【実施例】
【0041】
実施例1
アポトーシスを誘導する、MPN細胞に対する化合物1の活性
簡潔に言うと、細胞株HEL 92.1.7(
図1Aおよび
図1C)ならびにUKE1(
図1Bおよび
図1D)を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有する培地中に播種した。24時間後、細胞を、1)化合物1;または2)TG101209と組み合わせた化合物1のいずれかで48時間処置した。処置の終わりに、細胞を1×PBSで洗浄し、アネキシンVおよびTOPRO3ヨウ化物で染色した。アポトーシス細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーにより測定した。
【0042】
図1A〜
図1Dが実証するように、化合物1(図の説明文においてBC2059と呼ばれる)は、HEL 92.1.7およびUKE1両方の細胞のアポトーシスを誘導した。これらのアポトーシス誘導効果は、TG101209により増強された。
【0043】
実施例2
アポトーシスを誘導する、患者から単離された初代MPN細胞に対する化合物1の他の作用物質との組み合わせでの活性
簡潔に言うと、MPN患者の骨髄から単離されたCD34+細胞を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有する培地中に播種した。24時間後、細胞を、化合物1でまたはTG101209と組み合わせた化合物1で48時間処置した。処置の終わりに、細胞を1×PBSで洗浄し、アネキシンVおよびTOPRO3ヨウ化物で染色した。アポトーシス細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーにより測定した。併用指数(CI)を、Chou-Talalayの方法(Adv. Enzyme Regul. 22, 27-55)を用いて測定した。
【0044】
図2は、この実験の結果を示す棒グラフである。見られるように、100 nMまたはそれより上の化合物1(図の説明文においてBC2059と呼ばれる)は、CD34+ MPN細胞のアポトーシスを誘導した。TG101209の添加は、この効果を増強した。
【0045】
実施例3
アポトーシスを誘導する、CML細胞に対する化合物1の活性
簡潔に言うと、細胞株K562(ヒト不死化骨髄性白血病株)およびLAMA-84(ヒトリンパ球細胞株)を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有する培地中に播種した。24時間後、細胞を、化合物1で48時間処置した。処置の終わりに、細胞を1×PBSで洗浄し、アネキシンVおよびTOPRO3ヨウ化物で染色した。アポトーシス細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーにより測定した。
【0046】
図3Aおよび
図3Bは、この実験の結果を実証する表である。見られるように、化合物1での処置は、細胞周期のG0/G1期でアポトーシス細胞の数を増加させたが、細胞周期のS期またはG2/M期では有意な効果を有さなかった。
【0047】
実施例4
アポトーシスを誘導する、CML細胞に対する化合物1の他の作用物質との組み合わせでの活性
簡潔に言うと、細胞株K562およびLAMA-84を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有する培地中に播種した。24時間後、化合物1を1)単独で;または2)パノビノスタットおよびニロチニブとの組み合わせでのいずれかで、細胞を48時間処置した。処置の終わりに、細胞を1×PBSで洗浄し、アネキシンVおよびTOPRO3ヨウ化物で染色した。アポトーシス細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーにより測定した。
【0048】
図4A〜
図4Cは、この実験の結果を実証する棒グラフである。これらの図が示すように、化合物1での処置は、K562およびLAMA-84両方の細胞株においてアポトーシス細胞の数を増加させた。パノビノスタットおよびニロチニブは、化合物1の効果を増強した。
【0049】
実施例5
ヒトMPNのマウスモデルにおける化合物1の活性。本発明者らは化合物1のインビボ抗MPN活性を測定した。
簡潔に言うと、NOD-SCIDマウスに亜致死的に放射線照射し、HEL 92.1.7細胞を尾静脈中に注入して、MPNを確立した。マウスを、尾静脈を介して3週間、b.i.w投与した15または20 mg/Kgの化合物1で処置した。投薬を停止した後に、動物を生存について追跡した。対照と比較した際、化合物1で処置したマウスは、有意に改善された生存を実証した(p<001)。
【0050】
実施例6
AML細胞におけるβ-カテニンの発現および核局在化に対する化合物1の効果
この実験の目的は、AML細胞におけるβ-カテニンの発現および核局在化に対する化合物1の効果を解析することであった。
【0051】
簡潔に言うと、CD34+初代AML細胞、CD34+初代FLT3-ITD AML細胞、およびCD34+正常細胞を、抗β-カテニン抗体およびDAPI核酸染色で染色した。これらの染色の写真をまた、マージした。染色した細胞の写真を、
図5Aに含める。これらの写真が示すように、両方のタイプのAML細胞において多くのβ-カテニンが発現しており、β-カテニンはこれらの細胞の核に濃縮されている。
【0052】
図5Bは、CD34+初代FLT3-ITD AML細胞を100 nMの化合物1で16時間処置した結果を実証する。見られるように、対照細胞(すなわち、化合物1で処置していない)と比較した際、この処置は、AML細胞においてβ-カテニンの発現および核局在化の枯渇をもたらす。
【0053】
図5Cは、化合物1での処置がAML細胞においてβ-カテニンの発現および核局在化の枯渇をもたらすことをさらに実証するウェスタンブロットの写真である。見られるように、100 nMの化合物1で処置したAML細胞は、より少ないβ-カテニンを発現したが、ほぼ同じレベルのTBL1、c-MYC、サバイビン、およびβ-アクチンを発現した。
【0054】
実施例7
AML細胞におけるβ-カテニンのTBL1への結合に対する化合物1の効果
この実験の目的は、AML細胞におけるβ-カテニンのTBL1への結合に対する化合物1の効果を解析することであった。
【0055】
図6Aは、100 nMの化合物1で8時間処置した後に、初代AML細胞中により少ないβ-カテニンが存在することを実証するウェスタンブロットの写真である。
【0056】
図6Bは、化合物1の事前の投与を伴う場合および伴わない場合の、染色したAML細胞の一連の写真である。上のパネルは、対照細胞(化合物1の事前の投与を伴わない)を示し、下のパネルは、100 nMの化合物1の投与後16時間のAML細胞を示す。細胞を、抗β-カテニン抗体、抗TBL1抗体、およびDAPI核酸染色で染色した。TBL1および抗β-カテニン染色の写真をまた、マージした。見られるように、化合物1の投与は、β-カテニンのレベルを枯渇させ、β-カテニンのTBL1への結合を大幅に妨害した。特に右上の写真と右下の写真とを比較されたい。
【0057】
図6Cは、化合物1のAML細胞への投与が、β-カテニンのプロテアソーム分解をもたらすことを実証するウェスタンブロットの写真である。見られるように、無処置のAML細胞と比較した際に、100 nMの化合物1で8時間処置したAML細胞中にはより少ないβ-カテニンが存在する。しかしながら、10 nMのカーフィルゾミブ(CZ)(プロテアソーム阻害剤)を同じAML細胞に投与すると、β-カテニンの量が増加した。
【0058】
実施例8
AML細胞における標的遺伝子プロモーターおよび転写でのβ-カテニンに対する化合物1の効果
この実験の目的は、AML細胞における標的遺伝子プロモーターおよび転写でのβ-カテニンに対する化合物1の効果を解析することであった。
【0059】
図7Aは、様々な量の化合物1でのAML細胞の処置に対するTOP-FLASHおよびFOP-FLASHルシフェラーゼ活性の棒グラフを示す。
【0060】
TOP-FLASHは、チミジンキナーゼ(TK)最小プロモーターおよびルシフェラーゼオープンリーディングフレームの上流に3コピーのTCF結合部位(野生型)の2セット(2番目のセットは逆向き)を含有するトランスフェクショングレードT細胞因子(TCF)レポータープラスミドである。
【0061】
FOP-FLASHは、変異したTCF結合部位を含有するレポータープラスミドであり、陰性対照である。
【0062】
図7Aが実証するように、20 nM、50 nM、および100 nMの化合物1での処置は、このルシフェラーゼアッセイにより測定した際にβ-カテニンのはるかに低い発現を結果としてもたらした。FOP-FLASH(陰性対照)において、低減は無かった。これらの結果により、化合物1でのAMC細胞の処置は、β-カテニンの発現の低減を結果としてもたらすことが示される。
【0063】
図7Bは、AML細胞を化合物1で処置する効果のchIP(クロマチン免疫沈降)解析の結果の棒グラフを含む。
図7Bが示すように、AML細胞の200 nMの化合物1での8時間の処置は、サバイビン、CCND1、およびc-MYCのプロモーターDNAの量の低減を結果としてもたらした。
【0064】
図7Cは、β-カテニン、c-MYC、サイクリンD1、およびp21(対照)のレベルに対する、100 nMの化合物1をAML細胞に投与する効果の棒グラフを含む。
【0065】
図7が実証するように、100 nMの化合物1での処置は、β-カテニン、c-MYC、およびサイクリンD1のより低い発現、ならびにp21のはるかに高い発現を結果としてもたらした。
【0066】
実施例9
インビトロアポトーシスおよび初代AML細胞を移植したNSGマウスの生存に対する化合物1の効果
この実験の目的は、インビトロアポトーシスおよび初代AML細胞を移植したNSGマウスの生存に対する化合物1の効果を解析することであった。
【0067】
図8Aは、種々の量の化合物1で処置した、CD34+初代FLT3-WT AML細胞、CD34+初代FLT3-ITD AML細胞、およびCD34+正常細胞における生育不能細胞の割合(%)を示す棒グラフである。
図8Aが実証するように、化合物1は、両方のタイプのAML細胞においてインビトロアポトーシスを有意に誘導した。
【0068】
図8Bは、種々の量の化合物1で処置したCD34+CD38-Lin-初代AML細胞における生育不能細胞の割合(%)を示す棒グラフである。
図8Bが実証するように、化合物1は、AML細胞においてインビトロアポトーシスを有意に誘導した。
【0069】
OCI-AML3異種移植細胞により確立されたAMLを有するNOD-SCID-IL2γ受容体欠損(NSG)マウスにおける、化合物1での3週間の週2回の尾静脈注入の処置は、対照マウスと比較した際に改善された生存を結果としてもたらした。
図8Cは、この実験の結果を実証するグラフを含む。5 mg/kgの化合物1および10 mg/kgの化合物1の処置の両方は、改善された生存を結果としてもたらし、10 mg/kg用量がより有効であった。
【0070】
非常に類似した結果が、初代FLT3-ITD AML異種移植を有するNSGマウスにおいて得られた。
図8Dに示されるように、10 mg/kgの化合物1での処置(3週間、週2回の静脈内注入)は、対照マウスと比較した際に生存率(%)の劇的な増大を結果としてもたらした。
【0071】
これらの結果は、化合物1が初代AML細胞を移植したNSGマウスの生存を有意に改善することを強く示唆する。