(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063371
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】プラネタリーミキサー及びこれを使用したリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 15/00 20060101AFI20170106BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20170106BHJP
B01F 7/30 20060101ALI20170106BHJP
B01F 7/18 20060101ALI20170106BHJP
B01F 3/12 20060101ALI20170106BHJP
B01F 3/18 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B01F15/00 E
H01M4/139
B01F7/30 Z
B01F7/18 Z
B01F3/12
B01F3/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-228985(P2013-228985)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89527(P2015-89527A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139883
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】大江田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 肇
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−190905(JP,A)
【文献】
特開2010−279896(JP,A)
【文献】
特開2012−150923(JP,A)
【文献】
特開2012−210621(JP,A)
【文献】
特開平11−33378(JP,A)
【文献】
実公昭40−30318(JP,Y1)
【文献】
特開平11−28346(JP,A)
【文献】
特開2006−192385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 15/00
B01F 3/12
B01F 3/18
B01F 7/18
B01F 7/30
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、タンク内で自転、公転する複数の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーにおいて、上記撹拌ブレードは枠型ブレードであり、該枠型ブレードの両端角部及びタンクの底面隅部は曲面に形成され、上記タンクの接液部にダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングしたコート層を設け、該コート層はタンクの底面隅部にも設けられていることを特徴とするプラネタリーミキサー。
【請求項2】
上記撹拌ブレードの接液部は金属材料又はセラミック材料で形成され、撹拌ブレードの接液部の動摩擦係数は金属材料又はセラミック材料の動摩擦係数であり、上記コート層の動摩擦係数はダイヤモンドライクカーボンの動摩擦係数である請求項1に記載のプラネタリーミキサー。
【請求項3】
固/液系の材料を混合、撹拌、混練して中、高粘度のペーストを製造する工程において、上記請求項1又は2のいずれかに記載のプラネタリーミキサーを用いて製造することを特徴とするペーストの製造方法。
【請求項4】
リチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法において、電極ペーストを構成する活物質、導電材、結着材の粉体をタンクに収納して混合する乾式混練工程、溶媒を少量添加して混練する硬練り工程、及び溶媒をさらに添加して希釈化する調整工程のいずれの工程にも上記請求項1又は2のいずれかに記載のプラネタリーミキサーを使用することを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラネタリーミキサー及びこれを使用したリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の電極の正極層は正極活物質と導電材と結着材の粉体を混合し溶媒を加えて混練した正極活物質ペーストをアルミニウム箔等の集電体に塗布して構成され、負極層は負極活物質と結着材の粉体を混合し溶媒を加えて混練した負極活物質ペーストを銅箔等の集電体に塗布して構成されている。上記のように活物質ペースト、すなわち電極ペーストは、固/液系の中、高粘度材料であり、材料をタンク内で混練して得られるが、このような中、高粘度材料を製造する方法として、上記材料をタンク(槽)内に投入し、タンク内で遊星運動する2軸以上の多軸の撹拌ブレード(撹拌翼)を有する遊星運動混合機(プラネタリーミキサー 例えば特許文献1参照)を用いて硬練り、その後、さらに溶媒を加えて希釈しスラリー化することが知られている。リチウムイオン二次電池の活物質等の電極材料は、固体即ち粉体の微粒子や超微粒子であり、このような微粒子を撹拌、混練、分散すると、しばしばタンク内面に付着、固着する現象が見られた。
【0003】
すなわち、上記電極ペーストを構成する活物質は、いずれも粉体、微粉体(粒子径 0.1〜数μm)、超微粉体(ナノ粒子)(粒子径 0.1μm以下)といわれるような粒径がきわめて小さい粉体であり、このような粉体成分と溶媒の液体成分を上記のように撹拌ブレードがタンク内で遊星運動するプラネタリーミキサーで処理すると、液体による粉体の部分吸湿のためにスラリーの一部がタンクの壁面、底面等の内面に付着したり、固着しやすい。さらに、タンク壁面での材料の競り上がりの原因になり、
ひいては不動層となって混練上品質にも悪影響を与える。そして、タンクに付着、固着した材料をそのままにして希釈のためにさらに溶媒を添加して撹拌、混合、分散すると、撹拌中に付着物等が落下して材料中に混入し、部分凝集であるいわゆるブツやダマが発生する原因となり、均一な分散処理が妨げられる。成分材料が均一に分散していない電極ペーストは、集電体に均一に塗布できないから、リチウムイオン二次電池としての十分な作用を期待することができなくなる。
【0004】
特許文献1に示されているようなプラネタリーミキサーは、一般的に、耐食性、耐薬品性の見地から撹拌ブレードやタンクの接液部をステンレス鋼等の金属材料やセラミック材料で作ることが多い。タンクの場合、接液部をステンレス鋼で作り、その表面をバフ研磨により仕上げてあるが、その表面の動摩擦係数は、平均で、μ=0.667程度と高くなっている。動摩擦係数が高いと接触抵抗が強くなるので、撹拌処理中の材料はタンクの表面に付着したり、固着しやすくなり、タンクの壁面で材料が盛り上がったり、競り上がったりする原因ともなる。その結果、上述したように、撹拌しても流動しない不動層となり、混練上、品質に悪影響を与えるおそれがあった。
【0005】
特にリチウムイオン二次電池の活物質として燐酸鉄リチウム(LFP)のような超微粒子活物質を混練する際に、接液部がステンレス鋼で作られた上記の如き高い動摩擦係数を有するタンクを用いると、硬練り時に上記のような付着、固着現象がしばしば見られた。接液部の動摩擦係数を小さくすれば、接触抵抗が弱くなるから、例えば動摩擦係数がμ=0.04〜0.08程度のテフロン(登録商標)をタンク内面にコーティングすることも考えられるが、テフロン(登録商標)は強度が弱いので、タンクからペーストをヘラでかきとるときにコート層が剥離して脱落しやすく、剥離物が電極ペースト中に混入するおそれがある。そのような剥離物がペースト中に混入すると、探し出すのが困難であり、電極ペーストの中から剥離物を取り出さずに集電体に塗布すると、リチウムイオン二次電池としての本来の機能を発揮することができない。
【0006】
また、混合、撹拌、分散処理は、凝集している粉体をバラバラにして微小化するための処理であるが、そのためには撹拌ブレードが確実に処理材料をとらえてタンク内で全体流動させる必要がある。若し、撹拌ブレードの接液部が動摩擦係数が低い状態に形成されていると、接液部で滑りを発生して確実に処理材料を流動させることができなくなり、十分なせん断作用を処理材料に与えることができなくなる。結果として、混練作業に時間がかかり、作業性が悪くなる。さらに、撹拌ブレードとしては、枠型ブレードが好適に使用され、従来のプラネタリーミキサーでは枠型ブレードの両端角部及びタンクの底面隅部が直角に形成されている。そのため、角部や隅部付近での材料の流動性がよくなく、処理材料が角部等に集まる傾向になり、この角部や隅部に材料が付着、固着しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−192385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決課題は、リチウムイオン二次電池用の電極ペーストを製造する場合のように、粒子の細かい粉体と溶媒等の液体を混合、撹拌、混練等する際に使用するプラネタリーミキサーにおいて、処理材料がタンクの内面に付着、固着しないようにするとともにヘラ等でタンクの壁面からペーストをかき取る際に壁面に設けたコート層が剥離することがなく、確実に混練作業をすることができるプラネタリーミキサーを提供することであり、またそのプラネタリーミキサーを使用したリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、タンクと、タンク内で自転、公転する複数の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーにおいて、上記タンクの接液部にダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングしたコート層を設けたことを特徴とするプラネタリーミキサーが提供され、またリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造において、上記プラネタリーミキサーを使用して活物質、導電材、結着材を混合、混練、分散し電極ペーストを製造するリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法が提供され、上記課題が解決される。
【0010】
また、本発明によれば、タンクと、タンク内で自転、公転する複数の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーにおいて、上記撹拌ブレードの接液部は金属材料又はセラミック材料で形成され、撹拌ブレードの接液部の動摩擦係数は金属材料又はセラミック材料の動摩擦係数であり、上記タンクの接液部にはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングしたコート層が設けられ、タンクの接液部の動摩擦係数はダイヤモンドライクカーボンの動摩擦係数であることを特徴とするプラネタリーミキサーが提供され、該プラネタリーミキサーを使用して活物質、導電材、結着材を混合、混練、分散して電極ペーストを製造するリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法が提供され、上記課題が解決される。
【0011】
本発明の撹拌ブレードとして、枠型ブレードが使用され、枠型ブレードの底辺部の両端角部及びタンクの底面の隅部を曲面に形成し、タンクの底面隅部の曲面に沿って上記ダイヤモンドライクカーボンのコート層を設けた上記プラネタリーミキサーが提供される。また、上記リチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法において、上記電極ペーストを構成する活物質、導電材、結着材の粉体を混合する乾式混練工程、溶媒を少量添加して混練する硬練り工程、及び溶媒をさらに添加して希釈化する調整工程のい
ずれの工程にも上記プラネタリーミキサーを使用することを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極ペーストの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成され、タンクと、タンク内で自転、公転する複数の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーにおいて、上記タンクの接液部にダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングしたコート層を設けたから、タンクの接液部の動摩擦係数は、ダイヤモンドライクカーボンの動摩擦係数である μ=0.05〜0.1程度となり、従来のステンレス鋼等の動摩擦係数 μ=0.667よりも低く、テフロン(登録商標)と同程度の動摩擦係数が得られ、接触抵抗が弱くなってタンク壁面への付着力が弱まる。そのため、材料の付着、固着が防止され、壁面で材料が盛り上がることがあっても自重で落下して競り上がり現象が解消される。したがって、ブツやダマの発生や材料への混入が阻止され、材料を均一に混合、撹拌、混練することができ、品質が安定する。また、ダイヤモンドライクカーボンコーティングはテフロン(登録商標)よりも剥離しにくいので、タンクから、ペーストをかき取るときにコート層が剥離せず、ペースト中に混入するおそれもない。上記プラネタリーミキサーを用いて、リチウムイオン二次電池の電極ペーストを構成する活物質、導電材、結着材を撹拌、混合、混練すると、ブツやダマの発生や不純物の混入がなく、均一に分散させることができ、極めて品質のよい電極ペーストが得られる。
【0013】
また、上記タンクと、タンク内で自転、公転する複数の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーにおいて、上記撹拌ブレードの接液部を金属材料又はセラミック材料で形成し、撹拌ブレードの接液部の動摩擦係数を金属材料又はセラミック材料の動摩擦係数とし、上記タンクの接液部にはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングしたコート層を設け、タンクの接液部の動摩擦係数をダイヤモンドライクカーボンの動摩擦係数にすると、上記撹拌ブレードは動摩擦係数が例えば μ=0.667程度と高いので、材料を撹拌ブレードの接液部で確実にとらえて、撹拌ブレードと撹拌ブレード間及び撹拌ブレードとタンク壁面間に処理材料を送り込んでせん断力を与えることができ、しかもタンクの接液部の動摩擦係数は μ=0.05〜0.1程度と低いので、タンク壁面に対する付着力が弱くなり、材料の付着や固着を生じることなく、材料に圧縮、せん断、膨張作用を的確に与えて短時間で撹拌、混合、混練処理をすることができる。
本発明の撹拌ブレードとして枠型ブレードを用い、枠型ブレードの底辺部の両端角部やタンクの底面の隅部を曲面に形成し、このタンク隅部の曲面に沿って上記コート層を設けると、流動性がさらに改善されて処理材料が付着、固着しにくくなるとともに、上記ダイヤモンドライクカーボンのコート層が曲面に沿って設けられているので、一層剥離しにくくなる。
【0014】
リチウムイオン二次電池の電極ペーストの製造において、上記プラネタリーミキサーは最初に活物質等を混合する乾式混練工程において使用され、次に少量の溶媒を添加して硬練りする工程、さらに溶媒を添加して希釈する調整工程のいずれの段階においても使用することができ、いずれの工程においても材料がタンクに付着、固着することがないから、全体流動となり、品質のよい電極ペーストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例を示し、説明のため一つの撹拌ブレードだけを示したタンク部分を断面した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプラネタリーミキサーは、リチウムイオン二次電池電極ペーストの製造のように中、高粘度のペースト状の混練物を製造する場合に好適に使用される。すなわち、リチウムイオン二次電池の製造において、電極ペーストを構成する活物質、導電材、結着材等の粉体をタンクに仕込んだ後、タンク内で自転、公転の遊星運動をする攪拌ブレードにより粉体を混合撹拌する工程(乾式混練工程)と、混合攪拌後に溶媒を少量添加して硬練りする硬練り工程、及びさらに溶媒を加えて攪拌ブレードにより混練して希釈化する調整工程の各工程で使用され、希釈後にペースト状でタンクから取り出される。
【0017】
また、上記プラネタリーミキサーは、化学、医薬、電子、セラミックス、食品、飼料その他の各種製品の製造工程においても使用することができる。プラネタリーミキサーの本体1は昇降シリンダー2により上下動する撹拌ヘッド3、または撹拌ヘッドを固定して昇降シリンダー(図示略)により上下動するタンク(容器、撹拌槽)7
を有し、該撹拌ヘッド上に設けた駆動モーター等の駆動手段4を介して複数本の撹拌軸5が公転、自転し、該撹拌軸5の下端に取り付けた撹拌ブレード、実施例では枠型ブレード6が上記タンク7内で全体的に遊星運動するようにしてある。このとき、自転、公転運動は同方向にすると、処理材料に滑りを生じ、せん断力不足を招来するので、自転、公転の方向を逆方向にして回転させることが好ましい。
図1においては、理解をしやすくするため、撹拌軸、撹拌ブレードは1本のみ図示したが、実施例では特開2006−192385号公報に示す如き3本の撹拌ブレードを有するプラネタリーミキサーが好適に使用される。
【0018】
上記枠型ブレード6は、撹拌軸5に連絡する上辺部8と、該上辺部に連絡される縦辺部9と、該縦辺部の下端に直交状態で連絡される底辺部10を有する略矩形の枠型に形成されている。この枠型ブレードは、上辺部8と底辺部10が同一方向を向く正面視略矩形状の枠型ブレードや、上辺部8と底辺部10の方向が所定角度、例えば45°、90°若しくはそれ以上相違している(
図1、
図2に示す実施例では90°)枠型捩れブレードを用いることができる。該枠型ブレードは全体が、若しくは少なくとも処理材料に接する接液部が、ステンレス鋼等の金属材料で形成されているが、セラミック材料で接液部を構成することもできる。ステンレス鋼製の枠型ブレードは、所定形状に形成後、少なくとも接液面の表面を#320(最大粒子径 98μm以下)程度のバフを使用してバフ研磨してあり、その表面の動摩擦係数はμ=0.667程度に形成される。
【0019】
上記枠型ブレード6の縦辺部9は、タンク7の内側面12に沿って直線状に若しくは下方に捩れながらタンク内側面に沿って延び、それぞれ外側面には幅狭のエッジ部13が形成されている。縦辺部9の下部両端に連絡する底辺部10はタンク7の底面11に沿って直線状に形成されている。上記エッジ部13の幅は、タンクの大きさや所要動力の関係もあるが、通常、約2mm〜6.5mm程度に形成されることが多い。
【0020】
上記タンク7は、全体がステンレス鋼等の金属材料やセラミック材料で上記のように平板状の底面11と円筒状の内側面12を有する筒状体に形成され、周囲にはジャケットが設けられている。
【0021】
上記タンク7の底面隅部14及び枠型ブレード6の縦辺部9と底辺部10が連絡する連絡部の先端である両端角部15には、タンクの底面隅部の全周で材料の流動を向上させると共にブレードの上記エッジ部から材料に十分な剪断力を与えることができるよう小さな曲面が形成されている。この曲面の曲率半径は、約2mm(2R)から15mm(15R)、好ましくは約3mm(3R)から10mm(10R)程度にすると均一な剪断応力を材料に与えることができ、良好な結果が得られる。なお、ブレード6の底辺部の両端角部15とタンク7の底面隅部14に形成する上記曲面の曲率半径は、両者同じ寸法でもよいが、ブレードの駆動力に応じてタンクに設ける曲面とブレードの両端に設ける曲面の曲率を適宜変更し、例えばタンク側の曲率半径をブレード側の曲率半径よりも大きく形成することもできる。
【0022】
而して、上記タンク7の内側面12と底面11において、少なくとも処理材料に接する接液部はダイヤモンドライクカーボン(DLC)でコーティングされ、コート層16が形成されており、該コート層16は底面隅部14の曲面にも連続して設けられている。このコーティングは、公知のようにプラズマCVD等のCVD法やスパッタリング法等のPVD法により、適宜の厚さに形成される。このコート層16によりタンク7の接液部の動摩擦係数は約μ=0.05〜0.1程度となり、上記枠型ブレード6の接液面の動摩擦係数よりも大幅に低くなり、テフロン(登録商標)と同程度の動摩擦係数が得られるとともにテフロン(登録商標)より剥離しにくくできる。また、底面隅部を曲面状に形成したので、底面隅部14に処理材料が付着、固着しにくくなり、かつ底面隅部
14のコート層が剥離するおそれも少なくなる。
【実施例】
【0023】
リチウムイオン二次電池の電極ペーストの活物質として使用される燐酸鉄リチウム(LFP)は粒子径が極めて小さな超微粒子活物質であるが、この活物質の混練に、接液部にダイヤモンドライクカーボン(DLC)によるコート層を設けたタンクを用いる本発明のものと、従来のように接液部をステンレス鋼で仕上げた従来のタンクでテストした。
【0024】
接液部がステンレス鋼である従来のタンクでは、硬練り時にタンクの内壁に材料が付着、固着する現象が見られた。また、得られたペーストをグラインドメーターで調べたところ、グラインドメーター値は、JIS、B法でMAX 45μmであった。
【0025】
接液部にダイヤモンドライクカーボンのコート層を設けたものでは、タンク内面に材料が付着、固着することはなかった。また、撹拌ブレードの動摩擦係数はステンレス鋼の動摩擦係数で接触抵抗が強いから混合、撹拌の際に材料が撹拌ブレードから滑り落ちることがなく、確実に材料とらえてタンク内で全体流動させることができ、短時間で処理することができた。得られたペーストをグラインドメーターで調べたところ、グラインドメーター値は、JIS、B法でMAX 15〜10μmであり、上記従来のタンクを用いた場合に比べて十分に分散、混練されていることが確かめられた。
【符号の説明】
【0026】
1 本体
6 撹拌ブレード
7 タンク
16 コート層