(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063372
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ブレーキコアのガイド装置、及びこのガイド装置を用いて行うブレーキコアの抜き取り方法
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20170106BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20170106BHJP
F16D 65/00 20060101ALI20170106BHJP
F16D 55/225 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B66B11/08 G
B66B5/00 D
F16D65/00 E
F16D55/225 102C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235137(P2013-235137)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93768(P2015-93768A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁杉 建次
(72)【発明者】
【氏名】土屋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 麦
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−161466(JP,A)
【文献】
特開2009−18897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00−11/08
B66B 5/00− 5/28
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸によって所定箇所に取り付けられるブレーキブラケットと、前記ブレーキブラケットに固定されるブレーキボディと、前記ブレーキボディに取り付けられブレーキコアを含む制動部と、前記ブレーキコアに取り付けられ水平方向に延設されるピンと、前記ブレーキボディに形成され前記ピンが挿入される孔と、前記ピンに取り付けられたブレーキシューと、前記ブレーキシューの当接によって制動されるブレーキディスクとを備えた電磁ブレーキ装置にあって、前記ブレーキコアを抜き取る際に用いられ、
前記固定軸が抜かれた箇所に挿入されるシャフトと、
前記シャフトに固定され、前記ピンの延設方向である水平方向に前記ブレーキコアを案内する案内部材とを備えたことを特徴とするブレーキコアのガイド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキコアのガイド装置において、
前記所定箇所は、エレベータの機械室の床面に固定されるマシンベースに立設されるマシンフレームから成り、
前記電磁ブレーキ装置は、前記ブレーキブラケットを前記マシンフレームに取り付け、上側に配置される第1固定軸と、この第1固定軸の下側に配置される第2固定軸とを備え、
前記シャフトが挿入される前記固定軸は、前記第2固定軸であることを特徴とするブレーキコアのガイド装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキコアのガイド装置において、
前記案内部材は、前記ブレーキコアの下側部分の一方側に当接する傾斜面を有する第1支持部材と、前記ブレーキコアの下側部分の他方側に当接する傾斜面を有する第2支持部材とを含むことを特徴とするブレーキコアのガイド装置。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキコアのガイド装置において、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のうちの一方を前記シャフトの上側に固定し、他方を前記シャフトの下側に固定したことを特徴とするブレーキコアのガイド装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載のブレーキコアのガイド装置を用いて、前記電磁ブレーキ装置に備えられる前記制動部に含まれる前記ブレーキコアを抜き取るブレーキコアの抜き取り方法において、
前記ブレーキブラケットを前記所定箇所に取り付ける前記固定軸を抜き取って、代わりに前記シャフトを挿入し、
前記ピンから前記ブレーキシューを取り外すために前記ブレーキシューと前記ブレーキディスクとの係合を生じない位置まで、前記シャフトを中心に前記ブレーキコアを含む前記制動部を回動させ、
その回動位置で前記ピンから前記ブレーキシューを取り外すとともに、前記シャフトに前記案内部材を固定し、
この状態で前記案内部材によって前記ブレーキコアを前記ピンの延設方向に案内させながら前記ブレーキコアを水平方向に抜き取ることを特徴とするブレーキコアの抜き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータを駆動する巻上機等に備えられる電磁ブレーキ装置の分解作業時に使用されるブレーキコアのガイド装置、及びこのガイド装置を用いて行うブレーキコアの抜き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の電磁ブレーキ装置用作業台は、巻上機に備えられる電磁ブレーキ装置に含まれるブレーキコアを水平方向へ抜き取る際に用いられるもの、すなわちブレーキコアのガイド装置であり、この電磁ブレーキ装置用作業台は、ブレーキコアの下方に位置する躯体すなわちマシンフレームの部分に搭載される水平板部と躯体の部分に引っ掛かった状態で固定される固定部とを備えている。
【0003】
この従来技術は、電磁ブレーキ装置に含まれるブレーキコアを水平方向へ抜き取る際に、ブレーキコアを水平に保持することができるので、ブレーキコアを抜き取る作業者とは別の作業者を要したり、チエーンブロックを使用したりせずにブレーキコアを抜き取ることができる。すなわち、巻上機に備えられる電磁ブレーキ装置の分解作業を比較的容易に行うことができ、分解作業コストを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、躯体上に設けるようになっているが、躯体の構造によっては取り付けることができない。また、躯体を持たない片持ち構造の巻上機に備えられた電磁ブレーキ装置の分解作業には適用することができない。すなわち、この従来技術は、適用可能な巻上機の種類に制約を受けることがある。また、適用できない場合には、巻上機に備えられた電磁ブレーキ装置の分解作業が大掛かりになり、この分解作業コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、電磁ブレーキ装置の分解作業に際して、電磁ブレーキ装置が備えられる巻上機の種類に制約を受けることなく適用することができるブレーキコアのガイド装置、及びこのガイド装置を用いて行うブレーキコアの抜き取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係るブレーキコアのガイド装置は、固定軸によって所定箇所に取り付けられるブレーキブラケットと、前記ブレーキブラケットに固定されるブレーキボディと、前記ブレーキボディに取り付けられブレーキコアを含む制動部と、前記ブレーキコアに取り付けられ水平方向に延設されるピンと、前記ブレーキボディに形成され前記ピンが挿入される孔と、前記ピンに取り付けられたブレーキシューと、前記ブレーキシューの当接によって制動されるブレーキディスクとを備えた電磁ブレーキ装置にあって、前記ブレーキコアを抜き取る際に用いられ、前記固定軸が抜かれた箇所に挿入されるシャフトと、前記シャフトに固定され、前記ピンの延設方向である水平方向に前記ブレーキコアを案内する案内部材とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記ブレーキコアのガイド装置を用いて、前記電磁ブレーキ装置に備えられる前記制動部に含まれる前記ブレーキコアを抜き取るブレーキコアの抜き取り方法において、前記ブレーキブラケットを前記所定箇所に取り付ける前記固定軸を抜き取って、代わりに前記シャフトを挿入し、前記ピンから前記ブレーキシューを取り外すために前記ブレーキシューと前記ブレーキディスクとの係合を生じない位置まで、前記シャフトを中心に前記ブレーキコアを含む前記制動部を回動させ、その回動位置で前記ピンから前記ブレーキシューを取り外すとともに、前記シャフトに前記案内部材を固定し、この状態で前記案内部材によって前記ブレーキコアを前記ピンの延設方向に案内させながら前記ブレーキコアを水平方向に抜き取ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るブレーキコアのガイド装置、及びこのガイド装置を用いて行うブレーキコアの抜き取り方法は、ブレーキブラケットを取り付ける固定軸を抜き取った箇所に挿入されるシャフトに、ブレーキコアを水平方向へ案内する案内部材を固定するようにしたことから、すなわち、ブレーキブラケットの固定に際し必ず設けられる寸法精度の高い固定軸の挿入箇所を活用して案内部材を設けるようにしたことから、電磁ブレーキ装置の分解作業に際して、電磁ブレーキ装置が備えられる巻上機の種類に制約を受けることなく適用することができ、いずれの電磁ブレーキ装置の分解作業時にあっても、作業を短時間で行うことができ、分解作業コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るブレーキコアのガイド装置の一実施形態が適用される電磁ブレーキ装置を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す電磁ブレーキ装置に備えられる制御部に含まれるブレーキコアを示す拡大正面図である。
【
図4】本発明に係るブレーキコアのガイド装置の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るブレーキコアのガイド装置、及びこのガイド装置を用いて行うブレーキコアの抜き取り方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、巻上機に備えられる電磁ブレーキ装置1は、例えばエレベータの機械室の床面に固定されるマシンベース2と、このマシンベース2に立設されるマシンフレーム3と、このマシンフレーム3の軸4に回転可能に設けられ、巻上機の回転と同期して回転するブレーキディスク5とを有する。また、この電磁ブレーキ装置1は、固定軸によって所定箇所に、例えばマシンフレーム3の取り付け部3aの背面に固定されるブレーキブラケット6と、このブレーキブラケット6に固定されるブレーキボディ8と、このブレーキボディ8に取り付けられブレーキコア10を含む制動部7とを有する。
【0013】
ブレーキブラケット6をマシンフレーム3の取り付け部3aに固定する前述した固定軸は、上側に配置される第1固定軸15と、この第1固定軸15の下側に配置される第2固定軸16とから成っている。
【0014】
図2,3に示すように、制動部7は、ブレーキディスク5を挟んで対向して配置され、前述したブレーキボディ8に収容されるブレーキシュー9A,9Bを有する。ブレーキシュー9Aは、ブレーキコア10に取り付けられて水平方向に延設されるピン11に取り付けられ、ピン11を介して前述したブレーキコア10によって駆動される。ブレーキシュー9Bは、ピン12に取り付けられ、このピン12はブレーキボディ8に固定してある。ブレーキボディ8にはピン11が挿入される孔8aを形成してある。ブレーキコア10は、水平な姿勢でブレーキボディ8の外部に配置され、固定具によってブレーキボディ8に固定してある。
【0015】
例えば電磁ブレーキ装置1から制動部7のブレーキコア10を抜き取る際に用いられる本実施形態に係るブレーキコア10のガイド装置は、
図4,5に示すように、固定軸、例えば前述した第2固定軸16が引き抜かれた箇所に挿入されるシャフト13と、このシャフト13に固定され、ピン11の延設方向である水平方向にブレーキコア10を案内する案内部材とを備えている。
【0016】
前述の案内部材は、ブレーキコア10の下側部分の一方側に当接する傾斜面14aを有する第1支持部材14Aと、ブレーキコア10の下側部分の他方側に当接する傾斜面14bを有する第2支持部材14Bとを含んでいる。
【0017】
第1支持部材14A及び第2支持部材14Bのうちの一方、例えば第2支持部材14Bをシャフト13の上側に固定し、他方すなわち第1支持部材14Aをシャフト13の下側に固定してある。
【0018】
次に、電磁ブレーキ装置1の分解作業時に、以上のように構成したブレーキコアのガイド装置を用いて、電磁ブレーキ装置1に備えられる制動部7に含まれるブレーキコア10を抜き取るブレーキコアの抜き取り方法の一実施形態について説明する。
【0019】
作業者は、まずブレーキブラケット6をマシンフレーム3の取り付け部3aに取り付けている
図2,3に示す第2固定軸16を抜き取り、抜き取った箇所に、代わりに
図4,5に示すようにシャフト13を挿入する。
【0020】
次に、ブレーキブラケット6をマシンフレーム3の取り付け部3aに取り付けている
図2,3に示す第1固定軸15を抜き取る。
【0021】
ここで、ピン11からブレーキシュー9Aを取り外すためにブレーキシュー9Aとブレーキディスク5との係合を生じない位置まで、シャフト13を中心にブレーキコア10を含む制御部7を回動させる。
【0022】
また、ブレーキコア10をブレーキボディ8に固定していた固定具を取り外し、ピン11からブレーキシュー9Aを取り外す。
【0023】
この状態でシャフト13に案内部材を固定する。すなわち、第1支持部材14Aを、その傾斜面14aがブレーキコア10の下側部分の一方側に当接するように、シャフト13の下側に固定する。また、第2支持部材14Bを、その傾斜面14bがブレーキコア10の下側部分の他方側に当接するように、シャフト13の上側に固定する。
【0024】
このような準備を行った後、作業者は
図5の矢印に示す水平方向へ電磁ブレーキ装置1のブレーキコア10を引き抜く。このとき、ブレーキコア10は一対の傾斜面14a,14bに支えられ、受け止められて水平に保持されながら、これらの一対の傾斜面14a,14b上を摺動し、ピン11が孔8aから抜けて、ブレーキコア10及びピン11をブレーキボディ8から抜き取ることができる。
【0025】
以上のように、本実施形態に係るブレーキコア10のガイド装置、及びガイド装置を用いて行う本実施形態に係るブレーキコア10の抜き取り方法は、ブレーキブラケット6を取り付ける第2固定軸16を抜き取った箇所に挿入されるシャフト13に、ブレーキコア10を水平方向へ案内する第1支持部材14A及び第2支持部材14Bを含む案内部材を固定するようにしてある。すなわち本実施形態は、ブレーキブラケット6の固定に際し必ず設けられる寸法精度の高い第2固定軸16の挿入箇所を活用して案内部材を設けるようにしたことから、電磁ブレーキ装置1の分解作業に際して、電磁ブレーキ装置1が備えられる巻上機の種類に制約を受けることなく適用することができ、いずれの電磁ブレーキ装置1の分解作業時であっても、作業を短時間で行うことができ、分解作業コストを低減させることができる。
【0026】
また、本実施形態は、シャフト13の下側に傾斜面14aを有する第1支持部材14Aを固定し、シャフト13の上側に傾斜面14bを有する第2支持部材14Bを固定する構成にしてあることから、多種の形状のブレーキコア10に下方から傾斜面14a,14bが接触するように、第1支持部材14A及び第2支持部材14Bをシャフト13に容易に固定することができ、ブレーキコア10の抜き取り時に、第1支持部材14A及び第2支持部材14Bを含む案内部材でブレーキコア10を精度良くガイドし、ブレーキコア10を円滑に抜き取ることができる。
【0027】
なお、前述した実施形態は、電磁ブレーキ装置1の分解作業に適用した場合を例示したが、本発明は電磁ブレーキ装置1の分解作業に限られず、組立作業にも適用することができる。本発明を電磁ブレーキ装置1の組立作業に適用した場合には、組立作業を短時間で行うことができ、組立作業コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 電磁ブレーキ装置
2 マシンベース
3 マシンフレーム
3a 取り付け部(所定箇所)
4 軸
5 ブレーキディスク
6 ブレーキブラケット
7 制動部
8 ブレーキボディ
8a 孔
9A ブレーキシュー
9B ブレーキシュー
10 ブレーキコア
11 ピン
12 ピン
13 シャフト
14A 第1支持部材(案内部材)
14a 傾斜面
14B 第2支持部材(案内部材)
14b 傾斜面
15 第1固定軸
16 第2固定軸