(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063400
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】エレベータの異常監視装置
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20170106BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20170106BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B66B3/00 P
B66B3/02 P
B66B3/00 G
B66B5/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-1653(P2014-1653)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129043(P2015-129043A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國貞 拓也
(72)【発明者】
【氏名】北原 博道
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
【審査官】
大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−063416(JP,A)
【文献】
特開2013−028440(JP,A)
【文献】
特開2013−119461(JP,A)
【文献】
特開2010−083647(JP,A)
【文献】
特開2008−195495(JP,A)
【文献】
特開2010−195496(JP,A)
【文献】
特開2011−162312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 3/02
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのドアと乗り場のドアにそれぞれ窓を有し、
昇降路内での前記乗りかごの走行位置を検出する乗りかご走行位置検出手段と、
前記乗りかごの窓が視野に入るように設置されて乗りかご内の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得した画像から乗りかご内の乗客の挙動を解析して挙動異常を判定する異常判定手段を備え、
前記乗りかご走行位置検出手段からの走行位置情報に基づいて、前記乗りかごの窓が乗り場の窓と対向していないときに、前記異常判定手段により挙動異常を判定することを特徴とするエレベータの異常監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの異常監視装置において、
前記乗りかご走行位置検出手段からの走行位置情報に基づいて、前記乗りかごの窓が乗り場の窓と対向しているときに判定禁止信号を出力し、前記乗りかごの窓が乗り場の窓と対向していないときには前記判定禁止信号を出力しないで、前記異常判定手段で挙動異常の判定を許可する判定許可手段を設け、
前記異常判定手段は、前記判定許可手段が前記判定禁止信号を出力してときには挙動異常の判定を行わず、前記判定許可手段が前記判定禁止信号を出力していないときに挙動異常の判定を行うことを特徴とするエレベータの異常監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータの異常監視装置において、
前記異常判定手段で挙動異常の判定が行われると、前記乗りかごを最寄階に停止して、前記乗りかごのドアと乗り場のドアを開放することを特徴とするエレベータの異常監視装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータの異常監視装置において、
さらに報知手段を前記乗りかご内に設置して、前記異常判定手段で挙動異常の判定が行われると、前記報知手段を通して前記乗りかご内の乗客に挙動異常を報知することを特徴とするエレベータの異常監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータの異常監視装置において、
さらに報知手段を前記乗り場にも設置して、前記乗りかご内の報知手段と乗り場の報知手段で挙動異常を報知することを特徴とするエレベータの異常監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの異常監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ乗りかご内での犯罪は増加傾向にあり、犯罪の事例として乗りかご内での器物破損や他者への暴力行為などがある。犯罪防止策として、乗りかご内への防犯カメラ(以下、カメラと略記する)の設置は効果的であり、設置台数も増加傾向にある。
【0003】
カメラ自体は事後対応型商品であるが、カメラの画像を解析して、乗りかご内の乗客の挙動異常を検知し、警報アナウンスやエレベータの最寄階停止などを行う即時対応型防犯装置も設置されている。
【0004】
この即時対応型防犯装置に関して、乗りかご内の乗客の挙動をカメラで監視して、乗客の挙動が異常であると判定すると、乗りかご内での注意喚起の音声アナウンスや警告表示、最寄階停止などを行って犯罪の抑止を図ることが、特開2007−230732号公報(特許文献1)に開示されている。
【0005】
また、防犯目的で乗りかご側のドアと乗り場側のドアにガラス窓が設けられており、それら窓が視野に入るようにカメラが設置されている場合、乗りかごの走行中に乗りかご側の窓が乗り場側の窓と対向した(重なった)ときに、外光が窓を通して乗りかご内に入り、カメラによる監視に支障が出る。
【0006】
この問題を解決するために、カメラと窓にそれぞれ偏光フィルタを設置して、窓からカメラに入る外光を弱めることが、特開2008−195495号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−230732号公報
【特許文献2】特開2008−195495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、ドアに窓を設けた場合の窓を通しての外光によるカメラへの悪影響について考慮されていない。また、外光による悪影響を避けるために窓が視野に入らないようにカメラを乗りかご内に配置することも考えられるが、そうするとカメラの撮影範囲が狭くなり、挙動異常の検知ミス(見逃し)が増加するという問題がある。
【0009】
特許文献2は、カメラと窓に偏光フィルタを設置して、窓からカメラに入る外光を弱める技術であるため、カメラの撮影範囲の中央部分(主に窓の部分)が光学的に影響を受け、カメラの録画が正常に行われないという問題があった。
【0010】
これに対処するには、窓の部分に対応する領域を画像処理の対象から外すなどのマスク処理が別途必要であった。しかし、マスク処理を施せば取得できる画像領域が狭くなり、挙動異常の検知ミス(見逃し)が増加するという問題がある。
【0011】
本発明は、前述の問題点を考慮してなされたもので、簡単な構成で画像取得手段に入る外光の影響を受けること無く、挙動異常の判定ができるエレベータの異常監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、
乗りかごのドアと乗り場のドアにそれぞれ窓を有し、
昇降路内での前記乗りかごの走行位置を検出する乗りかご走行位置検出手段と、
前記乗りかごの窓が視野に入るように設置されて乗りかご内の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得した画像から乗りかご内の乗客の挙動を解析して挙動異常を判定する異常判定手段を備え、
前記乗りかご走行位置検出手段からの走行位置情報に基づいて、前記乗りかごの窓が乗り場の窓と対向していないときに、前記異常判定手段により挙動異常を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で窓から画像取得手段に入る外光の影響を受けること無く、挙動異常の判定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るエレベータの全体構成図である。
【
図2】そのエレベータに設置される異常監視装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るエレベータの異常監視装置を図面に基づいて説明する。
図1はエレベータの全体構成図、
図2はそのエレベータに設置される異常監視装置のブロック図である。
図1に示すように、エレベータの昇降路1内に乗りかご2と釣り合い錘1Aが、複数のプーリ1Eとシーブ1Dを介してロープ1Bで連結されている。エレベータ運行制御装置(以下、運行制御装置と略記する)3はモータ1Cを介してシーブ1Dを回転制御することにより、ロープ1Bを介して乗りかご2と釣り合い錘1Aを上下に走行させて、乗客(図示せず)を所望の階に運搬する。
【0016】
モータ1Cに連結されたロータリエンコーダ1Fは、モータ1Cの回転により発生したパルス信号を運行制御装置3に入力し、そのパルス信号から昇降路1内の乗りかご2の走行位置を算出して、エレベータの運行制御を行っている。
【0017】
走行中乗りかご2内は閉空間となることから、防犯のため、乗りかご2のかごドア2Dと各乗り場の乗場ドア2Fには、窓2Eと窓2Gが設けられている。
図1に示すように、乗りかご2が乗り場を通過するときに、窓2Eが窓2Gと対向し(重なり)、瞬間的ではあるが窓2E,窓2Gを通して乗りかご2内に外光が入る。
【0018】
乗りかご2内には、カメラ2Aとスピーカ2Bとモニタ2Cが装備され、カメラ2Aは窓2Eも視野に入るように設置されている。
【0019】
図2に示すように本実施形態では異常監視装置は、カメラ2A、スピーカ2B、モニタ2C、運行制御装置3、画像記録装置4ならびに異常判定装置5を備えている。
【0020】
また異常判定装置5は、画像解析部5A、異常判定部5B、異常指令部5Cならびに判定許可部5Dを備え、各部は図に示すような接続関係になっている。
図2では説明上、各部5A〜5Dが独立したように表記しているが、実際には異常判定装置5は例えばパソコンなどの1つの情報処理機器からなり、その内部で各部5A〜5Dの情報処理がなされる。
【0021】
次に、乗客が乗りかご2内で暴れるなどの異常行動を起こした場合の異常判定装置5、スピーカ2B、モニタ2Cならびに運行制御装置3の動作について説明する。
【0022】
運行制御装置3は、乗客が乗りかご2に乗り、乗った階から到着階へ移動する際の乗りかご2の走行や停止などの運行状態を制御し、また、乗った階と到着階でのかごドア2Dと乗場ドア2Fの開閉動作を制御する。
【0023】
カメラ2Aは画像記録装置4と異常判定装置5に接続され、カメラ2Aで撮影された乗りかご2内の画像は、画像記録装置4で記録されるとともに、異常判定装置5で画像解析される。画像記録装置4に記録された画像は、事後対応などに使用される。
【0024】
画像解析部5Aは、カメラ2Aで撮影された乗りかご2内の乗客の画像データから挙動の正常状態と異常状態を、予め記憶されている各種挙動情報に基づいて判別して、挙動異常であれば挙動異常信号を異常判定部5Bへ出力する。
【0025】
一方、判定許可部5Dは、運行制御装置3から入力される乗りかご2の走行位置情報に基づいて、窓2Eが窓2Gと対向する(重なる)位置を判定し、窓2Eが窓2Gと少しでも重なり、乗り場から外光が乗りかご2内に進入する可能性がある位置に乗りかご2が来る直前に、異常判定部5Bに判定禁止信号を出力する。
【0026】
異常判定部5Bでは、判定禁止信号の入力が有る場合、即ち、窓2Eが窓2Gと重なって外光による影響が有る場合、画像解析部5Aからの挙動異常信号をそのまま異常指令部5Cへ出力するのを禁止する。
【0027】
一方、判定禁止信号の入力が無い場合、即ち、窓2Eが窓2Gとまだ重なっていない判定許可の場合は、画像解析部5Aからの挙動異常信号が正しいとして(許可して)を異常指令部5Cへ出力する。
【0028】
異常信号を受けた異常指令部5Cは、運行制御装置3へ最寄階停止や警告アナウンスの異常指令信号を送信する。この異常指令信号を受信した運行制御装置3は、乗りかご2に対して最寄階に停止するように走行中の乗りかご2を減速させ、最寄階に停止させた後、かごドア2Dと乗場ドア2Fを開放する。
【0029】
それと同時に、乗りかご2内のスピーカ2Bで挙動異常が発生したため最寄階に停止する旨の警告アナウンスが行われ、乗りかご2内の乗客に対して挙動異常の発生が報知される。
【0030】
さらに乗りかご2内のモニタ2Cに異常が発生した旨を伝える警告画像や乗りかご2内の画像を表示する指令がなされ、予め記憶されている警告画像や乗りかご2内の画像が表示されて、モニタ2Cからも乗りかご2内の乗客に対して挙動異常の発生が報知される。
【0031】
図示していないが、スピーカ2Bやモニタ2Cを各乗り場にも設置しておき、乗りかご2内と同様にスピーカ2Bからの警告アナウンスやモニタ2Cによる警告画像もしくは乗りかご2内の画像の表示を行うこともできる。これによって、乗り場で待っている人達に対して、乗りかご2内で乗客の挙動異常が発生していることを報知することができる。
【0032】
乗りかご2が乗り場付近を走行しているときに、かごドア2Dの窓2Eが乗場ドア2Fの窓2Gと重なり、外光が乗りかご2内に進入して、カメラ2Aによる乗客の挙動判定は難しくなる。しかし、乗りかご2の走行中に窓2Eが窓2Gと重なる時間は極めて短く、両窓2E、2Gが重ならない位置では外光は進入せず、カメラ2Aによる挙動判定は適切に行われる。
【0033】
前記実施形態では乗りかご2の走行位置を検出するためにモータ1Cに接続したロータリエンコーダ1Fを用いたが、昇降路1の各乗り場付近の乗りかご2と対向する位置に例えば光学センサなどの位置センサをそれぞれ設置して、その位置センサにより乗りかご2の走行位置を検出することも可能である。
【0034】
前記実施形態のスピーカの代わりに警報ランプなど他の警報手段を設置することも可能である。また、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
【0035】
請求項に記載の乗りかご走行位置検出手段は、前記実施形態ではロータリエンコーダ1Fならびにエレベータ運行制御装置3に対応している。画像取得手段は、前記実施形態ではカメラ2Aに対応している。異常判定手段は、前記実施形態では画像解析部5Aならびに異常判定部5Bに対応している。判定許可手段は、前記実施形態では判定許可部5Dに対応している。報知手段は、前記実施形態ではスピーカならびにモニタに対応している。
【0036】
前述のように本発明は、複雑な構成を必要とせず、従来に比べて安価でかつ確実に異常監視を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 昇降路
1F ロータリエンコーダ
2 乗りかご
2A 防犯カメラ
2B スピーカ
2C モニタ
2D かごドア
2E,2G 窓
2F 乗場ドア
3 エレベータ運行制御装置
4 画像記録装置
5 異常判定装置
5A 画像解析部
5B 異常判定部
5C 異常指令部
5D 判定許可部