【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした課題は、特に肝臓病(特に肝臓の遺伝的代謝異常(IMD))に関連している。こうした群の病気は、肝細胞の鍵(キー)となる蛋白質に影響を与える遺伝的変異から生じる。こうした群の病気は、肝臓を全器官移植することによって治療することができるが、こうした手順は、相当のリスクを生じる。従って、病気のメカニズムに対する理解を深め、代替治療法を開発する必要がある([10][11])。しかし、そのための研究においては幾つかの困難が立ちふさがっており、該困難としては:肝細胞を初代培養することが困難であることや;病気の原因となる蛋白質の機能不全、ひいては細胞の欠陥を忠実に再現し、関連のあるヒト肝細胞様細胞株を提供することができない点が挙げられる([12])
【0004】
本発明は、ヒトiPS細胞を肝臓性前駆細胞及び肝細胞へインビトロで高効率誘導するための方法に関する。本発明は、例えば、細胞ベースの治療法又は病気のモデリングのための肝細胞を生成する際に有用となる可能性がある。
【0005】
一態様において、本発明は以下の方法を提供する。
肝臓への分化を誘導するための方法であって、以下のステップを含む方法:
(i)人工多能性幹(iPS)細胞の集団を提供するステップ;
(ii)前記集団を内胚葉誘導培地中で培養し、前方胚体(anterior definitive)内胚葉(ADE)細胞の集団を生成するステップ
(ここで、前記内胚葉誘導培地は、
以下の性質を持つ所定の化学培地である:
線維芽細胞成長因子活性を有し、
SMAD2及びSMAD3を介したシグナリング経路、並びにSMAD1、SMAD5及びSMAD9を介したシグナリング経路を刺激し、並びに
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)及びグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β(GSK3β)を阻害する)
(iii)ADE細胞の前記集団を肝臓性誘導培地中で培養し、肝臓性前駆細胞の集団を生成するステップ
(ここで、前記肝臓性誘導培地は、SMAD2及びSMAD3を介したシグナリング経路を刺激する所定の化学培地である)。
【0006】
本発明の方法は更に以下のステップを含むことができる;
(iv)前記肝臓性前駆細胞の集団を肝臓性成熟培地(肝臓性細胞へと成熟させる培地)中で培養し、肝細胞の集団を生成するステップ。
【0007】
好ましくは、 前記iPS細胞はヒトiPS細胞である。
【0008】
iPS細胞は、非多能性且つ完全に分化した先祖細胞に由来する多能性細胞である。適切な先祖細胞には、成人の線維芽細胞や、末しょう血球が含まれる。通常、先祖細胞は、多能性の遺伝子又は蛋白質(例えば、Oct4、Sox2及びSox1)を細胞に導入することにより再プログラムされる。前記遺伝子又は蛋白質は、分化した細胞へ、任意の適切な技術によって導入することができる。該技術としては、プラスミド性、若しくはより好ましくは、ウィルス性のトランスフェクション、又は直接的な蛋白質の送達が含まれる。また、他の遺伝子を細胞に導入して、誘導効率を増加させても良い:例えば、Kif遺伝子(例えば、Kif−1、−2、−4及び−5);Myc遺伝子(例えば、c−Myc、L−Myc及びN−Myc);nanog;及びLin28。多能性の遺伝子又は蛋白質を導入した後、先祖細胞を培養することができる。多能性のマーカーを発現する細胞は、単離及び/又は精製を行い、iPS細胞の集団を生成することができる。iPS細胞を製造するための技術は周知である(Yamanaka et al Nature 2007; 448:313−7; Yamanaka 6 2007 Jun 7;1(1):39−49. Kim et al Nature. 2008 Jul 31;454(7204):646−50; Takahashi Cell. 2007 Nov 30;131(5):861−72. Park et al Nature. 2008 Jan 10;451(7175):141−6; Kimet al Cell Stem Cell. 2009 Jun 5;4(6):472−6; Vallier, L., et al. Stem Cells, 2009. 9999(999A): p. N/A.)。
【0009】
iPS細胞は、以下の多能性に関連したマーカーを1種以上発現することができる:Oct4、Sox2、アルカリ・ホスファターゼ、SSEA−3、nanog、SSEA−4、Tra−1−60、KLF−4及びc−Myc。
【0010】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法で使用されるiPS細胞は、1つの個体から得られた健常な細胞(例えば線維芽細胞)(即ち、病気に関連した表現型又は遺伝子型を持たない細胞)に由来する。
【0011】
健常細胞に由来するiPS細胞は、本明細書に記載の通り使用して、正常な(即ち、病気に関連しない)表現型を示す肝細胞を生成することができる。
【0012】
健常細胞は、正常な肝臓機能をもつ個体から得ることができる。或いは、健常細胞は、損傷した又は機能不全の肝臓細胞を有する患者から得ることができる(例えば、肝臓の損傷又は病気を有する患者(例えば、肝炎(例えば、A型、B型、C型、D型、E型、G型又はK型の肝炎)、肝硬変、肝臓細胞の癌、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤誘発肝臓損傷、アルコール性肝疾患又は自己免疫性の肝疾患))。
【0013】
幾つかの実施形態において、iPS細胞は、固有の遺伝的背景を有する個体から得られた健常細胞に由来してもよい。例えば、iPS細胞は、肝臓病を患った個体、肝臓病を患うリスクの高い個体、及び/又は 肝臓病を患うリスクの低い個体からの健常細胞から生成することができる。本明細書に記載に従って固有の遺伝的背景を有する個体から生成された肝細胞は、肝臓病のメカニズムの研究、及び治療用ターゲットの同定に有用となる可能性がある。
【0014】
正常な(即ち、病気に関連しない)表現型を示す肝細胞は、後述するように、肝臓の損傷又は病気を有する患者を治療する際に有用となる可能性がある。例えば、iPS細胞の由来元となる健常細胞の供給元となった患者の治療の際に有用となる可能性がある。
【0015】
他の実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるiPS細胞は、1つの個体から得た細胞であって病気に関連した細胞に由来する。即ち、細胞は、肝臓病又は肝臓の機能不全に関連した表現型又は遺伝子型を示す。そして、該表現型又は遺伝子型としては、例えば、肝臓の遺伝的代謝疾患(IMD)があり、該疾患の例としては以下の物が挙げられる:α1アンチトリプシン欠損、糖原病(例えば、 糖原病1a型)、家族性高コレステロール血症、遺伝性高チロシン血症、クリグラー・ナジャール症候群、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損、又は第IX因子欠損若しくは他の血友病、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、Dubin−Johnson症候群、家族性アミロイドーシス、又はレフサム病。前記遺伝子型(例えば遺伝的変異又は遺伝的欠陥)を有する任意の細胞は、IMD又は他の肝臓病と関連し、また、線維芽細胞のサンプル(例えば、皮膚の線維芽細胞)から適宜得ることができるが、こうした任意の細胞を使用することができる。
【0016】
ある個体から得た細胞であって、病気に関連した細胞に由来するiPS細胞(即ち、病気特有のiPS細胞:ds−iPS又はdhiPS)は、本明細書に記載の通り使用して、肝臓病に関連した表現型(例えばIMD表現型)を示す肝細胞を生成することができる。通常は、前記肝細胞は、肝臓病に関連した遺伝的変異又は遺伝的欠陥を有するであろう。こうした細胞は、上述したように、肝臓の損傷又は病気を有する患者の治療、又は肝臓病のモデリング及びスクリーニングにおいて有用となる可能性がある。
【0017】
他の実施形態では、肝臓病を有する個体から得た、病気に関連した細胞に由来するiPS細胞(即ち、病気特有のiPS細胞:ds−iPS又はdhiPS)は、肝臓病に関連した遺伝的変異又は遺伝的欠陥を有する(例えば、α1−アンチトリプシンにおけるGlu342Lysの変異であって、A1AT欠損の原因となる変異)。前記変異及び欠損は、分化する前に、iPS細胞内で、修復することができる。例えば、病気に関連した遺伝的な変異又は損傷を含むds−iPS細胞内のヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列に置換することができる。遺伝的変異及び欠損を修復するための適切な方法は周知であり、本明細書以外の所でも記載されている。こうした修復された(corrected)iPS細胞(c−iPSC)は、上述したように、肝臓の損傷又は病気を有する患者の治療において有用となる可能性がある。
【0018】
肝臓の病気については上述した通りであり、遺伝的代謝異常(IMD)を含めることができる。IMDは、ER内での蛋白質のミスフォールディングに関連したIMDであってもよい。例えば、以下の病気が挙げられる:α1−アンチトリプシン欠損;肝臓に関連した受容体疾患(receptoropathy)(例えば、家族性高コレステロール血症(FH));代謝異常(例えば、糖原病、例えば、GSD1a)。
【0019】
肝臓病は、後期に発症する異常、又は成熟成人肝臓細胞に関連した異常であってもよい。
【0020】
製造後、iPS細胞の集団は、従来の技術を用いて培養又は維持をすることができる(Vallier, L. et al Dev. Biol. 275, 403−421 (2004), Cowan, C.A. et al. N. Engl. J. Med. 350, 1353−1356 (2004), Joannides, A. et al. Stem Cells 24, 230−235 (2006) Klimanskaya, I. et al. Lancet 365, 1636−1641 (2005), Ludwig, T.E. et al. Nat. Biotechnol. 24, 185−187 (2006))。例えば、本発明の方法での使用に適したiPS細胞(特にヒトiPS細胞)は、適宜以下の条件で培養することができる:培養ディッシュ内での支持細胞(例えば、放射状マウス胚線維芽細胞(MEF))の層の上で、培地としては、例えば、Knockout(KS)培地(添加物として、4ng/mlのFGF2)で、そして、適切な密度(例えば、10
5〜10
6細胞/60mmディッシュ)で培養することができる。或いは、条件付の供給物を有する若しくは所定の培地とともに適切な基質の上で培養することができる。
【0021】
好ましくは、継代数が少ないiPS細胞が本明細書に記載の方法において用いられる。継代数が少ないiPS細胞は、培養した細胞の継代数が40以下、好ましくは35以下、又は30以下である。本発明の方法において使用するためのiPS細胞は、酵素的手段又は機械的手段で継代することができる。
【0022】
iPS細胞に適した培養培地には、以下の物が挙げられる:
4ng/mlのFGF2を添加したKnockout(KS)培地;
Knockoutダルベッコ改変イーグル培地(KO−DMEM)(添加物として、 20%の血清置換物、1%の非必須アミノ酸、1mMのL−グルタミン、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、及び4ng/ml〜10ng/mlのヒトFGF2); 並びに
DMEM/F12(添加物として、20%のKnockout血清置換物(KSR)、 6ng/mlのFGF2(PeproTech)、1mMのL−Gln、100μMの非必須アミノ酸、100μMの2−メルカプトエタノール、50U/mlのペニシリン及び50mg/mlのストレプトマイシン)。
【0023】
培養中、細胞は、コラゲナーゼを含まない試薬(例えば、Accutase(商標)(BioWest))を用いて回収することが好ましい。
【0024】
本明細書に記載の方法に従って、iPS細胞を肝細胞に分化させるには、3つの段階を経る。第1の段階では、iPS細胞の集団は、前方胚体内胚葉(ADE)細胞の集団へと分化する。第2の段階では、前記ADE細胞は、肝臓性前駆細胞に分化する。そして、随意的な第3の段階では、前記肝臓性前駆細胞は、肝細胞に分化する。これらの方法で使用される全ての培地は、所定の化学培地であり、好ましくはヒトに適応化した培地である。
【0025】
ADE細胞への分化を誘導するために、前記iPS細胞の集団は、内胚葉誘導培地中で培養される。
【0026】
前記内胚葉誘導培地は、所定の化学培地(CDM)であり、以下の性質を持つ:
(i)SMAD1、SMAD2、SMAD3、及びSMAD5が介するシグナリング経路を刺激する;
(ii)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)及びグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β(GSK3β)を阻害する;及び
(iii)線維芽細胞成長因子(FGF)活性を有する。
【0027】
所定の化学培地は、特定の成分のみ、好ましくは既知の化学構造の成分のみを含有する、細胞培養用のための、栄養溶液である。好ましくは、前記所定の化学培地は、ヒトに適応化した培地である。ヒトに適応化した所定の化学培地は、ヒト以外の動物に由来する成分又は添加物(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、マウス支持細胞)を含まない。
【0028】
前記内胚葉誘導培地には、所定の化学的基礎培地が含まれる。
【0029】
適切な所定の化学的基礎培地では、IMDM及び/又はF12を含み、添加物としては、インシュリンを、例えば0.5μg/ml〜70μg/ml、トランスフェリンを、例えば、濃度1.5μg/ml〜150μg/ml、抗酸化剤(例えば、1−チオールグリセロール)を、例えば、濃度45μM〜4.5mM、及び脂質が挙げられる。
【0030】
適切な所定の化学的基礎培地としては、Johansson and Wiles CDM (Johansson and Wiles (1995) Mol Cell Biol 15, 141−151)が挙げられ、添加物としては、ポリビニルアルコール、インシュリン、トランスフェリン及び所定の脂質を添加できる。Johansson and Wiles CDMは、以下の物から構成される:50%のIMDM(Gibco)、これに加えて、50%のF12 NUT−MIX(Gibco);7μg/mlのインシュリン;15μg/mlのトランスフェリン;1mg/mlのポリビニルアルコール(PVA);1%の所定の化学的脂質濃縮物(Invitrogen);、及び450μMの1−チオールグリセロール。
【0031】
他の適切な所定の化学的基礎培地については公知である。
【0032】
ウシ又はヒトの血清アルブミンの使用を避けるために、所定の化学的基礎培地は、内胚葉誘導培地の中に、ポリビニルアルコール(PVA)を0.5mg/ml〜50mg/mlの濃度で添加することができる。ポリビニルアルコールを添加した所定の化学的基礎培地は、慣用的にCDM−PVAと呼ばれる。
【0033】
内胚葉誘導培地の中で、CDM−PVAは、追加因子、好ましくは組み換え型ヒト因子を添加することができ、該培地は、iPS細胞を誘導し、前方胚体内胚葉(ADE)細胞へ分化させる。
【0034】
例えば、CDM−PVAは、線維芽細胞成長因子を添加する。
【0035】
線維芽細胞成長因子は、蛋白質の因子であり、線維芽細胞成長因子の受容体(FGFR)へ結合することによって、細胞の成長、増殖、及び細胞の分化を刺激する。適切な線維芽細胞成長因子は、FGFファミリーの任意のメンバーが含まれる。例えば、FGF1〜FGF14及びFGF15〜FGF23のうちの任意の1つが含まれる。
【0036】
前記線維芽細胞成長因子は、以下の物であることが好ましい:FGF2(NCBI GeneID: 2247, 核酸配列 NM_002006.3 GI: 41352694, アミノ酸配列 NP_001997.4 GI: 41352695);FGF7(ケラチノサイト成長因子(又はKGF)としても知られている, NCBI GeneID: 2247, 核酸配列 NM_002006.3 GI: 41352694, アミノ酸配列 NP_001997.4 GI: 41352695);、又はFGF10(NCBI GeneID: 2247, 核酸配列 NM_002006.3 GI: 41352694, アミノ酸配列 NP_001997.4 GI: 41352695)。
【0037】
最も好ましくは、線維芽細胞成長因子は、FGF2である(Amit, M., et al. Developmental Biology 227:271−278 (2000))。
【0038】
線維芽細胞成長因子(例えば、FGF2、FGF7及びFGF10)は、ルーチンの組み換え型技術を用いて生成することができ、又は販売元から入手できる(例えば、 R&D Systems, ミネアポリス, MN; Stemgent Inc, USA)。
【0039】
便宜上、内胚葉誘導培地中のFGF濃度は、1〜500ng/mlであってもよく、好ましくは約40ng/mlであってもよい。
【0040】
CDM−PVAは、更に第一のTGFβリガンドを添加してもよく、該リガンドは、iPS細胞中において、SMAD2及びSMAD3を介した細胞内シグナリング経路を刺激する。
【0041】
TGFβリガンドはTGFβスーパーファミリーのペプチドである。TGFβ スーパーファミリーのメンバーは、特徴的な構造を有しており、周知である。
【0042】
第一のTGFβリガンドは、アクチビン(Activin)又はTGFβであってもよい。
【0043】
アクチビン(アクチビンA: NCBI GeneID: 3624 核酸参照配列 NM_002192.2 GI: 62953137, アミノ酸参照配列 NP_002183.1 GI: 4504699)は、二量体性ポリペプチドであり、アクチビン/Nodal経路の刺激を介して、細胞へのある範囲の効果を及ぼす(Vallier et al., Cell Science 118:4495−4509 (2005))。アクチビンは販売元から容易に入手できる(例えば、 Stemgent Inc. MA USA)。便宜上、培地中のアクチビン濃度は、10〜1000ng/mlの範囲であってもよく、好ましくは約100ng/mlであってもよい。
【0044】
TGFβ(NCBI GeneID: 7040 核酸参照配列 NM_000660.4 GI: 260655621, アミノ酸参照配列 NP_000651.3 GI: 63025222)は、ホモダイマーのポリペプチドであり、増殖及び分化を制御する(Watabe, T. et al (2009).Cell Res. 19:103−115)。組み換え型ヒトTGFβは販売元から容易にから入手できる(例えば、 Stemgent Inc. MA USA)。便宜上、培地中のTGFβ濃度は、10〜1000ng/mlであっても良く、好ましくは約100ng/mlであっても良い。
【0045】
CDM−PVAは、更に第二のTGFβリガンドを添加することができ、iPS細胞中において、SMAD1、SMAD5及びSMAD9を介した細胞内シグナリング経路を刺激する。
【0046】
第二のTGFβリガンドは、骨形成蛋白質(BMP)であってもよい。骨形成蛋白質は、骨形成蛋白質受容体(BMPR)に結合して、SMAD1、SMAD5及びSMAD9を介した経路を通して、細胞内シグナリングを刺激する。適切な骨形成蛋白質は、BMPファミリーの任意のメンバー(例えば、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6又はBMP7)が挙げられる。好ましくは、第二のTGFβリガンドは以下の通りである:BMP2(NCBI GeneID: 650, 核酸配列 NM_001200.2 GI: 80861484; アミノ酸配列 NP_001191.1 GI: 4557369);、又は、BMP4(NCBI GeneID: 652, 核酸配列 NM_001202.3 GI: 157276592; アミノ酸配列 NP_001193.2 GI: 157276593)。
【0047】
骨形成蛋白質は、ルーチンの組み換え技術を用いて生成することができ、又は販売元から入手することができる(例えば、R&D, ミネアポリス, USA, Stemgent Inc, USA)。
【0048】
便宜上、骨形成蛋白質の培地中の濃度(例えば、BMP2又はBMP4)は、1〜500ng/mlであってもよく、好ましくは約10ng/mlであってもよい。
【0049】
したがって、内胚葉誘導培地には、所定の化学的基礎培地を含むことができ、該培地には、ポリビニルアルコール、FGF、第一の及び第二のTGFβリガンド、PI3K阻害剤、並びにGSK3β阻害剤を添加することができる。
【0050】
PI3K阻害剤は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(例えば、ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート 3−キナーゼ(EC2.7.1.153))の活性を阻害する。
【0051】
適切なPI3K阻害剤は、以下の物が含まれる:ウォルトマンニン;LY301497(17−b−ヒドロキシウォルトマンニン);LY294002(2−モルホリン−4−イル−8−フェニルクロメン−4−オン: Maclean et al (2007) Stem Cells 25 29−38);CLB1309(KN309:(±)−2−({1−[7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル]エチル}アミノ)安息香酸);PX−866((1E,4S,4aR,5R,6aS,9aR)− 5−(アセチルオキシ)−1−[(ジ−2−プロペン−1−イルアミノ)メチレン]−4,4a,5,6,6a,8,9,9a−オクタヒドロ−11−ヒドロキシ−4−(メトキシメチル)−4a,6a−ジメチルシクロペンタ [5,6]ナフト[1,2−c]ピラン−2,7,10(1H)−トリオン);IC87114(キノロン・ピロロピリミジン; #6
図17); GDC−0941 (#3
図17; 2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−[[4−(メチルスルホニル)−1−ピペラジニル]メチル]−4−(4−モルホリニル)−チエノ[3,2− d]ピリミジン); TGX−221 (7−メチル−2−(4−モルホリニル)−9−[1−(フェニルアミノ)エチル]−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン), ケルセチン; BEZ235 (#4
図17); XL147 (#1
図17); Xl765 (#2
図17); PX−866 (#5
図17); ZSTK474 (2−(2−ジフルオロメチルベンジミダゾール−1−イル)4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン); 及びSF1126 (2−[2−メトキシエチルアミノ]−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)。他のPI3K阻害剤は、当分野で入手可能である。
【0052】
適切なPI3K阻害剤は、販売元から入手可能である(例えば、 Calbiochem CA USA)。
【0053】
例えば、内胚葉誘導培地は、1〜100μMのPI3K阻害剤(例えば、LY294002)を含むことができ、好ましくは約10μM含むことができる。
【0054】
GSK3β阻害剤は、グリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β(Gene ID 2932: EC2.7.11.26)の活性を阻害する。適切な阻害剤には、以下の物が含まれる:CHIR99021(6−((2−((4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)ピリミジン−2−イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリル; Ring D. B. et al., Diabetes, 52:588−595 (2003))、alsterpaullone、kenpaullone、SB216763 (3−(2,4−ジクロロフェニル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン)、及びSB415286 (3−[(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ]−4−(2−ニトロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン)。
【0055】
適切なグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β阻害剤は、販売元から入手可能である(例えば、Stemgent Inc. MA USA; Cayman Chemical Co. MI USA)。例えば、内胚葉誘導培地は、0.3〜30μMのGSK3β阻害剤(例えば、CHIR99021)を含むことができ、好ましくは約3μM含むことができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、内胚葉誘導培地は、CDM−PVA基礎培地から構成されてもよく、該培地は、アクチビン、FGF2、BMP−4、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤(好ましくはLY294002)、及びグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β阻害剤(好ましくはCHIR99021)を添加してもよい。
【0057】
好ましくは、内胚葉誘導培地中のアクチビン、FGF2及びBMP−4は、全て組み換え型ヒト蛋白質である。
【0058】
ほ乳動物の細胞培養については周知である(例えば、以下の文献を参照されたい:Basic Cell Culture Protocols, C. Helgason, Humana Press Inc. U.S. (15 Oct 2004) ISBN: 1588295451; Human Cell Culture Protocols (Methods in Molecular Medicine S.) Humana Press Inc., U.S. (9 Dec 2004) ISBN: 1588292223; Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, R. Freshney, John Wiley & Sons Inc (2 Aug 2005) ISBN: 0471453293, Ho WY et al J Immunol Methods. (2006) 310:40−52, Handbook of Stem Cells (ed. R. Lanza) ISBN: 0124366430)。これらの培地及び成分は、販売元から入手可能である(例えば、Gibco、Roche、Sigma、Europa bioproducts、R&D systems)。標準的なほ乳動物の細胞培養条件を用いることができる。例えば、37℃、21%酸素、5%二酸化炭素といった条件を用いることができる。培地は、2日ごとに交換することが好ましく、細胞は、重力によって設置されることが好ましい。
【0059】
細胞は以下の条件で培養することが好ましい:単層で、支持細胞が存在せず、血清(好ましくはヒト血清)又は細胞外マトリックス蛋白質(例えば、フィブロネクチン、ラミニン、又はコラーゲン)で被覆(コーティング)された基質上で培養。適切な培養技術は周知である。
【0060】
好ましい実施形態において、iPS細胞を前方胚体内胚葉(ADE)細胞へと分化させる工程は、3つの別々のステップで行うことができる。例えば、iPS細胞の集団をADE細胞へ分化させる工程は以下のステップを含むことができる:
(a)iPSC(iPS細胞)の集団を内胚葉誘導培地中で培養するステップであって、例えば12〜36時間、好ましくは約24時間培養するステップ;
(b)更に、前記集団を、グリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ3β阻害剤が存在しない内胚葉誘導培地中で培養するステップであって、例えば12〜36時間、好ましくは約24時間培養するステップ;並びに
(c)更に、前記集団を、ADE誘導培地中で培養するステップであって、該培地は、SMAD2及びSMAD3シグナリング経路を刺激し、線維芽細胞成長因子活性を有し、例えば12〜36時間、好ましくは約24時間培養し、前方胚体内胚葉(ADE)細胞の集団を生成するステップ。
【0061】
前記ADE誘導培地は、所定の化学培地であって、所定の化学的基礎培地が含まれる。適切な所定の化学的基礎培地には、RPMI−1640が含まれる。
【0062】
RPMI−1640(Moore, G.E. and Woods L.K., (1976) Tissue Culture Association Manual. 3, 503−508)は、無機塩、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤及び緩衝剤(バッファ)を含有する無血清基礎培地である。RPMI−1640は周知であり、販売元から容易に入手できる(例えば、Sigma−Aldrich MI USA)。RPMI−1640培地の成分を表2に示す。
【0063】
所定の化学的基礎培地は、無血清培地添加物を添加することができる。適切な無血清培地添加物には、B27(Brewer et al J. Neurosci Res 35 567−576 (1993))及びNS21(Chen et al J. Neurosci Meths (2008) 171 239−247)が含まれる。無血清培地添加物(例えば、B27及びN21)は周知であり、幅広く市場で入手可能である(例えば、Invitrogen; Sigma Aldrich Inc)。
【0064】
また、ADE誘導培地においては、所定の化学的基礎培地に、追加的因子、好ましくは組み換え型ヒト因子を添加して、前方胚体内胚葉(ADE)細胞の集団を生成する。例えば、所定の化学的基礎培地には、線維芽細胞成長因子(FGF)及び第一のTGFβリガンドを添加することができ、該リガンドは、SMAD2及びSMAD3を介する細胞内シグナリング経路を刺激する。FGF及び第一のTGFβリガンドについては、これまでの記載の所で更に詳しく述べたとおりである。
【0065】
幾つかの実施形態において、ADE誘導培地は、所定の化学的基礎培地を含むことができ、該培地には以下の添加物を添加することができる:1〜1000ng/mlの第一のTGFβリガンド(例えば、アクチビン、好ましくは100ng/ml)、及び4〜400ng/mlのFGF(例えば、FGF2、好ましくは40ng/mlのFGF)。所定の化学的基礎培地は、RPMI−1640であってもよく、該培地には、B27又はNS21培地添加物を添加してもよい。
【0066】
好ましくは、iPS細胞の集団は、2〜4日間、最も好ましくは3日間培養して、ADE細胞の集団を生成する。
【0067】
前方胚体内胚葉(ADE)細胞は、内胚葉マーカーを発現することができ、例えば、Sox17、foxA2、GSC、Mixl1、Lhx1、CXCR4、GATA6、Eomes及びHexを発現することができる。
【0068】
前方胚体内胚葉(ADE)細胞は、多能性のマーカー、又は内胚葉の若しくは中胚葉の系統と関連するマーカーの発現が欠損してもよい。例えば、ADE細胞は、以下のマーカを、検出可能なレベルで、1種以上、好ましくは全て発現しなくてもよい:Oct4、Sox2、アルカリ・ホスファターゼ、SSEA−3、nanog、SSEA−4、Tra−1−60及びKLF−4。
【0069】
1種以上のADE細胞マーカー、及び/又は1種以上の多能性細胞マーカーの発現は、分化している細胞集団中でモニター及び/又は検出することができる。これにより前記細胞集団に対してどの程度分化又は内胚葉誘導が成されているかを決定することができる。
【0070】
分化した後、ADE細胞の集団は、実質的に他の細胞種を含まなくても良い。例えば、培地で培養した後、前記集団は、ADE細胞を85%以上、90%以上、95%以上又は98%以上含むことができる。好ましくは、ADE細胞の集団は、他の細胞種の存在が十分排除されており、精製を必要としない。要すれば、ADE細胞の集団は、任意の便宜的な技術(例えば、FACS)によって精製することができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、ADE細胞の集団は、肝臓性の系統へ更に分化させる前に増殖させることができる。ADE細胞は、任意の便宜的な技術によって増殖させることができ、例えば、上述したように、FGFを添加した培地(例えば、ADE誘導培地)内で増殖させることができる。
【0072】
肝臓性前駆細胞への分化を誘導するために、ADE細胞の集団は、肝臓性誘導培地中で培養する。前記肝臓性誘導培地は、所定の化学培地(CDM)であり、該培地は、SMAD2及びSMAD3を介するシグナリング経路を刺激し、肝臓性の系統への分化を誘導する。
【0073】
肝臓性誘導培地は、所定の化学的基礎培地が含まれ、該培地には、1種以上の追加的因子、好ましくは組み換え型ヒト因子が添加され、ADE細胞が肝臓性前駆細胞に分化することを誘導する。
【0074】
適切な所定の化学的基礎培地(CDM)には、上述したRPMI−1640が含まれる。前記CDMは、第一のTGFβリガンド(例えば、上述したように、TGFβ又はアクチビン)を添加することができ、該リガンドは、SMAD2及びSMAD3を介したシグナリング経路を刺激することができる。前記培地には、5〜500ng/mlの第一のTGFβリガンド(例えば、アクチビン、好ましくは約50ng/ml)を添加することが好ましい。
【0075】
ADE細胞の集団は、4〜6日間、好ましくは約5日間培養することができ、肝臓性前駆細胞の集団を生成することができる。
【0076】
分化している細胞の集団において、1種以上の肝臓性前駆細胞マーカー及び/又は1種以上のADE細胞マーカーの発現を、モニター及び/又は検出を行うことができる。これにより、培養時の分化の度合い(程度)を測定することが可能となる。
【0077】
肝臓性前駆細胞は、肝細胞、又は胆管細胞(cholangiocytes)のいずれかへ分化する能力があり、両方の系統のマーカーを発現する。肝臓性前駆細胞は、以下の1種以上を発現することができる:α−フェトプロテイン(AFP)、サイトケラチン18(CK18)、サイトケラチン19(CK19)、 肝細胞核因子4(HNF4)、及び肝細胞核因子6(HNF6)。1種以上のこれらのマーカーが検出されれば、それは、肝臓性の系統へ分化したことを示す。
【0078】
肝臓性前駆細胞の集団は、実質的に他の細胞種を含まなくても良い。例えば、前記集団は、培地中で培養した後、80%以上、85%以上、90%以上又は95%以上の肝臓性前駆細胞を含むことができる。
【0079】
好ましくは、肝臓性前駆細胞の集団は、他の細胞種の存在が十分排除されており、精製を必要としない。要すれば、前記肝臓性前駆細胞の集団は、任意の便宜的な技術によって精製することができる。
【0080】
上述したように倍地中で培養した後、肝臓性前駆細胞の集団は、培地から単離及び/又は除去することができる。そのための適切な技術については、周知である。
【0081】
肝臓性前駆細胞は、従来の技術を用いて、増殖させたり、培養中で維持したり、保存したり(例えば凍結保存)することができる。あるいは、肝臓性前駆細胞は、本明細書に記載したように、治療又は他の応用において使用することができる。
【0082】
例えば、肝臓性前駆細胞は、後述するように細胞ベースの治療法において使用することができる。
【0083】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、肝臓性前駆細胞を肝細胞に分化するように誘導するステップを含むことができる。分化を誘導するために、肝臓性前駆細胞の集団は、肝臓性成熟培地中で培養する。該培地は、所定の化学的基礎培地(CDM)から構成され、追加的因子(好ましくは組み換え型ヒト因子)が添加されている。培養の結果、肝臓性前駆細胞は、誘導されて、肝細胞(hepatic progenitor cells)へと成熟する。
【0084】
適切な所定の化学的基礎培地(CDM)には、CMRL及びHepatozyme SFMが含まれる(Gibco(商標);Invitrogen Inc)。
【0085】
CMRL基礎培地は、無血清基礎培地であり、該培地は周知であり、販売元から容易に入手できる(例えば、 Cat No: 11530037 Invitrogen; Product #C0422 Sigma)。CMRL培地の組成は、表3に示す。
【0086】
Hepatozyme SFMは、無血清基礎培地であり、該培地は販売元から入手できる(例えば、 Cat No 17705; Invitrogen)。
【0087】
所定の化学培地(CDM)培地は、1種以上の因子を添加してもよく、該因子とは、肝芽細胞又は肝臓性前駆細胞から肝細胞への分化又は成熟を誘導する因子である。例えば、基礎培地には、肝細胞成長因子(HGF)又は上皮成長因子(EGF)を添加することができる。
【0088】
肝細胞成長因子(HGF)(NCBI GeneID: 3082, 核酸配列 NM_000601.4 GI: 58533168, アミノ酸配列 NP_000592.3 GI: 33859835)は、S1ペプチダーゼのプラスミノーゲン・サブファミリーのメンバーである間充織由来の分裂促進因子である。HGFは、ルーチンの組み換え技術を用いて生成することができ、又は販売元から入手することができる(例えば、 PeproTech Inc NJ USA)。便宜上、培地中のHGFの濃度は、2〜200μg/mlであってもよく、好ましくは約20μg/mlであってもよい。
【0089】
上皮成長因子(EGF)(NCBI GeneID: 1950, 核酸配列 NM_001178130.1 GI: 296011012 アミノ酸配列 NP_001171601.1 GI: 296011013; Reynolds, B. A. et al. J. Neurosci. 12: 4565−4574 (1992))は、成長因子であり、該因子の受容体(EGFR)への結合を通して増殖及び分化を制御することができる。EGFは、ルーチンの組み換え技術を用いて生成することができ、又は販売元から入手することができる(例えば、 PeproTech Inc NJ USA, Stemgent Inc USA)。便宜上、培地中のEGFの濃度は、2〜200μg/mlであってもよく、好ましくは約20μg/mlであってもよい。
【0090】
また、所定の化学培地(CDM)培地は、1種以上の因子を添加してもよく、該因子は、肝細胞の分化及び成熟を誘導し、例えば、オンコスタチン−M等が挙げられる。オンコスタチン−M(NCBI GeneID: 5008, 核酸配列 NM_020530.3 GI: 28178862, アミノ酸配列 NP_065391.1 GI: 10092621)は、IL−6ファミリーのサイトカインである。オンコスタチン−Mは、ルーチンの組み換え技術を用いて生成することができ、又は販売元から入手することができる(例えば、 R&D systems, MN USA; Abcam Ltd, UK)。便宜上、培地中のオンコスタチン−Mの濃度は、1〜100μg/mlであってもよく、好ましくは約10μg/mlであってもよい。
【0091】
肝臓性前駆細胞の集団は、10〜40日間、好ましくは約25日間培養することができ、肝細胞の集団を生成することができる。
【0092】
肝細胞は、以下の1種以上を発現することができる:アルブミン(Albumin)、α1−アンチトリプシン(AAT)、シトクロームP450(CYP)(例えば、Cyp3A4、CYP1A2、CYP2E1、CYP2C19、CYP2C9及びCYP2D6)、第IX因子、アポリポプロテインA2(apopoliprotein)、CEBPα及びトランスチレチン。
【0093】
幾つかの実施形態において、肝細胞は、1種以上の前駆細胞マーカー(例えば、AFP、CK18及びSox17)を発現しなくともよい。
【0094】
前記細胞集団内で、1種以上の肝臓性前駆細胞マーカー及び/又は1種以上の肝細胞マーカーの発現は、モニター及び/又は検出を行うことができる。例えば、肝細胞の集団による、アルブミン及び/又はα1−アンチトリプシンの発現又は製造を測定することができる。これにより、培養集団中での分化の度合いを測定又は及び/又はモニターすることが可能となる。細胞マーカーの発現は、任意の適切な技術によって、測定することができ、該技術としては、免疫細胞化学、免疫蛍光、RT−PCR、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、及び酵素的分析が含まれる。
【0095】
集団において、1種以上の肝細胞の機能を実践する細胞の能力を、モニター及び/又は測定することができる。例えば、以下の1種以上を行う細胞の能力をモニター及び/又は測定することができる:解毒、グリコーゲン貯蓄、AAT又はアルブミンの分泌、胆汁の製造、トロンボポイエチンの製造、アンギオテンシノゲンの製造、アンモニアから尿素への変換(尿素サイクル)、コレステロール合成、グリコーゲン分解、グリコーゲン合成、及び脂質生成。
【0096】
肝細胞の集団は実質的に他の細胞種を含まなくても良い。例えば、前記集団は、培地中で培養した後、肝細胞を、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上含むことができる。集団中の肝細胞の存在又は割合は、上述したように、アルブミン及び/又はα1−アンチトリプシンの発現を通して測定することができる。
【0097】
好ましくは、肝細胞の集団は、他の細胞種の存在が十分排除されており、精製を必要としない。要すれば、肝細胞の集団は、FACSを含む任意の便宜的な技術によって精製することができる。
【0098】
本明細書に記載の方法において任意の段階で生成されたADE細胞、肝臓性前駆細胞、及び/又は肝細胞は、単離及び/又は精製することができる。細胞は、当業者に知られた任意の技術を用いて、集団中の他の細胞種から分離することができる。該技術としては、後述するが以下に基づいたものが含まれる:抗体による細胞外エピトープの認識、及び磁気ビーズ又は蛍光活性化セルソーティング(FACS、細胞外領域の特徴的マーカーに対する抗体を使用することを含む)。
【0099】
本明細書に記載の方法で生成された肝細胞の集団は、標準的なほ乳動物の細胞培養技術を用いて、増殖、培養、又は維持することができる。
【0100】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法で生成された肝細胞の集団は、保存することができ、例えば、凍結乾燥及び/又は凍結保存などがある。
【0101】
肝細胞の集団は、他の試薬と混合してもよく、例えば、緩衝剤、キャリア、希釈剤、保存薬(防腐剤)又は医薬的に適用可能な賦形剤が挙げられる。適切な試薬については、後で更に詳述する。
【0102】
上述したように、病気特有のiPS細胞を用いて肝細胞を生成することができ、生成された細胞は、肝臓病に関連した表現型(例えば、IMD)を示す。病気に関連した表現型を有する肝細胞は、病気に関連した1種以上の病理を示すことができる。
【0103】
本明細書に記載の方法は、肝細胞の集団において、1種以上の病理を検出又は測定するステップを含むことができる。
【0104】
病理には以下の1種以上の事象を含めることができる:異常な成長、アポトーシスの上昇、異常な遺伝子発現;グルカゴン刺激に対する異常な応答;蛋白質の凝集又は重合化(ポリマー化);ER内での蛋白質封じ込め;コレステロール取り込み;脂質及び/又はグリコーゲン蓄積;乳酸の生成;、及び前記肝細胞の集団における上述した1種以上の肝細胞の機能の欠陥。
【0105】
病理を有する肝細胞を生成する方法は以下のステップを含むことができる:
上述したように、ds−iPS細胞の集団をインビトロで肝臓へ分化することを誘導するステップ。
これにより、病理を有する肝細胞の集団を生成するステップ。
【0106】
ds−iPS細胞からの分化を開始した後、ds−iPS細胞由来の肝細胞は、10日、20日、40日、又は複数日以内に病理を示すことができる。
【0107】
一旦生成されると、病気の表現型(例えば、IMD表現型)を有する肝細胞は、例えば、スクリーニングにおいて使用するために、培養、増殖、及び維持することができる。上述したように、病気の表現型を有する肝細胞を維持する方法は、次のステップを含むことができる:病気の表現型有し、且つds−iPS細胞に由来する肝細胞の集団を培養するステップ。
【0108】
本発明の別態様は、上述した方法によって生成され、そして単離された肝細胞又は肝臓性前駆細胞の集団を提供することである。
【0109】
前記集団は、肝細胞又は肝臓性前駆細胞を80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上含むことができる。
【0110】
本明細書に記載の方法で生成された肝細胞は、成熟肝細胞に特有の1種以上の機能、又は機能的特徴を示すことができる。例えば、肝細胞は、グリコーゲン及びLDL、分泌AAT及び/又はアルブミンを蓄えることができ、CytP450経路を介して薬剤を代謝することができ、並びに、肝細胞特有のApoAIIプロモーターを制御してGFP蛋白質を発現することができる。肝細胞は、胆汁、トロンボポイエチン、アンギオテンシノゲン、尿素及びコレステロールを1種以上生成することができ;、並びに、グリコーゲン分解、グリコーゲン合成及び脂質生成のうち1種以上を行うことができる。
【0111】
幾つかの実施形態において、肝細胞は、成熟した成人肝細胞に完全に分化しなくともよい。そして、肝細胞は、1種以上の前駆細胞マーカー(例えば、AFP)を発現し続けてもよく、減少したレベルでALBを発現してもよく、及び/又は成熟成人肝細胞と比べると低いCyp3A4活性を示してもよい。
【0112】
肝細胞は、以下の特徴を1種以上随時示すことができる:二核性;グリコーゲン貯蔵;頂部の微小突起(apical microprotrusions);粗面小胞体及び滑面小胞体(ER)、並びに顕著な(prominent)ゴルジ体。
【0113】
本明細書に記載の方法で生成された肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、iPS細胞を生成するために使用した外因性の再プログラミング因子を発現しない(レトロウイルス性の転移遺伝子として、細胞内に依然として存在している可能性があるが)。
【0114】
肝細胞又は肝臓性前駆細胞の集団は、ヒト又は動物の身体の治療(例えば、損傷した又は機能不全の肝臓性組織を有する患者の治療)の方法において使用することができる。また、前記集団は、損傷した又は機能不全の肝臓性組織の治療において使用するための医薬の製造において使用することができる。損傷した又は機能不全の肝臓性組織を有する個体は、以下の症状を有してもよい:肝炎(例えば、A型、B型、C型、D型、E型、G型又はK型の肝炎)、肝硬変、肝臓細胞の癌、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤誘発肝臓損傷、アルコール性肝疾患、自己免疫性の肝疾患若しくは遺伝的代謝異常(例えば、α1アンチトリプシン欠損)、糖原病(例えば糖原病1a型)、家族性高コレステロール血症、遺伝性高チロシン血症、クリグラー・ナジャール症候群、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損、又は第IX因子欠損若しくは他の血友病、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、Dubin−Johnson症候群、家族性アミロイドーシス、及びレフサム病。治療への応用を目的として、肝細胞は、臨床のグレードの肝細胞であることが好ましい。
【0115】
損傷した又は機能不全の肝臓性組織を有する患者を治療する方法は以下のステップを含むことができる:
上述したように生成された肝細胞又は肝臓性前駆細胞の集団を、該集団を必要とする個体に投与するステップ。
【0116】
前記肝細胞の集団は、移植することもでき、注入することもでき、或いは、個体の臓器に投与することもできる。これらのための適切な技術は周知である。
【0117】
肝細胞の集団は、前記個体から得た細胞に由来するiPS細胞から生成することができる。幾つかの実施形態において、iPS細胞における病気に関連した変異又は遺伝的欠損は、上述したように、肝細胞又は肝臓性前駆細胞へ分化する前に、修復することができる。
【0118】
また、本発明の態様は、医薬組成物、医薬、薬剤、又は他の組成物にも拡張され、これらは、本明細書に記載の方法で生成された肝細胞又は肝臓性前駆細胞を含む。また、本発明の方法では、上述したように、例えば、損傷した又は機能不全の肝臓性組織を治療(予防的な治療も含めることができる)を目的として、こうした肝細胞又は肝臓性前駆細胞を患者に投与するステップを含む。そして、医薬組成物を製造するための本発明の方法は、医薬的に適用可能な賦形剤、ビヒクル又はキャリア、そして、随意的に1種以上の他の成分を、こうした肝細胞又は肝臓性前駆細胞と混合するステップを含む。
【0119】
個体に投与される肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、遺伝的に操作して、治療用分子(例えば、薬剤又は成長因子)を生成することができる(Behrstock S et al, Gene Ther 2006 Mar;13(5):379−88, Klein SM et al, Hum Gene Ther 2005 Apr;16(4):509−21)。
【0120】
本発明は、本発明に従い生成された肝細胞又は肝臓性前駆細胞と、1種以上の追加的成分とを含有する組成物を提供する。本発明に従った医薬組成物、及び本発明に従った使用を目的とする医薬組成物は、前記肝細胞のほかに以下の物を含むことができる:医薬的に適用可能な賦形剤、キャリア、緩衝剤、保存薬(防腐剤)、安定化剤、抗酸化剤、又は当業者に周知の他の物質。こうした物質は、毒性を持たない物にすべきであり、前記肝細胞の活性と干渉しない物にすべきである。キャリア、又は他の物質の正確な特性は、投与経路に依存するであろう。
【0121】
液体医薬組成物は、一般的に、水、石油、動物性油若しくは植物性油、鉱物油、又は合成油などの液体キャリアが含まれる。また、以下の物も含めることができる:生理食塩水溶液、組織培地若しくは細胞培養培地、デキストロース又は他の糖類溶液、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコール)。
【0122】
組成物は、非経口的に許容可能な水性溶液の形態であってもよく、感染源を含まず、適切なpH、等張性及び安定性を有する。当分野の関係者であれば、例えば、等張性のビヒクル(例えば、塩化ナトリウム、リンゲル液、乳酸リンゲル液)を用いて適切な溶液を調製することは十分可能である。組成物は、人工的な脳脊髄液を用いて調製することができる。
【0123】
肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、任意の公知技術によって、患者に移植することができる(例えば、 Lindvall, O. (1998) Mov. Disord. 13, Suppl. 1:83−7; Freed, C.R., et al., (1997) Cell Transplant, 6, 201−202; Kordower, et al., (1995) New England Journal of Medicine, 332, 1118−1124; Freed, C.R.,(1992) New England Journal of Medicine, 327, 1549−1555, Le Blanc et al, Lancet 2004 May 1;363(9419):1439−41)。特に、細胞懸濁液は、患者の門脈に注入することができる。
【0124】
本発明に従った組成物の投与は、「予防としての有効量」又は「治療としての有効量」であることが好ましい(場合によっては、予防を治療とみなすこともできるかもしれないが)。そして、該量とは、個体に対して利点を示すのに十分な量である。実際の投与する量、割合、及び時間変化は、治療対象の性質や深刻度によるだろう。治療の処方箋(例えば、投与量等の決定)については、一般的に実践する者、又は他の医療ドクターの責任の範囲内である。
【0125】
組成物は、治療する症状に応じて、単独で投与することもでき、又は他の治療と組み合わせて同時に若しくは連続のいずれかで投与することができる。
【0126】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法で生成された集団中における肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、正常な表現型を示すことができる。例えば、細胞は、肝臓の損傷又は機能不全を有する個体から得ることができ、iPS細胞を生成するために使用することができる。幾つかの実施形態において、iPS細胞は、変異や遺伝的な欠陥を含んでいてもよい。また、該変異又は欠陥は、従来の組み換え技術を用いて修復し、正常な表現型を有するiPS細胞を生成することができる。正常な表現型を有する肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、本明細書に記載のように、これらのiPS細胞から生成することができる。そして、患者に移植して、肝臓の損傷又は機能不全を修復又は改善することができる。
【0127】
他の実施形態では、本明細書に記載の方法で生成された集団中の肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、病気の表現型を示しても良い。例えば、細胞は、肝臓の損傷又は機能不全を有する個体から得ることができ、病気特有のiPS(ds−iPS)細胞を生成するために使用することができる。病気の表現型を有する肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、本明細書に記載のように、これらのiPS細胞から生成することができる。そして、これらの細胞は、正常な表現型を取り戻すために処理することができる。例えば、病気の表現型の原因となる遺伝的変異又は遺伝的欠陥は、インビトロで修復することができる。単離したほ乳動物の細胞内で、遺伝的変異又は欠陥を修復するための様々な技術が利用可能である。一旦、欠陥又は変異が修復され、正常な表現型を取り戻すと、肝細胞又は肝臓性前駆細胞は、患者に移植することができ、肝臓の損傷又は機能不全を修復又は改善することができる。
【0128】
上述した方法で生成された肝細胞の集団は、試験化合物と肝臓細胞との相互作用をモデリングする際に有用となる可能性ある(例えば、毒性スクリーニングにおける、肝臓病のモデリング、及び潜在的な治療用効果を有する化合物のためのスクリーニング)。
【0129】
化合物をスクリーニングする方法は、以下のステップを含むことができる:
上述の方法によって生成される肝細胞の集団を、試験化合物に接触させるステップ;及び
前記肝細胞に対する試験化合物の効果、及び/又は、試験化合物に対する前記肝細胞の効果を測定するステップ。
【0130】
肝細胞は、正常の又は病気の表現型を示すことができる。
【0131】
試験化合物が無い場合と比べた試験化合物が有るときの肝細胞の成長又は生存率を測定することができる。成長又は生存率が低下することは、化合物が肝臓毒性の効果があることを示す。
【0132】
試験化合物が無い場合と比べた試験化合物が有るときの遺伝子発現を測定できる。例えば、以下の遺伝子の発現を測定することができる:アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、シトクロームP450酵素(例えば、Cyp3A4、CYP1A2、CYP2E1、CYP2C19、CYP2C9及びCYP2D6)、第IX因子、アポリポプロテインA2、CEBPα及び/又はトランスチレチン。発現が低下することは、化合物が肝臓毒性の効果を有することを示す。遺伝子発現は、核酸レベルについて、例えばRT−PCRによって、測定することができる。蛋白質レベルについてであれば、免疫学的な技術(例えば、ELISA)又は、活性アッセイによって、測定することができる。シトクロームP450アッセイ(例えば、ルミネッセンスのアッセイ、蛍光性のアッセイ、発色性のアッセイ)は周知であり、販売元から入手できる。
【0133】
肝細胞による試験化合物の代謝、変性、又は分解を測定することができる。幾つかの実施形態において、前記試験化合物の量若しくは濃度、及び/又は前記試験化合物の代謝産物における変化は、ある時間の範囲にわたって、連続的又は1以上の時間ポイントのいずれかで、決定又は測定することができる。例えば、前記試験化合物の量又は濃度の減少、及び/又は前記試験化合物の代謝産物の量若しくは濃度の増加を、決定又は測定することができる。幾つかの実施形態において、前記試験化合物の量若しくは濃度、及び/又は代謝産物における変化速度を決定(測定)することができる。試験化合物又は代謝産物の量を測定するための適切な技術として、質量分析法が挙げられる。
【0134】
該方法は、試験化合物についての、インビボ半減期、毒性、効能、又は他のインビボ特性を測定する際に、有用となる可能性がある。
【0135】
試験化合物が無い場合と比べて試験化合物が有るときとで、肝細胞の1種以上の機能を決定及び/又は測定することができる。例えば、以下の1種以上の事を行うための肝細胞の機能を決定及び/又は測定することができる:有機化合物の解毒、グリコーゲン貯蓄、AAT又はアルブミンの分泌、胆汁の製造、トロンボポイエチンの製造、アンギオテンシノゲンの製造、アンモニアから尿素への変換、コレステロール合成、グリコーゲン分解、グリコーゲン合成、及び脂質生成。
【0136】
試験化合物が無い場合と比べて試験化合物が有るときで、1種以上のこれらの機能を実行するための肝細胞の能力が低下した場合、それは、化合物が肝臓毒性の効果を有することを示す。
【0137】
肝臓病の治療において有用な化合物をスクリーニングするための方法は、以下のステップを含むことができる:
上述した方法で生成された(病気の表現型を示す)肝細胞の集団を、試験化合物と接触させるステップ;及び
前記肝細胞に対する試験化合物の効果を決定するステップ。
【0138】
前記肝細胞は、病気の表現型を示すことができる。肝細胞において、1種以上の病理に対する試験化合物の効果を決定することができる。例えば、以下の1種以上の事象に対する試験化合物の効果を決定することができる:細胞の成長、遺伝子発現、蛋白質の凝集又は重合化;ER内での蛋白質封じ込め;コレステロール取り込み;脂質及び/又はグリコーゲン蓄積;並びに乳酸の生成。
【0139】
そのための適切な技術は周知であり、免疫染色、質量分析法、ウェスタンブロット法、及び酵素的アッセイが挙げられる。
【0140】
試験化合物が無い場合と比べて試験化合物が有るときで、肝細胞中の1種以上の病理が減少又は改善された場合、それは、肝臓病の治療(例えば遺伝的代謝異常)において、試験化合物が有用となる可能性があることを示すことができる。遺伝的代謝異常の具体例については、既に述べた通りである。
【0141】
本明細書に記載の方法は、肝細胞における1種以上の病理(例えばIMD病理)を減少又は改善させる試験化合物を特定するステップを含むことができる。病理を減少させる化合物は、肝臓病の治療のための治療薬の開発において有用となる可能性がある。
【0142】
他の実施形態では、肝細胞は、正常な表現型を示すことができる。また、該肝細胞は、一般的な集団と比べて、例えば、肝臓病に対するリスクが高い、又は肝臓病の影響を非常に受けやすい個体に由来する物であっても良い。以下の1種以上の事象に対する試験化合物の効果を測定することができる:細胞の成長、又は遺伝子発現(例えば、シトクロームP450(CYP)の発現(例えば、Cyp3A4、CYP1A2、CYP2E1、CYP2C19、CYP2C9、及びCYP2D6)。肝細胞の1種以上の機能に対する試験化合物の効果を測定することができる。例えば、試験化合物が無い場合と比べて試験化合物が有るときとで、以下の1種以上を行う肝細胞の機能について、決定及び/又は測定することができる:有機化合物の解毒、グリコーゲン貯蓄、AAT又はアルブミンの分泌、胆汁の製造、トロンボポイエチンの製造、アンギオテンシノゲンの製造、アンモニアから尿素への変換、コレステロール合成、グリコーゲン分解、グリコーゲン合成、及び脂質生成。
【0143】
試験化合物が無い場合と比べて試験化合物が有るときに、遺伝子発現、成長及び/又は1種以上の機能が増加した場合には、前記化合物が肝臓病(例えば、肝炎(例えば、A型、B型、C型、D型、E型、G型又はK型の肝炎)、肝硬変、肝臓細胞の癌、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤誘発肝臓損傷、アルコール性肝疾患、又は自己免疫性の肝疾患)の治療において有用である可能性を示す。
【0144】
肝細胞において1種以上の病理を減少又は改善する化合物を同定した後、前記化合物は、該化合物の医薬的特性を最適化するために改変することができる。こうした改変は、周知のモデリング技術を用いて行うことができる。
【0145】
肝細胞において1種以上の病理(例えば、IMD病理)を減少又は改善する能力を有する物として、1種以上の初期スクリーニングを用いて同定された試験化合物は、1種以上の2次スクリーニングを用いて更に評価することができる。
【0146】
2次スクリーニングでは、インビトロ及び/又はインビボ(例えば、動物モデルにて)での生物学的機能又は活性を試験することを含むことができる。例えば、病気の動物モデルにおいて、肝臓病に関連する1種以上の症状又は病理を減少又は改善するための試験化合物の能力を測定することができる。
【0147】
肝細胞において、1種以上の病理を減少又は改善する試験化合物を同定した後、前記化合物を単離及び/又は精製することができる。或いは、組み換え発現又は化学合成等の従来の技術を用いて、合成することができる。更に、化合物は、組成物(例えば、医薬、医薬組成物又は薬剤)の調製(即ち、製造又は配合)において製造又は使用することができる。これらの組成物は肝臓病の治療を目的として個体に投与することができる。
【0148】
本明細書に開示した内容を参照すれば、本発明に係る更なる様々な態様及び実施形態があることが当業者にとって明らかであろう。
【0149】
本明細書で記述した全ての文献は、参照により、その内容全体を本明細書に組み込む。
【0150】
本明細書で使用する「及び/又は」という表現(該表現において、「及び」を「並びに」に置き換えた場合や、「又は」を「若しくは」に置き換えた場合も同様)は、特定の二つの特性又は成分のうちのそれぞれであって、他方の要素を伴うもの、又は伴わないものである旨を特定して開示するものとして解釈すべきものである。例えば、「A及び/又はB」という表現は、(i)A、(ii)B、及び(iii)AとB、のそれぞれが、ちょうど本明細書において個別に列挙されたかのように、特定して開示するものとして解釈すべきものである。
【0151】
特記しない限り、上述した特徴に関する記載や定義は、本発明のあらゆる特定の態様や実施形態に限定されない。そして、記載した全ての態様及び実施形態に等しくあてはまるものである。
【0152】
本発明の特定の態様及び実施形態については、後述する図面及び表を参照しながら、例示的な意味合いで以下述べることとする。