特許第6063370号(P6063370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063370コンベヤベルト、ベルト構成部材及びベルト式搬送装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063370
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】コンベヤベルト、ベルト構成部材及びベルト式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/40 20060101AFI20170106BHJP
   B65G 17/08 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B65G17/40
   B65G17/08
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-221606(P2013-221606)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81198(P2015-81198A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(73)【特許権者】
【識別番号】506179929
【氏名又は名称】ツバキ山久チエイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 毅
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−085514(JP,U)
【文献】 特開平02−144314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/06
B65G 17/08
B65G 17/38
B65G 17/40
F16G 13/02
F16G 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベルト構成部材が隣り合う他のベルト構成部材とヒンジ部同士を回動自在な状態で連結することにより形成されたコンベヤベルトであって、
前記ベルト構成部材は
長尺状の基部と、
前記基部の長手方向と交差する方向の両側に延出する複数のヒンジ部と、
前記ヒンジ部間の凹部に他のベルト構成部材の前記ヒンジ部を挿入するとき、当該ヒンジ部に当接して前記凹部の底よりも手前の位置で当該ヒンジ部のそれ以上の挿入側への移動を規制する規制部とを有し、
前記規制部は、前記ヒンジ部が当接した状態において、双方の前記ヒンジ部の円形の孔がピンを挿入可能に合う位置に二つの前記ベルト構成部材を位置決めすることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記規制部は、前記ベルト構成部材の長手方向における少なくとも二位置で前記ヒンジ部と当接可能に少なくとも二つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記規制部は、全ての前記ヒンジ部の側面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記ベルト構成部材は、スプロケットの歯部と係合可能な噛合部を有し、
前記規制部は前記噛合部が前記歯部と係合する状態において前記スプロケットと接触しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
前記ベルト構成部材の前記基部には、スプロケットの歯部と係合可能な噛合部が設けられ、
前記規制部は、前記ヒンジ部の側壁において前記ピンが挿入される前記基部を挟んだ両側の各ヒンジ部の各孔を結ぶピッチライン以下の底部側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンベヤベルトを構成するベルト構成部材であって、
長尺状の基部と、
前記基部の長手方向と交差する方向における両側のうち一方側に延出する複数の第1ヒンジ部と、
前記基部の前記両側のうち他方側に延出する複数の第2ヒンジ部と、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンベヤベルトにおける前記規制部と、
を備えたことを特徴とするベルト構成部材。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンベヤベルトと、
無端状とされた前記コンベヤベルトが所定距離を離した二位置で巻き掛けられるとともに前記二位置のうち一方側の位置のものが動力源により駆動される複数のスプロケットと、
を備えたことを特徴とするベルト式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のベルト構成部材(例えばモジュール)が回動自在な状態で直列に連結されて構成されるモジュラチェーン等のコンベヤベルト、ベルト構成部材及びベルト式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モジュラチェーン等のコンベヤベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を用いて物品を搬送するベルト式搬送装置(以下、「搬送装置」ともいう。)が知られている(例えば特許文献1、2等)。こうした搬送装置のコンベヤベルト(例えばモジュラチェーン)は複数のベルト構成部材(モジュール)がヒンジ部を介して回動自在な状態で直列に連結されることで構成される。ベルト構成部材は連結方向の両側に突出する複数のヒンジ部を有する。両側のヒンジ部はそれぞれの突出位置がヒンジ配列方向に半ピッチずれている。隣同士のベルト構成部材を連結するときは双方のヒンジ部が互いに相手側のヒンジ部間の凹部に挿入される。そして、双方のヒンジ部の孔を揃えた状態で1本のピンを、その揃えた孔に挿通することで、隣同士のベルト構成部材はピンを中心に回動可能に連結される(例えば特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−18505号公報
【特許文献2】特開平11−286306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図26に示す隣同士のベルト構成部材70を回動自在に連結する組立工程において、基部71の両側に延出する第1ヒンジ部72と第2ヒンジ部73とのうち、連結するべき第1ヒンジ部72と第2ヒンジ部73とを、相手側のヒンジ部間の凹部に挿入する。このとき、図26に示すように、双方のヒンジ部72,73の孔72a,73a(ピン孔)がずれてしまう場合があった。これは、何らかの理由で、ヒンジ部72,73の凹部への挿入深さが凹部の深さよりも浅い位置で孔72a,73aが揃う構造になっているからである。このため、そのままでは孔72a,73aにピンが通らないので、作業者は双方の孔72a,73aを位置合わせしてから、ピンを孔72a,73aに挿入させる作業を行わなければならなかった。よって、この面倒な孔72a,73aの位置合わせ作業がコンベヤベルト組み立て時の作業効率の低下の原因になっていた。なお、ベルト構成部材には不図示のスプロケットの歯部と噛み合い可能な噛合部74が設けられている。
【0005】
なお、モジュラチェーン以外のコンベヤベルトでも、隣同士のベルト構成部材を双方のヒンジ部の孔にピンを挿通させて連結することで組み立てられるコンベヤベルトにおいては、同様の課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コンベヤベルトにおいて隣同士となる二つのベルト構成部材を各々のヒンジ部で連結する際にピンを挿入するべき双方のヒンジ部の孔を簡単に位置合わせすることができるコンベヤベルト、ベルト構成部材及びベルト式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するコンベヤベルトは、複数のベルト構成部材が隣り合う他のベルト構成部材とヒンジ部同士を回動自在な状態で連結することにより形成されたコンベヤベルトであって、前記ベルト構成部材は、長尺状の基部と、前記基部の長手方向と交差する方向の両側に延出する複数のヒンジ部と、前記ヒンジ部間の凹部に他のベルト構成部材の前記ヒンジ部を挿入するとき、前記凹部の底よりも手前の位置で当該ヒンジ部に当接して当該ヒンジ部のそれ以上の挿入側への移動を規制する規制部とを有し、前記規制部は、前記ヒンジ部が当接した状態において、双方の前記ヒンジ部の孔がピンを挿入可能に合う位置に二つのベルト構成部材を位置決めする。
【0008】
この構成によれば、ベルト構成部材を連結するために双方のヒンジ部を相手側のヒンジ間の凹部に挿入すると、ヒンジ部が凹部の底よりも手前の位置で規制部に当接してそれ以上の挿入側への移動が規制される。この結果、二つのベルト構成部材は双方のヒンジ部の孔がピンを挿入可能に合う位置に位置決めされる。よって、双方のヒンジ部の孔を位置合わせするために慎重な作業を余儀なくされることがないので、作業性が向上する。そして、その位置合わせされた孔にピンを挿入すればよい。
【0009】
上記コンベヤベルトにおいて、前記規制部は、前記ベルト構成部材の長手方向における少なくとも二位置で前記ヒンジ部と当接可能に少なくとも二つ設けられている。
この構成によれば、ヒンジ部がベルト構成部材の長手方向において少なくとも二箇所で少なくとも二つの規制部に当接するので、その当接時に双方のベルト構成部材は互いに平行な姿勢に保持される。例えば規制部が一つであると、当接時に双方のベルト構成部材が傾く虞があり、この場合、全ての孔のうち位置がずれる孔が発生する。しかし、ヒンジ部と規制部がベルト構成部材の長手方向において少なくとも二箇所で当接するので、双方のベルト構成部材の姿勢がその当接時に傾くことが回避され、連結されるべき複数のヒンジ部の全てにおいて孔の位置を合わせることができる。
【0010】
上記コンベヤベルトにおいて、前記規制部は、全ての前記ヒンジ部の側面に設けられている。
この構成によれば、ベルト構成部材を必要なベルト幅に合わせてその長手方向のいずれかの位置で切断しても、その切断して使用するベルト構成部材のヒンジ部の側面に必ず規制部が存在する。このため、ベルト構成部材をベルト幅に合わせてどこで切断しても、ヒンジ部と規制部との当接箇所で双方の孔を位置合わせすることができる。
【0011】
上記コンベヤベルトにおいて、前記ベルト構成部材は、スプロケットの歯部と係合可能な噛合部を有し、前記規制部は前記噛合部が前記歯部と係合する状態において前記スプロケットと接触しない位置に設けられている。
【0012】
この構成によれば、ベルト構成部材の噛合部がスプロケットの歯部と係合する状態において、規制部は歯部と接触しないので、スプロケットからベルト構成部材への動力の伝達を規制部が邪魔することがない。また、歯部との接触に起因する規制部の破損を回避し易い。
【0013】
上記コンベヤベルトにおいて、前記ベルト構成部材の前記基部には、スプロケットの歯部と係合可能な噛合部が設けられ、前記規制部は、前記ヒンジ部の側壁において前記ピンが挿入される前記基部を挟んだ両側の各ヒンジ部の各孔を結ぶピッチライン以下の底部側の位置に設けられている。
【0014】
この構成によれば、コンベヤベルトがバックベンドする際に規制部が邪魔にならないので、コンベヤベルトに大きなバックベンド角を確保できる。
上記課題を解決するベルト構成部材は、上記のコンベヤベルトを構成するベルト構成部材であって、長尺状の基部と、前記基部の長手方向と交差する方向における両側のうち一方側に延出する複数の第1ヒンジ部と、前記基部の前記両側のうち他方側に延出する複数の第2ヒンジ部と、上記のコンベヤベルトにおける前記規制部と、を備えている。
【0015】
この構成によれば、二つのベルト構成部材を連結する組立作業において、上記のコンベヤベルトと同様の作用効果を得ることができる。
上記課題を解決するベルト式搬送装置は、上記のコンベヤベルトと、無端状とされた前記コンベヤベルトが所定距離を離した二位置で巻き掛けられるとともに前記二位置のうち一方側の位置のものが動力源により駆動される複数のスプロケットと、を備えている。この構成によれば、上記のコンベヤベルトと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンベヤベルトにおいて隣同士となる二つのベルト構成部材を各々のヒンジ部で連結する際にピンを挿入するべき双方のヒンジ部の孔を簡単に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態のコンベヤベルトの一部を示す斜視図。
図2】コンベヤベルトの一部を示す平面図。
図3】コンベヤベルトの一部を示す分解斜視図。
図4】コンベヤベルト一部を示す側面図。
図5】ベルト構成部材がスプロケットに噛合した状態を示す側面図。
図6】ベルト式搬送装置を示す模式側面図。
図7】ベルト構成部材を示す平面図。
図8】ベルト構成部材を示す正面図。
図9】ベルト構成部材を示す底面図。
図10】ベルト構成部材の一部を示す平面図。
図11】(a)ベルト構成部材の側面図、(b)図10におけるA−A線断面図。
図12】組立工程において隣同士のベルト構成部材のヒンジ部の位置合わせ前の状態を示す側面図。
図13】隣同士のベルト構成部材のヒンジ部が位置合わせされた状態を示す側面図。
図14】(a)規制部を示す側面図、(b)隣同士のベルト構成部材を最大の角度にバックベンドさせた状態を示す側面図。
図15】第2実施形態のコンベヤベルトの一部を示す平面図。
図16図15におけるB−B線断面図。
図17】ベルト構成部材を示す平面図。
図18】ベルト構成部材を示す正面図。
図19】ベルト構成部材を示す底面図。
図20図17におけるC−C線断面図。
図21】組立工程において隣同士のベルト構成部材のヒンジ部の位置合わせ前の状態を示す側断面図。
図22】隣同士のベルト構成部材のヒンジ部が位置合わせされた状態を示す側断面図。
図23】隣同士のベルト構成部材を最大の角度でバックベンドさせた状態を示す側断面図。
図24】変形例の規制部を示す側面図。
図25】変形例において隣同士のベルト構成部材を最大の角度でバックベンドさせた状態を示す側面図。
図26】従来技術における隣同士のベルト構成部材が双方のヒンジ部がずれた状態に配置された側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のコンベヤベルト及びこれを装着したベルト式搬送装置について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図6に示すように、ベルト式搬送装置11は、帯状のコンベヤベルト12を周回させることでその上面となる物品搬送面12aに載置された物品Wを搬送方向Xに搬送する機能を有している。コンベヤベルト12は、一定幅で所定長さを有する無端状(環状)のモジュラチェーン(モジュール式コンベヤベルト)により構成される。コンベヤベルト12は本例ではプラスチック製である。
【0020】
ベルト式搬送装置11において、搬送方向Xに所定距離を離れた両側の位置には、一対の回転軸13がフレームに取着された軸受(いずれも図示せず)を介して回転可能な状態で支持されている。一対の回転軸13には、複数個ずつのスプロケット14がそれぞれ一体回転可能な状態でそれぞれ軸方向に所定の間隔を開けた位置に嵌着されている。各スプロケット14の外周には複数の歯部14aが一定ピッチで形成されている。コンベヤベルト12は噛合部(図4における係合凸部27)が歯部14aと噛み合う状態でスプロケット14に巻き掛けられている。
【0021】
図6に示すように、搬送方向X下流側(図6では右側)に位置する駆動側のスプロケット14の回転軸13には、不図示の動力伝達機構を介して動力源の一例であるモータ15が動力伝達可能な状態で連結されている。そのため、モータ15の駆動時に回転するスプロケット14の回転力が歯部14aとの噛み合いを介してコンベヤベルト12に伝達されることで、コンベヤベルト12は周回する。この周回によりコンベヤベルト12上の物品Wは搬送方向Xに搬送される。なお、モータ15を逆転駆動させることで、コンベヤベルト12は搬送方向Xと逆方向への周回も可能である。
【0022】
図6に示すように、コンベヤベルト12の下側には、コンベヤベルト12の垂れ下がりを支える複数のローラ16が配置されている。コンベヤベルト12はローラ16の円弧面に沿って屈曲できるように、スプロケット14に巻き掛けられた部分の屈曲方向と逆方向への屈曲(バックベンド)が可能になっている。
【0023】
次に図1図4等を参照してコンベヤベルト12の構成を説明する。コンベヤベルト12は、搬送方向Xに隣合う二つのベルト構成部材20を回動可能に連結する連結構造は、他の隣合うベルト構成部材間でも同じであるため、以下では図1図2に示す任意の隣合う二つのベルト構成部材20及びこれらの連結構造について説明する。また、図1に示すコンベヤベルト12のベルト幅方向Yにおいては、ベルト幅に必要な列数でベルト構成部材20がベルト幅方向Yに並べられるだけであるため、ここでは図1に示すようなベルト構成部材20の一列分の連結構造について説明する。
【0024】
図1に示すコンベヤベルト12を構成する任意の隣同士の二つのベルト構成部材20は、その長手方向y(ベルト幅方向Y)に沿って延びる長尺状の基部21と、その基部21の長手方向と交差する短手方向xの両側のうち一方側(図1では搬送方向Xの下流側)に延出する複数の第1ヒンジ部22と、他方側に延出する複数の第2ヒンジ部23とを有する。第1ヒンジ部22と第2ヒンジ部23はそれぞれベルト幅方向Y(長手方向y)に一定のピッチで配列されている。二つのベルト構成部材20は、図1図2に示す状態において、連結側の第1ヒンジ部22と第2ヒンジ部23とを、それぞれ相手側のヒンジ部間の凹部24に少し挿入する状態に配置されている。そして、この状態で位置合わせされた第1ヒンジ部22に形成された孔22a(ピン孔)と第2ヒンジ部23に形成された孔23a(ピン孔)(図3参照)とに共通のピン30を挿通することで、二つのベルト構成部材20はピン30を中心に回動自在に連結されている。なお、ピン30は、コンベヤベルト12のベルト幅に略等しい長さを有し、ベルト幅方向Yに配列された複数のベルト構成部材20に共通の1本が挿通される。
【0025】
本実施形態のコンベヤベルト12では、物品搬送面12aの開口部を大きくする目的や、バックベンドの半径を小さくする目的で、隣合うベルト構成部材20の間隔を大きくとる形状にしている。もちろん、隣合うベルト構成部材20の間隔を大きくとる形状にするのが、他の理由によるものでもよい。このため、ヒンジ部22,23の延出長に略等しい凹部24の深さに対して、孔22a,23aの位置を合わせるためにヒンジ部22,23を凹部24に挿入する深さが小さくなっている。
【0026】
各ヒンジ部22,23の側面には、ベルト組み立て時に双方のベルト構成部材20,20のヒンジ部22,23を、それぞれの孔22a,23aにピン30を挿入できるように位置合わせする位置決め用の規制部25,26が設けられている。本例の規制部25,26は、ヒンジ部22,23と当接可能な突起からなる。なお、これらの規制部25,26の詳細な構成については後述する。
【0027】
また、図1及び図4に示すように、ベルト構成部材20の側面には基部21と対応する位置に、噛合部の一例としての係合凸部27が形成されている。図4に示すように、係合凸部27は、ベルト構成部材20の側面においてヒンジ部22,23の各孔22a,23a(換言すれば各ピン30)の間における短手方向xの中央位置に配置されている。つまり、各係合凸部27は、コンベヤベルト12の長手方向においてピン30間の中央位置にピン30と同じピッチで配置されている。また、係合凸部27は、スプロケット14の歯部14aと噛み合うことが可能な所定形状に形成されている。本例の係合凸部27は、図4に示す側面視で、ベルト構成部材20の底部側(同図における下側)ほど幅狭となる形状、詳しくは頂点をベルト構成部材20の底部側に向けた逆三角形状を有している。
【0028】
また、図4に示すように、規制部26は、第2ヒンジ部23の側面におけるやや物品搬送面12a寄りの箇所に配置されている。また、規制部26は、二つのベルト構成部材20を連結する際に、一方のベルト構成部材20と連結される他方(隣)のベルト構成部材20の第1ヒンジ部22と当接可能な位置に配置されている。双方の孔22a,23aの位置がピン30を挿通可能な状態に合ったときに、第1ヒンジ部22は凹部24の底よりも手前の位置で規制部26に当接してそれ以上の挿入側への移動が規制される。
【0029】
また、図1図2に示す規制部25も、規制部26と同様の所定形状(略逆三角形状)を有している。そして、規制部25は、第1ヒンジ部22において第2ヒンジ部23における規制部26が形成された側面と反対側の側面における物品搬送面12a寄りの箇所に配置されている。また、規制部25は、二つのベルト構成部材20を連結する際に、一方のベルト構成部材20と連結される他方(隣)のベルト構成部材20の第2ヒンジ部23と当接可能な位置に配置されている。双方の孔22a,23aの位置がピン30を挿通可能に合ったときに、第2ヒンジ部23は凹部24の底よりも手前側の位置で規制部26に当接してそれ以上の挿入側への移動が規制される。このように二つのベルト構成部材20は、第1ヒンジ部22が規制部26に当接するとともに、第2ヒンジ部23が規制部25に当接することにより、双方のヒンジ部22,23の孔22a,23aがピン30を挿入可能に位置合わせされた状態に位置決めされる。
【0030】
図5に示すように、コンベヤベルト12においてスプロケット14と噛み合う部分では、ベルト構成部材20の係合凸部27がスプロケット14の歯部14aと噛合する。詳しくは、スプロケット14には、係合凸部27と係合可能な係合凹部14bを間に形成する一対の歯部14aが、コンベヤベルト12側の係合凸部27のピッチとほぼ同ピッチで配列されている。係合凸部27は係合凹部14bに挿入された状態で歯部14aと噛合する。また、図5に示すように、規制部26は、ベルト構成部材20の係合凸部27が歯部14aと噛み合った状態の下で、歯部14aと接触しない位置に配置されている。すなわち、規制部25,26が各ヒンジ部22,23の側面において物品搬送面12a寄り(上面寄り)に配置されているのは、規制部25,26が歯部14aと接触することを回避するためである。ここで、回転軸13上の複数のスプロケット14のうち、外側二つのスプロケット14の間に配置された内列のスプロケット14の一対の歯部14aは、係合凹部14bに基部21が挿入された状態で基部21の両側に位置する一対の凹部24に係入される。規制部25は、第1ヒンジ部22の側面において凹部24に挿入された歯部14aと接触しない位置に配置されている。なお、本実施形態では、スプロケットの歯部と係合する基部21は係合凸部27と同様に噛合部の一例を構成する。
【0031】
図3に示すように、コンベヤベルト12の組み立て前において、図1図2に示す隣同士の二つのベルト構成部材20,20が連結された部分は、二つのベルト構成部材20,20と一本のピン30とにより構成される。ここで、ベルト構成部材20の詳細な構成を図7図11を参照しつつ説明する。
【0032】
図7図9及び図10に示すように、複数の第1ヒンジ部22は、基部21の長手方向yに対して直交する短手方向xにおける一方側に向かって延出している。第1ヒンジ部22は基部21寄りの部分が板状に延出するとともに、板状の部分よりも先端寄りの部分が長手方向yにおける一方側(図7図9では右側)に膨出して板状の部分よりも肉厚の環状部28となっている。同様に、複数の第2ヒンジ部23は、基部21の長手方向yに対して直交する短手方向xにおける他方側に向かって延出している。第2ヒンジ部23は基部21寄りの部分が板状に少し斜めに延出するとともに、板状の部分よりも先端寄りの部分が長手方向yにおける他方側(図7図9では左側)に膨出して板状の部分よりも肉厚の環状部28となっている。
【0033】
図10に示すように、第1ヒンジ部22の基部21寄りの板状の部分は、基部21からその長手方向yに対して90度よりも若干小さい角度(例えば80〜85度)をなす向きに延出している。環状部28は、第1ヒンジ部22の先端部において少し傾いた板状の部分における鋭角側の面から膨出している。一方、第2ヒンジ部23の基部21寄りの板状の部分は、基部21からその長手方向yに対して90度よりも若干小さい角度(例えば80〜85度)で、第1ヒンジ部22の板状の部分と反対側に傾いた向きに延出している。環状部28は、第2ヒンジ部23の先端部分において少し傾いた板状の部分における鋭角側の面から膨出している。このため、ヒンジ部22,23の先端部における環状部28の膨出する向きが反対側となっている。
【0034】
このようにヒンジ部22,23の板状の部分がそれぞれ反対側に傾いて延出することと、環状部28が板状の部分の鋭角側の面から膨出することとで、第1ヒンジ部22側の環状部28と、第2ヒンジ部23側の環状部28は、基部21の長手方向yにおいて半ピッチずれて位置している。このため、基部21の長手方向yにおいて、第1ヒンジ部22の環状部28は、第2ヒンジ部23の環状部28間の凹部24に対応する位置に配置され、第2ヒンジ部23の環状部28は、第1ヒンジ部22の環状部28間の凹部24に対応する位置に配置されている。環状部28の両端面は、基部21の長手方向yに対して垂直な面となっている。環状部28間の凹部24の開口は、環状部28の幅よりも若干広く形成され、環状部28を凹部24に挿入するときの遊び分の隙間が確保されている。
【0035】
二つのベルト構成部材20は、ヒンジ部22,23を相手側の凹部24に所定の深さまで挿入した状態で、それぞれの環状部28が長手方向yに向き合う状態で組み付けられる。この組み付け時に、二つのベルト構成部材20を水平面上に対向する状態に配置し、互いの基部21を平行に保ったまま二つのベルト構成部材20を接近させれば、ヒンジ部22,23はそれぞれ相手側の凹部24に挿入される。そして、ヒンジ部22,23が規制部25,26に当接してそれ以上の凹部24内への移動が規制されることで環状部28の中央部に形成された円形の孔22a,23aは、ピン30を挿通可能な状態に位置決めされる。
【0036】
図10に示すように、規制部25は第1ヒンジ部22において環状部28が膨出する側と反対側の面に形成されている。また、規制部26は第2ヒンジ部23において環状部28が膨出する側と反対側の面に形成されている。図12に示すように二つのベルト構成部材20を、第1ヒンジ部22と第2ヒンジ部23とを対向させた状態で水平に配置した状態から、両ヒンジ部22,23が相手側の凹部24に挿入されるように接近させる。そして、図1図2図13に示すように、第1ヒンジ部22間の凹部24に他のベルト構成部材20の第2ヒンジ部23が挿入されたときに、第1ヒンジ部22が規制部26に当たってそれ以上の進入が規制されるとともに、第2ヒンジ部23が規制部25に当たってそれ以上の進入が規制される。この両規制部25,26による規制によりそれ以上の接近が規制された状態において、一方のベルト構成部材20の孔22aと、他方のベルト構成部材20の孔23aとが図13に示すように一致するようになっている。なお、この規制状態において孔22a,23aは、必ずしもそれぞれの軸心が一致する状態に位置決めされる必要はなく、ピン30を挿入可能な程度に位置合わせされれば足りる。
【0037】
また、図11(a)に示すベルト構成部材20の側面に形成された係合凸部27の側面視の形状と、図11(b)に示す基部21の断面形状(例えば図10におけるA−A線断面)はほぼ同じとなっている。詳しくは、図11(b)では、基部21の断面形状が、図11(a)に示す係合凸部27と同形状の略逆三角形となっている。
【0038】
これは、本実施形態のベルト構成部材20は、コンベヤベルト12を必要なベルト幅とするために、ベルト幅方向Yに配置される一部のベルト構成部材20がその長手方向yの所定位置で切断して使用される場合があるからである。ベルト構成部材20の基部21を長手方向yのどこのヒンジ部間で切断しても、切断してできた側部には、図11(a)と同様の係合凸部27が形成される。
【0039】
また、必要なベルト幅に応じてベルト構成部材20をどこで切断しても、その長手方向yにおいて規制部が必ず二つ以上残るように設定されている。本実施形態では一例として全てのヒンジ部22,23の側面にそれぞれ規制部25,26を設けている。
【0040】
図14(a)に示すように、逆三角形状の規制部25,26の底部側の端部(下端)に接するとともにベルト構成部材20の側面における厚み方向の中心を通る中心線と平行な基準線Lと、他(相手側)のベルト構成部材20のヒンジ部が当接する面である被当接面26aとのなす角度θ1が、例えば50度以上の比較的大きな角度に設定されている。ここで、角度θ1は70度以上がより好ましく、本実施形態における角度θ1は、70度以上の鋭角に設定されている。なお、被当接面26aの角度θ1は、最大バックベンド角で屈曲したときに相手側のヒンジ部22の当接面の傾き角に合わせて設定され、最大バックベンド角においてヒンジ部22は被当接面26aに面で当接する。
【0041】
図14(b)に示すように、隣同士の二つのベルト構成部材20,20を、スプロケット14に巻き掛けられた部分の屈曲方向と逆方向に屈曲(バックベンド)させることが可能となっている。つまり、組立作業用にヒンジ部22,23と当接可能な位置に設けた規制部25,26が、ヒンジ部22,23のバックベンド側への回動を許容する形状となっている。本実施形態の例では、ローラ16の円弧面に沿ってコンベヤベルト12を屈曲させるために最大バックベンド角θ1が必要である。なお、ローラ16を設けない構成であれば、角度θ1は50度未満でもよい。
【0042】
次に、上記のコンベヤベルト12及びベルト構成部材20の作用を説明する。
コンベヤベルト12を組み立てる工程では、隣同士に連結されるべき二つのベルト構成部材20,20を、互いのヒンジ部22,23を相手側の凹部24に挿入させるように接近させて孔22a,23aを位置合わせする。すなわち、図3及び図12に示すように、二つのベルト構成部材20を長手方向yに位置を揃えて、連結するべき双方のヒンジ部22,23を相手側の凹部24に対峙させた状態で作業台上に配置する。
【0043】
次に、図3及び図12に示す状態から、二つのベルト構成部材20,20のうち少なくとも一方を、互いに接近する方向に作業台上を水平に移動させ、双方のヒンジ部22,23を相手側の凹部24に挿入する。このとき、図13に示すように、凹部24に挿入された第1ヒンジ部22が規制部26に当接するとともに、これとほぼ同時に第2ヒンジ部23が規制部25に当接する。このため、双方のヒンジ部22,23はそれぞれ規制部25,26に当接してそれ以上の挿入方向(接近方向)への移動が規制され、二つのベルト構成部材20,20は図13に示す位置で位置決めされる。図13に示す位置決め状態では、双方のヒンジ部22,23の孔22a,23aが一致する。このため、作業者は二つのベルト構成部材20,20を目視で孔22a,23aの位置を確認しつつヒンジ部22,23の凹部24への挿入深さを調整しつつ孔22a,23aを位置合わせする必要がない。そして、規制部25,26による位置決めによって一致した孔22a,23aにピン30を挿入する。コンベヤベルト12のベルト幅方向Yの両側部でピン30の両端部を抜け止めする。そして、コンベヤベルト12を構成する他のベルト構成部材20について隣のベルト構成部材20と同じ連結作業を繰り返すことで、コンベヤベルト12が組み立てられる。
【0044】
また、組み立てられたコンベヤベルト12をスプロケット14に巻き掛けて製造されたベルト式搬送装置11では、スプロケット14の歯部14aが係合凸部27及び基部21と噛み合う。このとき、規制部25,26はベルト構成部材20の側面における物品搬送面12a寄りの位置に配置されているので、図5に示すように歯部14aとの接触が回避される。
【0045】
また、コンベヤベルト12の下側部分は、垂れ下がりを支えるためにローラ16で支持されるが、基準線に対して規制部25,26の被当接面25a,26aがなす角度θ1を50度以上に設定した。このため、コンベヤベルト12を比較的大きな角度でバックベンドできるので、コンベヤベルト12をローラ16の円弧面に沿って屈曲させることができる。例えばコンベヤベルト12のローラ16からの外れが抑制される。
【0046】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)コンベヤベルト12を構成する隣同士となる任意の二つのベルト構成部材20を連結する組立作業時に、ヒンジ部22,23を相手側の凹部24内に、ヒンジ部22,23が凹部24の底より手前の位置で規制部25,26に当接してそれ以上の挿入側への移動が規制される。よって、ヒンジ部22,23を規制位置まで挿入すれば、その位置で双方の孔22a,23aを位置合わせできる。このため、作業者が双方の孔22a,23aを目視で位置合わせする面倒な作業を不要にできる。
【0047】
(2)ヒンジ部22,23の全てに規制部25,26を設けたので、組立て時に二つのベルト構成部材20を長手方向yの二箇所以上の複数箇所で当接させることができる。特に、二つのベルト構成部材20をその長手方向yの中心位置を挟んだ両側の位置を含む少なくとも二箇所でヒンジ部22,23が規制部25,26に当接する。例えば長手方向yに当接箇所が一つの場合、位置決め時に二つのベルト構成部材20が傾いた姿勢で当接し、これが原因で一部の孔22a,23aの位置がずれる虞がある。これに対して本実施形態では、隣同士のベルト構成部材20が長手方向yに少なくとも二箇所で当接するので、全ての孔22a,23aを位置合わせできる。
【0048】
(3)ヒンジ部22,23の全てに規制部25,26を設けたので、ベルト構成部材20をその長手方向yのどこで切断して使用しても、その長手方向yの中心位置を挟んだ両側の位置を含む少なくとも二箇所でヒンジ部22,23が規制部25,26に当接する。このため、ベルト構成部材20をその長手方向yのどこで切断して使用しても、全ての孔22a,23aの位置合わせが可能である。
【0049】
(4)規制部25,26をスプロケット14の歯部14aに接触しない位置に設けたので、規制部25,26とスプロケット14との干渉を回避できる。特に本実施形態では、係合凸部27及び基部21がスプロケット14の歯部14aと係合してベルト構成部材20の底部側から歯部14aが係入されるが、規制部25,26を、ベルト構成部材20における歯部14aの係入側である底部側と反対側の物品搬送面12a寄りの位置に配置している。このため、歯部14aが係入されるエリアを形成する壁面(ヒンジ部22,23の側面)に規制部25,26が設けられていても、規制部25,26と歯部14aとの接触を回避できる。
【0050】
(5)規制部25,26をベルト構成部材20の底部側よりも物品搬送面12a側で幅広となる形状(例えば逆三角形状)にしたので、制約の多い狭いエリアに配置した割に比較的高い強度を確保できる。例えば規制部をスプロケット14の歯部14aに接触しない形状・サイズの矩形とすると、例えば本実施形態の規制部25,26の底部側(逆三角形の下端部の幅)と同程度の幅の細い矩形とせざるを得ない。この場合、細い矩形状の規制部では低い強度しか得られない。このため、組立作業時にヒンジ部が細い矩形状の規制部に少し強く当たった際に規制部が破損する虞がある。これに対して本実施形態の規制部25,26は、底部側の幅よりも広い幅を物品搬送面12a寄りの部分に確保できるので、前述の矩形の規制部に比べ高い強度を確保できる。
【0051】
(6)規制部25,26を隣のベルト構成部材20のヒンジ部と当たる被当接面25a,26aと基準線Lとのなす角度θ1を比較的大きな値(例えば50度以上)に設定した。特に本実施形態では角度θ1を70度以上に設定した。よって、コンベヤベルト12をスプロケット14での屈曲方向と反対方向へ屈曲させるときの最大バックベンド角を比較的大きく確保できる。このため、コンベヤベルト12をローラ16の円弧面に沿って屈曲させることができる。例えばコンベヤベルト12をローラ16の円弧面でしっかり保持でき、コンベヤベルト12がローラ16から受ける圧力を軽減できるので、例えばローラ16と線接触に近い接触をすることに起因してコンベヤベルト12に過大な圧力が加わる事態を回避できる。また、コンベヤベルト12を比較的大きな角度でバックベンドさせることができるので、コンベヤベルト12のメンテナンス等もし易くなる。
【0052】
(第2実施形態)
次に第2実施形態のコンベヤベルトについて図15図25を参照しつつ説明する。
図15に示すように、この第2実施形態のコンベヤベルト12は、複数(但し同図では二つのみ図示)のベルト構成部材40を備える。第1実施形態と同様に、ベルト構成部材の連結構造は搬送方向Xに同じ連結構造が繰り返されるだけであり、かつベルト幅方向Yには必要なベルト幅分の必要な数のベルト構成部材が隣接して配置されるだけである。このため、以下の説明では、この第2実施形態のコンベヤベルト12を構成する任意の二つのベルト構成部材及びその連結構造について説明する。
【0053】
コンベヤベルト12を構成する任意の隣同士の二つのベルト構成部材40は、それぞれ長手方向yに沿って延びる長尺状の基部41と、基部41の長手方向yと交差する短手方向xの両側に複数ずつ延出する第1ヒンジ部42及び第2ヒンジ部43とを有する。図15図17に示すように、複数の第1ヒンジ部42は、基部41に対し短手方向xの両側のうち一方側に延出し、複数の第2ヒンジ部43は、基部41に対し短手方向の他方側に延出する。そして、第1ヒンジ部42はベルト構成部材40の長手方向yに一定の間隔で配置され、各第1ヒンジ部42間にはその延出長に相当する深さを有する凹部44が形成されている。同様に、第2ヒンジ部43はベルト構成部材40の長手方向に第1ヒンジ部42と同じ一定の間隔で配置され、各第2ヒンジ部43間にはその延出長に相当する深さを有する凹部44が形成されている。第1ヒンジ部42と第2ヒンジ部43は、ベルト構成部材40の長手方向yに等しいピッチで、互いに半ピッチずれた位置に配置されている。
【0054】
そして、図15に示すように、一方のベルト構成部材40の第1ヒンジ部42と、他(隣)のベルト構成部材40の第2ヒンジ部43とを、それぞれ相手側のヒンジ部間の凹部44に所定の深さまで挿入した状態で、双方のヒンジ部42,43の一致した孔42a,43a(図20を参照)にピン30を挿通することで連結されている。そして、コンベヤベルト12は、二つのベルト構成部材40をピン30で回動自在に連結する連結構造で複数のベルト構成部材40を直列に連結することで構成される。
【0055】
ここで、本実施形態のコンベヤベルト12では、第1実施形態と同様に、物品搬送面12a(搬送面)の開口部を大きくする目的や、バックベンドの半径を小さくする目的で、隣合うベルト構成部材20の間隔を大きくとる形状にしている。もちろん、隣合うベルト構成部材20の間隔を大きくとる形状にする理由は、他の理由でもよい。このため、ヒンジ部42,43の延出長に略等しい凹部44の深さに対して、孔42a,43aの位置を合わせるためにヒンジ部42,43を凹部44に挿入する深さが小さくなっている。
【0056】
前記第1実施形態では、ベルト構成部材20を長手方向yの任意の箇所で切断して使用する使用のされ方のある構成であったため、どこで切断されても規制部25,26が残るように全てのヒンジ部22,23の側面にそれぞれ規制部25,26を設けていた。これに対してこの第2実施形態では、ベルト構成部材40を切断する使用のされ方が基本的にない構成である。このため、図15図17に示すように、第1ヒンジ部42間の凹部44のうち一つの凹部44の底面に一つの規制部45が第1ヒンジ部42の延出する向きと同じ向きに突設され、第2ヒンジ部43間の凹部44のうち一つの凹部44の底面に一つの規制部46が第2ヒンジ部43の延出する向きと同じ向きに突設されている。二つの規制部45,46は、ベルト構成部材40の長手方向yにおいて異なる二位置に配置されている。特に二つの規制部45,46は、ベルト構成部材40の長手方向yにおける中心位置を挟んだ両側の位置に、それぞれ所定の間隔を離して配置されている。本例では、二つの規制部45,46は、ベルト構成部材40の長手方向yにおける全長の1/4ほど両端から内側の位置に配置されている。
【0057】
また、図17図20に示すように、ベルト構成部材40の基部41には、その長手方向yにおける所定箇所(本例では所定の二箇所)には、スプロケット14の歯部14aと噛み合い可能な噛合部の一例としての係合凹部47が形成されている。つまり、係合凹部47の位置はコンベヤベルト12のベルト幅方向Y(つまりベルト構成部材40の長手方向y)に予め決められており、ベルト構成部材40は基本的に長手方向のどこかで切断する使用のされ方はしない。このため、本実施形態では、連結させるべき第1ヒンジ部42と第2ヒンジ部43とをそれぞれ相手側のベルト構成部材40の凹部44に挿入するとき、ベルト構成部材40の長手方向yにおける二箇所でヒンジ部42,43が凹部44の底よりも手前の位置で規制部45,46に当接してそれ以上の挿入側への移動が規制されるようにしている。
【0058】
図15図17及び図19に示すように、特に規制部45,46は、ベルト構成部材40の長手方向yにおける中心位置を挟んだ両側に所定の間隔をおいてそれぞれ位置し、かつ短手方向xにおいては互いに基部41を挟んだ反対側に位置している。また、図16に示すように、規制部45は、同図における側断面視において孔42a,43a(つまりピン30)の軸心を結ぶ仮想線であるピッチラインPL以下の底部側の位置に配置されている。もう一方の規制部46も図示はしないがピッチラインPL以下の底部側の位置に配置されている。
【0059】
これは二つのベルト構成部材を、ピン30を中心に回動させたときにヒンジ部42,43の回動軌跡を避けた位置に規制部45,46を配置するためである。このため、二つのベルト構成部材40がバックベンドする際に規制部45,46が邪魔にならず、規制部45,46の有無に関係なく、二つのベルト構成部材40のバックベンド側の回動範囲は同じとなり、コンベヤベルト12に必要な最大バックベンド角の確保が可能となっている(図23参照)。
【0060】
また、規制部45,46の突出量は、相手側のヒンジ部42,43が凹部44に挿入されたときに規制部45,46に当接してそれ以上の移動が規制された状態において、双方のヒンジ部42,43の孔42a,43aが位置合わせされる値に設定されている。すなわち、規制部45,46によって二つのベルト構成部材40が位置決めされた状態では、第1ヒンジ部42の孔42aと第2ヒンジ部43の孔43aとが、ピン30を挿入可能な範囲で揃うことになる。
【0061】
また、図6に示すスプロケット14の歯部14aが係入される係合凹部47が基部41に形成されている。第1実施形態では、ヒンジ部22,23が挿入される全ての凹部24のうち一部の凹部24に内側の列のスプロケット14の歯部14aが係入される場合があったが、本実施形態では、歯部14aが係入される係合凹部47が凹部44とは別に基部21に形成されているため、凹部44に歯部14aが係入されることはない。このため、規制部45,46は、スプロケット14の歯部14aとの干渉を気にすることなく歯部14aに制約されずにどの凹部44内に設けてもよく、しかも凹部44の内壁面上におけるその設置位置の自由度も高くなっている。
【0062】
このため、本実施形態では一例として、図15図16に示すように、ベルト構成部材40の長手方向yにおいて、規制部45,46を係合凹部47とオーバーラップする位置、つまりスプロケット14の歯部14aとオーバーラップする位置に配置している。係合凹部47をベルト構成部材40の長手方向yの二箇所に配置する場合に適切な間隔があり、規制部45,46をベルト構成部材40の長手方向yの二箇所に配置する場合にも適切な間隔がある。両者の適切な位置は、ベルト構成部材40の長手方向yの中心位置を挟んだ両側においてそれぞれ長手方向yの中心付近である。両者の適切な間隔を確保するうえにおいて一対の規制部45,46の位置と、一対の係合凹部47の位置が長手方向yに重なっても、本実施形態では一対の規制部45,46と一対の係合凹部47とをそれぞれ長手方向yにオーバーラップしたそれぞれの適切な位置に配置している。
【0063】
また、図17図18及び図20に示すように、ベルト構成部材40の物品搬送面12a側の部分には、その短手方向に基部41から各ヒンジ部42,43に跨って延びるリブ48が、ベルト構成部材40の厚み方向のうち係合凹部と反対側の面(上面)からほぼ垂直に一定の延出高さまで延出している。つまり、複数本のリブ48は、ベルト構成部材40の長手方向においてヒンジ部42,43のピッチのおよそ半分のピッチで配置されている。また、基部41及びヒンジ部42,43はほぼ同じ厚さに形成され、複数本のリブ48は基部21及びヒンジ部42,43の上面からこれらの厚みのおよそ半分の延出長を有している。
【0064】
複数本のリブ48の間隔は搬送対象とされる物品の底面に比べ十分短く、物品は複数本のリブ48の上面に支持(載置)された状態で搬送される。また、図17図19に示すように、基部41に長手方向に一定の間隔を隔てて一対形成されている係合凹部47は、リブ48で覆われている部分以外は貫通している。その他、係合凹部47と長手方向に沿う部分には、係合凹部47よりも長手方向に幅狭で短手方向にはほぼ同じ長さの貫通孔49が形成されている。
【0065】
次に複数のベルト構成部材40で構成されるコンベヤベルト12の作用を説明する。
一方のベルト構成部材40の第1ヒンジ部42と他方のベルト構成部材40の第2ヒンジ部43とが、互いに相手側のヒンジ部間の凹部44の底面から突出する規制部45,46に当接する位置まで奥一杯に挿入された状態において、第1ヒンジ部42の孔42aと第2ヒンジ部43の孔43aとが、ピン30を挿入可能な程度に一致する。
【0066】
このとき、一つのベルト構成部材40に2つ設けられている規制部45,46は、ベルト構成部材40の長手方向yの中心位置を挟んで所定の間隔を離した両側の位置であって、且つベルト構成部材40の短手方向xの中心線を挟んで互いに反対側となる位置に設けられている。このため、二つのベルト構成部材40を互いの姿勢を平行に保ったまま接近させて、双方の第1ヒンジ部42と第2ヒンジ部43とを互いに相手側の凹部44に挿入したとき、ベルト構成部材40の長手方向yにおいてヒンジ部42,43と規制部45,46とが二箇所で当接する。よって、二つのベルト構成部材40,40がヒンジ部42,43と規制部45,46との当接により位置決めされた際、両者の姿勢が相手側の姿勢に対して傾くことが回避されるため、全てのヒンジ部42,43の孔42a,43aを一致させることができる。
【0067】
例えばヒンジ部と規制部との当接位置が一箇所である場合、一方のベルト構成部材を他方のベルト構成部材に対して傾き易く、双方のヒンジ部のうち一部のヒンジ部で孔の位置がずれてしまう。このため、ベルト構成部材を平行の姿勢に保ちながら接近させてヒンジ部を位置合わせする作業に慎重さが要求される。これに対して本実施形態では、ヒンジ部42,43と規制部45,46とが二箇所で当接して二つのベルト構成部材40が位置決めされる構成なので、ヒンジ部42,43を規制部45,46に当接するまで凹部44に挿入すれば、双方の孔42a,43aが一致する位置に二つのベルト構成部材40が位置決めされる。よって、複数のベルト構成部材40をピン30で連結する組立作業の作業性が向上する。そして、その一致した孔42a,43aにピン30を挿入する。
【0068】
こうして製造されたコンベヤベルト12は、歯部14aが係合凹部47に係合する状態にスプロケット14に巻き掛けられる。このとき、コンベヤベルト12の下側の部分がローラ16に支持されるが、このローラ16に支持される箇所のバックベンド角は、規制部の有無に関係なく同じとなる。つまり、規制部45,46は、凹部44の底面における底部側の位置に設けられているので、コンベヤベルト12のバックベンドの邪魔にならない。このため、コンベヤベルト12が比較的大きな角度でバックベンドして、コンベヤベルト12をローラ16の円弧面に沿って巻き掛けることができる。よって、コンベヤベルト12がローラ16に面で支持され、コンベヤベルト12がローラ16から受ける圧力を軽減できる。
【0069】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(6)規制部45,46は二つ設けられているだけなので、ベルト構成部材40の一つ当たりの規制部45,46の数が少なく済む。この場合、二つの規制部45,46をベルト構成部材40の長手方向yにその中心位置を挟んだ両側に所定の間隔を離して配置し、かつ短手方向xには基部41の中心を挟んで互いに反対側に位置する凹部44の内周面(例えば底面)にそれぞれ配置した。このため、二つのベルト構成部材40を長手方向yに中心位置の両側の二箇所で当接させることができる。よって、ヒンジ部42,43を相手側の凹部44に挿入する際、二つのベルト構成部材40の当接時の姿勢が傾くことが回避され易く、連結させるべき全ての孔42a,43aの位置を揃えることができる。
【0070】
(7)規制部45,46を、孔42a,43a(又はピン30)の軸心を結ぶピッチラインPL以下の底部側の位置に配置したので、規制部がない構成と同様の大きなバックベンド角を確保できる。
【0071】
なお、実施形態は、以下に示す態様でもよい。
・第1実施形態の規制部25,26において、図24に示すように基準線Lと被当接面25a,26aとのなす角度θ2を鈍角にしてもよい。この場合、図25に示すように、隣同士の二つのベルト構成部材20を鈍角の屈曲角でバックベンドさせることができる。よって、コンベヤベルト12をローラ16の円弧面に沿って屈曲させることができる。もちろん、規制部25,26の被当接面25a,26aと基準線とのなす角度は、90度でもよい。
【0072】
・前記第1実施形態では全てのヒンジ部22,23の側面に規制部を設けたが、例えば1つおき、2つおき、3つおきなど一定の間隔ごとに規制部を設けてもよい。また、規制部を設ける間隔は、一定間隔ではなく不規則の間隔であってもよい。このような構成でも、ベルト構成部材を切断して使用する場合でも、大抵の場合、少なくとも二つの規制部は残るので、隣同士のベルト構成部材のヒンジ部と規制部とを長手方向yに位置の異なる少なくとも二箇所で当接させることができる。また、規制部25,26を1つずつとし、各規制部25,26をベルト構成部材20の長手方向yに異なる二位置に配置してもよい。
【0073】
・第1及び第2実施形態において、ベルト構成部材の一つ当たりに規制部は一つでもよい。この場合、一つの規制部は、ベルト構成部材を長手方向yに三つのエリアに等分したうち中央のエリア内に配置するとよい。特に一つの規制部は、ベルト構成部材の長手方向yにおける中央位置がより好ましい。もちろん、一つの規制部は中央エリア以外の位置に配置してもよい。
【0074】
・第1実施形態において、規制部の被当接面は、略逆三角形状の一辺のよう直線状(平面状)に限定されない。例えばヒンジ部の先端部(環状部28)の円弧面状の外周面に沿って円弧面状に凹む凹曲面としてもよい。
【0075】
・第1実施形態において、規制部は略逆三角形状に限定されない。例えば半円形状、円形状、楕円形状、台形、その他の多角形状でもよい。また、ベルト構成部材の底部側ほど幅狭の形状に限定されず、スプロケットとの接触を回避できれば、ベルト厚み方向で幅が一定の矩形や裏面側ほど幅広となった台形状や三角形状でもよい。また、必要なバックベンド角が確保できれば、規制部の形状は特に限定されない。
【0076】
・第2実施形態において、規制部45,46は二つに限定されない。
・第2実施形態において、規制部45,46は凹部44の幅よりも狭い幅の板状の柱状の突起に替え、凹部44の底面における底部側の部分がヒンジ部の延出方向に凹部と同じ幅で膨出した膨出部としてもよい。また、ヒンジ部の側面(凹部44の内側面)に規制部を設けてもよい。
【0077】
・規制部を設ける位置は、ヒンジ部の側面(凹部の内側面)及び凹部の底面のうち少なくとも一方であればよい。例えば一つのベルト構成部材にヒンジ部の側面に設けられた規制部と、凹部の底面に設けられた規制部とが混在していてもよい。また、一つのコンベヤベルト12において、ヒンジ部の側面に規制部が設けられたベルト構成部材と、凹部の底面に規制部が設けられたベルト構成部材とが混在していてもよい。
【0078】
・規制部を設ける位置は、ヒンジ部の側面(凹部の内側面)及び凹部の底面のうち少なくとも一方に限定されず、例えばヒンジ部の底面又はヒンジ部の先端面(外周面)でもよい。また、隣同士のベルト構成部材においてヒンジ部を凹部に挿入する姿勢にあるときに対向するそれぞれの位置に規制部を設け、それぞれの規制部同士を当接させることで二つのベルト構成部材を位置決めしてもよい。
【0079】
・規制部は、突起とした場合、板状や柱状に限らず、筒状又は、円錐台や四角錘等の錘台形状でもよい。また、L字状やT字状等の屈曲形状でもよい。また、一つのヒンジ部と当接する規制部を複数設け、一つのヒンジ部が複数の規制部と当接して複数箇所で位置規制される構成でもよい。
【0080】
・ベルト構成部材は樹脂製に限定されず、金属製でもよい。
・ピン30は樹脂製に限定されず、金属製でもよい。
【符号の説明】
【0081】
11…ベルト式搬送装置、12…コンベヤベルト、12a…物品搬送面、14…スプロケット、14a…歯部、16…ローラ、20…ベルト構成部材、21…噛合部の一例を構成する基部、22…第1ヒンジ部、22a…孔、23…第2ヒンジ部、23a…孔、24…凹部、25,26…規制部、25a,26a…被当接部の一例としての被当接面、27…噛合部の一例を構成する係合凸部、28…環状部、30…ピン、40…ベルト構成部材、41…基部、42…第1ヒンジ部、42a…孔、43…第2ヒンジ部、43a…孔、44…凹部、45…規制部、46…規制部、47…噛合部の一例としての係合凹部、48…リブ、49…貫通孔、θ1…角度、θ2…角度、X…搬送方向、Y…ベルト幅方向、x…短手方向、y…長手方向。
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