(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態のドラム式洗濯乾燥機について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機は、通常の洗濯コースと、この洗濯コースの循環流量よりも多い後記の循環流量で洗濯及びすすぎを行う、特に白ものや薄い柄ものの衣類等の洗濯に適した高循環流量コースと、をユーザの選択により実行可能なように構成されている。
【0011】
まず、主に
図1及び
図2を参照しながらドラム式洗濯乾燥機の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態のドラム式洗濯乾燥機を示す外観斜視図である。
図2は、
図1のドラム式洗濯乾燥機の筐体の側板を外してその内部構造を概略的に示す側面図である。以下の説明における前後上下左右の方向は、
図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
【0012】
符号1は、外郭を構成する筐体である。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b、前面カバー1c、背面カバー1d、上面カバー1e、下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材36、前補強材37、後補強材(図示せず)で結合しており、ベース1hを含めて箱状の筐体1を形成している。
【0013】
符号9は、前面カバー1cの略中央に設けた洗濯物を出し入れするための投入口を塞ぐドアで、前補強材37に設けたヒンジ9cで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れて開き、ドア9を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材37は、後記する外槽2の開口部と同心に、洗濯物を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0014】
符号6は、筐体1の上部中央に設けた操作パネルで、電源スイッチ39と、操作ボタン12,13と、表示器14と、を備える。操作パネル6は、筐体1の下部に設けた制御装置38と電気的に接続している。
【0015】
符号19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器であり、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7の装着が可能となっている。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を
図1中の2点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材36に固定されている。また、洗剤容器19の左側面のやや後方に出水口19aを有している。従って、洗剤容器19の底面は出水口19aの位置が最も低くなるようなすり鉢状に形成されている。
【0016】
洗剤容器19の後側には、給水電磁弁16、風呂水吸水ポンプ17、水位センサ34等の給水関連部品が設けられている。洗剤容器19の上部開口には、給水ユニット15を備える。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a、風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けられている。
【0017】
符号3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽(内槽)であり、その外周壁及び底壁に通水及び通風のための多数の貫通孔(図示省略)を有し、前側端面には、洗濯物を出し入れするための開口部3aが設けられている。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ(図示省略)を備えている。また、洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平又は開口部側が高くなるように傾斜している。
【0018】
符号2は、円筒状の外槽であり、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にはモータ4が取り付けられる。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には、外槽2内への貯水を可能にする外槽カバー2dが設けられている。外槽2は、下側をベース1hに固定されたダンパ5で防振支持されている。符号10はゴム製のベローズであり、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。
【0019】
外槽2の側面後部には、外槽2内へ水や洗剤類を供給する給水口2aが設けられている。給水口2aと洗剤容器19の出水口19aとは、ゴム製の蛇腹ホース20で接続されている。
【0020】
外槽2の底側内周面には、凹状の窪み部2fが外槽2の軸方向に延在するように設けられている。この窪み部2fの底面は、前側から後側に下がる傾斜面になっており、窪み部2fの後側には排水口21が設けられている。排水口21には継手21aを介して蛇腹ホース22が接続されている。窪み部2fの前側には底部循環水の流入口18が設けられている。
符号26は、排水ホースであり、後記する循環ポンプ24の出水ポート23b(
図4(a)参照)にその一端が接続され、その他端側は機外に延出している。符号25は、排水ホース26の機内での延在途中に設けられた排水弁である。
【0021】
図3(a)は、
図1のIII−III断面図であり、外槽の底部に形成される窪み部の説明図、
図3(b)は、従来のドラム式洗濯乾燥機における外槽の底部に形成される窪み部の説明図である。
【0022】
図3(a)に示すように、窪み部2fの上部には、窪み部2fの幅の略半分を覆うように外槽2の外周壁の内周面から連続する隔壁Wが形成されている。隔壁Wは洗濯兼脱水槽3の脱水時の回転方向Rに対して対抗する方向に洗濯兼脱水槽3の外周面に沿うように延出している。排水口21及び流入口18は、窪み部2fの幅方向の中心から洗濯兼脱水槽3の回転方向Rにずれた位置に形成されている。これにより排水口21と流入口18の上部には隔壁Wが配置されることとなる。
【0023】
窪み部2fは、脱水時に洗濯兼脱水槽3の回転による遠心力で、洗濯兼脱水槽3の貫通孔(図示省略)から外槽2の内周面側に向かって水が出ていく際に、洗濯兼脱水槽3の回転方向Rと同一方向に流れる水を受け止め、排水口21へ導く。隔壁Wは、窪み部2fへ入った水が再び外槽2内に戻らないように堰き止める作用効果を発揮する。
【0024】
図3(b)に示す従来のドラム式洗濯乾燥機の窪み部2fの容積が1〜1.5L程度であるのに対して、
図3(a)に示す本実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機Sの窪み部2fの容積は、2.5L以上となるように設定されている。
つまり、
図3(a)に示す窪み部2fと、
図3(b)に示す窪み部2fとの対比から明らかなように、本実施形態での窪み部2fは、外槽2の周方向に幅広に形成されている。
【0025】
これにより、ドラム式洗濯乾燥機Sは、従来のドラム式洗濯乾燥機よりも外槽2における貯水量が増大する。後記する循環流量の増大と合わせてこの窪み部2fの拡大によっても洗濯物の洗浄効率は、従来よりも一段と向上する。
なお、
図3(b)中、符号2は外槽、符号Wは隔壁、符号3は洗濯兼脱水槽、符号Rは洗濯兼脱水槽3の脱水時の回転方向、符号21は排水口、符号18は流入口である。
【0026】
次に参照する
図4(a)は、
図1のドラム式洗濯乾燥機における外槽の底部から循環ポンプに向かう循環流路を示す平面図、
図4(b)は、従来のドラム式洗濯乾燥機における外槽の底部から循環ポンプに向かう循環流路を示す平面図である。
【0027】
図4(a)に示すように、本実施形態での排水口21の継手21aは、蛇腹ホース22との接続部が排水口21から左側に向かって突出するように形成されている。そして、蛇腹ホース22の一端が継手21aに接続され、蛇腹ホース22の他端が循環ポンプ24の入水ポート23aに接続される。
【0028】
本実施形態での蛇腹ホース22は、特許請求の範囲にいう「循環流路」の一部を構成しており、蛇腹ホース22の内径は、35mm以上、望ましくは37mm〜50mm程度に設定される。ちなみに、この蛇腹ホース22の内径は、蛇腹の山径(蛇腹の狭小部の内径)で規定される。
【0029】
また、蛇腹ホース22の長さは、400mm以下、望ましくは150mm〜300mm程度に設定される。ちなみに、蛇腹ホース22の長さは、継手21aの出口から循環ポンプ24の入水ポート23aの入口までの間で延びる蛇腹ホース22の長さで規定される。
【0030】
ちなみに従来のドラム式洗濯乾燥機での継手21aは、
図4(b)に示すように、後側に向かって突出するように形成されている。そして、継手21aと入水ポート23aとの間で延在する従来の蛇腹ホース22aの長さは、460mm程度であり、この従来の蛇腹ホース22aの内径は、30mm程度である。
【0031】
図4(a)及び(b)中、符号23bは、循環ポンプ24の出水ポートであり、符号44は、外槽カバー2dの後記する循環流路27(
図6(a)参照)に向けて水を吐出する吐出ポートであり、符号45は、循環ポンプ24から外槽2(窪み部2f)内に水を送り込む吐出ポートである。
【0032】
再び
図2に戻って、外槽2の後部端面の最下部にはエアトラップ2eが設けられており、チューブ35で水位センサ34と接続し、外槽2内の水位を検出する。
ちなみに、従来のドラム式洗濯乾燥機では、蛇腹ホース22a(
図4(b)参照)の内径が本実施形態での蛇腹ホース22(
図4(a)参照)の内径よりも狭小であるため、循環流量を増大するとエアトラップ2eの圧力が低下して外槽2内の水位をより正確に検出できない問題がある。
【0033】
外槽2とベース1hとの間には、循環ポンプ24、フィルタケース23、排水弁25が設けられている。フィルタケース23は、前側に開口部を有する円筒状で、内部に着脱可能なフィルタ(図示省略)が装着されており、洗濯水中の異物や糸くずを捕集する。フィルタケース23は、下部前面カバー1fに設けた扉1gを開け、取手23dを回すことでフィルタ(図示省略)を容易に着脱できるようになっている。このフィルタケース23は、前側が高くなるように傾斜している。
循環ポンプ24を中心とする洗濯水の循環系に関しては後に詳しく説明する。
【0034】
符号29は乾燥ダクトであり、筐体1の背面内側に配置されている。この乾燥ダクト29は、外槽2の後部に設けた吸気口にゴム製の蛇腹ホース29aで接続されている。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)が内蔵されている。
【0035】
ちなみに、乾燥運転時には、図示しないヒータ、送風ファン等により洗濯兼脱水槽3内に温風が吹き込まれ、洗濯物から水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、乾燥ダクト29に吸い込まれ、前記の水冷除湿機構で冷却除湿されて低温空気となり、図示しないヒータで加熱されてから洗濯兼脱水槽3内に吹き込まれる。
【0036】
次に参照する
図5は、
図1のドラム式洗濯乾燥機の循環機構を構成する循環ポンプ及び循環流路を示す斜視図である。
本実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機Sの循環機構は、蛇腹ホース22、循環ポンプ24、蛇腹ホース41、及び循環流路27で主に構成されている。
図5に示すように、循環ポンプ24は、フィルタケース23と一体に形成されるケーシング42と、循環ポンプモータ47とを備えて構成されている。ケーシング42には、前記したように、吐出ポート44,45、入水ポート23a(
図4(a)参照)、及び出水ポート23b(
図4(a)参照)が形成されている。
【0037】
吐出ポート44は、蛇腹ホース41を介して外槽カバー2dの内側周壁に設けられた後記する循環流路27(
図6(b)参照)に繋がっている。
なお、この蛇腹ホース41及び循環流路27は、前記の蛇腹ホース22(
図4(a)参照)と共に、特許請求の範囲にいう「外槽の底部から外槽の上部へ至る循環流路」を構成している。
循環流路27は、外槽カバー2dの上方内側に設けられた後記ノズル27a(
図6(a)参照)に接続されている。
【0038】
吐出ポート45は、蛇腹ホース40を介して継手18aに接続されている。この継手18aは、外槽2の底部の窪み部2f(
図3(a)参照)に臨むように形成された流入口18に設けられている。
【0039】
排水弁25(
図2参照)を閉じた状態で循環ポンプ24の循環ポンプモータ47が正回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21(
図3(a)参照)から蛇腹ホース22を通り、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)で異物が除去される。その後、洗濯水は、循環ポンプ24に入り、吐出ポート44から吐出され、循環流路27に送り込まれ、後記するノズル27a(
図6(a)参照)から洗濯兼脱水槽3(
図2参照)内に散水される。
【0040】
循環ポンプ24の循環ポンプモータ47が逆回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21(
図3(a)参照)から蛇腹ホース22を通り、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)で異物が除去される。その後、洗濯水は、循環ポンプ24に入り、吐出ポート45から吐出され、蛇腹ホース40及び継手18aを介して外槽2内に戻る。
【0041】
また、排水弁25(
図2参照)が開かれると、外槽2内の洗濯水は、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)を通り、排水ホース26から機外へ排水される。
ちなみに、本実施形態での循環ポンプモータ47は、後記する循環流量を確保するために、380rpm〜5000rpmの回転速度で回転可能となっている。この回転速度は、後記するように制御装置38(
図2参照)で制御されることとなる。
【0042】
次に参照する
図6(a)は、循環ポンプと外槽カバーに設けられる循環流路とを接続する蛇腹ホースを示す斜視図、
図6(b)は、外槽カバーに設けられる循環流路を示す斜視図である。
図7は、外槽カバーに設けられる循環流路に接続されるノズル付近の部分拡大斜視図である。
【0043】
図6(a)及び(b)に示すように、循環ポンプ24の吐出ポート44にその一端が接続される蛇腹ホース41は、その他端が循環流路27の入口ポート2gに接続される。
この入口ポート2gは、
図6(b)に示すように、外槽カバー2dの外周面に形成されている。
【0044】
本実施形態での循環流路27は、
図6(a)に示すように、樹脂製の外槽カバー2dの内側周壁に一体に成形された管状通路で構成されている。この循環流路27は、外槽カバー2dの開口に沿うように形成され、外槽カバー2dの上部に形成されるノズル27aに接続されている。この循環流路27の断面形状は、特に制限はなく、円形、楕円形、多角形等とすることができる。循環流路27の断面積は、円形のものに換算して直径25mm以上相当のものが望ましい。
【0045】
本実施形態の循環流路27によれば、外槽カバー2dの内側周壁に設けられているので、従来の、例えば外槽カバー2dの外側周壁に設けられる塩化ビニル管等で形成されるものと異なって、破損するおそれが一段と少なく、また万一破損したとしても外槽2の外側に洗濯水が漏れ出ることは無い。また、循環流路27は、外槽カバー2dと一体成形されているので従来のものよりも部品点数が少なくて済む。
【0046】
ノズル27aは、循環ポンプ(
図5参照)の吐出ポート44から吐出される洗濯水を外槽カバー2dの上部から洗濯兼脱水槽3(
図2参照)内に向けて噴射するものである。
このノズル27aは、
図7に示すように、その開口がスリット状に形成されており、洗濯水を薄膜状に広げて噴射できるようになっている。また、洗濯水の循環流量が従来よりも増加するので、このノズル27aのスリット幅(隙間幅)を従来よりも幅広にしても噴射の勢いが弱まることがない。よって、このスリット幅(隙間幅)を3mm以上とすることができ、糸くず等によるノズル27aの閉塞がより確実に防止される。
【0047】
また、外槽カバー2dには、循環流路27と連通する小孔Hがノズル27aに隣接するように形成されている。洗濯水が循環流路27を通じてノズル27aから噴射される際に、この小孔Hからはベローズ10の裏側に向けて洗濯水が噴射される。
この小孔Hから噴射される洗濯水は、ベローズ10の裏側を上部から下部に向かって流れる際に、ベローズ10の裏側に付着した糸くず等を洗い流すこととなる。
【0048】
次に、制御装置38(
図2参照)について説明する。
制御装置38は、マイクロコンピュータ、駆動回路等を備えるとともに、
図2に示す操作ボタン12,13のオンオフ信号や各種センサから出力信号の入力回路等も備える。また、マイクロコンピュータは、ユーザの操作や、洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータは、駆動回路を介して、モータ4、給水電磁弁16、排水弁25、送風ファン(図示省略)等に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、ユーザにドラム式洗濯乾燥機Sに関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示省略)等をも制御する。
【0049】
図8は、
図1のドラム式洗濯乾燥機の制御装置が実行する制御処理の一部を示すフローチャートである。
図9は、
図1のドラム式洗濯乾燥機の制御装置が実行する制御処理の他の一部を示すフローチャートである。
図8に示すように、ユーザの操作により電源スイッチ39(
図1参照)がオンになると、制御装置38は、ドラム式洗濯乾燥機Sの状態確認を行うと共にドラム式洗濯乾燥機Sの初期設定を行う(ステップS101)。
【0050】
ユーザの操作ボタン13の操作に応じて、制御装置38は洗濯コースを設定する(ステップS102)。つまり、通常の洗濯コース、又はこの洗濯コースの循環流量よりも大きい循環流量で洗濯及びすすぎを行う高循環流量コース(白もの洗濯コース)のいずれかが選ばれる。
【0051】
通常の洗濯コースの循環流量は、15〜20L/分の範囲内で予め設定される。また、高循環流量コースの循環流量は、50L/分以上に設定されている。この循環流量は、洗濯水の循環時に蛇腹ホース22内を流れる洗濯水の循環流量で規定することができる。
なお、循環流量の上限はないが、後記するように、60L/分を超えるとその増加分に見合う洗浄性能の向上が認められない場合があるので、循環流量は、50〜60L/分に設定することもできる。
【0052】
本実施形態における「通常の洗濯コース」の循環流量は、制御装置38が循環ポンプモータ47の回転速度を2300rpm〜2800rpmに設定することで前記範囲内(15〜20L/分)に維持される。
また、「高循環流量コース」の循環流量は、制御装置38が循環ポンプモータ47の回転速度を3800rpm〜5000rpmに設定することで前記範囲(50L/分以上)に維持される。
【0053】
なお、本実施形態での洗濯コースの設定(ステップS102)は、「通常の洗濯コース」と「高循環流量コース」とで、循環流量の設定範囲が前記のとおり異なることのみを想定しているので、以下では「高循環流量コース」が選択された場合についてのみ説明し、「通常の洗濯コース」が選択された場合の説明は省略する。
【0054】
次に、ステップS103では、制御装置38は、操作パネル6のスタートスイッチとしての操作ボタン12からの指示入力を監視して、スタートスイッチ信号の有無を確認する。確認されなかった場合(ステップS103の「無」の場合)は、ステップS103を繰り返す。そして、制御装置38は、スタートスイッチ信号を確認した場合(ステップS103の「有」の場合)には、ステップS104に進んで、洗剤量の検出処理を実行する。
【0055】
この洗剤量検出は、洗い水を給水する前の乾布状態において、洗濯兼脱水槽3を一方向に回転させたときに、規定の第1の回転速度から規定の第2の回転速度まで増速する間のモータ4の駆動電流積算値に基づいて洗濯物の質量を検出する。そして、検出した洗濯物の質量に基づいて使用する洗剤の適量(洗剤量)が算出されてこの洗剤量検出の工程(ステップS104)が実施される。洗剤量の算出は、洗濯物の質量と使用される洗剤量との関係を規定する対照テーブルを制御装置38が参照することによって行われる。
【0056】
制御装置38は、算出した洗剤量を操作パネル6の表示器14に表示する(ステップS105)。ユーザがこの表示の洗剤量を洗剤トレイ7へ投入し、予め定められた所定時間(例えば1分間)が経過すると、制御装置38は、給水電磁弁16を開いて洗剤トレイ7に散水する。これにより外槽2内に洗剤が供給される(ステップS106)。
【0057】
次に、制御装置38は、外槽2内の水位が予め設定した洗剤溶かし水位にまで達した際に給水電磁弁16を閉じて給水を停止する(ステップS107)。
そして、制御装置38は、循環ポンプモータ47を逆回転させることで、外槽2内の水を蛇腹ホース22及び蛇腹ホース40を介して循環させる。これにより外槽2の底部及び窪み部2fに溜まっている洗剤が溶かされることとなる(ステップS108)。
【0058】
ステップS109では、前洗いが実行される。この前洗いでは、洗濯兼脱水槽3を正逆交互回転(正逆合わせて毎分35回転から45回転)させながら、循環ポンプモータ47を正回転することによって、外槽2の洗濯水が蛇腹ホース22、蛇腹ホース41、循環流路27、及びノズル27aを介して洗濯兼脱水槽3内の洗濯物に降り掛けられる。
この際、制御装置38は、洗濯水の循環流量が50L/分以上に設定する。この循環流量は、前記と同じ理由で50〜60L/分に設定することもできる。
【0059】
この際、洗濯物は洗濯兼脱水槽3の内周壁面に設けられたリフターで持ち上げられ、落下する運動を繰り返す。そして、制御装置38は、洗濯兼脱水槽3の回転と循環ポンプ24の運転を間欠的に行い、洗濯兼脱水槽3と循環ポンプ24の停止期間中に水位センサ34の検出信号を参照しながら給水電磁弁16を開いて水位が設定水位を越えないように補給水する。この運転は複数回繰り返される。
【0060】
次に、制御装置38は、本洗い工程を実行する(ステップS110)。具体的には、制御装置38は、洗濯兼脱水槽3を洗濯兼脱水槽3を正逆交互回転(正逆合わせて毎分35回転から45回転)させながら循環ポンプ24を正回転させて前記と同様に外槽2の洗濯水を前記の循環流量でノズル27aから洗濯物に降り掛ける。最後に、制御装置38は、循環ポンプ24の運転を停止して洗濯水の循環を止め、洗濯兼脱水槽3を短周期で正逆交互回転させながら、洗濯物をほぐす運転を所定時間行って本洗い工程(ステップS110)を終了させる。
【0061】
図9に示すように、ステップS110(
図8参照)に続いて実行されるステップS111では、制御装置38は、第1回目のすすぎを実行する。
このすすぎでは、制御装置38は、まず排水弁25を開いて外槽2内の水を排水する。制御装置38は、排水が完了したことを水位センサ34で検知した後、洗濯兼脱水槽3を一方向(本実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機Sの前方(正面)から見て反時計方向)に回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。
【0062】
その後、制御装置38は、給水電磁弁16を開いて水道水を外槽2内に給水する。次に、本洗い工程(ステップS110)と同様に、洗濯兼脱水槽3を反転回転(毎分35回転から45回転)させながら、循環ポンプモータ47を正回転させて、外槽2の底部に溜まったすすぎ水をノズル27aから洗濯物に振り掛けるように循環し、すすぎを実行する。すすぎ水の循環流量は、本洗い工程(ステップS110)での循環流量と同様に50L/分以上に設定する。この循環流量は、前記と同じ理由で50〜60L/分に設定することもできる。
【0063】
次に、制御装置38は、洗濯兼脱水槽3の回転と循環ポンプ24の運転を停止した状態で外槽2の底部に溜まるすすぎ水の水位を水位センサ34で検出しながら水位が設定水位を越えないように補給水を行う。
【0064】
そして、洗濯兼脱水槽3を反転回転(毎分35回転から45回転)させながら、循環ポンプモータ47を正回転させて、外槽2の底部(窪み部2f)に溜まったすすぎ水をノズル27aから洗濯物に振り掛けるように循環し、すすぎを実行する。
【0065】
すすぎ水の循環流量は、50L/分以上に設定する。この循環流量は、前記と同じ理由で50〜60L/分に設定することもできる。その後、循環ポンプ24を停止してすすぎ水の循環を止めた状態で、制御装置38は、洗濯兼脱水槽3を短周期で正逆回転させ、ほぐし運転を行う。
【0066】
ステップS112では、外槽2内に柔軟仕上げ剤が投入される以外は、第1回目のすすぎ工程(ステップS111)と同様のすすぎ工程(第2回目のすすぎ工程)が行われる。
【0067】
ステップS113では、脱水処理が実行される。制御装置38は、排水弁25を開放としたままの状態で洗濯兼脱水槽3を一方向(本実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機Sの前方(正面)から見て反時計方向)に回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。
【0068】
次いで、ユーザの選択により、乾燥工程(ステップS114)が実行される場合には、制御装置38は、排水弁25を開放したままの状態で、洗濯工程と同様に、洗濯兼脱水槽3を正逆回転させる。そして、制御装置38は、乾燥ダクト29の途中に設けた送風ファンを運転することによって外槽2内の空気を乾燥ダクト29内に吸い出す。
【0069】
この乾燥ダクト29内を通過する空気は、乾燥ダクト29内に設置した除湿機構から流れ落ちる冷却水と接触して冷却された後、リントフィルタを通して同伴する糸屑等が捕集される。そして、この空気は、ヒータによって加熱された後に温風吹き出し口から洗濯兼脱水槽3内に吹き込まれ、これにより洗濯兼脱水槽3内の洗濯物は乾燥する。以上のような一連の各工程が実施されることでこの制御装置38によるドラム式洗濯乾燥機Sの洗濯・乾燥運転工程が終了する。
【0070】
次に、本実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機Sの作用効果について説明する。
従来のドラム式洗濯乾燥機の洗濯水の循環流量は、一般に15〜20L/分程度に設定されているところ、本実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機Sでは、循環流量が50L/分以上に設定可能な構成となっている。
【0071】
具体的には、洗濯水の循環流路を構成する配管のうち、少なくとも、外槽2から洗濯水を抜き出すように外槽2の排水口21と循環ポンプ24とを接続する、循環ポンプ24の上流側にある蛇腹ホース22の内径が35mm以上、望ましくは37mm〜50mmに設定され、この蛇腹ホース22の長さが400mm以下、望ましくは、150〜300mmに設定されている。
【0072】
そして、循環ポンプ24の循環ポンプモータ47としては、その回転速度3000rpm以上、望ましくは、3800rpm〜5000rpmを実現可能なものが使用されている。
なお、循環ポンプ24から外槽カバー2dに向けて洗濯水を送り込む、循環ポンプ24の下流側にある蛇腹ホース41の内径は、20mm以上、望ましくは、25mm〜35mm程度に設定されている。
【0073】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機Sでは、外槽2の排水口21から循環ポンプ24への洗濯水の戻りが良好となることで、洗濯水の循環流量が一段と向上することとなる。そして、このドラム式洗濯乾燥機Sによれば、従来のドラム式洗濯乾燥機(例えば、特許文献1参照)と比較して外槽2内に貯留される洗濯水の水量がたとえ同じであっても、外槽2における洗濯水の循環流量を前記範囲に設定することによって洗濯物に対する洗浄性能を一段と向上させることができる。たとえ外槽2の貯水量が従来のドラム式洗濯乾燥機と同じであってもこのドラム式洗濯乾燥機Sでは従来よりも黒ずみ等に対する洗浄性能が向上するのは、ノズル27aから洗濯物に噴射される洗濯水の水量を増加させることによって、洗濯時間(洗濯水と洗濯物との接触時間)を短くすることができ、洗濯水に一旦洗い出された皮脂等の汚れが洗濯物に再び戻る量が低く抑えられることによるものと考えられる。
【0074】
また、このドラム式洗濯乾燥機Sによれば、洗濯時間(洗濯水と洗濯物との接触時間)を短くすることができるので、洗濯兼脱水槽3内で洗濯物の動き、具体的には洗濯物がリフターによって持ち上げられ、落下する動作の回数が低減され、洗濯後のごわつき感を抑えることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、蛇腹ホース41として、その内径が前記所定範囲となるものを使用することを想定しているが、循環流量を50L/分以上に設定することができれば、従来と同様の内径のものを使用することもできる。
前記実施形態では、蛇腹ホース22,41を使用しているが、これらの循環流路を形成する配管は、円形断面のものに限定されずに、楕円、多角形等の様々のものを使用することができる。この際、配管の断面積は、円形のものに換算した際に前記内径となるようなものを使用することができる。
【0076】
また、前記実施形態では、外槽カバー2dの循環流路27が入口ポート2gから外槽カバー2dの開口に沿って略半周にわたって延在するものを想定しているが、外槽カバー2dの開口の略全周にわたって延在するものであってもよい。また、前記循環流路27は、入口ポート2gから外槽カバー2dの開口に沿って一方向に向かって延在しているが、入口ポート2gから二方向に分岐するように外槽カバー2dの開口に沿って延在する構成とすることもできる。このような分岐型の循環流路27によれば、ノズル27aの配置箇所を外槽カバー2dの開口に沿って2箇所以上配置することができる。この場合、各ノズル27aは、外槽カバー2dの開口の上部を0時位置とした場合に、3時位置から9時位置の間に設けることが望ましい。
【実施例】
【0077】
次に、実施例に基づいて本発明について更に具体的に説明する。
(実施例)
本実施例では、
図1に示すドラム式洗濯乾燥機Sの循環流量と洗浄比との関係を検証した。
【0078】
ドラム式洗濯乾燥機Sの蛇腹ホース22の内径は40mmであった。蛇腹ホース22の長さは270mmであった。外槽カバー2dの循環流路27の断面積は、断面を円形のものに換算した際の内径が25mm相当となるものを使用した。循環ポンプ24はブロアモータを使用した。洗濯物としてはJIS試験布4.5kgを使用した。なお、洗剤は、その1.8gを水1Lで予め溶解したものを使用した。
そして、循環ポンプ24の回転速度を3000rpm〜6000rpmの範囲内で変化させて洗濯を実施した際の洗浄比を測定した。その結果を
図10に示す。
【0079】
図10は、本実施例のドラム式洗濯乾燥機を使用して洗濯を実施した際の循環ポンプの回転速度と洗浄比との関係を表すグラフである。
なお、「洗浄比」とは、供試洗濯機の洗浄度と標準洗濯機の洗浄度の比であり、日本工業規格『家庭用電気洗濯機の性能測定方法(JISC9811)』に規定されているものをいう。
【0080】
次に、ドラム式洗濯乾燥機Sにて循環ポンプ24の回転速度を3000rpm〜6000rpmの範囲内で変化させて洗濯を実施した際の、蛇腹ホース22における洗濯水の循環流量を測定した。その結果を
図11に示す。
図11は、本実施例のドラム式洗濯乾燥機を使用して洗濯を実施した際の循環ポンプの回転速度と循環流量との関係を表すグラフである。
【0081】
このドラム式洗濯乾燥機Sでは、
図10に示すように、循環ポンプ24の回転速度が4000rpmを超えると洗浄比の増加率が急激に緩慢になり、回転速度が4500rpmを超えると洗浄比の向上は略横這いとなった。そして、
図11に示すように、ドラム式洗濯乾燥機Sでは、循環ポンプ24の回転速度が4000rpmのときに蛇腹ホース22における循環流量が50L/分であり、回転速度が4500rpmのときに蛇腹ホース22における循環流量が60L/分であった。
【0082】
つまり、ドラム式洗濯乾燥機Sは、
図11に示すように、循環ポンプ24の回転速度を3000rpmから6000rpmまで増加させると、循環流量が比例的に増加するのに対して、洗浄比は、前記のとおり、4000rpmを境に洗浄比の増加率が急激に緩慢になっている(
図10参照)。
以上のことから、ドラム式洗濯乾燥機Sによれば、循環流量が50L/分に設定されることで優れた洗濯性能を発揮することが検証された。