブの識別番号を基に、当該ジョブで加工すべき眼鏡レンズが枠入れされる眼鏡フレームのフレーム型番を認識する(S211)。このフレーム型番は、レンズ発注側端末装置5からの受注情報に含まれているものとする。そして、形状分割処理部32は、認識したフレーム型番に対応して記憶保持されている三次元CADデータで、そのフレームに装着される状態に加工された眼鏡レンズの外形形状についてのものを、データ記憶装置6から読み出す。このとき、形状分割処理部32は、データ記憶装置6内における眼鏡レンズ全体形状の三次元CADデータのうち、眼鏡レンズの凸面側における外形形状についての三次元CADデータを凸面側形状データとして取得するとともに(S212)、眼鏡レンズの凹面側における外形形状についての三次元CADデータを凹面側形状データとして取得する(S213)。これらの各取得データは、それぞれが別レイヤーのデータとして管理される。以下、凸面側形状データを「凸面レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「凸面レイヤー」という。また、凹面側形状データを「凹面レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「凹面レイヤー」という。
【0037】
(投影形状取得ステップ)
外形形状取得ステップ(S210)の次に行う投影形状取得ステップ(S220)において、形状分割処理部32は、外形形状取得ステップ(S210)で取得した凸面レイヤーデータで特定される凸面側外形形状と、同じく外形形状取得ステップ(S210)で取得した凹面レイヤーデータで特定される凹面側外形形状とを合成することで、眼鏡レンズの周縁の投影形状についてのデータを投影形状データとして取得する(S221)。このとき、形状分割処理部32は、凸面レイヤーと凹面レイヤーの二次元極座標値から投影形状を生成し、その生成結果を投影形状データとする。この投影形状データについても、凸面レイヤーおよび凹面レイヤーとは別レイヤーのデータとして管理される。以下、投影形状データを「投影レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「投影レイヤー」という。
【0038】
(最外形抽出ステップ)
投影形状取得ステップ(S220)の次に行う最外形抽出ステップ(S230)において、形状分割処理部32は、投影形状取得ステップ(S220)で取得した投影レイヤーデータを基に、眼鏡レンズの周縁形状を包含し、かつ、凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状を抽出する。このような外形形状を抽出するのは、凹状湾曲部分を有さずに構成されていれば、その後に行う縁摺り加工の際に、レンズ周縁加工装置1で使用可能な最大径の加工ツール11を用いて効率的に加工を行えるからである。
【0039】
この最外形抽出ステップ(S230)について、形状分割処理部32は、凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状の抽出を、予め設定した一定の基準に則して幾何的に行う。具体的には、投影形状データで特定される投影形状に外接する所定の外接図形形状を利用して外形形状を抽出する。このときに利用する外接図形形状としては、例えば四角形(特に四つの角が全て等しい矩形)が考えられる。矩形状の四角形であれば、投影形状を構成する座標値の最大値と最小値を認識する等の手法により、外接図形形状を容易に求めることが可能である。つまり、形状分割処理部32は、投影形状に外接する四角形を利用しつつ、凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状の抽出を幾何的に行うのである。
【0040】
外接四角形を利用した外形形状抽出のために、形状分割処理部32は、先ず、投影レイヤーにおいて、投影形状に外接させる四角形の傾き量θを0°に設定する(S231)。ここで、傾き量θとは、二次元極座標の極を中心とした外接四角形の回転量のことをいう。また、傾き量θが「0°」とは、外接四角形が矩形の場合であれば、二次元極座標の座標軸に対して、当該矩形における対向する二辺が平行で、他の二辺が直交する状態のことをいう。そして、設定した傾き量θの外接四角形を求め、その外接四角形を投影レイヤー上で投影形状に重ねる(S232)。その後、形状分割処理部32は、設定した傾き量θが90°以上であるか否かを判断し(S233)、90°未満であれば設定した傾き量θに所定角度を加算する(S234)。加算する所定角度は、適宜設定してかまわないが、例えば1°とすることが考えられる。そして、形状分割処理部32は、所定角度加算後の傾き量θの外接四角形を求め、その外接四角形を投影レイヤー上で投影形状に重ねる(S232)。これを、傾き量θが90°以上となるまで繰り返し行う(S232〜S234)。これにより、傾き量θが0°の場合から89°の場合まで1°ずつ投影形状に対する各外接四角形が求まる。つまり、形状分割処理部32は、投影レイヤーデータで特定される投影形状に外接する所定外接図形形状である四角形を、当該投影形状と当該四角形との相対角度を変えながら所定角度(例えば1°)毎に求めるのである。所定角度毎の相対角度変位は、全周(すなわち360°分)にわたって行ってもよい。ただし、所定外接図形形状が四角形の場合には、少なくとも1/4周分(例えば0°から89°まで)だけ行えば、全周にわたって行った場合と同等の結果が得られるため、本実施形態では傾き量θが90°以上で相対角度変位を終了している。
このようにして所定角度毎の各外接四角形を求めたら、形状分割処理部32は、続いて、各外接四角形の全てに共通する内側領域の形状を抽出する。つまり、形状分割処理部32は、投影レイヤー上で投影形状に重ねられた各外接四角形に囲まれた内側領域の形状を抽出する。そして、形状分割処理部32は、外形レイヤーで抽出した内側領域の形状についてのデータを加工最外形データとして抽出する(S235)。この加工最外形データについても、凸面レイヤー、凹面レイヤーおよび投影レイヤーとは別レイヤーのデータとして管理される。以下、加工最外形データを「外形レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「外形レイヤー」という。この外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状は、凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状に相当するものである。
これらの手順を経ることで、最外形抽出ステップ(S230)では、投影レイヤーデータで特定される投影形状から、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状を、その投影形状に外接する四角形を利用しつつ幾何的に抽出するのである。なお、加工最外形形状の抽出にあたり、投影形状と外接四角形とは、互いの相対角度を変えるようにすれば、どちらを変位させても構わない。
【0041】
(貫通加工形状抽出ステップ)
最外形抽出ステップ(S230)の次に行う貫通加工形状抽出ステップ(S240)において、形状分割処理部32は、最外形抽出ステップ(S230)にて抽出した外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状と、投影形状取得ステップ(S220)にて取得した投影レイヤーデータで特定される投影形状との差分領域を求め、求めた差分領域の形状部分についてのデータを貫通加工形状データとして抽出する。このとき、形状分割処理部32は、離れた位置に複数の差分領域が存在する場合には、各差分領域について個別に貫通加工形状データとしての抽出を行う。
【0042】
そのために、形状分割処理部32は、先ず、各差分領域を識別するための変数x1について、x1=1に設定する(S241)。そして、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状の輪郭に対して、投影レイヤーデータで特定される投影形状の輪郭が内側に位置する形状部分を抽出し、その抽出した形状部分に対して、設定した変数x1の値を割り当てる(S242)。つまり、形状分割処理部32は、抽出した形状部分について、変数(識別情報)x1で特定される貫通加工形状データとして抽出するのである。このように、変数x1に対しては、レンズ表裏にわたる貫通加工(通し加工)を行うべき形状部分を割り当てることになる。
このような抽出および割り当てを行ったら、形状分割処理部32は、求めた差分領域の全てについての処理が終了したか否かを判断し(S243)、未処理の差分領域が存在する場合には、x1=x1+1にインクリメントした後に(S244)、再び上述した抽出および割り当ての処理を行う(S242)。そして、全ての差分領域についての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S242〜S243)。
これらの手順を経ることで、貫通加工形状抽出ステップ(S240)では、加工最外形形状(すなわち凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状)を投影形状にするための被加工部位を、レンズ表裏にわたり貫通して加工すべき貫通加工形状部分として、離れた位置に存在するものがあればそれぞれを個別に、抽出することになる。
このようにして抽出された各貫通加工形状データについても、上述した各レイヤーとは別レイヤーのデータとして管理される。以下、貫通加工形状データを「投影加工レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「投影加工レイヤー」という。投影加工レイヤーには、複数の差分領域を個別に抽出した場合であれば、それぞれに対応する複数の投影加工レイヤーデータが存在することになる。
【0043】
(非貫通加工形状抽出ステップ)
貫通加工形状抽出ステップ(S240)の次に行う非貫通加工形状抽出ステップ(S250)において、形状分割処理部32は、投影形状取得ステップ(S220)にて取得した投影レイヤーデータで特定される投影形状と、外形形状取得ステップ(S210)にて取得した凸面レイヤーデータで特定される凸面側外形形状との差分領域を求め、求めた差分領域の形状部分についてのデータを凸面側加工形状データとして抽出する。このとき、形状分割処理部32は、離れた位置に複数の差分領域が存在する場合には、各差分領域について個別に凸面側加工形状データとしての抽出を行う。
さらに、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)において、形状分割処理部32は、投影形状取得ステップ(S220)にて取得した投影レイヤーデータで特定される投影形状と、外形形状取得ステップ(S210)にて取得した凹面レイヤーデータで特定される凹面側外形形状との差分領域を求め、求めた差分領域の形状部分についてのデータを凹面側加工形状データとして抽出する。このとき、形状分割処理部32は、凹面側についても凸面側と同様に、離れた位置に複数の差分領域が存在する場合には、各差分領域について個別に凹面側加工形状データとしての抽出を行う。
【0044】
そのために、形状分割処理部32は、凸面側の各差分領域を識別するための変数x2について、x2=1に設定する(S251)。そして、形状分割処理部32は、投影レイヤーデータで特定される投影形状の輪郭に対して、凸面レイヤーデータで特定される凸面側外形形状の輪郭が内側に位置する形状部分を抽出し、その抽出した形状部分に対して、設定した変数x2の値を割り当てる(S252)。つまり、形状分割処理部32は、抽出した形状部分について、変数(識別情報)x2で特定される凸面側加工形状データとして抽出するのである。このように、変数x2に対しては、レンズ凸面側から加工すべきであるがレンズ凹面側には貫通しないような加工(非貫通加工)を行うべき形状部分を割り当てることになる。
このような抽出および割り当てを行ったら、形状分割処理部32は、求めた差分領域の全てについての処理が終了したか否かを判断し(S253)、未処理の差分領域が存在する場合には、x2=x2+1にインクリメントした後に(S254)、再び上述した抽出および割り当ての処理を行う(S252)。そして、全ての差分領域についての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S252〜S254)。
これらの手順を経ることで、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)では、投影形状における凸面側を凸面側外形形状にするための被加工部位を、レンズ凸面側から加工すべきであるがレンズ凹面側には貫通しない凸面側非貫通加工形状部分として、離れた位置に存在するものがあればそれぞれを個別に、抽出することになる。
このようにして抽出された各凸面側加工形状データについても、上述した各レイヤーとは別レイヤーのデータとして管理される。以下、凸面側加工形状データを「凸面加工レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「凸面加工レイヤー」という。凸面加工レイヤーには、複数の被加工部位を個別に抽出した場合であれば、それぞれに対応する複数の凸面加工レイヤーデータが存在することになる。
【0045】
さらに、形状分割処理部32は、凹面側の各差分領域を識別するための変数x3について、x3=1に設定する(S255)。そして、形状分割処理部32は、投影レイヤーデータで特定される投影形状の輪郭に対して、凹面レイヤーデータで特定される凹面側外形形状の輪郭が内側に位置する形状部分を抽出し、その抽出した形状部分に対して、設定した変数x3の値を割り当てる(S256)。つまり、形状分割処理部32は、抽出した形状部分について、変数(識別情報)x3で特定される凹面側加工形状データとして抽出するのである。このように、変数x3に対しては、レンズ凹面側から加工すべきであるがレンズ凸面側には貫通しないような加工(非貫通加工)を行うべき形状部分を割り当てることになる。
このような抽出および割り当てを行ったら、形状分割処理部32は、求めた差分領域の全てについての処理が終了したか否かを判断し(S257)、未処理の差分領域が存在する場合には、x3=x3+1にインクリメントした後に(S258)、再び上述した抽出および割り当ての処理を行う(S256)。そして、全ての差分領域についての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S256〜S258)。
これらの手順を経ることで、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)では、投影形状における凹面側を凹面側外形形状にするための被加工部位を、レンズ凹面側から加工すべきであるがレンズ凸面側には貫通しない凹面側非貫通加工形状部分として、離れた位置に存在するものがあればそれぞれを個別に、抽出することになる。
このようにして抽出された各凹面側加工形状データについても、上述した各レイヤーとは別レイヤーのデータとして管理される。以下、凹面側加工形状データを「凹面加工レイヤーデータ」といい、その管理レイヤーを「凹面加工レイヤー」という。凹面加工レイヤーには、複数の被加工部位を個別に抽出した場合であれば、それぞれに対応する複数の凹面加工レイヤーデータが存在することになる。
【0046】
なお、形状分割処理部32は、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)において、凸面加工レイヤーデータの抽出(S251〜S254)と凹面加工レイヤーデータの抽出(S255〜S258)とについて、これらのどちらを先に行ってもよく、また両者を並行して行うようにしても構わない。
【0047】
以上のような外形形状取得ステップ(S210)から非貫通加工形状抽出ステップ(S250)までの処理において、取得または抽出された各レイヤーのデータは、その取得または抽出の都度、ジョブの識別番号と対応付けられた状態で、形状分割処理部32によってデータベース部36に登録されて、そのデータベース部36内に記憶保持される(S260)。
【0048】
(具体例)
ここで、上述した一連の手順によって行われる形状分割処理(S20)の具体例を説明する。
図6〜
図9は、本実施形態における形状分割処理の処理内容の具体例を示す説明図である。
【0049】
形状分割処理(S20)を行う場合に、形状分割処理部32は、先ず、外形形状取得ステップ(S210)において、眼鏡レンズの三次元玉型形状51を特定する三次元CADデータを読み出す(
図6(a)参照)。三次元CADデータは、凸面側外形形状52を特定する凸面レイヤーデータと、凹面側外形形状53を特定する凹面レイヤーデータとから構成されている(
図6(b)参照)。したがって、三次元CADデータの読み出しを行うと、形状分割処理部32は、凸面レイヤーデータと凹面レイヤーデータとを取得することになる。
【0050】
凸面レイヤーデータおよび凹面レイヤーデータを取得したら、次いで、形状分割処理部32は、投影形状取得ステップ(S220)において、投影レイヤーデータの取得を行う。具体的には、凸面レイヤーデータで特定される凸面側外形形状52と(
図7(a)参照)、凹面レイヤーデータで特定される凹面側外形形状53とについて(
図7(b)参照)、これらを平面視した状態で合成することで、眼鏡レンズの周縁の投影形状54についての投影レイヤーデータを取得する(
図7(c)参照)。
【0051】
投影レイヤーデータを取得したら、次いで、形状分割処理部32は、最外形抽出ステップ(S230)において、外形レイヤーデータの抽出を行う。
外形レイヤーデータの抽出にあたって、形状分割処理部32は、先ず、眼鏡レンズの周縁の投影形状54に対して、傾き量θを0°に設定した外接四角形55を求め、その外接四角形55を投影レイヤー上で投影形状54に重ねる(
図8(a)参照)。さらに、形状分割処理部32は、設定した傾き量θに所定角度を加算した後に、その所定角度加算後の傾き量θの外接四角形55を求め、その外接四角形55を投影レイヤー上で投影形状54に重ねる(
図8(b)参照)。これを、傾き量θが90°以上となるまで繰り返し行う。つまり、形状分割処理部32は、投影レイヤーデータで特定される投影形状54に対する外接四角形55を、当該投影形状54と当該外接四角形55との相対角度を変えながら所定角度毎に求めるのである(
図8(c)参照)。なお、投影形状54と外接四角形55との相対角度を変える際の所定角度については、例えば1°毎とすることが考えられるが、図例では図示簡略化のために5°毎に相対角度を変えている場合を示している。
そして、少なくとも1/4周分にわたり所定角度毎の各外接四角形55を求めたら(
図8(c)参照)、その後、形状分割処理部32は、各外接四角形55の全てに共通する内側領域の形状、すなわち投影形状54に重ねられた各外接四角形55によって囲まれた内側領域の形状を、加工最外形形状56として抽出する(
図8(d)参照)。この加工最外形形状56を特定するデータが外形レイヤーデータとなる。
【0052】
外形レイヤーデータを抽出したら、次いで、形状分割処理部32は、貫通加工形状抽出ステップ(S240)において、投影加工レイヤーデータの抽出を行う。具体的には、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状56と投影レイヤーデータで特定される投影形状54との差分領域である貫通加工形状部分57a〜57dを求め、その貫通加工形状部分57a〜57dについてのデータを投影加工レイヤーデータとする(
図9(a)参照)。なお、図例では、離れた位置に存在する四つの貫通加工形状部分57a〜57dをそれぞれ個別に抽出した場合を示している(図中ハッチング部分参照)。
【0053】
投影加工レイヤーデータを抽出したら、その後、形状分割処理部32は、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)において、凸面加工レイヤーデータおよび凹面加工レイヤーデータの抽出を行う。
凸面加工レイヤーデータについては、投影レイヤーデータで特定される投影形状54と凸面レイヤーデータで特定される凸面側外形形状52との差分領域である凸面側非貫通加工形状部分58を求め、その凸面側非貫通加工形状部分58についてのデータを凸面側加工形状データとする(
図9(b)参照)。なお、図例では、一つの凸面側非貫通加工形状部分58を抽出した場合を示している(図中ハッチング部分参照)。
また、凹面加工レイヤーデータについては、投影レイヤーデータで特定される投影形状54と凹面レイヤーデータで特定される凹面側外形形状53との差分領域である凹面側非貫通加工形状部分59を求め、その凹面側非貫通加工形状部分59についてのデータを凹面側加工形状データとする(
図9(c)参照)。なお、図例では、一つの凹面側非貫通加工形状部分59を抽出した場合を示している(図中ハッチング部分参照)。
【0054】
以上のような手順の形状分割処理(S20)により、眼鏡レンズの三次元玉型形状51を特定する三次元CADデータは、その眼鏡レンズの縁摺り加工のために用いられる複数の形状要素部分に関するデータに分割されることになる。ここでいう複数の形状要素部分には、凹状湾曲部分を有さずに構成される加工最外形形状56、眼鏡レンズ周縁の投影形状54、加工最外形形状56を投影形状54にするための被加工部位である貫通加工形状部分57a〜57d、レンズ凸面側を凸面側外形形状にするための被加工部位である凸面側非貫通加工形状部分58、および、レンズ凹面側を凹面側外形形状にするための被加工部位である凹面側非貫通加工形状部分59が含まれる。
【0055】
以上に説明したように、形状分割処理(S20)では、眼鏡レンズの三次元CADデータから複数の形状要素部分に関するデータへの分割を行うが、その分割を予め設定した一定の分割規則に則して行う。そのため、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等の経験則に基づいて行う場合とは異なり、形状分割の結果や手順等にバラツキが生じてしまうといったことがない。しかも、形状分割処理(S20)にて用いる分割規則は、投影形状54、加工最外形形状56、貫通加工形状部分57a〜57d、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59を、それぞれ順に抽出するというものである。つまり、当該分割規則によれば、先ず大まかな概略形状を抽出した後に、次いで細かな部分形状を抽出することになる。したがって、このような分割規則に基づいて形状分割を行う形状分割処理(S20)によれば、オペレータ等の経験則に基づく場合に比べて、その形状分割を精度良く効率的に行い得るようになる。
【0056】
また、形状分割処理(S20)では、大まかな概略形状の一つとして、加工最外形形状56、すなわち眼鏡レンズの投影形状54を包含し、かつ、凹状湾曲部分を有さずに構成される外形形状を抽出する。この加工最外形形状56については、凹状湾曲部分を有さないことから、レンズ周縁加工装置1で使用可能な最大径の加工ツールを用いて加工を行うことが可能である。つまり、形状分割処理(S20)において加工最外形形状56を抽出することで、その後に行うレンズ周縁加工装置1での加工処理についても、効率化が図れるようになる。
【0057】
また、形状分割処理(S20)では、加工最外形形状56の抽出を、予め設定した一定の基準に則して幾何的に行う。具体的には、投影形状54に対する外接四角形55を利用しつつ、当該投影形状54と当該外接四角形55との相対角度を変えながら、加工最外形形状56を幾何的に抽出する。したがって、その抽出結果である加工最外形形状56は、眼鏡レンズの投影形状54を確実に包含し、かつ、凹状湾曲部分を有することなく構成されており、しかも投影形状54を包含する上で必要十分なもの(すなわち不必要な領域部分等を含まないもの)となる。つまり、形状分割処理(S20)では、外接四角形55を利用した幾何的な抽出を行うことで、必要十分な加工最外形形状56を精度良く効率的に抽出し得るようになる。
【0058】
なお、ここでは外接四角形55を利用して加工最外形形状56を抽出する場合を例に挙げたが、加工最外形形状56の抽出は、投影形状54に外接する所定の外接図形形状であれば、四角形以外の他の形状(楕円形状や多角形形状等)を利用して行っても構わない。
【0059】
[3−3.外形サイズ決定処理の手順]
次に、データ処理装置3で行う外形サイズ決定処理(S30)について説明する。
【0060】
外形サイズ決定処理(S30)は、主としてデータ処理装置3のサイズ決定部33によって行われる処理で、形状分割処理(S20)で抽出した外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状に基づいて、眼鏡レンズの元になるアンカットレンズ(未加工レンズ)の外形サイズを決定する処理である。このような外形サイズ決定処理(S30)を、サイズ決定部33は、以下に説明するような予め設定した一定の基準(具体的には予めプログラミングされたサイズ決定規則)に則して行う。
【0061】
図10は、本実施形態における外形サイズ決定処理の手順を示すフローチャートである。
外形サイズ決定処理(S30)において、サイズ決定部33は、先ず、形状分割処理(S20)にて求めた外形レイヤーデータと、レンズ発注側端末装置5からの受注情報に含まれるレイアウト情報(眼鏡フレームに眼鏡レンズをどのように配置するかを指定する情報)とに基づき、その外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状について、レンズ凸面の光学中心(OC)の位置を中心とした場合の最大半径を求める(S310)。そして、最大半径を求めたら、次いで、サイズ決定部33は、レンズ発注側端末装置5からの受注情報を基に、加工対象となる眼鏡レンズが特注レンズであるか否かを判断する(S320)。
【0062】
加工対象となる眼鏡レンズが例えば個別設計の自由曲面を有した累進屈折力レンズのような特注レンズである場合には、サイズ決定部33は、レンズ発注側端末装置5からの受注情報に含まれる処方データに基づき、眼鏡レンズの凸面カーブおよび凹面カーブを求める。さらに、サイズ決定部33は、レンズ発注側端末装置5からの受注情報に含まれるレイアウト情報に基づき、加工最外形形状の最大半径に所定加工代を加えた径の円形状のアンカットレンズを想定する。このアンカットレンズに縁摺り加工を行った場合には、加工最外形形状の最大半径の箇所においてレンズコバ厚が最も薄くなり得る。そこで、サイズ決定部33は、このアンカットレンズについては、所定の必要最小コバ厚を確保でき、かつ、レンズコバ厚が最小(最薄)となるようなものとする。そして、サイズ決定部33は、このようなアンカットレンズにおける自由曲面の設計基準位置の肉厚(すなわち必要最小コバ厚を確保し得る自由曲面の設計基準位置での最小肉厚)を求める(S330)。自由曲面の設計基準位置での最小肉厚を求めたら、サイズ決定部33は、求めた凸面カーブ、凹面カーブおよび最小肉厚について、これらについての情報を図示せぬレンズ加工機に出力する。このとき、累進屈折力レンズであれば自由曲面の設計基準位置が基準となるが、他のレンズの場合にはOC位置が基準となる。その後は、求めた凸面カーブ、凹面カーブおよび最小肉厚を有するように、レンズ加工機がレンズ基材に対するCG(カーブジェネレーティング)加工および研磨加工を行い、想定したアンカットレンズを現実のものとする(S340)。なお、CG加工および研磨加工については、公知手法を用いればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0063】
一方、加工対象となる眼鏡レンズが特注レンズではなく、汎用アンカットレンズを用いることが可能である場合には、サイズ決定部33は、加工最外形形状の最大半径を満たす円形状アンカットレンズの最小径Aを計算する(S350)。具体的には、OCとアイポイント(EP)とのずれ量を考慮しつつ、加工最外形形状においてOCから半径方向で一番離れた位置を最大半径とし、その最大半径に所定加工代を加えた径を最小径Aとする。そして、最小径Aを計算したら、サイズ決定部33は、在庫している汎用アンカットレンズの中から最小径Aを満たす径のアンカットレンズを選択する(S360)。例えば、φ60mmからφ85mmまで直径5mm毎に汎用アンカットレンズを在庫している場合に、最小径A×2=68mmであれば、φ70mmのアンカットレンズを選択する。その後、サイズ決定部33は、アンカットレンズの選択結果について、その情報を例えばレンズ周縁加工装置1のオペレータに対して出力する。
【0064】
このようにして外形サイズを決定したアンカットレンズを選択したら、サイズ決定部33は、レンズ選択を完了する(S370)。
【0065】
図11は、本実施形態の特注レンズの場合における外形サイズ決定処理結果の具体例を示す説明図である。
外形サイズ決定処理(S30)において、サイズ決定部33は、先ず、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状56について、レンズ凸面のOC位置を中心とした最大半径Rを求める。そして、加工対象となる眼鏡レンズが特注レンズであれば、サイズ決定部33は、所定の必要最小コバ厚を確保しつつレンズコバ厚t1が最小(最薄)となるような、OC位置(累進屈折力レンズの場合は自由曲面の設計基準位置)での最小肉厚t2を求める。このようにして特定されたアンカットレンズは、その外形が図中で破線によって示したようなものとなり、同図中の実線で示されるアンカットレンズに比べると薄型化されたものとなる(図中ハッチング部分参照)。
【0066】
このように、外形サイズ決定処理(S30)では、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状56を基準にしてアンカットレンズの外形サイズを決定する。基準となる加工最外形形状56は、形状分割処理(S20)において精度良く抽出された必要十分なもの(すなわち不必要な領域部分等を含まないもの)である。したがって、外形サイズ決定処理(S30)で特定されるアンカットレンズは、最小(最薄)コバ厚が担保されたものとなる。つまり、必要十分な加工最外形形状56が的確に把握されるので、必要最低限の加工代を考慮してアンカットレンズの外形サイズを決定することができ、その場合でも縁摺り加工後にコバ厚がなくなる等の事態を招くことなく、眼鏡レンズの最終形状を正しく形成し得るようになる。
【0067】
以上に説明したように、外形サイズ決定処理(S30)では、形状分割処理(S20)での加工最外形形状の抽出結果、すなわち予め設定した一定の分割規則に則した加工最外形形状の抽出結果を基準にして、アンカットレンズの外形サイズを決定する。そのため、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等の経験則に基づいて加工最外形形状を抽出する場合とは異なり、眼鏡レンズの薄型化を容易に実現し得るようになる。
【0068】
ここで、比較のために、オペレータ等の経験則に基づく加工最外形形状の抽出結果を基準にして、アンカットレンズの外形サイズを決定する場合について、簡単に説明する。
図12は、従来の加工最外形形状の抽出結果の具体例を示す説明図である。
オペレータ等の経験則に基づいて当該オペレータ等が手作業で加工最外形形状62を抽出する場合、抽出された加工最外形形状62は、その精度が十分なものであるとは言えない。したがって、その加工最外形形状62の抽出結果を基準にしてアンカットレンズの外形サイズを決定すると、後の修正にも対応し得るように、抽出結果に対して十分な加工代を確保した上でアンカットレンズの外形サイズを選定する必要が生じるため、眼鏡レンズの薄型化が困難となり得る。つまり、従来の手法では、最終形状に見合った最薄レンズを作成することが困難である(図中A参照)。
また、抽出された加工最外形形状62は、その精度が十分とは言えないことから、その基になる投影形状61と対比すると、それぞれのフレームセンタ位置がずれたものとなるおそれがある。このような位置ずれが生じた場合には、レンズ周縁部においてレンズの生地切れ(レンズ材が足りなくなる状態)が発生してしまう可能性がある(図中B参照)。つまり、従来の手法では、正確な最終形状を再現できないといったことも生じ得る。
さらに、抽出された加工最外形形状62は、その精度が十分とは言えないことから、その基になる投影形状61と対比すると、装用時に鼻側となる端縁位置がずれてしまうおそれがある。このような形状のずれが生じた場合には、そのずれ分×2の量が眼鏡レンズの瞳孔間距離(PD)のずれとして表れるため、PDの調整が必要になるといったことも生じ得る。
【0069】
これに対して、本実施形態で説明した外形サイズ決定処理(S30)によれば、予め設定した一定の分割規則に則して抽出した加工最外形形状56を基準とするので、加工代を最低限確保した外形サイズのアンカットレンズの選定が可能となる。したがって、従来の手法による場合とは異なり、最終形状に見合った最薄レンズの作成が容易であり、正確なレンズ最終形状を確実に再現でき、さらにはPDの調整が必要になることもない。つまり、本実施形態での外形サイズ決定処理(S30)によれば、加工最外形形状56の抽出の高精度化等を通じて、眼鏡レンズの薄型化等を容易に実現することが可能になる。
【0070】
[3−4.加工ツール割り当て処理の手順]
次に、データ処理装置3で行う加工ツール割り当て処理(S40)について説明する。
【0071】
加工ツール割り当て処理(S40)は、主としてデータ処理装置3のツール割当部34によって行われる処理で、形状分割処理(S20)で分割した複数の形状要素部分の各々について、それぞれの形状要素部分の加工に用いる加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の加工ツール11の中から割り当てる処理である。このような加工ツール割り当て処理(S40)を、ツール割当部34は、以下に説明するような予め設定されたツール選択基準(具体的には予めプログラミングされた選択規則)に則して行う。
【0072】
図13は、本実施形態における加工ツール割り当て処理の手順の概要を示すフローチャートである。
加工ツール割り当て処理(S40)において、ツール割当部34は、先ず、依頼されたジョブの識別番号を基に、眼鏡レンズの処方情報、レンズ情報等を取得する(S410)。眼鏡レンズの処方情報、レンズ情報等は、レンズ発注側端末装置5からの受注情報に含まれているものとする。さらに、ツール割当部34は、その眼鏡レンズについて形状分割処理(S20)で取得または抽出された全てのレイヤーのデータを、ジョブの識別番号を基に、データベース部36内から取得する(S420)。
【0073】
その後、ツール割当部34は、外形レイヤーに関して、荒加工条件作成処理を行い(S430)、次いで仕上げ加工条件作成処理を行う(S440)。つまり、ツール割当部34は、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状について、これを荒加工によって形成する場合の加工条件を作成するとともに、さらに仕上げ加工を行う場合の加工条件を作成するのである。
また、ツール割当部34は、データベース部36内から取得した各データに投影加工レイヤーについてのものがあれば(S450a)、投影加工レイヤーデータで特定される貫通加工形状部分についての加工条件作成処理を行う(S450b)。
また、ツール割当部34は、データベース部36内から取得した各データに凸面加工レイヤーについてのものがあれば(S460a)、凸面加工レイヤーデータで特定される凸面側非貫通加工形状部分についての加工条件作成処理を行う(S460b)。
また、ツール割当部34は、データベース部36内から取得した各データに凹面加工レイヤーについてのものがあれば(S470a)、凹面加工レイヤーデータで特定される凹面側非貫通加工形状部分についての加工条件作成処理を行う(S470b)。
【0074】
これらの加工条件作成処理(S430〜S470b)を行った後、ツール割当部34は、最終的な加工順を決める処理を行う(S480)。
【0075】
以下、これらの各処理(S430〜S480)について、さらに詳しく説明する。
【0076】
(外形レイヤー荒加工条件作成処理)
図14は、本実施形態における外形レイヤー荒加工条件作成処理の手順を示すフローチャートである。
外形レイヤー荒加工条件作成処理(S430)において、ツール割当部34は、先ず、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状について、これを荒加工によって形成する場合の荒加工形状を、演算によって求める(S4301)。荒加工形状は、加工最外形形状に対して仕上げ加工代を加味した形状である。
荒加工形状を求めたら、ツール割当部34は、外形サイズ決定処理(S30)で決定したアンカットレンズの外形サイズ(レンズ外径およびレンズ厚みについてのサイズを含む。)を基に、荒加工によって加工する部分(すなわちアンカットレンズと荒加工形状との差分となる部分)の加工体積を計算する(S4302)。さらに、ツール割当部34は、外形サイズ決定処理(S30)で決定したアンカットレンズを構成するレンズ材料を基に、そのレンズ材料に対して荒加工を行う加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4303)。このときのツール選択は、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いて行う。ツールリストには、複数種類の加工ツール11と加工対象となるレンズ材料との対応関係が予め規定されているものとする。
そして、加工体積計算およびツール選択を行ったら、ツール割当部34は、加工体積の計算結果と選択した加工ツール11の加工能力とから、その加工ツール11を用いて荒加工を行う際のツール送り速度を計算によって求める(S4304)。さらに、ツール割当部34は、求めたツール送り速度と荒加工形状とから、荒加工に要する加工時間を計算によって求める(S4305)。
このようにして求めたそれぞれの結果を、ツール割当部34は、荒加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4306)。
【0077】
(外形レイヤー仕上げ加工条件作成処理)
図15は、本実施形態における外形レイヤー仕上げ加工条件作成処理の手順を示すフローチャートである。
外形レイヤー仕上げ加工条件作成処理(S440)において、ツール割当部34は、先ず、外形レイヤーデータで特定される加工最外形形状について、これを仕上げ加工によって形成する場合の仕上げ加工形状を、演算によって求める(S4401)。仕上げ加工形状は、荒加工形状に対して仕上げ加工(研磨加工等)を行った後の外形形状で、加工最外形形状と略一致することになる形状である。
仕上げ加工形状を求めたら、ツール割当部34は、荒加工形状と仕上げ加工形状との差分と、レンズの厚みデータとから、仕上げ加工によって加工する部分の加工体積を計算する(S4402)。さらに、ツール割当部34は、加工対象となるレンズ材料を基に、そのレンズ材料に対して仕上げ加工を行う加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4403)。このときのツール選択は、荒加工の場合と同様に、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いて行う。なお、ツールリスト中に適用可能な加工ツール11が複数種類存在する場合には、ツール径の最も大きいものを選択することが考えられる。
そして、加工体積計算およびツール選択を行ったら、ツール割当部34は、加工体積の計算結果と選択した加工ツール11の加工能力とから、その加工ツール11を用いて仕上げ加工を行う際のツール送り速度を計算によって求める(S4404)。さらに、ツール割当部34は、求めたツール送り速度と仕上げ加工形状とから、仕上げ加工に要する加工時間を計算によって求める(S4405)。
このようにして求めたそれぞれの結果を、ツール割当部34は、仕上げ加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4406)。
【0078】
(投影加工レイヤー加工条件作成処理)
図16は、本実施形態における投影加工レイヤー加工条件作成処理の手順を示すフローチャートである。
【0079】
投影加工レイヤー加工条件作成処理(S450b)において、ツール割当部34は、先ず、投影加工レイヤーにおける各投影加工レイヤーデータを識別するための変数x1をx1=1に設定する(S4501)。そして、ツール割当部34は、変数x1で特定される投影加工レイヤーデータが投影加工レイヤーにあれば(S4502)、その投影加工レイヤーデータで特定される形状部分と仕上げ加工形状との差分と、レンズの厚みデータとから、その形状部分について加工を行う際の加工体積を計算する(S4503)。さらに、ツール割当部34は、加工対象となるレンズ材料を基に、そのレンズ材料に対して当該形状部分の仕上げ加工を行う加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4504)。このときのツール選択は、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、ツール径の大きいものを優先するようにして行う。
【0080】
そして、ツール選択を行ったら、ツール割当部34は、変数x1で特定される投影加工レイヤーデータについて、その選択した加工ツール11により当該投影加工レイヤーデータで特定される形状部分の加工を行うことが可能か否かを判断する(S4505)。この判断は、例えば、当該形状部分の最小R形状部と選択した加工ツール11のツール径とを比較して行う。その結果、加工不可能と判断した場合には、ツール割当部34は、選択した加工ツール11に次いでツール径が大きい仕上げ加工用の加工ツール11(すなわち、先に選んだ加工ツール11よりも小径であるが、未選択の中では最も大径の加工ツール11)を、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、当該レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4506)。なお、選択すべき加工ツール11が存在しない場合には(S4507)、ツール割当部34は、エラー(投影加工レイヤー加工不可)情報を、投影加工レイヤー加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4508)。
【0081】
このようにして、変数x1に関して投影加工レイヤーデータによる形状部分を加工可能なツール選択を行ったら、ツール割当部34は、加工すべき形状部分の加工体積の計算結果と選択した加工ツール11の加工能力とから、その加工ツール11を用いて仕上げ加工を行う際のツール送り速度を計算によって求める(S4509)。さらに、ツール割当部34は、求めたツール送り速度と加工すべき形状部分とから、その形状部分の仕上げ加工に要する加工時間を計算によって求める(S4510)。
そして、ツール割当部34は、求めたそれぞれの結果を、変数x1で特定される投影加工レイヤーデータについての加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4511)。
【0082】
その後、ツール割当部34は、x1=x1+1にインクリメントし(S4512)、そのインクリメント後の変数x1について、再び上述した加工条件の作成処理を行う(S4502〜S4512)。そして、ツール割当部34は、貫通加工形状抽出ステップ(S240)で抽出された全ての投影加工レイヤーデータについての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S4502〜S4512)。このようにすることで、データベース部36には、投影加工レイヤーにおける全ての投影加工レイヤーデータについての加工条件が記憶保持されることになる。
【0083】
(凸面加工レイヤー加工条件作成処理)
図17は、本実施形態における凸面加工レイヤー加工条件作成処理の手順を示すフローチャートである。
【0084】
凸面加工レイヤー加工条件作成処理(S460b)において、ツール割当部34は、先ず、凸面加工レイヤーにおける各凸面加工レイヤーデータを識別するための変数x2をx2=1に設定する(S4601)。そして、ツール割当部34は、変数x2で特定される凸面加工レイヤーデータが凸面加工レイヤーにあれば(S4602)、その凸面加工レイヤーデータで特定される形状部分と仕上げ加工形状との差分と、レンズの厚みデータとから、その形状部分について加工を行う際の加工体積を計算する(S4603)。さらに、ツール割当部34は、加工対象となるレンズ材料を基に、そのレンズ材料に対して当該形状部分の仕上げ加工を行う加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4604)。このときのツール選択は、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、ツール径の大きいものを優先するようにして行う。
【0085】
そして、ツール割当部34は、ツール選択を行ったら、変数x2で特定される凸面加工レイヤーデータについて、その選択した加工ツール11により当該凸面加工レイヤーデータで特定される形状部分の加工を行うことが可能か否かを判断する(S4605)。この判断は、例えば、当該形状部分の最小R形状部と選択した加工ツール11のツール径とを比較して行う。その結果、加工不可能と判断した場合には、ツール割当部34は、選択した加工ツール11に次いでツール径が大きい仕上げ加工用の加工ツール11(すなわち、先に選んだ加工ツール11よりも小径であるが、未選択の中では最も大径の加工ツール11)を、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、当該レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4606)。なお、選択すべき加工ツール11が存在しない場合には(S4607)、ツール割当部34は、エラー(凸面加工レイヤー加工不可)情報を、凸面加工レイヤー加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4608)。
【0086】
このようにして、変数x2に関して凸面加工レイヤーによる形状部分を加工可能なツール選択を行ったら、ツール割当部34は、加工すべき形状部分の加工体積の計算結果と選択した加工ツール11の加工能力とから、その加工ツール11を用いて仕上げ加工を行う際のツール送り速度を計算によって求める(S4609)。さらに、ツール割当部34は、求めたツール送り速度と加工すべき形状部分とから、その形状部分の仕上げ加工に要する加工時間を計算によって求める(S4610)。
そして、ツール割当部34は、求めたそれぞれの結果を、変数x2で特定される凸面加工レイヤーデータについての加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4611)。
【0087】
その後、ツール割当部34は、x2=x2+1にインクリメントし(S4612)、そのインクリメント後の変数x2について、再び上述した加工条件の作成処理を行う(S4602〜S4612)。そして、ツール割当部34は、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)で抽出された全ての凸面加工レイヤーデータについての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S4602〜S4612)。このようにすることで、データベース部36には、凸面加工レイヤーにおける全ての凸面加工レイヤーデータについての加工条件が記憶保持されることになる。
【0088】
(凹面加工レイヤー加工条件作成処理)
図18は、本実施形態における凹面加工レイヤー加工条件作成処理の手順を示すフローチャートである。
【0089】
凹面加工レイヤー加工条件作成処理(S470b)において、ツール割当部34は、先ず、凹面加工レイヤーにおける各凹面加工レイヤーデータを識別するための変数x3をx3=1に設定する(S4701)。そして、ツール割当部34は、変数x3で特定される凹面加工レイヤーデータが凹面加工レイヤーにあれば(S4702)、その凹面加工レイヤーデータで特定される形状部分と仕上げ加工形状との差分と、レンズの厚みデータとから、その形状部分について加工を行う際の加工体積を計算する(S4703)。さらに、ツール割当部34は、加工対象となるレンズ材料を基に、そのレンズ材料に対して当該形状部分の仕上げ加工を行う加工ツール11を、レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4704)。このときのツール選択は、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、ツール径の大きいものを優先するようにして行う。
【0090】
そして、ツール選択を行ったら、ツール割当部34は、変数x3で特定される凹面加工レイヤーデータについて、その選択した加工ツール11により当該凹面加工レイヤーデータで特定される形状部分の加工を行うことが可能か否かを判断する(S4705)。この判断は、例えば、当該形状部分の最小R形状部と選択した加工ツール11のツール径とを比較して行う。その結果、加工不可能と判断した場合には、ツール割当部34は、選択した加工ツール11に次いでツール径が大きい仕上げ加工用の加工ツール11(すなわち、先に選んだ加工ツール11よりも小径であるが、未選択の中では最も大径の加工ツール11)を、レンズ周縁加工装置1について予め設定されたツールリストを用いつつ、当該レンズ周縁加工装置1が備える複数種類の中から選択する(S4706)。なお、選択すべき加工ツール11が存在しない場合には(S4707)、ツール割当部34は、エラー(凹面加工レイヤー加工不可)情報を、凹面加工レイヤー加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4708)。
【0091】
このようにして、変数x3に関して凹面加工レイヤーによる形状部分を加工可能なツール選択を行ったら、ツール割当部34は、加工すべき形状部分の加工体積の計算結果と選択した加工ツール11の加工能力とから、その加工ツール11を用いて仕上げ加工を行う際のツール送り速度を計算によって求める(S4709)。さらに、ツール割当部34は、求めたツール送り速度と加工すべき形状部分とから、その形状部分の仕上げ加工に要する加工時間を計算によって求める(S4710)。
そして、ツール割当部34は、求めたそれぞれの結果を、変数x3で特定される凹面加工レイヤーデータについての加工条件として、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4711)。
【0092】
その後、ツール割当部34は、x3=x3+1にインクリメントし(S4712)、そのインクリメント後の変数x3について、再び上述した加工条件の作成処理を行う(S4702〜S4712)。そして、ツール割当部34は、非貫通加工形状抽出ステップ(S250)で抽出された全ての凹面加工レイヤーデータについての処理が終了するまで、上述の処理を繰り返し行う(S4702〜S4712)。このようにすることで、データベース部36には、凹面加工レイヤーにおける全ての凹面加工レイヤーデータについての加工条件が記憶保持されることになる。
【0093】
(各レイヤー加工順決定処理)
各レイヤー加工順決定処理(S480)において、ツール割当部34は、上述したそれぞれの加工条件作成処理(S430〜S470b)で生成した加工条件に基づき、複数種類の加工ツール11を用いてレンズ加工を行う際における各加工ツール11についての最終的な加工順を決定する。具体的には、ツール割当部34は、先ず、外形レイヤー荒加工条件作成処理(S430)で生成した荒加工条件による加工を行い、次いで、外形レイヤー仕上げ加工条件作成処理(S440)で生成した仕上げ加工条件による加工を行うことを決定する。そして、ツール割当部34は、その後に行うべき加工である、投影加工レイヤー加工条件作成処理(S450b)、凸面加工レイヤー加工条件作成処理(S460b)および凹面加工レイヤー加工条件作成処理(S470b)で生成した加工条件による加工について、以下に述べるような手順で加工順を決定する。
【0094】
図19および
図20は、本実施形態における各レイヤー加工順決定処理の手順を示すフローチャートである。
【0095】
各加工レイヤー加工条件作成処理(S450b、S460b、S470b)で生成した加工条件による加工について、その加工順の決定にあたって、ツール割当部34は、投影加工レイヤーにおける各投影加工レイヤーデータについての加工条件から、各投影加工レイヤーデータに対して割り当てられた加工ツール11を識別するためのツール番号を読み出す(S4801)。複数の投影加工レイヤーデータが存在する場合には、ツール割当部34は、それぞれに割り当てられた全種類の加工ツール11について、ツール番号の読み出しを行う。なお、ツール番号は、レンズ周縁加工装置1が備える各加工ツール11を識別するために、予め加工ツール11の種類毎に個別に設定されているものとする。
また、ツール割当部34は、凸面加工レイヤーにおける各凸面加工レイヤーデータについての加工条件から、各凸面加工レイヤーデータに対して割り当てられた加工ツール11を識別するためのツール番号を読み出す(S4802)。複数の凸面加工レイヤーデータが存在する場合には、ツール割当部34は、それぞれに割り当てられた全種類の加工ツール11について、ツール番号の読み出しを行う。
さらに、ツール割当部34は、凹面加工レイヤーにおける各凹面加工レイヤーデータについての加工条件から、各凹面加工レイヤーデータに対して割り当てられた加工ツール11を識別するためのツール番号を読み出す(S4803)。複数の凹面加工レイヤーデータが存在する場合には、ツール割当部34は、それぞれに割り当てられた全種類の加工ツール11について、ツール番号の読み出しを行う。
【0096】
ツール番号の読み出しを行ったら、その後、ツール割当部34は、加工順決定の処理対象となるツール番号の値を1に設定する(S4804)。さらに、ツール割当部34は、加工順を識別するための変数c1、c2、c3をそれぞれc1=1、c2=1、c3=1に設定する(S4805)。
【0097】
その後、ツール割当部34は、投影加工レイヤーデータについてのツール番号の読み出し結果に基づいて、現在のツール番号の設定値で特定される加工ツール11を使用する投影加工レイヤーデータがあるか否かを判断し(S4806)、該当するツール番号があれば、その投影加工レイヤーデータについての加工順を現在の設定値c1とする(S4807)。そして、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する他の投影加工レイヤーデータがあるか否かを判断し(S4808)、他にもあれば、投影加工レイヤーデータについての加工順の変数c1をc1=c1+1にインクリメントした後に(S4809)、その投影加工レイヤーデータについての加工順を現在(インクリメント後)の設定値c1とする(S4807)。このような処理を、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する全ての投影加工レイヤーデータについて、加工順の割り当てが終了するまで繰り返し行う(S4807〜S4809)。
【0098】
投影加工レイヤーデータについての上述した処理が終了した後、ツール割当部34は、次いで、凸面加工レイヤーデータについてのツール番号の読み出し結果に基づいて、現在のツール番号(上述した投影加工レイヤーデータの場合と同じツール番号)の設定値で特定される加工ツール11を使用する凸面加工レイヤーデータがあるか否かを判断する(S4810)。その結果、該当するツール番号があれば、ツール割当部34は、凸面加工レイヤーデータについての加工順を現在(インクリメント後)の設定値c2とする(S4811)。そして、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する他の凸面加工レイヤーデータがあるか否かを判断し(S4812)、他にもあれば、凸面加工レイヤーデータについての加工順の変数c2をc2=c2+1にインクリメントした後に(S4813)、その凸面加工レイヤーデータについての加工順を現在(インクリメント後)の設定値c2とする(S4811)。このような処理を、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する全ての凸面加工レイヤーデータについて、加工順の割り当てが終了するまで繰り返し行う(S4811〜S4813)。
【0099】
凸面加工レイヤーデータについての上述した処理が終了した後、ツール割当部34は、次いで、凹面加工レイヤーデータについてのツール番号の読み出し結果に基づいて、現在のツール番号(上述した凸面加工レイヤーデータの場合と同じツール番号)の設定値で特定される加工ツール11を使用する凹面加工レイヤーデータがあるか否かを判断する(S4814)。その結果、該当するツール番号があれば、ツール割当部34は、凹面加工レイヤーデータについての加工順を現在(インクリメント後)の設定値c3とする(S4815)。そして、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する他の凹面加工レイヤーデータがあるか否かを判断し(S4816)、他にもあれば、ツール使用順c3をc3=c3+1に設定した後に(S4817)、その凹面加工レイヤーデータについての加工順を現在(インクリメント後)の設定値c3とする(S4814)。このような処理を、ツール割当部34は、同じツール番号で特定される加工ツール11を使用する全ての凹面加工レイヤーデータについて、加工順の割り当てが終了するまで繰り返し行う(S4815〜S4817)。
【0100】
その後、ツール割当部34は、ツール番号の値をツール番号=ツール番号+1にインクリメントする(S4818)。そして、ツール割当部34は、現在(インクリメント後)のツール番号の設定値で特定される加工ツール11をレンズ周縁加工装置1が備えているか否かを判断する(S4819)。その結果、該当する加工ツール11をレンズ周縁加工装置1が備えていれば、ツール割当部34は、その加工ツール11について、上述した一連の処理を再び行う(S4806〜S4619)。これを、ツール割当部34は、レンズ周縁加工装置1が備える全ての加工ツール11について終了するまで繰り返し行う。
【0101】
以上のような一連の処理を経ることで、ツール割当部34は、各投影加工レイヤーデータ、各凸面加工レイヤーデータおよび各凹面加工レイヤーデータに対して、それぞれに加工順を割り当てることになる。ただし、このようにして得られた割り当て結果は、加工順が各加工ツール11のツール番号順に則したものとなるため、実際にレンズ加工を行う場合に当該レンズ加工を必ずしも効率的に行えるとは限らない。
【0102】
そこで、各投影加工レイヤーデータ、各凸面加工レイヤーデータおよび各凹面加工レイヤーデータに対して加工順を割り当てた後、ツール割当部34は、レンズ加工を効率的に行い得るようにすべく、割り当てた加工順の並び替えを行う(S4820)。具体的には、ツール割当部34は、予め設定されているツール使用の優先順に従い、各加工ツール11を使用する順を並び替える。これにより、各投影加工レイヤーデータ、各凸面加工レイヤーデータおよび各凹面加工レイヤーデータについての加工順は、各加工ツール11のツール番号順に則したものではなく、各加工ツール11について設定されたツール使用の優先順に則したものとなる。
【0103】
このときに基準とするツール使用の優先順としては、例えば、ツール径の大きい加工ツール11を優先して使用する、といったものが挙げられる。ただし、ツール使用の優先順は、レンズ周縁加工装置1の構造や用意されている加工ツール11の種類等に応じて予め設定されたものであれば、必ずしもこのような内容のものに限られることはない。他の例としては、レンズ周縁加工装置1における各加工ツール11の配置順(例えばレンズに近いほうを優先)、加工に要する時間順(例えば加工時間が短いほうを優先)、これらを適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
【0104】
そして、加工順の並び替えを行った後、ツール割当部34は、その並び替えた加工順を、加工に用いる加工ツール11の種類、加工対象となる形状部分についての加工レイヤーデータ、その加工レイヤーデータについての加工条件等と関連付けて、データベース部36内に登録して、そのデータベース部36に記憶保持させておく(S4821)。
【0105】
(加工指示処理)
このようにしてデータベース部36内に記憶保持される内容は、その後、データ処理装置3の加工指示部35がレンズ周縁加工装置1に対して眼鏡レンズの縁摺り加工を指示する際に用いられる。すなわち、加工指示部35は、データベース部36内における記憶保持内容に従いつつ、ツール割当部34が割り当てた各加工ツール11を同じくツール割当部34が決定した使用順で用いるように、レンズ周縁加工装置1に縁摺り加工の加工指示を行う(S50)。なお、加工指示部35による加工指示の具体的な手法については、公知技術を利用して行えばよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0106】
以上に説明したように、加工ツール割り当て処理(S40)では、形状分割処理(S20)で分割した複数の形状要素部分の各々について、それぞれの形状要素部分の加工に用いる加工ツール11の割り当てを行う。つまり、データ処理装置3は、レンズ周縁加工装置1に対する加工指示処理に先立って行うべき事前処理として、形状分割処理(S20)および加工ツール割り当て処理(S40)を行う。そして、このような事前処理を、データ処理装置3は、予め設定した一定の分割規則およびツール選択規則に則して行う。そのため、事前処理における形状分割およびツール割り当ての各処理は、予め設定した一定の基準に則して規則的に行うことになるので、その処理結果が必ず一定の基準に則したものになる。
【0107】
したがって、データ処理装置3で行う事前処理については、その処理結果が必ず一定の基準に則したものとなるので、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等の経験則に基づいて行う場合とは異なり、後に処理結果の修正が必要になるといったことが生じるおそれがなく、その精度が十分なものとなる。さらには、事前処理が必ず一定の基準に則して行われることから、オペレータ等の経験則に基づいて行う場合とは異なり、その手順に試行錯誤の要素等が加わることがなく、非常に効率的に行うことが可能性となる。
【0108】
このことは、加工対象となる眼鏡レンズが、主にサングラス用として使用される高カーブ(湾曲の度合いが強い)フレームに枠入れするためのものである場合に、特に有効である。高カーブフレーム用の縁摺り加工を行う場合には、レンズ周縁部を複雑な形状に加工することが殆どであるが、その場合であっても、事前処理が必ず一定の基準に則して行われれば、被加工部位毎に最適な加工ツール11を精度良く効率的に選択し得るようになるからである。
【0109】
[3−5.レンズ加工処理の手順]
次に、データ処理装置3からの加工指示に応じてレンズ周縁加工装置1で行う眼鏡レンズの縁摺り加工について説明する(S60)。
なお、眼鏡レンズの縁摺り加工にあたり、レンズ周縁加工装置1に対しては、データ処理装置3での形状分割処理(S20)および加工ツール割り当て処理(S40)の処理結果(すなわち事前処理の処理結果)が加工指示として当該データ処理装置3から通知されているとともに、そのデータ処理装置3での外形サイズ決定処理(S30)により外形サイズが決定されたアンカットレンズが周縁加工部12にセットされているものとする。
【0110】
図21は、本実施形態におけるレンズ加工処理の処理内容の具体例を示す説明図である。
【0111】
眼鏡レンズの縁摺り加工にあたり、レンズ周縁加工装置1は、データ処理装置3からの加工指示で指定される加工順に従い、先ず、セットされたアンカットレンズ71に対して、荒加工条件による加工を行う。具体的には、荒加工条件にて指定される荒加工用の加工ツール11aを用いて、当該アンカットレンズ71の周縁を荒加工形状とする加工を行う(
図21(a)参照)。そして、周縁を荒加工形状としたら、続いて、レンズ周縁加工装置1は、仕上げ加工条件による加工を行う。具体的には、仕上げ加工条件にて指定される仕上げ加工用の加工ツール11bを用いて、荒加工形状を仕上げ加工形状とする加工を行う。この仕上げ加工形状は、加工最外形形状56と略一致することになる形状である(
図21(b)参照)。
【0112】
このような荒加工条件および仕上げ加工条件による加工は、外形サイズ決定処理(S30)で外形サイズが決定されたアンカットレンズ71に対して行う。つまり、加工対象となるアンカットレンズ71は、形状分割処理(S20)において精度良く抽出された必要十分な加工最外形形状56を基準にして、その外形サイズが決定されている。したがって、そのアンカットレンズ71に対して行う荒加工条件および仕上げ加工条件による加工については、その加工量および加工時間が必要最小限で済む。
【0113】
その後、レンズ周縁加工装置1は、データ処理装置3からの加工指示で指定される加工順に従い、ツール径の大きい加工ツール11を使用する加工を優先的に実行する。具体的には、例えば、各貫通加工形状部分57a〜57dの仕上げ加工に用いる加工ツール11dと、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59の仕上げ加工に用いる加工ツール11cとを比べた場合に、加工ツール11cのほうが加工ツール11dよりもツール径が大きければ、加工ツール11cを用いて凸面側非貫通加工形状部分58のザグリ加工を行い(
図21(c)参照)、さらに同じ加工ツール11cを用いて凹面側非貫通加工形状部分59のザグリ加工を行った後に(
図21(d)参照)、加工ツール11dを用いて各貫通加工形状部分57a〜57dについての加工を順に行うことになる(
図21(e)参照)。なお、凸面側非貫通加工形状部分58と凹面側非貫通加工形状部分59とで用いる加工ツール11cが異なる場合であれば、ツール径の大きいほうを優先して実行することになる。また、各貫通加工形状部分57a〜57dの間についても同様であり、それぞれで用いる加工ツール11dが異なる場合であれば、ツール径の大きいほうを優先して実行することになる。
【0114】
このように、貫通加工形状部分57a〜57d、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59に対する加工は、例えば当該加工に用いる加工ツール11c,11dのツール径に基づいて、その加工順が適宜並び替えられる。ツール径の異なる加工ツールを用いる場合は、一般に、同じ加工量であれば、ツール径の大きい加工ツールで加工したほうが、加工時間が短くて済む傾向にある。そのため、ツール径に基づいて加工順を並び替えるようにすれば、例えば異なる加工ツールで重複して加工され得る被加工部位がある場合に、その被加工部位がツール径の大きい加工ツールで優先的に加工されるようになる。つまり、ツール径に基づいて加工順を並び替えることで、その重複する被加工部位については加工時間の短縮化が図られ、その結果として被加工部位に対する加工を効率的に行うことが可能となる。
【0115】
このような加工順で貫通加工形状部分57a〜57d、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59に対する加工を行うと、レンズ周縁加工装置1は、縁摺り加工後の眼鏡レンズ、すなわち周縁が三次元CADデータで特定される三次元玉型形状51に加工された眼鏡レンズを得ることになる(
図21(f)参照)。
【0116】
以上に説明したように、レンズ周縁加工装置1で行う縁摺り加工処理(S60)は、データ処理装置3での形状分割処理(S20)および加工ツール割り当て処理(S40)の処理結果に従いつつ、そのデータ処理装置3での外形サイズ決定処理(S30)により外形サイズが決定されたアンカットレンズ71に対して行う。したがって、その縁摺り加工処理(S60)においては、レンズ周縁加工装置1が複数種類の加工ツールを選択的に用いて縁摺り加工を行う場合であっても、その縁摺り加工を効率的に高精度で行うことが可能である。このことは、上述した加工ツール割り当て処理(S40)における場合と同様に、加工対象となる眼鏡レンズが、主にサングラス用として使用される高カーブ(湾曲の度合いが強い)フレームに枠入れするためのものである場合に、特に有効である。
【0117】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下に述べるような効果が得られる。
【0118】
本実施形態で説明したレンズ加工システムでは、眼鏡レンズの三次元CADデータに対する形状分割処理(S20)を、少なくとも、投影形状54についての投影レイヤーデータを取得する投影形状取得ステップ(S220)と、その投影形状54に対する外接四角形55を利用しつつ加工最外形形状56についての外形レイヤーデータを抽出する最外形抽出ステップ(S230)と、その加工最外形形状56と投影形状54との差分領域を貫通加工形状部分57a〜57dとして求め、求めた貫通加工形状部分57a〜57dについてのデータを投影加工レイヤーデータとして抽出する貫通加工形状抽出ステップ(S240)と、を経て行う。つまり、本実施形態における形状分割処理(S20)では、眼鏡レンズの三次元CADデータを複数の形状要素部分に関するデータへ分割するが、その分割を予め設定した一定の分割規則に則して行う。したがって、本実施形態の形状分割処理(S20)によれば、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等の経験則に基づいて行う場合とは異なり、形状分割の結果や手順等にバラツキが生じてしまうといったことがなく、その形状分割を精度良く効率的に行い得るようになる。
また、本実施形態の形状分割処理(S20)では、一定の分割規則に従いつつ大まかな概略形状を抽出した後に細かな部分形状を抽出するが、その大まかな概略形状の一つとして加工最外形形状56を抽出するとともに、その抽出を投影形状54に対する外接四角形55を利用しつつ幾何的に行う。そのため、その抽出結果である加工最外形形状56は、眼鏡レンズの投影形状54を確実に包含し、かつ、凹状湾曲部分を有することなく構成されており、しかも投影形状54を包含する上で必要十分なもの(すなわち不必要な領域部分等を含まないもの)となる。つまり、形状分割処理(S20)では、外接四角形55を利用した幾何的な抽出を行うことで、必要十分な加工最外形形状56を精度良く効率的に抽出することができる。このことは、形状分割処理(S20)の高精度化や高効率化等に寄与するだけではなく、その後に行う外形サイズ決定処理(S30)および加工ツール割り当て処理(S40)の高精度化や高効率化等にも非常に有効である。
【0119】
しかも、本実施形態の形状分割処理(S20)では、投影形状取得ステップ(S220)に先立って行う外形形状取得ステップ(S210)で凸面レイヤーデータおよび凹面レイヤーデータを取得し、投影形状取得ステップ(S220)において凸面側外形形状52と凹面側外形形状53とを合成することで投影形状54についての投影レイヤーデータを取得する。そして、投影形状取得ステップ(S220)、最外形抽出ステップ(S230)および貫通加工形状抽出ステップ(S240)の後に行う非貫通加工形状抽出ステップ(S250)においては、投影形状54と凸面側外形形状52との差分領域である凸面側非貫通加工形状部分58を求め、その凸面側非貫通加工形状部分58についてのデータを凸面側加工形状データとして抽出するとともに、投影形状54と凹面側外形形状53との差分領域である凹面側非貫通加工形状部分59を求め、その凹面側非貫通加工形状部分59についてのデータを凹面側加工形状データとして抽出する。
したがって、本実施形態の形状分割処理(S20)によれば、凸面側外形形状52と凹面側外形形状53とが互いに相違する三次元形状の眼鏡レンズであっても、ザグリ加工を必要とする被加工部位の抽出が予め設定した一定の分割規則に則して行われることになるので、特に加工対象となる眼鏡レンズが主にサングラス用として使用される高カーブ(湾曲の度合いが強い)フレームに枠入れするためのものである場合に非常に有効である。高カーブフレーム用の縁摺り加工を行う場合には、レンズ周縁部を複雑な形状に加工することが殆どであるが、その場合であっても凸面側および凹面側のそれぞれについて被加工部位となる形状部分が精度良く効率的に抽出されるようになるからである。
【0120】
また、本実施形態で説明したレンズ加工システムでは、形状分割処理(S20)における最外形抽出ステップ(S230)で加工最外形形状56を特定する外形レイヤーデータを抽出した後に、その外形レイヤーデータに基づいて、眼鏡レンズの元になるアンカットレンズ71の外形サイズを決定するステップである外形サイズ決定処理(S30)を行う。つまり、本実施形態の外形サイズ決定処理(S30)では、形状分割処理(S20)での加工最外形形状56の抽出結果、すなわち予め設定した一定の分割規則に則した加工最外形形状56の抽出結果を基準にして、アンカットレンズ71の外形サイズを決定する。
したがって、本実施形態の外形サイズ決定処理(S30)によれば、加工代を最低限確保した外形サイズのアンカットレンズ71の選定が可能となるので、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等の経験則に基づいて加工最外形形状を抽出する場合とは異なり、最終形状に見合った最薄レンズの作成が容易であり、正確なレンズ最終形状を確実に再現でき、さらにはPDの調整が必要になることもない。つまり、本実施形態の外形サイズ決定処理(S30)によれば、加工最外形形状56の抽出の高精度化等を通じて、眼鏡レンズの薄型化等を容易に実現することが可能になる。
【0121】
しかも、本実施形態の外形サイズ決定処理(S30)によれば、加工代を最低限確保した外形サイズのアンカットレンズ71の選定が可能となるので、その後にレンズ周縁加工装置1で行うステップである縁摺り加工処理(S60)において、アンカットレンズ71に対する縁摺り加工の加工量および加工時間を必要最小限に抑えることが実現可能となる。このことは、レンズ周縁加工装置1での縁摺り加工処理(S60)の迅速化やコスト削減等を実現可能にする。
【0122】
また、本実施形態で説明したレンズ加工システムでは、レンズ周縁加工装置1での縁摺り加工処理(S60)を、眼鏡レンズの被加工部位を複数の形状要素部分別に分割するステップである形状分割処理(S20)と、複数の形状要素部分の各々について当該形状要素部分の加工に用いる加工ツールを割り当てるツール割当ステップ(S430〜S470b)と、複数の形状要素部分の各々に割り当てた各加工ツールの使用順を決定する加工順決定ステップ(S480)と、決定した各加工ツールの使用順に従いつつ当該各加工ツールを用いた加工をレンズ周縁加工装置1に行わせるステップである加工指示処理(S50)と、を経て行う。つまり、本実施形態で説明したレンズ加工システムでは、レンズ周縁加工装置1に対する加工指示処理(S50)に先立って行うべき事前処理として、形状分割処理(S20)、並びに、ツール割当ステップ(S430〜S470b)および加工順決定ステップ(S480)を含む加工ツール割り当て処理(S40)を行う。
これらのうちの形状分割処理(S20)では、複数の形状要素部分として、投影形状54、加工最外形形状56、貫通加工形状部分57a〜57d、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59を抽出する。さらに、貫通加工形状部分57a〜57d、凸面側非貫通加工形状部分58および凹面側非貫通加工形状部分59については、互いに離れた位置に存在するものがあれば、それぞれを個別に抽出する。そして、その後に行う加工ツール割り当て処理(S40)では、抽出した各形状要素部分に対して、その加工に最も適切と考えられる加工ツール11a〜11dを個別に割り当てる。ただし、同一種類の加工ツール11a〜11dで加工可能な形状要素部分に対しては、互いに離れた位置に存在していても、同一種類の加工ツール11a〜11dを割り当てる。
つまり、本実施形態のレンズ加工システムでは、形状分割処理(S20)および加工ツール割り当て処理(S40)を経る事前処理において、例えば「凸面側ザグリ加工部位」や「凹面側ザグリ加工部位」等についても各々が別個の形状要素部分として分割した上で、各形状要素部分に最適と考えられる加工ツール11a〜11dを割り当てているのである。したがって、レンズ周縁加工装置1のオペレータ等が経験則に基づいて被加工部位と選択可能な加工ツールとのマッチングを判断しながらツール割り当てを行う場合とは異なり、事前処理の処理結果が必ず一定の基準に則したものとなるので、確実にツール割り当ての最適化が図れるようになる。しかも、オペレータ等が経験則に基づく場合とは異なり、事前処理の処理結果に対して修正が必要になるといったことが生じるおそれがなく、その精度が十分なものとなる。さらには、その手順に試行錯誤の要素等が加わることがないので、非常に効率的に行うことも可能性となる。
このように、本実施形態のレンズ加工システムでは、事前処理において確実にツール割り当ての最適化が図れるので、その事前処理の結果に基づいて行う縁摺り加工処理(S60)について、複数種類の加工ツールを選択的に用いて行う場合であっても、効率的に高精度で行うことが可能となる。
【0123】
<5.変形例等>
以上に本発明の実施形態を説明したが、上述した開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものに過ぎず、本発明の技術的範囲が上述の例示的な実施形態に限定されるものではない。
以下に、上述した実施形態以外の変形例について説明する。
【0124】
上述した実施形態では、形状分割処理(S20)において、凸面側外形形状52と凹面側外形形状53とが互いに相違する三次元形状の眼鏡レンズについて、凸面レイヤーデータおよび凹面レイヤーデータを取得し、これらの合成結果から投影レイヤーデータを取得する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、凸面側外形形状52と凹面側外形形状53とが同一である眼鏡レンズについても適用可能である。その場合に、データ処理装置3は、眼鏡レンズの三次元CADデータから投影形状を取得し、その投影形状に対する外接四角形を利用して加工最外形形状を抽出した後に、貫通加工形状部分の抽出を行うことになる。
【0125】
また、上述した実施形態では、外形サイズ決定処理(S30)において、アンカットレンズの外形サイズとして、その径サイズを決定する場合を例に挙げている。これは、アンカットレンズが一般に平面視円形に形成されているからである。したがって、平面視円形以外の形状のアンカットレンズがあれば、当該形状に応じた外形サイズを決定することが考えられる。つまり、アンカットレンズの外形サイズは、その径サイズに限定されるものではない。
【0126】
また、上述した実施形態では、加工ツール割り当て処理(S40)で用いるツール選択基準が、レンズ周縁加工装置1における加工ツール11の属性に基づく場合を例に挙げている。具体的には、ツール選択基準として、加工ツール11の属性の一つであるツール径に着目し、ツール径の大きいものを優先的に選択するように設定されている。ただし、ツール選択基準は、これに限定されるものではなく、以下に述べるようなものであってもよい。
ツール選択基準の他の例としては、加工すべき形状要素部分の加工体積の計算結果を用いるものが挙げられる。例えば、加工ツール11が小径のエンドミルツールである場合、その加工ツール11を用いて円形状からラフな外形形状へ荒加工を行う際には、以下の二通りの手法のいずれかを採ることが考えられる。その一つは、周縁側から内側へ徐々に加工し、切り屑の大きさが略一定になるようにする手法である。他の一つは、小径ツールで型取りのようなシェープを行うように、そのツールサイズ分だけ大きな軌跡で加工する手法である、この手法の場合は、切り屑に大きなレンズ片が含まれる。このような二通りの手法のいずれかを選択するときには、加工により切り取る体積を加味して選択を行うと、加工時間の効率化、ツールの効率的選択によるツール摩耗の抑制化を図ることができる。具体的には、加工体積が大であれば小径ツールで型取りのようなシェープを行い、加工体積が小であれば周縁側から大径ツールで加工したほうが、加工効率が良いことがある。このように、同じシェープの外形形状でも、シェープがプラスレンズの場合とマイナスレンズの場合とではツール負荷が異なるため、加工面積や加工体積等を考慮してスール選択基準を設定することは、効率的な加工をするための選択基準として非常に有効である。
また、加工ツールの属性と加工すべき形状要素部分の加工体積計算結果とを組み合わせて用いることも考えられる。
つまり、加工ツール割り当て処理(S40)で用いるツール選択基準は、加工ツールの属性(ツール径、ツール回転速度、ツール移動速度等)または加工すべき形状要素部分の加工体積計算結果の少なくとも一つに基づいて設定されているものであればよい。
【0127】
また、上述した実施形態では、加工ツール割り当て処理(S40)の各レイヤー加工順決定処理(S480)で用いるツール使用の優先順が、レンズ周縁加工装置1における加工ツール11の属性に基づく場合を例に挙げている。具体的には、ツール使用の優先順として、加工ツール11の属性の一つであるツール径に着目し、ツール径の大きいものを優先的に使用するように設定されている。ただし、ツール使用の優先順は、これに限定されるものではなく、以下に述べるようなものであってもよい。
ツール使用優先順の他の例としては、加工すべき形状要素部分の加工体積の計算結果を用いるものが挙げられる。例えば、形状要素部分の加工体積を計算すると、その計算結果を用いつつ、その形状要素部分の加工に要する加工時間を計算することができる。そして、加工時間を計算すると、その形状要素部分の加工終了を予測することができる。この終了予測により、次工程の準備(現工程の次に使うツール準備等)のための工程間の待ち時間を最短にし得ることが考えられる。つまり、加工体積の計算結果に基づく加工終了予測により、工程間待ち時間が最短となるようなツール使用順を採用することで、複数種類の加工ツール11による縁摺り加工のトータルでの加工時間を必要最小限に抑えることが考えられる。
ツール使用優先順のさらに他の例としては、レンズ周縁加工装置1のツール装着構造を用いるものが挙げられる。例えば、レンズ周縁加工装置1がツールチェンジャー等を持つ構成の場合、工程毎で用いる加工ツール11の装置内での配置状態によっては、ツール選択のための移動効率が変化する。そこで、ツール選択のための移動効率が最適となるように、装置内での各加工ツール11の配置順を考慮したツール使用順を採用することも考えられる。
また、ここで挙げた各例を組み合わせて用いることも考えられる。
つまり、加工ツール割り当て処理(S40)の各レイヤー加工順決定処理(S480)で用いるツール使用の優先順は、加工ツールの属性(ツール径、ツール回転速度、ツール移動速度等)、加工すべき形状要素部分の加工時間計算結果またはレンズ周縁加工装置1のツール装着構造(ツール配置順等)の少なくとも一つに基づいて設定されているものであればよい。