特許第6063348号(P6063348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063348
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20170106BHJP
   F16F 13/14 20060101ALI20170106BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20170106BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   F16F15/08 T
   F16F13/14 Z
   F16F1/387 E
   B60K5/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-110576(P2013-110576)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228120(P2014-228120A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】木場 洋人
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−030769(JP,A)
【文献】 特開昭61−286633(JP,A)
【文献】 特開2006−349068(JP,A)
【文献】 特開2008−024174(JP,A)
【文献】 特開平03−249441(JP,A)
【文献】 特開平08−254241(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1655159(EP,A1)
【文献】 米国特許第5273261(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60K 5/12
F16F 1/38− 1/393
F16F 13/14−13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブッシュ及び第2ブッシュと、前記第1ブッシュ及び前記第2ブッシュを互いに連結する連結部材とを備え、車両に搭載される防振装置において、
前記第1ブッシュ及び前記第2ブッシュは、車両側の部材に取り付けられる内側取付部と、前記内側取付部の外周側と前記連結部材側との間に介在すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体とをそれぞれ有し、
前記第2ブッシュは、動ばね定数が、前記第1ブッシュの動ばね定数より大きく設定されると共に、減衰係数が、前記第1ブッシュの減衰係数より大きく設定されることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記第2ブッシュは、前記防振基体に形成される空洞部と、
前記空洞部に封入されると共に前記連結部材と前記内側取付部との相対変位によって撹拌され抵抗が生じる粘性流体とを備えていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置に関し、低周波域における低ばね特性を確保しつつ剛体共振を低減できる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車のトルクロッドやサスペンションリンク等のように、車両に搭載されると共に二つの部材間に介装されて防振連結するリンク、ロッド、アーム等の防振装置が知られている。この防振装置は、二つの部材間の振動伝達を抑えつつ部材の相対変位を抑制する。このような防振装置として、例えば、ロッドの長手方向の両端部にそれぞれゴムブッシュが組み付けられ、少なくとも一方のゴムブッシュに流体室が形成されるものがある。ロッドの長手方向の中間部に、壁部の一部が可撓性膜で構成されることで容積変化が許容される平衡室が形成され、平衡室はオリフィス通路により流体室に連通される(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示される技術によれば、流体室、平衡室およびオリフィス通路に非圧縮性流体が充填されるので、振動入力時には、オリフィス通路を通じて平衡室と流体室との間で非圧縮性流体が流動する。その非圧縮性流体の共振作用等によって、10〜20Hz程度の低周波域の振動が入力される場合には、高い減衰力を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した従来の技術では、100Hz付近以上の比較的高い振動数域(高周波域)の振動が入力される場合に、ロッドを質量成分とすると共にゴムブッシュをばね成分とするマス−バネ系における剛体共振が問題となる。剛体共振が生じると、ロッドの変位によって伝達振動が増幅されるという問題がある。
【0006】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、低周波域における低ばね特性を確保しつつ剛体共振を低減できる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振装置によれば、第1ブッシュ及び第2ブッシュと、それら第1ブッシュ及び第2ブッシュを互いに連結する連結部材とを備え、車両に搭載される。第1ブッシュ及び第2ブッシュは、車両側の部材に内側取付部がそれぞれ取り付けられ、ゴム状弾性体から構成される防振基体が、内側取付部の外周側と連結部材側との間にそれぞれ介在する。
【0008】
低周波域の振動が入力される場合には、第1ブッシュ及び第2ブッシュは直列ばねの関係となる。第2ブッシュは、動ばね定数が第1ブッシュの動ばね定数より大きく設定される、即ち、第1ブッシュの動ばね定数は第2ブッシュの動ばね定数より小さいので、第1ブッシュ及び第2ブッシュが直列ばねの関係にある防振装置の動ばね定数を、第1ブッシュに依存させることができる。その結果、防振装置の動ばね定数を第1ブッシュの動ばね定数より小さくできるので、低周波域における低ばね特性を確保できる効果がある。
【0009】
また、剛体共振が問題となる高周波域の振動が入力される場合には、低周波域の振動が入力される場合と比較して防振基体が変位し難くなる。よって、第1ブッシュ及び第2ブッシュは、連結部材を質量成分とする並列ばねの関係となる。第2ブッシュは、減衰係数が、第1ブッシュの減衰係数より大きく設定されるので、第1ブッシュ及び第2ブッシュが並列ばねの関係にある防振装置の減衰力を、第2ブッシュに依存させることができる。その結果、第2ブッシュによって防振装置を高減衰にできるので、剛体共振を低減できる効果がある。
【0010】
請求項2記載の防振装置によれば、第2ブッシュは、防振基体に空洞部が形成され、空洞部には粘性流体が封入される。連結部材と内側取付部との相対変位によって粘性流体が撹拌され抵抗が生じる。粘性流体を利用するので、広い振動数域において減衰特性を確保できる。その結果、請求項1の効果に加え、広い振動数域において剛体共振を低減できる効果がある。
【0011】
なお、低周波域の振動が入力される場合には、防振装置の動ばね定数は第1ブッシュに依存するので、防振装置は、粘性流体の抵抗が生じる第2ブッシュの影響を受けることなく低ばね特性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施の形態における防振装置の平面図である。
図2図1のII−II線における防振装置の断面図である。
図3図2のIII−III線における第2ブッシュの断面図である。
図4】防振装置の等価回路を示す図である。
図5】高周波域における防振装置の動的ばね特性を示す図である。
図6】低周波域における防振装置の動的ばね特性を示す図である。
図7】(a)は第2実施の形態における防振装置の平面図であり、(b)は防振装置の側面図である。
図8】第3実施の形態における防振装置の平面図である。
図9】(a)は図8のIXa−IXa線における防振装置の断面図であり、(b)は図8のIXb−IXb線における防振装置の断面図であり、(c)は図8のIXc−IXc線における防振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して第1実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における防振装置1の平面図であり、図2図1のII−II線における防振装置1の断面図である。
【0014】
図1に示すように、防振装置1は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20と、それら第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を互いに連結する連結部材30とを備え、エンジンと車体との振動伝達を抑えつつエンジンの相対変位を抑制し得るように構成される。本実施の形態では、エンジン側(図1右側、図示せず)に第1ブッシュ10が、車体側(図1左側、図示せず)に第2ブッシュ20が連結される。
【0015】
第1ブッシュ10は、連結部材30が連結される円筒状の外側取付部11と、その外側取付部11の内周側に位置しエンジン側(図示せず)に取り付けられる内側取付部12と、それら外側取付部11及び内側取付部12の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性体)から構成される防振基体13とを備えて構成される。
【0016】
図2に示すように、外側取付部11は鉄鋼材料から円筒状に構成され、内側取付部12はアルミニウム合金から筒状に構成される。内側取付部12は軸方向(図2上下方向)の中間部に、径方向に凸起する凸起部12aが形成されている。内側取付部12の中心に貫通形成されたボルト挿通孔にボルト(図示せず)を挿通し、そのボルトをエンジン側(パワーユニット)に締結することにより、内側取付部12がエンジン側に連結される。
【0017】
第2ブッシュ20は、連結部材30が連結される円筒状の外側取付部21と、その外側取付部21の内周側に位置し車体側(図示せず)に取り付けられる筒状の内側取付部22と、それら外側取付部21及び内側取付部22の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性体)から構成される防振基体23とを備えて構成されている。第2ブッシュ20は、内側取付部22の中心に貫通形成されたボルト挿通孔にボルト(図示せず)を挿通し、そのボルトを車体側に締結することにより、ボルトを介して車体側に連結される。
【0018】
連結部材30は、第1筒部材31及び第2筒部材32と、それら第1筒部材31及び第2筒部材32が両端に溶接固定されるブラケット部材33とを備えて構成される。第1筒部材31及び第2筒部材32は、第1ブッシュ10の外側取付部11及び第2ブッシュ20の外側取付部21がそれぞれ内嵌圧入される部材であり、鉄鋼材料から筒状に構成される。ブラケット部材33は、鉄鋼材料から円筒状に形成されており、その両端部に第1筒部材31及び第2筒部材32の外周面が溶接固定される。
【0019】
第1ブッシュ10の防振基体13は、一対のゴム脚部13aと、第1ストッパゴム部13bと、第2ストッパゴム部13cと、ゴム膜部13eとを主に備えて構成される。一対のゴム脚部13aは、外側取付部11と内側取付部12とを連結するための部位であり、一端が外側取付部11の内周に、他端が内側取付部12の外周にそれぞれ加硫接着により固着される。
【0020】
第1ストッパゴム部13b及び第2ストッパゴム部13cは、車体に対するエンジンの相対変位が軸方向(図1左右方向)へ大きくなった場合に、外側取付部11と内側取付部12との間で押圧挟持されてストッパ作用をなすための部位である。第1ストッパゴム部13b及び第2ストッパゴム部13cは、一対のゴム脚部13aの対向間において、内側取付部12及び凸起部12aの外周に加硫接着により固着される。第2ストッパゴム部13cは、軸方向端部に凹部13dが凹設される。凹部13dにより第2ストッパゴム部13cのばね定数を低下させ、第2ストッパゴム部13cの可撓性を向上させることができる。
【0021】
ゴム膜部13eは、外側取付部11の内周面に加硫接着される膜状の部位であり、車体に対するエンジンの相対変位が軸方向(図1左右方向)へ大きくなった場合に、外側取付部11と内側取付部12(第1ストッパゴム部13b及び第2ストッパゴム部13c)との間で押圧挟持されてストッパ作用をなす。
【0022】
第1ブッシュ10は、外側取付部11及び内側取付部12の軸方向(図1紙面垂直方向)に沿って防振基体13に空所14,15が凹設される。本実施の形態では、空所14,15は第1ブッシュ10に貫通形成される。空所14,15は、車両の加速走行時や減速走行時に外側取付部11及び内側取付部12が相対的に接近する方向に設けられる。防振基体13に空所14,15が形成されるので、第1ブッシュ10の動ばね定数を小さく設定できる。
【0023】
次に図2及び図3を参照して、第2ブッシュ20の詳細構成を説明する。図3図2のIII−III線における第2ブッシュ20の断面図である。第2ブッシュ20は、図2に示すように、筒状の外側取付部21と、外側取付部21の内周側に位置し円筒状に形成される内側取付部22と、外側取付部21及び内側取付部22の間に挿填されると共にゴム状弾性体から構成される防振基体23とを主に備えている。
【0024】
防振基体23は、内側取付部22の外周面に内周側が加硫接着され、軸方向両端側の外周が、短円筒状に形成された一対の内板21aの内周面にそれぞれ加硫接着される。防振基体23は、内板21aに挟まれた軸方向の中央部に、空洞部24が全周に亘って環状に形成される。内板21aは、外側取付部21の両端をかしめることにより、外側取付部21に固定される。これにより空洞部24は、防振基体23と外側取付部21との間で密閉状態とされる。
【0025】
空洞部24内には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。図3に示すように、外側取付部21には、粘性流体の注入孔および空気孔が形成されており、粘性流体が空洞部24内に充填された後、ブラインドリベット25により注入孔および空気孔が閉塞される。これにより空洞部24内に粘性流体が封入される。なお、粘性流体としては、1000cSt〜100000cStの動粘度を有する流体を適宜選択して用いることができる。
【0026】
内側取付部22は、内側取付部22の軸方向(図2上下方向)と直交する方向に延びる突出部22a,22bが一体に形成されている。突出部22a,22bは、板状に形成されると共に空洞部24内に突出して、空洞部24を軸方向の略半分の位置で区画する。突出部22a,22bは、平面視して全体として略十字状に形成され、突出部22aはブラケット部材33(連結部材30)の軸方向(図3左右方向)に位置し、突出部22bはブラケット部材33の軸方向と直交する方向(図3上下方向)に位置する。突出部22a,22bは、防振基体23と一体にゴム膜状に加硫成形されたストッパゴム部23a,23bが設けられる。ストッパゴム部23a,23bは、内側取付部22及び外側取付部21の過度の変位を規制するための部位である。
【0027】
図3に示すように、突出部22a及びストッパゴム部23aは、外側取付部21の内周面に先端が近接配置され、外側取付部21の内周面と所定の間隔が設けられる。また、突出部22b及びストッパゴム部23bは、突出先端が外側取付部21の内周面に接触して配置される。外側取付部21及び内側取付部22が、ブラケット部材33の軸方向(図3左右方向)に相対変位する場合には、ストッパゴム部23aが外側取付部21の内周面に接触しない間(隙間が維持される間)は、高減衰力が得られると共に第2ブラケット20の動ばね定数を小さくできる。これに対し、ストッパゴム部23aが外側取付部21の内周面に押し付けられると、突出部22aを覆うストッパゴム部23aの径方向厚さは小さいので、第2ブラケット20の動ばね定数が上昇する。
【0028】
また、第2ブッシュ20によれば、内側取付部22と外側取付部21とが相対的に変位すると、突出部22a,22bの移動に伴い、空洞部24内の粘性流体が突出部22a,22bにより撹拌される。その結果、粘性流体が突出部22a,22bの周囲の間隙を通して移動しようとする。そのときの抵抗によって高い減衰力が発生する。このときに生じる抵抗は、振動数に対して特定のピークをもたないので、広い振動数域において減衰力の増大を図ることができる。
【0029】
次に図4から図6を参照して、防振装置1の動的ばね特性について説明する。まず、図4を参照して防振装置1の等価回路について説明する。図4は防振装置1の等価回路を示す図である。図4に示すように防振装置1は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が連結部材30によって連結され、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20がパワーユニットP及び車体Bにそれぞれ結合される。
【0030】
ここで、第1ブッシュ10の動ばね定数をKa、減衰係数をCaとし、第2ブッシュ20の動ばね定数をKb、減衰係数をCbとし、連結部材30の質量をMとする。車両の走行時に通常生じるパワーユニットPの揺動等による10〜20Hz程度の低周波域、及び、連結部材30を質量成分とする剛体共振が問題となる100Hz付近以上の比較的高い振動数域(高周波域)において、第1ブッシュ10の動ばね定数Kaは、第2ブッシュ20の動ばね定数Kbより小さく設定されており(Ka<Kb)、第1ブッシュ10の減衰係数Caは、第2ブッシュ20の減衰係数Cbより小さく設定されている(Ca<Cb)。
【0031】
低周波域の振動が防振装置1に入力される場合には、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20は直列ばねの関係となる。第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が直列ばねの関係にある防振装置1の動ばね定数Kは、K=Ka・Kb/(Ka+Kb)となる。第1ブッシュ10の動ばね定数Kaは第2ブッシュ20の動ばね定数Kbより小さく設定されているので(Ka<Kb)、上記の式から、防振装置1の動ばね定数Kを第1ブッシュ10の動ばね定数Kaより小さくできる。その結果、低周波域における防振装置1の低ばね特性を確保できる。なお、低周波域の振動が入力される場合には、防振装置1の動ばね定数Kは第1ブッシュ10に依存するので、防振装置1は、第2ブッシュ20の影響を受けることなく低ばね特性を確保できる。
【0032】
また、剛体共振が問題となる高周波域の振動が入力される場合には、低周波域の振動が入力される場合と比較して、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20の防振基体13,23が変位し難くなる。よって、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20は、連結部材30を質量成分とする並列ばねの関係となる。第2ブッシュ20は、減衰係数Cbが、第1ブッシュ10の減衰係数Caより大きく設定されるので(Ca<Cb)、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が並列ばねの関係にある防振装置1の減衰力を、第2ブッシュ20に依存させることができる。第2ブッシュ20によって防振装置1を高減衰にできるので、剛体共振を低減できる。
【0033】
また、第2ブッシュ20は振動数に対して特定のピークをもたないので、広い振動数域において減衰力の増大を図ることができる。第2ブッシュ20の減衰が支配的となる振動数域を拡大できるので、広い周波数領域において防振装置1の剛体共振を低減できる。
【0034】
次に図5及び図6を参照して、防振装置1の動的ばね特性について説明する。図5は高周波域における防振装置1の動的ばね特性を示す図であり、図6は低周波域における防振装置1の動的ばね特性を示す図である。図5及び図6の実測結果は、連結部材30をマス(質量成分)とし、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20をばねとするマス−バネ系の上下方向での動ばね定数(絶対ばね定数)を測定したものである。即ち、図5には、防振装置1における第2ブッシュ20の内側取付部22を、1Gの加速度で加振した場合において、第1ブッシュ10の内側取付部12の動ばね定数(絶対ばね定数)を測定した結果が示されている。また、図6には、防振装置1における第2ブッシュ20の内側取付部22を、±0.5mmの振幅で加振した場合において、第1ブッシュ10の内側取付部12の動ばね定数を測定した結果が示されている。
【0035】
なお、図5及び図6において、防振装置1(実施例)の動的ばね特性を実線で示し、第2ブッシュ20の空洞部24から粘性流体(ここではシリコンオイル)を抜いた防振装置(比較例)の動的ばね特性を破線で示す。比較例における防振装置は、第2ブッシュ20の空洞部24に粘性流体が充填されていないので、第2ブッシュ20の減衰係数Cbは、第1ブッシュ10の減衰係数Caより小さい(Ca>Cb)。実施例も比較例も第1ブッシュ10は同様に構成されているので、比較例において、第1ブッシュ10の動ばね定数Kaが第2ブッシュ20の動ばね定数Kbより小さい点(Ka<Kb)は、実施例と同じである。
【0036】
図5に示すように比較例における防振装置(破線)は、高周波域(100Hz付近〜)、特に約500Hz付近および約1300Hz付近で著しい高動ばね化が生じている。一方、実施例における防振装置(実線)は、約500Hz付近および約1300Hz付近において、比較例と比べて低動ばね効果が得られることが明らかである。これにより、実施例によれば、連結部材30を質量成分とすると共に第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20をばね成分とするマス−バネ系における剛体共振を低減できることが明白である。
【0037】
また、図6に示すように実施例における防振装置(実線)は、低周波域(〜100Hz付近)において、比較例における防振装置(破線)に対してわずかに低動ばね化を図ることができる。これにより、実施例によれば、低周波域における低ばね特性を確保できることが明らかである。以上のように、実施例によれば、低周波域における低ばね特性を確保しつつ剛体共振を低減できることが確認された。
【0038】
次に図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、軸方向が平行となるように第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が連結部材30に固定される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が軸方向を直交させて固定される場合について説明する。図7(a)は第2実施の形態における防振装置101の平面図であり、図7(b)は防振装置101の側面図である。
【0039】
なお、第2実施の形態における防振装置101は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が固定される方向以外は第1実施の形態で説明した防振装置1と同一である。よって、第1実施の形態と同一の部分に同一の符号を付して、以下の説明を省略する。第2実施の形態における防振装置101も、第1実施の形態で説明した防振装置1と同様の効果を実現できる。
【0040】
次に図8及び図9を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、第1ブッシュ10がロッド状(管体構造)に形成される連結部材30の第1筒部材31に内嵌圧入され、第2ブッシュ20と連結される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、連結部材230が上下に分割された板金具231,234により形成されると共に、その板金具231,234に第1ブッシュ210が挟持される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0041】
図8は第3実施の形態における防振装置201の平面図であり、図9(a)は図8のIXa−IXa線における防振装置201の断面図であり、図9(b)は図8のIXb−IXb線における防振装置201の断面図であり、図9(c)は図8のIXc−IXc線における防振装置201の断面図である。
【0042】
図8に示すように、防振装置201は、第1ブッシュ210及び第2ブッシュ20と、それらを互いに連結する連結部材230とを備えて構成される。本実施の形態では、第1ブッシュ210が車体側(図示せず)に連結され、第2ブッシュ20がエンジン側(図示せず)に連結される。連結部材230は、平面視して略同一形状とされると共に上下に分割された板金具231,234(図9参照)が、板厚方向に重ね合わせて固着された分割構造体である。板金具231,234は、平面視して長円状に形成された薄肉の板状体であり、周縁に形成された係止片233,236によって両者がかしめ固定される。
【0043】
板金具231,234の長手方向両端部に、略円形の第1開口部231a1,234a1(図9(b)参照)及び第2開口部231b1,234b1(図9(a)参照)が形成される。第1開口部231a1,234a1及び第2開口部231b1,234b1は、板金具231,234を構成する板状体の水平面に対して相反する方向に筒状に折曲して形成される立上板部231a,231b,234a,234bの内壁部である。立上板部231a,234aは第1ブッシュ210の外側取付部を構成する部位であり、第2開口部231b,234bは第2ブッシュ20(外側取付部21)が内嵌圧入される部位である。板金具231,234は、第1開口部231a,234aの対向位置(図8上下方向)に、上下方向(図8紙面垂直方向)に膨出した膨出部232,235(図9(c)参照)が形成される。
【0044】
第1ブッシュ210は、板金具231,234の一部として筒状に形成された立上板部231a,234a(外側取付部)と、立上板部231a,234aの内側に位置する内側取付部212と、板金具231,234及び内側取付部212の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性体)から構成される防振基体213とを備えて構成される。防振基体213は、内側取付部212の外周に加硫接着により固着されると共に、板金具231,234に形成された膨出部232,235に押圧挟持される。
【0045】
防振基体213は、板金具231,234に対して内側取付部212を弾性支持するための部材であり、板金具231,234の長手方向と直交する対向位置に形成された膨出部232,235に押圧挟持され、その対向間に第1ストッパゴム部213a及び第2ストッパゴム部213bが形成される。第1ストッパゴム部213a及び第2ストッパゴム部213bは、エンジンの変位が軸方向(車両加速時または減速時のエンジン変位方向であって、図8において内側取付部212が板部材231に対して左右へ相対変位する方向)へ大きくなった場合に、内側取付部212と立上板部231a,234aとの間で押圧挟持されてストッパ作用をなすための部位である。
【0046】
膨出部232,235に押圧挟持された防振基体213は、内側取付部212の軸方向(図8紙面垂直方向)に沿って第1開口部231aとの間に空所214,215が凹設される。本実施の形態では、空所214,215は板金具231,234の板厚方向に貫通形成されると共に、板金具231,234の長手方向(軸方向)に沿って設けられる。
【0047】
以上のように構成される防振装置201によれば、第1ブッシュ210の動ばね定数は、第2ブッシュ20の動ばね定数より小さく設定されており、第1ブッシュ210の減衰係数は、第2ブッシュ20の減衰係数より小さく設定されている。このように設定されることで、第1実施の形態と同様に、低周波域における低ばね特性を確保しつつ剛体共振を低減できる。
【0048】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状(例えば各構成の数量や寸法、形状等)は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0049】
また、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。
【0050】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210がエンジン側に結合され、第2ブッシュ20が車体側に結合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記実施の形態とは逆配置にすることは当然可能である。即ち、エンジン側に配置される部材(エンジン、モータ、コンバータハウジング、トランスミッション等のパワーユニット側部材)に、別体のブラケット等の締結固定用の部材を介して第2ブッシュ20が結合される場合においても、上記実施の形態と同様の効果を実現できる。
【0051】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210に形成された空所14,15,214,215が第1ブッシュ10,210の軸方向に貫通形成される場合について説明した。しかし、必ずしも空所14,15,214,215は軸方向に貫通する必要はなく、軸方向の一部に空洞状に形成されていれば良い。この場合も、空所によって防振基体13,213を低動ばね化できるからである。なお、第1ブッシュ10,210に空所14,15,214,215を設けて低動ばね化する代わりに、防振基体13,213を構成するゴム状弾性体の材質を変更して低動ばね化することは当然可能である。
【0052】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210の防振基体13,213が内側取付部12,212に加硫接着される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これらの技術を、防振基体13,213を内側取付部21,212に非接着で保持させた防振装置に適用することは当然可能である。
【0053】
上記各実施の形態では、第2ブッシュ20は、内側取付部22の軸方向と交差する方向に延びる突出部22aを備え、外側取付部21と内側取付部22との相対変位によって突出部22aにより粘性流体を撹拌する場合について説明した。しかし、粘性流体を撹拌するための撹拌手段を、内側取付部22から突出する突出部22aに限定するものではない。外側取付部21と内側取付部22との相対変位によって、空洞部24に封入された粘性流体を撹拌可能な手段であれば、他の撹拌手段を採用することは当然可能である。他の撹拌手段としては、例えば、外側取付部21、内側取付部22又は防振基体23のいずれかに連結されて空洞部24側(空洞部24内)に配置された邪魔板、翼、オリフィス等が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
1,101,201 防振装置
10,210 第1ブッシュ
12,212 内側取付部
13,213 防振基体
14,15,214,215 空所
20 第2ブッシュ
22 内側取付部
23 防振基体
24 空洞部
30,230 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9