特許第6063330号(P6063330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063330
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】巻芯、及び捲回素子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/22 20060101AFI20170106BHJP
   B65H 75/28 20060101ALI20170106BHJP
   B65H 18/04 20060101ALI20170106BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20170106BHJP
   B65H 19/30 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   B65H75/22
   B65H75/28
   B65H18/04
   H01M10/04 W
   !B65H19/30
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-84808(P2013-84808)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-133652(P2014-133652A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-273463(P2012-273463)
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000140845
【氏名又は名称】株式会社皆藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 剛
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−194144(JP,A)
【文献】 特開2003−124083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 〜 75/32
B65H 18/00 〜 18/28
B65H 19/00 〜 19/30
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲回装置の回転治具に取り付けて回転中心軸のまわりに回転することにより、帯状の正電極、帯状の第一セパレーター、帯状の負電極、及び帯状の第二セパレーターを捲回して捲回素子を製造する巻芯であり、
前記回転治具に固定される固定部材と、
少なくとも前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持又は解除するクランプと、
前記クランプを挿入する中空部を有し、前記正電極、前記第一セパレーター、前記負電極、及び前記第二セパレーターを捲回する外周面を有する巻芯体と、
を別体で備え、
前記巻芯体は、互いに対向する第一捲回部材及び第二捲回部材から構成され、該第一捲回部材は前記固定部材に固定され、該第二捲回部材は前記回転中心軸の断面方向に摺動して該第一捲回部材と離隔接近可能であり、
前記クランプが前記中空部に挿入されて前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持した状態で、前記第一捲回部材と前記第二捲回部材とを接近させて、前記巻芯体の前記外周面を前記捲回素子の内周面から離隔させ、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出すことが可能である巻芯。
【請求項2】
前記巻芯体を前記捲回素子の内周面から離隔させた状態で、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出した後に、前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除した状態で、該クランプを該捲回素子内から抜き出す請求項1に記載する巻芯。
【請求項3】
請求項1に記載する巻芯を使用することにより、帯状の正電極、帯状の第一セパレーター、帯状の負電極、及び帯状の第二セパレーターを捲回して捲回素子を製造する捲回素子製造方法であり、
前記クランプにより、少なくとも前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持するステップと、
前記巻芯を回転中心軸のまわりに回転させることにより、正電極、第一セパレーター、負電極、及び第二セパレーターを捲回し、捲回素子を形成するステップと、
前記第一捲回部材と前記第二捲回部材とを接近させて、前記巻芯体の前記外周面を前記捲回素子の内周面から離隔させるステップと、
前記巻芯体を前記捲回素子内から抜き出すステップと、
前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除するステップと、
前記クランプを前記捲回素子内から抜き出すステップと、
を含む捲回素子製造方法。
【請求項4】
前記巻芯体を前記捲回素子の内周面から離隔させた状態で、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出した後に、前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除した状態で、該クランプを該捲回素子内から抜き出す請求項3に記載する捲回素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池又はコンデンサを形成するための捲回素子を製造するための巻芯、及びその巻芯を使用した捲回素子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、帯状の正電極、負電極及びセパレーターを巻芯に巻き取り、巻き取った捲回素子を電解液に浸漬し、セパレーターと正電極及び負電極との間に電解液を浸み込ませて電池を製造することが行われている。図11において、符号120は、原反112,114、116及び118から送られた正電極100、第一セパレーター102、負電極104及び第二セパレーター106を巻芯108へ捲回していく捲回素子製造装置である。この捲回素子製造装置120は、図12に示すように、正電極100等を捲回して捲回素子109を製造することができる。なお、捲回素子製造装置に関して、種々発明され、本願出願人によって出願されている(特許文献1〜8参照。)。
【0003】
巻芯108は、図13(a)に示すように、図示しない回転治具に固定される固定部111と、帯状の正電極100、セパレーター102、負電極104及びセパレーター106を捲回する外周面120を有する巻芯体部122と、セパレーター102及び106の先端付近を挿入する隙間113と、を備えて構成されている。この巻芯108は、固定治具に固定され、図13(b)に示すように、隙間113にセパレーター102及び106の先端付近が挿入され、セパレーター102に正電極100が積層され、セパレーター102及び106間に負電極104が積層される。その後、巻芯108は、複数回手動で回転させさられ、セパレーター102等が捲回され、これにより、正電極100及びセパレーター102等に摩擦力が付与され、その後回転治具の回転駆動によって捲回素子109が製造される。
【0004】
この巻芯108は、正電極100、セパレーター102、負電極104及びセパレーター106を捲回して捲回素子109を製造した後は、捲回素子109から抜き出される。しかし、巻芯108を捲回素子109から引き出す時に、巻芯体部122の外周面120が捲回素子109の内周面115に接触しているため、外周面120と内周面115との摩擦力により、図13(c)に示すように、巻芯108が捲回素子109の中心側を筍状に引き出して変形させることがあった。このため、捲回素子109の形状を修正するための作業が必要となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−127860号公報
【特許文献2】特開2009−043540号公報
【特許文献3】特開2009−093901号公報
【特許文献4】特開2009−256022号公報
【特許文献5】特開2009−272245号公報
【特許文献6】特開2011−161557号公報
【特許文献7】特開2011−184132号公報
【特許文献8】国際公開第2009/019781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、捲回素子を製造した後に、巻芯を捲回素子から引き抜く時に、巻芯体部の外周面が捲回素子の内周面に接触して巻芯が捲回素子を筍状に変形させることのない巻芯及び捲回素子製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻芯は、捲回装置の回転治具に取り付けて回転中心軸のまわりに回転することにより、帯状の正電極、帯状の第一セパレーター、帯状の負電極、及び帯状の第二セパレーターを捲回して捲回素子を製造する巻芯であり、
少なくとも前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持又は解除するクランプと、
前記クランプを挿入する中空部を有し、前記正電極、前記第一セパレーター、前記負電極、及び前記第二セパレーターを捲回する外周面を有する巻芯体と、
を別体で備え、
前記巻芯体は、互いに対向する第一捲回部材及び第二捲回部材から構成され、該第一捲回部材は前記固定部材に固定され、該第二捲回部材は前記回転中心軸の断面方向に摺動して該第一捲回部材と離隔接近可能であり、
前記クランプが前記中空部に挿入されて前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持した状態で、前記第一捲回部材と前記第二捲回部材とを接近させて、前記巻芯体の前記外周面を前記捲回素子の内周面から離隔させ、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出すことが可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の巻芯は、前記巻芯において、前記巻芯体を前記捲回素子の内周面から離隔させた状態で、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出した後に、前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除した状態で、該クランプを該捲回素子内から抜き出すことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の捲回素子製造方法は、前記巻芯を使用することにより、帯状の正電極、帯状の第一セパレーター、帯状の負電極、及び帯状の第二セパレーターを捲回して捲回素子を製造する捲回素子製造方法であり、
前記クランプにより、少なくとも前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近を挟持するステップと、
前記巻芯を回転中心軸のまわりに回転させることにより、正電極、第一セパレーター、負電極、及び第二セパレーターを捲回し、捲回素子を形成するステップと、
前記第一捲回部材と前記第二捲回部材とを接近させて、前記巻芯体の前記外周面を前記捲回素子の内周面から離隔させるステップと、
前記巻芯体を前記捲回素子内から抜き出すステップと、
前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除するステップと、
前記クランプを前記捲回素子内から抜き出すステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の捲回素子製造方法は、前記捲回素子製造方法において、前記巻芯体を前記捲回素子の内周面から離隔させた状態で、該巻芯体を該捲回素子内から抜き出した後に、前記クランプによる前記第一セパレーター及び前記第二セパレーターの先端付近の挟持を解除した状態で、該クランプを該捲回素子内から抜き出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の巻芯及び捲回素子製造方法によれば、第一捲回部材と前記第二捲回部材とを接近させて、捲回素子の内周面から離隔させた状態で、巻芯体を捲回素子内から抜き出すことができる。このため、巻芯体を捲回素子から抜き出す時、巻芯体の外周面が捲回素子の内周面に接触しないため、巻芯体が捲回素子の中心側を筍状に引き出して変形させることがなく、捲回素子の形状を修正するための作業が必要となることがない。しかも、クランプが第一セパレーター及び第二セパレーターの先端付近を挟持した状態で、巻芯体を捲回素子内から抜き出すことができる。ここで、捲回素子の内周面は、クランプにより挟持された第一セパレーターの先端付近に隣接する部分により構成される。このため、巻芯体を捲回素子から抜き出す時、巻芯体の外周面が捲回素子の内周面に仮に接触したとしても、捲回素子の内周面がずれることなく、捲回素子の中心側が筍状に引き出されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】同図(a)は本発明に係る巻芯を示す正面断面端面図であり、同図(b)は本発明に係る巻芯の使用状態を示す正面断面端面図である。
図2図1の巻芯の使用状態を示す正面断面端面図である。
図3図1の巻芯の使用状態を示す正面断面端面図である。
図4図1の巻芯の使用状態を示す正面断面端面図である。
図5】本発明の巻芯の実施例を示す側面断面図である。
図6図5の巻芯を示す正面図である。
図7図5の巻芯の一捲回部材及び第二捲回部材を示す側面図である。
図8図5の巻芯を取り付けた捲回装置を示す正面図である。
図9図5の巻芯の使用状態を示す正面図である。
図10図5の巻芯の使用状態を示す正面図である。
図11】従来の捲回素子製造装置を示す正面図である。
図12図11の捲回素子製造装置の使用状態を示す拡大正面図である。
図13図11の捲回素子製造装置に使用する従来の巻芯を示す図であり、同図(a)は側面図であり、同図(b)は使用状態を示す正面図であり、同図(c)は使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る巻芯及び捲回素子製造方法の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図4において、符号10は、本発明に係る巻芯である。
【0014】
本発明に係る巻芯10は、図2(b)に示すように、回転中心軸Cのまわりに回転することにより、帯状の正電極12、帯状の第一セパレーター14、帯状の負電極16、及び帯状の第二セパレーター18を捲回して捲回素子28を製造する巻芯である。巻芯10は、図1(a)に示すように、図示しない回転治具に固定される固定部材11と、第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近を挟持又は解除するクランプ26と、クランプ26を挿入する中空部24を有し、正電極12、第一セパレーター14、負電極16、及び第二セパレーター18を捲回する外周面20を有する巻芯体22と、を別体で備えている。巻芯体22は、互いに対向する第一捲回部材30(a)及び第二捲回部材30(b)から構成され、クランプ26が中空部24に挿入されて第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近を挟持した状態で、第一捲回部材30(a)と第二捲回部材30(b)とを接近させて、巻芯体22の外周面20を捲回素子28の内周面29から離隔させ、巻芯体22を捲回素子28内から抜き出すことが可能である。
【0015】
巻芯体22は、図1(a)に示すように、互いに対向する第一捲回部材30(a)及び第二捲回部材30(b)から構成され、第一捲回部材30(a)は図示しない固定部材に固定され、第二捲回部材30(b)は回転中心軸Cの断面方向に摺動して第一捲回部材30(a)と離隔接近可能であり,図3(a)に示すように、第一捲回部材30(a)及び第二捲回部材30(b)を溝33に沿って摺動させて互いに接近させることにより巻芯体22全体として捲回素子28内で縮めて、外周面20を捲回素子28の内周面29から離隔させることが可能である。第一捲回部材30(a)と第二捲回部材30(b)とは、別体に構成されている。
【0016】
クランプ26は、図1(a)に示すように、互いに対向する第一挟持部材32(a)及び第二挟持部材32(b)から構成され、図4(a)に示すように、第一挟持部材32(a)及び第二挟持部材32(b)を離隔させることにより、第一セパレーター14及び第二セパレーター18の挟持を解除することが可能である。第一挟持部材32(a)と第二挟持部材32(b)とは別体に構成されている。
【0017】
なお、本発明に係る捲回素子製造方法は、巻芯10を使用することにより、正電極12、第一セパレーター14、負電極16、及び第二セパレーター18を捲回して捲回素子28を製造する捲回素子製造方法であり、クランプ26により、少なくとも第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近を挟持するステップと、巻芯10を回転中心軸Cのまわりに回転させることにより、正電極12、第一セパレーター14、負電極16、及び第二セパレーター18を捲回し、捲回素子28を形成するステップと、第一捲回部材30(a)と第二捲回部材30(b)とを接近させて、巻芯体22の外周面20を捲回素子28の内周面29から離隔させるステップと、巻芯体22を捲回素子28内から抜き出すステップと、クランプ26による第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近の挟持を解除するステップと、クランプ26を捲回素子28内から抜き出すステップと、を含む捲回素子製造方法である。
【0018】
このような巻芯10及び捲回素子製造方法の作用及び効果を以下に説明する。
【0019】
例えば図13に示すような従来の捲回素子製造装置120に巻芯10が取り付けられた状態で、図1(b)に示すように、クランプ26によって、第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近が挟持される。その後、クランプ26が巻芯体22の中空部24に挿入される。
【0020】
次に、図2(a)に示すように、正電極12が第一セパレーター14に積層され、負電極16が第一セパレーター14及び第二セパレーター18の間に積層され、巻芯10が複数回手動で回転させられて正電極12及び第一セパレーター14等に摩擦力が付与され、その後回転治具の回転駆動によって、図2(b)に示すように、正電極12、第一セパレーター14、負電極16、及び第二セパレーター18が積層されながら捲回されていく。
【0021】
捲回が完了し捲回素子28が形成されると、クランプ26が中空部24から外に出され、図3(a)に示すように、第一捲回部材30(a)と第二捲回部材30(b)とを接近させて巻芯体22を縮めることにより、巻芯体22の外周面20を捲回素子28の内周面29から離隔させる。
【0022】
外周面20を内周面29から離隔させた状態で、巻芯体22を捲回素子28から抜き出すと、図3(b)に示す状態となる。巻芯体22を捲回素子28から抜き出す時、外周面20が内周面29から離隔しているため、巻芯体22が捲回素子28の中心側を筍状に引き出して変形させることがなく、捲回素子28の形状を修正するための作業が必要となることがない。さらに、クランプ26が第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近を挟持した状態で、巻芯体22を捲回素子28内から抜き出すことができる。このため、巻芯体22を捲回素子28から抜き出す時、巻芯体22の外周面20が捲回素子28の内周面29に仮に接触したとしても、捲回素子28の内周面29がずれることなく、捲回素子28の中心側が筍状に引き出されることがない。ここで、捲回素子28の内周面29は、クランプ26により挟持された第一セパレーター14の先端付近に隣接する部分により構成される。
【0023】
次に、図4(a)に示すように、第一挟持部材32(a)と第二挟持部材32(b)とを離隔させる。第一挟持部材32(a)と第二挟持部材32(b)とが離隔することにより、クランプ26による第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近の挟持が解除される。第一セパレーター14及び第二セパレーター18の先端付近の挟持が解除された状態で、クランプ26を捲回素子28から抜き出すことにより、捲回素子28は図4(b)に示す状態となる。
【0024】
次に、正電極12、負電極16を、カッターにより、捲回素子28を形成する部分から切り離し、捲回素子28を形成する部分は、捲回素子製造装置において粘着テープが貼り付けられて、捲回素子製造装置から次の工程へ搬送され、そのままの円柱形状で、又は角柱等の所定の形状に加工させられた後に、金属ケース又はラミネートパックに入れられることによって、電池が製造される。
【実施例】
【0025】
本発明の巻芯の実施例1の構成を、図5及び図6に符号210で示す。本発明に係る巻芯210は、図5及び図6に示すように、回転中心軸Cを有し、図8の捲回ユニット212の回転治具214に取り付けて回転中心軸Cのまわりに回転させることにより、帯状の正電極216、帯状の第一セパレーター218、帯状の負電極220、及び帯状の第二セパレーター222を捲回して捲回素子224を製造する巻芯である。図5図6は、構成を示すため、捲回素子224の記載を省略する。
【0026】
巻芯210は、図5及び図6に示すように、図5の回転治具214に固定される固定部材226と、回転中心軸Cと平行に延び、先端230(a)及び後端230(b)を有し、後端230(b)が固定部材226に固定され、回転中心軸Cと平行な第一の溝228を有する第一捲回部材230と、回転中心軸Cと平行に延び、先端234(a)及び後端234(b)を有し、回転中心軸Cと平行であり第一の溝228に対向する第二の溝232を有する第二捲回部材234と、回転中心軸Cと平行に延び、先端236(a)及び後端236(b)を有し、第二の溝232に挿入される第一挟持部材238と、回転中心軸Cと平行に延び、先端238(a)及び後端238(b)を有し、第一の溝228に挿入された第二挟持部材236と、第二捲回部材234を連結する連結摺動部材40と、を備えている。
【0027】
また、第一捲回部材230及び第二捲回部材234が、巻芯体を構成し、第一挟持部材238及び第二挟持部材236が、クランプを構成する。なお、図5は、第一挟持部材238及び第二挟持部材236を第一捲回部材230及び第二捲回部材234から抜き出した状態を示し、図6は、第一挟持部材238及び第二挟持部材236を第一捲回部材230及び第二捲回部材234に挿入した状態を示す。
【0028】
固定部材226は、図6及び図7に示すように、中空部227を有し、中空部227内には回転中心軸Cと垂直なZ軸方向(第一捲回部材230と第二捲回部材234との離隔接近方向)の摺動ピン242を有し、連結摺動部材240は、摺動ピン242が挿入された係合孔244を有し、連結摺動部材240は、固定部材226の摺動ピン242に対して、Z軸方向に摺動可能である。連結摺動部材240は、圧縮バネ246によってD1の向き(一の向き、Z軸負の向き)に摺動させる付勢力が付与されている。
【0029】
第一捲回部材230は、図6及び図7に示すように、後端230(b)に連続する連結部248を有し、連結部248が固定部材226の中空部227に固定されている。また、第一捲回部材230は、図6に示すように、半円形の断面を有し、半円の中心に第一の溝228を有し、第一の溝228には、第一挟持部材238が挿入される。
【0030】
第二捲回部材234は、図6及び図7に示すように、後端234(b)に連続する連結部250を有し、連結部250が連結摺動部材240に固定されている。また、第二捲回部材34は、図6に示すように、半円形の断面を有し、半円の中心に第二の溝232を有し、第二の溝232には、第二挟持部材236が挿入される。第一捲回部材230の先端230(a)及び第二捲回部材234の先端234(a)には、図5に示す回転支持具252に支持される突起254が設けられている。なお、回転支持具252は、図示しないフレームを介して正面パネル213に固定され、巻芯210を回転可能に支持する。
【0031】
連結摺動部材240は、図6及び図7に示すように、回転中心軸Cの方向に延びる係合ピン264をX軸の方向(回転中心軸Cの方向)に移動させて係合ピン264を係合する被係合部261を有している。被係合部261はテーパ部265を有し、巻芯210は、この係合ピン264の先鋭部267をテーパ部265に係合し、係合ピン264が被係合部261をZ軸正方向に移動させることにより、連結摺動部材240が固定部材226に対してZ軸正の向きに摺動し、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが離隔するように構成されている。
【0032】
これにより、連結摺動部材240を摺動ピン242に対してD1の向き(一の向き、Z軸負の向き)に摺動させることにより、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが接近し、連結摺動部材40を摺動ピン42に対してD1の向きと逆のD2の向き(一の向きと逆の向き、Z軸正の向き)きに摺動させることにより、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが離隔する。
【0033】
なお、図6及び図7においては、圧縮バネ246の付勢力によって連結摺動部材240を固定部材226に対してD1の向きに摺動させることにより、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが接近している。
【0034】
第一挟持部材238及び第二挟持部材236は、図5に示す回転支持具252に取り付けられている。第一挟持部材236のZ軸負の向き端部には、X軸方向に延びる溝258が設けられ、第二挟持部材238のZ軸正の向き端部に設けられX軸方向に延びる押さえ棒260とともに、第一セパレーター218及び第二セパレーター222の先端付近を強固に挟持して固定することができる。第一挟持部材238と第二挟持部材236とが離隔又は接近する離隔接近機構は、図示しないが、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが離隔又は接近する離隔接近機構と同様である。
【0035】
また、本発明に係る捲回ユニット212は、図5に示すように、巻芯210と、正面パネル213と、係合ピン264と、巻芯210を回転させる回転駆動機構266と、係合ピン264を回転中心軸Cの方向に移動させる係合ピン移動機構268と、巻芯210を回転中心軸Cの方向に移動させることにより、製造した捲回素子224から巻芯210を抜き出す抜出機構270を備えて構成される。捲回ユニット212は、捲回ユニット212以外は図11に示す捲回装置120と同様の構成である図8に示す捲回装置271に組み込まれて使用される。
【0036】
回転駆動機構266は、巻芯210を固定し巻芯210と共に回転する回転治具214と、回転治具214を回転駆動させるモーター272とを備えている。回転治具214は、巻芯210が有する継手263を固定する固定部274と、固定部274に連続し中空部を有する第一ロッド276とから構成されている。継手263は、固定部材226と一体的に構成されている。固定部274は継手263を挿入し螺子等の締結具により固定する。第一ロッド276の中空部は、第二ロッド278が第一ロッド276に対してX軸方向に摺動可能なように、第二ロッド278が挿入される。
【0037】
係合ピン移動機構268は、先端及び後端を有し、先端に係合ピン264の固定部269が固定され、第一ロッド276の中空部に挿入された第二ロッド278と、第二ロッド278の後端を支持するカムフォロワ280と、カムフォロワ280をX軸方向に移動させるシリンダ282とから構成されている。シリンダ282が作動することにより、係合ピン264は、第二ロッド278と共に、第一ロッド276に対してX軸方向に移動する。
【0038】
抜出機構270は、第一ロッド276を支持し、シリンダ282に固定された軸受284と、シリンダ282に固定されX軸方向に移動する移動部材286と、移動部材286をX軸方向に移動させるボール螺子288とから構成されている。ボール螺子288の回転により、移動部材286は、第一ロッド276及び巻芯210と共にX軸方向に移動する。なお、回転支持具252をX軸方向に移動させる移動機構は、抜出機構270と同様の機構である。
【0039】
このような巻芯210及び捲回ユニット212を図8に示す捲回装置271に組み込んで、正電極216、第一セパレーター218、負電極220、及び第二セパレーター222を捲回して捲回素子224を製造する作用及び効果について、以下に説明する。
【0040】
巻芯210を取り付けた捲回ユニット212は、図8に示すように、捲回装置271のターレット273に3個組み込まれている。図8は、位置S1において、正電極216、第一セパレーター218、負電極220、及び第二セパレーター222が捲回され、正電極216及び負電極220がカッター275及び277によって切断されて形成された捲回素子224が、ターレット273の回転によって位置S2まで送られた直後の状態を示している。図8の状態においては、図5に示すように、第一セパレーター218及び第二セパレーター222が、位置S1の巻芯210の第一挟持部材238と第二挟持部材236との隙間290のX軸正方向への延長部に位置している。
【0041】
次に、位置S1において、回転支持具252の移動機構が作動し、図9に示すように、回転支持具252、第一挟持部材238及び第二挟持部材236がX軸負方向に移動し、第一セパレーター218及び第二セパレーター222が、隙間290内に入る。次に、位置S1の捲回ユニット212の抜出機構270が有するボール螺子288が作動し、図10に示すように、移動部材286、回転治具214及び巻芯210がX軸正方向に移動する。次に、係合ピン移動機構268のシリンダ282が作動し、係合ピン264がX軸正方向へ移動させられ、係合ピン264が被係合部261を押圧し、第二捲回部材234が、圧縮バネ46の付勢力に抗して、D2の向きに摺動する。さらに、巻芯10がX軸正方向に移動することにより、第一挟持部材238及び第二挟持部材236が溝228及び232内に入り込み、図6に示す状態となる。
【0042】
次に、第一挟持部材238及び第二挟持部材236の離隔接近機構が作動し、第一挟持部材238と第二挟持部材236とが接近し、第一セパレーター218等が第一挟持部材238及び第二挟持部材236に挟持される。第一挟持部材238及び第二挟持部材236が第一セパレーター218及び第二セパレーター222を挟持した後に、カッター292が第一セパレーター218及び第二セパレーター222を切断する。
【0043】
次に、位置S1の捲回ユニット212において、回転駆動機構266のモーター272を作動させて巻芯210を回転させ、複数回程度回転させた後に、正電極216を第一セパレーター218に積層し、負電極220を第一セパレーター218及び第二セパレーター222の間に積層し、更に巻芯210を回転させることにより、正電極216、第一セパレーター218、負電極220、及び第二セパレーター222が巻芯に捲回されていく。巻芯210が所定回数回転させられると、カッター275及び277が正電極216及び負電極220を切断し、更に巻芯210を複数回程度回転させ、捲回素子224が製造される。
【0044】
位置S1の捲回ユニット212において捲回素子224が製造されると、図8に示すターレット273が時計まわりに120°回転し、位置S1の捲回ユニット212が位置S2へ送られ、製造された捲回素子224は巻芯210に捲回された状態で、位置S2へ送られ、再度、図8に示す状態となる。次に、位置S2の巻芯210とは別個のS1の巻芯210の第一挟持部材236及び第二挟持部材238が、第一セパレーター218及び第二セパレーター222を挟持して、カッター292が第一セパレーター218及び第二セパレーター222を切断する。第一セパレーター218及び第二セパレーター222が切断された捲回素子224を支持する位置S2において、巻芯210が更に複数回程度回転して第一セパレーター218及び第二セパレーター222を完全に捲回し、テープ294が捲回素子224の表面に貼着された後、ターレット273が時計まわりに更に120°回転し、捲回素子224は位置S3へ送られる。
【0045】
次に、位置S3において、係合ピン移動機構268のシリンダ282が作動し、係合ピン264がX軸負方向へ移動させられ、係合ピン264が被係合部261から離隔し、第二捲回部材234が、圧縮バネ246の付勢力によって、D1の向きに摺動する。第二捲回部材234が摺動ピン242に対してD1の向きに摺動することによって、第一捲回部材230と第二捲回部材234とが接近し、第一捲回部材230及び第二捲回部材234と捲回素子224の内周面との間に隙間が生じる。
【0046】
次に、位置S1の捲回ユニット212の抜出機構270が有するボール螺子288が作動し、移動部材286、回転治具214及び巻芯210がX軸負方向に移動し、第一捲回部材230及び第二捲回部材234は捲回素子224から抜出され、図9において第一挟持部材238及び第二挟持部材236が捲回素子224を支持する状態となる。この時、第一セパレーター218等が第一挟持部材238及び第二挟持部材236に挟持されている。このため、第一捲回部材230及び第二捲回部材234を捲回素子224から抜き出す時、第一捲回部材230及び第二捲回部材234の外周面が捲回素子224の内周面に仮に接触したとしても、捲回素子224の内周面がずれることなく、捲回素子224の中心側が筍状に引き出されることがない。
【0047】
次に、位置S3において、把持器具298が捲回素子224を把持して捲回素子224を僅かに持ち上げる。次に、第一挟持部材238及び第二挟持部材236の離隔接近機構が作動し、第一挟持部材238と第二挟持部材236とが互いに離隔し、第一挟持部材238及び第二挟持部材236が第一セパレーター218等から離隔する。次に、回転支持具252の移動機構が作動し、回転支持具252、第一挟持部材238及び第二挟持部材236が、X軸正方向に移動し、第一挟持部材238及び第二挟持部材236が捲回素子224から抜出される。
【0048】
第一挟持部材238及び第二挟持部材236が抜出された捲回素子224は、次の工程へ搬送され、そのままの形状で、又は角柱等の所定の形状に加工させられた後に、金属ケース又はラミネートパックに入れられることによって、電池が製造される。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は図示したものには限定されない。例えば、本発明によって製造する捲回素子は、断面が円形状のものに限定されず、断面が楕円形状、扁平形状、矩形形状、その他の多角形形状のものであってもよい。また、巻芯体を構成する捲回部材は、2個に限定されず、3個以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、巻芯体を捲回素子から抜き出す時、巻芯体の外周面が捲回素子の内周面から離隔するため、巻芯体が捲回素子を筍状に変形させることがなく、捲回素子の形状を修正するための作業が必要となることがない。このため、巻芯及び捲回素子製造方法として広く利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10、210:巻芯
11、226:固定部材
12、216:正電極
14、218:第一セパレーター
16、220:負電極
18、222:第二セパレーター
20:外周面
22:巻芯体
24:中空部
26:クランプ
28、224:捲回素子
29:内周面
30(a)、230:第一捲回部材
30(b)、234:第二捲回部材
32(a)、238:第一挟持部材
32(b)、236:第二挟持部材
248、250:連結部
265:テーパ部
267:先鋭部
274:固定部
C:回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13