(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バックフォーカス制御部は、フォーカスレンズをウォブリングさせ、ウォブリングさせて求めたコントラスト信号に対して、そのノイズ成分を除去するためにバンドパスフィルタを通した出力から前記傾きを求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
はじめに、撮像装置100の機能例について、
図1を用いて説明する。
撮像装置100は、制御部10、レンズユニット20およびカメラ信号処理部40を機能として備える。
【0014】
レンズユニット20は、被写体からの光束の変倍を行なうズームレンズ群(以降、ズームレンズと称することもある。)23、受光光量を調整するための絞り24およびピント調節に用いるフォーカスレンズ群(以降、フォーカスレンズと称することもある。)25を備えている。レンズユニット20は、被写体の光学像をCCDやCMOS等で構成される撮像素子31の受光面に結像する機能を有している。また、レンズユニット20は、例えばフォトインタラプタ等で構成される絶対位置検出部21および温度検出部22を備える。絶対位置検出部21は、ズームレンズ群23およびフォーカスレンズ群25の絶対位置を検出し、検出結果をレンズ絶対位置情報として制御部10に送信する。また、温度検出部22は、レンズユニット20内の温度を検出し、検出結果をレンズユニット内温度情報として制御部10に出力する。
【0015】
撮像素子31は、受光面に結像された被写体の光学像を光電変換し、得られた撮像信号をノイズ除去部32に出力する。ノイズ除去部32は、受信した撮像信号に対してノイズ除去処理を実行する。AGC(自動利得制御)33は、撮像信号を最適なレベルに増幅する。AD(アナログ/ディジタル)変換部34は、撮像信号をディジタル変換してディジタル撮像信号に変換し、変換したディジタル撮像信号をカメラ信号処理部40に出力する。電子シャッタ35は、撮像素子31に対する露光時間を調整する。
【0016】
カメラ信号処理部40は、信号変換処理部41、VF値生成部42およびAE(オートアイリス)信号生成部45を備える。
【0017】
信号変換処理部41は、受信したディジタル撮像信号に対し所定の信号処理を実行して、例えばNTSC(National Television Standards Committee)規格やPAL(Phase Alternating Line)規格等の所定のテレビジョン方式に準拠した標準的なテレビジョン信号に変換して、テレビジョン信号を出力する機能を有する。
【0018】
VF値生成部42は、HPF(ハイパスフィルタ)43および積分部44を備え、コントラスト信号(VF:Value of Focus)値を生成し、得られたVF値を制御部10に出力する機能を有する。
【0019】
AE信号生成部45は、受信したテレビジョン信号に基づいて、その撮影映像の明るさ、レンズユニット20の絞り24の開き具合およびAGC33のゲイン等に応じた信号レベルのオートアイリス信号AEを制御部10に出力する機能を有する。
【0020】
制御部10は、図示しないマイクロコンピュータ等のCPU(Central Processing Unit)およびメインメモリによって構成され、記憶部14に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開してバックフォーカス制御部11、オートアイリス制御部12およびオートフォーカス制御部13を具現化する。
【0021】
バックフォーカス制御部11は、バックフォーカス調整を制御する機能を有する。具体的には、バックフォーカス制御部11は、絶対位置検出部21からフォーカスレンズ25の位置を受信し、VF値生成部42からフォーカスレンズ位置に対するVF値を受信し、VF値の曲線の傾きを求める機能を有する。そして、バックフォーカス制御部11は、傾きの絶対値と所定の閾値とを比較し、バックフォーカス調整を実行する時期(バックフォーカスの調整の必要性)を判定する機能を有する。また、バックフォーカス制御部11は、バックフォーカスの調整時期である(バックフォーカスの調整が必要である)と判定した場合、被写体距離を確認した後、工場出荷時における合焦時のフォーカスレンズ位置と今回の測定時における合焦時のフォーカスレンズ位置との差分を演算して、得られた差分を補正値としてバックフォーカス調整を制御する機能を有する。なお、バックフォーカス調整の詳細な処理については後記する。
【0022】
オートアイリス制御部12は、AE信号生成部45からオートアイリス信号AEを取得し、取得したオートアイリス信号AEにより認識される現在の撮影映像の明るさ、レンズユニット20の絞り24の開き具合およびAGC33のゲイン等に対する評価値であるオートアイリス評価値を生成する機能を有する。
【0023】
オートフォーカス制御部13は、VF値生成部42から取得したVF値をAF評価値として用い、そのAF評価値がピークとなる方向(合焦方向)にフォーカスレンズ群25の位置を制御する機能を有する。また、オートフォーカス制御部13は、フォーカスレンズ群25を合焦方向および合焦位置に制御するために、第3のモータ制御信号を生成し、生成した第3のモータ制御信号を第3の駆動部25dに出力する機能を有する。なお、第3の駆動部25dは、第3のモータ制御信号に基づいてレンズユニット20のフォーカスレンズ群25をその光軸方向に移動させる第3のモータ25mを駆動制御する。これによりAF制御が行なわれる。
【0024】
また、制御部10は、AF評価値と、レンズユニット20の絶対位置検出部21から取得したレンズ絶対位置情報に基づいて得られる現在のズーム倍率を表すズーム倍率情報と、レンズユニット20の温度検出部22から取得したレンズユニット20内の温度情報と、記憶部14に記憶されているトレースカーブデータとバックフォーカス調整値とを用いて、第1および第2のモータ制御信号を生成する。そして、制御部10は、第1のモータ制御信号を第1の駆動部23dに出力し、第2のモータ制御信号を第2の駆動部24dに出力する機能を有する。第1の駆動部23dは、第1のモータ制御信号に基づいて、レンズユニット20のズームレンズ群23をその光軸方向に移動させる第1のモータ23mを駆動制御する。第2の駆動部24dは、第2のモータ制御信号に基づいて、レンズユニット20の絞り24を駆動する第2のモータ24mを駆動制御する。これによりオートアイリス制御が行なわれる。
【0025】
また、制御部10は、オートアイリス評価値AEに基づいて、撮像素子31に対する露光時間を増減させるように電子シャッタ35のシャッタ速度を制御し、撮像素子31の受光面上に結像される被写体の光学像の光量を調整する機能を有する。さらに、制御部10は、オートアイリス評価値AEに基づいて、AGC33におけるゲイン調整を行なう機能を有する。
【0026】
次に、バックフォーカスの調整方法の概要について、
図2〜
図4を用いて説明する。
図2は、ズームトレースカーブの一例を示している。
図2において、横軸はズームレンズ23の位置を表し、縦軸はフォーカスレンズ25の位置を表している。
図2中には、被写体距離がそれぞれ1m、3m、無限遠のときのズームトレースカーブが示されている。ズームレンズ23を動かしたとき、このようなズームトレースカーブに沿ってフォーカスレンズ25を動かせば、ピントが合った状態に保たれることになる。なお、被写体距離が1mとは、一般的に、最小撮影距離より大きい値である。
【0027】
ここで、
図2のズームトレースカーブから分かることは、ズームレンズ23が「WIDE端」にある場合には、被写体距離が1m〜無限遠の間であれば、フォーカスレンズ25をほとんど移動させなくてもピントが合った状態になっているということである。
【0028】
図3(a)は、バックフォーカスが正常と判定され、かつズームレンズ23の位置がWIDE端にある場合の、フォーカスレンズ位置に対するVF値の曲線51,52を表し、
図3(b)は、前記曲線の傾きを示す曲線55,56を表している。この傾きを示す曲線は、フォーカスレンズ25をウォブリングさせて求めることができる。そして、ウォブリングさせて求めたコントラスト信号に対して、そのノイズ成分を除去するためにBPF(バンドパスフィルタ)を通した出力を用いると、ノイズ耐性が上がるので、傾きを求める精度が向上する。
【0029】
図3(a)中の実曲線51は、被写体距離が無限遠の場合を表し、そのVF値の曲線51がピークとなるときの無限遠想定位置53に対応するフォーカスレンズ位置をFaとする。なお、このフォーカスレンズ位置Faは、工場出荷時に撮像装置100の記憶部14に記憶されるものとする。また、
図3(a)中の一点鎖線の曲線52は、被写体距離が1mの場合を表し、そのVF値の曲線52がピークとなるときの位置を1m想定位置54とする。
図3(a)から分かるように、VF値の曲線51,52のピーク位置は、被写体距離が1m(一点鎖線)と無限遠(実線)とでは、ほとんど違いがない。
【0030】
図3(b)は、
図3(a)に示したVF値の曲線51,52の傾きの曲線55,56を表している。フォーカスレンズ位置がFaの地点では、傾きの曲線55の値は零となる。つまり、撮像装置100が工場出荷時に調整されたバックフォーカス調整値に基づいて想定した無限遠想定位置53における傾きの曲線55の値は、所定の閾値57aと所定の閾値57bとの間に存在する(所定の範囲内にある)。つまり、傾きの絶対値が所定の閾値以下、つまり傾きが所定の閾値57bから所定の閾値57aの範囲内であると判定される。また、被写体距離が1mの場合であっても、1m想定位置54の位置における傾きの曲線56の値は、所定の範囲内にあると判定される。したがって、この場合、撮像装置100は、バックフォーカスを調整する必要がないと判定する。
【0031】
次に、
図4(a)(b)を用いて、レンズユニット20のバックフォーカスの値が変動してしまったケースについて説明する。
図4(a)には、被写体距離が無限遠の場合および被写体距離が1mの場合それぞれのVF値の曲線61,62が示されている。また、
図4(a)中には、
図3(a)の場合と同じ無限遠想定位置53、1m想定位置54および無限遠想定位置53に対応するフォーカスレンズ位置Faが表されている。ここで、VF値の曲線61がピークとなるときのフォーカスレンズ位置をFbとする。
図4(a)に示すように、フォーカスレンズ位置Fbは、工場出荷時のフォーカスレンズ位置Faからずれている。
【0032】
そして、
図4(b)には、VF値の曲線61の傾きを示す曲線63が示されている。工場出荷時に調整したフォーカスレンズ位置がFaのときの傾き65の値は、所定の閾値57aと所定の閾値57bとの間に存在しない(所定の閾値を超えている)。つまり、傾きの絶対値が所定の閾値以上と判定される。したがって、この場合、撮像装置100は、バックフォーカスを調整する必要があると判定する。
次に、撮像装置100は、フォーカスレンズ25を無限遠想定位置53に対応するフォーカスレンズ位置Faから徐々にFar側に動かし、VF値の曲線61がピークとなるときのフォーカスレンズ位置Fbを探索する。そして、バックフォーカス変化量DFは、次の式(1)によって求められる。
【0034】
そして、撮像装置100は、工場出荷時のバックフォーカス調整値を示すフォーカスレンズ位置Faからバックフォーカス変化量DFを減算することで、ピントボケ等の不具合を解消することが出来るようなバックフォーカス調整値を得ることができる。
【0035】
図5は、バックフォーカス調整の処理フロー例を示している(適宜、
図1、
図4参照)。バックフォーカス制御部11は、撮像装置100の電源が投入されると、
図5に示すバックフォーカス調整の処理を開始する。この処理は、信号変換処理部41から出力される標準的なテレビジョン信号のフィールド(例えば、NTSCでは60フィールド/秒)またはフレーム(例えば、NTSCでは30フレーム/秒)ごとに、繰り返し実行される。
【0036】
ステップS501では、バックフォーカス制御部11は、絶対位置検出部21からレンズ絶対位置情報を受信し、ズームレンズ23の位置がWIDE端にあるか否かを判定する(
図5では、「WIDE端か?」と表記)。
WIDE端にあると判定した場合(ステップS501でYes)、処理はステップS502へ進み、WIDE端にないと判定した場合(ステップS501でNo)、処理は終了する。
【0037】
ステップS502では、バックフォーカス制御部11は、工場出荷時に無限遠想定位置53に対応するフォーカスレンズ位置FaにおけるVF値の曲線の傾き65(
図4(b)参照)が、所定の範囲内にあるか否かを判定する。
所定の範囲内にないと判定した場合(ステップS502でNo)、処理はステップS503へ進み、所定の範囲内にあると判定した場合(ステップS502でYes)、処理は終了する。
なお、ステップS502では、傾きの代わりに、傾きの絶対値を用いることが可能であり、フォーカスレンズ位置がFaのときの傾き65の絶対値が、所定の閾値以上か否かを判定しても構わない。この場合、絶対値が所定の閾値未満であると判定した場合は「ステップS502でYes」に相当し、絶対値が所定の閾値以上であると判定した場合は「ステップS502でNo」に相当する。
【0038】
ステップS503では、バックフォーカス制御部11は、合焦時に絶対位置検出部21から取得したレンズ絶対位置情報に基づいて、被写体距離が1m以上か否かを判定する。
1m以上であると判定した場合(ステップS503でYes)、処理はステップS504へ進み、1m以上でないと判定した場合(ステップS503でNo)、処理は終了する。
【0039】
ステップS504では、バックフォーカス制御部11は、式(1)を用いて、バックフォーカス変化量DFを演算する。
ステップS505では、バックフォーカス制御部11は、バックフォーカスの補正処理を実行する。具体的には、バックフォーカス制御部11は、工場出荷時のバックフォーカス調整値を示すフォーカスレンズ位置Faからバックフォーカス変化量DFを減算してバックフォーカス調整値を更新し、更新したバックフォーカス調整値を記憶部14に記憶する。
【0040】
以上説明したように、本発明の撮像装置100は、何らかの衝撃等でバックフォーカスの値が変化した場合に、ズームレンズ23の移動の手間を軽減し、被写体距離の制限を緩和し、実行時期の検知を可能とすることで、バックフォーカス調整を工場でなく市場で実行することができる。なお、撮像装置100は、ズームレンズ位置がWIDE端であるか否かの判定、被写体距離が1m以上であるか否かの判定、VF値の曲線の傾きの絶対値が閾値以上か否かの判定を、信号変換処理部41の出力信号である標準的なテレビジョン信号のフィールドまたはフレームごとに実行する。このような構成を備えることにより、市場(ユーザの実使用環境)において、前記判定の条件を満足する度に、バックフォーカスの調整が実行されることになり、ユーザが気付かないうちに、ピントボケとなるような不具合を解消することができる。また、本発明の撮像装置100は、ズームレンズ23の移動を少なくできるので、バックフォーカス調整処理の時間を短時間で実行することができる。
【0041】
なお、VF値が所定値より小さい場合や撮像画像にハイライト画素が多く含まれている場合等では、正確なピント位置を見つけられない(傾きが明確に定まらない)ときがある。そのときには、
図5のステップS502において、バックフォーカス調整を実行しないようにすることによって、バックフォーカス調整の実行タイミングの信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、被写体距離を1m〜無限遠で説明したが、被写体距離の短い方は1mに限られることはなく、WIDE端におけるフォーカスレンズ位置が被写体距離によってほとんど変わらない被写体距離(1m未満)の範囲を、撮影装置100の機種に応じて定めるようにしても構わない。
【0043】
また、撮像装置100の機能メニューの中にユーザの操作によってバックフォーカス調整を強制的に実行するモードが備えられていてもよい。この場合、撮像装置100は、そのモードの実行を受け付けた場合に、ズームレンズ23を自動的にWIDE端に移動させて、バックフォーカス調整を実行可能な状態を調えるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態の
図4では、VF値の曲線のピークがFar側にずれた場合を示したが、Near側にずれた場合にも
図5に示す処理フローによってバックフォーカス調整を制御することができる。
【0045】
また、本実施形態で説明したバックフォーカス調整処理は、急場をしのぐための一時的な利用が可能である。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも、説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の変形例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の変形例の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、撮像装置100の各機能等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、制御部10の各機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。