【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年度 建築・住宅技術アイデアコンペ(第10回)2013年2月22日(金)13:00〜18:00 晴海トリトンスクエアオフィスタワーZ棟4階フォーラム室
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを設けるとともに、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ少なくとも2本の接続用ワイヤーを設けて前記ワイヤーの両端部を海底に埋設された基礎に接続することにより、海中に前記ワイヤーを海流に対して略直交するように張設し、
前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、
前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、
前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流に対向するように海流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、
前記接続部は、前記ワイヤーに固定された固定リングと、該固定リングに嵌合されるとともに固定リングに対して回転可能になっている第1可動リングとを備え、前記第1可動リングが前記固定リングに対して回転することにより前記発電ユニットは前記ワイヤーの軸線を中心として揺動することを特徴とする海流発電装置。
前記ワイヤーの両端部にそれぞれ設けられた2本の接続用ワイヤーは、海流の方向と反対の方向に延びて前記ワイヤーの端部を海底の基礎に接続する接続用ワイヤーと、海流と直交する方向に延びて前記ワイヤーの端部を海底の基礎に接続する接続用ワイヤーとからなることを特徴とする請求項1または2に記載の海流発電装置。
前記接続部は、前記第1可動リングに連結されるとともに前記ワイヤーの軸線に対して直交して配置された固定ピンと、該固定ピンに嵌合されるとともに固定ピンに対して回転可能になっている第2可動リングとを備え、前記第2可動リングが前記固定ピンに対して回転することにより前記回転翼の軸心が海流と平行になるように調芯可能であることを特徴とする請求項1に記載の海流発電装置。
前記各発電ユニットで発電された電力を集電する浮体式変電設備を設け、該浮体式変電設備を介して大容量の電力を消費地に海底送電するようにしたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の海流発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図17は、実用化に向けて研究・開発段階にある水中浮遊体方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
図17に示す海流発電装置は、水中浮遊体方式の発電装置100を1本のワイヤー101で海底SBから係留し、海中に浮遊させるようにしている。発電装置100は、対向回転する双発式のタービン102,102を用いている。
しかしながら、
図17に示す水中浮遊体方式の海流発電装置は、海底に設置された巨大な重り103から、1本のワイヤー101で発電装置100を係留し、発電装置100はフロート調整機能を使っているため、フロートバランスが難しく且つ電気制御によるフロート機能がついていると想定されることから、万が一故障した時に海底に激突するか或いは海上に浮かびあがり船舶と衝突する恐れがある。また、双発式のタービン102,102の一方が外的要因・内的要因を問わず停止してしまった場合には、打ち消す回転力がなくなり、大空に舞う凧のように海底に激突して破壊してしまう可能性がある。海流に乱流が発生した場合にも似たような現象がおこる可能性がある。さらに、発電装置を係留するワイヤーが長く1本のため、巨大な発電装置は僅かな潮の密度及び速度の影響で大きく蛇行する恐れがある。
【0005】
図18は、実用化に向けて研究・開発段階にある海底固定方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
図18に示す海流発電装置は、発電装置110を海底SBに固定された支持脚111で支持するようにしている。発電装置110は1個のタービン112を備えている。
図18に示す海流発電装置は、海底に巨大な扇風機を置いたような構造であるが、水流抵抗の転倒モーメント荷重に対して、海底の固定方法が問題となる。巨大な風車は基礎工事が大掛かりになっていることから、
図18に示す海流発電装置においても、実施にあたって、大掛かりな基礎工事が想定され、難工事が予想され、コストも増大すると考えられる。発電装置一基に対し、基礎工事が3ヶ所必要になる構造は、コスト・工事難易度の両面から、実用化への道のりは遠いと考えられる。また、海底で巨大な発電装置を水平に設置する工法は今後十分な検討が必要と思われる。さらに、
図18に示す海流発電装置は、
図17に示す海流発電装置と同様に一基の規模が大きく、故障した時のダメージが大きい。また、メンテナンスの際に、巨大な発電装置全体を海上に引き上げることは、アンカー部の離脱等、簡単な作業では無い。
【0006】
図19は、特許公報1(特開2002−257023号公報)において提案されている潮流発電装置を示す斜視図である。
図19に示す潮流発電装置は、海底SBに設置された複数の中空な支持棹121に、海中の上層部の潮流を受けて回転するスクリュー羽根125および下層部の潮流を受けて回転するスクリュー羽根125を、側方に連通突出した中空な枝棹126を介して装着し、スクリュー羽根125の回転力を、支持棹121及び枝棹126内に組み込んだ回転力伝達材130により、支持棹121の上端の海面上に設けられたステーション122内に設置した発電機123に伝達するように構成している。
【0007】
しかしながら、
図19に示す潮流発電装置は、構造物が海底から海上まで広範囲であり、海底の深さに対応する為に、支持棹に伸縮機能まで持たせているが、海底が深くなると、海流抵抗も大きくなり、発電装置に比較して、過大な設備となってしまう。発電機を内部に設置したステーションが海面上に出ているため、海上の厳しい気象条件に対応しなくてはならない。また、海流の力をチェーンにより一ヶ所に集中させ海上の発電機へと導いていて、耐久性に問題がある。したがって、特許文献1で提案されている潮流発電装置は、機構的にもコスト的にも実用化の可能性は低いものと考えられる。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、設備が簡素であり、かつ水中での設置工事および保守が容易であり、出力あたりの建設費および運営費が廉価であり、海水の流れのエネルギーを効率よく電力に変換することのできる海流発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の海流発電装置
の一態様は、ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを設けるとともに、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ少なくとも2本の接続用ワイヤーを設けて前記ワイヤーの両端部を海底に埋設された基礎に接続することにより、海中に前記ワイヤーを海流に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流に対向するように海流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であ
り、前記接続部は、前記ワイヤーに固定された固定リングと、該固定リングに嵌合されるとともに固定リングに対して回転可能になっている第1可動リングとを備え、前記第1可動リングが前記固定リングに対して回転することにより前記発電ユニットは前記ワイヤーの軸線を中心として揺動することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを設けるとともに、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ少なくとも2本の接続用ワイヤーを設けて前記ワイヤーの両端部を海底に埋設された基礎に接続することにより、海中に前記ワイヤーを海流に対して略直交するように張設することができる。したがって、海中にワイヤーを張設するに際して、ワイヤーの両端を支柱(立柱)で支持する方式を採用しなくて済み、海底が斜めの場合でもワイヤーを容易に水平に張ることができ、海中で施工が困難な柱の替わりに施工が容易なフロートを用いるため、コスト・工事容易性の両面から実用化が容易である。また、水深が深くても海面からの距離をワイヤーの長さの調節のみで一定に保つことができる。
本発明によれば、発電ユニットは、海流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができる。これにより、回転翼の前面を海流に対向させることができる。
本発明によれば、海中にワイヤーを張設し、ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げるだけで所望の発電能力を有した海流発電装置を構築することができる。
本発明によれば、発電ユニットはワイヤーの軸線を中心として回転する第1可動リングを介してワイヤーに吊り下げられているため、発電ユニットは海流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができる。
本発明の海流発電装置の他の態様は、ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを設けるとともに、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ少なくとも2本の接続用ワイヤーを設けて前記ワイヤーの両端部を海底に埋設された基礎に接続することにより、海中に前記ワイヤーを海流に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流に対向するように海流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、前記接続部は、前記ワイヤーに固定されるとともに外周面が球面になっている固定リングと、前記固定リングに嵌合されるとともに内周面が球面になっている可動リングとを備えた球面軸受からなることを特徴とする。
本発明によれば、固定リングの外周面と可動リングの内周面は、ワイヤーの軸心にある支点を中心とした球面に形成されて球面の滑り接触になっており、可動リングは支点を中心として固定リングに対して全方向(360°)に回転可能となっている。したがって、発電ユニットは、海流の力によりワイヤーの軸心にある支点を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともに前記支点を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができ、また、ワイヤーが海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼のシャフトの軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、発電ユニットを流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ設けられた2本の接続用ワイヤーは、海流の方向と反対の方向に延びて前記ワイヤーの端部を海底の基礎に接続する接続用ワイヤーと、海流と直交する方向に延びて前記ワイヤーの端部を海底の基礎に接続する接続用ワイヤーとからなることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ設けられたフロートは、前記ワイヤーの両端を垂直方向に浮上させることを特徴とする。
一実施形態によれば、前記基礎は、母船と分離されて海中で作業可能な掘削ロボットを用いて施工す
る。
上記一実施形態によれば、母船となる小型作業船からワイヤー等によって小型のセパレート型掘削ロボットを海底に降ろし、セパレート型掘削ロボットにより海底掘削を行うことができる。本発明のセパレート型掘削工法によれば、母船は補助船であり、掘削は母船と構造的に縁を切ったセパレート型掘削ロボットが行い、一隻の母船(小型作業船)に対し掘削ロボットは複数台設置可能である。
【0013】
一実施形態によれば、前記ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを取り付けた後に、前記フロートに浮上剤を注入して前記フロートおよび前記ワイヤーを浮上させ
る。
上記一実施形態によれば、ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを取り付けた後に、フロートに発泡ビーズ等の浮上剤を注入することにより、フロートはワイヤーとともに浮上し、ワイヤーに張力を持たせることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットは、海水の比重に近づけるためにフロートを設けて浮力調整を施していることを特徴とする。
本発明によれば、回転翼の外周縁を囲むように設置された円筒状部材の内部空間や該円筒状部材に連結されたパイプの内部空間に発泡材を充填するなどの手段によりフロートを形成し、該フロートにより発電ユニットの浮力調整を行って発電ユニットを海水の比重に近づけるようにしている。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットの海水中比重は0.9〜1.1であることを特徴とする。
本発明によれば、海水の比重(≒1)を基準として±0.1の範囲になるように、発電ユニットの海水中比重を設定することにより、発電ユニットを海流の力により迅速に且つ確実に揺動させることができる。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記接続部は、前記第1可動リングに連結されるとともに前記ワイヤーの軸線に対して直交して配置された固定ピンと、該固定ピンに嵌合されるとともに固定ピンに対して回転可能になっている第2可動リングとを備え、前記第2可動リングが前記固定ピンに対して回転することにより前記回転翼の軸心が海流と平行になるように調芯可能であることを特徴とする。
本発明によれば、発電ユニットはワイヤーに対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として回転する第2可動リングを介してワイヤーに吊り下げられているため、発電ユニットはワイヤーに対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、ワイヤーが海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼のシャフトの軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、発電ユニットを流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットは、双方向に流れる潮流に対して対応可能なように、前記ワイヤーの軸線を中心として180°揺動可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットをメンテナンスする際、前記発電ユニットを前記ワイヤーとの接続部で分離可能であることを特徴とする。
本発明によれば、発電ユニットをメンテナンスする際に、発電ユニットを前記ワイヤーとの接続部で分離させてメンテナンス作業を行い、メンテナンス作業の終了後に発電ユニットを接続部を介してワイヤーに接続すれば、発電ユニットは海流の力により揺動して、回転翼の前面が海流に対向するようになる。
【0020】
本発明の好ましい態様は、前記回転翼と前記発電機とからなる前記発電装置を複数個連結して円形状又は多角形状に一体化して一つのユニットを形成したことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記各発電ユニットで発電された電力を集電する浮体式変電設備を設け、該浮体式変電設備を介して大容量の電力を消費地に海底送電するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)ワイヤーの両端部にそれぞれフロートを設けるとともに、前記ワイヤーの両端部にそれぞれ少なくとも2本の接続用ワイヤーを設けて前記ワイヤーの両端部を海底に埋設された基礎に接続することにより、海中に前記ワイヤーを海流に対して略直交するように張設することができる。したがって、海中にワイヤーを張設するに際して、ワイヤーの両端を支柱(立柱)で支持する方式を採用しなくて済み、海底が斜めの場合でもワイヤーを容易に水平に張ることができ、海中で施工が困難な柱の替わりに施工が容易なフロートを用いるため、コスト・工事容易性の両面から実用化が容易である。また、水深が深くても海面からの距離をワイヤーの長さの調節のみで一定に保つことができる。
(2)発電ユニットは、海流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができるため、回転翼の前面を海流に対向させることができる。また、発電ユニットは、海流の力によりワイヤーとの接続部分を中心として水平方向に揺動(スイング)することができるため、ワイヤーが海流抵抗を受けて撓んだ場合でも回転翼のシャフトの軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。したがって、発電装置を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
(3)海中にワイヤーを海流の方向に対して略直交するように張設し、ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置するだけで、海流発電装置を構築することができるため、設備がきわめて簡素であり、水中での設置工事および保守が容易であり、出力あたりの建設費および運営費が廉価である。
(4)発電ユニットの比重を海水の比重に近似させて発電ユニットを海流の力で浮遊させるようにした方式であるにも拘わらず、発電ユニットを海中に張設されたワイヤーに吊り下げて配置するだけで発電ユニットは海流の力により揺動して回転翼の前面が海流に対向するようになる。したがって、発電ユニットの姿勢制御や回転翼の方向制御などの電気制御は不要である。
(5)発電ユニットをメンテナンスする際、発電ユニットをワイヤーとの接続部で分離した後に、発電ユニットを海面上に引き上げてメンテナンスを行うことができる。メンテナンス後には発電ユニットを海面下に沈めてワイヤーとの接続部で接続するだけで、発電ユニットは海流の力で揺動して海流に対して正対する。したがって、メンテナンス作業がきわめて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の海流発電装置の構成例を示す図であり、海流発電装置の模式的正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の海流発電装置の構成例を示す図であり、
図2は海流発電装置の模式的平面図である。
【
図3】
図3は、発電ユニットを海流の方向Aから見た図であり、発電ユニットの正面図である。
【
図4】
図4は、発電ユニットの海流にそった断面図であり、発電ユニットの横断面図である。
【
図6】
図6は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、ワイヤー接続部の部分断面平面図である。
【
図7】
図7は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、ワイヤー接続部の斜視図である。
【
図8】
図8は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、
図7はワイヤー接続部の斜視図である。
【
図9】
図9は、発電ユニットのワイヤー接続部の他の実施形態を示す詳細図であり、ワイヤー接続部の断面図である。
【
図10】
図10は、発電ユニットの主要構成部材である複数の発電装置の重心位置により発電装置の姿勢が変化することを示す模式図である。
【
図11】
図11は、発電ユニットを脱着する場合の詳細を示す図であり、発電ユニットを脱着する際の発電ユニットと海水作業船を示す模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の海流発電装置を多数海中に設置する場合を示す図であり、模式的正面図である。
【
図13】
図13は、本発明の海流発電装置を多数海中に設置する場合を示す図であり、模式的平面図である。
【
図14】
図14(a),(b)は、海底に基礎を設置するための掘削工法を示す図であり、
図14(a)は在来の直接掘削工法を示す模式図であり、
図14(b)は本発明によるセパレート型掘削工法を示す模式図である。
【
図15】
図15は、発電ユニットを支持するためのワイヤーを緊張するためのフロートシステムを示す模式図である。
【
図16】
図16は、本発明の海流発電装置における集電・送電方法を示す模式図である。
【
図17】
図17は、実用化に向けて研究・開発段階にある水中浮遊体方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
【
図18】
図18は、実用化に向けて研究・開発段階にある海底固定方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
【
図19】
図19は、特許公報1(特開2002−257023号公報)において提案されている潮流発電装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る海流発電装置の実施形態を
図1乃至
図16を参照して説明する。
図1乃至
図16において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1および
図2は、本発明の海流発電装置の構成例を示す図であり、
図1は海流発電装置の模式的正面図、
図2は海流発電装置の模式的平面図である。
図1および
図2に示すように、海中には、略水平方向に延びるとともに設置海域の海流の方向Aに対して略直交する方向に延びるワイヤー1が設置されている。ワイヤー1の両端には、ワイヤー1の両端を垂直方向に浮上させるためのフロート2,2が固定されている。また、ワイヤー1の各端部には、ワイヤー1の端部を海底SBに埋設された基礎3に接続するための2本の接続用ワイヤー4A,4Bが設置されている。接続用ワイヤー4Aは、ワイヤー1の端部を海流の方向Aと反対の方向に引張するワイヤーであり、接続用ワイヤー4Bは、ワイヤー1の端部を海流の方向Aに対して直交する方向に引張するワイヤーである。
すなわち、ワイヤー1は、両端に設けられた2個のフロート2と4本の接続用ワイヤー4A,4Bとにより、海水中で水平方向に張設されるとともに設置海域の海流の方向Aに対して略直交する方向に張設されている。ワイヤー1には、所定間隔をおいて多数の発電ユニット10が取り付けられている。ワイヤー1には、予め張力が掛けられているため、ワイヤー1が海流抵抗を受けて大きく撓むようなことはなく、発電ユニット10とワイヤー1とが干渉することがない。
【0024】
図3は、発電ユニット10を海流の方向Aから見た図であり、発電ユニット10の正面図である。
図4は、発電ユニット10の海流にそった断面図であり、発電ユニット10の横断面図である。
図3および
図4に示すように、発電ユニット10は、回転翼(プロペラ)11と発電機12とからなる発電装置13を複数個連結することにより構成されている。すなわち、6個の発電装置13は、互いに隣接する部分をジョイントJで接続している。また、6個の発電装置13の中央には組立用のリングRが設けられている。6個の発電装置13は、組立用のリングRの周りに配置されている。図示の実施形態においては、発電ユニット10は、6個の発電装置13を円形状に配置して相隣接する発電装置13を連結して構成されている。このように、複数の発電装置13を連結して円形状又は多角形状に一体化して一つのユニットを形成する。発電装置13は、発電ユニット10の全体のバランスをとるためには偶数であることが好ましい。また、左右に対をなす2つの発電装置13は、
図3に示すように、回転翼11が互いに反対方向に回転するように構成されており、力のバランスをとって安定性の向上を図っている。発電ユニット10は中心部にワイヤー1と接続するためのワイヤー接続部20を備えており、ワイヤー接続部20はワイヤー1に対して回転可能になっており、発電ユニット10はワイヤー接続部20によってワイヤー1に吊り下げられている。そして、ワイヤー接続部20と各ジョイントJとは棒状のアーム14により連結されている。
【0025】
上述のように構成することにより、発電ユニット10は、海流の力によりワイヤー1を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)できるようになっており、
図4の実線で示すように海流の方向が右方向である場合には回転翼11の前面11fが海流に対向することができ、海流の方向が左方向である場合には
図4の点線で示すように回転翼11の前面11fが海流に対向することができる。
【0026】
図5は、発電装置13の詳細図である。
図5に示すように、回転翼11の外周縁を囲むように円筒状部材15が設置されている。円筒状部材15の外周側は均一な外径であるのに対し、円筒状部材15の内周側は入口側から中間部に向かって内径が次第に小さくなり、中間部で内径が均一になり、中間部から出口側に向かって内径が次第に大きくなっている。このように構成された円筒状部材15により、海流は加速された後に回転翼11に流入するため、海流から回転翼11に大きな回転トルクを付与することができる。円筒状部材15は、下地材がメッキ鋼板からなり、表層材がFRP等の防水を施したものからなり、内部には補強材15aが設けられている。また、円筒状部材15の中空部には発泡ウレタン等の発泡材が注入されている。このように、円筒状部材15の中空部は発電ユニット10の浮力調整のためのフロートとして機能する。
【0027】
一方、回転翼11を支持するシャフト16は固定リング17により回転可能に支持されており、固定リング17と円筒状部材15との間には複数の棒状の連結部材18が設けられている。シャフト16には発電機12が連結されている。複数の連結部材18は、回転翼11の直上流に配置されている。
【0028】
図6乃至
図8はワイヤー1と発電ユニット10のワイヤー接続部20の詳細図であり、
図6はワイヤー接続部20の部分断面平面図、
図7はワイヤー接続部20の斜視図、
図8は
図6のVIII−VIII線矢視図である。
図6乃至
図8に示すように、ワイヤー接続部20は、ワイヤー1に固定された固定リング21と、固定リング21に嵌合されるとともに固定リング21に対して回転可能になっている第1可動リング22と、第1可動リング22に溶接等によって固定された矩形状の第1プレート23とを備えている。第1プレート23にはボルト・ナットにより矩形状の第2プレート24が固定されている。矩形状の第2プレート24の両側端部には概略三角形状の平板からなる支持部材25,25が立設されており、これら支持部材25,25間に固定ピン26が設けられている。固定ピン26には第2可動リング27が嵌合されており、第2可動リング27は固定ピン26に対して回転可能になっている。そして、第2可動リング27には複数の棒状のアーム14が固定されており、各アーム14の先端に発電装置13が支持されている(
図3および
図4参照)。
【0029】
上述のように構成することにより、6個の発電装置13は、ワイヤー1の軸線を中心として回転する第1可動リング22とワイヤー1に対して直交して配置された固定ピン26の軸線を中心として回転する第2可動リング27を介してワイヤー1に吊り下げられていることになる。したがって、6個の発電装置13は、海流の力によりワイヤー1の軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともにワイヤー1に対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼11の前面11fを潮流に対向させることができ、また、ワイヤー1が海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼11のシャフト16の軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、6個の発電装置13を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0030】
図9は、発電ユニットのワイヤー接続部の他の実施形態を示す詳細図であり、ワイヤー接続部の部分断面斜視図である。
図9に示すように、ワイヤー接続部20は、ワイヤー1に固定されるとともに外周面が球面になっている固定リング31と、固定リング31に嵌合されるとともに内周面が球面になっている可動リング32とを備えた球面軸受から構成されている。そして、可動リング32には複数の棒状アーム14が固定されており、各アーム14の先端に発電装置13が支持されている(
図3および
図4参照)。
【0031】
図9に示すように構成することにより、固定リング31の外周面と可動リング32の内周面とは、ワイヤー1の軸心にある支点Oを中心とした球面に形成されて球面の滑り接触になっており、可動リング32は、支点Oを中心として固定リング31に対して全方向(360°)に回転可能となっている。したがって、6個の発電装置13は、海流の力によりワイヤー1の軸心にある支点Oを中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともに支点Oを中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼11の前面11fを潮流に対向させることができ、また、ワイヤー1が海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼11のシャフト16の軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、6個の発電装置13を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の発電ユニット10の浮力調整について説明する。本発明の発電ユニット10は、海水の比重に近似させるためにフロートを設けて浮力調整を施している。すなわち、回転翼11の外周縁を囲むように設置された円筒状部材15の内部空間や円筒状部材15に連結されたパイプ19の内部空間に発泡ウレタン等の発泡材を充填するなどの手段によりフロートを形成し、該フロートにより発電ユニット10の浮力調整を行うことにより発電ユニット10を海水の比重に近づけるようにしている。
本発明では、発電ユニット10の海水中比重は、0.9〜1.1に設定している。すなわち、海水の比重(≒1)を基準として±0.1の範囲になるように、発電ユニット10の海水中比重を設定することにより、発電ユニット10を海流の力により迅速に且つ確実に揺動させることができるようにしている。発電ユニット10の海水中比重を0.9〜1.1に設定する理由は、以下のとおりである。
1つの発電ユニットの空中重量を100Wとして鉄の塊と仮定すると、水中重量は約78.2Wとなる。このユニットを海水の比重(≒1)と同一にする為には78.2Wの浮力装置(フロート)が必要となる。海流の速度により、1つのユニットが受ける力をそれぞれの流速に対して大凡下記の荷重が掛かる。
2ノット時 20W
3ノット時 45W
4ノット時 80W
ここで1ノットは0.5144m/secである。
ユニットの海水中比重が1となれば最大効率の発電量が得られるが、ユニットの海水中比重が1からずれることで発電効率は低下する。従って、ある程度の範囲で浮力を制御する必要があり、ユニットの水流に対する最大角度を潮流の発電効率を考慮して6°以内に設定する。
流速2ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±2.0W=80.2W又は76.2Wとし、比率にすると100±2.55%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.025となる。
流速3ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±4.5W=82.7W又は73.7Wとし、比率にすると100±5.82%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.058となる。
流速4ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±8.0W=86.2W又は70.2Wとし、比率にすると100±10.23%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.102となる。
以上より、発電ユニットの海水中比重を0.9〜1.1に設定している。そして、海流の速度に応じて、発電ユニットの海水中比重を0.95〜1.05や0.98〜1.02に設定してもよい。
【0033】
本発明の発電ユニット10においては、発電ユニット10の全体の比重を海水の比重に近似させることに加えて、フロートのサイズ、形状および位置を最適化することにより、発電ユニット10の主要構成部材である複数(本実施形態では6個)の発電装置13の重心位置が最適な位置になるようにしている。
図10は、発電ユニット10の主要構成部材である複数の発電装置13の重心位置により発電装置13の姿勢が変化することを示す模式図である。
図10において右側の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー1から近い場合を示し、図示するように発電装置のワイヤー1から遠い部分が浮き上がって発電装置が海流に対して傾いてしまう。
図10において中央の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー1から遠い場合を示し、図示するように発電装置のワイヤー1から遠い部分が沈み込んで発電装置が海流に対して傾いてしまう。
図10において左側の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー1から最適な位置にある場合を示し、図示するように発電装置は海流に対して傾くことなく正対する。このように、本発明においては、フロートのサイズ、形状および位置を最適化することにより、
図10において左側の図に示すように発電装置が正規の姿勢を維持できるようにし、すなわち発電装置が海流に対して常に正対するようにし、常に最大の発電量を得るようにしている。
【0034】
図11は、発電ユニットを脱着する場合の詳細を示す図であり、発電ユニットを脱着する際の発電ユニットと海水作業船を示す模式図である。
図11に示すように、発電装置のメンテナンス時には、発電ユニット10を海流の方向に向けた発電状態のままで海中作業船40が発電ユニット10を保持する。この状態で海中作業船40がワイヤー接続部20をワイヤー接続側と発電装置側に分離し、発電装置側のユニットを母船上に引き上げる。そして、発電装置側ユニットのメンテナンス後の取付時には、発電装置側ユニットを発電状態の姿勢で海中作業船40により保持し、海中作業船40が発電装置側のユニットをワイヤー接続側ユニットに固定し、ワイヤー接続部20を一体化して発電ユニット10を組み上げる。その後、海中作業船40から発電ユニット10を放せば、発電装置13が海流に対して正対する。
【0035】
図12および
図13は、本発明の海流発電装置を海中に多数設置する場合を示す図であり、
図12は模式的正面図、
図13は模式的平面図である。
図12および
図13に示すように、海中には、多数のワイヤー1が張設されている。各ワイヤー1の両端には、フロート2,2が固定されるとともに、4本の接続用ワイヤー4A,4Bが設けられており、各ワイヤー1は海水中で水平方向に張設されるとともに設置海域の海流の方向に対して略直交する方向に張設されている。各ワイヤー1の中間部にも、所定の間隔をおいてフロート2と接続用ワイヤー4Aとが設けられている。そして、各ワイヤー1には、多数の発電ユニット10が取り付けられている。このように、多数のワイヤー1を多列に張設し、ワイヤー1に多数の発電ユニット10を取り付けることにより、所望の発電能力を有するパワープラントを構築できる。
【0036】
図14(a),(b)は、海底に基礎3を設置するための掘削工法を示す図であり、
図14(a)は在来の直接掘削工法を示す模式図であり、
図14(b)は本発明によるセパレート型掘削工法を示す模式図である。
図14(a)に示す在来の直接掘削工法では、大型作業船41Aからドリルパイプ42を海底SBまで延ばし、ドリルパイプ42により海底掘削を行っている。
図14(a)に示すような在来の工法では、天候の影響を受けやすい、母船と基礎が一対一のため非効率である、水深及び流速の違いによりコスト・工期が変わる、母船が大型になる等の問題点があった。
図14(b)に示す本発明によるセパレート型掘削工法では、母船となる小型作業船41Bからワイヤー等によって小型のセパレート型掘削ロボット43を海底SBに降ろし、セパレート型掘削ロボット43により海底掘削を行う。なお、掘削ロボット43を海底SBの所定の作業位置に位置させるためには、海中作業船40で掘削ロボット43を運ぶようにすればよい。本発明のセパレート型掘削工法によれば、母船は補助船であり、掘削は母船と構造的に縁を切ったセパレート型掘削ロボットが行い、一隻の母船(小型作業船41B)に対し掘削ロボットは複数台設置可能である。
【0037】
図15は、発電ユニット10を支持するためのワイヤー1を緊張するためのフロートシステムを示す模式図である。
図15(a)に示すように、フロート2には、フロート2をワイヤー1の端部に固定するための固定用ワイヤー5が設けられている。フロート 2は海中作業船40により保持されて海底SBに運ばれる。このとき、フロート2は萎んでいて浮力は働かない。海底SBには、ワイヤー1とワイヤー4A,4Bとが一体化されている。ワイヤー4A,4Bの端部は基礎3に固定されている。
図15(b)に示すように、海中作業船40により運ばれたフロート2は、固定用ワイヤー5を介してワイヤー1の両端部にそれぞれ取り付けられる。フロート2をワイヤー1の両端部に取り付けた後に、海中作業船40からフロート2に発泡ビーズを注入し、フロート2を浮上させる。
図15(c)に示すように、フロート2への発泡ビーズ注入完了により、フロート2はワイヤー1とともに浮上し、ワイヤー1に張力を持たせるとともにワイヤー4A,4Bを緊張させる。そして、張力を持って水平に張設されたワイヤー1に複数の発電ユニット10を取り付ける。
【0038】
図16は、本発明の海流発電装置における集電・送電方法を示す模式図である。
図16に示すように、海流発電装置に近接して海面上には浮体式変電基地(浮体式変電設備)50が設置されている。各発電ユニット10で発電された電力は、ワイヤー1に沿って設置された送電線51を介して浮体式変電基地50に集電されるようになっている。浮体式変電基地50はセミサブ式浮体構造から構成されており、このセミサブ式浮体構造は台風等の気象に影響されにくくきわめて揺れに強いという特徴をもっている。浮体式変電基地50に集電された大容量の電力は海底送電線52を介して消費地へ送電される。
本発明の集電・送電方法によれば、発電電力を海底に這わすことなく集約して海上の変電基地へ運ぶことが容易である。また、浮体式変電基地50で発電した大容量の電力を消費地へ運ぶ送電が容易である。
【0039】
本発明の海流発電装置を潮流発電に適用するためには、ワイヤー1の各端部に2本の接続用ワイヤー4Aを潮流の方向に沿って互いに反対方向に張設する。すなわち、2本の接続用ワイヤー4Aをワイヤー1の端部を中心として180°離間した位置に対向するように配置すればよい。ワイヤー4Bは、
図1および
図2と同様に、潮流に対して直交する方向に張設する。
【0040】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。