【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中央層(13、53、90)は、FePt、FePd、CoPt、CoPd、GdCo、TdFeCoからなる群から選択される、それ自体の垂直磁気異方性を提供する磁性化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気素子。
前記第1の外側層(52)は、磁性材料の読出し層(58)と読出し電極(59)とに覆われていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の磁気素子。
前記第1の外側層及び前記中央層はブロックを形成することと、前記第2の外側層はトラックを形成することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の磁気素子。
書き込み可能な磁気デバイスであって、請求項19又は20に記載の複数のブロックを備え、該ブロックの前記第2の外側層は該ブロックに共通である前記トラックを備えることを特徴とする、書き込み可能な磁気デバイス。
【背景技術】
【0002】
層又は微細磁気素子の磁化は、通常、磁場を印加することによって反転される。磁場の方向は、磁化を或る方向に向けることが望ましいのか又は別の方向に向けることが望ましいのかに応じて変わる。磁気トラックへの又はコンピューターハードディスクへの書込みは、以下の原理に基づく。すなわち、磁場を3次元的に局所に限定するように、反転させるための素子を磁場発生器の物理的に近くに置く。磁場をデバイスに集中することに関して数々の問題を発生させるのは、磁場の、本質的に3次元的に局所に限定されていないという構造によるものであるからに他ならない。したがって、機械的な作用が可能でないか、又は望まれない場合に、例えば、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)として知られている固体磁気メモリ、又は論理デバイスの場合、磁場がターゲットのセルのみに作用し、そのセルの近傍には影響を与えないほど十分に磁場を収束することが必要である。この問題は、様々なメモリセル又は論理セルが、それらの密度を増加させるために互いに非常に近くに配置されている場合に、深刻さが増してくる。
【0003】
スピン偏極電流により磁化を操作することの可能性が、1996年に初めて理論的に論証され、この問題に対する最初の解決法を提供した。メモリ点の磁化を操作する目的のために、スピントランスファートルク(STT)と呼ばれるこの物理原理は、非磁性体の金属(スピンバルブ型構造の場合)又は絶縁体(磁気トンネル接合型構造の場合)によって分離された少なくとも2つの磁性層の存在を必要とし、その2つの層は共線的でない磁化を有している。詳細な物理的説明は、スピンバルブ構造が含まれるのか、磁気トンネル接合構造が含まれるのかに基づいて異なるが、概要としては、電流は、第1の磁性層を通過するとスピン偏極し、そのとき、電流偏極の非共線成分によって、第2の層の磁化にトルクを及ぼす。電流密度が十分に高い場合、第2の磁性層の磁化は、スピンバルブの場合と磁気トンネル接合の場合との双方で反転され得る。
【0004】
例えば、2006年3月7日に公開された特許文献1及び2009年5月21日に公開された特許文献2で説明されているように、書込み電流は必然的に層平面に垂直に接合を通過する必要がある。
【0005】
サブマイクロメーターサイズの磁気素子の磁化を電流によって局所的に操作するこの機能により、応用の可能性が直ちに広がる。現在、業界関係者らは、MRAMメモリセル及び論理部品に関する新規のアーキテクチャにこの原理を組み込むことを探求している。
【0006】
現在、そのような団体は、相互に関係していると思われる様々な困難に直面している。
【0007】
STTによる反転では、メモリ点(memory point)に、非磁性のスペーサーによって分離されている少なくとも2つの磁性層が存在することが必要である。上述のように、書込みは高密度電流を積層全体を通過して磁性層の平面に垂直に注入することによって、実行される。読出しは、積層の磁気抵抗、すなわちスピンバルブの場合は巨大磁気抵抗(GMR)、磁気トンネル接合の場合はトンネル磁気抵抗(TMR)によって実行される。現在、全て、又はほとんど全ての応用形態は、磁気トンネル接合を用いることに基づいている。したがって、GMR信号は数パーセントにすぎないが、MgOに基づく接合部からのTMR信号は通常100%より大きい。それにもかかわらず、トンネル接合は、抵抗に面積を乗じた積(RA)に関して大きな値を示すという不都合がある。したがって、STT反転に必要とされる、10
7アンペア毎平方センチメートル(A/cm
2)の通常の電流密度に対して、接合部のエッジの電圧は、RAが100オーム平方マイクロメートル(Ω・μm
2)の場合で10ボルト(V)、RAが10Ω・μm
2の場合で1V、RAが1Ω・μm
2の場合で0.1Vである。最小値である場合は別として、接合部で散逸される電力は、このとき、大きくなり、エネルギー消費という点と、その接合部にダメージを与えるという点との双方に関して有害である。さらに、読出しにおいて有用なTMRの高い値は、多くの場合、RAに関して高い値を示す積層によって得られる。これが、現在の研究が高TMR値と小RA値とを示すトンネル接合を得ることを追求している理由である。加えて、接合部のエッジでの比較的小さな電圧値に対してさえ、動作時に電圧のサイクルに起因して接合部のエージングが加速される現象が観察されている。現在、数々の研究が、現存の構成において材料を最適化することと、書込みの問題と読出しの問題とを可能な限り分離することを可能にする、新たな構成を、例えば3端子を有する構成を用いること等によって規定することとの双方の点に向けられている。
【0008】
要約すると、既知のSTTデバイスにおいては書込みと読出しの2つの現象が本質的にリンクしているので、書込みと読出しの2つの現象を独立に最適化することが不可能であることに難点が存在している。
【0009】
上述のように、上記難点から生じる1つの難点は、書込みは電流が積層を非常に高い密度で通過することを必要とすることにある。
【0010】
このリンクに固有の更に別の難点は、積層のより一層大きな複雑性から生じる。このため、磁化を保存するために、STT効果が、反転されることになる層内でのみ感受されることが望まれる場合は、例えば、反強磁性の材料との交換結合によって他の層を安定させることが必要である。すなわち、STT注入の大きさを増加させることが望まれる場合は、偏極層を最適化することが必要であり、感受層上に放射される磁場を減少させることが望まれる場合は、例えば人工の反強磁性体の二重層を用いることが必要である、等である。
【0011】
結果として、MRAMのセル、又は論理部品の通常の磁気積層は、様々な材料の10層又は15層を超える異なる層を有する場合がある。その場合、このことが構造化する工程中、特にエッチング工程中の困難を生じさせ、そのような磁気積層を集積する場合の主要な障壁事項の1つになっている。
【0012】
別の研究分野は、局所電界によって磁化を操作することである。これは、外部の電界によって、印加された磁場によって磁化が反転されることで、材料の異方性を変更することにより部分的に達成することができる。そのような技法の1つが、非特許文献1の論文に説明されている。
【0013】
現在、この技法は、材料の磁気異方性を減少させることのみを可能とする。このとき、書込み及び読出しのプロセスは上述のプロセスと同じであり、同じ問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、磁化を反転させるために(その平面に垂直な磁化を有する)磁性層が存在することだけを必要とし、積層が層の垂直に書込み電流を流すことを必要とすることなく動作する磁気的に書込み可能な素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本発明は、書込み磁性層を提供する層の積層を備える書込み可能な磁気素子であって、
前記積層が、少なくとも1つの磁性材料の中央層であって、該少なくとも1つの磁性材料は該中央層の平面に垂直な磁化の方向を提供する、中央層を有し、該中央層は前記書込み磁性層を構成し、非磁性材料の第1の外側層と第2の外側層との間に挟まれ、前記第1の外側層は第1の非磁性材料を含み、前記第2の外側層は、前記第1の非磁性材料とは異なる第2の非磁性材料を含み、少なくとも前記第2の非磁性材料は導電性であることと、
該磁気素子が、一方で、前記第2の外側層及び前記中央層のみを通って、並びに前記第1の外側層が導電性の場合のみ、場合によっては該第1の外側層を通って書込み電流を流すデバイスであって、該書込み電流は少なくとも前記中央層の前記平面に平行な電流の方向に流れる、デバイスと、他方で、前記書込み電流が存在するとき、前記中央層の前記平面に垂直な磁場の方向に沿って書込み磁場を印加するデバイスとを備えることを特徴とする、書込み磁性層を提供する層の積層を備える書込み可能な磁気素子を提供する。
【0018】
前記メモリは前記印加された書込み磁場の前記方向に作用することによって、いずれか一方の方向に書き込まれる。
【0019】
中央層のパネルに垂直な磁化は、中央層の材料の本質的な異方性、又は例えば上記材料の界面によって生じる異方性の結果として得られる。
【0020】
電流は磁性層に平行に流れ、層に垂直に積層内を通過せず、メモリには、上記電流が存在するとき、特に電流パルスが存在するとき、印加される磁場の方向に作用することによって0又は1を書き込むことができる。
【0021】
以下で説明するように、本発明は、ラシュバ場に起因する有効磁場と、局所磁化に作用するs−d交換相互作用とを利用する。上記磁場は以下でスピン軌道場と呼ばれる。スピン軌道場は、積層の非対称性に起因して、電流、及び界面の平面に垂直な電界の双方に直交し、このため、本発明の形状において積層の異方性の方向に直交し、これによって2つの安定した磁化構成を分離するエネルギー障壁を低下させることが可能になる。印加される磁場は、磁化が配向される方向に配向される。この磁場の大きさは、電流が存在しないときに磁化を反転させるのに十分でないが、電流が存在するときに磁化を反転させるのに十分である。
【0022】
中央層は、有利には、0.1ナノメートル(nm)〜5nmの範囲内の厚さを有し、好ましくは2nm以下である。
【0023】
中央層は、有利には、磁化の方向が層の平面に対して垂直である場合、中央層はそれ自体の垂直磁気異方性を提供する磁性化合物、すなわち、詳細にはFeP、FePd、CoPt、又は更には、希土類元素、及び同様にそれ自体垂直磁気異方性を提供する、GdCo若しくはTdFeCo等の遷移金属合金を含む。
【0024】
中央層は、有利には、界面によって誘導される垂直磁気異方性を提供する金属又は合金、特にCo、Fe、CoFe、Ni、CoNiを含む。
【0025】
少なくとも1つの導電性外側層は、有利には、非磁気金属、特にPd、Cd、Cu、Au、Bi、Ir、Ru、W又はこれらの金属の合金で作られる。このような導電性層の厚さは、例えば、0.5nm〜100nmの範囲内、より詳細には0.5nm〜10nmの範囲内にあり、好ましくは5nm以下である。この層の厚さは、中央層の厚さとは無関係に選択することができる。
【0026】
第1の外側層が非導電性である場合、第1の外側層は有利にはSiO
x、AlO
x、MgO
x、TiO
x、TaO
x等の誘電性の酸化物であるか、又はSiN
x、BN
x等の誘電性の窒化物である。この外側層の厚さは、例えば0.5nm〜200nmの範囲内、より詳細には0.5nm〜100nmの範囲内とすることができ、特に記憶素子がトンネル磁気抵抗信号によって読み出される場合は、好ましくは3nm以下である。
【0027】
双方の外側層は、導電性とすることができるが、このとき外側層は上記非磁性金属又は金属合金のうちの2つの異なるものから選択される。
【0028】
電流密度は、例えば10
4A/cm
2〜10
9A/cm
2の範囲内、有利には10
5A/cm
2〜10
8A/cm
2の範囲内にある。
【0029】
磁場は、20エールステッド(Oe)(0.002テスラー(T))〜10000Oe(1T)の範囲内、有利には50Oe(0.005T)〜800Oe(0.8T)の範囲内にある値を提供することができる。
【0030】
第1の外側層は、磁性材料の読出し層及び読出し電極で覆うことができる。
【0031】
第1の外側層が非磁性金属で作られる場合、第1の外側層は、読出し層、読出し電極及び中央磁性層と共同してスピンバルブを形成する。第1の外側層の厚さは、10nm未満、好ましくは5nm未満である。
【0032】
第1の外側層が誘電体である場合、第1の外側層は、上記読出し層、読出し電極及び中央層と共同して磁気トンネル接合を形成する。第1の外側層の厚さは5nm未満、例えば0.5nm〜5mmの範囲で、好ましくは3nm未満である。
【0033】
第1の外側層と中央層とが
ブロックを形成し、一方、第2の外側層はトラックを形成する場合がある。
【0034】
一変形の実施の形態において、第2の外側層は、
ブロックの一部を形成する追加の厚さの領域を含む。
【0035】
本発明は、複数の上記
ブロックを含む、書き込み可能な磁気デバイスを提供し、この磁気デバイス内では、第2の外側層は
ブロックに共通である上記トラックによって構成される。
【0036】
代替的には、磁気的に書込み可能なデバイスは、第1の外側層、中央層、及び第2の外側層が
ブロックを形成することと、書込み可能な磁気デバイスが、複数の上記
ブロックを、上記
ブロックの第2の外側層と
隣接する導電性トラックとともに有し、上記
ブロックの各々の第2の外側層及び中央層を通して上記電流を注入し、各第2の外側層は、導電性トラックの材料と異なる導電性材料で作られることとを特徴とする。
【0037】
図面を参照しながら以下の説明を読むことにより、本発明をより良好に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に関連して実施される積層、すなわち中央磁性層が磁性体でない2つの外側層間に挟まれていて、その2つの層のうちの少なくとも1つは導電性であり、2つの外側層が異なる材料からなるこの積層は、中央磁性層において非補償の電界を発生させる反転非対称性(inversion asymmetry)を生じさせる効果を有する。この電界中を伝搬する電子は自身の座標系において、ラシュバ場
【数1】
として知られる磁場に曝される。ラシュバ場
【数2】
は、導電性層内を流れる電流と電界との双方に対して垂直である。こうして、この磁場は伝導電子に印加される。
【0040】
本発明者らは、ラシュバ場と遍歴電子及び局在化電子のスピンを結合するs−d交換相互作用とからの結果としての有効磁場(スピン軌道磁場と呼ばれる)が局所磁化に印加されることを示した。
【0041】
上に述べたように、Nature Materials(vol.9, p.230-234(2010))に掲載された、Ioan Mihai Miron他による「Current-driven spin torque induced by the Rashba effect in a ferromagnetic metal layer」と題する論文は、3nm厚のPtの層と、その平面に対して垂直な磁化、したがって、z軸に平行な磁化を有する0.6nm厚のCoの層と、x軸に平行に流れる電流を運ぶ2nm厚のAlO
xの層とを有する積層を示している。この積層化は座標系の第3の軸、すなわちy軸に沿った有効磁場H
eff(又はスピン−軌道場)を提供する。したがって、この構成は磁場が層の磁化と共線的ではないので、メモリを作製するには不適切である。
【0042】
それにもかかわらず、本発明者らは、このスピン軌道磁場によって、磁性層の磁化を反転させるために必要な印加される磁場を、予期しない形で減少させることができることを示した。本発明者らが理解しているように、2つの安定した垂直磁化構成間のエネルギー障壁は、電流が反転対称性を呈する構造に注入されるとき、スピン軌道磁場を利用することによって低下される。このとき、これらの2つの安定した構成間の磁化の反転に必要な印加される磁場は、注入電力が存在しないときの値と比べて減少される。このため、印加される磁場の方向は、磁化を配向させることが望ましい方向である。
【0043】
図1a〜
図1fは、本発明の実施態様を示している。この実施態様では、印加される磁場の方向は電流の方向及びスピン軌道場の方向に垂直であり、磁性中央層の平面に垂直な磁化の方向に平行である。
【0044】
参照符号15は構造体の短絡を避けるための絶縁体である基板を示している。この基板は、特に誘電性酸化物(例えばSiO
x、AlO
x、MgO
x)又は窒化物、例えばSiN
xによって構成することができる。この基板は、基板単独でもよいし、他の何らかの基板、例えばシリコンの上に堆積することもできる。
【0045】
参照符号13は平面に対して垂直な磁化の平面磁性層を示す。参照符号16は、或る方向又は反対の方向で存在することができる磁化の配向を示す。
【0046】
参照符号12は第1の非磁性外側層を示し、参照符号14は第2の非磁性外側層を示す。第2の外側層14は書込み電流が流れる層である。
【0047】
参照符号11は、層13の平面に平行な電流の方向を示し、参照符号17は印加される磁場の配向を示す。磁場の配向は、磁化の方向と平行であり、したがって中央層13の平面と垂直であり、同じ方向又は反対の方向に存在することができる。
【0048】
図1a及び
図1bは、非構造化積層を示す。非構造化積層内の積層の層12、13、及び14はトラックを形成する。
【0049】
図1c〜
図1fは、構造化積層を示す。構造化積層内では層14は導電性であり、磁性層13及び非磁性層12だけが構造化される層であり、これにより
ブロック18a(
図1c及び
図1d)を形成するか、又は構造化積層内の3つの層12、13、及び14は構造化され、導電性層14の追加の厚さ14’を集積することにより、
ブロック18bを形成する。これにより、
ブロックは非磁性材料の層14の厚さの小部分含む(
図1e及び
図1f)。第2の外側層に考慮すべき厚さは、層14の厚さに追加の厚さ14’を適切にプラスしたものである。
【0050】
追加の厚さ14’の領域は必ずしも層14と同じ導電性材料で作られている必要はなく、この場合、第2の非磁性外側層としてふるまうのは追加の厚さ14’だけであり、反転非対称性を得るためにスタック内で機能を果たすのは追加の厚さ14’の材料であることに留意すべきである。この場合、層14の金属性材料は、任意の材料とすることができる。
【0051】
ブロック18a又は18bを形成することにより、
ブロックの中の磁化のみを反転することが可能になる。そうでない場合は、トラックの長さ全体にわたって磁化が反転されてしまうからである。
【0052】
磁性層13は垂直の磁化を表し、その厚さはかなり薄い。このため界面に起因する電界は無視できない。上記厚さは、通常は2nmを超えることはなく、最大でも5nmである。例えば、磁性材料自体の垂直磁気異方性に起因して垂直の磁化を示す磁性材料(FePt、FePd、CoPt、
CoPd、...等の合金; GdCo、TbFeCo、...等の希土類及び遷移金属の合金)、又は界面によって誘導される垂直磁気異方性を示す磁性材料(Co、Fe、CoFe、Ni、CoNi、...)の全てを用いることができる。例えば、磁性半導体材料、例えばGaMnAs(すなわちMnドープのGaAs)等の非金属性の磁性材料等を採用することも可能である。既知の磁性半導体材料は周囲より低い温度でのみ磁性体であるということに留意すべきである。
【0053】
磁性材料の垂直異方性が界面によって誘導されるとき、例えば上記外側酸化物層の堆積パラメーターを変更するか、又は積層を作製した後にアニールを実施することにより、中央層の厚さに対して、及び/又は外側酸化物層の酸化状態に対して作用することによって、平面に対して垂直な磁化を得ることが可能である。
【0054】
例:2nm厚のPt導電性層14と、1nm厚のCo中央層13と、AlO
x層12とを備える積層は、このAlO
xの所与の酸化状態に対して、垂直な層磁化を提供し、一方、Co層の厚さが1.5nmに等しい場合、磁化は平面内にある。積層が真空中で300℃において60分間アニールされる場合は、Co中央層13の磁化は平面に対して垂直である。Co層の厚さが3nmより厚いと、層12がAlO
xで作られている場合、アニール又は酸化パラメーターにかかわらず、平面の外部で磁化を得るのは不可能である。しかしながら、層12に用いられる誘電体がMgO
xである場合、中央層の3nm以上の厚さについても、垂直の磁化を得ることが可能である。
【0055】
様々な酸化物(AlO
x、MgO
x、SiO
x)の磁気特性に与えるコバルト層の厚さの影響は、IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 46, No. 6, June 2010において掲載されたJae Chul Lee他による論文「Domain patterns and magnetization reversal behaviors in oxide/Co/Pt films」内で説明されている。
【0056】
Pt/Co/AlO
x三層における磁気特性に与える酸化及びアニールの影響は、Physical Review B 79 024423 (2009)において掲載されたB.Rodmacq他による論文「Influence of thermal annealing on the perpendicular magnetic anisotropy of Pt/Co/AlO
x trilayers」内で説明されている。
【0057】
プラチナ/コバルト/金属酸化物三層積層におけるコバルト層の磁気特性に与える酸化物層の酸化状態の影響は、Journal of Applied Physics 104, 043914 (2008)において公開されたA.Manchon他による論文「Analysis of oxygen induced anisotropy crossover in Pt/Co/MO
x trilayers」内で説明されている。
【0058】
構造内全体に反転非対称性を作り出すために、2つの非磁性層12及び14は異なるものである必要がある。有利には、2つの異なる材料は、これらの層の層ごとに、例えば2つのうちの一方に対しては誘電体が選択され、他方に対しては金属が選択されるが、それらの各々に対して金属を選択することも可能である。構造が
ブロックではなくトラックを形成する場合のみ、層12及び14の双方を誘電体とすることが可能である。このとき、トラックからなる中央層13内を直接電流が流れるようにすることが可能である。
【0059】
したがって、2つの非磁性層12及び14の各々は、それらの層が異なるとともに積層全体(層12、13及び14)が垂直の磁化を有するという条件下で、以下の材料、すなわち、誘電性酸化物(SiO
x、AlO
x,MgO
x、TiO
x、TaO
x、HfO
x、...)と、誘電性窒化物(SiN
x、Bn
x、...)と、非磁性金属(Pt、Pd、Cu、Au、Bi、Ta、
Ir、Ru
、W...)と、これらの金属の非磁性合金と、任意選択で有機半導体化合物(必要な場合、成長バッファ(buffer)、例えばイリジウム等の金属に関連付けられた、例えばGaAs、Si、Ge又はグラファイト)とで構成することができる。
【0060】
非磁性層の一方又は他方が導電性である場合、2つの外側層は同じ組成であってはならない。
【0061】
層12及び14の厚さは、広範囲の値にわたって選択することができ、通常は0.5nm〜200nmの厚さであり、より詳細には0.5nm〜100nmの範囲内とすることができる。
図2a及び
図2bに示すように、層12が絶縁層である場合、メモリ点がトンネル磁気抵抗信号によって読み出される場合を除いて、例えば磁性層及び電極を上記絶縁層の上に付加することによって、層12が重大な値、通常は100nmに達する値であっても害はない。そのような状況下では、絶縁層の厚さは、3nm未満となるように選択されることが好ましい。金属で作られた層12及び/又は14を有する場合、これらの導電性チャネルが並列である結果として磁性層を通過する有効電流が過度に少なくなることを避ける一方で、他方でメモリ点が巨大磁気抵抗信号によって読み出されることを可能にするために、それらの金属層は薄く、通常5nm厚未満、一般的には10nm厚未満であることが好ましい。
【0062】
これらの様々の層は、蒸着、スパッタリング、電気化学堆積、化学成長、...等の任意の既知の技法によって堆積することができる。
【0063】
或る特定の形状では、層14を省くことができる。このとき、磁性層13は(非磁性層として働く)絶縁基板15の上に直接堆積すべきであり、非磁性層12は反転非対称性を有するように、すなわち基板15を構成する材料とは異なる材料から選択されるべきである。それにもかかわらず、
ブロックが構造化される場合、構造化された
ブロック(ここでは18a及び18b)に電流を注入することができるように、層14が存在し、導電性の材料で構成されなければならないことに留意すべきである。そのような状況下では、追加の厚さ部分14’も導電性でなければならない。これにより、ラシュバ場を生成し、磁性中央層13に電流を注入することを可能にするために、層12と組合せて、求める反転非対称性が生成される。
【0064】
反転される素子は、示されているトラック(
図1a及び
図1b)であるか、又はトラック内に取付けられるか若しくは構造化される
ブロック(
図1c〜
図1f)であるかにかかわらず、導電性電極に既知の方法で接続される。これにより、電流が方向11に沿って注入される。
【0065】
磁化の方向と共線的に、かつ磁化を配向させることが望ましい方向に印加された磁場は、電流パルスが存在しないときに磁化を反転するのに十分でないが、電流パルスが存在するときに磁化を反転するのに十分な大きさを有する。このため、磁場は、電流パルスと正確に同期しているか、又は電流パルスよりも短い持続時間のパルスの形態で提供し、電流パルス内に含めることもできるし、パルスの持続時間は電流パルスの持続時間よりも長くすることもでき、この解決法は、印加時に統合されるのがより簡単である場合がある。
【0066】
このため、そのような状況下で、電流注入の方向は任意に選択することができ、双方の方向が異方性障壁を下げることに同様の効果を有する。
【0067】
定電流を用いて、所望の方向に磁場を生成することも可能であるが、この解決法は、電気消費の観点からあまり有利でない。なぜならば、磁化は電流が存在しないときに安定し、書込みステップ中を除いて、導電性層内に電流を印加する必要がないためである。このため、定電流が用いられるとき、2つの磁化状態(上方及び下方)間のエネルギー障壁は常に低下され、これによって望ましくない磁化のフリップが生じるリスクがある。
【0068】
印加される磁場値は、材料の異方性、材料の保磁場、及び注入電流密度と関連付けられている。通常、この磁場は、20Oe(0.002T)〜10kOe(1T)の範囲内、より詳細には、0.005T〜0.8Tの範囲内に存在することができる一方、電流密度は、10
2A/cm
2〜10
9A/cm
2の範囲内、より詳細には、10
5A/cm
2〜10
8A/cm
2の範囲内に存在することができる。
【0069】
書込みステップ中に適用される電流密度が高くなると、磁化を反転させるために印加する必要がある磁場の値が低くなる。
【0070】
磁場はまた、様々な方法で印加することができ、例えば単にコイル内を流れる電流を用いてデバイス全体にわたる全体磁場を生成するようにして印加する(この場合、電流注入によってエネルギー障壁が低下された
ブロック(メモリ点)のみが反転される)こともできるし、従来技術のMRAMメモリにおいて用いられる種類の電流を搬送するトラックによって印加する(反転は磁場によって生じる)こともできる。
【0071】
図2a及び
図2bはMRAMメモリセルにおいて使用可能な積層の例を示している。
【0072】
参照符号53は、電気的に絶縁である基板55について上述したように、積層を作るために2つの異なる非磁性材料52及び54間(任意選択の追加の厚さ54を有する))に挟まれた磁性中央層を示している。
【0073】
参照符号57は印加される外部磁場の軸を示している。この磁場は、所望の書込みについて探索された方向に応じていずれかの方向に印加することができる。
【0074】
読出しの目的で、積層の上方に、磁性材料の層58と1つ又は複数の導電性層(磁性的又は非磁性的とすることができる)を含むことができる上部電極59とが配置されている。
【0075】
層58の機能は、構造53、52、及び58が、層53の磁化の方向56に基づいて異なる電気抵抗値を呈すること(磁気抵抗信号)を可能にすることである。これは読出しのみに関することであり、層53の磁化を操作することには影響しない。
【0076】
言い換えると、書込み及び読出しは独立して規定され、別々に最適化することができる。
【0077】
電極59は1つの層を備えることができるか、又は従来の方法では異なる機能の層の積層を備えることができる。例えば、電極59は以下の物、すなわち、
操作されることになる層53に向けて放射される磁場を制限するように合成の反強磁性(synthetic antiferromagnetism)を画定している積層、例えば、非磁性の金属材料の非常に薄い層(通常、0.3nmのルテニウム(Ru))によって強磁性体層58と分離されている強磁性体層を備える積層であって、2つの強磁性体層の磁化の値は可能な限り互いに近い値であり、それによって、ルテニウム層の存在に起因したそれらの層間の反強磁性結合は、上記3層によって層53上へ放射される磁場が結果としてゼロになるか又は実質的にゼロになる、積層か、
又はそうでない場合、このいわゆる「基準」層58を安定化するように、層58と交換することによって結合された反強磁性の磁性材料か、
又はそうでない場合、電気的なコンタクトを形成するための非磁性の導電性材料か、
又は更には、上記の様々な可能性の組合せ、例えば、強磁性体材料と反強磁性材料との間を結合することによってそれらの磁化を安定させるように、強磁性体材料に近接した反強磁性材料であって、強磁性体材料は層50から、通常は0.3nmのRuの薄い金属層によって分離され、これによって、上記2つの強磁性体層間の磁気結合が反強磁性となる、組合せ、
を備えることができる。最終的には、第1の磁性材料は、例えば7nmのRuで覆われた5nmのTaのように、1つ又は複数の非磁性の導電性層で覆われる。そのような組合せの例は、例えば、Int. J. Nanotechnology, Vol. 7, 591 (2010)においてB. Dieny他によって説明されているように、STT反転のために用いられる磁気積層内に見ることができる。
【0078】
2つの主な構成は層52の特性に基づいて区別することができる。すなわち、層52が非磁性金属で作られている場合、構造53、52、及び58はスピンバルブ型であり、一方、層52が誘電性の場合、構造53、52、及び58は磁気トンネル接合型である。層52が非磁性材料で作られているとき、層の厚さは10nm未満であり、好ましくは5nm未満であるのに対し、層52が誘電性であるとき、層の厚さは5nm未満であり、好ましくは3nm未満である。磁気抵抗信号は、磁気トンネル接合型構造に関してより一層強力であるので、これらの構造は好ましい構造である。同様に、磁気抵抗信号を更に最適化するために、いずれの状況下においても、好ましい構造は、層58の磁化が共線であり、層53の磁化と平行であるか、又は逆平行であることである。
【0079】
図2a及び
図2bにおいて、A、B、Cは3つの電気的な接続端子を示している。書込み段階中、電流は端子Aと端子Bとの間に注入される(又は等価な方法では、電圧が上記2つの端子間に印加され、電流の流れを発生させる)。電流は磁性層53を通過して、この層内に、ラシュバ場と、局所磁化に作用するs−d交換相互作用とに起因する有効磁場を生成する(Miron他による上述の論文を参照されたい)。本発明によれば、有効磁場(又はスピン軌道場)は、印加された外部磁場と組み合わせて、2つの安定した磁化構成を分離するエネルギー障壁の低下を利用することによって磁化を操作することを可能にする。磁化は、磁場が磁化の方向と反対の方向に印加される場合に反転される。層52が誘電性の材料で構成される場合、横方向に注入された電流はその層を通過しないので、その層を損傷しない。
【0080】
格納される情報は、通常、層53内の磁化の配向であり、トンネル接合型構造及びスピンバルブ型構造の双方の場合に、端子Cと端子Bとの間(又は等価の方法では、端子Cと端子Aとの間)に低い値の電流(例えば、トンネル接合の場合で数マイクロアンペア(μA)〜数十μA程度)を注入し、これらの端子間の電圧を測定することによって;又はそうでない場合、端子Bと端子Cとの間(又は等価の方法では、端子Cと端子Aとの間)に定電圧を印加し、これらの端子間を流れる電流を測定し、それにより、全ての場合に当該端子間の抵抗を測定することによって、読み出される。
【0081】
抵抗は、磁化の方向56が基準層58の磁化の方向に平行であるか又は逆平行であるかに基づいて2つの異なる値を有する。読出し電流は小さい値を有しているので、これによりトンネル障壁(層52が誘電性である場合)は損傷を受けない。
【0082】
メモリアーキテクチャーの例を、
図3a〜
図3dを参照して以下で説明する。
図3a〜
図3dの中で、
図3b及び
図3dは、
図2a及び
図2bの構造を実装して、電流を搬送する磁力線によって印加される磁場を生成することに関する。
【0083】
図3a〜
図3dは、説明した事例を用いてメモリの可能なアーキテクチャを示している。2つの非磁性層91及び92の間に挟まれた垂直な磁化97を有する磁性層90(
図1a〜
図1fの層12及び14並びに
図2a及び
図2bの2及び54に対応する)を見ることができる。
【0084】
ここで、単純にするために、層91は、層12又は52と、トンネル接合型積層又はスピンバルブ型積層を規定する役割を果たす磁性層及び非磁性層との双方を含み、これによって(
図2a及び
図2bの層52、58、及び59のように)層90の磁化状態を読み出すことを可能にする。
【0085】
層90の磁化は、下部電極92内を流れる電流と、磁化軸に沿った矢印96に沿って、かつ層90内の磁化を切り替えるための方向に配向された変動する磁場とによって反転される。
【0086】
これを行うために、挟持構造(sandwich)を構成する第2の非磁性層92が、この例において電流供給トラックの形態で構造化される。このトラックは、例えば層92の下に位置する別の材料の別の層によって構築することもできる。電流注入はトランジスタによって制御される。
【0087】
2つの事例が例として用いられる。第1の事例において、2つのトランジスタ93a及び93bがスイッチとして用いられ、それらのスイッチの自由端子は、一方はグラウンドに接続され、他方は電圧V
ddに接続され、電圧V
ddは、選択された値の電流を流すように選択される。
【0088】
第2の事例において、1つのみのトランジスタ93aが用いられ、トラック92の他端は定電圧に接続される。
【0089】
この時点において、電流の方向は機構の動作に影響を及ぼさないこと、及び電流の方向にかかわらず、障壁は同様に低下することを観察することができる。
【0090】
このため、2つの動作方法が可能である。
【0091】
対称動作
例えばトランジスタ93aに接続されたトラックは電圧V
dd又はグラウンドに接続される一方、トラック92の端部に接続された他方のトラックは、95においてグラウンド(又はV
dd)に接続される。この構成は、以下の構成よりも多くの電流が生成されることを可能にする。
【0092】
非対称動作(好ましい)
トラック92の端部に接続されたトラックは、98によって中間電位、例えばV
dd/2に接続される一方、トランジスタ93aに接続されたトラックは、所望の電流の方向に基づいて、電位V
dd又はグラウンドに引き上げられる。この構成は、上記の構成よりも、生成されることになる電流を少なくすることを可能にする。本発明は、既知の技法で用いられる領域よりはるかに小さい領域に書込みモードで書込み電流を注入することを可能にし、この書込み電流はデバイスを動作可能とするのに十分である。この実施形態では、動作によって消費される電気がより少ない。
【0093】
ここで説明する事例において、磁化を切り替えるのは印加される磁場である。したがって、磁場96は可変でなくてはならず、磁化の方向に平行に配向されなくてはならない。1つの可能な実施形態が
図3b及び
図3dに示されている。磁場は、積層のいずれかの側に配置された2つの磁力線98a及び98bによって生成される。これらの線が電流を通すとき、磁場は磁性層90内の層に垂直に生成される。或る特定の構成では、これらの磁力線のうちの一方、例えば線98bを省き、一方のみを利用することが可能である。これらの線は、例えば、構造をナノ加工するステップ中に導電膜の形態で実装することができる。
【0094】
図4は、例えばトンネル接合を有する二次元メモリセルアレイを形成するメモリ素子の例示的な集積電気回路図である。層の平面に垂直な磁場を印加するためのデバイスが、線116、116’116’’等によって表される。この線は例えば、注入電流の方向が磁場の方向を与える電流線であり、磁場の方向は、「0」を書き込みたいか又は「1」を書き込みたいかに依拠して上方向又は下方向(すなわち、層の平面に垂直に、いずれかの一方向)に配向させることができる。
【0095】
磁力線、例えば116によって、書込み電流のパルス中に磁場パルスを生成することが可能になる。この磁場は、線の全てのメモリ点に印加される。書込み電流が同時に注入されているこの線のメモリ点にのみ書き込むことができる。
【0096】
1つの方向に、トランジスタ113
1、113
2、113
3、113’
1、113’
2、113’
3、113’’
1、113’’
2等...のドレインに接続されたビット線すなわちディジット線111
1、111
2、111
3...等が存在し、共役ビット線112
1、112
2、112
3、...が二次元アレイを形成する。
【0097】
垂直方向において、ワード線を形成する、トランジスタ113
1、113
2、113
3、113’
1、113’
2、113’
3、113’’
1、113’’
2...等のゲートの制御トラック110、110’、110’’、...が存在する。
【0098】
ベンチマーク114
1、114
2、114
3、114’
1、114’
2、114’
3等...は、トンネル接合(又はスピンバルブ)を含む本発明による積層を概略的に示している。トンネル接合又はスピンバルブは、書込み段階中にその層の平面に垂直な電流によって横切られることはなく、読出し段階中にのみその層の平面に垂直な電流によって横切られる。
【0099】
特性点A、B、及びCが報告されている。これらの点は、
図2a及び
図2b、
図3c、
図3d(単一のトランジスタを用いて搭載される)に示される特性点に対応する。
【0100】
点Aは、トランジスタ113
1、113
2、113
3、113’
1、113’
2等...のソースに接続される。
【0101】
点Bは、共役ビット線112
1、112
2、112
3、...等に接続され、点Cはバイアス線115、115’等...に接続される。トランジスタ113
1、113
2、113
3、113’
1、113’
2、...等のドレインDは、ビット線111
1、111
2、111
3、...等に接続される。
【0102】
このとき、積層114
1、114
2、...等の底部は、磁化が書込み電流によって変更された層である。
【0103】
トランジスタのソース及びドレインは交換することができる。このため、トランジスタのソースは、ビット線111
1、111
2、111
3等に接続することができ、ドレインDは点Aに接続することができる。
【0104】
メモリ点、例えば114
1の書込み段階において、このメモリ点と関連付けられたビット線111
1及び共役ビット線112
1は、上述した平衡がとられた動作によって書込み電流の生成が可能になる場合、電圧Vdd(又はグラウンド)及びグラウンド(又は電位Vdd)にされる。他のメモリ点と関連付けられた他のビット線111
2等...及び共役ビット線112
2...等は機能していない。関連付けられたワード線110がトランジスタ113
1(上述した図面のトランジスタ73a又は83aに等しい)の閉鎖を制御するのに必要な電位にされ、トランジスタ113
1を通った書込み電流の流れが可能になる。同時に、パルスがメモリ点114
1に関する磁力線(field line)116を横切る。磁力線116、116’、116’’は、例えば98a及び98b(
図3b及び
図3d)等の一対の線によって構成することができる。
【0105】
このため、書込み電流は点A及び点Bを通過する。このセルのみに書き込むために、他方のワード線110’、110’’等...は、トランジスタを開放する電位にされる。トンネル接合型又はスピンバルブ型の積層を、その層の平面に垂直に横切る書込み電流(その積層に損傷を与えるリスクがある)は存在しない。このために、積層の点Cに接続されたバイアス線115、115’等...は、この書込み段階中に機能しない(又は開放している)。
【0106】
例えばメモリロケーション114
1の読出し段階において、このメモリと関連付けられた「共役ビット線」112
1が開放され、全ての他の共役ビット線」112
2等...も、それらを通って電流が一切循環しないようにするために開放される。メモリセルと関連付けられたバイアス線115は、トンネル接合又はスピンバルブ内の(弱)読出し電流の通過を可能にする電位にされる一方、偏極の全ての他の線115’等...は切断される。関連付けられた「ワード線」110は、トランジスタ113
1を閉鎖するための電位にされ、このとき電流は点Cと点Aとの間のトンネル接合又はスピンバルブを通過することができる。このトンネル接合又はこのスピンバルブのみを読み出すために、他のワード線110’等...は開放される。トンネル接合の場合、次に、例えば従来技術に従って、増幅器により、接合部を通って流れる電流を基準電流と比較することによって読出しを実行することができる。積層の平面に垂直に流れる低電流密度のこの読出し電流は、この読出し段階中に接合部への書込みを許可しない。手順はスピンバルブの場合にも同じである。