(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0013】
≪洗濯乾燥機≫
まず、本実施形態に係る洗濯乾燥機1について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る洗濯乾燥機1の概略構成を示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、洗濯乾燥機1は、筐体2と、外槽3と、内槽4と、送風手段5と、除湿ダクト6(水冷除湿機構)と、第1蛇腹管7と、第2蛇腹管8と、回転翼9と、モータ10と、バルブ11と、オーバーフロー管12と、排水管13と、給水ユニット14と、給水ポート15と、切替バルブ16と、第3蛇腹管17と、第4蛇腹管18と、第5蛇腹管19と、槽カバー100と、を備えている。
【0015】
筐体2は、上部に筐体開口部2aを開閉可能な外蓋2bを有し、略四角形の筒形状を呈している。筐体2内には、外槽3が備わる。外槽3は、複数の懸架手段(図示せず)によって筐体2から懸架されている。懸架手段(図示せず)は、外槽3または筐体2に生じた振動によって伸縮し、その振動の運動エネルギを熱エネルギに変換し、その振動を制振させることができる。
【0016】
外槽3は、有底の円筒形状を呈しており、外槽3の上部開口が槽カバー100で覆われている。槽カバー100には、洗濯物を出し入れするための開口部112が設けられ、開口部112は蓋体としての内蓋150が開閉可能に設けられている。内蓋150を閉めることで外槽3は、密閉可能となっている。なお、槽カバー100の詳細については、
図2から
図5を用いて後述する。
【0017】
また、外槽3の下面には、モータ10とクラッチ10aとが設けられている。モータ10は、同軸で異径(大径と小径)の回転軸を有している。クラッチ10aは、回転軸を切換えるものである。
【0018】
さらに、外槽3の下面には、排水口3bが設けられている。排水口3bには、排水管13が接続されている。排水管13には、バルブ11が設けられている。これにより、外槽3に水を溜めることができ、洗濯やすすぎが可能となっている。また、排水管13を通じて外槽3に溜めた水を排水することができ、排水管13を通じて脱水した水を排水することができる。
【0019】
外槽3内には、内槽4が収容されている。内槽4は、有底の円筒形状を呈している。内槽4の側壁と底には貫通孔4aが多数設けられている。内槽4の側壁の上部には流体のバランサ4bが設けられている。内槽4は、その底において、モータ10の大径の回転軸に支持されることで、回転自在になっている。
【0020】
これにより、脱水時に、内槽4を回転させて洗濯物を脱水することができる。内槽4の底部には、回転翼9が設けられている。回転翼9には上下に貫通する貫通孔9aが多数設けられている。回転翼9は、モータ10の小径の回転軸に支持されることで、回転自在になっている。これにより、洗濯やすすぎ時に、回転翼9を回転させて水を洗濯物ごと攪拌することができる。
【0021】
送風手段5は、筐体2に支持されており、送風手段5の荷重が筐体2にかかる構造とされている。これにより、送風手段5の荷重が外槽3に作用することがなく、脱水時に、内槽4が高速回転して、外槽3で振動が発生したとしても、外槽3に支持されていない送風手段5は振動しない構成となっている。
【0022】
なお、外槽3を含め外槽3とともに振動する部材(懸架手段(図示せず)によって筐体2から懸架されている部材)のトータルの荷重が小さいほど、外槽3は振動し難い傾向にあり、本実施形態では、送風手段5が、筐体2に支持され外槽3に支持されていない構成となっているので、外槽3とともに振動する部材のトータルの荷重が小さくなり、外槽3の振動を好適に抑制することが可能である。
【0023】
送風手段5は、筐体2内の上部に配置されており、外槽3の上方に位置している。送風手段5は、風を発生させるファン5bと、そのファン5bを収納するファンケース5fと、ファン5bを回動させるモータ5aと、送風手段5(ファンケース5f)から出る空気(洗濯物を乾かすための空気)を温めるヒータ5c(PTCヒータ)と、そのヒータ5cを収納するヒータケース5gと、送風手段5(ファンケース5f)に入る空気(風)からリント(糸屑等)を除去するフィルタ5dと、そのフィルタ5dを収納するフィルタケース5eを有している。
【0024】
ここで、フィルタケース5eとファンケース5fとは連結(連通)され、また、ファンケース5fとヒータケース5gとは連結(連通)されている。また、フィルタケース5eと第1蛇腹管7とは連結(連通)され、第1蛇腹管7と除湿ダクト6とは連結(連通)されている。そして、ヒータケース5gと第2蛇腹管8とは連結(連通)され、第2蛇腹管8と外槽3内(内槽4)とは連結(連通)されている。これにより、送風手段5内には、フィルタケース5eからファンケース5fに通じ、ファンケース5fからヒータケース5gに通じる通風路が形成される。そして、通風路には、ヒータ5cが配置され、通風路における空気の流れ方向においてヒータ5cの上流側にはフィルタ5dが配置されている。つまり、フィルタ5dによってリントの除去された空気がファン5bを介してヒータ5cに流入するようになっており、ヒータ5cにより温められた空気(温風)が送り出されるように構成されている。
【0025】
除湿ダクト6は、外槽3と一体に設けられており、外槽3の側壁3cが、除湿ダクト6の一部を兼ねている。除湿ダクト6の下端部は、排気口3aを通じて外槽3と連通しており、外槽3と除湿ダクト6の間に水が貯溜しないようになっている。これにより、洗濯時にはその分の洗濯水を減らすことができ、また、乾燥時には、その分の水を乾燥させるエネルギを省くことができる。
【0026】
除湿ダクト6は、排気口3aから側壁3c上を外槽3の上部へ延び、送風手段5(フィルタケース5e)の近傍に達している。除湿ダクト6は、除湿ダクト6内に水を供給する水供給部6aと、その水を除湿ダクト6内の雰囲気(空気)に露出させながら流す流下部6bとを有している。その水は空気に触れることで、空気を冷却して空気中の水分を取ること、すなわち、除湿することができる。なお、流下部6bは、水の表面積を大きくするための凹凸を有している。また、流下部6bは、除湿ダクト6の壁面を兼ねていてもよい。また、外槽3の排気口3aは、排水口3bより高い位置に設けられており、流下部6bを下った水は、排気口3aを経由して排水口3bから排水される。また、除湿ダクト6の上部には、オーバーフロー管12の一端が接続され、オーバーフロー管12の他端は、排水管13に接続されている。
【0027】
第1蛇腹管7は、除湿ダクト6の上部(槽カバー100の水冷除湿機構側接続部114)と、送風手段5(フィルタケース5e)とを連通する管である。また、第2蛇腹管8は、送風手段5(ヒータケース5g)と、外槽3の上部(槽カバー100の風吹出部115)とを連通する管である。
【0028】
これにより、乾燥時には、第1蛇腹管7から送風手段5に空気が取り込まれ、送風手段5を経由して第2蛇腹管8から外槽3内の上部へ空気(温風)が送出される。外槽3内に送出された空気は、内槽4内の上部から内槽4内に送られ、洗濯物から水分を奪いつつ、貫通孔4aから出て外槽3の下部に流れる。そして、その空気は外槽3の下部にある排気口3aから外槽3を出て除湿ダクト6に入り、除湿ダクト6内を上昇しながら冷却されて水分を奪われ(水冷除湿され)、除湿ダクト6の上部から第1蛇腹管7を介して送風手段5に再び吸引される。
【0029】
このように、空気は、密閉された経路(密閉循環経路)を循環しながら、内槽4内で洗濯物から水分を奪い、除湿ダクト6内で水分を奪われることで、洗濯物を乾燥させるように作用する。なお、送風手段5に連結される第1蛇腹管7および第2蛇腹管8は、外槽3の振動等に追従して変形することができるので、この密閉循環経路における密閉(気密)性が確保されている。
【0030】
なお、前記変形により、第1蛇腹管7および第2蛇腹管8には弾性力(バネ力)が生じることとなるが、この弾性力(バネ力)は、外槽3に対してその振動(振幅)を抑制する方向に作用する。例えば、外槽3に対して、その周方向および径方向に振動する振動が発生すると、その振幅は、外槽3の径方向の外側ほど大きくなる。すなわち、外槽3の径方向外側に位置する第1蛇腹管7の振幅は大きくなりやすく、その振幅に応じて生じる第1蛇腹管7の弾性力(バネ力)も大きくすることができる。したがって、第1蛇腹管7によって外槽3に生じる振動を効果的に抑制することが可能である。
【0031】
また、第1蛇腹管7と第2蛇腹管8との2つの蛇腹管は、外槽3の周方向および径方向において、相互に配置される位置が異なっている。これにより、うねるような振動に対して、弾性力(バネ力)のピーク時をずらして生じさせることができ、これによって、外槽3に生じる振動を効果的に抑制することが可能となっている。
【0032】
また、前記したように、送風手段5は、筐体2に支持されているので、第1蛇腹管7と第2蛇腹管8とによって外槽3(槽カバー100)と外槽3の除湿ダクト6に接続されている構造でありながら、送風手段5の荷重が、外槽3や除湿ダクト6に直接作用することがないので、外槽3とともに振動する部材のトータルの荷重を小さくでき、外槽3の振動を好適に抑制することができる。これにより、内槽4を高速回転することができる。具体的に、内槽4は、従来900rpm程度で回転していたが、本実施形態の構造により、1000rpm以上の高速回転が可能になり、さらに、1100rpm以上の高速回転も可能になった。これにより、脱水性能が向上し、乾燥に要するエネルギを低減することができる。また、乾燥および脱水に要する時間を短縮することができる。
【0033】
送風手段5の側方には、給水ユニット14が設けられている。給水ユニット14は、水道の蛇口等に接続される給水ポート15と、その給水ポート15に接続する切替バルブ16と、切替バルブ16と外槽3内に給水する槽カバー100の外槽内給水口113とを接続する給水経路上に設けられた第3蛇腹管17と、切替バルブ16と槽カバー100の外周水路117に給水する外周給水口116とを接続する給水経路上に設けられた第4蛇腹管18と、切替バルブ16と除湿ダクト6の水供給部6aとを接続する給水経路上に設けられた第5蛇腹管19と、を有している。
【0034】
切替バルブ16は、給水ポート15から入った水を、外槽内給水口113、外周給水口116、または、水供給部6aに流したり、止めたりすることができるようになっている。
【0035】
ちなみに、外周水路117に給水された水は、散水口117aから内槽4のバランサ4bに散水され、内槽4の外側面および外槽3の内側面を洗浄することができるようになっている。このような構成は、例えば、特開2012−223359号公報に記載されており、詳細な説明は省略する。
【0036】
なお、給水ユニット14の給水ポート15および切替バルブ16は、送風手段5または筐体2に支持されている。切替バルブ16は、外槽3を含め外槽3とともに振動する部材(懸架手段(図示せず)によって筐体2から懸架されている部材)と蛇腹管(第3蛇腹管17、第4蛇腹管18、第5蛇腹管19)で接続されているので、外槽3に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0037】
≪本実施形態に係る槽カバー100≫
次に、本実施形態に係る洗濯乾燥機1が備える槽カバー100について、
図2から
図5を用いて説明する。
図2は、外槽3および外槽3に取り付けられた槽カバー100の斜視図である。
図3は、本実施形態に係る槽カバー100の表面側から見た斜視図である。
図4は、本実施形態に係る槽カバー100の裏面側から見た斜視図である。
図5は、本実施形態に係る槽カバー100のA−A線で切断した部分断面図である。
【0038】
図2に示すように、有底の円筒形状を呈する外槽3の上部開口は、槽カバー100で覆われている。具体的には、
図4に示す槽カバー100(槽カバー本体110、槽カバー本体表部材120)の外周部に形成された外槽嵌合部111が、外槽3の上部開口端部と嵌合してネジ止めされている。
【0039】
図3に示すように、槽カバー100は、中央部分から前側にわたって略半円状(後ろ側を直線状に形成した略半円状)に大きく開口した開口部112(
図4参照)が形成された槽カバー本体110と、開口部112を密閉可能な内蓋150と、内蓋150が開口部112を閉塞する位置および内蓋150が開口部112を開放する位置の間で内蓋150が回動可能なように内蓋150を槽カバー本体110に取り付けるヒンジ部160と、内蓋150が開口部112を密閉する位置で内蓋150を固定するロック部170と、を備えている。
【0040】
また、槽カバー100の槽カバー本体110には、第3蛇腹管17(
図1参照)と接続される外槽内給水口113と、第1蛇腹管7(
図1参照)と接続される水冷除湿機構側接続部114と、第2蛇腹管8(
図1参照)と接続される風吹出部115と、第4蛇腹管18(
図1参照)と接続される外周給水口116と、が形成されている。
【0041】
<槽カバー本体110>
槽カバー本体110は、非難燃性樹脂であるPP(Polypropylene:ポリプロピレン)樹脂で形成された槽カバー本体表部材120(
図3参照)と、難燃性の樹脂であるPBT(Polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)樹脂で形成された槽カバー本体裏部材130(
図4参照)と、を有している。
図5に示すように、槽カバー本体裏部材130は、槽カバー本体表部材120と槽カバー本体裏部材130との間に空隙118を形成するようにして、槽カバー本体表部材120にネジ119で固定されている。
【0042】
図5に示すように、槽カバー本体表部材120の開口部112の周辺の上側面には、第1平坦部121と、第1平坦部121よりも内周側(開口部112の側)であり、内蓋150と当接する第2平坦部122と、第1平坦部121よりも外周側(槽カバー本体110の外周側)であり、外周側に向かって下がるように傾斜する傾斜部123と、が形成されている。また、槽カバー本体表部材120の内周側端部である周縁部124が第2平坦部122から下方向に延びるように形成されることにより、開口部112が形成されている。また、第1平坦部121と第2平坦部122との境界の裏面側には、補強リブ125が形成されている。
【0043】
図4に示すように、槽カバー本体裏部材130は槽カバー本体表部材120の裏面を覆うように取り付けられ、風吹出部115の整流フィン115aと、外槽内給水口113の整流部113aと、が一体に形成されている。
【0044】
また、
図5に示すように、槽カバー本体裏部材130と槽カバー本体表部材120の間で外周水路117が形成されるようになっている。これにより、槽カバー本体110の外周給水口116(
図3参照)と、外周水路117(
図4,5参照)と、散水口117a(
図4参照)とが、連通するようになっている。
【0045】
また、
図5に示すように、槽カバー本体裏部材130は、下側から見て槽カバー本体表部材120を覆うように形成された平坦部131と、槽カバー本体裏部材130の内周側端部付近で上方向に延びるように形成された起立部132と、を有しており、起立部132が、槽カバー本体表部材120の周縁部124と補強リブ125の間に配置されるようになっている。
【0046】
<内蓋150>
内蓋150は、非難燃性樹脂であるPP樹脂で形成された内蓋本体部材151(
図3参照)と、不燃材であるSUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)で形成された内蓋補助部材152(
図4参照)と、を有している。
図5に示すように、内蓋補助部材152は、内蓋本体部材151と内蓋補助部材152との間に空隙154を形成するようにして、内蓋本体部材151にネジ155(
図4参照)で固定されている。内蓋本体部材151の後方側は、ヒンジ部160を介して、槽カバー本体110に回動可能なように取り付けられている。内蓋本体部材151の前方側には、ロック部170が設けられている。
【0047】
内蓋150の外縁部には、開口部112の形状に沿うようにシール部材(内蓋パッキン)153が設けられており、内蓋本体部材151と内蓋補助部材152との間で挟持されて取り付けられている。内蓋150が開口部112を閉塞する位置とすると、シール部材153が開口部112の周縁部124と圧接して、外槽3の内部を気密な状態とすることができるようになっている。
【0048】
≪比較例に係る槽カバー100C≫
ここで、比較例に係る槽カバー100Cについて、
図6から
図8を用いて説明する。
図6は、比較例に係る槽カバー100Cを表面側から見た斜視図である。
図7は、比較例に係る槽カバー100Cを裏面側から見た斜視図である。
図8は、比較例に係る槽カバー100CをB−B線で切断した部分断面図である。
【0049】
図6に示すように、槽カバー100Cは、中央部分から前側にわたって略半円状(後ろ側を直線状に形成した略半円状)に大きく開口した開口部112(
図7参照)が形成された槽カバー本体110Cと、開口部112を密閉可能な内蓋150と、内蓋150が開口部112を閉塞する位置および内蓋150が開口部112を開放する位置の間で内蓋150が回動可能なように内蓋150を槽カバー本体110に取り付けるヒンジ部160と、内蓋150が開口部112を密閉する位置で内蓋150を固定するロック部170と、を備えている。即ち、本実施形態に係る槽カバー100(
図3から
図5参照)と、比較例に係る槽カバー100C(
図6から
図8参照)とは、槽カバー本体110Cの構成が異なっている。その他の構成は同様であり、説明を省略する。
【0050】
槽カバー本体110Cは、非難燃性樹脂であるPP樹脂で形成された槽カバー本体表部材120C(
図6参照)と、不燃材であるSUSで形成された槽カバー補助部材140C(
図6参照)と、非難燃性樹脂であるPP樹脂で形成された水路部材145C(
図7参照)と、難燃性の樹脂であるPBT樹脂で形成された整流フィン115aを有する耐熱フィン部材146C(
図7参照)と、を有している。
【0051】
図8に示すように、槽カバー本体表部材120Cの開口部112の周辺の上側面には、SUSで形成された槽カバー補助部材140Cがネジ止めされている。このように、槽カバー本体表部材120Cと槽カバー補助部材140Cを組み合せるため、合わせ部に溝121C,122Cが形成される。
【0052】
図7に示すように、外槽内給水口113の整流部113aは、槽カバー本体110Cと一体に形成される。一方、高温の温風が通過する風吹出部115の整流フィン115aは、PBT樹脂で形成された耐熱フィン部材146Cに形成され、槽カバー本体110Cにネジ止めされている。また、
図8に示すように、水路部材145Cと槽カバー本体表部材120Cの間で外周水路117が形成されるようになっている。
【0053】
≪作用・効果≫
本実施形態に係る槽カバー100を備える洗濯乾燥機1の作用および効果について、本実施形態に係る槽カバー100(
図3〜
図5参照)と、比較例に係る槽カバー100C(
図6〜
図8参照)と、を対比しつつ説明する。
【0054】
本実施形態に係る槽カバー100は、内蓋150を内蓋本体部材151と内蓋補助部材152との間に空隙154を設けた二層構造とすることにより、外槽内が高温となっても、内蓋補助部材152から内蓋本体部材151への熱伝導を低減して、内蓋本体部材151の温度上昇を低減することができる。なお、内蓋補助部材152は不燃材であるSUSで形成され、外槽内が高温となっても変形等しないようになっている。
【0055】
また、本実施形態に係る槽カバー100は、槽カバー本体110を槽カバー本体表部材120と槽カバー本体裏部材130との間に空隙118を設けた二層構造とすることにより、外槽内が高温となっても、槽カバー本体裏部材130から槽カバー本体表部材120への熱伝導を低減して、槽カバー本体表部材120の温度上昇を低減することができる。なお、槽カバー本体表部材120は難燃性の樹脂であるPBT樹脂で形成され、PP樹脂よりも軟化点(軟化温度)が高く、外槽内が高温となっても変形等しないようになっている。
【0056】
このような構造により、本実施形態に係る槽カバー100は、外槽内が高温となっても、槽カバー100の開口部112周辺の部材の変形を抑制し、槽カバー100の開口部112の気密性を確保することができるようになっている。
【0057】
また、槽カバー本体裏部材130には、起立部132が設けられており、槽カバー本体表部材120が加熱され開口部112の周縁部124が下がるように変形した場合でも、起立部132により周縁部124を係止して、変形を抑制することができるようになっている。これにより、槽カバー100の開口部112の気密性を確保することができるようになっている。
【0058】
一方、比較例に係る槽カバー100Cは、SUSで形成された槽カバー補助部材140Cにより、槽カバー100Cの開口部112周辺の部材の変形を抑制し、槽カバー100Cの開口部112の気密性を確保することができるようになっている。しかしながら、槽カバー補助部材140Cは、槽カバー100Cの開口部112の周縁に取り付けられているため、水分、洗剤、埃等が付着しやすい。このため、洗濯乾燥機1を使用し続けると、SUS製の槽カバー補助部材140Cが錆びてしまうおそれがある。この槽カバー補助部材140Cは、槽カバー100Cの開口部112から洗濯物を出し入れする際にユーザによって目視可能な位置に取り付けられているため、槽カバー補助部材140Cに錆が生じると、見た目が悪くなり、意匠性を損なってしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態に係る槽カバー100は、槽カバー本体表部材120の開口部112の周辺の上側面にSUS製の部材を設けていないので、錆による意匠性の低下を防止することができる。
【0060】
また、比較例に係る槽カバー100Cは、槽カバー本体表部材120Cとの上側面に槽カバー補助部材140Cを取り付けるため、合わせ部に溝121C,122Cが形成される。このような溝があると、洗剤、埃等が入り込むおそれがあり、清掃性が悪くなる。
【0061】
これに対し、本実施形態に係る槽カバー100は、槽カバー本体110の上面側は槽カバー本体表部材120のみで構成され、洗剤、埃等が付着しても、入り込む溝がないため、容易に清掃することができ、清掃性がよい。
【0062】
また、比較例に係る槽カバー100Cの槽カバー本体110Cは、槽カバー本体表部材120Cに、3つの部材(槽カバー補助部材140C、水路部材145C、耐熱フィン部材146C)を取り付ける工程を経て作成される。これに対し、本実施形態に係る槽カバー100の槽カバー本体110は、槽カバー本体表部材120に1つの部材(槽カバー本体裏部材130)を取り付ける工程を経て作成される。このように、組み付け工程を少なくすることで生産性が向上する。
【0063】
ちなみに、槽カバー本体(槽カバー本体表部材)を全て難燃性のPBTで形成することにより、SUS製の部材を排除しつつ、槽カバーの開口部の気密性を確保するという方法も考えられる。しかし、PBTはPPよりも比重が重いため、槽カバーが重くなる。即ち、外槽3を含め外槽3とともに振動する部材(懸架手段(図示せず)によって筐体2から懸架されている部材)のトータルの荷重が重くなり、脱水時等に振動が大きくなるおそれがある。これに対し、本実施形態に係る槽カバー100は、主要な部分である槽カバー本体表部材120をPPで形成し、外槽3の内部に面する裏面をPBTで形成された槽カバー本体裏部材130で保護するので、全て難燃性のPBTで形成する場合と比較して、軽量化することができ、外槽3の振動を小さくすることができる。
【0064】
また、PBTは、強アルカリに犯される特性を有する。このため、アルカリ性洗剤等が付着すると変色等して意匠性が悪くなるおそれがある。これに対し、本実施形態に係る槽カバー100は、槽カバー本体110の上面側である槽カバー本体表部材120および内蓋150の上面側である内蓋本体部材151がアルカリ耐性を有するPPで形成されるため、意匠性が悪くなることを防止することができる。
【0065】
また、外槽内が高温となった場合、槽カバー本体表部材120と槽カバー本体裏部材130との間に形成されている外周水路117に給水して槽カバー本体表部材120や槽カバー本体裏部材130を冷却し、熱変形を抑制してもよい。
【0066】
≪変形例≫
なお、本実施形態に係る洗濯乾燥機1は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
本実施形態に係る槽カバー100の槽カバー本体裏部材130は、難燃性の樹脂であるPBT(Polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)樹脂で形成されるものとして説明したが、これに限られるものではなく、その他の難燃性の樹脂を用いてもよい。ここで、槽カバー本体裏部材130に用いる難燃性の樹脂としては、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.)が定める燃焼性試験の規格(UL94)において、難燃性のグレードがUL94HB以上(UL94HB,UL94V-2,UL94V-1,UL94V-0,UL94-5VB,UL94-5VA)であることが望ましく、自己消火性を有するUL94V−2以上(UL94V-2,UL94V-1,UL94V-0,UL94-5VB,UL94-5VA)がより望ましい。
【0068】
本実施形態に係る槽カバー100の槽カバー本体表部材120および内蓋本体部材151は、非難燃性の樹脂であるPP(Polypropylene:ポリプロピレン)樹脂で形成されるものとして説明したが、これに限られるものではなく、その他の非難燃性の樹脂を用いてもよく、難燃性の樹脂を用いてもよい。
【0069】
本実施形態に係る槽カバー100の内蓋補助部材152は、不燃材であるSUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)で形成されるものとして説明したが、これに限られるものではなく、その他の不燃材、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などを用いてもよい。
【0070】
第4蛇腹管18、外周給水口116、外周水路117、散水口117aにより構成される散水口117aから内槽4のバランサ4bに散水して内槽4の外側面および外槽3の内側面を洗浄する機構は、必須の構成ではなく、なくてもよい。