(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼の埋め込み体をさらに含む請求項1に記載のシステムであって、該眼の埋め込み体は治療薬を該眼の埋め込み体から放出するように構成された第2の多孔質構造体を含み、該第2の多孔質構造体は第2の流れ抵抗を有する、前記システム。
チャネル中の埋め込み流体が第1の多孔質構造体と接触したときに、該第1の多孔質構造体の第1の流れ抵抗が、第2の多孔質構造体の第2の流れ抵抗に比例するか、該第2の流れ抵抗よりも大きく、そのために、治療薬が内部注入管腔をとおって眼の埋め込み体へと注入されると、眼の埋め込み体中の第2の量の埋め込み流体が第2の多孔質構造体をとおって眼の埋め込み体を出て、眼への埋め込み流体のボーラス注入を提供する、請求項11に記載のシステム。
内部注入管腔が該内部注入管腔からの第1の開口を有し、および出口管腔が該出口管腔への第2の開口を有し、ここで該内部注入管腔が該出口管腔よりも長く、該内部注入管腔からの該第1の開口が該出口管腔への該第2の開口の遠位に位置している、請求項1に記載のシステム。
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施態様は、身体に埋め込まれたデバイス、例えば患者の眼に埋め込まれたデバイスの容器などへ治療流体を供給するための改良された方法および装置を提供する。これらの方法および装置は、眼に埋め込まれたデバイスの中へ注入される治療薬の量を増加するための注入器、または眼に埋め込まれたデバイス内の治療流体を受容する構造体、またはこれらの組み合わせを備える。眼に埋め込まれたデバイスは、治療薬を長期間にわたって放出するために、多孔質構造体に連結されたリザーバチャンバを備えることができる。多くの実施態様において、リザーバチャンバの容積は、視覚に実質的に影響を与えることなく眼の中に嵌合する大きさである。多孔質構造体は高い流れ抵抗を有することができ、多くの実施態様において、眼に埋め込まれたデバイスの流体を、デバイスの中へ注入する治療流体で置換することが可能である。
【0010】
多くの実施態様では、眼に埋め込まれた容器に含まれる流体は、身体に埋め込まれた容器の治療流体とは異なる密度を有する。埋め込まれたチャンバの中へ注入される治療製剤が少なくとも部分的に分離されるように、治療流体は、眼に埋め込まれたデバイスの流体よりも大きな密度を有する治療薬の製剤であってもよい。多くの実施態様において、治療流体が埋め込まれたデバイスの流体から少なくとも部分的に分離されることを利用して、チャンバ中の治療流体の量を増加させるために、チャンバの流体と治療流体との置換効率を向上することができる。ここに記載されるような方法および装置は、埋め込まれたデバイスの治療流体の量を増加するために多様なデバイスとともに使用することが可能であり、効率を向上することは、実質的に一定の容積を持つリザーバチャンバを有する埋め込まれたデバイスにおいて特に有益であろう。また、埋め込み体は眼の硝子体液中に少なくとも部分的に設置されているので、リザーバチャンバの大きさは、視覚の光路に干渉しないように何らかの制限を受けるものであり、ここに記載された実施態様は、埋め込まれたデバイスの治療効果を向上し長期間にわたる徐放を可能とするためにチャンバ中に配置される流体の量を増加させるために使用することができる。
【0011】
多くの実施態様では、治療デバイスまたは注入器のうちの1つ以上は、前記少なくとも部分的な分離に基いて、デバイスに配置された治療流体の量を増加するよう構成することができる。注入器は、治療流体をチャンバの中へ通過させるために、埋め込まれたデバイスのリザーバチャンバの第1の位置にある第1の開口へ延出するサイズの第1のチャネルを備えており、第2のチャネルは、埋め込まれたデバイスの流体を受容するために、埋め込まれたデバイスのチャンバの第2の位置にある第2の開口へ延出するサイズとすることができ、前記少なくとも部分的な分離および第1の位置と第2の位置との分離に基いて置換効率が向上される。第1のチャネルは、少なくとも1つの針の第1の管腔を備え、第2のチャネルは多様なサイズと形状を有することができ、少なくとも1つの針の第2の管腔を備えてもよい。第2の開口は、治療デバイスのチャンバから流体を受容するベントを備え、眼に埋め込まれた治療デバイスの完全性と機能を実質的に維持するために、リザーバチャンバが過剰に圧力をかけられるのを阻止することができる。
【0012】
多くの実施態様では、注入器は少なくとも1つの針に連結された停止部を備える。停止部が結膜などの組織表面に締結したとき前記少なくとも部分的な分離を促進するような埋め込まれたデバイスの位置に第1の開口および第2の開口が配置されるように、第1の開口は停止部から第1の距離に設置され、第2の開口は停止部から第2の距離に設置される。多くの実施態様において、治療流体は埋め込まれたデバイスの流体より密度が高く、前記少なくとも部分的な分離を促進するためにより密度の高い治療流体がリザーバチャンバの密度の低い流体の下方でリザーバチャンバの中に配置されるように、治療流体を注入する第1の開口は、リザーバチャンバに配置されたとき第2の開口の下方に設置されてもよい。
【0013】
停止部はエラストマーなどの軟質材料からなってもよい。軟質材料は、結膜などの組織表面に対向して配置されたとき密封部を形成することができ、密閉部が結膜に締結するとき結膜上皮の完全性を維持することができる。密閉により治療流体の漏出を抑制できるので、治療デバイスのリザーバチャンバに配置される流体の量を増加するのに役立つであろう。また、結膜に締結する軟質停止部の密閉により治療流体と結膜との相互作用を抑制できるので、治療流体が、例えば抗悪性腫瘍の治療薬などの結膜との相互作用が望ましくない可能性のある治療薬の濃度または量を含有するときには有益であろう。
【0014】
多くの実施態様では、注入器は、ボーラス投与量(大量瞬時投与量)の治療流体が治療デバイスの多孔質構造体を通過するよう構成することができる。注入器は、治療流体が、埋め込まれたデバイスの多孔質構造体を通って排出されるように閉弁する弁を備えてもよい。弁は、多孔質構造体を通して治療流体を通過させるために、機構、多孔質構造体、または流れ抵抗のうちの1つ以上を備えることができる。機構は、スライダ、ピストン、スリーブ、または可偏向部材などの1つ以上の可動型部材を備えてもよい。多孔質構造体は、埋め込まれたデバイスから押出された流体が多孔質構造体に接触するときその流れ抵抗が実質的に増大するような多孔質材料を備えることができる。前記流れ抵抗は、第2のチャネルの流出路に沿った規制部または他の構造に対応してもよい。流れ抵抗は、治療流体が治療構造を通過することを促進させるために十分であってもよい。流出路に沿った流れ抵抗に対応する構造体は、治療デバイスに配置されたベントに連結された管腔を備えてもよい。
【0015】
多くの実施態様では、注入器は、前記少なくとも部分的な分離を付与するための流量を備えている。
【0016】
多くの実施態様では、治療デバイスまたは注入器のうちの1つ以上が、チャンバ中の治療流体の量を増加するために治療流体が注入されたとき、治療流体と埋め込まれたデバイス流体とを混合するよう構成することができる。多くの実施態様において、注入器は、例えば約100μL/秒以下の速度で治療流体を注入するように構成されており、注入器または埋め込まれた物のうちの1つ以上が、前記少なくとも部分的な分離を提供できる流量で治療流体と埋め込まれたデバイスの流体とを混合するための構造を備える。
【0017】
第1の側面では、本発明の実施態様は、患者を治療するための装置を提供する。装置は、患者に埋め込み可能な治療デバイスの流体の、治療流体からの少なくとも部分的な分離を伴って、埋め込み型治療デバイスのチャンバの中へ治療流体を注入するための注入器を備える。
【0018】
他の側面では、本発明の実施態様は、眼を治療する装置を提供する。装置は、眼に埋め込み可能な治療デバイスの流体の、治療流体からの少なくとも部分的な分離を伴って、埋め込み型治療デバイスのチャンバの中へ治療流体を注入するための注入器を備える。
【0019】
多くの実施態様では、前記少なくとも部分的な分離を提供するために、治療流体は埋め込み型治療デバイスの流体の密度とは異なる治療流体密度を備える。
【0020】
多くの実施態様では、埋め込み型治療デバイスの流体は、治療流体の密度とは異なる密度を備える。前記少なくとも部分的な分離を提供するために、治療流体密度が埋め込み型デバイス流体の密度と約1%以上、例えば前記少なくとも部分的な分離を提供するために、約2%以上異なってもよい。前記少なくとも部分的な分離を提供するために、治療流体密度が埋め込み型デバイス流体の密度と約3%以上異なってもよい。前記少なくとも部分的な分離を提供するために、治療流体密度が埋め込み型デバイス流体の密度と約30%以下、例えば前記少なくとも部分的な分離を提供するために約20%以下異なっていてもよい。多くの実施態様において、前記少なくとも部分的な分離を提供するために、治療流体密度が埋め込み型デバイス流体の密度と約10%以下異なっている。
【0021】
多くの実施態様において、前記少なくとも部分的な分離を提供するために、埋め込み型デバイス流体の密度に対する治療流体密度の差が約1%〜約30%の範囲内であり、例えば前記少なくとも部分的な分離を提供するために約2%〜約20%の範囲内である。前記少なくとも部分的な分離を提供するために、埋め込み型デバイス流体の密度に対する治療流体密度の差が約3%〜約10%の範囲内であることができる。
【0022】
多くの実施態様において、前記注入器が、治療デバイスの中へ治療流体を通過させる第1の管腔とチャンバから治療流体を受容する第2の管腔とを備える少なくとも1つの針を備え、注入器は、第2の管腔が治療流体から実質的に分離された埋め込み型デバイス流体の部分を受容するように、治療流体がデバイス流体と混合するのを阻止するような流量で治療流体を注入するように構成される。
【0023】
多くの実施態様では、前記注入器は、前記少なくとも部分的な分離を提供するような流量で治療流体を注入するように構成される。前記少なくとも部分的な分離は、治療流体密度と異なる治療流体密度に基づくことができる。
【0024】
多くの実施態様では、チャンバーは実質的に一定の容積を有する。実質的に一定の容積は、約1μL〜約100μL以上の範囲内であることができる。実質的に一定の容積は、約15μL〜約75μLの範囲内、例えば約25μL〜約75μLの範囲内であることができる。
【0025】
多くの実施態様では、注入器は、時間をかけてチャンバの中へ治療流体を注入するように構成される。前記時間は、約1秒〜約30秒の範囲内、例えば約2秒〜約8秒の範囲内であることができる。
【0026】
多くの実施態様では、前記注入器が、前記少なくとも部分的な分離を提供するのに十分な速度で薬剤を注入する機構、流れに抵抗する構造体、規制部、多孔質構造体、または焼結多孔質構造体のうちの1つ以上を備える。前記機構が、液体を前記速度で注入するためのバネ、気体、または液体のうちの1つ以上を備える。
【0027】
多くの実施態様では、埋め込み型デバイスは、治療薬を放出する多孔質構造体を備える。多孔質構造体が流れ抵抗を有し、治療流体の部分が多孔質構造体を通過するように、前記注入器の流れに抵抗する構造体が、多孔質構造体の流れ抵抗に比例する流れ抵抗を備える。
【0028】
多くの実施態様では、前記埋め込み流体が、約1週間以上治療デバイスに配置された第1の治療流体の残存部分を含み、前記治療流体が第1の治療流体と類似している。
【0029】
多くの実施態様では、前記埋め込み型デバイスの流体が、治療デバイスに配置されている第1の治療流体の第1の治療薬の第1の量の残存部分と眼の硝子体液の成分とを含む。埋め込み型デバイスに配置された第1の治療流体の前記残存部分が前記治療薬の残存量を含んでもよい。密度差を付与するために、治療薬の残存量が第1の治療薬の第1の量の約半分以下に対応する。前記残存部分が残存する安定剤を備えてもよく、密度差を付与するために、残存する安定剤の量が第1の治療流体の安定剤の第1の量の約半分以下に対応してもよい。
【0030】
多くの実施態様では、前記少なくとも部分的な分離を提供するために、硝子体液の1つ以上成分が、治療流体の治療流体密度より小さい埋め込み型治療デバイスの流体の密度に対応する。
【0031】
多くの実施態様では、前記治療流体密度がある範囲内にある。前記範囲は、約0.5g/cm
3〜約2g/cm
3であってもよく、埋め込み型デバイス密度が約0.5〜約2g/cm
3の範囲内であり、例えば約1.01〜約1.5g/cm
3の範囲内である。前記治療流体密度が約1.03〜約1.5g/cm
3の範囲内であってもよい。
【0032】
多くの実施態様では、前記注入器が、前記チャンバを治療薬を含むシリンジへ連結する少なくとも1つの管腔を有する少なくとも1つの針を備える。前記少なくとも1つの管腔が、治療流体を埋め込み型デバイスの中へ通過させる第1の管腔と埋め込み型治療デバイスから液体を受容する第2の管腔とを備えてもよい。前記第1の管腔が第1の開口へ延出し、前記第2の管腔が第2の開口へ延出し、前記少なくとも部分的な分離を促進するために、第1の開口が第2の開口から離間していてもよい。前記少なくとも部分的な分離を促進するために治療流体がチャンバの遠位部分へ通過し、埋め込み型治療デバイスの流体がチャンバの近位部分で受容されるように、前記第1の開口が前記第2の開口に対して遠方に配置されることができる。
【0033】
多くの実施態様では、容器が第2の管腔を通して受容した治療デバイスの流体を受容し、該容器が容器から押出される空気を通過させるベントを備える。第2の開口からベントへ延出する流路を画成するためにベントが開口に流体密閉状態で連結されることができる。
【0034】
多くの実施態様では、前記流路が前記少なくとも部分的な分離を促進するために流れ抵抗を備える。前記流路が治療デバイスの流体の流れを阻止する1つ以上の構造を備え、該1つ以上の構造が、第2の開口のサイズ、流路に沿った規制部、流路に沿った多孔質構造体のうちの1つ以上を備えてもよい。
【0035】
多くの実施態様では、注入器多孔質構造体が、前記容器の下流部分で流路に沿って設置される複数の相互連結チャネルを備える。埋め込み型デバイスの流体が容器の下流部分の流路に沿って設置された注入器多孔質構造体に接触したとき、治療流体が埋め込み型デバイスの多孔質構造体を通過するように、前記注入器多孔質構造体が、埋め込み型デバイスの多孔質構造体よりも大きな液体流れ抵抗を有する。
【0036】
多くの実施態様では、前記第2の管腔がベントに連結されており、該ベントは、埋め込み型デバイスの流体がベントを通過するときチャンバに圧力をかけ治療流体の部分を多孔質構造体を通過させるための流れ抵抗を有する。
【0037】
多くの実施態様では、前記注入器が、シリンジへ連結するために前記少なくとも1つの針を含むカートリッジを備える。前記カートリッジが、前記埋め込み型デバイスの流体からの治療薬流体の少なくとも部分的な分離を促進させるのに十分な流れ抵抗を有するベントを備えてもよい。
【0038】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの管腔が、埋め込み型デバイスの中へ治療流体を通過させる第1の管腔と、埋め込み型治療デバイスから液体を受容する第2の管腔とを備える。
【0039】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が第1の針と第2の針とを備える。
【0040】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が、第1の軸に沿って延出する第1の管腔を有する第1の針と、第2の軸に沿って延出する第2の管腔を有する第2の針とを備え、前記埋め込み型デバイス流体からの治療流体の少なくとも部分的な分離を増大させるために該第1の軸が該第2の軸から分離されている。
【0041】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が、第1の軸に沿って延出する第1の管腔を有する第1の針と、第1の軸と実質的に同心であるように第1の針に沿って延出する第2の管腔を有する第2の針とを有する二重管腔針を備える。
【0042】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針がその長さに沿って延出する軸を備え、前記少なくとも部分的な分離が、治療製剤が注入されるときの水平に対する該軸の角度に対応する。前記少なくとも部分的な分離が、前記水平に対する角度が約10度以上であるとき、治療デバイスに配置される治療流体の量の約1パーセント以上の増加に対応してもよい。前記少なくとも部分的な分離が、水平に対する角度が約35度以上であるとき、治療デバイスに配置される治療流体の量の約2パーセント以上の増加に対応してもよい。
【0043】
多くの実施態様では、前記注入器が、チャンバ流体の密度に対する治療流体の密度の1パーセント増加が、チャンバに配置される治療流体の量の約1パーセント以上の増加に対応するように、前記少なくとも部分的な分離を伴って治療流体を注入するように構成される。
【0044】
多くの実施態様では、前記注入器が、チャンバ流体の密度に対する治療流体の密度の1パーセント増加が、容器の中へ治療流体を注入することによりチャンバに配置される治療流体の量の約2パーセント以上の増加に対応するように、前記少なくとも部分的な分離を伴って治療流体を注入するように構成される。
【0045】
多くの実施態様では、前記注入器が、チャンバの流体の密度に対する治療流体の密度の3パーセント増加が、容器の中へ治療流体を注入することによりチャンバに配置される治療流体の量の約4パーセント以上の増加に対応するように、前記少なくとも部分的な分離を伴って治療流体を注入するように構成される。
【0046】
多くの実施態様では、前記チャンバに配置される治療流体の量の約1パーセント以上の増加が、水平に対する注入角度に対応する。前記水平に対する注入角度が、水平に対して約10度以上対応してもよく、水平に対して約15度以上対応してもよい。
【0047】
多くの実施態様では、前記埋め込み型デバイスの流体が、水と、眼の硝子体液の成分と、前記治療薬とからなる液体を備える。前記埋め込み型デバイスの流体が安定剤を含んでもよい。
【0048】
多くの実施態様では、前記治療流体が、水と前記治療薬とからなる液体を備える。前記治療流体が安定剤を備えてもよい。
【0049】
多くの実施態様では、前記埋め込み型デバイスの流体が、約1μL/秒〜約200μL/秒の範囲内の速度で押出される。前記埋め込み型デバイスの流体が、約2μL/秒〜約100μL/秒の範囲内の速度、例えば約5μL/秒〜約50μL/秒の範囲内の速度で押出されることができる。
【0050】
多くの実施態様では、前記埋め込み型デバイスの流体が、約70%以上の効率で押出される。前記埋め込み型デバイスの流体が、約80%以上の効率、例えば約90%以上の効率で押出されることができる。
【0051】
多くの実施態様では、前記弁が、開口に連結されたフロート弁またはピストンに連結された硬質停止部のうちの1つ以上を備える。
【0052】
多くの実施態様では、前記注入器が、シリンジへ連結するために前記少なくとも1つの針を含むカートリッジを備える。
【0053】
他の側面では、本発明の実施態様は、眼を治療するための装置を提供する。装置は、眼に埋め込み可能な治療デバイスの流体の治療流体からの少なくとも部分的な分離を伴って、埋め込み型治療デバイスのチャンバの中へ治療流体を注入するためのカートリッジを備える。
【0054】
多くの実施態様では、前記カートリッジが、シリンジへ連結する連結器と、ベントと、少なくとも1つの針とを備える。該少なくとも1つの針が第1の管腔と第2の管腔を備え、該第1の管腔はシリンジから治療流体を通過させるために連結器からチャンバの中へ延出するサイズを有し、該第2の管腔は該ベントを備え収集容器で埋め込み型治療デバイスの流体を受容するためにベントをチャンバの中に配置し収集容器へ延出するサイズを有し、約70%以上のチャンバの補充効率を付与するようにカートリッジを治療流体の密度に適応させる。
【0055】
多くの実施態様では、前記ベントが、治療デバイス流体が押出されるときある量の治療流体を埋め込み型デバイスの多孔質構造体を通して通過させるために、該多孔質構造体の流れ抵抗に対応する流れ抵抗を備える。
【0056】
多くの実施態様では、前記量の治療流体を多孔質構造体を通して通過させるために、前記ベント構造体の流れ抵抗が多孔質構造体の流れ抵抗に比例する。
【0057】
多くの実施態様では、前記量の治療流体を多孔質構造体を通して通過させるために、前記ベント構造体の流れ抵抗が多孔質構造体の流れ抵抗より実質的に大きい。前記ベント構造体が、ベント構造体の流れ抵抗の実質的部分を付与するサイズのチャネルを備えてもよい。前記ベント構造体が、ベント構造体の流れ抵抗の実質的部分を付与する多孔質材料を備えてもよい。
【0058】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が第1の針と第2の針とを備える。
【0059】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が二重管腔針を備える。
【0060】
他の側面では、実施態様は、患者を治療するための装置を提供する。埋め込み型デバイスは、多孔質構造体に連結された貫通性障壁とチャンバとを備える。デバイスは、破壊されることなくチャンバおよび多孔質構造体に約50PSI以上の圧力を受けることが可能である。
【0061】
多くの実施態様では、前記デバイスは、破壊されることなくチャンバ、貫通性障壁、および多孔質構造体に約100PSI以上の圧力を受けることが可能である。
【0062】
多くの実施態様では、前記デバイスは、破壊されることなくチャンバ、貫通性障壁、および多孔質構造体に約200PSI以上の圧力を受けることが可能である。
【0063】
他の側面では、実施態様は、患者を治療するための装置を提供する。埋め込み型デバイスは、多孔質構造体に連結された貫通性障壁とチャンバとを備える。該チャンバが近位端および遠位端を備える。注入または吸引のうちの1つ以上でチャンバに配置される治療流体の量の増加で、該多孔質構造体がチャンバの遠位から離間して配置される。
【0064】
他の側面では、実施態様は、患者を治療するための装置を提供する。装置は、リザーバチャンバと流体分離器とを備える治療デバイスを備え、該流体分離器はデバイスの中へ注入された治療流体を埋め込み型デバイスの流体から分離するためにデバイスのリザーバチャンバ内にある。
【0065】
多くの実施態様では、前記流体分離器が、治療デバイスのリザーバチャンバ内にある容器または可動型流体分離器のうちの1つ以上を備える。
【0066】
他の側面では、実施態様は、装置を提供する。装置は、眼に埋め込み可能なデバイスの流体を治療流体で置換するために、デバイスのチャンバの中へ空気を注入するよう構成される注入器を備える。
【0067】
他の側面では、本発明の実施態様は、患者を治療するための装置を提供する。注入用デバイスが針と停止部とを備える。該針は先端部を備える。埋め込み型デバイスが多孔質構造体に連結された貫通性障壁とチャンバとを備える。治療流体の流れを分流する構造体がチャンバ内に設置される。停止部は、停止部が眼の結膜に接触したとき針の先端部と構造体との間に間隙が存在するように先端部をチャンバ内に配置するよう構成される。
【0068】
他の側面では、実施態様は、眼を治療するための装置を提供する。治療流体を含有する容器へ連結する連結器は、眼を治療するための治療薬を含む。少なくとも1つの針が治療流体を通過させる第1の管腔と治療デバイスから流体を受容する第2の管腔とを備える。第1の管腔が第1の開口へ延出し、第2の管腔が第2の開口へ延出する。容器は眼に埋め込み可能な治療デバイスから流体を受容する。第2の管腔が、第2の開口から該容器へ延出する流路を画成するために該容器へ流体密閉状態で連結される。治療流体が埋め込み型デバイスの流体を押出すとき、埋め込み型デバイスの流体から治療流体を少なくとも部分的に分離するために、前記流路が抵抗を有する。
【0069】
他の側面では、実施態様は、治療薬で眼を治療するための装置を提供する。少なくとも1つの針が、眼に埋め込み可能な治療デバイスのチャンバの中へ該治療薬を含む治療流体を注入するための開口へ延出する管腔を備える。ベント構造体が治療デバイスの流体を受容するように構成される。ベント構造体が治療デバイスの流体の流れに対する抵抗を有する。
【0070】
多くの実施態様では、ある量の治療流体を治療デバイスの多孔質構造体を通して通過させるために、前記ベント構造体の流れ抵抗が多孔質構造体の流れ抵抗に対応する。
【0071】
多くの実施態様では、前記量が治療デバイスの中への注入量の約0.1パーセント以上である。
【0072】
多くの実施態様では、前記ベント構造体の流れ抵抗を付与するために、ベント構造体がベントおよびベントに連結されたチャネルを備える。
【0073】
多くの実施態様では、前記装置は停止部をさらに備え、停止部は眼の結膜に締結する下面を備える。前記少なくとも1つの針が、該下面から開口への軸に沿ってある距離だけ延出し、この距離は、下面が結膜に締結したときリザーバチャンバの中に開口とベントとを配置するような大きさである。
【0074】
多くの実施態様では、装置はカートリッジをさらに備え、カートリッジは前記少なくとも1つの針と前記ベント構造体とを備える。前記カートリッジはシリンジへ連結する連結器を備え、前記少なくとも1つの針が第1の管腔と第2の管腔とを備える。第1の管腔はシリンジから治療流体を通過させるために連結器からチャンバの中へ延出するサイズを有してもよく、第2の管腔はベントへ延出してもよく、かつ収集容器で埋め込み型治療デバイスの流体を受容するためにベントをチャンバの中に配置しかつ収集容器へ延出するサイズを有してもよい。約70%以上のチャンバの補充効率を付与するようにカートリッジを治療流体の密度に適応させることができる。
【0075】
多くの実施態様では、前記量の治療流体を埋め込み型デバイスの多孔質構造体を通して通過させるために、前記ベント構造体の流れ抵抗が多孔質構造体の流れ抵抗より実質的に大きい。
【0076】
多くの実施態様では、前記量の治療流体を埋め込み型デバイスの多孔質構造体を通して通過させるために、前記ベント構造体の流れ抵抗が多孔質構造体の流れ抵抗よりも実質的に小さい。
【0077】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が第1の針と第2の針とを備える。
【0078】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が二重管腔針を備える。
【0079】
他の側面では、実施態様は、埋め込み型デバイスで患者を治療する方法を提供する。患者に埋め込まれた治療デバイスのチャンバに入る治療流体がチャンバの流体から少なくとも部分的に分離されるように、チャンバの中へ治療流体を注入する。
【0080】
他の側面では、実施態様は、眼を治療する方法を提供する。眼に埋め込まれた治療デバイスのチャンバに入る治療流体がチャンバの流体から少なくとも部分的に分離されるように、チャンバの中へ治療流体を注入する。
【0081】
多くの実施態様では、前記治療流体がある密度を有し、前記デバイスの流体が治療流体の該密度と異なる密度を有する。
【0082】
多くの実施態様では、前記治療デバイスが近位端に貫通性障壁を遠位端に多孔質構造体を備え、貫通性障壁と多孔質構造体との間を延出する軸を有し、前記少なくとも部分的な分離を提供するために該軸が水平から離間して配向されている。多孔質構造体が貫通性障壁の上方に位置するように前記患者を配置することができる。
【0083】
多くの実施態様では、埋め込まれたデバイスが眼の毛様体扁平部領域に設置されているとき、多孔質構造体が貫通性障壁の上方に位置するように前記患者が頭部を傾斜させて椅子にもたれている。
【0084】
多くの実施態様では、多孔質構造体が貫通性障壁の下方に位置するように前記患者を配置する。
【0085】
多くの実施態様では、埋め込まれた治療デバイスの流体から治療流体を少なくとも部分的に分離するために、前記治療流体を上向きに注入する。
【0086】
多くの実施態様では、埋め込まれた治療デバイスの流体から治療流体を少なくとも部分的に分離するために、前記治療流体を下向きに注入する。
【0087】
多くの実施態様では、少なくとも1つの針の第1の開口が少なくとも1つの針の第2の開口の下方に配置されるように、第1の開口がチャンバの遠位部分に配置され第2の開口がチャンバの近位部分に配置されるように、少なくとも1つの針を埋め込まれたデバイスの貫通性障壁を通して前進させ、チャンバ内の治療デバイス流体から治療流体を少なくとも部分的に分離するために、前記治療流体が埋め込まれたデバイス流体よりも大きな密度を備え、第2の開口の下方にある第1の開口を通過する。
【0088】
多くの実施態様では、治療流体の密度変化率が、治療流体の密度変化率よりも大きなチャンバの充填効率の変化率に対応するように、治療流体が前記少なくとも部分的な分離を伴って注入される。
【0089】
他の側面では、実施態様は、眼を治療する方法が提供する。眼に埋め込まれた治療デバイスの流体を治療流体で少なくとも部分的に置換するために、埋め込まれた治療デバイスのチャンバの中へ空気を注入する。
【0090】
他の側面では、実施態様は、患者の中へ治療薬を注入する装置を提供する。装置は、患者の外部組織を貫通可能かつ患者内のある深さまで延出可能な少なくとも1つの針と、該少なくとも1つの針に連結された、治療薬を保持する1つ以上のチャンバとを備える。前記深さまでの該少なくとも1つの針の針貫通を指示するために、可変形インジケータが針の回りを少なくとも部分的に延出する。
【0091】
多くの実施態様では、前記可変形視認用インジケータが組織に接触する前の第1の断面幅を有する第1の構成と第2の断面幅を有する第2の構成とを有し、視認用インジケータの視認性を高めて針が前記深さにあることを指示するために第2の断面幅が第1の断面幅よりも大きい 。
【0092】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針がある幅を有する環状支持構造体で支持され、前記可変形視認用インジケータが該少なくとも1つの針の周りを延出する環状可変形構造を備え、第1の断面幅が前記幅よりも小さく、第2の断面幅が前記幅よりも大きい。
【0093】
多くの実施態様では、前記可変形視認用インジケータが、少なくとも1つの針を前記深さに維持する力で針が前記深さに挿入されていることを指示するための変形剛性率を備える。
【0094】
多くの実施態様では、前記可変形視認用インジケータが、針が前記深さにあることをユーザに指示するための可視色を備える。
【0095】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針が、視認用インジケータから第1の距離に設置される第1の開口まで視認用インジケータから延出する第1の管腔と、視認用インジケータから第2の距離に設置される第2の開口まで視認用インジケータから延出する第2の管腔とを備え、視認用インジケータが、第1の開口が第1の深さにあり、第2の開口が第2の深さにあることを指示する。
【0096】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針がゲージが約25以上のシリコン針を備える。
【0097】
多くの実施態様では、前記少なくとも1つの針を前記深さに維持する力で針が前記深さまで挿入されていることを指示するために、前記可変形視認用インジケータが、約5〜約30の範囲内であるショアA硬度を備える。
【0098】
多くの実施態様では、装置は埋め込み型治療デバイスを更に備え、埋め込み型治療デバイスはある量の治療薬を保持するリザーバチャンバを有し、リザーバチャンバは治療デバイスの軸に沿って延出し、前記少なくとも1つの針は、視認用インジケータが変形して針が前記距離に位置していることを指示するとき開口がリザーバチャンバの中に位置しているように可変形視認用インジケータから離れた開口へ延出する管腔を有する。
【0099】
多くの実施態様では、前記埋め込み型治療デバイスが、長期間にわたって治療量の治療薬を放出する多孔質構造体を備える。前記多孔質構造体が、約1ヵ月以上の長期間にわたって治療薬を放出するように約0.5以下の放出速度指数を備えてもよい。
【0100】
多くの実施態様では、視認用インジケータが変形したとき前記開口がリザーバチャンバの近位半部に位置している。
【0101】
多くの実施態様では、視認用インジケータが変形したとき前記開口がリザーバチャンバの遠位半部に位置している。
【0102】
他の側面では、実施態様は、組織を有する患者を治療する方法を提供する。可変形視認用インジケータが組織へ連結しかつ少なくとも1つの針がある深さにあることを指示するために変形するように、組織の中へ少なくとも1つの針を前進させる。視認用インジケータが変形したとき前記の深さにある少なくとも1つの針の管腔を通して治療薬が注入されるように、少なくとも1つの針に連結された1つ以上のチャンバから治療薬を注入する。
【0103】
多くの実施態様では、前記可変形視認用インジケータが、組織に接触する前の第1の断面幅を有する第1の構成と、インジケータが外部貫通性組織に連結されたときの第2の断面幅を有する第2の構成とを備え、視認用インジケータの視認性を向上させて前記深さに針があることを指示するために、第2の断面幅が第1の断面幅より大きい。
【0104】
多くの実施態様では、前記装置は埋め込み型治療デバイスを更に備える。埋め込み型治療デバイスは、ある量の治療薬を保持するリザーバチャンバを有する。リザーバチャンバは、結膜と強膜との間に配置するためのサイズの厚さと幅を有し、前記少なくとも1つの針は、視認用インジケータが変形して針が前記距離に位置していることを指示するとき開口がリザーバチャンバの中に位置しているように可変形視認用インジケータから離れた開口へ延出する管腔を有する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】
図1は、本発明の実施態様による治療デバイスを組み込むのに適した眼を示す図である;
【0106】
【
図1A-1】
図1A−1は、
図1と同様な眼の強膜内に少なくとも部分的に埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
【0107】
【
図1A-1-1】
図1A−1−1および
図1A−1−2は、本発明の実施態様による、網膜を治療するために眼の硝子体液中へ治療薬を放出するよう、結膜の下で強膜を貫通して埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
【
図1A-1-2】
図1A−1−1および
図1A−1−2は、本発明の実施態様による、網膜を治療するために眼の硝子体液中へ治療薬を放出するよう、結膜の下で強膜を貫通して埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
【0108】
【
図1A-2】
図1A−2は、本発明の実施態様による、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの構成体を示す図である;
【0109】
【
図1A-2-1】
図1A−2−1は、強膜への挿入のため長く幅狭な形状を備え、強膜に少なくとも部分的に保持されるように第2の長く幅太な形状へ拡大するように構成された、挿入用カニューレ内に装着された治療デバイスを示す図である;
【0110】
【
図1A-2-2】
図1A−2−2は、カニューレへの装着に適したリザーバを備える治療デバイスを示す図である;
【0111】
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施態様による、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0112】
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施態様による、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0113】
【
図1C-A】
図1C−Aは、本発明の実施態様による、少なくとも1つの出口ポートを示す図である;
【0114】
【
図1C-1】
図1C−1は、本発明の実施態様による、結合材料の除去方法を示す図である;
【0115】
【
図1C-2】
図1C−2は、TA(治療薬)が結合した第2のインサートによる治療薬の挿入を示す図である;
【0116】
【
図1C-3】
図1C−3は、実施態様による、治療デバイスの中へ注入するために市販の治療薬製剤が充填されている状態のシリンジを示す図である;
【0117】
【
図1D】
図1Dは、治療薬を直線的に放出するために複数のチャンバとチャンバを連結するチャネルを備える、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0118】
【
図1E】
図1Eは、治療デバイスの底部に設置された針停止部を備える、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0119】
【
図1E-1】
図1E−1は、治療デバイスの底部に設置された針停止部を備え、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0120】
【
図1E-2】
図1E−2は、治療デバイスの中央に設置された針停止部を備える、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0121】
【
図1E-3】
図1E−3は、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、治療デバイスの中央に設置された針停止部を備え、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
【0122】
【
図1E-3-1】
図1E−3−1は、
図1E−3と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの上面図である;
【0123】
【
図1F-1】
図1F−1は、本発明の実施態様による、分流器を備える治療デバイスを示す図である;
【0124】
【
図1F-2】
図1F−2は、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイス流体の少なくとも部分が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体を通るよう付勢されるように、治療流体の少なくとも部分を保持するために十分な容積を有する流体分離器を備える治療デバイスを示す図である;
【0125】
【
図1F-3】
図1F−3は、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイス流体703FLの少なくとも部分が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体を通るよう付勢されるように、治療流体の少なくとも部分を保持するために十分な容積を有する流体分離器を備える治療デバイスを示す図である;
【0126】
【
図1G】
図1Gは、本発明の実施態様による、治療流体が遠位端の方へ残留し、埋め込まれた流体が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体を通過するように、遠位端および軸から離間して設置された多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である;
【0127】
【
図1H】
図1Hは、本発明の実施態様による、流体分離器を備える治療デバイスを示す図であり、流体分離器は、注入中に流体同士を分離するために治療流体を注入すると遠方へ移動するよう構成される;
【0128】
【
図1I】
図1Iは、本発明の実施態様による、デバイス流体が多孔質構造体を通過するように、注入中に流体同士を混合して分離を阻止するために複数のビーズを備える治療デバイスを示す図である;
【0129】
【
図2】
図2は、本発明の実施態様による、治療デバイスに組み込むのに適したアクセスポートを示す図である;
【0130】
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施態様による治療デバイスに組み込むのに適した鍔部を示す図である;
【0131】
【
図3B】
図3Bは、強膜から硝子体液へデバイスに沿って細菌が繁殖するのを抑制するために治療デバイス上に設けた、抗細菌剤を含浸した生体適合性材料を示す図である;
【0132】
【
図4AB】
図4Aは、本発明の実施態様による、放出された抗体フラグメントを示し、
図4Bは、基質に可逆的に結合された抗体フラグメントを示す図である;
【0133】
【
図5A】
図5Aは、治療薬をデバイス内に挿入する注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
【0134】
【
図5A-1】
図5A−1は、デバイスへの材料の注入および除去を同時に行う注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
【0135】
【
図5B】
図5Bは、マイクロループ状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
【0136】
【
図5C-1】
図5C−1は、蛇行状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
【0137】
【
図5C-2】
図5C−2は、コイル状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
【0138】
【
図5D】
図5Dは、治療薬を保持する伸縮可能構造および強膜に結合する外側硬質ケースを示す図である;
【0139】
【
図5E】
図5Eは、治療デバイスの出口ポートを覆って配置された膜を示す図である;
【0140】
【
図5F】
図5Fは、治療デバイスにクランプで固定された筒状膜を備える治療デバイスを示す図である;
【0141】
【
図6A-1】
図6A−1は、第1の端部に配置された貫通性隔壁を有する容器と、長期間にわたって治療薬を放出するよう第2の端部に配置された多孔質構造体と、強膜および結膜に連結するよう容器から外方に突出する延長部を備える保持構造体とを備える治療デバイスを示す図である;
【0142】
【
図6A-2】
図6A−2は、丸い遠位端を備える、
図6Aと同様な治療デバイスを示す図である;
【0143】
【
図6B】
図6Bは、
図6Aと同様なデバイスにおいて、徐放のために構成された硬質多孔質構造体を示す図である;
【0144】
【
図6B-1】
図6B−1は、
図6Bと同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルを示す図である;
【0145】
【
図6B-2】
図6B−2は、
図6Bおよび
図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
【0146】
【
図6B-3】
図6B−3は、カバーで開口を閉塞している様子、および
図6Bおよび
図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
【0147】
【
図6B-4】
図6B−4は、粒子で開口を閉塞している様子、および
図6Bおよび
図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
【0148】
【
図6B-5】
図6B−5は、
図6Bおよび
図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路に対応する有効断面のサイズと面積を示す図である;
【0149】
【
図6C】
図6Cは、強膜用鋲体内に組み込まれた、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
【0150】
【
図6D】
図6Dは、徐放用リザーバに連結された、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
【0151】
【
図6E】
図6Eは、徐放用の中空体部または筒部を含む、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
【0152】
【
図6F】
図6Fは、徐放用非線形らせん状構造を含む、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
【0153】
【
図6G】
図6Gは、実施態様による多孔質ナノ構造体を示す図である;
【0154】
【
図7】
図7は、実施態様による、デバイスから材料を除去し、かつ治療薬をデバイスに注入する注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
【0155】
【
図7-1】
図7−1は、本発明の実施態様による、治療流体を注入する針と埋め込み型デバイスの流体を受容するベント構造体とを備える同心置換型針装置を示す図である;
【0156】
【
図7-2】
図7−2は、本発明の実施態様による、治療デバイスの多孔質構造体に比例する流れ抵抗を付与するための断面積および長さを有する環状チャネルを有する
図7−1の同心置換型針の軸に沿った断面図である;
【0157】
【
図7A】
図7Aは、実施態様による、
図6Eと同様な、デバイスへの材料の注入・除去を行う注入器に連結された貫通性隔壁および多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である;
【0158】
【
図7A-1】
図7A−1は、実施態様による、多孔質フリット構造体を通して液体製剤を噴出させることでリザーバを洗い流すために、針の遠位端をデバイスのリザーバの近位端の近傍に位置決めする停止部を備える注入針189に連結された貫通性障壁を備える治療デバイスを示す図である;
【0159】
【
図7A-2】
図7A−2は、リザーバ130の液体を注入された製剤で置換するようにデバイスへ材料を注入かつ除去する注入器の針に連結された貫通性隔壁を備える治療デバイスを示す図である;
【0160】
【
図7A-3】
図7A−3は、可変形可視表示器を示す図である;
【0161】
【
図7A-4】
図7A−4は、眼の組織、例えば治療デバイスの貫通性隔壁を覆って配置された結膜などの軟部組織に連結された可視表示器を示す図である;
【0162】
【
図7A-5】
図7A−5は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す図である;
【0163】
【
図7A-6】
図7A−6は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す図である;
【0164】
【
図7A-7A】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-7A】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-7B】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-8A】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-8B】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-9A】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【
図7A-9B】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
【0165】
【
図7A-10A】
図7A−10A〜
図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す図である;
【
図7A-10B】
図7A−10A〜
図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す図である;
【0166】
【
図7A-11A】
図7A−11Aは、本発明の実施態様による、ボーラス注入を提供するためにスリーブに連結された遮断ボタンを備える弁を備える注入装置を示す図である;
【0167】
【
図7A-11B】
図7A−11Bは、本発明の実施態様による、スリーブが弁を覆い弁が閉弁した
図7A−11Bの注入用装置を示す図である;
【0168】
【
図7A-12A】
図7A−12Aは、本発明の実施態様による、ボーラス注入を提供する弁を備え、第1の軸に沿って延出する管腔と、軸の分離を提供するために第1の管腔から離間して第2の軸に沿って延出する管腔とを備える注入装置を示す図であり、注入用管腔は、ベント用管腔よりも多孔質構造体の近くに位置しており、弁は多孔質構造体を通るボーラス注入を提供するよう構成される;
【0169】
【
図7A-13A】
図7A−13Aは、本発明の実施態様による、受容した埋め込み流体が弁を閉弁したときボーラス注入を提供するフロート弁を備える注入装置を示す図である;
【0170】
【
図7A-13B】
図7A−13Bは、本発明の実施態様による、
図7A−13Aの注入装置の二重管腔針を示す図である;
【0171】
【
図7A-13C】
図7A−13Cは、本発明の実施態様による、
図7A−13Aおよび
図7A−13Bの二重管腔針189DLの軸に沿った断面図である;
【0172】
【
図7A-14A】
図7A−14Aは、ボーラス注入を提供するためにピストンに締結する硬質停止部を有する弁を備える注入装置を示す図である。本発明の実施態様による、分離を行うために、管腔が第1の軸に沿って延出し、もう1つの管腔が第1の管腔から離間した第2の軸に沿って延出しており、注入用管腔がベント用管腔よりも多孔質構造体の近くに位置している;
【0173】
【
図7A-15A】
図7A−15Aは、本発明の実施態様による、ボーラス注入用の多孔質構造体と類似の多孔質構造体を有する弁を備える注入装置を示す図であり、埋め込まれたデバイスの流体が気体を押出して多孔質構造体に接触したときボーラス注入を提供するように、管腔が気体を含有する容積を有するチャネルに連結されている;
【0174】
【
図7A-15B】
図7A−15Bは、本発明の実施態様による、ボーラス注入用の多孔質構造体と類似の多孔質構造体を有する弁を備える注入用装置を示す図であり、両多孔質構造体の流れ抵抗の比に基づいてボーラスを行うために、多孔質構造体はボーラス注入用の多孔質構造体に比例する流れ抵抗を有する;
【0175】
【
図7A-15C】
図7A−15C1は、ボーラス送達のために弁を閉弁するためのピストンなどの摺動部材を有する弁を備える注入装置。
【0176】
図7A−15C2は、本発明の実施態様による、
図7A−15C1と同様な弁の管腔中のピストンを示す図である;
【0177】
【
図7A-16】
図7A−16は、実施態様による、多孔質構造体の流れ抵抗に比例する注入用装置の流れ抵抗に基いて、眼へボーラス注入を提供するよう構成される注入用装置の模式図である;
【0178】
【
図7A-17A】
図7A−17A〜
図7A−17Cは、実施態様による、漏出を抑制するためにユーザの入出力で自動化注入を提供するよう構成される自動化注入用装置の模式図である;
【
図7A-17B】
図7A−17A〜
図7A−17Cは、実施態様による、漏出を抑制するためにユーザの入出力で自動化注入を提供するよう構成される自動化注入用装置の模式図である;
【
図7A-17C】
図7A−17A〜
図7A−17Cは、実施態様による、漏出を抑制するためにユーザの入出力で自動化注入を提供するよう構成される自動化注入用装置の模式図である;
【0179】
【
図7B-1】
図7B−1は、実施態様による、細長い切開部に嵌合する断面積を有する保持構造体を備える治療デバイスの側面断面図である;
【0180】
【0181】
【0182】
【
図7B-4】
図7B−4は、
図7B−1と同様な治療デバイスの保持構造体の短い側面に沿った側面断面図である;
【0183】
【
図7B-5】
図7B−5は、強膜に埋め込まれた
図7B−1と同様な治療デバイスの底面図である;
【0184】
【
図7B-5A】
図7B−5Aは、隔壁の周囲長および保持構造体幅狭部分の周囲長に対応する幅を有するブレードを備える切削具を示す図である;
【0185】
【
図7B-6A】
図7B−6Aおよび
図7B−6Bは、それぞれ、実施態様による、細長い非円形断面サイズを有する治療デバイスの遠位断面図および近位断面図である;
【
図7B-6B】
図7B−6Aおよび
図7B−6Bは、それぞれ、実施態様による、細長い非円形断面サイズを有する治療デバイスの遠位断面図および近位断面図である;
【0186】
【
図7B-6C】
図7B−6Cは、実施態様による、細長い断面積を持つ保持構造体を有する治療デバイスの等角図である;
【0187】
【0188】
【
図7B-6E1】
図7B−6E1は、
図7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭ネック部分の短軸の側面図である;
【0189】
【
図7B-6E2】
図7B−6E2は、7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭ネック部分の長軸の側面図である;
【0190】
【0191】
【0192】
【
図7C-1】
図7C−1は、実施態様による、治療薬の徐放のために膨張した構成にある膨張性隔壁材および支持部を備える膨張式治療デバイスを示す図である;
【0193】
【
図7C-1A】
図7C−1Aは、
図7C−1と同様な支持部160Sの遠位端部を示す図である;
【0194】
【
図7C-1B】
図7C−1Bは、実施態様による、隔壁の内側に配置された支持部を示す図である;
【0195】
【
図7C-1C】
図7C−1Cは、実施態様による、隔壁の内面に沿って配置された支持部を示す図である;
【0196】
【
図7C-2】
図7C−2は、幅狭プロファイル構成での
図7C−1と同様な膨張式治療デバイスを示す図である;
【0197】
【
図7C-3】
図7C−3は、膨張プロファイル構成での
図7C−1と同様な膨張式治療デバイスを示す図である;
【0198】
【
図7C-4A】
図7C−4Aおよび
図7C−4Bは、実施態様による、展開式保持構造体を示す図である;
【
図7C-4B】
図7C−4Aおよび
図7C−4Bは、実施態様による、展開式保持構造体を示す図である;
【0199】
【
図7D】
図7Dは、実施態様による、網膜上の標的位置に治療薬を送達するために眼に配置された多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である、
【0200】
【
図7E】
図7Eは、実施態様による、眼に配置されたときに毛様体または小柱網のうちの1つ以上へ治療薬を送達するようにデバイスに設置された多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である;
【0201】
【
図7F】
図7Fは、実施態様による、水晶体から離れて網膜の方へ治療薬を放出するように配向された多孔質構造体を備える治療デバイス100を示す図である;
【0202】
【
図7G】
図7Gは、実施態様による、装着器具と、容器と、この容器内の治療デバイスとを備えるキットを示す図である;
【0203】
【
図8A】
図8Aおよび
図8A1は、それぞれ結膜と強膜との間に実質的に設置された治療デバイスの側面断面図および上面図である;
【
図8A1】
図8Aおよび
図8A1は、それぞれ結膜と強膜との間に実質的に設置された治療デバイスの側面断面図および上面図である;
【0204】
【
図8A2】
図8A2は、細長い構造体が強膜を通過してリザーバ・チャンバを硝子体液に連結させるように、リザーバが結膜と強膜の間にあるように埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
【0205】
【
図8B】
図8Bは、治療デバイスの容器のチャンバへの開口の近傍でチャネルの中に設置された多孔質構造体を示す図である;
【0206】
【
図8C】
図8Cは、放出速度プロファイルを与えるように、容器のチャンバ内に設置され、かつ細長い構造体の第1の開口に連結された多孔質構造体を示す図である;
【0207】
【
図8D】
図8Dは、容器のチャンバの液体を注入、置換し、治療薬を容器のリザーバ・チャンバへ注入するように離間している複数の注入ポートを示す図である;
【0208】
【
図9】
図9、容器の中心から離れて容器に連結され、容器の端部の近傍に設置された細長い構造体を示す図である;
【0209】
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施態様による、カートリッジ容器が包装容器の中に配置された、治療デバイスの中へ流体を注入するカートリッジを示す図である;
【0210】
【0211】
【
図10C】
図10Cは、治療薬を注入し、かつ埋め込まれたデバイスの流体を受容するために、眼に埋め込まれたデバイスに連結された
図10Bと同様なシリンジおよびカートリッジを示す図である;
【0212】
【0213】
【
図10E】
図10Eおよび
図10Fは、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイスから受容した液体を視認するための透明材料を備える注入用装置の側面および正面図である;
【
図10F】
図10Eおよび
図10Fは、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイスから受容した液体を視認するための透明材料を備える注入用装置の側面および正面図である;
【0214】
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施態様による、流体同士の分離を阻止し、かつ注入により埋め込み型デバイス流体を多孔質構造体を通過させるため、治療流体と埋め込み型デバイスの流体とを混合するために半径方向および針の軸方向に沿った軸方向に離間した複数の開口を備える針を示す図である;
【0215】
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施態様による、流体同士の分離を阻止するため、治療流体と埋め込み型デバイス100の流体とを混合するために、半径方向および針の軸方向に沿った軸方向に離間した複数の開口と遠位先端の開口とを備える針を示す図である;
【0216】
【
図11C】
図11Cは、本発明の実施態様による、流体同士の分離を阻止するため、治療流体と埋め込み型デバイスの流体とを混合するために、半径方向および針の軸方向に沿った軸方向に離間した複数の開口を備える針を示す図であり、可変形停止部が結膜に連結されている;
【0217】
【
図12A】
図12A〜
図12Cは、実施態様による、治療デバイスの過剰圧力を阻止するための膨張式チャンバを備える注入器を示す図である。
【
図12B】
図12A〜
図12Cは、実施態様による、治療デバイスの過剰圧力を阻止するための膨張式チャンバを備える注入器を示す図である。
【
図12C】
図12A〜
図12Cは、実施態様による、治療デバイスの過剰圧力を阻止するための膨張式チャンバを備える注入器を示す図である。
【0218】
【
図13A】
図13Aは、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイス流体より小さい密度を有する治療流体を受容する治療デバイスを示す図である;
【0219】
【
図14A】
図14Aは、実施態様による、埋め込まれたデバイス流体より大きい密度を有する治療流体を受容する治療デバイスを示す図であり、針をシリンジから外せるように、針および可変形停止部は可撓性チューブによってシリンジに連結されている。
【0220】
【
図15A-1】
図15A−1〜
図15A−3は、本発明の実施態様による、上向き角度位置(水平から10度上方)にあるデバイスを示す図であり、デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【
図15A-2】
図15A−1〜
図15A−3は、本発明の実施態様による、上向き角度位置(水平から10度上方)にあるデバイスを示す図であり、デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【
図15A-3】
図15A−1〜
図15A−3は、本発明の実施態様による、上向き角度位置(水平から10度上方)にあるデバイスを示す図であり、デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【0221】
【
図15B-1】
図15B−1〜
図15B−3は、下向き角度位置(水平から35下方、多孔質構造体は貫通性障壁の下方)にあるデバイスを示す図である。デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【
図15B-2】
図15B−1〜
図15B−3は、下向き角度位置(水平から35下方、多孔質構造体は貫通性障壁の下方)にあるデバイスを示す図である。デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【
図15B-3】
図15B−1〜
図15B−3は、下向き角度位置(水平から35下方、多孔質構造体は貫通性障壁の下方)にあるデバイスを示す図である。デバイスの内側の透明な溶液は密度が約1g/mLであり、黄色い補充溶液は密度が約1.03g/mLである;
【0222】
【
図16A-1】
図16A−1〜
図16A−3は、カートリッジの多孔質構造体がボーラス注入を提供するための弁を備えるように、埋め込まれたデバイス流体を受容するための容器とデバイス流体収集容器の下流の多孔質ベント構造体とを有する注入用カートリッジを示す図である;
【
図16A-2】
図16A−1〜
図16A−3は、カートリッジの多孔質構造体がボーラス注入を提供するための弁を備えるように、埋め込まれたデバイス流体を受容するための容器とデバイス流体収集容器の下流の多孔質ベント構造体とを有する注入用カートリッジを示す図である;
【
図16A-3】
図16A−1〜
図16A−3は、カートリッジの多孔質構造体がボーラス注入を提供するための弁を備えるように、埋め込まれたデバイス流体を受容するための容器とデバイス流体収集容器の下流の多孔質ベント構造体とを有する注入用カートリッジを示す図である;
【0223】
【
図16A-4】
図16A−4および
図16A−5は、それぞれ置換型針の側面図および正面図であり、注入を行う長い針と封込トラックの中へ流体を逃がすための短い針を有する2本針システムである;
【
図16A-5】
図16A−4および
図16A−5は、それぞれ置換型針の側面図および正面図であり、注入を行う長い針と封込トラックの中へ流体を逃がすための短い針を有する2本針システムである;および
【0224】
【
図17A-1】
図17A−1〜
図17A−3は、埋め込み型デバイス内に注入された液体の流れがあるかどうかを確かめるための、埋め込み型デバイスの中への注入を示す図である。
【
図17A-2】
図17A−1〜
図17A−3は、埋め込み型デバイス内に注入された液体の流れがあるかどうかを確かめるための、埋め込み型デバイスの中への注入を示す図である。
【
図17A-3】
図17A−1〜
図17A−3は、埋め込み型デバイス内に注入された液体の流れがあるかどうかを確かめるための、埋め込み型デバイスの中への注入を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0225】
ここに記載されるような本発明の実施態様は、多様な方法で組み合わせたり、眼を治療するための多様な療法と併用することが可能である。
【0226】
治療デバイスおよび注入用装置は、2010年1月29日に出願された米国特許出願第12/696678号、名称「後眼部薬剤送達」(代理人整理番号026322−003750US)に記載されており、その全開示を参照によりここに援用するものであり、ここに記載されるような少なくともいくつかの実施態様との併用に好適である。
【0227】
ここに記載されるような本発明の実施態様は、眼の疾患などの多様な疾患の1つ以上を治療するために、多様な方法で組み合わせることが可能である。本発明の実施態様は、例えば眼に埋め込まれたデバイスで眼を診断および治療する公知の方法など、公知の多様な診断法、医薬品、および手順、およびこれらの組み合わせと効果的に併用することが可能である。
【0228】
具体的には、抗体または抗体フラグメントを含む巨大分子の後眼部への送達について言及されるが、本発明の実施態様は、身体の多様な組織へ多様な治療薬を送達するために使用することが可能である。例えば、本発明の実施態様は、治療薬を血管内組織、関節内組織、髄腔内組織、心膜組織、管腔内組織、および消化管組織のうちの1つ以上に送達するために使用することが可能である。
【0229】
多くの実施態様では、ここに記載されるような効率は、埋め込まれたデバイスの流体を押出すことにより埋め込まれたデバイスのチャンバに配置される治療流体の比率を含むものである。補充効率は、デバイスのチャンバから治療流体の少なくとも部分を押出して、埋め込まれたデバイスに配置される治療流体の量に対応する。
【0230】
ここに記載されるような本発明の実施態様は、多様な埋め込まれたデバイスの応用に使用可能であり、治療流体と少なくとも部分的に例えば置換されるなどして押出される埋め込まれたデバイス流体を有する埋め込まれたデバイスとの使用に好適であろう。埋め込まれたデバイス流体には、眼の硝子体液成分が含まれているかもしれず、その密度は、治療流体の密度より高いか低いかあるいは略同じであることができる。多くの実施態様において、デバイスの流体は、液体同士を少なくとも部分的に分離するために、重力により押出されるか、あるいは重力密度に基いた分離が進行してもよい。ここに記載されるような実施態様は、少なくとも部分的な分離を提供するのに十分な流量で治療流体が埋め込まれたデバイスの流体を押出す使用形態に特に好適である。ここに記載されるような実施態様は、治療流体を注入する装置を備えてもよい。代替あるいは併用して、装置は、治療流体が治療デバイスの中へ吸引されるように埋め込まれた治療デバイスから流体を吸引する装置を備えてもよい。例えば、埋め込まれた治療デバイスから流体を少なくとも部分的真空で吸引することにより、治療流体を含有する容器から埋め込まれた治療デバイスの中へ治療流体が吸引されることになる。本発明の実施態様に関する研究によれば、吸引圧力が大気圧に限られるであろうから、デバイスからの流体の吸引により治療デバイス容器の流体を押出すことは長い時間がかかるかもしれず、そのため、ここに記載されるような実施態様は、吸引によりデバイスのチャンバの中に治療流体を配置するデバイスとの組み合わせに特に好適であることが示唆されている。代替あるいは併用して、埋め込まれたデバイスの流体を押出す装置は、埋め込まれたデバイスの流体を治療流体で押出すのにかかる時間が実質的に短縮できるように、大気圧よりも大きな内圧を治療デバイスに付与できる注入用デバイスの内圧を利用して治療流体を注入する注入器を備えることができる。
【0231】
多くの実施態様では、当業者は、重力を基準にした水平軸Hおよび重力を基準にした垂直軸Vを決めることが可能であり、それらは図面に図示・記載されている。治療液体は埋め込まれたデバイスのチャンバにゆっくりと、例えば約1〜30秒の時間をかけてゆっくりと配置され、例えば約1〜30秒の時間をかけてゆっくりと注入してもよい。デバイスはここに記載されるような容積を有してもよい。流量は、1秒当りデバイス容積の約1%または1秒当りデバイス容積の100%、およびこれらの間のすべての範囲に対応することができる。
【0232】
多くの実施態様では、注入された流体702FLの密度は、デバイス流体703FLの密度と異なる。その差は約1%以上、例えば約2%以上、多くの実施態様では約3%以上であることができる。密度差は実質的により大きくてもよく、例えば治療流体の密度は約0.5g/cm
3〜約2g/cm
3の範囲内であることができる。多くの実施態様において、治療流体の密度は例えば約1.01〜約1.1g/cm
3の範囲内である。埋め込まれたデバイスの流体の密度は、約0.5〜約2.0の範囲内であり、眼の硝子体液の密度、例えば1.03g/cm
3程度に対応することができる。多くの実施態様において、埋め込まれたデバイスの流体の密度は、治療流体よりも眼の硝子体液の密度に近くなっている。例えば、埋め込まれたデバイスの流体は先に眼の中へ注入された治療流体の1つ以上の成分を含んでもよいが、その治療流体の1つ以上の成分は眼の治療のため既に多孔質構造体を通過しており、そのためデバイス流体の密度は眼の硝子体液の密度に少なくとも部分的に対応することになる。多くの実施態様において、治療流体は安定剤などの賦形剤および治療薬を備えるので、治療流体の密度は埋め込まれたデバイス流体の密度よりも大きいであろう。治療流体は、例えば1つ以上の公知の治療流体を含有してもよい。多くの実施態様において、治療流体の密度は約1.03g/cm
3〜約1.13g/cm
3の範囲内であるので、治療流体の密度が治療デバイスの流体の密度よりも大きいことになる。
【0233】
多くの実施態様では、デバイスの流体は、多様な方法、例えば吸引または注入のうちの1つ以上によって、少なくとも部分的に置換することができ、多くの実施態様において、治療デバイスは約1気圧以上(約29.92インチ水銀、14.696psi、1013.25ミリバール/ヘクトパスカル)に圧力をかけること、例えばデバイスのチャンバを約2気圧以上に圧力をかけること、多くの実施態様において埋め込まれたデバイスのチャンバに治療流体を配置している期間にわたって約4気圧以上圧力をかけることが可能である。デバイスのチャンバにこれらの圧力がかかることを考慮して、注入部位を密閉することは有益であろう。
【0234】
ここに記載されるような治療デバイス100は、治療デバイスのチャンバ内に治療流体を配置している期間にわたって注入圧力に耐えるように構成することができる。セプタムなどの貫通性障壁を備えるアクセスポート、デバイスの壁部、および多孔質構造体は、加圧に耐えるよう構成することが可能である。多くの実施態様において、注入器は、結膜に接触した時にデバイスの貫通性障壁を支持しかつ変形する可変形針停止部を備える。ここに記載されるような可変形停止部は、注入のために結膜に対向して配置されたとき注入部位を密閉することが可能である。可変形停止部は、結膜が貫通性障壁と可変形停止部との間に延出するように結膜の外表面に配置されたとき、結膜を介して貫通性障壁を支持することが可能である。
【0235】
ここに記載されるようなデバイスおよび注入用装置は、少なくとも部分的な分離に対応する注入速度を付与するように構成することができ、流体を置換する効率を向上するための1つ以上の構造を備えてもよい。
【0236】
本発明の実施態様は、眼に埋め込まれたデバイスから眼の成分を採取するために、後眼部または前眼部への治療薬の徐放のために、またはこれらの組み合わせのために使用することができ、あるいは、その全開示を参照によりここに援用する、2011年6月9日に出願された米国特許出願第61/495,251号、名称「診断方法および装置」(代理人整理番号93161−808320(000100US))および2011年6月10日に出願された米国特許出願第61/495,718号、名称「診断方法および装置」(代理人整理番号93161−808370(00011OUS))に開示された実施態様と組み合わせることができる。治療量の治療薬が眼の硝子体液の中へ放出され、治療薬は拡散または対流のうちの少なくとも1つによって網膜または脈絡膜や毛様体などの他の眼組織へ移送され、治療効果が発揮される。
【0237】
ここで放出速度指標とは、多孔率をP、有効面積をA、有効長さに対応する曲線近似パラメータをF、多孔質構造体の長さまたは厚さをLとしたとき、(PA/FL)で表される。放出速度指標(RRI)は特記しない限りmmの単位を有し、ここに記載される教示に従い当業者は求めることができるものである。
【0238】
ここで徐放とは、治療薬の有効成分の治療量を長期間にわたって放出することを意味する。徐放は、有効成分の一次放出、有効成分の0次放出、0次と一次の中間型などの他の放出速度式、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0239】
ここで商標名で言及される治療薬とは、その商標名で市販されている治療薬製剤、市販製剤の有効成分、有効成分の一般名、または有効成分を含有する分子のうちの1つ以上を意味することができる。
【0240】
ここで、類似の符号は類似の構成部分および/または類似の工程を示している。
【0241】
治療薬は、容器のチャンバ内、例えば容器とチャンバを含むリザーバ内に収容されていてもよい。治療薬は、例えば、治療薬の溶液、治療薬の懸濁液または治療薬の分散液などの製剤でもよい。治療デバイスの実施態様に従って使用するのに適した治療薬の例は、例えば以下の表1Aやその他を参照してここに記載される。
【0242】
治療薬は、巨大分子、例えば抗体または抗体フラグメントなどであってもよい。治療用巨大分子としては、VEGF阻害剤、例えば市販のルセンティス(商標)が挙げられる。VEGF(血管内皮増殖因子)阻害剤は、眼の硝子体液中へ放出されることにより異常血管の退縮および視力の改善を行うことができる。VEGF阻害剤の例としては、ルセンティス(商標)、アバスチン(商標)、マクジェン(商標)、およびVEGFトラップが挙げられる。
【0243】
治療薬は、コルチコステロイドやその類似体などの小分子であってもよい。例えば、治療用コルチコステロイドには、トリマシナロン、トリマシナロンアセトニド、デキサメタゾン、デキサメタゾンアセテート、フルオシノロン、フルオシノロンアセテート、またはこれらの類似体のうちの1つ以上が含まれる。代替としてあるは併用して、小分子の治療薬としては、例えば、アクシチニブ、ボスチニブ、セディラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、またはバタラニブのうちの1つ以上を含むチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0244】
治療薬は抗VEGF治療薬であってもよい。抗VEGF療法および薬剤は、ある種の癌や加齢黄斑変性の治療に使用できる。ここに記載する実施態様による使用に適した抗VEGF治療薬の例としては、ベバシズマブ(アバスチン(商標))などのモノクローナル抗体、ラニビズマブ(ルセンティス(商標))などの抗体誘導体、ラパチニブ(チケルブ(商標))、スニチニブ(スーテント(商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(商標))、アクシチニブ若しくはパゾパニブなどのVEGFによって活性化されるチロシンキナーゼを阻害する小分子のうちの1つ以上が挙げられる。
【0245】
治療薬は、例えばシロリムス(商標)(ラパマイシン)、コパクソン(商標)(グラチラマーアセテート)、オセラ(商標)、補体C5aRブロッカー、毛様体神経栄養因子、フェンレチニドまたはレオフェレシスのうちの1つ以上などの乾性AMDの治療に適した治療薬であってもよい。
【0246】
治療薬は、例えばREDD14NP(クォーク)、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、ATG003、レジェネロン(商標)(VEGFトラップ)または補体阻害剤(POT−4)のうちの1つ以上などの滲出性AMDの治療に適した治療薬であってもよい。
【0247】
治療薬は、例えばベバシズマブ(モノクローナル抗体)、BIBW2992(EGFR/Erb2標的小分子)、セツキシマブ(モノクローナル抗体)、イマチニブ(小分子)、トラスツズマブ(モノクローナル抗体)、ゲフィチニブ(小分子)、ラニビズマブ(モノクローナル抗体)、ペガプタニブ(小分子)、ソラフェニブ(小分子)、ダサチニブ(小分子)、スニチニブ(小分子)、エルロチニブ(小分子)、ニロチニブ(小分子)、ラパチニブ(小分子)、パニツムマブ(モノクローナル抗体)、バンデタニブ(小分子)またはE7080(VEGFR2標的/VEGFR2、エーザイ製市販小分子)のうちの1つ以上などのキナーゼ阻害剤であってもよい。
【0248】
治療デバイス内の治療薬の量は、約0.01mg〜約50mg、例えば約0.01mg〜約10mgであってもよい。治療薬の量は、治療薬と、長期間にわたって標的組織を治療するための治療濃度の標的閾値とに基いて決定することができる。治療薬の量は、長期間にわたって治療量の治療薬、例えばここに記載されるようなルセンティス(商標)の量を提供できるものである。長期間とは、90日以上、例えば180日以上、または例えば1年以上、2年以上、あるいは3年以上であってもよい。硝子体内のルセンティス(商標)などの治療薬の治療濃度の目標閾値は、0.1μg/mL以上の治療濃度であってもよい。例えば、目標閾値濃度は、長期間にわたって約0.1μg/mL〜約5μg/mLの濃度であってもよく、その上限値は公表されたデータを使用して例9に示す計算に基づいている。目標閾値濃度は薬剤に依存するため、他の治療薬では違った値となるであろう。
【0249】
送達プロファイルは、徐放デバイスの治療有効性を得るために多様な方法で構成されてもよい。治療薬の濃度が確実にその治療薬の安全性プロトコルまたは有効性プロトコルを超えるようにするために、所定量の治療薬をひと月単位の間隔で容器内へ挿入、例えばひと月毎またはそれ以下の頻度で容器内へ注入してもよい。徐放によって、送達プロファイルが改善され、治療効果が向上する可能性がある。例えば、治療薬の濃度が長期間にわたって常に、例えば0.1μg/mLの閾値量以上とすることができる。
【0250】
挿入方法としては、治療デバイスの容器内へ用量を挿入することで行うことができる。例えば、ルセンティスの1回分注入量を治療デバイス内へ注入することができる。
【0251】
デバイスを患者の眼内へ挿入したときに、治療薬の徐放の継続期間は、デバイス内への治療薬の単回挿入から12週以上、例えば4カ月から6カ月まで及ぶことができる。
【0252】
長期間にわたる徐放を提供するように、治療薬は様々な方法で送達できる。例えば、治療デバイスは治療薬と結合剤とを備えてもよい。治療薬が硝子体液中への注入後長期間にわたって放出されるように、結合剤は治療薬に放出可能または可逆的に連結するよう構成された小粒子であってもよい。粒子は、長期間にわたって眼の硝子体液中に残留するような大きさとすることができる。
【0253】
治療薬は眼内に埋め込まれるデバイスによって送達してもよい。例えば、長期間にわたって薬剤送達デバイスを眼の強膜に連結するように、薬剤送達デバイスを眼の強膜内に少なくとも部分的に埋め込むことができる。治療デバイスは薬剤と結合剤とを備えていてもよい。薬剤および結合剤は、長期間の徐放を提供するよう構成できる。膜または他の拡散隔壁やメカニズムが、長期間にわたって薬剤を放出する治療デバイスの構成要素であってもよい。
【0254】
治療デバイスの寿命および注入の回数は、患者の治療ごとに最適化が可能である。例えば、デバイスは、30年の寿命の間、例えばAMD患者では約10年から15年の間、所定箇所に残置することができる。例えば、デバイスは2年以上の埋め込み期間用に構成でき、8回の注入(3カ月に1回毎)で2年の期間にわたって治療薬を徐放する。また、デバイスは10年以上の埋め込み用に構成でき、40回の注入(3カ月に1回毎)で治療薬を徐放する。
【0255】
治療デバイスは多くの方法で補充できる。例えば、医師の診察室でデバイス内へ治療薬を補充することが可能である。
【0256】
治療デバイスは多様な形態および物理的属性を有していてもよく、例えば治療デバイスの物理的特性としては、縫合糸付き薬剤送達デバイス、視力が低下しないような位置決めとサイズ決め、および生体適合材料のうちの少なくとも1つが挙げられる。デバイスは約0.005cc〜約0.2cc、例えば約0.01cc〜約0.1ccのリザーバ容量を有していてもよく、デバイスの容積は約2cc以下であってもよい。0.1ccを超える容積のデバイスの場合、硝子体切除術を行ってもよい。埋め込まれたデバイスの眼に対する位置と同様にデバイスの形状を考慮して、患者の視覚と干渉しないようにデバイスの長さを設定することができる。デバイスの長さは、デバイスが挿入される角度にも依存するものである。例えば、デバイスの長さは約4mm〜6mmであってもよい。眼の直径が約24mmであるため、強膜から硝子体へ約6mm以下で延びるデバイスならば、患者の視力に対する影響を最小限に抑制できるであろう。
【0257】
実施態様は、埋め込み型薬剤送達デバイスの多くの組み合わせを含むものである。治療デバイスは薬剤と結合剤とを有していてもよい。また、デバイスは、長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように、膜、開口、拡散隔壁、拡散メカニズムのうちの少なくとも1つを有していてよい。
【0258】
図1は、治療デバイスを組み込むのに適した眼10を示す。眼は、網膜26上に像を形成するように構成された角膜12と水晶体22を有する。角膜は、眼の角膜縁14まで延び、角膜縁は眼の強膜24に結合される。眼の結膜16は、強膜の上に配置される。水晶体は、患者が視認した物体に焦点を合わせるように調節する。眼は、光に反応して伸縮する虹彩18を有する。眼はまた強膜24と網膜26との間に配置された脈絡膜28も備える。網膜は、黄斑32を有する。眼は、毛様体扁平部25を有し、毛様体扁平部25は、ここに記載する治療デバイス100の配置および保持、例えば固定に適した眼の領域のひとつの例である。毛様体扁平部の領域は、網膜と角膜の間に配置された結膜と強膜とを含む。治療デバイスは、治療薬を放出するために毛様体扁平部から硝子体液30中まで延びるよう配置可能である。治療薬は、網膜および脈絡膜に到達して黄斑に治療効果を与えるよう硝子体液30中へ放出可能である。眼の硝子体液は、水晶体と網膜との間に配置された液体である。硝子体液は、治療薬を黄斑に送達するための対流を形成してもよい。
【0259】
図1A−1は、
図1と同様な眼10の強膜24内に少なくとも部分的に埋め込まれた治療デバイス100を示す。治療デバイスは、強膜にデバイスを連結する保持構造体、例えば突起部を備えていてもよい。治療デバイスは、治療薬を硝子体液中へ放出可能なよう強膜を貫通して硝子体液30中まで延出していてもよい。
【0260】
図1A−1−1および
図1A−1−2は、眼の網膜を治療するために眼10の硝子体液30中へ治療薬110を放出するよう、結膜16の下で強膜24を貫通して埋め込まれた治療デバイス100を示す。治療デバイス100は、結膜が治療デバイス100を被覆し保護することができるように、強膜に沿って結膜下に配置されるように構成された滑らかな突起などの保持構造体120を有していてもよい。治療薬110がデバイス100内へ挿入されるときに、結膜は、治療デバイスにアクセスするために持ち上げられるか、切開されるか、または針で穴を開けられてもよい。眼には、眼の強膜を上直筋に連結する上直筋の腱27が付着している。デバイス100は毛様体扁平部の多様な位置に配置することができ、例えば腱27から離れた位置でかつ腱の後方部、腱の後方部、腱の下方部、または鼻側しくは耳側のうちの1つ以上の位置に治療デバイスを配置することができる。
【0261】
埋め込み体は多様な方法で眼内に配置できるが、実施態様に係る研究によると、毛様体扁平部に配置することで、例えば巨大分子からなる有効成分を有する治療薬などの治療薬を網膜を治療するために硝子体内へ放出できることが示唆されている。
【0262】
治療デバイス100とともに使用するのに適した治療薬110としては、例えば以下の表1Aに記載されるような多様な薬剤が挙げられる。デバイス100の治療薬110は、治療薬の有効成分、治療薬の製剤、治療薬の市販製剤、医師が処方した治療薬の製剤、薬剤師が調合した治療薬の製剤、または賦形剤を含有する治療薬の市販製剤のうちの1つ以上を含んでいてもよい。治療薬は、例えば表1Aに示すように、一般名または商標名で言及することができる。
【0263】
治療デバイス100は、患者にとって有用かつ有益である限り、眼の治療のために眼内に埋め込んでおくことができる。例えば、デバイスは患者の存命中常設するなど、約5年間以上埋め込むことができる。代替としてあるいは併用して、デバイスは、患者の治療にとってもはや有用または有益でなくなったとき除去することができる。
【0264】
図1A−2は、
図1A−1、
図1A−1−1および
図1A−1−2と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイス100の構成体を示す。このデバイスは、デバイス100を強膜に連結する保持構造体120、例えばデバイスの近位端上に配置された突起を有していてもよい。デバイス100は保持構造体120に取り付けられた容器130を有していてもよい。有効成分、例えば治療薬110がリザーバ140内、例えばデバイスの容器130によって画成されたチャンバ132内に収容可能である。容器130は、多孔質材152、例えば多孔質ガラスフリット154を含む多孔質構造体150と、治療薬の放出を抑制する隔壁160、例えば不透過膜162とを有していてもよい。不透過膜162は実質的に不透過性の材料164であってもよい。不透過膜162は、長期間にわたって治療薬110の治療量を放出する大きさの開口166を有していてもよい。多孔質構造体150は、開口166と協同して長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように構成された厚み150Tおよび孔径を有していてもよい。容器130は、長期間にわたる放出用の治療量の治療薬を収容する大きさの容積142を有するチャンバを備えるリザーバ140を有していてもよい。デバイスは針停止部170を有していてもよい。硝子体液中のタンパク質がデバイスに進入し、多孔質構造体上の吸着サイトを奪うことで、治療薬の放出に寄与していると考えられる。リザーバ140内に収容された治療薬110は硝子体液中のタンパク質と平衡を保つことができるため、系は平衡状態へと進み、治療薬110が治療量放出されることになる。
【0265】
不透過膜162、多孔質材152、リザーバ140、および保持構造体120は、治療薬110を送達するための多様な形態を有することができる。不透過膜162は、治療薬を放出するために形成された少なくとも1つの開口を有する円板を接合した環状管を含んでもよい。多孔質材152は、環状の多孔質ガラスフリット154と、その上に配置された円形端部とを有していてもよい。リザーバ140は挿入を容易にするために形状が可変でもよく、すなわち、リザーバ140は、強膜を通って挿入される間、薄く細長い形状を呈していてもよく、その後治療薬を充填すると膨張してバルーン形状を呈してもよい。
【0266】
多孔質構造体150は、所望の放出プロファイルに従って治療薬を放出するために多様な方法で構成できる。多孔質構造体は、例えば焼結硬質材料であって、例えばリザーバに面する第1の側に複数の開口と、硝子体液に面する第2の側に複数の開口と、第1の側の開口を第2の側の開口に連通するようにそれらの間に配置された複数の相互連結チャネルとを有する多孔質構造体であってもよい。多孔質構造体150は、透過膜、半透膜、少なくとも1つの孔を有する材料、ナノチャネル、硬質材料にエッチングされたナノチャネル、レーザーエッチングされナノチャネル、毛細管チャネル、複数の毛細管チャネル、1つ以上の蛇行状チャネル、蛇行ミクロチャネル、焼結ナノ粒子、連続気泡発泡体または連続気泡ヒドロゲルなどのヒドロゲルのうちの1つ以上であってもよい。
【0267】
図1A−2−1は、挿入器具200の挿入用カニューレ210に装着された治療デバイス100を示し、治療デバイス100は強膜への挿入のため長く幅狭な形状を有し、強膜に少なくとも部分的に保持されるように第2の長く幅太な形状に拡大するように構成される。
【0268】
図1A−2−2は、膨張した構成である、カニューレへの装着に適したリザーバ140を備える治療デバイス100を示す。
【0269】
図1Bは、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイス100を示す。このデバイスは、例えば強膜と面一となるように強膜に連結する保持構造体120を有し、隔壁160は管168を有する。治療薬110中の有効成分112が、不透過材164からなる管168内に収容されている。多孔質材152が、長期間にわたって治療薬を治療濃度で徐放するように管168の遠位端に配置されている。不透過材164は、デバイスが眼内に挿入されたときに多孔質材152を硝子体液に連結する開口を画成するように多孔質材152の周りを遠位方向に延びていてもよい。
【0270】
管168および保持構造体120は、表面処理されたガラス棒体を受容するよう構成されてもよく、ガラス棒体は治療薬とともに注入できる。長期間の治療薬の溶出が完了すると、棒体は新しい棒体と交換される。
【0271】
デバイス100は、治療薬と、例えば治療薬を送達する結合剤からなる結合媒体などの担体とを有していてもよい。治療薬は、侵食消滅する固体支持部を含むカラムで取り囲むことができる。
【0272】
図1Cは、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。ガラスウールなどの結合剤190からなる結合媒体192に、アクセスポート180を通ってデバイスへ注入する前に、治療薬を装填してもよい。デバイス100は長期間にわたって治療薬を送達するための結合、漏出、および隔壁機能を有していてもよい。結合媒体192および治療薬110は、結合媒体および治療薬の吸引によって置換することができる。少なくとも大部分の治療薬が放出されたときに、次に注入する治療薬を有する結合媒体でさらに薬剤が送達されるように、結合媒体を流出するかまたは置換するかの少なくともいずれかが可能である。膜195を治療デバイス100の周囲に配置することができる。膜195としては、メチルセルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン、およびポリビニリデンジフルオライド(PVDF)が挙げられる。治療デバイスは、開口166が出口ポートとなるように形成された隔壁160を有する。治療薬は拡散メカニズムまたは対流メカニズムのうちの少なくとも1つによって放出することができる。出口ポートの数、寸法、および形状によって治療薬の放出速度を決定することができる。出口ポートは、対流ポート、例えば浸透圧で駆動される対流部またはばねで駆動される対流部のうちの少なくとも1つであってもよい。出口ポートは、治療薬が一時的に付着し、その後何らかの物理的または化学的条件下で放出可能な管状通路であってもよい。
【0273】
図1C−Aは少なくとも1つの出口ポート167を示し、例えば流体がデバイスの注入ポート182内へ注入されるとき、またはガラスフリットなどの挿入物がデバイス内へ挿入されるときに、デバイス内側から外側に液体が流れるのを可能とするように、出口ポートをデバイス100上に配置できる。治療デバイスは、例えばセプタムなどの注入および/または除去用のアクセスポート180を有していてもよい。追加あるいは代替として、治療デバイスを補充するときに、デバイスの内容物を眼の硝子体内へ流出してもよい。
【0274】
図1C−1は結合剤194を除去する方法を示す。注入器187のシリンジ188に連結された針189が、治療デバイス100のアクセスポート180内に挿入される。結合剤194は針で吸引可能である。
【0275】
図1C−2は、治療薬110が結合された第2の結合剤190によって、治療薬110を挿入する方法を示す。治療薬は、長期間にわたって徐放するために、デバイスの容器130中へ注入可能である。
【0276】
図1C−3は、治療デバイス内へ注入される治療薬の製剤で充填されているシリンジを示す。注入器187のシリンジ188に連結された針189を、容器110Cから治療薬110を吸入するために用いることができる。容器110Cは、セプタムを有するボトル、単回用量用の容器、または製剤を混合するのに適した容器などの市販の容器であってもよい。眼内に配置された治療デバイス100内へ注入するために、治療薬110の量110Vが注入器187内へ吸引される。量110Vは、所定の量、例えば治療デバイス110の容器の容積や硝子体液中への所望の注入量に基づいた量とすることができる。量110Vの例では、治療デバイスを通って硝子体液中へ量110Vの第1の部分を注入し、かつ治療デバイス110の容器内に量110Vの第2部分を収容するように、容器の容積を超える量であってもよい。容器110Cは、治療薬110の製剤110Fを含有していてもよい。製剤110Fは治療薬の市販製剤、例えば表1Aを参照してここに記載するような治療薬を含有していてもよい。ここに記載する実施態様による使用に適切な市販製剤の例としては、限定するものではないが、例えばルセンティス(商標)およびトリアムシノロンが挙げられる。製剤110Fは市販治療薬、例えばアバスチン(商標)の濃縮または希釈製剤であってもよい。硝子体液のオスモル濃度および浸透圧は約290〜約320の範囲内にすることができる。例えば、硝子体液のオスモル濃度および浸透圧と実質的に同一のオスモル濃度および浸透圧、例えば約280〜約340、例えば約300mOsmの製剤となるように、アバスチン(商標)の市販製剤を希釈することが可能である。治療薬110は硝子体液と実質的に同一のオスモル濃度および浸透圧を有することができる一方で、治療薬110は、硝子体液よりも高い浸透圧の溶液または硝子体液よりも低い浸透圧の溶液とすることができる。当業者はここに記載する教示に基づき、長期間にわたって治療薬を放出するための治療薬の製剤およびオスモル濃度を経験により決定するための実験を実施することができるであろう。
【0277】
例えば、米国では、ルセンティス(商標)(有効成分ラニビズマブ)が、10mMのヒスチジン塩酸塩、10%のα,α−トレハロース二水和物、0.01%のポリソルベート20を有する10mg/mLのルセンティス(商標)水溶液0.05mLをpH5.5にて送達するよう設計されている防腐剤無しの滅菌溶液として、使い捨て硝子小びんで入手可能である。欧州でのルセンティス(商標)の製剤は、米国の製剤と実質的に同様である。
【0278】
例えば、ジェネンテックおよび/またはノバルティスによって開発中のルセンティス(商標)の徐放製剤を、デバイス100内へ注入される治療薬として用いてもよい。徐放製剤は、有効成分を含有する粒子を含んでもよい。
【0279】
例えば、米国では、アバスチン(商標)(ベバシズマブ)が抗ガン剤として承認されており、AMD用としての臨床試験が進行中である。ガン用の市販溶液は静脈内注射用pH6.2の溶液である。アバスチン(商標)は、4mLまたは16mLのアバスチン(商標)(25mg/mL)を送達するために100mgおよび400mgの防腐剤無しの使い捨て小びん入りで供給される。100mgの製品は、、240mgのα,α−トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基、無水)、1.6mgのポリソルベート20、および米国薬局方の注射用水で製剤されている。400mgの製品は、960mgのα,α−トレハロース二水和物、92.8mgのリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、19.2mgのリン酸ナトリウム(二塩基、無水)、6.4mgのポリソルベート20、および米国薬局方の注射用水で製剤されている。市販製剤は投与前に0.9%の塩化ナトリウム100mLで希釈され、使用される市販製剤の量は患者や適応症によって調整する。ここに記載する教示に基づき、当業者は治療デバイス100内へ注入するためのアバスチン(商標)の製剤を決定することができるであろう。欧州でのアバスチン(商標)の製剤は、米国の製剤と実質的に同様であると考えられる。
【0280】
例えば、米国では、注入可能な溶液に用いられるトリアムシノロンにはアセトニドおよびヘキサアセトニドの2つの誘導体がある。アセトアミド誘導体は米国では硝子体内注入用として承認されている。アセトアミド誘導体はトリバリス(アラガン社)における有効成分であり、重量パーセントで2.3%のヒアルロン酸ナトリウム;0.63%の塩化ナトリウム;0.3%のリン酸ナトリウム、二塩基;0.04%のリン酸ナトリウム、一塩基;およびpH7.0〜7.4の注射用蒸留水を含有する賦形剤0.1mL中に8mgのトリアムシノロンアセトニドが含まれる(8%懸濁液)。アセトアミド誘導体は40mg/mL懸濁液のトリエッセンス(商標)(アルコン社)の有効成分でもある。
【0281】
当業者はこれらの製剤についてオスモル濃度を求めることができる。溶液中の有効成分の解離度を求め、これらの製剤のオスモル濃度とモル濃度との違いを求めるのに用いることができる。例えば、少なくともいくつかの製剤(または懸濁液)が濃縮されいることを考慮すると、モル濃度はオスモル濃度と異なるであろう。
【0282】
治療デバイス100内へ注入する治療薬の製剤は、公知の多様な治療薬の製剤であってもよく、その治療薬製剤は、デバイス100から長期間にわたって放出するに適したオスモル濃度を有する。表1Bは、生理食塩水および表1Aの市販製剤のいくつかのオスモル濃度(Osm)の例を示している。
【0284】
眼の硝子体液は約290mOsm〜約320mOsmのオスモル濃度を有する。約280mOsm〜約340mOsmのオスモル濃度を持つ治療薬の製剤は、眼の硝子体液に対して実質的に等張かつ等浸透圧である。表1Bに記載された製剤は、眼の硝子体液に対して実質的に等浸透圧であるとともに等張であり、治療デバイス内への注入に適しているが、治療デバイス内へ注入された治療薬の製剤は、硝子体の浸透圧およびオスモル濃度に対して高張(高浸透圧)または低張(低浸透圧)であることができる。実施態様に関する研究によれば、高浸透圧性の製剤では、注入された製剤の溶質が硝子体のオスモル濃度と平衡状態になる初期に、治療薬の有効成分がやや速く硝子体内へを放出され、アバスチン(商標)などの低浸透圧性の製剤では、注入された製剤の溶質が眼と平衡状態になる初期に、治療薬の有効成分がやや遅く硝子体内へ放出されることを示唆している。当業者はここに記載する教示に基づき実験を実施して、長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように、かつ、硝子体内の治療薬の治療濃度が長期間にわたって最小阻止濃度以上の治療濃度範囲内となるように、リザーバ・チャンバ内に配置された治療薬の製剤に適切なリザーバ・チャンバ容積および多孔質構造体を、経験的に決定することができるであろう。
【0285】
図1Dは
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼内に配置されるように構成された治療デバイス100を示し、デバイスは、治療薬を直線的に放出するように、複数のチャンバおよびチャンバを接続するチャネルを備える。第1のチャンバ132Aが、治療量の治療薬を収容する第1の容積を有するリザーバを有していてもよい。例えば、治療薬はリザーバ内に収容された有効成分であってもよい。第2のチャンバ132Bが、第1のチャンバより遠位に配置され、第1の開口が第1のチャンバと第2のチャンバを接続している。治療薬は第1の開口を通って第2のチャンバ内へ拡散される。第2のチャンバは、例えば0次となるように直線的に治療薬を送達するように、第2のチャンバ内に治療薬が一時的に保管されるような第2の容積を有する。第2の開口が第2のチャンバから硝子体液に向かって延出してもよい。第1の開口、第2の開口および第2の容積は、長期間にわたって治療レベルの徐放用治療薬を直線的に送達できるような大きさとすることができる。治療デバイス内へ挿入する治療薬は1つ以上であってもよい。その場合、2つ以上の治療薬が混合されるか、または個別のチャンバ内へ注入されてもよい。
【0286】
さらに追加のチャンバおよび開口を、治療薬を直線的に送達できるようにデバイス上に配置できる。例えば、第3のチャンバが第2のチャンバより遠位に配置される。第2のチャンバを第3のチャンバに連結する第2の開口を設けることができる。また、例えば、第4のチャンバが第3のチャンバより遠位に配置され、第3の開口により第3のチャンバと第4のチャンバが接続される。
【0287】
さらに追加あるいは代替として、治療デバイスは、薬剤の徐放を提供する少なくとも1つのゲートを備えてもよい。ゲートは、磁力を用いてあるいは電流を印加することで「閉鎖」位置から「開放」位置まで移動可能である。例えばゲートは摺動あるいはねじることができる。ゲートは、バネ駆動とすることができ、再負荷可能なポンプを有していてもよい。ゲートは浸透圧ポンプを有していてもよい。
【0288】
図1Eは
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼内に配置されるように構成された治療デバイスを示し、デバイス100は治療デバイスの底部に設置された針停止部170を有する。注入針189が治療デバイス100の出口ポート166を貫通して出口ポート166に損傷を与える可能性をなくすために、針停止部を治療デバイス内に設けてもよい。治療デバイス内の所定位置を越えて注入針が進入することを防ぐために、針停止部は十分に硬質の材料からなることが望ましい。さらに追加あるいは代替として、注入針が治療デバイスの出口ポートを貫通して損傷を与える可能性がないように、注入器の注入針の長さを設計してもよい。
【0289】
図1Eおよび
図1E−1に示すように、針停止部170は治療デバイスの後端部に配置することができる。
図1E−2、
図1E−3および
図1E−3−1は、デバイスの中間部に設置された針停止部を含むことが可能な他の実施態様を示す。針停止部は、治療薬の分流器として機能するように設計してもよい。針停止部の形状によって、治療デバイスの内部チャンバ内の流体の残部と治療薬との混合を促進するようにすることができる。
【0290】
図1E−1は、治療デバイスのチャンバ内で治療薬100が移動することを促進する形状を持つ、治療デバイスの底部に設置された針停止部170を備え、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
【0291】
図1E−2は、治療デバイスの中央に設置された針停止部170を備え、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
【0292】
図1E−3は、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、治療デバイスの中央に設置された針停止部170を備え、
図1A−1および
図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
【0293】
図1E−3−1は、
図1E−3と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの上面図である。
【0294】
図1F−1は、分流器172を備える治療デバイス100を示す。分流器172は、デバイスの外側で結膜に連結している可変形針停止部189DSと組み合わせることができ、それにより針189はアクセスポート180と分流器との間まで容器130の中を延出することになる。
【0295】
図1F−2は、埋め込まれたデバイス流体703FLの少なくとも部分が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体150を通るよう付勢されるように、治療流体702FLの少なくとも部分を保持するために十分な容積を有する流体分離器174を備える治療デバイス100を示す。流体分離器は、リザーバチャンバ内に設置される容器を備えることができる。流体を分離する容器は、リザーバチャンバ内の実質的な容積、例えばリザーバチャンバの容積の約50%以上を占めることができる。フロー流体分離器は、カップ形状の構成をとることができ、例えば治療流体702FLの密度が埋め込まれたデバイス流体703FLの密度より大きいときに効果的であろう。カップ形状の構造体が治療流体で実質的に満たされたとき、デバイス流体703FLの実質的部分が多孔質構造体150を通過した後で、治療流体は多孔質構造体150を通過することになる。
【0296】
図1F−3は、埋め込まれたデバイス流体703FLの少なくとも部分が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体150を通るよう付勢されるように、治療流体702FLの少なくとも部分を保持するために十分な容積を有する流体分離器174を備える治療デバイス100を示す。流体分離器は、リザーバチャンバ内に設置された容器を備えることができる。流体を分離する容器は、リザーバチャンバ内の実質的な容積、例えばリザーバチャンバの容積の約50%以上を占めることができる。フロー流体分離器は、カップ形状の構成をとることができ、例えば治療流体702FLの密度が埋め込まれたデバイス流体703FLの密度より大きいときに効果的であろう。カップ形状の構造体は、デバイス100の軸100Aから偏心していてもよい。
【0297】
図1Gは、本発明の実施態様による、治療流体が遠位端の方へ残留し、埋め込まれた流体が少なくとも部分的な分離を伴って多孔質構造体150を通過するように、遠位端および軸100Aから離間して設置された多孔質構造体150を備える治療デバイス100を示す。
【0298】
図1Hは、本発明の実施態様による、可動型流体分離器174を備える治療デバイス100を示す図であり、流体分離器は、注入中に流体同士を分離するために治療流体702FLを注入すると遠方へ軸100Aに沿って移動するよう構成される。流体分離器は、治療流体が注入されるときデバイス100の軸100に沿って摺動し、かつ流体703FLを多孔質構造体150を通して通過させるために、圧縮性独立気泡スポンジあるいはヒドロゲルを備えることができる。分離器は流体を通過させる複数の小さなベントを備えることができ、これにより、次回の注入の前に、分離器が流体を小さなベントを通過させながらポート180のある近位へ移動することができる。少なくとも1つの針189は、例えば単一管腔針189SLであってもよい。単一管腔針189SLは、多孔質構造体150のある遠方へ可動型分離器174を押圧するのに十分な圧力を与えるものである。
【0299】
図1Iは、デバイス流体703FLが多孔質構造体150を通過するように、注入中に流体同士を混合して分離を阻止するために複数のビーズ176を備える治療デバイス100を示す。複数のビーズ176は、例えば流体702FLが流体703FLよりも大きな密度を有するときなど分離を阻止して多孔質構造体150を通過するデバイス流体703FLの量を増大するために、針189を通過した治療流体を混合することができる。
【0300】
図2は、治療デバイス100に組み込むのに適したアクセスポート180を示す。アクセスポート180は、例えば
図1A−1から
図1Dを参照して、ここに記載する治療デバイスと組み合わせることができる。アクセスポートはデバイスの近位端に配置されていてもよい。アクセスポート180は、セプタム186を設けた貫通可能な隔壁184を有する保持構造体120に形成された開口であってもよい。アクセスポート180は、患者の結膜16の下方かつ強膜24の上方に配置されるように構成されてもよい。
【0301】
図3Aは、治療デバイス100に組み込むのに適した鍔部128を示す。鍔部128は、強膜24に連結するよう構成された保持構造体120に設けてもよい。鍔部は膨張可能な鍔部であってもよい。
【0302】
図3Bは、強膜から硝子体液へデバイスに沿って細菌が繁殖するのを抑制するために治療デバイス100上に設けた、抗細菌剤310を含浸した生体適合性材料を示す。生体適合性材料はコラーゲン、例えばコラーゲンスポンジ312であってもよく、抗菌剤はコラーゲン内に含浸された銀であってもよい。抗菌剤が含浸された生体適合性材料は、デバイスの外面の少なくとも一部の周りを延出していてもよい。デバイスが眼内へ挿入されるときに抗菌剤が強膜内に少なくとも部分的に配置されるように、抗菌剤は保持構造体120の一部を形成してもよい。
【0303】
図4Aは、放出された抗体フラグメント410を含む抗体および結合剤190を備える基質420を示す図であり、
図4Bは、結合剤190により基質420に可逆的に結合された抗体フラグメント410を示す。結合された抗体フラグメントが結合していない抗体フラグメントと平衡となるように、抗体フラグメントは、結合剤を備える基質に可逆的に結合可能である。ここに記載する教示に基づき、当業者は、抗体の少なくとも一部に可逆的に結合する結合剤を備える多様な基質を想到するであろう。結合媒体の例として、クロマトグラフィーで使用される粒子状物質、例えばマクロプレップ・t−ブチルHIC担体、マクロプレップDEAE担体、CHTセラミック・ハイドロキシアパタイト・タイプI、マクロプレップCM担体、マクロプレップ・メチルHIC担体、マクロプレップ・セラミック・ハイドロキシアパタイト・タイプII、UNOsphereS陽イオン交換担体、UNOsphereQ強陰イオン交換担体、マクロプレップ・ハイS担体、およびマクロプレップ・ハイQ担体が挙げられる。結合性試験に供する他の材料としては、高い能力でタンパク質を結合する親水性ポリマー担体(GEヘルスケア社)に基づくイオン交換クロマトグラフィー材料および生体アフィニティークロマトグラフィー材料、およびシリカよりも多くタンパク質を結合するポリ(ビニルアルコール)からなるハーバードアパラタス社製の親水性パッキング材料が挙げられる。その他の候補は当業者には公知であろう。
【0304】
図5Aは、治療薬110をデバイスの容器130内に挿入する注入器187に連結された治療デバイス100を示す。注入器187はシリンジ188に連結された針189を有していてもよい。
【0305】
図5A−1は、デバイスに材料を注入および除去する注入器187に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、デバイスの容器内へ挿入するよう構成される第1の管腔189Aおよび第2の管腔189B有する注入針189を備えてもよい。注入器は、デバイス内への治療薬の注入510とデバイスからの液体の除去520を同時に行ってもよい。注入器は、それぞれ第1の管腔および第2の管腔に連結された第1の一方向弁および第2の一方向弁を有してもよい。
【0306】
図5Bは、マイクロループ状チャネル530を備える治療デバイスを示す。マイクロループチャネルは第1のポート530Aおよび第2のポート530Bまで延出していてもよく、治療薬を例えば結合剤と一緒に第1のポート内へ注入し、例えば結合剤を含有する液体などの流動性材料をマイクロループチャネル530から吸い出すことができる。
【0307】
図5C−1は、蛇行状チャネル540を備える治療デバイス100を示す。蛇行状チャネルは第1のポート540Aから第2のポート540Bまで延出してもよく、治療薬を第1のポート内へ注入し、例えば結合剤を含有する液体などの流動性材料を第2のチャネルから吸い出すことができる。
【0308】
図5C−2は、蛇行状コイル状チャネル550を備える治療デバイスを示す。コイル状チャネル550は出口ポート552まで延出してもよい。針189が、デバイス100内へ治療薬を注入するために、ポート180内へ挿入される。
【0309】
図5Dは、治療薬を保持する伸縮可能構造体562および強膜に結合する外側硬質ケース560を示す。伸縮可能構造体562は、バッグ、バルーン、可撓性リザーバ、隔膜、またはバッグのうちの少なくとも1つなどの膜を含んでもよい。外側硬質ケースは、構造体562を実質的に囲むように延出し、その構造体が拡大したとき硝子体液中へ液体を放出し、材料が構造体から吸い出されて構造体が収縮するときケースのチャンバ内側に硝子体液を引き込む開口を有していてもよい。
【0310】
図5Eは、治療デバイス100の出口ポート552を覆ってを配置された膜550を示す。
【0311】
図5Fは、デバイス100のサイドポート570を覆って治療デバイス100にクランプで固定された筒状膜572を備える治療デバイスを示す。
【0312】
保護膜が直径0.2μmの細孔を有する際、この値は、治療薬送達のモデルである対象タンパク質の20倍以上の大きさである。例えば、治療に使用されるタンパク質のモデルの分子量および直径として以下のものが挙げられる。
(a)免疫グロブリンG 150キロダルトン 10.5nm
(b)ウシ血清アルブミン 69キロダルトン 7.2nm
(c)免疫グロブリンGのFabフラグメント 49キロダルトン 流体力学的直径の報告なし
【0313】
したがって、免疫グロブリンGおよびウシ血清アルブミンのサイズ範囲内の治療化合物の溶液は、細菌性細胞や他の細胞の通過を防止するために用いられる0.2μm孔径の保護膜を比較的容易に通過すると考えるべきである。
【0314】
結合材料または結合剤は、化学的結合剤または材料、構造的結合剤または材料、または静電気的結合剤または材料のうちの少なくとも1つであることができる。結合剤の種類は、例えばガラスビーズ、ガラスウールまたはガラス棒体などの非生分解性材料から成る分類に属するものであってもよい。表面に少なくとも1つの官能基を導入して、少なくとも1つの治療化合物に対する、イオン結合、疎水性結合、または生体親和性結合のうちの少なくとも1つの能力を結合剤または結合材料に付与することができる。
【0315】
結合剤は生分解性材料であってもよい。例えば、生分解性、結合性、またはこれらのプロセスの組み合わせにより、拡散速度を制御してもよい。
【0316】
結合剤はイオン交換を行ってもよく、イオン交換は、官能基、pH感受性結合、または正電荷若しくは負電荷のうちの少なくとも1つを利用していてもよい。例えば、ジエチルアミノエチル官能基またはカルボキシメチル官能基のうちの少なくとも1つとのイオン交換が挙げられる。
【0317】
結合剤はpH感受性結合剤であってもよい。例えば、結合剤は、pH7で治療薬を溶出し、約4〜約6.5のpHで治療薬を結合するよう構成することができる。例えば、pH7で結合剤の正味の負電荷が減少することで、正に帯電した薬剤との結合が減少し治療薬を放出するように、陽イオン交換結合剤を構成することができる。結合剤を治療薬に可逆的に連結するために、結合剤とともに目標とする緩衝剤を使用してもよい。例えば緩衝剤が硝子体に不溶であることを利用して放出速度を遅くするなど、放出速度を制御することができる。代替あるいは併用して、多孔質膜、あるいは開口のサイズなどの物理的特性を用いることで溶出を制限できる。
【0318】
イオン交換は、陽イオン交換または陰イオン交換のどちらであってもよい。
【0319】
結合剤は疎水性相互作用を有していてもよい。例えば、結合剤は疎水性ポケット、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基またはフェニル基などの官能基のうちの少なくとも1つへの少なくとも1つの結合を有していてもよい。
【0320】
結合剤は、親和性、例えば巨大分子親和性または金属キレート化親和性のうちの少なくとも1つを有していてもよい。例として、ヒドロキシアパタイト、または例えば亜鉛などのキレート化金属が挙げられる。イミノ二酢酸が亜鉛とキレートを生成できる。
【0321】
結合剤は、チャージング、再チャージングまたは溶出のうちの少なくとも1つの機能を有していてもよい。チャージングは、多孔質材を投入して有効成分を放出することを含むことができる。多孔質材は、結合に使用できる非常に大きな不活性表面積を有していてもよい。再チャージングは、担体+治療薬を除去すること、および新たに「チャージされた」担体+治療薬を添加することを含んでもよい。
【0322】
溶出は、副生成物、例えば除去可能な結合していない結合剤を含んでもよい。例えば、硝子体の拡散(栓流)によってpHなどの条件が変わり、治療薬+担体の相互作用が低減される。
【0323】
さらに追加あるいは代替として、治療薬の徐放システムは、活性化される薬剤送達パケット、例えばミクロスフェアを有していてもよい。パケットは光化学活性化、熱活性化または生分解のうちの少なくとも1つで活性化できる。
【0324】
治療デバイスは、安全措置を提供するよう構成された少なくとも1つの構造を有していてもよい。デバイスは、リザーバ本体内のマクロファージや他の免疫細胞;細菌侵入;または網膜剥離のうちの少なくとも1つを防ぐ少なくとも1つの構造を有していてもよい。
【0325】
治療デバイスは、体内の他の適用箇所用に構成されてもよい。他の薬剤送達通路は、眼内、口腔内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮膚、髄腔内、血管内、関節内、心膜、臓器の管腔内、および消化管などのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0326】
ここに記載する薬剤送達デバイスおよび方法を用いて治療および/または予防できる症状は、下記の疾患の少なくとも1つが挙げられる;すなわち血友病および他の血液疾患、成長障害、糖尿病、白血病、肝炎、腎不全、HIV感染、セレブロシダーゼ欠損およびアデノシン・デアミナーゼ欠損などの遺伝病、高血圧、敗血性ショック、多発性硬化症、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎などの自己免疫疾患、ショック性および消耗性疾患、嚢胞性線維症、乳糖不耐症、クローン病、炎症性腸疾患、消化器ガンまたは他のガン、変性疾患、外傷、貧血症などの複数の全身状態、並びに眼疾患、例えば網膜剥離、増殖網膜症、増殖糖尿病性網膜症、変性疾患、血管疾患、閉塞症、穿通性外傷で生ずる感染、内因/全身感染などの眼内炎、術後感染、後部ブドウ膜炎、網膜炎または脈絡膜炎などの炎症、新生物および網膜芽細胞腫などの腫瘍。
【0327】
治療デバイス100によって送達可能な治療薬110の例が表1Aに記載されており、例えば、トリアムシノロンアセトニド、ビマトプロスト(ルミガン)、ラニビズマブ(ルセンティス)(商標)、トラボプロスト(トラバタン、アルコン社)、チモロール(チモプティック、メルク社)、レボブナロール(ベタガン、アラガン社)、ブリモニジン(アルファガン、アラガン社)、ドルゾラミド(トルソプト、メルク社)、ブリンゾラミド(エイゾプト、アルコン社)が挙げられる。治療デバイスによって送達可能な治療薬の他の例としては、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコールカナマイシン、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンおよびペニシリンなどの抗生物質;アムホテリシンBおよびミコナゾールなどの抗真菌薬;スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウムなどの抗菌薬;イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビルおよびインターフェロンなどの抗ウイルス薬;クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、ピリラミン、セチリジンおよびプロフェンピリダミンなどの抗アレルギー性薬;ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸塩、プレドニゾロンアセテート、フルオロメトロン、ベタメタゾンおよびトリアムシノロンなどの抗炎症薬;サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェンおよびピロキシカムなどの非ステロイド性抗炎症薬;フェニレフリン、ナファゾリンおよびテトラヒドロゾリンなどの充血緩和薬;ピロカルピン、サリチル酸塩、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、カルバコール、フルオロリン酸ジイソプロピル、フォスフォリンアイオダイドおよび臭化デメカリウムなどの縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬;硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピンおよびヒドロキシアンフェタミンなどの散瞳薬;エピネフリンなどの交感神経作用薬;カルムスチン、シスプラチンおよびフルオロウラシルなどの抗悪性腫瘍薬;ワクチンおよび免疫賦活薬などの免疫薬;エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン様、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモンおよびペプチドおよび視床下部放出因子のバソプレッシンなどのホルモン剤;マレイン酸チモロール、レボブロノール塩酸塩およびベタキソロール塩酸塩などのβアドレナリン受容体ブロッカー;上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来性増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトトロピンおよびフィブロネクチンなどの増殖因子;ジクロルフェナミド、アセタゾラミドおよびメタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤、並びにプロスタグランジン、抗プロスタグランジンおよびプロスタグランジン前駆体などの他の薬剤が挙げられる。ここに記載するように眼内へ制御放出、徐放が可能な当業者に周知の他の治療薬も、本発明の実施態様に従って使用に好適である。
【0328】
治療薬110は、下記の薬剤の1つ以上を含むことができる;アバレリックス、アバタセプト、アブシキシマブ、アダリムマブ、アルデスロイキン、アレファセプト、アレムツズマブ、α−1−プロテイナーゼ阻害剤、アルテプラーゼ、アナキンラ、アニストレプラーゼ、抗血友病因子、抗胸腺細胞グロブリン、アプロチニン、アルシツモマブ、アスパラギナーゼ、バシリキシマブ、ベカプレルミン、ベバシズマブ、ビバリルジン、ボツリヌス毒素タイプA、ボツリヌス毒素タイプB、カプロマブ、セトロレリクス、セツキシマブ、コリオゴナドトロピンα、凝固因子IX、凝固因子VIIa、コラゲナーゼ、コルチコトロピン、コシントロピン、シクロスポリン、ダクリズマブ、ダルベポエチンα、デフィブロチド、デニロイキンジフチトクス、デスモプレシン、ドルナーゼα、ドロトレコギンα、エクリズマブ、エファリズマブ、エンフビルチド、エポエチンα、エプチフィバチド、エタネルセプト、エクセナチド、フェリプレシン、フィルグラスチム、フォリトロピンβ、ガルスルファーゼ、ゲムツズマブオゾガマイシン、グラチラマーアセテート、グルカゴン(遺伝子組換え)、ゴセレリン、ヒト血清アルブミン、ヒアルロンダーゼ、イブリツモマブ、イデュルスルファーゼ、免疫グロブリン、インフリキシマブ、インスリングラルギン(遺伝子組換え)、インスリンリスプロ(遺伝子組換え)、インスリン(遺伝子組換え)、ブタインスリン、インターフェロンα−2a(遺伝子組換え)、インターフェロンα−2b(遺伝子組換え)、インターフェロンアルファコン−1、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−1b、インターフェロンγ−1b、レピルジン、ロイプロリド、ルトロピンα、メカセルミン、メノトロピン、ムロモナブ、ナタリズマブ、ネシリチド、オクトレオチド、オマリズマブ、オプレルベキン、OspAリポタンパク質、オキシトシン、パリフェルミン、パリビズマブ、パニツムマブ、ウシペガデマーゼ、ペガプタニブ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンα−2a、ペグインターフェロンα−2b、ペグビソマント、プラムリンチド、ラニビズマブ、ラスブリカーゼ、レテプラーゼ、リツキシマブ、サケカルシトニン、サルグラモスチム、セクレチン、セルモレリン、ヨウ化血清アルブミン、ソマトロピン(遺伝子組換え)、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、テリパラチド、チロトロピンα、トシツモマブ、トラスツズマブ、ウロフォリトロピン、ウロキナーゼ、またはバソプレッシン。これらの治療薬の分子の分子量および適応症は以下の表1Aに掲げられている。
【0329】
治療薬110は、細胞タンパク質のイムノフィリンファミリーの結合メンバーによって作用する化合物の1つ以上を有していてもよい。このような化合物は「イムノフィリン結合化合物」として公知である。イムノフィリン結合化合物は化合物の「リムス」ファミリーを含むが、これに限定されるものではない。使用可能なリムス化合物の例は、シロリムス(ラパマイシン)およびその水溶性類似体のSDZ−RAD、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、CCI−779(ワイエス社)、AP23841(アリアド社)、並びにABT−578(アボット・ラボラトリーズ社)を含むシクロフィリンおよびFK506結合タンパク質(FKBPs)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0330】
リムスファミリーの化合物は、脈絡膜新血管形成を含む、新血管生成が介在する眼の疾患および症状の治療、予防、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用の組成物、デバイスおよび方法に用いることができる。リムスファミリーの化合物は、滲出性AMDを含むAMDの予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。ラパマイシンは、脈絡膜新血管形成を含む、新血管生成が介在する眼の疾患および症状の予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。ラパマイシンは、滲出性AMDを含むAMDの予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。
【0331】
治療薬110は、ピロリジン;ジチオカルバミン酸塩(NF−κB阻害剤);スクアラミン;TNP類似体およびフマギリン;PKC(プロテインキナーゼC)阻害剤;Tie−1およびTie−2キナーゼ阻害剤;VEGF受容体キナーゼの阻害剤;ベルケード(商標)(注射用ボルテゾミブ)などのプロテオソーム阻害剤;ラニビズマブ(ルセンティス(商標))および同一標的指向の他の抗体;ペガプタニブ(マクジェン(商標));ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、例えばビトロネクチン受容体タイプインテグリンの環状ペプチドアンタゴニスト;α−v/β−3インテグリンアンタゴニスト;α−v/β−1インテグリンアンタゴニスト;ロシグリタゾンまたはトログリタゾンなどのチアゾリジンジオン;γ−インターフェロン、またはデキサトランおよび金属配位を用いてCNVに標的化したインターフェロンを含むインターフェロン;色素上皮由来因子(PEDF);エンドスタチン;アンジオスタチン;ツミスタチン;カンスタチン;酢酸アネコルタブ;アセトニド;トリアムシノロン;テトラチオモリブデート;VEGF発現を標的にするリボザイムを含む血管新生因子のRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi);アキュテイン(商標)(13−シスレチノイン酸);キノプリル、カプトプリル、およびペリンドズリルを含むがこれらに限定されないACE阻害剤;mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の阻害剤;3−アミノサリドマイド;ペントキシフィリン;2−メトキシエストラジオール;コルヒチン;AMG−1470;ネパフェナク、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ロフェコキシブ、NS398、セレコキシブ、ビオックス、および(E)−2−アルキル−2(4−メタンスルホニルフェニル)−1−フェニルエテンなどのシクロオキシゲナーゼ阻害剤;t−RNAシンターゼモジュレーター;メタロプロテアーゼ13阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;カリウムイオンチャネルブロッカー;エンドレペリン;6−チアグアニンのプリン類似体;環状ペルオキシドANO−2;アルギニンデイミナーゼ(遺伝子組換え);エピガロカテキン−3−ガレート;セリバスタチン;スラミンの類似体;VEGFトラップ分子;アポトーシス阻害剤;光線力学療法(PDT)で使用可能なビスダイン(商標)、snET2および他の感光薬;肝細胞増殖因子の阻害剤(増殖因子に対する抗体またはその受容体、c−Metチロシンキナーゼの小分子阻害剤、HGFの短縮型例えばNK4)のうちの1つ以上を有していてもよい。
【0332】
治療薬110は、血管新生または新血管生成、特にCNVの治療用に有用な治療薬および治療法を含むがこれに限定されない他の治療薬および治療法との組み合わせを有していてもよい。このような追加的治療薬および治療法の例として、限定することなく、ピロリジン;ジチオカルバミン酸塩(NF−κB阻害剤);スクアラミン;TNP470類似体およびフマギリン;PKC(プロテインキナーゼC)阻害剤;Tie−1およびTie−2キナーゼ阻害剤;VEGF受容体キナーゼの阻害剤;ベルケード(商標)(注射用ボルテゾミブ)などのプロテオソーム阻害剤;ラニビズマブ(ルセンティス(商標))および同一標的指向の他の抗体;ペガプタニブ(マクジェン(商標));ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、例えばビトロネクチン受容体タイプインテグリンの環状ペプチドアンタゴニスト;α−v/β−3インテグリンアンタゴニスト;α−v/β−1インテグリンアンタゴニスト;ロシグリタゾンまたはトログリタゾンなどのチアゾリジンジオン;γ−インターフェロン、またはデキサトランおよび金属配位を用いてCNVに標的化したインターフェロンを含むインターフェロン;色素上皮由来因子(PEDF);エンドスタチン;アンジオスタチン;ツミスタチン;カンスタチン;酢酸アネコルタブ;アセトニド;トリアムシノロン;テトラチオモリブデート;VEGF発現を標的にするリボザイムを含む血管新生因子のRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi);アキュテイン(商標)(13−シスレチノイン酸);キノプリル、カプトプリル、およびペリンドズリルを含むがこれらに限定されないACE阻害剤;mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の阻害剤;3−アミノサリドマイド;ペントキシフィリン;2−メトキシエストラジオール;コルヒチン;AMG−1470;ネパフェナク、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ロフェコキシブ、NS398、セレコキシブ、ビオックス、および(E)−2−アルキル−2(4−メタンスルホニルフェニル)−1−フェニルエテンなどのシクロオキシゲナーゼ阻害剤;t−RNAシンターゼモジュレーター;メタロプロテアーゼ13阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;カリウムイオンチャネルブロッカー;エンドレペリン;6−チアグアニンのプリン類似体;環状ペルオキシドANO−2;アルギニンデイミナーゼ(遺伝子組換え);エピガロカテキン−3−ガレート;セリバスタチン;スラミンの類似体;VEGFトラップ分子;肝細胞増殖因子の阻害剤(増殖因子に対する抗体またはその受容体、c−Metチロシンキナーゼの小分子阻害剤、HGFの短縮型例えばNK4);アポトーシス阻害剤;光線力学療法(PDT)とビスダイン(商標)、snET2および他の感光薬;並びにレーザー光凝固術が挙げられる。
【0333】
治療薬は、例えば、デンプン、ゼラチン、糖、アカシアなどの天然ゴム、アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースなどの固体;シリコーンゴムなどのポリマー;蒸留水、生理食塩水、ブトウ糖、水または生理食塩水中のブドウ糖などの液体;ヒマシ油とエチレンオキシドの縮合物、低分子量脂肪酸の液体グリセリル・トリエステル;低アルカノール;脂肪酸のモノグリセリド若しくはジグリセリドまたはレシチン、ポリソルベート80などのホスファチドなどの乳化剤を有する、コーン油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマシ油などの油;グリコールおよびポリアルキレン・グリコール;例えば、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)および類似の化合物などの懸濁化剤を単独またはレシチン、ステアリン酸ポリエチレングリコールなどの好適な調薬助剤とともに含む水媒体などの薬学的に許容される担体と併せて使用してもよい。担体は、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤または他の関連する材料などのアジュバントも含んでいてよい。
【0334】
治療デバイスは少なくとも1つの治療薬を保持するよう構成された容器を有していてもよく、容器は前記少なくとも1つの治療薬を保持するチャンバを備え、前記少なくとも1つの治療薬を硝子体液中へ放出するための少なくとも1つの開口とこの少なくとも1つの開口内に配置された多孔質構造体150が設けられる。多孔質構造体150は、前記少なくとも1つの治療薬の硝子体液への送達速度を制御する一定の蛇行率および多孔率を有する焼結金属、焼結ガラスまたは焼結ポリマーなどの規定の蛇行性および多孔質材料を備えてもよい。硬質多孔質構造体は、治療デバイスからの単一または複数の治療薬の放出を制御するメカニズムとして、毛細管、侵食性ポリマーおよび膜に対していくつかの利点を有する。これらの利点としては、硬質多孔質構造体が針停止部を含有できること、製造がより簡単で費用効果が高いこと、埋め込みの前後いずれで洗浄または目詰まり除去のために洗い流せること、構造体内の不規則な通路による迷路が微生物を高効率深層ろ過すること、および膜または侵食性ポリマーマトリックスと比較して構造体の硬さや厚みが大きいため大変頑丈であることが挙げられる。また、硬質多孔質構造体が焼結金属、セラミック、ガラスまたはある種のプラスチックから製造される場合、熱あるいは放射線による滅菌およびパイロジェン除去など、ポリマー膜や他の膜を損傷する可能性のある滅菌処理および浄化処理を行うことができる。例9に例示するように、ある実施態様では、硬質多孔質構造体は、少なくとも6ヵ月間硝子体内の治療薬濃度を治療上有効に保つように構成することができる。所定の形態の硬質多孔質構造体が提供する放出プロファイルによって、デバイスが小型化でき、これは大型デバイスが視覚を変化あるいは低下させ得る眼などの小器官における使用に好適である。
【0335】
図6A1は、第1の端部に配置された貫通性隔壁184を有する容器130と、長期間にわたって治療薬を放出するよう第2の端部に配置された多孔質構造体150と、強膜および結膜に連結するよう容器から外方に突出する延長部を備える保持構造体120とを含む、治療デバイス100を示している。保持構造体の延長する突出部は、直径120Dを有する。保持構造体は、強膜を受容する大きさの凹部120Iを含んでいてもよい。容器は、リザーバの少なくとも一部分を画成する管状の隔壁160を含んでいてもよく、この容器は、例えば直径134などの幅を有する。直径134は、例えば約0.5mm〜約4mmの範囲内、例えば約1mm〜3mmの範囲内など、ある範囲内に設定することができ、例えば約2mmであってもよい。容器は、治療薬を硝子体中に放出するために結膜から硝子体に延出するように設定された長さ136を備えていてもよい。長さ136は、例えば約2mm〜約14mmの範囲内、例えば約4mm〜10mmの範囲内に設定することができ、例えば約7mmであってもよい。リザーバの容積は、管状構造の内断面積と、多孔質構造体から貫通性隔壁までの距離とによって実質的に決定される。保持構造体は、容器の直径より大きい保持構造体直径を有する環状の延長部を含んでいてもよい。保持構造体は、延長部が強膜と結膜との間に延出するときに強膜を受容するように構成される凹部を含んでいてもよい。貫通性隔壁は、容器の近位端に配置されるセプタムであってもよく、セプタムは、治療薬を注入するための針などの鋭利な物体で貫通可能な隔壁を備えている。多孔質構造体は、治療薬を長期間にわたって放出するような大きさの断面積150Aを備えてもよい。
【0336】
多孔質構造体150は、リザーバに連結されている第1の側面150S1と、硝子体に連結されている第2の側面150S2を含んでいてもよい。第1の側面は、第1の面積150A1を含んでいてもよく、第2の側面は、第2の面積150A2を備えていてもよい。多孔質構造体は、厚さ105Tを備えていてもよい。多孔質構造体は、直径150Dを備えていてもよい。
【0337】
リザーバ140の容積は、約5μL〜約2000μLの治療薬、例えば約10μL〜約200μLの治療薬を含んでいてもよい。
【0338】
容器のリザーバに保管される治療薬は、治療薬を含む固体、治療薬を含む溶液、治療薬を含む懸濁液、治療薬を吸着している粒子、または治療薬に可逆的に結合している粒子のうちの少なくとも1つを含む。例えば、リザーバは、網膜の炎症を治療するためのトリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドの懸濁液を含んでいてもよい。リザーバは、緩衝液と、溶解度が約1μg/mL〜約100μg/mLの範囲内、例えば約1μg/mL〜約40μg/mLの治療薬の懸濁液を含んでいてもよい。例えば、治療薬は、埋め込み時に、37℃の緩衝液中の溶解度が約19μg/mLであるトリアムシノロンアセトニドの懸濁液を含んでいてもよい。
【0339】
放出速度指数は、多様な値であってもよく、例えば多くの実施態様では、懸濁液の放出速度指数は、溶液のものよりもいくぶん高くなってもよい。治療薬を治療量で長期間にわたって放出するために、放出速度指数は、約5以下であってもよく、約2.0以下、例えば約1.5以下とすることができ、多くの実施態様では約1.2以下であってもよい。
【0340】
例えば保持構造体および多孔質構造体を含む治療デバイスの大きさは、カテーテルの管腔を貫通するように設定されてもよい。
【0341】
多孔質構造体は、針の貫通を制限する針停止部を含んでいてもよい。多孔質構造体は、治療薬を徐放するように構成された複数のチャネルを含んでいてもよい。多孔質構造体は、治療薬の徐放性に適した特徴を有する硬質の焼結材料を含んでいてもよい。
【0342】
図6A2は、丸い遠位端を備える、
図6Aと同様の治療デバイスを示す。
【0343】
図6Bは、
図6Aと同様な硬質多孔質構造体を示す。硬質多孔質構造体158は、複数の相互連結チャネル156を含む。多孔質構造体は、相互連結された物質粒子155からなる焼結材料を含む。相互連結された物質粒子が、多孔質物質を貫通し治療薬を放出するチャネルを画成する。チャネルが多孔質物質を貫通する相互連結チャネルを含むように、チャネルは焼結物質粒子の周りを延出してもよい。
【0344】
硬質多孔質構造体は、多様な方法で治療薬を容器に注入するように構成することができる。硬質多孔質構造体のチャネルは、治療薬が圧力下でリザーバに注入される場合に実質的に固定されたチャネルを含んでいてもよい。硬質多孔質構造体は、約160ビッカース〜約500ビッカースの範囲内の硬度パラメータを有する。いくつかの実施態様では、硬質多孔質構造体が焼結ステンレス鋼から形成され約200ビッカース〜約240ビッカースの範囲内の硬度パラメータを含む。いくつかの実施態様では、治療デバイスのリザーバを流体で充填または補充する間、多孔質構造体を通して治療薬が排出するのを抑制することが好ましい。これらの実施態様では、溶液または懸濁液が治療デバイスのリザーバに注入されるとき、硬質多孔質構造体を通る上記の溶液または懸濁液の排出が実質的に抑制されるように、硬質多孔質構造体のチャネルは、30ゲージの針で注入された溶液または懸濁液の流れに対する抵抗を有する。さらに、リザーバの充填および補充を容易にするために、これらの実施態様は、真空下の排出孔または排出リザーバ、または両者を任意に含んでいてもよい。
【0345】
リザーバおよび多孔質構造体は、多様な方法で治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。治療薬は、少なくとも抗体のフラグメントを含み、少なくとも約10kダルトン(Dalton)の分子量であってもよい。例えば、治療薬は、ラニビズマブまたはベバシズマブのうちの1つ以上を含んでいてもよい。代替あるいは併用して、治療薬は、徐放に適した小分子薬を含んでいてもよい。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上または約6ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造は、約12ヵ月以上、または約2年以上、あるいは約3年以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造は、約3ヵ月以上、または6ヵ月、あるいは12ヵ月、または24ヵ月の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.01μg以上約300μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。
【0346】
硬質多孔質構造体のチャネルは、硬質多孔質構造体のチャネルを通過する分子のサイズを制限するように構成したヒドロゲルを含む。例えば、ヒドロゲルは、チャネル内に形成されることができ、アクリルアミド・ゲルであってもよい。ヒドロゲルは、少なくとも約70%の含水率を有する。例えば、治療薬の分子量を約30kダルトンに制限するために、ヒドロゲルの含水率を約90%以下にしてもよい。治療薬の分子量を約100kダルトンに制限するために、ヒドロゲルの含水率を約95%以下にしてもよい。多孔質物質のチャネルがルセンティス(商標)を通過させ、実質的にアバスチン(商標)を通過させないように構成されるよう、ヒドロゲルの含水率を約90%〜約95%の範囲内にしてもよい。
【0347】
硬質多孔質構造体は、広範囲の異なる形状および形態に容易に形成することができる複合多孔質材を備えてもよい。例えば、多孔質材は、貫通孔が焼結粉末またはエアロゲルで含浸されている、金属、エアロゲル、またはセラミック発泡体の複合体(すなわち、構造体の容積を貫通する細孔の集合体を設けるために内部の空孔が相互に接続され、空孔の壁は実質的に連続していて非多孔性であり、空孔の壁を形成する物質の容積に対する空孔の容積の比は、連続空孔構造体の全密度が理論的密度の約30%未満となるように決定されている、網目状連続空孔構造体)であってもよい。得られる多孔質複合体の厚さ、密度、多孔率、および多孔特性は、所望の治療薬放出に適合するように変更可能である。
【0348】
実施態様は、一体的な(すなわち単一構成要素の)多孔質構造体を作成する方法を含む。この方法は、所望の形状の多孔質構造体に対応するモールドに粒子を導入することを含んでもよい。その形状は、リザーバに連結する複数の多孔質チャネル近位開口を画成する近位端と、眼の硝子体液に連結する複数のチャネル出口開口を画成する遠位端と、近位開口からフィルタの中へ延出する複数の閉鎖された入口キャビティと、チャネル出口開口から多孔質構造体の中へ延出する複数の閉鎖された出口キャビティとを含む。この方法は、圧力をモールドに印加し、それによって、粒子が凝集して単一の構成要素を形成することと、その構成要素を焼結して多孔質構造体を形成することとをさらに含む。粒子は、ポリマーバインダを用いずに、圧縮され凝集して構成要素を形成することができ、多孔質構造体は、実質的に機械加工せずに形成することができる。
【0349】
モールドは、開口した他端を上方に向けて垂直に配置することができ、20マイクロメートル未満の粒径を有する金属粉体をモールドの開口端部を通してキャビティに導入するが、このとき金属粉体をキャビティに実質的に均一に充填するためにモールドを振動することができる。モールドの開口他端に蓋をして、モールドに圧力を加え、それによってキャビティ内の金属粉体にも圧力を加えて金属粉を凝集することで、モールドに対応する形状を有するカップ形状の粉末状金属構造体を形成できる。成形された粉末状金属構造体をモールドから取り除き焼結して、多孔質焼結金属の多孔質構造体を得ることができる。
【0350】
多孔質構造体と強く嵌合するように構成された開口を有する不透過性構造体に圧入することによって、金属性の多孔質構造体をデバイスに組み込むことができる。当業者に知られている溶接などの他の手段を使用して、多孔質構造体をデバイスに組み込むことも可能である。代替あるいは併用して、モールドの一部分が成形後の粉末状金属構造体に残留しデバイスの一部となるモールドを使用して、粉末状金属構造体を形成することができる。この方法は、多孔質構造体とデバイスとの密閉を良好にするのに有利であろう。
【0351】
焼結多孔質金属構造体や多孔質ガラス構造体などの多孔質体を通る治療薬の放出速度は、チャネル・パラメータを使用した多孔質構造体内の治療薬の拡散により記載されてもよく、有効拡散係数は、リザーバを充填する液体中の治療薬の拡散係数に多孔質体の多孔率およびチャネル・パラメータを乗算したものとなる。すなわち、
放出速度=(DP/F)A(c
R−c
V)/L
但し、
c
R=リザーバ内の濃度
c
V=リザーバ外、すなわち硝子体内の濃度
D=リザーバ溶液中の治療薬の拡散係数
P=多孔質構造体の多孔率
F=多孔質構造体のチャネルの蛇行パラメータに対応し得るチャネル・パラメータ
A=多孔質構造体の面積
L=多孔質構造体の厚さ(長さ)
累積放出率=1−c
R/c
R0=1−exp((−DPA/FLV
R)t)
但し、t=時間、Vr=リザーバ容積
【0352】
放出速度指数(以下、RRI)は、治療薬の放出を決定するのに使用される。RRIは(PA/FL)で定義されてもよく、ここでRRI値は、特に明記しない限り、mmの単位を有する。ここに記載される治療送達デバイスで使用される多数の多孔質構造体は、RRIが約5.0以下、多くの場合約2.0以下であり、約1.2mm以下であってもよい。
【0353】
チャネル・パラメータは、多孔質構造体を通って放出される治療薬の通路の伸長率に対応することができる。多孔質構造体は、多数の相互連結チャネルを含んでいてもよく、チャネル・パラメータは、治療薬が放出されたときに多孔質構造体の相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側に移動する有効長さに対応することができる。チャネル・パラメータに多孔質構造体の厚さ(長さ)を乗算することで、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さを求めることができる。例えば、チャネル・パラメータ(F)が約1.5の相互連結チャネルは、治療薬が移動する有効長さを約50%増加させ、厚さ1mmの多孔質構造体の場合、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さは、約1.5mmとなる。チャネル・パラメータ(F)が約2以上の相互連結チャネルは、治療薬が移動する有効長さを約100%増加させ、厚さ1mmの多孔質構造体の場合、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さは、約2.0mm以上となる。多孔質構造体は、治療薬を放出するための多様な代替通路を提供する多数の相互連結チャネルを含むので、一部のチャネルが閉塞しても、代替の相互連結チャネルが利用可能であり、多孔質構造体を通る有効通路長さは実質的に変化せず、その結果、一部のチャネルが閉塞しても、多孔質構造体を通る拡散速度および治療薬の放出は実質的に維持されることになるる。
【0354】
リザーバ溶液が水溶液であるか、または水と同様の粘度を有する場合、対象となる温度での水中の治療薬(TA)の拡散係数の値を使用することができる。下記の式を使用して、20℃の水中で測定したウシ血清アルブミンの拡散係数D
BSA,20C=6.1e−7cm
2/sを使用して37℃での拡散係数を推定することが可能である(Molokhia et al., Exp Eye Res 2008)。
D
TA,37C=D
BSA,20C=(η
20C/η
37C)(MW
BSA/MW
TA)
1/3
但し、MWは、BSAまたはテスト化合物の分子量を表し、ηは水の粘度である。以下に、対象となるタンパク質の拡散係数の一覧を示す。
【表2】
小分子は、フルオレセインと同様の拡散係数を有する(MW=330、D=4.8〜6e−6cm
2/s、Stay, MS et al., Pharm Res, 2003, 20(1), pp.96-102)。例えば、小分子には、分子量が約435のトリアムシノロンアセトニドなどの糖質コルチコイドが含まれる。
【0355】
多孔質構造体は、長期間にわたって治療量を放出するように構成された多孔率と、厚さと、チャネル・パラメータと、表面積とを有する。多孔質物質の多孔率は、その物質内を延出するチャネルの空隙部の割合に対応するものでもよい。多孔率は、約3%〜約70%の範囲内の値である。他の実施態様では、多孔率は、約5%〜約10%、約10%〜約25%、あるいは例えば約15%〜約20%範囲内の値である。多孔率は、重量およびマクロな体積から求めることができ、あるいは窒素ガスの吸着により測定することができる。
【0356】
多孔質構造体は、複数の多孔質構造体を含んでいてもよく、上記の式で使用される面積は、複数の多孔質構造体の合計面積であってもよい。
【0357】
チャネル・パラメータは、チャネルの蛇行率に対応する近似パラメータを含んでいてもよい。表面パラメータである公知の多孔率、表面積および厚さに対して、チャネルの蛇行率に対応できる曲線近似パラメータFを実験測定値に基づいて求めることができる。所望の徐放性プロファイルを決定するのに、パラメータPA/FLを使用することができ、P、A、FおよびLの値はそれぞれ決定することができる。治療薬の放出速度は、チャネル・パラメータに対する多孔率の比に対応し、多孔質構造体が長期間にわたって治療薬を放出するためには、チャネル・パラメータに対する多孔率の比が約0.5未満であることができる。例えば、多孔質構造体が長期間にわたって治療薬を放出するためには、チャネル・パラメータに対する多孔率の比は、約0.1未満であるか、または例えば約0.2未満である。チャネル・パラメータは、約1以上、例えば約1.2以上の値をであってもよい。例えば、チャネル・パラメータ値は、約1.5以上、たとえ約2以上を含んでいてもよく、約5以上を含んでいてもよい。チャネル・パラメータは、約1.1〜約10の範囲内、例えば約1.2〜約5の範囲内であってもよい。当業者は、ここに記載される教示に基づいて実験を行い、治療薬を所望の放出速度プロファイルで放出するチャネル・パラメータを経験的に決定することができる。
【0358】
モデルにおける面積は、移動する質量を流束の単位で表すこと、すなわち、単位面積あたりの質量移動速度に由来する。厚さの等しい不透過性スリーブに装着された多孔質ディスクなどの簡単な形状の場合、面積はディスクの1つの面に対応し、厚さLはディスクの厚さである。円錐台の形をした多孔質体などのより複雑な形状の場合、有効面積は、治療薬が多孔質体に入る部分の面積と治療薬が多孔質体から出る部分の面積との中間の値となる。
【0359】
リザーバ中の濃度の変化を上述の放出速度と関連づけることによって、時間の関数として放出速度を記述できるモデルを導出することができる。このモデルは、治療薬の溶液の濃度がリザーバの中で均一であることを想定している。さらに、レシーバ液すなわち硝子体中の濃度は無視できるものとみなしている(c
V=0)。微分方程式を解いて整理することによって、リザーバ内の溶液から多孔質構造体を通る治療薬の放出に関して、リザーバ中の濃度を時間tおよびリザーバの容積V
Rの関数として記述する以下の式が得られる。
c
R=c
R0exp((−D PA/FL V
R)t)
累積放出=1−c
R/c
R0
【0360】
リザーバが懸濁液を含む場合、リザーバ中の濃度c
Rは、固体と平衡状態にある溶解濃度(すなわち治療薬の溶解度)である。この場合、リザーバ中の濃度は、時間の経過に関して一定であり、放出速度はゼロ次となり、累積放出は、固体がなくなるまで時間とともに直線的に増大する。
【0361】
多数の眼用治療薬の治療濃度は、治療効果が発揮される硝子体液中の濃度を測定することによって実験的に求めることができる。したがって、放出速度の予測を硝子体液中の濃度の予測に拡大適用することは有用である。治療薬の眼の組織からの消失の記述には、1−コンパートメント・モデルを使用してもよい。
【0362】
ルセンティス(商標)などの治療薬の現行の硝子体内投与は、ボーラス注入により行われる。硝子体へのボーラス注入は、速度定数k=0.693/半減期、およびcmax=用量/V
Vとして、単一指数関数としてモデル化できる(但し、V
Vは硝子体の容積)。一例として、ラニビズマブの半減期は、ウサギおよびサルでは約3日であり(Gaudreault et al.)、ヒトでは9日である(ルセンティス(商標)の添付文書)。硝子体容積は、ウサギおよびサルでは約1.5mLであり、ヒトの眼では4.5mLである。モデルは、サルの眼にルセンティス(商標)0.5mgをボーラス注入した場合の初期濃度が333μg/mLであることを予測している。この濃度は、約1ヵ月後に硝子体中濃度0.1μg/mLまで減衰する。
【0363】
徐放デバイスでは、硝子体中の濃度は時間とともにゆっくりと変化する。この場合、デバイスからの放出速度(上記の式によって記述される)を眼からの消失速度kc
VV
Vと等しいとする質量バランスから、モデルを導出することができる。式を整理して、硝子体中の濃度に関する以下の式が得られる。
c
V=デバイスからの放出速度/kV
V
【0364】
治療薬の溶液を含有するデバイスからの放出速度は時間とともに指数関数的に減少するので、硝子体中の濃度も同じ速度定数で指数関数的に減少する。換言すれば、硝子体中の濃度がDPA/FLV
Rに等しい速度定数で減少することになり、すなわち、多孔質構造体の特性およびリザーバの容積に依存していることになる。
【0365】
治療薬の懸濁液を含有するデバイスからの放出速度がゼロ次であるので、硝子体中の濃度も時間に依存しないであろう。放出速度は、比率PA/FLを介して多孔質構造体の特性に依存することになるが、薬剤がなくなるときまではリザーバの容積には依存しないことになる。
【0366】
所望量の治療薬を放出するために、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを多様な方法で設定することが可能である。例えば、分子量が約100ダルトン以上、例えば約50kダルトン以上の分子を含む治療薬を通過させるように、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを設定することが可能である。断面サイズが約10nm以下の分子を含む治療薬を通過させるように、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを設定することが可能である。硬質多孔質構造体のチャネルは、相互連結チャネル同士の間を治療薬が通過するよう構成された相互連結チャネルを含む。硬質多孔質構造体は、硬質材料の粒子からなり、相互連結チャネルは、治療薬が多孔質物質体を通過するように硬質材料の粒子の周りを少なくとも部分的に延出する。硬質材料の粒子は、付着位置で相互に連結することができ、相互連結チャネルが付着位置の周りを少なくとも部分的に延出する。
【0367】
多孔質構造体およびリザーバは、網膜−脈絡膜の炎症を抑制するために、約0.05μg/mL〜約4μg/mL、例えば0.1μg/mL〜約4μg/mLの範囲内のin situ濃度に対応する糖質コルチコイドの治療量で、約6ヵ月以上の長期間にわたって糖質コルチコイドを放出するように構成してもよい。
【0368】
多孔質構造体は焼結材料を含む。焼結材料は、平均粒径が約20μm以下の材料粒子を含んでいてもよい。例えば、焼結材料は、平均粒径が約10μm以下、平均粒径が約5μm以下、または平均粒径が約1μm以下の材料粒子を含んでいてもよい。チャネルのサイズは、焼結材料の粒径と、圧縮力、圧縮時間、炉内温度などの処理パラメータとに基づいて、治療量の治療薬を長期間にわたって焼結材料を通過させるように設定される。チャネルのサイズは、バクテリアおよび菌類胞子を含む微生物が焼結材料を通って侵入するのを阻止するように設定することができる。
【0369】
焼結材料は、材料のチャネル内における気泡を抑制する湿潤性材料を含む。
【0370】
焼結材料は、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックのうちの少なくとも1つを含む。焼結材料は焼結複合材料でもよく、複合材料は、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックのうちの2つ以上を含む。金属は、Ni、Ti、ニチノール、例えば304、304L、316、または316Lなどの合金を含むステンレス鋼、コバルトクロム、エルジロイ、ハステロイ、c−276合金、またはニッケル200合金のうちの少なくとも1つを含む。焼結材料は、セラミックを含んでいてもよい。焼結材料は、ガラスを含んでいてもよい。プラスチックは、チャネル内の気泡形成を抑制する湿潤性コーティングを含んでいてもよく、プラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0371】
硬質多孔質構造体は、リザーバに連結されており、治療薬を長期間にわたって放出するよう構成された複数の硬質多孔質構造体を含んでいてもよい。例えば、追加の硬質多孔質構造体が容器に沿って配置されてもよく、例えば、容器の端部が多孔質構造体を含んでいてもよく、追加の多孔質構造体が容器の遠位部分に沿って、例えば容器の管状側壁に沿って配置されてもよい。
【0372】
治療デバイスは、治療薬のボーラス注入に基づいて、最小阻止濃度を超える治療量の治療薬を長期間にわたって放出するように調整可能である。例えば、リザーバのチャンバの容積は、ボーラス注入の容積に基づいて、多孔質構造体の放出速度に対して設定することができる。例えば、公知の硝子体内注入製剤を、治療薬の製剤として提供することができる。製剤が各ボーラス注入の間隔に相当する眼の治療可能期間を有するので、治療薬はボーラス注入を続けることによって眼を治療することができるであろう。例えば、ボーラス注入は、1ヶ月ごとに注入されることができる。各ボーラス注入は、例えば50μLの製剤の容積を含む。治療薬の各ボーラス注入により、注入と注入の間の期間、硝子体液中の治療薬を治療濃度の範囲に保つことができるが、前記デバイスでも、デバイスから放出される治療薬の硝子体中濃度が対応するボーラス注入の治療濃度の範囲内にあるように、治療量の治療薬を放出するように調整することが可能である。例えば、治療薬は、眼を治療するための最小阻止濃度が例えば約3μg/mL以上であり、治療濃度の範囲は約3μg/mL以上となる。治療デバイスは、1ヶ月分の容積の製剤を、例えば貫通性隔壁を通してデバイスに注入することで眼を治療するように構成可能である。容器のリザーバは、例えば35μLの容積の治療薬を収容するチャンバと、チャンバから硝子体液へ治療薬を放出する機構とを有する。
【0373】
硝子体液内の治療薬の濃度が治療濃度の範囲内にありかつ最小阻止濃度以上であるように、ボーラス注入に対応する量を各回注入して治療範囲内の硝子体中濃度を有する治療薬で長期間にわたって眼の治療ができるように容器の容積および放出機構を調整することが可能である。長期間とは、対応するボーラス注入の期間の約2倍以上であってもよい。放出機構は、多孔質フリット、焼結多孔質フリット、透過性膜、半透過性膜、毛細管または蛇行チャネル、ナノ構造体、ナノチャネルまたは焼結ナノ粒子のうちの1つ以上を含む。例えば、多孔質フリットは、長期間にわたって治療薬を放出するための多孔率、断面積、および厚さを有することができる。容器リザーバの容積の大きさは、注入された製剤の容積に関して多様な方法で設定可能であり、注入された製剤の容積より大きくても、注入された製剤の容積より小さくても、あるいは注入された製剤の容積と実質的に同じであってもよい。例えば、患者の治療を即時に行うために、リザーバに注入される製剤の少なくとも一部分がリザーバを通過してボーラス注入となるように、容器の容積は製剤の容積以下してもよい。リザーバの容積を増大すると、注入時に多孔質構造体を通って眼に放出される製剤量は、リザーバ内の治療薬の有効成分濃度とともに減少するが、治療量の治療薬を長期間にわたって供給できるように放出速度指数を適宜増加させることができる。例えば、ルセンティス(商標)の1ヶ月分の注入に対応する注入容積で、約5ヵ月間以上、例えば6ヵ月間にわたって治療量を供給すべく、容器のリザーバの容積は、ボーラス注入に対応する容積よりも大きくすることができる。例えば、製剤が市販のルセンティス(商標)50μLであり、リザーバの容積が約100μLであり、リザーバに注入された50μLのルセンティス(商標)で、約3μg/mL以上の硝子体中の治療濃度を6ヵ月にわたって供給するであろう。
【0374】
チャンバは、実質的に一定の容積であり、放出速度機構は、複数回の注入のうちの各注入で最小阻止濃度を超える治療薬を長期間にわたって放出し続ける実質的に硬質な構造体であってもよい。
【0375】
注入の第1の部分は、製剤の注入時に放出機構を通過して患者を治療してもよく、製剤の第2の部分は、製剤の注入時にチャンバ内に収容することができる。
【0376】
図6B−1は、
図6Bと同様な多孔質構造体の第1の側面150S1から第2の側面150S2まで延出する相互連結チャネル156を示している。相互連結チャネル156は、第1の側面150S1にある第1の開口158A1、第2の開口158A2、第n番目の開口158ANに延出する。相互連結チャネル156は、第2の側面150S2にある第1の開口158B1、第2の開口158B2、第n番目の開口158BNに延出する。第1の側面にある複数のチャネルの開口のそれぞれは、第2の側面にある複数のチャネルの開口のそれぞれに接続されており、チャネルに沿って進む有効長さが厚さ150Tよりも大きくなっている。チャネル・パラメータは、約1.1〜約10の範囲内であってもよく、有効長さが厚さ150Tの約1.1〜10倍の範囲内になる。例えば、チャネル・パラメータが約1、多孔率が約0.2であれば、有効長さが厚さ150Tの約5倍以上に対応する。
【0377】
図6B−2は、
図6Bおよび
図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面150S1から第2の側面150S2まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路を示している。複数の通路は、第1の側面から第2の側面まで延出する第1の通路156P1と、第1の側面から第2の側面まで延出する第2の通路156P2と、第1の側面から第2の側面まで延出する第3の通路156P3と、さらに多くの通路とを含む。第1の通路P1、第2の通路P2、および第3の通路P3のそれぞれの有効長さは実質的に同じであるので、第1の側面にある各開口から第2の側面にある相互連結した各開口へ治療薬を放出することができる。実質的に同じ通路長さは、焼結材料粒子および焼結材料の周りに延出するチャネルに関連しているであろう。多孔質構造体は、ランダムに配向して結合した材料粒子、圧縮した材料ビーズ、またはその組み合わせを含んでいてもよい。チャネル・パラメータは、焼結した材料粒子および対応する相互連結チャネルの構造、材料の多孔率、ならびにパーコレーション閾値と関連しているであろう。実施態様に関する研究は、チャネルが高度に相互連結するように、焼結粒子のパーコレーション閾値が多孔質フリット構造体の多孔率より低くてもよいことを示している。焼結材料粒子は、相互連結チャネルを提供することができ、ここに記載されるような所望の多孔率、チャネル・パラメータ、RRIを提供するように、その粒子を選択することが可能である。
【0378】
チャネル・パラメータおよび第1の側面から第2の側面までの有効長さは、多様な方法で構成可能である。チャネル・パラメータは、1より大きく、有効長さが厚さ150Tの約1.2〜5.0倍の範囲内にあるように約1.2〜約5.0の範囲内であることができるが、チャネル・パラメータは5より大きくてもよく、約1.2〜10範囲内にあってもよい。例えば、有効長さが厚さ150Tの約1.3〜2.0倍となるように、チャネル・パラメータは約1.3〜約2.0であってもよい。例えば、実験では、有効長さが厚さ150Tの約1.4〜1.8倍、例えば厚さの約1.6倍となるように、チャネル・パラメータが約1.4〜約1.8であってもよいことが示された。これらの値は、材料の焼結粒子の周りのチャネルの通路に対応しており、例えば、圧縮した材料ビーズの周りのチャネルの通路に対応していてもよい。
【0379】
図6B−3は、カバー156Bによる開口の閉塞と、
図6Bおよび
図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路とを示す。複数の通路156PRは、第1の側面から第2の側面まで延出して、側面のうちの1つが部分的に覆われている場合でも流量が維持されるように、そのうちの1つの側面が覆われている第1の側面と第2の側面とを連結している。
【0380】
図6B−4は、粒子156PBによる開口の閉塞と、
図6Bおよび
図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路とを示す。複数の通路156PRは、第1の側面から第2の側面まで延出し、側面のうちの1つが部分的に覆われている場合でも流量が維持されるように、そのうちの1つの側面が覆われている第1の側面と第2の側面とを連結している。
【0381】
図6B−5は、
図6Bおよび
図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路に対応する有効断面のサイズ150DEおよび面積150EFFを示す。チャネルが第1の側面および第2の側面で閉塞されたとき放出速度が実質的に維持できるように、相互連結チャネルの有効断面積は、第1の側面の開口と第2の側面の開口との間に配置されている多孔質構造体の内部断面積に対応する。
【0382】
硬質多孔質構造体は、多様な方法で、例えば管状形状、円錐形状、ディスク形状および半球形状に形成・成型することができる。硬質多孔質構造体は、成型された硬質多孔質構造体であってもよい。成型された硬質多孔質構造体は、リザーバに連結され治療薬を長期間にわたって放出するように構成されたディスク体、らせん体、または管体のうちの少なくとも1つであってよい。
【0383】
図6Cは、米国特許第5,466,233号に記載される強膜用鋲体601内に組み込まれた、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。強膜用鋲体は、頭部602と、中心部603と、杭部604とを含む。杭部は、リザーバ605と、上述のような硬質多孔質構造体606とを含んでいてもよい。多孔質構造体は、患者に挿入するように構成された鋭利な先端を有する円すい形構造体の成型物であってもよい。代替あるいは併用して、先端は丸くてもよい。
【0384】
図6Eは、米国特許第5,972,369号に記載される徐放用薬剤送達デバイスに組み込まれた、
図6Bと同様な複数の硬質多孔質構造体を示す。治療デバイスは、治療薬を収容するリザーバ613と、不透過性で非多孔性質の外面614とを備える。リザーバは、遠位端617まで延出する硬質多孔質構造体615に連結されている。硬質多孔質構造体は、遠位端に、治療薬を放出するための露出領域616を備え、不透過性で非多孔性の外面は遠位端まで延出していてもよい。
【0385】
図6Dは、米国特許公開第2003/0014036A1号に記載される徐放用送達デバイスに組み込まれた、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。薬剤送達デバイスは、近位端に入口ポート608と、入口ポートに連結された中空の本体609とを含む。中空本体は、入口ポートに注入された溶液が中空本体からバルーン610まで通過することを可能とする多数の開口612を含む。バルーンは、注入ポートの反対側に配置されている遠位端611を含む。バルーンは、上述のような硬質多孔質構造体607を複数含む。複数の硬質多孔質構造体のそれぞれは、バルーンの内部に露出する第1の表面と、硝子体と接触するように構成される第2の表面とを含む。計算された面積は、上述のように複数の硬質多孔質構造体の合計面積であることができる。
【0386】
図6Fは、米国特許第6,719,750号に記載される徐放性の非線形の本体部材618に組み込まれた、
図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。非線形部材は、らせん形状を有していてもよい。非線形部材は、近位端620でキャップ619に連結可能である。非線形部材は、リザーバ622を設けるために、治療薬で充填された管腔621を含んでいてもよい。多孔質構造体623は、治療薬を放出するために非線形部材の遠位端624に配置することが可能である。多孔質構造体は、非線形部材の追加の位置または代替の位置に設置されてもよい。例えば、キャップが強膜に対して配置されたとき硝子体液中に治療薬を放出するように、複数の多孔質構造体が、非線形部材に沿って、キャップと遠位端との間の位置に配置されてもよい。
【0387】
図6Gは、実施態様による多孔質ナノ構造体を示す。多孔質構造体150は、多孔質構造体の第1の側面150S1から多孔質構造体の第2の側面150S2まで延出する複数の細長いナノチャネル156NCを含んでいてもよい。多孔質構造体150は、その上に孔が形成されている硬質の材料を含んでいてもよく、孔は、直径などの最大幅を含んでいてもよい。ナノチャネルの直径は、例えば幅約10nm〜幅約1000nm、またはそれ以上の寸法幅を含んでいてもよい。チャネルは、材料をエッチングすること、例えば材料をリソグラフィによりエッチングすることで形成されてもよい。チャネル・パラメータFが約1となり、パラメータ面積Aと厚さまたは長さLとが、チャネルの合計断面積と多孔質構造体の厚さまたは長さとに対応するように、チャネルが実質的に直線のチャネルであってもよい。
【0388】
多孔質構造体150は、例えば焼結ナノ材料で形成された、相互連結ナノチャネルを含んでいてもよい。
【0389】
ここに記載されるようなデバイス100への治療薬の注入は、眼に埋め込む前、あるいは治療デバイスが眼に埋め込まれた状態で行うことができる。
【0390】
図7は、デバイスから材料を除去し、かつ治療薬702をデバイスに注入する注入器701に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、使用済み媒体703を吸引し、注入器を新しい治療薬で補充する。治療薬が治療デバイスに注入される。使用済み媒体は、注入器の中に引き出される。注入器は、ストッパー機構704を含んでいてもよい。
【0391】
注入器701は、治療薬702の製剤を収容する第1の容器702Cと、使用済み媒体703を受容する第2の容器703Cとを含んでもよい。実施態様に関する研究により、治療デバイスの容器リザーバからの材料を含む使用済み媒体703を除去することによって、例えばタンパク質などの凝集した治療薬からなる粒子などの粒子状物質を治療デバイスから除去することができることが示唆されている。使用済み媒体703がデバイス100の容器リザーバから注入器まで通過するように、針189は、第1の容器に連結されている第1の管腔と、第2の容器に連結されている第2の管腔とを備えた二重管腔針であってもよい。例えばベント弁などのバルブ703Vが、第2の管腔と第2の容器との間に配置可能である。バルブを開弁して治療薬を注入するときは、治療デバイス内の使用済み媒体の少なくとも一部分が製剤により置換されるように、治療デバイス100の容器リザーバからの使用済み媒体703が注入器の第2の容器へ通過する。バルブを閉弁して治療薬を注入するときは、治療薬の一部が治療デバイスのリザーバから眼の中へ通過する。例えば、リザーバ内にある材料が製剤の第1の部分により置換されるように、バルブを開弁して治療薬の製剤の第1の部分を治療デバイス100に注入することができ、その後、第1の部分の少なくとも一部が多孔質構造体を通って眼の中へ通過するように、バルブを閉弁して製剤の第2の部分を治療デバイス100に注入する。代替あるいは併用して、第2の部分を眼に注入するときに、注入製剤の第2の部分の一部が多孔質構造体を通過してもよい。バルブを閉弁して注入される製剤の第2の部分は、患者を即時に治療するために多孔質構造体を通って硝子体液中へ通過する製剤の容積に対応していてもよい。
【0392】
針189は、例えば以下に示す
図7A−2を参照しつつ記載される二重管腔針であってもよい。
【0393】
図7−1は同心置換型針を示し、
図7−2はこの同心置換型針の軸に沿った断面図である。置換型針は、埋め込み型デバイスの流体を受容する開口とチャネルとを備えるベント構造体を有することができる。ベント構造体は、治療デバイスの多孔質構造体に比例する流れ抵抗を付与する断面積および長さを有する環状チャネル189を備えることができる。
【0394】
埋め込まれた物の流体を受容する管腔189Aおよびベント開口は、埋め込まれたデバイスのチャンバの流体がベントを通過するとき、針によりボーラス注入を提供するために、多孔質構造体の流れ抵抗に比例する流れ抵抗を備える。ここに記載されるような教示および実施態様に基いて、当業者は、ここに記載されるようなボーラス注入を提供するために管腔189が多孔質構造体150の流れ抵抗に比例する流れ抵抗を有するように、埋め込まれたデバイスの流体を受容する管腔189Aの寸法を経験的に決めることが可能である。例えば、管腔189Aは、外側針により規定される外径と、内側針より規定される内径と、チャンバ中に配置されたベント開口から流体703FLを保管する容器への第2の開口まで外側針の内側に沿って延出する距離とを備えることができる。間隙距離189ABGを有する管腔189Aは、ここに記載されるような第2の流路の流れ抵抗R2の大部分を付与するための環状チャネルによって、ベント通路距離189VPDを延出することが可能である。あるいは、ベント通路が実質的流れ抵抗を持たないようにしてもよく、注入用管腔が注入用装置の流れ抵抗の大部分を付与することとなり、治療流体が多孔質構造体150を通して治療デバイスから実質的にボーラス放出されずに治療流体が埋め込み型デバイス流体から少なくとも部分的に分離可能となる。
【0395】
図7Aは、デバイスへの材料の注入・除去を行う注入器701に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、デバイスの容器に挿入するよう構成された二本針システムを有していてもよい。注入器は、第2の針706(ベント針)を通してデバイスから液体を抽出しながら、同時に第1の針705(注入針)を通して治療薬を注入してもよい。デバイスからの既存の材料の除去を容易にするために、注入針は、ベント針よりも長くかつ/またはより小さな直径を有していてもよい。既存の材料のデバイスから除去を容易にするために、ベント針は真空につながれていてもよい。
【0396】
図7A−1は、実施態様による、多孔質フリット構造体を通して液体製剤を噴出させることでデバイスのリザーバ130を洗い流すために、針の遠位端をリザーバの近位端の近傍に位置決めする停止部189Sを備える注入針189に連結された貫通性隔壁を備えた治療デバイス100を示す図である。例えば、注入針は、針の先端から針の環状部分まで針の軸に沿って約0.5mmだけ延出する傾斜部を有する、一重管腔針であってもよい。停止部から先端までの針の長さと貫通性隔壁の厚さとによって定義され、約0.5mm〜約2mmの範囲内である停止距離189SDだけ針先がリザーバ中に延出するように、停止部のサイズが設定されかつ針の軸に沿って位置決めされる。リザーバは、治療デバイスの長さ軸に沿って、約4mm〜8mmの範囲内で延出することができる。約20μL〜約200μLの範囲内の、例えば約50μLの容積量の製剤液を、遠位端に配置された針先から治療デバイスに注入することができる。液体が多孔質構造体150を通って流出するように、リザーバの容積は治療薬の製剤の注入容積よりも少なくてもよい。例えば、リザーバの容積は、約20μL〜40μLの範囲内でもよく、治療薬の液状製剤の注入容積は、約40μL〜100μL、例えば約50μLであってもよい。
【0397】
図7A−2は、リザーバ130内の液体を注入された製剤で置換するようにデバイスに材料を注入かつ除去するための注入器701の針189に連結された貫通性隔壁を備える治療デバイスを示す。針は、少なくとも1つの管腔を備えるが、同心性の二重管腔針189DLであってもよく、その遠位端が治療デバイスに治療薬の製剤を注入するための内側管腔に連結されており、近位ベント189Vが製剤注入時に液体を針に受容する。あるいは、ベントが、針の内側管腔の遠位端にある開口に対応していてもよく、外側管腔が、容器リザーバの近位部分に治療薬の製剤を注入するよう近位開口を備えていてもよい。
【0398】
注入器の実施態様に関する研究によれば、上述のような注入機器および針を使用することで、少なくとも約80%、例えば90%以上の充填効率を得ることが示されている。
【0399】
図7A−3は、可変形可視表示器189DSを示す。可変形可視表示器は、針が適切な深さ189SDに位置したことを可視表示器の変形により指示できるように、支持部、例えば停止部189Sに連結することができる。可視表示器は、シリンジなどの注入器と一緒に使用可能であり、歯組織、手術中の内部組織、眼の結膜などの眼組織などの様々な組織のうちの1つ以上への注入に使用可能である。針189は、例えば25GA以上の針、例えば30GA針などのシリコン針を使用することができる。
【0400】
可視表示器189DSは、明るい色であって、シリコンなど軟質可変形材料から作成することができ、ショアA硬度が例えば約5〜約30であってもよい。組織に連結されたとき可変形インジケータが視認できるように、停止部189Sは暗色であってもよい。組織に接触する前の可変形インジケータ189DSは、第1の幅189DSW1を有する。
【0401】
図7A−4は、眼の組織、例えば治療デバイス100の貫通性隔壁を覆って配置された結膜などの軟部組織に連結された可視表示器189DSを示す。組織表面に連結されたときに可変形インジケータが視認可能となるように、可視表示器は変形すると、第1の幅よりも大きい第2の幅189DSW2を有するようになる。そのような連結の可視表示は、医療提供者により正しい圧力が加えらたこと、また針の先端が組織の表面から所望の距離に配置されたことを確認するのに役立つであろう。
【0402】
図7A−5は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す。上記したように、治療デバイスは少なくとも何らかの流れ抵抗を与えることができ、可視表示器189DSは、作業者が注入への反力に対して十分な力を加えたときに指示することができる。また、混合率は、例えば治療デバイスを通るボーラス注入などの注入の精度に関係しており、治療薬の投与量を正確に送達できるように、約1mm以下より高い精度で針の先端を深さ189SDに配置することにより、注入の混合および/または置換量を一定にすることができる。
【0403】
図7A−6は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す。ここに記載されるような置換装置は、デバイスの中の置換された液体の圧力を実質的に減少することが可能であるが、治療薬の漏出を阻止する密閉を向上させるために、置換装置を可変形停止部と組み合わせることができる。例えば、治療流体702FLを注入するための第1の注入用管腔189Aの開口189A1がリザーバチャンバの中へ十分な深さで貫通しており、流体703FLを受容するための第2の管腔189Bのベント開口189B1が十分な深さで貫通していても、結膜を密閉する力は不十分であるかもしれない。あるいは、例えば、開口189A1および開口189B1が治療デバイス100のリザーバチャンバ内のそれぞれ遠位および近位位置に位置しているときに、結膜との密閉は可変形停止部189DSの弾性変形によって達成されるかもしれない。
【0404】
図7A−7A〜
図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合をを示す。
図7A−7A、
図7A−8A、および
図7A−9Aは、第1の管腔189Aがチャンバ702Cの治療薬110をデバイス100の中へ注入するように二重管腔針189Lに連結された注入器701の第1の構成を示す。第2の容器703Cは、デバイス100の液体を置換するために、リザーバ容器のチャンバへ延出してデバイス100から液体を受容する第2の管腔189Bに連結されている。切換弁703Vは、例えば摺動部材などの第1の移動部材と、移動部材に閉塞、例えば被覆される開口からなる第2の部分とを備える。ピストン701Pはプランジャーによりデバイス100の方へ動かされ、切換弁703Vの摺動部材はプランジャーとピストンに連結されている。ピストンが所定量の液体と所定量の製剤を置換するために前進すると、治療薬110はチャンバ702C内に残存し、弁703の摺動部材が弁703Vの開口部材を被覆・閉塞する。弁703が閉弁した状態で、例えばボーラス注入量の治療薬がデバイス100から注出されるように、所定量の治療薬がデバイス100の中に注入される。デバイス100の中に注入された治療薬の製剤の一部は、長期間にわたる放出のためにデバイス100の中に保持される。
【0405】
弁の可動部材は、例えばボール弁、スリーブ、ガスケット、孔を有するピストン、一方向圧力弁、ソレノイド、サーボなどの多様な部材のうちの1つ以上であってもよい。弁703Vは、開口703V1と、開口703V1の上を摺動して開口を閉塞するピストンなどの摺動部材703V2とを備えることができる。摺動部材703V2は、摺動部材が開口を覆うように移動するにつれて圧力が溜まるのを阻止するためのベント703VVを備えることができる。
【0406】
図7A−10A〜
図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す。例えば、放出速度指数は、約0.5未満、例えば約0.1未満、例えば約0.05未満であるので、実質的に一定の容積の治療デバイスを満たす量を注入するのにかかる時間は、放出速度指数に反比例することになる。
【0407】
注入器701は、例えばバネを使用して、デバイスへの流量を維持し、最大流量を制限する機構を備える。機構は、機械式機構、電気式機構、空気圧式機構、水圧式機構、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上からなる。機械式機構を示すが、上記のどの機構でも、同様の結果が得られるであろう。
【0408】
視認可能なインジケータ189DSを使用して、眼に埋め込まれた治療デバイスに注入用深さで注入器が連結されたことを作業者に指示することができる。それを確認後、作業者はプランジャーを押し下げてもよい。
【0409】
プランジャーは、入れ子式ジョイント707TJとバネ707Sを備え、プランジャー707PLが下向きに付勢され停止部に接触するようにジョイントが摺動しあう。プランジャーが下向きに付勢され入れ子式ジョイントの端部同士が同じ位置にくると、バネは圧縮される。治療薬の製剤がバネの力で治療デバイスの中へ注入されるように、圧縮されたバネはピストン701Pを治療デバイスの方へ付勢する。弁703Vは、上記したように閉弁可能である。ボーラス注入に対応する注入の第2の部分は、治療デバイス100の中へ注入されて多孔質構造体150を通過する。
【0410】
図7B−1は、細長い切開部に嵌合する断面積を有する保持構造体を備える治療デバイス100の側面断面図を示す。細長い切開部に嵌合するサイズに設定された断面は、フランジ122よりも小さく設定された保持構造体120の狭部120Nであってもよい。細長い切開部に嵌合するサイズに設定された幅狭部120Nは、切開部に嵌合するサイズに設定された細長い断面120NEを有してもよい。幅狭部120Nは、第1の断面の直径、すなわち第1の幅と、第2の断面の直径、すなわち第2の幅とを有する断面を備えてもよく、幅狭部120Nが細長い断面形状を有するように第1の断面の直径は第2の断面の直径よりも大きくなっている。
【0411】
幅狭部120Nの細長い断面120NEの大きさは、多様な方法で、切開部に嵌合するよう設定することができる。細長い断面120NEは、第1の寸法とそれよりも小さい第2の寸法を持ち、その例として拡大スロット、拡大スリット、両凸面状、長円形、卵形体、または楕円形状など多くの形状のうちの1つ以上が挙げられる。拡大スリット形状および拡大スロット形状は、強膜組織が切断・膨張した場合に想定される形状に対応してもよい。両凸面形状は、両凸のレンズの形状に対応してもよい。幅狭部の細長い断面は、第1の軸に沿った第1の曲線と、第1の曲線とは異なる第2の軸に沿った第2の曲線とを含んでいてもよい。
【0412】
保持構造体の幅狭部120Nと同様にして、容器リザーバは、断面形状を有してもよい。
【0413】
図7B−2は、
図7B−1と同様な治療デバイスの等角図である。
【0414】
図7B−3は、
図7B−1と同様な治療デバイスの上面図である。
【0415】
図7B−4は、
図7B−1と同様な治療デバイスの保持構造体の短い側面に沿った側面断面図である。
【0416】
図7B−5は、強膜に埋め込まれた
図7B−1と同様な治療デバイスの底面図である。
【0417】
図7B−5Aは、隔壁160の周囲長160Pおよび幅狭部分の周囲長160NPに対応する幅712を有するブレード714を備える切削具710を示す。幅狭部が強膜に配置されたときに切開部を幅狭部で密閉するように、切削具を幅狭部120Nの大きさに合わせることができる。例えば、幅712は、隔壁160の外周160Pの約半分および幅狭部160Nの外周160NPの約半分であってもよい。例えば、外周160Pが約6mmであるように隔壁160の管の外径を約3mmとし、幅狭部の外周160NPは約6mmであるとする。切開部を幅狭部160Pで密閉すべく、切開部が約6mmの外周を有する開口となるように刃710の幅712は約3mmであってもよい。あるいは、隔壁160の外周160Pは、切開部および幅狭部の外周よりもわずかに大きなサイズとしてもよい。
【0418】
保持構造体は、眼の毛様体扁平部に沿う細長い切開部に嵌合するように、短い幅120NSおよび長い幅120NLを有する幅狭部120Nを備える。保持構造体は、延長部122を備える。保持構造体120Eの延長部は、保持構造体120の幅狭部120Nの短い幅122NSおよび長い幅122NLと位置合わせされた短い幅122Sおよび長い幅122Sを備える。幅狭部120は、強膜を受容する大きさに設定された凹部120Iを備えてもよい。
【0419】
図7B−6Aおよび
図7B−6Bは、それぞれ、非円形断面サイズを備える治療デバイス100の遠位断面図および近位断面図を示す。多孔質構造体150は治療デバイスの遠位端に配置することができ、保持構造体120は治療デバイス100の近位部に配置することができる。隔壁160のより、リザーバ130のサイズを決定される。例えば、隔壁160およびリザーバ130は楕円形状または長円形の断面サイズを有してもよい。隔壁160は、リザーバ130を横切る第1の断面幅と、リザーバ130を横切る第2の断面幅とを含み、第1の幅は楕円形の長い軸(長軸)の長さに、第2の幅は楕円形の短い軸(短軸)の長さに対応してもよい。デバイスがこのように一方向に細長くなっていることによって、視野との干渉を抑制しながらリザーバの薬を増加させることができるが、例えばこれは楕円形の長軸が、実質的に眼の角膜の回りに延出する眼の毛様体扁平部領域の円周に沿って実質的に位置合わせされ、楕円形の短軸が眼の半径方向に位置合わせされており、瞳孔を通る患者の視線に対応する眼の光軸に向かって延出するのが楕円形の短い軸であり、このため視野との干渉を抑制することができるからであろう。ここでは楕円形または長円形の断面を言及しているが、短い辺が眼の瞳孔に向かって延出し、長い辺が眼の毛体様扁平部に沿って延出する長方形など、多様な断面サイズおよび形状を使用することが可能である。
【0420】
保持構造体120は、上記の断面領域の構造に対応する構造を含んでいてもよい。例えば、延長部122は、第1の幅および第2の幅を有してもよく、第1の幅は第2の幅よりも大きい。延長部は、例えば長方形、長円形、または楕円形など多様な形状であってもよく、大きい幅は、リザーバおよび隔壁の大きい幅に対応可能である。保持構造体120は、上述の通り、治療デバイスへのアクセスポートの周りに延出する凹部120Iを有する幅狭部120Nを含んでいてもよい。凹部120Iおよび延長部122はそれぞれ、楕円形または長円形のプロファイルを有してもよく、楕円形の第1の長い軸(長軸)は第1の方向に延出し、楕円形の第2の短い軸(短軸)は第2の方向に延出する。治療医が目視でデバイス100の向きを決定できるように、長軸は眼の毛様体扁平部の円周に沿って延出するように位置合わせされ、短軸は眼の瞳孔に向かって延出するように位置合わせされる。
【0421】
図7B−6Cは、細長い断面サイズ120NEを持つ幅狭部分120Nを備える保持構造体を有する治療デバイスの等角図を示す。
【0422】
図7B−6Dは、
図7B−6Cと同様な治療デバイスの遠位端図を示す。
【0423】
図7B−6E1は、
図7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭部分120Nの短い幅120NSの側面図を示す。
【0424】
図7B−6E2は、
図7B−6Cと同様な治療デバイス100の幅狭部分120Nの長い幅120NLの側面図を示す。
【0425】
図7B−6Fは、
図7B−6Cと同様な治療デバイスの近位図を示す。
【0426】
図7B−6G〜
図7B−6Iは、
図7B−6C〜
図7B−6Fと同様な治療デバイス100の分解組立図である。
図7B−6G、
図7B−6H、および
図7B−6Iの組立図はそれぞれ、保持構造体の幅狭部120Nの細長い部分120NEの等角図および薄部側のプロファイル図を示す。治療デバイス100は、長軸100Aを有する。
【0427】
例えばセプタムなどの貫通性隔壁184を、アクセスポート180に挿入することができる。貫通性隔壁は、貫通性隔壁がアクセスポート180に挿入可能なようにサイズが設定された弾性体であってもよい。貫通性隔壁は、例えば、シロキサンまたはゴムなど1つ以上の弾性体を含んでいてもよい。貫通性隔壁は、貫通性隔壁をアクセスポートに保持するタブ184Tを備えてもよい。貫通性隔壁184は、アクセスポート180を密閉するようなサイズに設定された、傾斜上部リム184Rを含んでいてもよい。リザーバ容器130のアクセスポート180は、タブ184Tがアクセスポートの環状または細長い内側チャネルに係合したとき、傾斜リムを係合し、貫通性隔壁をアクセスポート180に密閉する傾斜上部面を含んでいてもよい。貫通性隔壁が患者および治療医によって視認できるように、貫通性隔壁184は、不透明材料、例えば灰色の材料、例えばシリコーンを備えていてもよい。
【0428】
デバイスのリザーバ容器130は、少なくとも保持構造体から硬質多孔質構造体まで延出する硬質の生体適合材料から成っていてもよく、このため、例えば患者が動いても安定した放出速度プロファイルを維持するために、治療薬が硬質多孔質構造体を通って放出されるときにリザーバの容積を実質的に一定に保つことができる。代替あるいは併用して、リザーバ容器130が半透明、例えば透明であるようにリザーバ容器130は光透過性材料であってもよく、これによって、患者に埋め込む前にデバイスに治療薬を装填するとき、例えば医師の診察室で埋め込む前に治療薬の製剤を注入するときに、リザーバ140のチャンバが視認できる。リザーバ140をこのように視認化することは、埋め込む前に治療を施す医師またはアシスタントがリザーバ140を治療薬で適切に充填するために有用である。リザーバ容器は、例えばアクリレート、ポリメチルメタクリレート、シロキサン、金属、チタン・ステンレス鋼、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、またはPTFEなど、多様な生体適合性材料のうちの1つ以上を含んでいてもよい。リザーバ容器の生体適合性材料は、例えばアクリレート、ポリアクリレート、メタアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネートまたはシロキサンのうちの1つ以上など、光透過性材料であってもよい。リザーバ容器130は、フランジ122および細長い幅狭部120NEを含む保持構造体120を形成するように、1片の材料から機械加工するか、または射出成形することができる。フランジ122は、患者を診断するためにフランジの下にある組織を医師が視認できるうように、かつ埋め込み時にデバイス100が見えにくくするように、半透明材料であってもよい。リザーバ容器130は、ここに記載されるようにデバイス100に注入された製剤がリザーバの容積および多孔質構造体150の放出速度に従って放出されるように、軸100Aに沿ってアクセスポート180から多孔質構造体150まで延出するチャネルを有してもよい。多孔質構造体150は、例えば接着剤で治療デバイス100の遠位端に固着することができる。代替あるいは併用して、リザーバ容器130の遠位端は、多孔質構造体150を受容する大きさに設定された内径を有してもよく、リザーバ容器130は、所定サイズのリザーバ140を画成するために遠位端の所定位置に多孔質構造体150を配置するための停止部を含んでもよい。
【0429】
図7C−1は、治療薬の徐放のために膨張した構成にある、膨張性隔壁材160および支持部160Sを備える膨張式治療デバイス790を示す。膨張した構成では、多量の治療薬、例えば約30μL〜約100μLまで保管することができる。膨張式デバイスは、保持構造体120と膨張式リザーバ140とを有する。支持部160Sは、圧縮用に構成される弾性材料、例えば弾性金属または熱可塑性プラスチックから成ってもよい。あるいは、膨張式支持部は膨張時に湾曲してもよい。膨張式デバイスは、その遠位端に配置されて、膨張式支持部に固着される多孔質構造体150を備える。膨張式デバイスは、例えば貫通性隔壁184を有するアクセスポート180を備えてもよい。膨張した構成において、デバイスは、実質的に患者の視覚的経路OPの大部分からはずれている。
【0430】
隔壁160の支持部160Sは、膨張した構成では、リザーバの容積を実質的に一定とすることができる。ここに記載したような治療薬の容積を治療デバイスに注入するように膨張したリザーバおよび多孔質構造体150を調整するために、例えば+/−25%の実質的に一定な容積を多孔質構造の放出速度指数と組み合わせることができる。隔壁160は、例えば膜など薄い柔軟な材料であってもよく、実質的に容積が一定のリザーバのチャンバを画成するために、支持部160Sは隔壁160を付勢して膨張した構成とすることができる。
【0431】
図7C−1Aは、支持部160Sの遠位端部を示す。支持部160Sは、デバイス100の遠位端で多孔質構造体150を支持する環状フランジ160SFまで延出する支柱を含んでいてもよい。
【0432】
図7C−1Bは、リザーバ・チャンバの膨張した容積が実質的に一定となるように、隔壁160内に配置されている支持部160Sを示す。
【0433】
図7C−1Cは、リザーバ・チャンバの膨張した容積が実質的に一定となるように、隔壁160の内面に沿って配置された支持部160Sを示す。支持部160は、多様な方法で、例えば、接着剤や樹脂などの結合剤によって、または熱接着によって、隔壁160に結合可能である。支持部160Sを隔壁160の外側に配置することも可能である。
【0434】
図7C−2は、注入管腔での使用に適した、幅狭プロファイル構成での
図7C1と同様な膨張式治療デバイスを示す。
【0435】
図7C−3は、例えば強膜での保持に適した、膨張したプロファイル構成での
図7C−1と同様な膨張式治療デバイスを示す。
【0436】
図7C−4Aおよび
図7C−4Bは、展開式保持構造体792を示す。展開式保持構造体792は、膨張式治療デバイス790と、あるいは上述のような実質的に固定したリザーバおよび容器のデバイスと使用可能である。展開式保持構造体792は、多様な圧縮性または膨張性の、あるいは弾性の材料、あるいはその組み合わせを含む。展開式保持構造体792は、例えば弾性材料からなるタブおよびフランジによって、幅狭プロファイル構成から展開構成まで展開する延長部120Eを備える。保持構造体は、上部が近位側に傾斜し、遠位部が遠位側に傾斜しており、展開して強膜の両側に係合するようにしてもよい。前記弾性材料は、熱可塑性材料、弾性金属、形状記憶材料、およびその組み合わせであってもよい。
【0437】
図7Dは、例えば網膜上またはその近傍の病変部の脈絡膜新生血管などの、網膜26上またはその近傍の標的位置に治療薬を送達するために眼10に配置された多孔質構造体150を備える治療デバイス100を示す。例えば、病変部は、網膜への血液供給と関連する血管組織の血管新生と関係する、網膜の座屈、折れ、屈曲、または脈絡膜からのはく離のうちの1つ以上を含んでもよく、網膜の病変部に対応する新生血管組織が標的とされてもよい。実施態様に関する研究によれば、眼の硝子体液30が、流路799に沿った対流による流れを含んでいてもよいことが示された。対流の経路が、流れのチャネルを形成してもよい。小分子は前記流路にしたがって網膜26の標的位置まで送達されることができるが、硝子体液中の大分子の分子拡散は小分子よりもやや遅いので、例えば抗体フラグメントまたは抗体を備えた大分子を含む治療薬は、実質的に対流の経路によって送達される。
【0438】
多孔質構造体150が網膜の標的位置に向かって延びる流路に沿って配置されるように、治療デバイスのサイズを設定することができる。硝子体液の流れが治療薬を網膜まで移送するように、治療薬を流路に沿って放出することが可能である。多孔質構造体は、治療デバイスの遠位部に、例えば遠位端に配置され、リザーバ130のサイズは、長期間にわたって送達するように設定される。保持構造体120は、近位に配置することができる。多孔質構造体が標的部位に対応した流路の一部に配置されるように、治療デバイス100のサイズを設定することができる。外科医は、例えば病変部に対応する網膜の標的部位798を特定し、治療薬が標的部位へ放出されるように、治療デバイス100を毛様体扁平部または他の位置に沿って配置することができるであろう。
【0439】
図7Eは、眼に配置されたとき毛様体または小柱網のうちの1つ以上へ治療薬を送達するよう、デバイスの近位部分に設置された多孔質構造体150を備える治療デバイス100を示す。多孔質構造体が、上述した網膜まで延びる流路から実質的に離れて硝子体中に位置するように、多孔質構造体150は保持構造体120の近傍に配置することができる。標的組織に向かって治療薬を放出するように、多孔質構造体は治療デバイスの片側に位置することができる。多様な治療薬が使用可能であるが、保持構造体を強膜に連結して硝子体液に埋め込まれたとき、毛様体または小柱網のうちの1つ以上に向けて治療薬が放出されるので、治療薬は、プロスタグランジン、または、例えばビマトプロストまたはラタノプロストなどの類似体であってもよい。
【0440】
図7Fは、水晶体から離れて網膜の方へ治療薬110を放出するように配向された多孔質構造体150備える治療デバイス100を示す。例えば、治療薬110はステロイドを含んでいてもよく、ステロイドは、水晶体から離れて網膜に向かうように多孔質構造体150から放出される。例えば、多孔質構造体は、治療デバイスの軸100Aに対して傾斜させることができる。多孔質構造体150の外側は、網膜の標的部位を治療するために、例えば上述した流路に沿って、水晶体から離れて少なくとも部分的に網膜に向かうよう配向することができる。水晶体に向かう治療薬の放出が隔壁160によって阻止されるように、埋め込み時に隔壁160を多孔質構造体160と眼の水晶体との間に延出させるてもよい。保持構造体120は、上述のように、長い幅と短い幅を含んでいてもよい。保持構造体の長い幅が毛様体平坦部に沿って延出し、短い幅が瞳孔に向かって延出するとき、多孔質構造体150の外側が少なくとも部分的に網膜に向かってかつ流路に沿って配向されるように、多孔質構造体を延長部122の短い幅と長い幅との関連で配向することができる。
【0441】
図7Gは、装着器具750と、容器780と、この容器内に配置された治療デバイス100とを備えるキット789を示す。治療薬の製剤がデバイス100に注入されるときに多孔質構造体のチャネルが気泡の形成を阻止する液体の水を含んでいるように、容器に配置された治療デバイス100のリザーバは、例えば食塩水などの非治療溶液を含んでいてもよい。キットはさらに、シリンジ188と、針189と、上述のようにリザーバ内の最大停止距離まで針の先端を挿入するための停止部189Sとを含んでもよい。キットには、取扱説明書789Iが含まれていてもよく、治療薬の製剤を含有した容器110Cを含んでいてもよい。取扱説明書は、注入用装置に対応し、埋め込まれたデバイスに連結されたときの注入用デバイスの向きを指示するものであることができる。説明書には、治療薬の注入中の多孔質構造体に対する貫通性障壁に関して、例えば治療流体が注入されるとき貫通性障壁は多孔質構造体の上方に配置されるなどのデバイスの配向に関する指示が含まれていてもよい。説明書は、ここに記載されるような注入器などの流体置換装置の構成に対応してもよい。
【0442】
製剤の注入に基づく徐放用治療デバイスの調整
【0443】
標的治療濃度のプロファイルで送達できるように、デバイスに注入される製剤の容積に基づいて治療デバイス100を調整することができる。注入される容積は、実質的に一定の、例えば意図する所定の標的容積の約+/−30%の範囲内の容積であってもよい。対応するボーラス注入の治療時間よりも実質的に長い時間にわたって治療薬を放出するように、放出速度指数に対してリザーバの容積の大きさを設定することができる。デバイスは、眼における治療薬の半減期に基づいて、治療薬の放出を調整することも可能である。デバイスの容積および放出速度指数は、注入される製剤の容積と眼における治療薬の半減期と基づいて、一緒に調整することのできるパラメータである。治療デバイスを調整するのに適したデバイスのパラメータを決定するために、以下の式を使用することができる。
速度=Vr(dCr/dt)=−D(PA/TL)Cr
但し、速度=デバイスからの治療薬放出速度
Cr=リザーバ中の治療薬濃度
Vr=リザーバ容積
D=拡散定数
PA/TL=RRI
P=多孔率
A=面積
T=蛇行率=F=チャネル・パラメータ
実質的に一定の容積での注入の場合
Cr0=(注入容積)(製剤濃度)/Vr
但し、Cr0=製剤の注入後のリザーバ中の初期濃度
注入容積=50μLの場合
Cr0=(0.05mL)(10mg/mL)/Vr(1000μg/1mg)=500μg/Vr
速度=x(500μg)exp(−xt)
但し、t=時間
x=(D/Vr)(PA/TL)
硝子体での質量バランスを考慮して
Vv(dCv/dt)=デバイスからの速度=kVvCv
但し、Vv=硝子体容積(約4.5mL)
Cv=硝子体中の治療薬濃度
k=硝子体からの薬の速度(硝子体中の薬の半減期の逆数に比例)
ここに記載される実施態様に適切な場合、すなわちCvが実質的に一定のままであり時間とともにゆっくりと変化する(すなわち、dCv/dtが約0)場合、
Cv=(デバイスからの速度)/(kVv)
kVvが実質的に一定であるので、Cvの最大値は、デバイスからの速度を最大にする条件に対応するであろう。デバイスへの注入後任意の時間(例えば180日)に、最大速度を与えるxの値で最大Cv値が得られる。xの最適値は、任意の時間で、
d(速度)/dx=0を満たす。
速度=500(x)exp(−xt)=f(x)g(x)
但し、f(x)=500x,g(x)=exp(−xt)
d(速度)/dx=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)=500(1−xt)exp(−xt)
任意の時間tに対して,1−xt=0すなわちxt=1のとき、d(速度)/dx=0となる。
速度は、(D/Vr)(PA/TL)t=1のとき最大となる。
任意の容積では、最適PA/TL=最適RRI=Vr/(Dt)
従って、任意の時間tでの最大Cvは、任意のVrで最適RRI=(PA/FL)のとき与えられる。
また、(Vr)/(RRI)比=(Vr)/(PA/TL)=Dtにより、その時の最適速度が決定されることになる。
【0444】
上記の式が与える最適化された概算値は、数値シミュレーションと組み合わせて、VrおよびPA/TLの最適値を与えることが可能である。最終的な最適値は、充填効率などの追加のパラメータに依存するであろう。
【0445】
上記のパラメータは、最適RRIを決定するのに使用されることができ、治療デバイスは、デバイスに注入される製剤の容積に対して、デバイスのリザーバ容積および放出速度指数を最適値の約+/−50%、例えば最適値の約+/−30%の範囲内とするように調整できる。例えば、90日間などの所定の長期間にわたって最小阻止濃度を超える治療濃度を達成するための、多孔質構造体の最適放出速度指数および治療薬の所定量、例えば50μLを受容する大きさに設定された最適リザーバ容積に対して、リザーバの最大容積は、最適容積の約2倍以下に制限することができる。リザーバ容積および多孔質構造体を市販の製剤の注入容積に対してこのように調整することによって、同じ容積の市販の注入製剤を受容するはるかに大きなリザーバ容積と比較して、デバイスからの治療量の放出時間を増加させることができる。ここに記載されるような多数の例では、ある量の製剤を受容し長期間にわたって放出するように共に調整された多孔質フリット構造体およびリザーバ容積を示しているが、リザーバと共に調整される多孔質構造体は、多孔質フリット、透過性膜、半透過性膜、毛細管または蛇行チャネル、ナノ構造体、ナノチャネル、または焼結ナノ粒子のうちの1つ以上であってもよく、当業者は、前記量の製剤を受容し治療量を長期間にわたって放出するように1つ以上の多孔質構造体および容積を調整するために、放出速度の特徴、例えば放出速度指数を決定することが可能である。
【0446】
一例として、180日目の最適RRIを、約125μLのリザーバ容積に対して決定する。上記の式(Vr/Dt)=最適RRIに基づいて、180日目の最適RRIは、デバイスに注入された製剤容積50μLに対して約0.085である。対応するCvは、180日目のデバイスから放出される薬剤の速度と、硝子体からの薬剤の速度(半減期約9日に対応するkの値)とに基づいて、180日目で約3.19μg/mLとなる。容器のリザーバ容積63μLおよびRRI0.044を有するデバイスも、PA/TLに対するVrの比が最適であるので、180日目の最適Cvを与えるであろう。最適値を決定することは可能であるが、治療デバイスは、最適値に近い、例えば最適値の約+/−50%の範囲内にある多くのリザーバ容積値および多くの放出速度指数値で、標的時間例えば180日目の薬剤の治療量を提供するように調整することが可能である。リザーバの容積は実質的に固定できるけれども、例えばバルーン型リザーバなどの膨張式リザーバを使用すれば、リザーバ容積は、例えば約+/−50%の範囲で変更可能である。
【0447】
眼の硝子体液中の薬剤の半減期は、治療薬と、例えばヒト、ウサギ、またはサルなど眼の種類とに基づいて決定することができ、つまり、半減期を例えば眼の生物学的種に基づいて決定することができる。少なくともいくつかの動物モデルでは、硝子体液中の治療薬の半減期は、ヒトの眼のものよりも短く、例えば少なくともいくつかの例では約2分の1となる。例えば、治療薬ルセンティス(商標)(ラニビズマブ)の半減期は、ヒトの眼では約9日、ウサギおよびサルの動物モデルでは約2〜4日であろう。小分子の場合、ヒトの眼の硝子体液中の半減期は、約2〜3時間であり、サルおよびウサギの動物モデルでは約1時間であろう。治療デバイスは、ヒトの硝子体液、または動物の硝子体液、あるいはその組み合わせにおける治療薬の半減期に基づいて、製剤の容積を受容するように調整することができる。ここに記載の教示に基づいて、当業者は、ある容積の製剤を受容し治療量を長期間にわたって供給するように、リザーバと多孔質構造体とを一緒に調整するために、眼の種類および治療薬に基づいて、眼中の治療薬の半減期を経験的に決定することができるであろう。
【0448】
図7A−11Aは、ボーラス注入を提供するためにスリーブ703SLに連結された遮断ボタン703SOBを備える弁703を備える注入装置700を示す。スリーブは、多孔質構造体150を通して眼の中へボーラス注入するために、第1の量の液体が通過したときに遮断ボタンが閉鎖するようなサイズとしてもよい。スリーブの長さおよびピストンサイズは、弁が閉弁する前後に注入された液体の量に関連していてもよい。
【0449】
図7A−11Bは、スリーブが弁を覆い弁が閉弁した
図7A−11Bの注入用装置を示す。
【0450】
図7A−12Aは、ボーラス注入を提供する弁703を備え、第1の軸189ABに沿って延出する管腔189Aと、軸の分離189ABDを提供するために第1の管腔189Aから離間して第2の軸189BAに沿って延出する管腔189Bとを備える注入装置700を示し、注入用管腔は、ベント用管腔よりも多孔質構造体150の近くに位置しており、弁703Vは多孔質構造体150を通るボーラス注入を提供するよう構成される。実施態様に関する研究によれば、第1の管腔の軸と第2の管腔を分離させることで、注入の効率を向上できることが示唆されている。例えば治療流体が埋め込まれたデバイス流体よりも密度が高い場合などに、例えば治療流体を注入する管腔をデバイスから流体を受容する管腔よりも多孔質構造体に近づけて設置することが可能である。第1の量がデバイス100の中へ注入されたとき弁703が閉弁し、ボーラス用量を多孔質構造体150を通して通過させるために閉弁する。管腔189Bへの開口は、治療流体702FLを多孔質構造体150へ連結する軸に実質的に沿って配置することができる。
【0451】
図7A−13Aは、受容した埋め込み流体が弁を閉弁したときボーラス注入を提供するフロート弁703FVを備える注入装置700を示す。フロート弁は、治療流体が多孔質構造体150を通過してボーラス注入されるように、上向きに浮上し開口を塞ぐボールを備えることができる。
【0452】
図7A−13Bは、
図7A−13Aの注入装置700の二重管腔針189DLを示す。二重管腔針は、第1の注入用管腔189Aと、デバイス100から流体を受容する第2の管腔189Bとを備えることができる。
【0453】
図7A−13Cは、
図7A−13Aおよび
図7A−13Bの二重管腔針189DLの軸に沿った断面図を示す。
【0454】
図7A−14Aは、ボーラス注入を提供するためにピストンに締結する硬質停止部を有する弁703を備える注入装置700を示し、分離を行うために、第1の軸189ABに沿って延出する管腔189Aと、第1の管腔から離間して第2の軸189BAに沿って延出する管腔189Bとを備える。注入用管腔189Bがベント用管腔189Aよりも多孔質構造体150の近くに設置させることができる。
【0455】
図7A−15Aは、ボーラス注入用の多孔質構造体150と類似の多孔質構造体703VPSを有する弁703を備える注入装置700を示し、埋め込まれたデバイスの流体703FLが気体を押出して多孔質構造体703VPSに接触したときボーラス注入を提供するように、管腔189Bが気体を含有する容積を有するチャネルに連結されている。管腔189Aは、治療流体を注入することが可能である。多孔質構造体703PSは、例えばここに記載されるような焼結多孔質材料などの多孔質構造体150と同様の構造を有してもよい。焼結多孔質材料は、流体702FLまたは703FLのうちの1つ以上が多孔質構造体703VPSに接触したときに多孔質構造体が実質的に弁703を閉弁するように、空気への第1の流れ抵抗および液体を含む流体への第2の流れ抵抗を付与することができる。管腔189Bのベントの間を延出するチャネルは空気などの気体を含有することができ、気体の量は、ボーラス注入を提供するために弁703Vが閉弁する前に注入される液体の量に対応することができる。
【0456】
図7A−15Bは、ボーラス注入用の多孔質構造体150と類似の多孔質構造体703VPSを有する弁703を備える注入用装置700を示し、両多孔質構造体の流れ抵抗の比に基いてボーラスを行うために、多孔質構造体703VPSは多孔質構造体150に比例する流れ抵抗を有する。多孔質構造体703VPSの流れ抵抗は、流体の大部分が弁703を通過し、一部分が多孔質構造体150を通過するように、多孔質構造体150よりも小さくすることができる。
【0457】
注入用管腔189Aは、流体同士を置換するための圧力を付与することができる。前記圧力が、多孔質構造体703VPSの全体にわたる圧力降下703VDPと圧力降下150DPを提供し、各多孔質構造体の圧力降下は実質的に同程度であってもよい。各多孔質構造体を通過する流体の量は多孔質構造体の流れ抵抗に反比例する。
【0458】
図7A−15C1は、ボーラス送達のために弁を閉弁するための第2の摺動部材703Pに連結したピストン701Pなどの摺動部材を有する弁703を備える注入装置700を示す。
【0459】
図7A−15C2は、
図7A−15C1と同様な弁703の管腔189A中のピストン703Pを示す。
【0460】
図7A−16は、多孔質構造体150の流れ抵抗に比例する注入用装置の流れ抵抗に基いて、眼へボーラス注入を提供するよう構成される注入用装置の模式図を示す。治療流体配置装置700は、治療デバイスの100のリザーバチャンバの中へ延出する少なくとも1つの針備えることができる。少なくとも1つの針は、チャンバとリザーバとの間に圧力差ΔPを付与するために、リザーバチャンバに、例えば約1気圧以上の実質的な圧力を付与する。第1の流体流路は、リザーバチャンバから多孔質構造体を通って眼の硝子体液へ延出可能である。第1の流体路は、多孔質構造体150を通る間に圧力降下150DPを付与する。第2の流体流路は、リザーバチャンバから、多孔質構造体703VPSを備える弁703を通過して、外気に連通する出口まで延出する。第2の流体路は、多孔質構造体703VPSを通る間に圧力降下703VDPを付与する。眼の眼圧より実質的に大きい圧力まで治療デバイスのリザーバチャンバを圧力をかけることができ、その結果、多孔質構造体150および弁部多孔質構造体150PSを通る間の圧力差がほぼ同じとなる。
【0461】
第1の流路および第2の流路の各々に沿った液体の流量は、各流路に沿った圧力差および流れ抵抗に相関させることができる。多くの実施態様において、各流路に沿って流れる流体の割合は、各流路の流れ抵抗に反比例し、この割合は、チャンバの圧力変動に実質的に左右されない。第1の流路に沿った第1の流量Flは、圧力差ΔPを第1の流れ抵抗Rlで割った商に比例するであろう。第2の流路に沿った第2の流量F2は、圧力差ΔPを第2の流れ抵抗R2で割った商に比例するであろう。
【0462】
多孔質構造体703VPSの流れ抵抗は、注入器により注入される合計容積、ボーラス注入として硝子体に放出される注入量、多孔質構造体150の流れ抵抗、およびデバイス100のリザーバチャンバの容積のうちの1つ以上に基いて決定できる。例えば、眼の中へ100μL注入し、多孔質構造体150の流れ抵抗と弁部多孔質構造体150VPSの流れ抵抗が等しい場合、100μL治療流体注入の約50%がボーラスとして硝子体へ放出され、注入された治療流体の約50%が、多孔質構造体150を通る徐放用に治療デバイスに配置されるであろう。ベント多孔質構造体703VPSの流れ抵抗が多孔質構造体150の流れ抵抗の約半分である場合、埋め込まれたデバイス流体703FLの約3分の2を弁部多孔質構造体703VPSを通過させ、治療流体の約3分の1を多孔質構造体150を通って眼の硝子体液の中へ通過させるようにすることができる。
【0463】
多くの実施態様では、注入用装置の流出路に沿ったベント構造体の流れ抵抗を、多孔質構造体150のものに比べて大幅に小さくすることができる。多孔質構造体150を通る流体の量は、多孔質構造体150の流れの抵抗R1に対するベント構造体の流れの抵抗R2の比率に比例しており、この比率R2/R1を使用して、多孔質構造体150を通る流量を決めることが可能である。実施態様に関する研究によれば、多孔質構造体150を通過する液体の量が約0.2μLを超えないようにベント構造体の流れ抵抗R2を十分低くできることが示されている。例えば、50μL注入した場合
【0464】
多くの実施態様では、治療流体を注入する管腔189Bは、デバイス100の遠位部分へ延出するサイズであり、管腔189Aは埋め込まれたデバイス流体を受容するサイズとすることができる。
【0465】
ここに記載されるような注入用装置は、注入が完了したことをユーザに指示する機能付きで、少なくとも部分的な自動化注入を提供するよう構成することができる。
【0466】
図7A−17A〜
図7A−17Cは、漏出を抑制するためにユーザの入出力で自動化注入を提供するよう構成される自動化注入用装置703AIの模式図を示す。ユーザは、少なくとも1つの針で結膜および貫通性障壁を貫通するように注入用装置を押し下げることが可能である。少なくとも1つの針189は、可変形停止部、貫通性障壁、または結膜のうちの1つ以上からなる密閉部を形成するように少なくともいくらかの圧力で可変形停止部189DSを結膜に締結するような所定距離までデバイスの中を延出することが可能である。少なくとも1つの針189は、第1の管腔189Aおよび第2の管腔189Bを備えることができる。第1の管腔189Aは治療流体を注入可能であり、第2の管腔189Bはデバイス流体を受容可能である。あるいは、第2の管腔189Bが治療流体を注入可能であり、第1の管腔189Aがデバイス流体を受容可能となっている。摺動型入れ子式ジョイントなどのスライダ703SLが少なくとも1つの針を治療デバイス100の中へ付勢してもよい。ユーザは、ボタン703Bなどの入力部7031Bを押すことにより、形成された密閉状態で注入を開始することができ、治療デバイスの完全性および密閉性を維持する範囲内の圧力で治療流体がチャンバの中へ注入されるように、注入用装置の自動配備機構703AMを利用して注入することが可能である。注入用装置の出口部には、
図7A−
図17Cに示されるように注入が完了したことを指示するために飛び出すボタンやクリック音などのインジケータ703INを備えることができる。注入が実質的に完了し、チャンバ圧が治療流体の漏出を阻止する程度に実質的に減少したときに、ユーザは装置を除去することができる。
【0467】
注入用装置は、少なくとも1つの針と治療デバイスとに対応する適切な圧力および流量で治療流体を注入する機構703AMを備えることができる。注入用装置は、治療デバイスのチャンバの対応する流量および圧力を付与するために、例えば、平滑な粘性減衰バネ、バネ、空気圧注入のうちの1つ以上を備えることができる。
【0468】
注入用装置は、治療流体と埋め込み型デバイス流体の密度差が約1%〜約10%の範囲内であるであるように、ここに記載されるような密度、例えば約1.01g/cm3〜約1.10g/cm3の範囲内である密度を有する製剤の注入に適合させることができる。実施態様に関する研究によれば、ここに記載されるような少なくとも部分的な分離を行うのに好適な密度を有する治療流体を提供するために、ソルビトールやマンニトールなどの密度調整剤を治療薬と併用することができることが示唆される。製剤は、公知の製剤であっても、あるいは、上記のような密度を付与するために公知の製剤法に従って調製してもよい。例えば、ソルビトールやマンニトールなどの公知の密度調整剤を公知の懸濁液と、懸濁液の沈殿を抑制するような量で使用することが可能である。ここに記載されるような実施態様による使用に好適な密度を有する製剤の例は、例えばMTH Nutan and IK Reddy, General Principles of Suspensions, in Pharmaceutical Suspensions From Formulation Development to Manufacturing, AK Kulshreshtha, ONSingh, GMWall編, Spinger,2010に記載されている。治療流体は、治療流体の密度を増加するために公知の炭水化物を含んでいてもよい。炭水化物は、製剤の密度を増加するトレハロースなどの公知の二糖類であってもよい。公知のトレハロース溶液の例として、DP Miller, JJ de Pablow, J Corti, Thermophysical Properties of Trehalose and Its Concentrated Aqueous Solutions, Pharmaceutical Research, 14巻,5号,1997、pp578−590に記載されている。
【0469】
注入用装置は、例えば公知の製剤の公知の密度に基いて少なくとも部分的に分離させて、チャンバ中に治療流体を配置するよう構成することができる。
【0470】
図8Aおよび
図8A1は、それぞれ結膜と強膜の間に実質的に設置される治療デバイス100の側面断面図および上面図である。デバイス100が埋め込まれた状態で、ここに記載されるような治療薬110を少なくとも部分的な分離を伴って注入することができる。治療デバイス100は、ここに記載されるような第1の針および第2の針を有する注入用装置により置換することができる。治療デバイス100は、ここに記載されるような容器130を備え、その上面にはここに記載されるような、配置の際は結膜に対向する通性隔壁184が設置されている。細長い構造体172が容器130に連結される。細長い構造体172は、容器のチャンバに連結された第1の開口から細長い構造体の遠位端にある第2の開口176へ延出するチャネル174を備える。ここに記載されるような多孔質構造体150が、長期間にわたって治療薬を放出するように細長い構造体172に設置されかつ容器130に連結されており、保持構造体120は、強膜と結膜に結合するために容器から外方に突出する延長部130を備える。容器は、ここに記載されるような、少なくともリザーバの一部を画成する隔壁160を備えることができ、容器は幅、例えば直径を有する。隔壁160は、容器130のチャンバの容積がここに記載されるように実質的に一定の容積であるように、例えば硬質シリコーンや硬質ゴム、またはここに記載されるような他の材料などの硬質材料から作成することができる。代替あるいは併用して、例えばチャンバサイズが減少する場合などには、その容積が減少したチャンバサイズと実質的に同じであるように、隔壁160を軟質材料から作成してもよい。軟質隔壁材を、例えば支持部材などの硬質材と併用してもよい。直径は、ある範囲以内、例えば約1〜約8mmの範囲以内、例えば約2〜6mmの範囲以内のサイズとすることができ、例えば約3mmであることができる。
【0471】
容器は、細長い構造体172に連結されてもよく、細長い構造体は、硝子体の中へ治療薬を放出するために結膜から硝子体へ延出する長さを有する。長さは、ある範囲以内、例えば約2〜約14mmの範囲以内、例えば約4〜10mmの範囲以内のサイズとすることができ、例えば約7mmであることができる。貫通性隔壁は、容器の近位端に配置されるセプタムからなることができ、このセプタムは、治療薬の注入用針などの鋭利な物体が貫通できる隔壁を含む。多孔質構造体は、長期間にわたって治療薬を放出するサイズの断面積を備えることができる。細長い構造体172は、容器130の中心近くに配置するか、あるいは、中心から外れていてもよい。
【0472】
ここに記載されるように、細長い構造体172は毛様体扁平部領域で強膜に挿入することができる。
【0473】
隔壁160は、結膜と強膜との間に配置されるような形状プロファイルを有することができる。下面は、強膜に接触する形状とすることができ、凹状の球または円環表面などの凹形状を有してもよい。上面は、結膜に接触する形状とすることができ、凸状の球または円環表面などの凸形状を有してもよい。隔壁160は、埋め込まれた状態を上から見たとき長円、楕円、または円形状であってもよく、細長い構造体172は楕円の中心にあっても、または偏心していてもよい。埋め込まれた状態で、長円形状の長軸が毛様体扁平部の円周に沿って延出するように位置合わせすることができる。
【0474】
細長い構造体172の断面直径は、デバイス100の侵襲を抑制するサイズとすることができ、その直径は、細長い構造体172が除去された時貫通した強膜が実質的に密閉され、細長い構造体172の除去の際に眼が自然に密閉するように、約1mm以下、例えば約0.5mm以下、例えば約0.25mm以下であってもよい。細長い構造体172は針であって、チャネル174は針の管腔であることができ、例えば30ゲージ針が挙げられる。
【0475】
多孔質構造体150は、ここに記載されるようにリザーバに連結する第1の側面と硝子体に連結する第2の側面とを備える。第1の側面は、ここに記載されるような第1の面積150を備え、第2の側面は第2の面積を備える。多孔質構造体はここに記載されるような厚さを備える。多孔質構造体は直径を備える。多孔質構造体は放出速度指数を備え、リザーバ140の容積を規定する容器130のチャンバのサイズは、多孔質構造体および容積が治療薬製剤の容積として注入される治療薬の量を受容するように調整されかつ治療量を長期間にわたって放出するよう調整されるように設定される。ここに記載されるような多様な放出速度機構を使用して、放出速度および容積をここに記載されるような治療薬の注入量を与えるように調整することができる。
【0476】
容器のチャンバにより規定されるリザーバ140の容積は、約5μL〜約2000μLの治療薬、例えば約10μL〜約200μLの治療薬を含むことができるものでよい。
【0477】
多孔質構造体は、針の貫通を制限するための針停止部を備えることができる。多孔質構造体は、治療薬の徐放のために構成された複数のチャネルを備えることができる。多孔質構造体は、材料の徐放に適した特性を有する硬質焼結材料から構成してもよい。
【0478】
図8A2は、細長い構造体172が強膜を通過してリザーバ・チャンバを硝子体液に連結させるように、リザーバが結膜と強膜の間にあるように埋め込まれた治療デバイス100を示す。埋め込まれた状態で、多孔質構造体150は硝子体液中に設置されるか、あるいは結膜と強膜と間に設置されるか、あるいは強膜を貫通しているか、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
【0479】
図8Bは、治療デバイス100の容器130のチャンバへの開口の近傍でチャネル174の中に設置された多孔質構造体150を示す。多孔質構造体は、細長い構造体172の長さに実質的に沿って延出することができる。
【0480】
図8Cは、放出速度プロファイルを与えるように、容器150のチャンバ内に設置され、かつ細長い構造体172の第1の開口に連結された多孔質構造体150を示す。多孔質構造体は、治療量がここに記載されるように長期間にわたって放出されるように細長い構造体172の開口を覆うことができる。
【0481】
図8Dは、容器130のチャンバ液を注入および置換し、治療薬を容器130のリザーバ・チャンバへ注入するように離間している複数の注入ポートを示す。貫通性隔壁184は、隔壁160に形成された第1のアクセスポートに設置された第1の貫通性隔壁と、隔壁160に形成された第2のアクセスポートに設置された第2の貫通性隔壁とを備えてもよく、第1の隔壁は少なくとも約1mm、第2の隔壁から離間していてもよい。
【0482】
注入用装置は、ここに記載されるような多様な方法で、結膜と強膜との間に配置されたリザーバへ連結するよう構成することができる。注入器は、例えばデバイス流体から治療流体を少なくとも部分的に分離するよう構成することができる。代替あるいは併用して、注入器は、例えばデバイス流体を治療流体と置換するよう構成することができる。注入装置701は、注入器701は、二重管腔針189Lに連結され、第2の管腔189Bがチャンバ702Cからデバイス100の中へ治療薬110を注入することが可能であり、第1の管腔と第2の管腔は、第1の管腔を上記したような第1のセプタムの中に配置し、第2の管腔を上記したような第2のセプタムの中に配置するような距離で相互に離間していてもよい。第2の容器703Cは第1の管腔189Aに連結することが可能であり、リザーバ容器のチャンバを結膜と強膜との間に配置した状態でデバイス100の液体を置換するように、第1の管腔189Aはリザーバ容器のチャンバまで延出し、かつデバイス100からの液体を受容する。切換弁703Vは、目的量の液体と目的量の治療薬110の製剤を置換し、かつ例えば上記したようにボーラス注入量の治療薬がデバイス100から注出されるようにデバイス100の中に目的量の治療薬を注入する。デバイス100の中に注入された治療薬の製剤の一部は、長期間にわたる放出のためにデバイス100の中に保持することができる。
【0483】
図9は、容器の中心から離れて容器に連結され、容器の端部の近傍に設置された細長い構造体を示す。
【0484】
図10Aは、埋め込まれたデバイスの中へ流体を注入する装置300を示す。装置300は、治療デバイスの流体を受容する容器328を備えるカートリッジ320を備える。カートリッジ容器328は、カートリッジを保護する包装容器310に配置されている。
【0485】
カートリッジ320は、シリンジへ連結するための連結器322を備える。連結器322は、ルアー連結器やハミルトン連結器などのシリンジへ連結する標準的な連結器の1つ以上であってもよい。カートリッジ320は、ここに記載されるような第1の管腔189Aおよび第2の管腔189Bを有する少なくとも1つの針189を備えることができる。カートリッジ320は、第1の管腔324Lを有する第1の針324と第2の管腔326Lを有する第2の針326とを備える少なくとも1つの針189を備えることができる。第1の針および管腔は、流体密閉状態で連結器322に連結される。第2の針326および第2の管腔326Lは、流体密閉状態で容器328に連結される。少なくとも1つの針は、ここに記載されるような二重管腔針189DLであってもよい。弁703Vが容器328に連結されており、容器328の容積が埋め込み型デバイス流体で満たされたとき弁703Vが実質的に閉弁するようになっている。
【0486】
弁703Vは、ここに記載されるような弁のうちの1つ以上であってもよい。多くの実施態様において、弁703Vは、液体が多孔質構造体に接触したとき液体の流れが実質的に阻止されるように、空気の流れ抵抗よりも大きな液体の流れ抵抗を有する多孔質構造体を備えることができる。弁703Vは、液体が弁703Vの多孔質構造体に接触したとき多孔質構造体150を通して液体を通過させるように、多孔質構造体150よりも大きな流れ抵抗を有してもよい。あるいは、弁703Vは多孔質構造体150より小さな流れ抵抗を有し、多孔質構造体150より小さい弁703Vの流れ抵抗に基いた量の治療流体702FLを多孔質構造体150を通して通過させてもよい。
【0487】
包装容器310は、取外し可能なカバー314およびケース312を備える。ケース312は、少なくとも1つの針324を収容する溝316を備える。ケース312および溝316の高さは、少なくとも1つの針が溝316に沿って延出しかつカバー314がケース312の上に載置した状態でカートリッジ320を収容するサイズとする。
【0488】
図10Bは、製剤を注入し液体を受容するカートリッジに連結されたシリンジを示す。カートリッジ320はシリンジ188に連結され、その後カートリッジ320はケースから取り出される。シリンジ188は、治療薬の上記量を注入するのに好適な容量を有する市販の標準シリンジであってもよい。シリンジ188は、デバイス100の中へ注入される量の治療薬110を含有する。
【0489】
図10Cは、治療薬を注入し、かつここに記載されるような埋め込まれたデバイスの流体を受容するために、眼に埋め込まれたデバイス100に連結されたカートリッジおよびシリンジを示す。
【0490】
本発明の実施態様に関する研究によれば、治療製剤110の密度がデバイス100の埋め込み型デバイス流体703FLよりも高くてもよく、この場合、リザーバチャンバ140内の、埋め込み型デバイス流体703FLを受容する管腔124Lの下方位置に治療薬製剤110が向けられるようにするために、多孔質構造体150がデバイス100の貫通性障壁の下方にある状態で製剤を注入することが有益であることが示唆された。デバイス100の中へ液体を付勢するために、シリンジのプランジャを押圧する。埋め込み型デバイス流体703FLのレベルが弁703まで上昇したら、液体の流れは実質的に阻止される。多孔質構造体を備える弁703は、ユーザが空気の流れに対する抵抗を感知することを可能とするので、多孔質構造体へ向かう薬製剤110の流量を減少させて、製剤による埋め込み型デバイス流体703FLの重力に基づいた分離を促進させることができるかもしれない。
【0491】
図10Dは、包装容器の中に配置されたカートリッジ320を示し、包装容器を覆うようにしてカバー材が置かれている;
【0492】
図10Eおよび1OFは、埋め込まれたデバイスから受容した液体を視認するために透明材からなる注入用装置の側面および前面図を示す。カートリッジ320は、容器328を含む。容器328は多孔質構造体703VPSに連結されたチャネル328Cを備える。光透過性材料320Mが、チャネル328Cを視認可能とするために、チャネル328Cを覆って設けられる。
【0493】
図11Aは、治療流体702FLを埋め込み型デバイス100の流体と混合して流体同士の分離を阻止し、かつ注入により埋め込み型デバイス流体702FLが多孔質構造体150を通過するように、針189の軸189AXに沿った軸方向および半径方向に離間した複数の開口を備える針189を示す。
【0494】
図11Bは、治療流体702FLを埋め込み型デバイスの流体100と混合して流体同士の分離を阻止するために、針189の軸189AXに沿った軸方向および半径方向に離間した複数の開口と遠位先端に開口とを備える針189を示す。多くの実施態様において、少なくとも1つの針189は、単一管腔針の下方に設置された多孔質構造体の方へ下向きに配向された単一管腔針を備え、流体同士を混合することで、デバイス100のリザーバチャンバに配置される治療薬の量および対応する効率を増加させることができる。例えば、治療流体702FLは、リザーバチャンバの流体より大きな密度を有することができる。
【0495】
図11Cは、治療流体702FLを埋め込み型デバイスの流体100と混合して流体同士の分離を阻止するために、針189の軸189AXに沿った軸方向および半径方向に離間した複数の開口を備える針189を示し、可変形停止部189DSが結膜に連結されている。
【0496】
図12A〜
図12Cは、治療デバイスの100の過剰圧力を阻止するための、膨張式チャンバを備える注入器を示す。膨張式チャンバは、
図12Bに示されるような膨張状態に伸展して治療流体702FLを受容する保護カバーを備えることができる。注入器をデバイスの上まで下げると、膨張式チャンバの圧縮力で流体702FLが注入されるので、注入器のチャンバが流体703FLを受容し、プランジャが
図12Cに示されるように上向きに移動することになる。
【0497】
図13Aは、埋め込まれたデバイス流体703FLより小さい密度を有する治療流体702FLを受容する治療デバイス100を示す。
【0498】
図14Aは、埋め込まれたデバイス流体703FLより大きい密度を有する治療流体702FLを受容する治療デバイス100を示し、針189をシリンジから外せるように、針および可変形停止部は可撓性チューブによってシリンジに連結されている。可撓性チューブにより、上向きに患者の中への注入することが可能とされ、ここで治療流体702FLは少なくとも部分的に分離して、図示される少なくとも部分的な分離状態でデバイス150の下側近位部分の方へ溜まることができる。治療デバイス流体703FLは優先して多孔質構造体150を通過可能となる。
【0499】
図13Aは、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイス流体703FLより小さい密度を有する治療流体702FLを受容する治療デバイス100を示す;
【0500】
図14Aは、本発明の実施態様による、埋め込まれたデバイス流体703FLより大きい密度を有する治療流体702FLを受容する治療デバイス100を示し、針189をシリンジから外せるように、針および可変形停止部は可撓性チューブによってシリンジに連結されている。埋め込み体が治療流体を上向きに注入できるように患者を配向することができる。多くの実施態様において、治療を施す医師および/または従業者が患者を横たわらせ、眼の毛様体扁平部領域に設置された埋め込み体にアクセスできるように患者の頭部を片側へ傾斜させる。
【0501】
表Xは、実施態様によるデバイス構成の例を示す。貫通性障壁184に対する多孔質構造体150の位置を、デバイス100の中へ治療薬110を注入する効率に関連させることが可能である。治療流体を埋め込み体のチャンバの中に配置する装置は、表Xに示す構成のうちの1つ以上に対応する治療流体の配置を実現するよう構成することができる。
【実施例】
【0502】
実験
【0503】
ここに記載されるような実施態様による教示に基いて、当業者は、注入された治療流体から埋め込まれたデバイス流体を少なくとも部分的に分離することに基づいて、眼を長期間にわたって治療するための治療流体量を供給するための注入器および埋め込まれたデバイスの構成を経験的に決定するための実験研究を行うことが可能であろう。
【0504】
実験例1:異なる密度を有する流体での補充効率の研究
【0505】
10wt%トレハロース(フィシャー社)、0.01wt%ポリソルベート20(フィシャー社)および10mMヒスチジン塩酸塩(スペクトラム社)を含むトレハロース緩衝液を調製した。水酸化ナトリウムを使用してpHを7.6に調整した。フルオレセインナトリウム(アンジオフルオロ社)を、最終濃度2.5wt%で添加した。リン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」、シグマ社)をHPLC用水で調製し、この一定分量にフルオレセインを最終濃度2.5wt%で添加した。密度の測定は、10mLクラスAメスフラスコおよび最小表示0.01mgの分析用天秤を使用して23℃で重量測定により行った。
【0506】
この研究では、放出速度指数0.02mmに対応する薬剤放出プロファイルを与えるチタニウム多孔質構造体および25μLのリザーバ容積を有するデバイスを使用した。デバイスは最初に、1ccツベルクリン注射器(BD社)および33G針(TSK社)を用いて25μLのPBSで充填した。充填したデバイスの遠位端をPBSを含有する管の中へ挿入し、圧力ゲージおよびシリンジを用いて圧力をかけた。シリンジによりシステムを20mmHgまで圧力をかけた後、テストの間シリンジはシステムから分離した。デバイスを固定設備の取り付け具に取り付け、管を遠位端につなぎ、圧力をかけた。多孔質構造体が貫通性障壁の下方になる状態で、デバイスを水平から45°の角度に保持した。デバイス(各n=4)(n=2〜3)は、針リミッタアセンブリの33G針および1ccツベルクリン注射器を用いて、PBSまたはトレハロース緩衝液のどちらかを含む45μLのフルオレセインで補充した。針リミッタで補充したデバイスでは、貫通性障壁の近位位置で治療薬がデバイスに入る。補充時間を記録した。管の中の圧力は補充のため増加した。補充後、デバイスを取り除き、デバイスの外側を実験用ティシュで乾かした。各デバイスの内容物は針および注射器により取り除き、予め秤量したバイアルの中へ採取した。採取した量は重量測定により求めた。各バイアルにPBSを添加し、サンプルを希釈して分析の検量範囲とした。濃度の測定は、96穴プレートでPBS希釈標準曲線を使用して行い、吸収値はモレキュラーデバイス社のVersaMaxPlusプレートリーダーにより波長492nmで読み取った。更に、対照として元のフルオレセイン含有溶液から希釈したものを使用し、100%補充効率に対応する測定値を得た。各デバイスの補充効率は、補充後のデバイス内容物の濃度の測定値を対応する対照サンプルの濃度で除算して計算した。
【0507】
補充効率は、治療流体の注入および埋め込み型デバイス流体の除去により治療デバイスのリザーバチャンバに配置された治療流体の量に対応する。多くの実施態様において、針を通過して埋め込み型デバイスのリザーバチャンバの中へ入った治療流体の量は、リザーバチャンバの容積より大きな容積に対応する。
【0508】
表Yは、2種類の治療薬流体密度を使用した補充研究を示す。これらのデバイスでは、多孔質構造体が貫通性障壁の下方に位置し、治療薬は貫通性障壁を通してデバイスの近位部分に導入され、過剰な流体は遠方にある多孔質構造体を通してデバイスから排出された。
【0509】
表Yのデータは、多孔質構造体が貫通性障壁の下方にあり、治療薬は貫通性障壁の近くの近位に導入し、過剰な流体は遠方にある多孔質構造体を通してデバイスから排出した場合の補充研究の結果を示している。デバイス流体密度と同じ治療流体密度を有するデバイスで、補充効率70%が得られた。デバイス流体よりも3%だけ密度が大きい密度を有する治療流体でデバイスを補充すると、補充効率が28%に下がった。
【0510】
これらのデータによれば、PBSの密度が1.00であり、これは通常の生理食塩水の文献値1.0046(Wikipedia、 項目名「Saline(medicine)」参照)に対応する。10%トレハロース溶液の密度の測定値は1.03であり、予測値と一致した。
【0511】
この研究により、補充効率が密度の小さな変化にも影響されることが示された。
【0512】
実験例2−ビデオ撮像および効率研究
【0513】
ここに記載されるような少なくとも部分的な分離を特定するために、マーカー染料を使用したビデオ撮像研究を行った。
【0514】
置換型針は、
図7−1および
図7−2の実施態様に従った同心針システムからなり、331/2ゲージの内側針と内径0.018インチの外側管部を有した。内側針の長さは、約0.15〜約0.25インチ長さの範囲内とした。研究で使用した外側管部の長さは、ベント流体路に沿った流れ抵抗の大部分を付与するために、約0.04インチ〜約0.09インチ長さの範囲内とした。
【0515】
図15A−1〜
図15A−3は、上向き角度位置(水平から10度上方、多孔質構造体は貫通性障壁の上方)にある治療デバイスを示す。注入用装置の同心型の針およびベントは、ここに記載されるような
図7−1および
図7−2に示す装置に従って作製された。注入用装置は、多孔質構造体の近くのデバイスの遠位部分に設置された遠位針先端を通してより密度が高い液体を注入し、ベントは注入器ポート近くのデバイスの近位部分に設置した。デバイスの内側の透明なPBS溶液の密度は約1.00g/mLであり、一方黄色い補充溶液の密度は約1.03g/mLである。補充速度は約1.3μL/secであった。合計45μLがデバイスの中へ注入された。デバイスの容量は25μLであった。このデバイス構成および補充条件による補充効率は、約60〜90%であった。ここに記載されるような教示によると、使用した多孔質構造体150のRRIは0.02であった。実質的に硬質なデバイスリザーバの容積は25μLであった。45μLの流体を注入するのにかかった時間は約30〜40秒であった。
【0516】
図15A−1は、約10μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。この画像は、埋め込み型デバイスのリザーバチャンバ内で注入された流体の少なくとも部分的な分離を示し、注入された色付きの流体は、リザーバチャンバの下縁に沿って延出しているのがわかる。
【0517】
図15A−2は、約25μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0518】
図15A−3は、約45μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0519】
図15B−1〜
図15B−3は、下向き角度位置(水平から35下方、多孔質構造体は貫通性障壁の下方)にあるデバイス100を示す図である。注入用装置の同心型の針およびベントは、
図7−1に示すものである。注入用装置は、多孔質構造体の近くのデバイスの遠位部分に設置された遠位針先端を通してより密度が高い液体を注入し、ベントは貫通性障壁を有する注入器ポート近くのデバイスの近位部分に設置した。デバイスの内側の透明なPBS溶液の密度は約1.00g/mLであり、一方黄色い補充溶液の密度は約1.03g/mLである。カラー画像は、濃い黄色を足したグレースケール画像に変換した。補充速度は約1.3μL/secであった。合計45μLがデバイスの中へ注入された。デバイス容量は25μLであった。このデバイス構成および補充条件による補充効率は約90〜95%であった。ここに記載されるような教示によると、使用した多孔質構造体150のRRIは0.02でり、
図15A−I〜15A−3と同様であった。実質的に硬質なデバイスリザーバの容積は25μLであった。45μLの流体を注入するのにかかった時間は約30〜40秒であった。
【0520】
図15B−1は、約10μLを埋め込み型デバイスの中へ注入した後に撮影された。この画像は、埋め込み型デバイスのリザーバチャンバ内で注入された流体が少なくとも部分的に分離していることを示し、チャンバの中へ注入された色付きの流体が多孔質フリット構造に接触するリザーバチャンバの底部の近くに位置しているのがわかる。
【0521】
図15B−2は、約25μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0522】
図15B−3は、約45μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0523】
実験例4−補充効率および密度
【0524】
実験例4−1〜4−3
【0525】
多孔質構造体が注入ポートの上方または下方にある状態での補充効率を求めるための追加の研究を行った。実験例1に記載するように、実質的に硬質の埋め込み型デバイスは、リザーバ容積25μLを備え、最初に密度約1.00のPBSで充填した。これらのデバイスには、注入の完了時の埋め込み型デバイスのリザーバチャンバに注入された液体量に基いて注入の効率を求めるために45μLの流体を注入した。これらの研究で使用されるように、「デバイス上方」は、多孔質構造体が注入ポートの貫通性障壁の上方に位置する状態を意味する。実験例4−1および4−2では、デバイスの中へ延出する単一の約33ゲージ針を使用し、実験例4−3では、
図7−1および
図7−2に示されるようなデバイスのチャンバ内に設置される針およびベントを備える置換装置を使用した。注入される溶液は、埋め込み型治療デバイスから押出された溶液より密度が約3%以上高かった。これらのデータは、流量が約1〜2μL/秒の範囲内であり密度差が約3%以上の場合、少なくとも部分的な分離が達成できることを示している。
【0526】
実験例4−1
【0527】
市販のアバスチン製剤を流量1.3μL/秒で注入した。多孔質構造体が貫通性障壁の上方に水平に対して45度の角度となるように配置した。注入完了時に治療デバイスのチャンバ中のアバスチンの量に基いて測定した効率は、約90〜約97%の範囲内であった。注入完了時のリザーバチャンバ中のアバスチンのこの量は、ここに記載されるようなリザーバチャンバ内での少なくとも部分的な分離に対応する。実験例4−1では、デバイスの中へ延出する単一の約33ゲージ針を使用した。
【0528】
実験例4−2
【0529】
実験例4−2は、補充効率に対する密度の影響を調べるために行った。テストは、チタニウムからなるRRIが0.02の多孔質構造体を使用して行った。埋め込み型デバイスは、下方45度の方向に配向した(速度1.3μL/secで45μL補充)。実験例1のトレハロース溶液を、埋め込み型治療デバイスの中へ注入した。実験例4−2では、デバイスの中へ延出する単一の約33ゲージ針を使用した。
【0530】
結果:
【0531】
補充溶液密度差なし:デバイス中の量62−71%
【0532】
補充溶液密度差0.03:デバイス中の量27−31%
【0533】
これらのデータは、密度差およびここに記載されるような少なくとも部分的な分離が補充効率の測定値に影響することを示している。
【0534】
実験例4−3
【0535】
実験例4−3は、市販のアバスチンおよび
図7−1および
図7−2に示されるような同心型針/ベント置換システムを使用して行った。市販のアバスチン製剤(10mg/mL)を、実験例1に記載されるようなPBSを含有するデバイスの中へ注入した。これらの研究は、注入角度および密度が置換の効率を向上するために使用できることを示している。25μLデバイスの中へ注入された合計容積45μLに対して、補充速度は1.3μL/秒であった。実験例4−3では、
図7−1および
図7−2に示されるようなデバイスのチャンバ内に設置した針およびベントを備える置換装置を使用した。
【0536】
結果:
【0537】
10度上方、デバイスに配置された量64−87%
【0538】
10度下方、デバイスに配置された量82−97%
【0539】
35度下方、デバイスに配置された量90−94%
【0540】
60度下方、デバイスに配置された量94−97%
【0541】
90度下方、デバイスに配置された量96−94%
【0542】
これらの研究は、35度以上下方に向けて設置された治療デバイスでは、約90%以上の補充が、少なくともアバスチンおよびリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」)に対応する密度差および置換システムで提供できることを示している。これらの研究では、埋め込み型デバイスから押出される液体を受容する開口の下方に製剤を注入する針の開口を配置した。これらのデータは、ここに記載されるように注入された治療流体が埋め込み型デバイス流体から少なくとも部分的に分離したことを示している。同様な研究は、埋め込み型デバイスの中へ注入される多様な製剤について、ここに記載された教示に基いて行うことが可能である。
【0543】
実験例5−流体置換効率および埋め込まれたデバイスの水平に対する角度
【0544】
実験は、水平に対するデバイス軸の角度に関する補充効率を求めるために行われた。デバイスは、ここに記載されるような少なくとも部分的な流体分離を提供するための角度および流量で、治療流体を医師が注入するするよう構成することができる。埋め込まれたデバイスを、水平に対して配向されたテストデバイスおよび注入によりモデル化した。注入は、単一の針または
図7−1および
図7−2に示されるような置換装置のどちらかを使用して行った。注入用管腔を有する単一の針は、約33と2分の1ゲージで、針の開口が治療デバイスの遠位部分に位置するように可変形針停止部を超えて約0.060インチ〜約0.090インチ延出した。デバイスの角度は、眼の角度および頭部の向きに関して治療用椅子上の患者の向きに対応するように決定した。患者に埋め込まれたデバイスのリザーバチャンバへの治療薬製剤の注入のモデルとして、トレハロース溶液を、実験例1に記載したようにPBSを充填したデバイスの中へ注入した。
【0545】
表Z1および表Z2のデータは、患者の様々な位置および向きに対応する、デバイスの水平に対する様々な角度を示すものである。患者位置角度は、一般に水平に対する患者の背中に対応し、90度が起座する患者に対応し、仰向けが角度0度に対応する。頭部側面角度は、患者頭部の左右への傾きに対応し、頭部回転角度は患者の身体に沿って延出する軸の回りの頭部の回転に対応する。対応するデバイス角度は、「水平に対するデバイスの位置(°)」の欄に示される。効率は、デバイスの流体を埋め込まれたデバイスの多孔質構造体を通して通過させてることによりチャンバの液体を押出すためにデバイスの中へ延出する単一の管腔と、流体を注入する第1の管腔および埋め込み型デバイスのチャンバから押出された流体を受容する第2の管腔を備える置換型構成との両方に関してテストした。これらのデータによれば、測定された注入時間および角度に関しては、少なくとも部分的に分離することが補充効率に影響を与えることが示された。
【0546】
これらのデータは、注入デバイスを患者の眼および埋め込まれたデバイスの角度に適応させることができることを示している。例えば、デバイスの中へ単一の針が注入され、治療流体の密度がデバイス流体の密度より大きい場合、治療流体の配置の効率を増加するために、より密度が大きい治療流体が貫通性障壁方へ分離して、より小さい密度を持つ埋め込まれたデバイスの流体が多孔質構造体の方へ分離し多孔質構造体を通過するように、貫通性障壁を多孔質構造体の下方に設置することが有益であろう。
【0547】
表Z1は、水平に対するデバイスの様々な角度における注入器の方位および効率を示す。これらの角度の多くは、デバイスへの注入時に常時前方を見るように指示された患者が提供するデバイスの角度に対応している。
【0548】
補充の際置換を行わない場合、デバイスの軸が水平から40度の位置にあり、貫通性障壁が多孔質構造体の上方にあるときの効率範囲は23−29%であった。貫通性障壁が多孔質構造体の下方にあるように角度を−45度に反転したときは、効率が約90%以上に増加した。
【0549】
表Z2は、注入時に鼻の先端を見るように指示された患者に対応するデバイス角度および補充効率データを示す。これらのデータは表Z1と一貫しており、置換装置での効率は貫通性障壁が多孔質構造体の上方にある場合に増加し、単一の針注入での効率は貫通性障壁が多孔質構造体の下方にある場合に増加することを示している。
【0550】
実験例6−注入用カートリッジ
【0551】
実験は、ここに記載されるような分析に好適な、治療デバイスからの流体を保管する容器を有する注入用カートリッジの中へ、埋め込み型デバイスから流体が押出されることを示すために行った。
【0552】
図16A−1〜
図16A−3は、埋め込まれたデバイス流体を受容するための容器とデバイス流体受容容器の下流にある多孔質ベント構造体とを有する注入用カートリッジ320の画像を示し、カートリッジの多孔質構造体がボーラス注入を提供する弁を備えている。カラー画像はグレースケール画像に変換され、赤い部分を強調して黒として示した。カラー画像は、流体703FLに対応する赤い染料を使用して得た。注入された透明な流体は治療流体702FLに対応する。カートリッジは注入シリンジに連結され、上記の少なくとも1つの針は第1の針および第2の針を備える。注入用管腔は治療デバイスの100の遠位端部分へ延出し、流出チャネルのベントは治療デバイス100の近位部分に位置している。注入用カートリッジは、眼の結膜に連結されたとき可逆的に変形する可変形停止部189DSを備える。注入用カートリッジは、容器に受容された埋め込み型デバイスの流体を視認するための窓部320Wとしての透明材料320TMからなる。
【0553】
図16A−1〜
図16A−3に示されるように、埋め込み型デバイスの軸は、水平方向から下向きに約60〜70°の角度で延出する。デバイス内側の赤い溶液の密度は約1g/mLであり、一方透明な補充溶液の密度も約1g/mLである。補充速度は約1.3μL/secである。合計45μLがデバイスの中へ注入された。デバイス容量は25μLである。このデバイス構成および補充条件による補充効率は、約60〜90%である。
【0554】
図16A−1は、約10μLの注入後の流体の流れを示す。
図16A−1は、約10μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0555】
図16A−2は、約25μLがデバイス100の中へ注入された後のデバイス流体の流出を示す。
図16A−2は、約25μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。ボーラス注入の実質的部分がデバイス100の多孔質構造体150を通過した。
【0556】
図16A−3は、約45μLが注入された後の流出およびボーラスを示す。
図16A−3は、約45μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0557】
図16A−4および
図16A−5はそれぞれ置換型針装置の側面図および正面図を示す。流出路の多孔質構造体703VPSは、ボーラス注入を提供するために、液体からなる流体の流れに実質的な抵抗を付与することができる。カートリッジは、眼の結膜へ連結するための、ここに記載されるような可変形停止部189DSを備える。
【0558】
図16A−4は置換型針の側面図である。これは、注入を行う長い針と封込トラックの中へ流体を逃がすための短い針を有する2本針システムである。
図16A−5は、トラックの左上端に多孔質ベントを有する封込トラックを示す正面図である。この多孔質ベントは、流体が通過する際の抵抗は大きく保ちながら、小さい抵抗値で空気を逃すことを可能としている。この空気の通過に対する抵抗により、新たに置換された流体が埋め込み型デバイス多孔質構造体150を通してボーラス投与されるレベルの圧力をシステム中に生成する。
【0559】
図17A−1〜
図17A−3は、埋め込み型デバイス内に注入された液体の流れがあるかどうかを確かめるための、埋め込み型デバイスの中への注入を示す。
【0560】
図17A−1〜
図17A−3は、水平位置にあるデバイスを示す。デバイス内側の透明な溶液の密度は約1g/mLであり、一方黄色い補充溶液の密度は約1.03g/mLであった。補充速度は約1.3μL/secであった。合計45μLがデバイスの中へ注入された。デバイス容量は25μLであった。
【0561】
図17A−1は、約10μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。入射溶液が、45度の流れとして針の端部から噴出しているのがみられる。溶液はデバイスの端部に当り、多孔質構造体を過ぎて流下してデバイスの底部に溜まった。
【0562】
図17A−2は、約25μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。入射溶液が、45度の流れとして針の端部から噴出しているのがみられる。
【0563】
図17A−3は、約45μLがデバイスの中へ注入された後に撮影された。
【0564】
例示的実施形態を一例として明確な理解のためにある程度詳細に説明したが、当業者には、様々な変形、改作および変更がなされることが認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
表X
【表3】
表Y
【表4】
表Z2
【表5】
表Z1
【表6】
表1A
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【表7-17】
【表7-18】
【表7-19】
【表7-20】