特許第6063449号(P6063449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063449小粒径固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063449
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】小粒径固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 79/10 20060101AFI20170106BHJP
   C08L 85/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20170106BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08G79/10
   C08L85/00
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-507685(P2014-507685)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2013057355
(87)【国際公開番号】WO2013146337
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-72801(P2012-72801)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】加地 栄一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 悦男
【審査官】 柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/055652(WO,A1)
【文献】 特表平09−504825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 79/10
C08F 4/6592
C08F 10/00
C08L 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(II)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する芳香族系炭化水素溶液(以下、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物と称す)を加熱して、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる工程を含み、工程(a)に先だって前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、および/または工程(a)の少なくとも一部の期間中に前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、
(i)アルミニウム含有量が36質量%から43質量%の範囲にあり、
(ii)メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%以下であり、かつ
(iii)体積基準のメジアン径が0.1μm〜5μm未満の範囲である、
粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法。
-[(Me)AlO]n- (II)
(式中、nは1〜50の整数を示す。)
【請求項2】
前記加熱前の溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は、メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が15モル%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)において、
(i)80℃〜200℃の範囲の加熱温度、及び
(ii)5分間以上24時間未満の加熱時間から、
適した加熱温度及び加熱時間を選択して固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(a)で原料として用いる溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物が、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解することにより得られるものである、
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応により調製されるものである、
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記含酸素有機化合物が、一般式(III)で示される脂肪族または芳香族カルボン酸である、請求項5に記載の製造方法。
R1-(COOH)n (III)
(式中、R1は、C1〜C20の直鎖あるいは分岐したアルキル基、アルケニル基、アリール基の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【請求項7】
前記トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応は、トリメチルアルミニウムに含まれるアルミニウム原子と含酸素化合物中の酸素原子のモル比が、1.15〜1.4:1の範囲となるように行う、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
25℃におけるn-ヘキサンに対する溶解度が0〜2モル%であり、かつ
25℃におけるトルエンに対する溶解度が0〜2モル%である
請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
下記式で示される均一性が0.45以下である請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
均一性 = ΣXi|d(0.5) - Di|/d(0.5)ΣXi
(ここで、Xiは粒子iのヒストグラム値、d(0.5)は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。)
【請求項10】
前記粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
比表面積が、10〜25m2/mmol-Alの範囲である
請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
以下の一般式(I)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する、
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
-[(Me)AlO]n- (I)
(式中、nは10〜50の整数を示す。)
【請求項12】
前記粒子状の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
SiO2を含有しない、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2012年3月28日出願の日本特願2012−72801号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、オレフィン類の重合に用いられる固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の小粒径品の製造方法および得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を触媒成分として用いる重合触媒およびポリオレフィン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
溶液状ポリアルミノキサン組成物は、一般に有機アルミニウム化合物の部分加水分解反応により調製される縮合生成物であり、オレフィン重合体の製造において、主触媒となる遷移金属化合物を効率的に活性化する助触媒成分として有用であることが知られている。原料の有機アルミニウム化合物にトリメチルアルミニウムを用いたポリメチルアルミノキサン組成物が、特に優れた助触媒性能を示すことは広く知られており、この組成物は通常トルエンなどの芳香族炭化水素溶媒に溶解した溶液状態で取り扱われる。
【0004】
ポリメチルアルミノキサン組成物は優れた助触媒性能を示すが、通常、メタロセン化合物などの主触媒およびポリメチルアルミノキサン組成物共に溶媒に溶解した状態で取り扱われるため、生成する重合体のモルフォロジー制御ができない。このため、重合体の取扱いが困難となるだけでなく、重合反応器等への重合体付着によるファウリングが非常に起こり易いという問題を抱えている。
【0005】
これらの問題を解決するために、ポリメチルアルミノキサン組成物をシリカ、アルミナ、塩化マグネシウムなどの固体状無機担体に担持した担持型固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を、懸濁重合や気相重合に適用する方法が提案されている。固体状無機担体の中でも、表面水酸基量を制御したシリカが担体として最も広く用いられており、工業レベルへの展開に至っている事例も少なくない。(例えば、特許文献6などを参照)
【0006】
前記のシリカ担体は重合体中へ残留し易く、重合体の性能悪化をもたらすことが知られている。また、上述のような担体を利用した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、均一系重合における重合活性と比較した場合、大きな活性低下を示すことも知られている。したがって、上記課題を解決するため、助触媒のポリメチルアルミノキサン組成物が固体状態であるメリットを保持しつつ、均一系重合に匹敵する高活性固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の開発が望まれていた。
【0007】
上述のような固体状担体を使用せずに、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得ようとする試みがなされている。一般的に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製しようとする場合、何らかの添加物と溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を反応させる方法が採用されている(特許文献1〜5などを参照)。しかし、この方法では、アルミニウム基準の固体状物の回収率は高くない。
【0008】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得るための第三成分の添加は、重合体の用途によっては毒性などの問題を引き起こす場合があり得るため、避けたほうが良い。このような考えから、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に、不溶性あるいは難溶性の溶媒を加えることのみにより固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得る方法に関する提案がある。特許文献1及び5にはポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液へn-ヘキサンまたはn-デカンを室温下に添加して固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させ、その後、真空ポンプによる溶媒除去を行って析出量を増加させる方法の提案がなされている。
【0009】
特許文献1及び5に記載の方法には、析出した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の収率および平均粒径の記述はあるがその他モルフォロジーに関する記述はない。
【0010】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を遷移金属化合物と組み合わせてオレフィン系重合体を調製する場合、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のモルフォロジーが、調製されるオレフィン系重合体の性状に大きく影響する。一般に、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が微粒子であり、粒子径がより均一である方が、調製されるオレフィン系重合体はより均一な粒子となり好ましい。特許文献1の実施例に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の粒子径は210〜350μmであり、特許文献5に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の粒子径は28〜47μmであった。すなわち、これら特許文献には、30μm以下の粒径の小さな固体状ポリメチルアルミノキサン組成物をどのようにすれば調製可能なのか記載がなく不明で、実施例記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の粒径の均一性がどの程度であるのかも不明である。
【0011】
また、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、一般に、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に比べて、重合活性が低いという課題もある。さらに、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の収率についても、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に含まれるポリメチルアルミノキサンの全量が固体状ポリメチルアルミノキサン組成物として回収されるわけではなく、収率が低いと、コスト高につながる。また、特許文献1及び5に記載の方法のように、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得る際に、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物から多量の溶媒を真空ポンプによって除去する方法は、ラボレベルでは特に問題なく実施可能であるが、商業スケールでの実施を考慮すると、固体状態とならないトリメチルアルミニウムやポリメチルアルミノキサンの真空ポンプ側への飛散が起こる可能性があるため、危険であるばかりでなく、生産効率などの観点からも問題が多く、実用的な処方ではない。
【0012】
我々は最近、SiO2などの担体用いずにMAOのみで、体積基準のメジアン径が5〜50μmの範囲の比較的微粒子で、粒子径もより均一である固体状ポリメチルアルミノキサン組成物およびそれらを効率的に調製する方法を見出した。(特許文献7)得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、比較的微粒子であって、粒子径もより均一であるだけでなく、オレフィン系重合体を調製する際の重合活性が非常に高いと言う特徴を有す。重合条件によっては、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に匹敵する活性を発現する場合がある。
【0013】
さらに、その際、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物から固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製する際のポリメチルアルミノキサン組成物の収率が高く、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物から真空ポンプによる溶媒の除去も必要としない方法を提供することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
[特許文献1] 日本特開2000-95810号公報
[特許文献2] 日本特開平8-319309号公報
[特許文献3] 日本特開平7-300486号公報
[特許文献4] 日本特開平7-70144号公報
[特許文献5] 日本特公平7-42301号公報
[特許文献6] WO97/23288(日本特表2000-505785号公報)
[特許文献7] WO2010/055652(PCT/JP2009/006019)
【0015】
特許文献1〜7の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献7に記載の方法では、合成条件を種々検討しても5μm未満の微細粒径の固体状メチルアルミノキサンを得ることが困難であった。微細粒子形成においては、破砕法が利用されることもある。しかし、微細粒径固体状メチルアルミノキサン調製に適用すると、粒径が揃わないだけでなく、形状もガラス破片のような状態の粒子が多く形成される。このような粒子を重合に用いると、反応器ファウリングの原因となりやすく、使用を避けるべきである。
【0017】
加えて、本発明は、上記微細粒径固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と遷移金属化合物を用いて品質の良好なオレフィン系重合体を、工業的に効率よく、しかも安価に製造する方法を提供することも課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は以下のとおりである。
[1]
(i)アルミニウム含有量が36質量%から43質量%の範囲にあり、かつ
(ii)メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%以下であり、かつ
(iii)粒子状であり、体積基準のメジアン径が0.1μm〜5μm未満の範囲である
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[2]
25℃におけるn-ヘキサンに対する溶解度が0〜2モル%であり、かつ
25℃におけるトルエンに対する溶解度が0〜2モル%である
[1]に記載の組成物。
[3]
下記式で示される均一性が0.45以下である[1]〜[2]のいずれかに記載の組成物。
均一性 = ΣXi|d(0.5) - Di|/d(0.5)ΣXi
(ここで、Xiは粒度分布のヒストグラムにおける固体状アルミノキサン組成物の粒子iの体積百分率、d(0.5)は前記ヒストグラムにおける体積基準のメジアン径、Diは前記ヒストグラムにおける粒子iの体積基準径を示す。)
[4]
比表面積が、10〜25m2/mmol-Alの範囲である
[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
以下の一般式(I)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する、
[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
-[(Me)AlO]n- (I)
(式中、nは10〜50の整数を示す。)
[6]
SiO2を含有しない、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
(a)下記一般式(II)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する芳香族系炭化水素溶液(以下、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物と称す)を加熱して、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる工程を含み、工程(a)に先だって前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、および/または工程(a)の少なくとも一部の期間中に前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、[1]〜[6]のいずれかに記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法。
-[(Me)AlO]n- (II)
(式中、nは1〜50の整数を示す。)
[8]
前記加熱前の溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は、メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が15モル%以下である、[8]に記載の製造方法。
[9]
工程(a)において、
(i)80℃〜200℃の範囲の加熱温度、及び
(ii)5分間以上24時間未満の加熱時間から、
適した加熱温度及び加熱時間を選択して固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる、[8]または[9]に記載の製造方法。
[10]
工程(a)で原料として用いる溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物が、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解することにより得られるものである、
[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
前記アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応により調製されるものである、
[10]に記載の製造方法。
[12]
前記含酸素有機化合物が、一般式(III)で示される脂肪族または芳香族カルボン酸である、[11]に記載の製造方法。
R1-(COOH)n (III)
(式中、R1は、C1〜C20の直鎖あるいは分岐したアルキル基、アルケニル基、アリール基の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
[13]
前記トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応は、トリメチルアルミニウムに含まれるアルミニウム原子と含酸素化合物中の酸素原子のモル比が、1.15〜1.4:1の範囲となるように行う、[11]または[12]に記載の製造方法。
[14]
[1]〜[6]のいずれかに記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と下記一般式(IV)で表される遷移金属化合物を触媒成分として含有するオレフィン類の重合触媒。
MR5R6R7R8 (IV)
(式中、Mは遷移金属元素を示し、かつR5, R6, R7, R8は、共同で1個または2個のシクロアルカジエニル骨格を有する有機基を示すか、または独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基、水素原子及びハロゲン原子から成る群から選ばれる1種の有機基若しくは原子を示す。)
[15]
[14]に記載の触媒を用いてオレフィン類を重合することを含む、ポリオレフィン類の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、5μm未満の微細粒子であり、かつ粒度の揃った固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を、極めて簡便に高い収率で得ることができる。本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を助触媒として重合に用いると極めて高い重合活性を示す。さらに、本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は溶媒溶解性が非常に低いことから、重合に用いた場合に反応器のファウリングを著しく抑制することができ、粒径の揃った重合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ポリメチルアルミノキサン組成物の1H-NMR測定結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[固体状ポリメチルアルミノキサン組成物]
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、
(i)アルミニウム含有量が36質量%から43質量%の範囲にあり、かつ
(ii)メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%以下であり、
(iii)粒子状であり、体積基準のメジアン径が0.1μm〜5μm未満の範囲である。
【0022】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する。ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムの共存状態は必ずしも明らかではないが、上記(i)及び(ii)を満足する組成比及び存在状態で、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムが含まれる。
【0023】
ポリメチルアルミノキサンは、例えば、以下の一般式(I)で示される単位を含むものであることができる。
-[(Me)AlO]n- (I)
(式中、nは10〜50の整数を示す。)
【0024】
一般式(I)で示される単位を含むとは、nが上記範囲内の単数(nがある特定の整数)であるポリメチルアルミノキサンまたは複数種類(nが異なる複数の整数)である複数のポリメチルアルミノキサンを含むことを意味する。nが10〜50の整数であるのは、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の原料となる溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物中のポリメチルアルミノキサンのnが10〜50であることによる。文献には溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物中のポリメチルアルミノキサン鎖同士またはポリメチルアルミノキサン鎖とトリメチルアルミニウムが不均化により、ポリメチルアルミノキサン鎖長が変化するとの記載があるものもある。ポリメチルアルミノキサン鎖同士の不均化反応の場合にはトリメチルアルミニウムが生成し、ポリメチルアルミノキサン鎖とトリメチルアルミニウムとの不均化反応の場合にはトリメチルアルミニウムが消費されることになる。しかし、溶媒洗浄実施前の固体状ポリメチルアルミノキサンをd8-THFを溶媒とし1H-NMR測定を実施したところ、顕著なトリメチルアルミニウム含有量の変化が観られていない。このことから、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のポリメチルアルミノキサンのnは、原料として用いた溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のnにほぼ相当すると考えられる。本発明におけるポリメチルアルミノキサンとは、上記単位を含むものであれば、鎖状構造であっても環状構造であっても、また枝分かれ構造であってもよい。
【0025】
ポリメチルアルミノキサンが環状構造をとる場合、アルミニウム含有量の理論量は約46〜47質量%であり、トリメチルアルミニウム中のアルミニウム含有量の理論量は約38質量%である。すなわち、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量が46質量%を超えるような場合、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は環状構造を有するポリメチルアルミノキサンのみからなり、トリメチルアルミニウムはほとんど存在しないものと推定され、更には溶媒等の不純物を全く含んでいないことになる。ポリメチルアルミノキサンが直鎖状構造をとる場合、一般式(I)のn数によってアルミニウム含有量の理論量は変動するが、環状構造のものに比べ小さくなる。一方、本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物には、環状構造のポリメチルアルミノキサンに加え、線状構造および枝分かれ構造を有するポリメチルアルミノキサンを含んでおり、更にはトリメチルアルミニウムに加え残留溶媒等の不純物が含まれることから、本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物では(i)で示されるように、アルミニウム含有量が、36質量%から43質量%の範囲にある。アルミニウム含有量が小さい程、トリメチルアルミニウムの存在割合が多く、アルミニウム含有量が大きい程、トリメチルアルミニウムの存在割合が少ない傾向がある。
【0026】
アルミニウム含有量が、36質量%から43質量%の範囲にあることで、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、良好な粒子径の均一性と容易に割れ等による破砕が起こらない強固さという性能を有することができる。逆に、本発明のアルミニウム含有量が36質量%未満の場合、乾燥が不十分で溶剤等の不純物を含みすぎていることを示している。アルミニウム含有量が43質量%を超えると、上述のように、環状構造を主とするポリメチルアルミノキサンから成ると推定され、また、トリメチルアルミニウムおよび溶媒不純物を含まないことを示しているが、本発明で得られる固体状ポリメチルアルミノキサン組成物とは組成自身が異なるものである。アルミニウム含有量は、上記観点から、下限は、好ましくは37質量%、より好ましくは38質量%であり、上限は、好ましくは42質量%、より好ましくは41質量%である。アルミニウム含有量の範囲としては、好ましくは38質量%から41質量%の範囲である。
【0027】
本発明において調製される溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物および固体状アルミノキサン組成物のアルミニウム含量は、例えば、0.5Nの硫酸水溶液で加水分解した溶液に過剰量のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを加えた後に、ジチゾンを指示薬とし硫酸亜鉛で逆滴定することにより求めることができる。測定濃度が希薄な場合は、原子吸光分析法を用いて測定を行うこともできる。
【0028】
(ii)で示されるメチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率における、メチル基の総モル数は、ポリメチルアルミノキサンに由来するメチル基とトリメチルアルミニウムに由来するメチル基の総モル数であり、トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル数は、トリメチルアルミニウムに由来するメチル基のモル数であり、トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%以下である。トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が低いことは、ポリメチルアルミノキサンに含まれるトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基が少なく、ポリメチルアルミノキサン鎖のアルミニウムの状態が多いことを意味する。トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%以下であることで、溶媒溶解性が低く、乾燥処理によっても粒子が壊れることのない強度を有した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物となる。逆に、トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が12モル%をこえると、溶媒溶解性が高くなると共に、粒子が容易に破砕される傾向を示すようになる。
本発明の固体状メチルアルミノキサン組成物においてトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率は、好ましくは11モル%以下である。トリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率の下限は、固体状ポリメチルアルミノキサンの形状制御可能な原料となる溶液状ポリメチルアルミノキサンに依存するという理由から、例えば、6モル%でよく、好ましくは8モル%である。
【0029】
本発明に利用されるポリメチルアルミノキサン組成物は、未反応原料として内在するトリメチルアルミニウムを含有している。本発明において、ポリメチルアルミノキサン組成物中に存在するトリメチルアルミニウムの量は、ポリメチルアルミノキサンおよびトリメチルアルミニウムに由来するメチル基のモル分率(それぞれ、Me(PMAO), Me(TMAL)と略記)により表現する。
【0030】
ポリメチルアルミノキサン組成物中のそれぞれの成分のモル分率は、ポリメチルアルミノキサン組成物の1H-NMR測定により、それぞれの成分に帰属される面積比から求めることができる。ポリメチルアルミノキサン組成物の具体的なMe(PMAO), Me(TMAL)のモル分率の求め方は、実施例において例示する。
【0031】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、粒子状であり、下記式で示される均一性が0.45以下であることが好ましい。
均一性 = ΣXi|d(0.5) - Di|/d(0.5)ΣXi
(ここで、Xiは粒度分布のヒストグラムにおける固体状アルミノキサン組成物の粒子iの体積百分率、d(0.5)は前記ヒストグラムにおける体積基準のメジアン径、Diは前記ヒストグラムにおける粒子iの体積基準径を示す。)
【0032】
粒子状である本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の均一性が0.45以下であることで、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と遷移金属化合物を用いて粒径の揃ったオレフィン系重合体を得ることができる。上記均一性は好ましくは0.4以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下である。上記均一性の値が低い程、得られるオレフィン系重合体は粒径の揃った粒子になる傾向がある。上記均一性は、触媒粒度分布の指標として用いられるものであり、この指標では値が大きくなるほど分布が広いことを示す。上記均一性の下限は、本固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が自己会合により粒子形状が制御されていることを考慮すると、例えば、0.15であることができる。
【0033】
さらに本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、粒子状であり、体積基準のメジアン径が0.1μm〜5μm未満の範囲のものを調製することが出来る。粒子状である本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径が上記範囲であることで、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と遷移金属化合物を用いて良好な重合体の嵩密度を保持し、微粉重合体生成が抑制されたオレフィン系重合体を得ることができる。固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径は、得られるオレフィン系重合体の嵩密度などの粉体性状が良好になるという点から、一般には5〜200μm程度が良いとされている。しかし、触媒を懸濁させた液を噴霧し、オレフィンガスを通すことにより物質表面上に均一重合体形成するような用途に展開するには5μm未満の微粒子状物であることが望ましい。したがって、本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径は、均一性を考慮すると、0.1μm〜5μm未満であることが好ましく、好ましくは0.1〜4μmの範囲、より好ましくは0.1〜3μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜2μmの範囲、一層好ましくは0.1〜1μmの範囲である。
【0034】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径および粒度分布はMalvern Instrument Ltd.のマスターサイザー2000 Hydro Sを利用し、乾燥窒素雰囲気下にレーザー回折・散乱法により求めることができる。具体的な方法は、実施例に記載した。
【0035】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、粒子状であり、比表面積が、10〜25m2/mmol-Alの範囲であることが好ましい。粒子状である本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積が上記範囲であることで、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と遷移金属化合物を用いてのオレフィン系化合物の重合において、良好な活性を示すことができる。ここで良好な活性とは、好ましくは溶液状のポリメチルアルミノキサン組成物を用いた場合に得られる活性と同等であることを意味する。但し、本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の良好な重合活性は、比表面積のみによるものではなく、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積以外の組成や構造によるものと考えられる。比表面積は、オレフィン類の重合に使用する際に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と主触媒となるメタロセン化合物を初めとする遷移金属化合物の接触による活性化に影響すると考えられる。すなわち、一般には、比表面積が小さいと主触媒の活性化効率が悪く、大きいと活性化効率が高いと考えられる。一方、比表面積が高すぎると、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部が多孔質となりすぎ、固体の強度が低下するものと考えられる。以上の理由から、好ましくは10〜25m2/mmol-Alの範囲、より好ましくは13〜22m2/mmol-Alの範囲である。
【0036】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積は、BET吸着等温式を用い、固体表面におけるガスの吸着現象を利用して求めることができる。具体的な方法は実施例に記載した。
【0037】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、25℃におけるn-ヘキサンに対する溶解度が0〜2モル%であり、かつ25℃におけるトルエンに対する溶解度が0〜2モル%であることが好ましい。
【0038】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンおよびトルエンに対する溶解する割合が非常に低いことが特徴である。n-ヘキサンに対し0ないし2モル%、好ましくは0ないし1モル%、特に好ましくは0ないし0.2モル%の範囲を満足する。また、トルエンに対しても0ないし2モル%、好ましくは0ないし1モル%、特に好ましくは0ないし0.5モル%の範囲を満足する。溶媒への溶解割合の測定は、特公平7-42301号公報に記載の方法に準じて実施することができる。具体的には、実施例に記載する。
【0039】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、SiO2を含有しない。本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、少なくとも製造の過程で積極的に、SiO2を含有させたものではない。本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、SiO2を含有しないことで、SiO2を含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が有する欠点を回避することができる。
【0040】
[固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法]
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法は、(a)下記一般式(II)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する芳香族系炭化水素溶液(溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物)を加熱して、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる工程を含み、工程(a)に先だって前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、および/または工程(a)の少なくとも一部の期間中に前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、上記本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の製造方法である。
-[(Me)AlO]n- (II)
(式中、nは10〜50の整数を示す。)
【0041】
一般式(II)で示される単位を含むとは、nが上記範囲内の単数(nがある特定の整数)であるポリメチルアルミノキサン、またはnが上記範囲内の複数種類(nが異なる複数の整数)である複数のポリメチルアルミノキサンを含むことを意味する。nが10〜50の整数であるのは、ベンゼン中の凝固点降下から求めた分子量を基準とするアルミノキサンの重合度が10〜50の範囲に存在するという理由からである。
【0042】
本発明の製造方法に原料として用いられる、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は、例えば、特許文献6に記載の方法によって調製することができるものである。特許文献6に記載の方法は、トリメチルアルミニウムを加水分解することなくポリメチルアルミノキサン組成物を調製する方法である。具体的には、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解することにより溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を得る方法である。
【0043】
溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に用いられる芳香族系炭化水素は、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどを挙げることができる。但し、これらの例に限られず、芳香族系炭化水素であれば、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物用の溶媒として利用できる。
【0044】
さらに、前記アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応により調製されるものであることが好ましい。さらに、上記含酸素有機化合物は、一般式(III)で示される脂肪族または芳香族カルボン酸であることが好ましい。
R1-(COOH)n (III)
(式中、R1は、C1〜C20の直鎖あるいは分岐したアルキル基、アルケニル基、アリール基の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0045】
熱分解反応により溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を与えるアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物のトリメチルアルミニウムと含酸素化合物との反応に用いられる含酸素化合物とは、例えば、COOH基を有するカルボン酸化合物、カルボン酸無水物である。溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の調製に当たっては、これらを単独あるいは複数の化合物を用いることも可能である。含酸素化合物を具体的に例示すると、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、正酪酸、正吉草酸、正カプロン酸、正エナント酸、正カプリル酸、正ペラルゴン酸、正カプリン酸、正ラウリン酸、正ミリスチン酸、正ステアリン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、トルイル酸、トルイル酸無水物、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、正酪酸無水物、正吉草酸無水物、正カプロン酸無水物、蓚酸無水物、マロン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、トルイル酸無水物などを挙げることが出来る。この中で好ましいものは、酢酸、酢酸無水物、プロピオン酸、プロピオン酸無水物、安息香酸、安息香酸無水物、フタル酸、フタル酸無水物、トルイル酸、トルイル酸無水物である。
【0046】
溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成に用いるトリメチルアルミニウムに含まれるアルミニウム原子と含酸素有機化合物の酸素原子のモル比は、ポリメチルアルミノキサンの分子量、またトリメチルアルミニウム残量の制御を目的として、任意に設定することができる。含酸素有機化合物の酸素原子に対するトリメチルアルミニウム含まれるアルミニウム原子のモル量の比は、0.5 〜3.0 : 1の範囲で任意に設定することができる。
溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の調製のし易さ、その安定性および適切な残留トリメチルアルミニウム量の制御と言う観点から、上記モル量の比は、好ましくは1.0〜 1.7 : 1の範囲であり、さらに好ましくは1.15〜1.4 : 1の範囲である。
【0047】
溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の前駆体であるアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルミニウム化合物の熱分解温度は、20〜90℃の間の任意の温度で実施することができる。反応の易操作性と安全性および適切な反応時間という観点から、好ましくは 30℃〜80℃であり、さらに好ましくは60℃〜80℃である。アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルミニウム化合物の熱分解の時間は、熱分解温度や原料の組成(例えば、Al/Oモル比等)により変化するが、例えば、5〜100時間の範囲である。温度が低ければ、長時間を要し、温度が高ければ、短時間で熱分解を終了することができる。
【0048】
上記熱分解温度が100℃を超えると、ゲル状物の著しい生成を引き起こし、ポリメチルアルミノキサン均一溶液の回収収率が低下する。一方、熱分解温度が50℃を下回ると、ポリメチルアルミノキサン生成反応時間の増大による著しい生産性低下を引起す場合がある。
【0049】
本発明では原料として用いる溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物調製時の温度制御が重要である。一見すると、本発明は溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の調製工程に、一部含まれるものと理解されかねない。しかし、粒径の制御された固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得ようとする場合、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の原料であるアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解して溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を得ること無しに、直接、固体状メチルアルミノキサン組成物を得ることはできない。まずは、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解して溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製し、調製された溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を所定の条件下で加熱することで、初めてして固体状メチルアルミノキサン組成物は得られる。例えば、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の原料を直接100℃に加熱しても、粒径の揃った固体状メチルアルミノキサン組成物は得られない。この理由は現状で明確ではないが、ある鎖長および鎖長分布を有したポリメチルアルミノキサンの自己会合によりエネルギー的に安定な粒径の固体状メチルアルミノキサン組成物が熱処理により形成されると考えると、一旦きちんと形成されたポリメチルアルミノキサン構造が必要であることが理解できるものと発明者は考えている。
【0050】
不活性炭化水素溶媒中のポリメチルアルミノキサン濃度は、6〜40重量%の範囲で良く、好ましくは6〜30重量%であり、さらに好ましくは10〜25重量%である。
【0051】
これまでのアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルミニウム化合物の熱分解反応により溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を得るほとんどの文献においては、定量的な反応収率で溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物が得られるという点と溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物中のトリメチルアルミニウム量の制御可能な点に力点が置かれている。一般に、トリメチルアルミニウムはメタロセン化合物をはじめとする遷移金属化合物の活性化剤として作用しないため、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物中に残存するトリメチルアルミニウム量を制御することは重要な課題であった。一方、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を加水分解法において調製する場合、反応液中のアルミニウム濃度を低くし、かつ原料トリメチルアルミニウムに対する水の投入量を低く押さえなければ、アルミニウム回収率が大きく低下することが知られている。
【0052】
原料として用いられる溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は、メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率が15モル%以下であることが、固体状ポリメチルアルミノキサンの収率を向上させるという観点から好ましい。メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率は、好ましくは14モル%以下である。メチル基の総モル数に対するアルミノキサン部位に由来するメチル基のモル分率の下限はおよそ6モル%である。加水分解法で調製された溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は40〜50mol%のメチル基の総モル数に対するアルミノキサン部位に由来するメチル基のモル分率を有し、通常の濃縮乾固処理によりポリメチルアルミノキサン組成物中のメチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率を15モル%より下げることは困難である。一方、熱分解法による溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の調製では、トリメチルアルミニウムに含まれるアルミニウム原子と含酸素有機化合物の酸素原子のモル比を1.15とすることで、メチル基の総モル数に対するアルミノキサン部位に由来するメチル基のモル分率の下限は8モル%とすることが可能で、得られる固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の性能も良い。トリメチルアルミニウムのアルミニウム原子と含酸素有機化合物の酸素原子のモル比を1.10とすると、メチル基の総モル数に対するトリメチルアルミニウム部位に由来するメチル基のモル分率を5.2モル%とすることが出来るが、得られる固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の性能は悪い。以上の理由から、好ましくは8モル%〜14モル%である。
【0053】
本発明の製造方法で用いる芳香族系炭化水素は、特に制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等を例示できる。
【0054】
工程(a)においては、
(i)80℃〜200℃の範囲の加熱温度、及び
(ii)5分間以上24時間未満の加熱時間から、
適した加熱温度及び加熱時間を選択して固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を析出させる。
【0055】
一般式(II)で示される単位を含むポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する芳香族系炭化水素溶液(溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物)は、所定の温度で加熱を続けると、ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が、粒径が揃った形で溶液中に析出してくることを本発明者らは見出した。所定の温度とは、80℃〜200℃の範囲であり、析出に必要な時間は、温度により異なるが、例えば、5分間以上24時間未満の範囲である。この範囲にあることで、所望の粒子径と、粒子径の均一性を有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物粒子を、高い収率で得ることができる。但し、加熱温度によってはこの時間範囲を超えた時間の加熱が適切な場合もあり得る。固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の溶液中への析出は、時間の経過とともに増大し、一定のレベルまで達するとそれ以上、析出物の量の増大はなくなる。溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の組成や、溶媒(芳香族系炭化水素溶液)中の溶質の濃度により、析出物の量(回収率)は変化する。
【0056】
工程(a)に先だって前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、または工程(a)の少なくとも一部の期間中に前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする、または工程(a)に先だって前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングし、かつ工程(a)の少なくとも一部の期間中に前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物に乾燥不活性ガスをバブリングする。このように、前記溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を加熱するに際して、乾燥不活性ガスのバブリングすることにより、生成する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の粒子径が小さくなることを本発明者らは見出した。ここで、乾燥不活性ガスとは一般には、窒素ないしヘリウム、アルゴンガスを意味し、乾燥ガスとは、露点で−65℃以下のガスを言う。バブリングは、例えば、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物中に挿入したディップチューブによりマスフローメーターを通して供給することができる。供給ガス速度は、バブリングをあらかじめ実施する場合、溶液状ポリメチルアルミノキサン 1Lに対し100ml/minから2L/minの範囲に設定されることが好ましい。より好ましい範囲は500ml/minから1.5L/minの範囲である。この範囲にあることで、効率的に粒子径を小さくする効果を認めることが出来る。この範囲を超える場合には、反応器形状にも依存するが、溶液状ポリメチルアルミノキサン溶液が反応器上部への飛び散りや溶媒トルエンのガス同伴による逃げが顕著となり、粒径制御がし難くなる場合がある。供給時間は10minから2時間の範囲に設定することが出来る。好ましくは10minから1時間の範囲である。この範囲よりも短いと、小粒径効果が認められにくく、長いと溶媒トルエンのガス同伴による逃げが顕著となり、粒径制御がし難くなる。
【0057】
供給ガス速度は、バブリングを加熱反応中に実施する場合、溶液状ポリメチルアルミノキサン 1Lに対し1ml/minから50ml/minの範囲に設定されることか好ましい。より好ましくは、1ml/minから10ml/min、更に好ましくは1ml/minから5ml/minである。加熱中にガスを吹き込む場合、ガス自体を加熱反応温度相当に加熱しておくことが好ましい。ガスの供給時間は溶液状ポリメチルアルミノキサンの加熱処理時間となる。
【0058】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物粒子の粒子径、粒子径の均一性、収率等を考慮すると、加熱温度は80〜200℃でよく、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜130℃である。時間は、この温度範囲では、好ましくは1〜20時間、より好ましくは5〜12時間である。但し、温度が低くなると、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物粒子析出に要する時間は長くなり、温度が高くなれば、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物粒子析出に要する時間は短くなる傾向がある。
【0059】
[オレフィン類の重合触媒]
本発明は、オレフィン類の重合触媒を包含する。本発明のオレフィン類の重合触媒は、上記本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物と下記一般式(IV)で表される遷移金属化合物を触媒成分として含有する。
MR5R6R7R8 (IV)
(式中、Mは遷移金属元素を示し、かつR5, R6, R7, R8は、共同で1個または2個のシクロアルカジエニル骨格を有する有機基を示すか、または独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基、水素原子及びハロゲン原子から成る群から選ばれる1種の有機基若しくは原子を示す。)
【0060】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は、オレフィン重合用触媒として公知の触媒と組み合わせて重合触媒として用いることができる。オレフィン重合用触媒としては、例えば、遷移金属化合物を挙げることができる。このような遷移金属化合物は、上記一般式(IV)で示されるものであることができる。
【0061】
一般式(IV)中のMとしては、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルあるいはパラジウムであり、好ましくはチタン、ジルコニウム、クロム、鉄、ニッケルである。
【0062】
前記一般式(IV)において、好ましい遷移金属化合物としては、R5, R6, R7, R8が、共同で1個または2個のシクロアルカジエニル骨格を有する有機基を示す化合物であり、即ち、シクロアルカジエニル骨格を有する配位子が1個ないし2個配位したメタロセン化合物である。シクロアルカジエニル骨格を有する配位子としては、たとえばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などを例示することができ、シクロアルカジエニル基は2価の置換アルキレン基、置換シリレン基等で架橋されていてもよい。
【0063】
シクロアルカジエニル骨格を有する配位子以外の配位子は、炭素数が1〜20の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基、ハロゲン原子または水素原子である。即ち、R5, R6, R7, R8が、独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基、水素原子及びハロゲン原子から成る群から選ばれる1種の有機基若しくは原子を示す場合である。前記炭素数1〜20の炭化水素基以外のアルキル基等の炭化水素残基を含有する基(アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基)におけるアルキル基等の炭化水素残基の炭素数は1〜20の範囲であることができる。
【0064】
炭素数が1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などを例示することができ、具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロビル基、ブチル基などが例示され、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などが例示され、アリール基としては、フェニル基、トリル基などが例示され、アラルキル基としてはベンジル基などが例示される。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが例示され、アリーロキシ基としてはフェノキシ基などが例示される。これらの基にはハロゲン原子などが置換していてもよい。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが例示される。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示される。
【0065】
前記一般式(IV)中のMがジルコニウムである場合の、シクロアルカジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物について、具体的に化合物を例示する。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノブロミドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)べンジルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオぺンチルジルコニウムハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムモノクロリドハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノメトキシモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノエトキシモノクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノエトキシモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノフエノキシモノクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0066】
また、前記一般式(IV)中のMがジルコニウムであり、シクロアルカジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個以上含み、かつこの少なくとも2個のシクロアルカジエニル骨格を有する配位子がエチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基、ジメチルシリレンなどの置換シリレン基などを介して結合されている遷移金属化合物について、具体的な化合物を例示する。エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジエチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)エチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノブロミド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムブロミド、エチレンビス(4,5,6-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロライドなどを挙げることができ、ラセミ体、メソ体およびそれらの混合物であってよい。
【0067】
これらの遷移金属化合物は、均一系重合に際して、1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。また、あらかじめ固体触媒調製を行う場合に際しては、これらの遷移金属化合物を1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。
【0068】
[ポリオレフィン類の製造方法]
本発明は上記本発明の触媒を用いてオレフィン類を重合することを含む、ポリオレフィン類の製造方法を包含する。
【0069】
本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いた均一系重合および本発明の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いて調製された担持触媒を使用する重合は、重合形式として、溶媒を用いる溶液重合、溶媒を用いないバルク重合や気相重合等のいずれの方法においても適した性能を発揮する。また、連続重合、回分式重合のいずれの方法においても好ましい性能を発揮し、分子量調節剤としての水素なども必要に応じて用いることが出来る。
【0070】
重合に用いられるモノマーについては、オレフィン系モノマーの単独およびそれらの組み合わされた共重合に用いることができるどのような化合物でも良い。具体例を示せば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのα-オレフィン、ビスフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンなどのハロゲン置換オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネンなどの環状オレフィンが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0072】
尚、下記実施例においては、固体状メチルアルミノキサン組成物の乾燥は、通常、流動パラフィンを入れたシールポットを介し40℃において真空ポンプのフルバキューム下に実施し、シールポットに気泡が認められない時点を以って乾燥の終点とした。
【0073】
[試験方法]
(1) 溶解度
本発明の固体状メチルアルミノキサン組成物の25℃の温度に保持されたn-ヘキサンおよびトルエンに対する溶解する割合の測定は、特公平7-42301号公報に記載の方法に準じて実施した。具体的には、n-ヘキサンに対する溶解割合は25℃に保持された50mlのn-ヘキサンに固体状ポリメチルアルミノキサン組成物2gを加え、その後2時間の攪拌を行ない、次いでメンブレンフイルターを用いて溶液部を分離して、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求める。この方法で得られる溶解割合は、試料として用いた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物2gに相当するアルミニウム原子の量に対する上記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定される。
【0074】
(2) アルミニウム含量
溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物および固体状アルミノキサン組成物のアルミニウム含量は、基本的に0.5Nの硫酸水溶液で加水分解した溶液に過剰量のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを加えた後に、ジチゾンを指示薬とし硫酸亜鉛で逆滴定することにより求めた。測定濃度が希薄な場合は、原子吸光分析法を用いて測定を行った。
【0075】
(3) 固体状アルミノキサン組成物の比表面積
固体状アルミノキサン組成物の比表面積は、BET吸着等温式を用い、固体表面におけるガスの吸着現象を利用して求めた。測定装置にはBEL JAPAN,INC.製のBELSORP mini IIを、測定ガスには窒素ガスを用いた。
【0076】
(4) 固体状アルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径および粒度分布
固体状アルミノキサン組成物の体積基準のメジアン径および粒度分布はMalvern Instrument Ltd.のマスターサイザー2000 Hydro Sを利用し、乾燥窒素雰囲気下にレーザー回折・散乱法により求めた。分散媒には主に脱水・脱気したn-ヘキサンを、目的により一部には脱水・脱気したトルエンを用いた。触媒粒度分布の指標として、均一性は、下記の式で示される定義を用いた。
均一性 = ΣXi|d(0.5) - Di|/d(0.5)ΣXi
ここで、Xiは粒度分布のヒストグラムにおける固体状アルミノキサン組成物の粒子iの体積百分率、d(0.5)は前記ヒストグラムにおける体積基準のメジアン径、Diは前記ヒストグラムにおける粒子iの体積基準径を示す。
【0077】
(5) メチル基のモル分率
ポリメチルアルミノキサン組成物中のそれぞれの成分のモル分率は、ポリメチルアルミノキサン組成物の1H-NMR測定により、それぞれの成分に帰属される面積比から求めた。以下にポリメチルアルミノキサン組成物の具体的なMe(PMAO), Me(TMAL)のモル分率の求め方を例示する。ポリメチルアルミノキサンに由来するメチル基のモル分率をMe(PMAO)と表す。トリメチルアルミニウムに由来するメチル基のモル分率をMe(TMAL)と表す。
【0078】
まず、重溶媒にはd8-THFを用いてポリメチルアルミノキサン組成物の1H-NMR測定を実施する。1H-NMR測定は300MHz バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッドのGemini 2000 NMR測定装置を用い、測定温度24℃で行った。1H-NMRチャートの例を図1に示す。
【0079】
(i) -0.3ppmから-1.2ppm程度に現われるトリメチルアルミノキサンを含むポリメチルアルミノキサンのMe基ピークの全体の積分値を求め、これをI(ポリメチルアルミノキサン)とする。
(ii) -1.1ppm付近のTMALに由来するMe基ピークを接線-1により切り出し、その積分値 I(TMAL-Me)を求める。
(iii) (ii)で求めたそれぞれの積分値を、(i)で求めた積分値 I(ポリメチルアルミノキサン)から引くと、トリメチルアルミニウムを含まないポリメチルアルミノキサンのみのMe-基の積分値I(PMAO-Me)を求めることができる。I(TMAL-Me)およびI(PMAO-Me)をI(ポリメチルアルミノキサン)で割って規格化すると、Me(PMAO), Me(TMAL)のモル分率を求めることが出来る。
【0080】
なお、それぞれのピークの切り出し方法としては、市販のカーブフィッティングプログラムを用いる方法やベースラインコレクションを用いる方法などにより簡便に行うことが出来る。
【0081】
また、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析サンプルは、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物約0.05mlに対しd8-THFを約0.5ml添加することにより調製した。固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析サンプルは、溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物10mgに対しd8-THFを0.5ml添加することにより調製した。
【0082】
以下の反応は乾燥窒素ガス雰囲気下に行い、溶媒はすべて脱水および脱気したものを使用した。
【0083】
予備実験1 (安息香酸-Al/O=1.20)
(1) 溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
撹拌装置を有する内容積2Lのセパラブルフラスコに、トリメチルアルミニウム(TMAL) 240.8g(3.34mol)、トルエン600.5gを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これに安息香酸145.7g(1.19mol)を溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、TMALと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.20であった。反応液を70℃で32時間加熱し、その後60℃で6時間加熱することにより、ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は、9.04wt%であった。得られた溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、14.0mol%であった。なお、本溶液状ポリメチルアルミノキサンは溶液状態のため、試験方法の項で記載した溶解度測定は出来なが、溶液の比重とアルミニウム濃度から計算で求めたトルエン中の濃度は約3.0mol/Lであった。
【0084】
(2) エチレン重合評価
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
磁気撹拌装置を持つ500mlの四つ口フラスコにトルエン250mlを導入し、34℃にまで加熱した。これにアルミニウム原子換算で0.16g(5.93mmol)のポリメチルアルミノキサンのトルエン溶液を加え、さらにAl/Zrのモル比が5000となるようにビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Cp2ZrCl2)を加え、40℃に昇温しながらエチレンガスを吹き込んだ。10分後に、エチレンガスの供給を止め、メタノールを投入して触媒を失活させた。生成したポリエチレンを濾過乾燥し、重合活性を求めたところ39×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。高温GPCにより求めた分子量は18万で、Mw/Mnは2.9であった。ポリマー形状は不定形で、重合器のファウリングが顕著であった。
【0085】
実施例1
(1) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
撹拌装置を有する内容積5Lのセパラブルフラスコに予備実験1(Al/O=1.20)で調製したポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液 406.5g(1.361mol-Al)を入れ、挿入したディップチューブより乾燥窒素を吹込み、攪拌しながら窒素バブリング(250ml/min)を30min行った。その後、攪拌しながら100℃で8時間加熱した。加熱中に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が析出した。溶液を30℃以下にまで冷却した後に、洗浄のためにn-ヘキサン3.6Lを攪拌下に添加した。固体状ポリメチルアルミノキサン組成物をデカンテーションし、上澄み液を除去した後に、n-ヘキサン 3Lで2度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体を室温下に減圧乾燥することにより乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得た。乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で97%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、9.2mol%であった。
【0086】
(2) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、39.3wt%-Alであった。
【0087】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 3.1μm、均一性は0.290であった。
【0088】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は20.1m2/mmol-Alであった。
【0089】
(d) 溶媒への溶解割合
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のn-ヘキサンとトルエンへの溶解割合を求めたところ、それぞれ0.1mol%、0.35mol%と極めて低い値であった。
【0090】
(3) エチレン重合評価
1. ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
磁気撹拌装置を持つ500mlの四つ口フラスコにトルエン250mlを導入し、34℃にまで加熱した。これにアルミニウム原子換算で0.16g(5.93mmol)の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物(Al/O=1.20)のトルエンスラリー溶液を加え、さらにAl/Zrのモル比が5000となるようにビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Cp2ZrCl2)を加え、40℃に昇温しながらエチレンガスを吹き込んだ。10分後に、エチレンガスの供給を止め、メタノールを投入して触媒を失活させた。生成したポリエチレンを濾過乾燥し、重合活性を求めたところ68×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。
得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。また、高温GPCにより求めた分子量は17万で、Mw/Mnは2.6であった。
【0091】
実施例2
(1) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
窒素バブリング(250ml/min)を60min行ったこと以外は、実施例1と同様に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製した。乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で96.5%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、9.1mol%であった。
【0092】
(2) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、40.3wt%-Alであった。
【0093】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 1.5μm、均一性は0.300であった。
【0094】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は21.1m2/mmol-Alであった。
【0095】
(d) 溶媒への溶解割合
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のn-ヘキサンとトルエンへの溶解割合を求めたところ、それぞれ0.1mol%、0.35mol%と極めて低い値であった。
【0096】
(3) エチレン重合評価
1. ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
上記で合成した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例1の(3)1.と同様に重合評価を実施したところ、65×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。
【0097】
得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。また、高温GPCにより求めた分子量は17万で、Mw/Mnは2.5であった。
【0098】
実施例3
(1) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
窒素バブリング(5ml/min)を加熱による固体化時に行ったこと以外は、実施例1と同様に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製した。乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で97.5%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、8.8mol%であった。
【0099】
(2) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、40.3wt%-Alであった。
【0100】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 0.9μm、均一性は0.310であった。
【0101】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は22.1m2/mmol-Alであった。
【0102】
(d) 溶媒への溶解割合
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のn-ヘキサンとトルエンへの溶解割合を求めたところ、それぞれ0.1mol%、0.35mol%と極めて低い値であった。
【0103】
(3) エチレン重合評価
1. ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
上記で合成した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例1の(3)1.と同様に重合評価を実施したところ、66×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。
得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。また、高温GPCにより求めた分子量は17万で、Mw/Mnは2.5であった。
【0104】
実施例4
(1) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
窒素バブリング(7.5ml/min)を加熱による固体化時に行ったこと以外は、実施例1と同様に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製した。乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で98.5%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、8.2mol%であった。
【0105】
(2) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、42.1wt%-Alであった。
【0106】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 0.7μm、均一性は0.300であった。
【0107】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は21.5m2/mmol-Alであった。
【0108】
(d) 溶媒への溶解割合
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のn-ヘキサンとトルエンへの溶解割合を求めたところ、それぞれ0.1mol%、0.35mol%と極めて低い値であった。
【0109】
(3) エチレン重合評価
1. ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
上記で合成した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例1の(3)1.と同様に重合評価を実施したところ、72×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。
【0110】
得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。また、高温GPCにより求めた分子量は20万で、Mw/Mnは2.4であった。
【0111】
2.ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
攪拌機付ガラスフラスコに、上記で合成した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物10g(155.9mmol-Al)を入れ、トルエンにてスラリー濃度15wt%に調整した。これにビスインデニルジルコニウムジクロライド(和光ケミカル社製、0.78mmol-Zr)のトルエン溶液を室温下に徐々に添加し、そのまま3時間、攪拌下に反応を行った。上澄みに若干の着色が見られなかったので、洗浄は実施しなかった。この調製触媒のトルエンスラリーを用いてエチレンの単独重合を行った。
【0112】
耐圧硝子製攪拌機、圧力計付SUSオートクレーブ(1500ml)にヘキサン800ml導入し、エチレン0.5MPa加圧脱圧を4回行うことによりにより系内の窒素ガスをパージした。その後、0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を0.5ml添加した。内溶液をオイルバスにより65℃まで昇温した。上記調製触媒のトルエンスラリー(触媒固体として15mg)を加圧投入し、すぐさま、エチレンにて系内の圧力を0.7MPaまで加圧し、重合をスタートさせた。系内の圧力を0.7MPa、重合温度を70℃にキープし、1時間のスラリー重合を実施した。1時間の重合の後に、エチレンの供給を止め、系内のガスを放出することにより重合を止めた。更に、少量のジ-t-ブチルヒドロキシトルエン入りのメタノールを加え、ヌッチェによりポリマーをろ取した。得られたポリマーを50℃における減圧乾燥したところ、ポリマー重量は350gで、重合活性は約23300g-PE/g-cat・hrの非常な高活性であった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0113】
実施例5
(3) エチレン重合評価
2.ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
実施例1で得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例4の(3)2.記載の方法と同様に触媒調製し、得られた触媒の重合評価を行ったところ、250gのポリマーを得た。重合活性は約16700g-PE/g-cat・hrの非常な高活性であった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0114】
実施例6
(3) エチレン重合評価
2.ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
実施例2で得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例4の(3)2.記載の方法と同様に触媒調製し、得られた触媒の重合評価を行ったところ、285gのポリマーを得た。重合活性は19000g-PE/g-cat・hrの非常な高活性であった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0115】
実施例7
(3) エチレン重合評価
2.ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
実施例3で得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例4の(3)2.記載の方法と同様に触媒調製し、得られた触媒の重合評価を行ったところ、312gのポリマーを得た。重合活性は20800g-PE/g-cat・hrの非常な高活性であった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0116】
比較例1
本比較例は、特許文献7の実施例7の再現である。
【0117】
(1) 溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
撹拌装置を有する内容積500mLのセパラブルフラスコに、トリメチルアルミニウム(TMAL) 68.39g(948.81mmol)、トルエン102.51gを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これにアセトフェノン82.13g(683.56mmol)とトルエン19.35gの溶液を、フラスコ中の内部温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、TMALとアセトフェノンの酸素原子のモル比は、1.39であった。反応液に予備実験1で調製したポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液を熱分解反応の活性化剤とし、アルミニウム原子基準で49.0mmolとなる量を一気に投入し、その後65℃で9時間加熱することにより、アセトフェノンを酸素源に用いたポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない薄黄色の透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム濃度分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は9.15wt%であった。得られた溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、23.2mol%であった。なお、本溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物は溶液状態のため、試験方法の項で記載した溶解度測定は出来なが、溶液の比重とアルミニウム濃度から計算で求めたトルエン中の濃度は約3.1mol/Lであった。
【0118】
(2) エチレン重合評価
重合評価は予備実験1の(2)1.に記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は65×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。ポリマー形状は不定形で、重合器のファウリングが顕著であった。
【0119】
(3) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
上記アセトフェノンを用いて調製した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたことおよび窒素バブリングを行わなかったこと以外は実施例1と同様に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を調製した。乾燥固体の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で54.8%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、11.8mol%であった。
【0120】
(4) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、40.1wt%-Alであった。
【0121】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 6.2μm、均一性は0.300であった。
【0122】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は13.2m2/mmol-Alであった。
【0123】
(5) エチレン重合評価
上記で合成した固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例1の(3)1.と同様に重合評価を実施したところ、重合活性は37×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0124】
2.ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
上記で得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例4の(3)2.記載の方法と同様に触媒調製し、得られた触媒の重合評価を行ったところ、23gのポリマーを得た。重合活性は約1500g-PE/g-cat・hrの活性であった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0125】
比較例2
本比較例は、特許文献7の実施例1の再現である。
【0126】
(1) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成
撹拌装置を有する内容積5Lのセパラブルフラスコに予備実験1(Al/O=1.20)で調製したポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液 406.5g(1.361mol-Al)を入れ、攪拌しながら100℃で8時間加熱した。加熱中に固体状ポリメチルアルミノキサン組成物が析出した。溶液を30℃以下にまで冷却した後に、洗浄のためにn-ヘキサン3.6Lを攪拌下に添加した。固体状ポリメチルアルミノキサン組成物をデカンテーションし、上澄み液を除去した後に、n-ヘキサン 3Lで2度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体を室温下に減圧乾燥することにより乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を得た。乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の析出率は使用した溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物のアルミニウム原子基準で96%であった。得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のMe(TMAL)量を1H-NMRより求めたところ、9.0mol%であった。
【0127】
(2) 固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の分析
(a) アルミニウム含量
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物中のアルミニウム含量を測定したところ、37.3wt%-Alであった。
【0128】
(b) 形状評価
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のマスターサイザー2000 Hydro Sによる粒度分布評価を行ったところ、体積基準のメジアン径d(0.5) 9.4μm、均一性は0.296であった。
【0129】
(c) 比表面積測定
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の比表面積測定を行ったところ、アルミニウム原子 1mmol当りの比表面積は19.5m2/mmol-Alであった。
【0130】
(d) 溶媒への溶解割合
乾燥固体状ポリメチルアルミノキサン組成物のn-ヘキサンとトルエンへの溶解割合を求めたところ、それぞれ0.1mol%、0.4mol%と極めて低い値であった。
【0131】
(3) エチレン重合評価
1. ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いた重合
磁気撹拌装置を持つ500mlの四つ口フラスコにトルエン250mlを導入し、34℃にまで加熱した。これにアルミニウム原子換算で0.16g(5.93mmol)の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物(Al/O=1.20)のトルエンスラリー溶液を加え、さらにAl/Zrのモル比が5000となるようにビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Cp2ZrCl2)を加え、40℃に昇温しながらエチレンガスを吹き込んだ。10分後に、エチレンガスの供給を止め、メタノールを投入して触媒を失活させた。生成したポリエチレンを濾過乾燥し、重合活性を求めたところ64×106g-PE/mol-Zr・atm・hrであった。
得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。また、高温GPCにより求めた分子量は16万で、Mw/Mnは2.7であった。
【0132】
2. ビスインデニルジルコニウムジクロライドを用いた重合
上記で得られた固体状ポリメチルアルミノキサン組成物を用いたこと以外は実施例4の(3)2.記載の方法と同様に触媒調製し、得られた触媒の重合評価を行ったところ、80gのポリマーを得た。重合活性は約5300g-PE/g-cat・hrであった。得られたポリマーはさらさらした微粒子状で、重合後の反応器への付着がないものであった。
【0133】
実施例1〜7及び比較例1〜2の結果をまとめて以下の票に示す。
【0134】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、オレフィン重合体の製造技術分野に有用である。
図1