特許第6063487号(P6063487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒールビー コーポレイションの特許一覧

特許6063487ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法
<>
  • 特許6063487-ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法 図000003
  • 特許6063487-ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法 図000004
  • 特許6063487-ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063487
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/145 20060101AFI20170106BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20170106BHJP
   A61B 5/15 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61B5/14 310
   A61B5/05 B
   A61B5/14ZDM
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-558712(P2014-558712)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-512672(P2015-512672A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】RU2013000144
(87)【国際公開番号】WO2013125987
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】2012106461
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】514213958
【氏名又は名称】ヒールビー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ エヴゲニー リヴォヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チェチク アンドレイ アナトリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エロホフスキー ヴラジミール ユリエヴィチ
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/022926(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/039627(WO,A1)
【文献】 特開2011−078443(JP,A)
【文献】 特開2009−005842(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/033625(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/126827(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける血液グルコースの濃度を測定する方法であって、当該方法が:
該ヒトの身体のある領域に間隔をあけて取り付けられた電極を使用して、予め定められた時間間隔で前記領域の高周波インピーダンスの値および低周波インピーダンスの値を連続的に測定するステップ;
上記高周波インピーダンスの測定値を用いて、上記電極間に位置する該領域の組織内における流体の量の推定値を決定するステップ;
上記低周波インピーダンスの測定値を用いて、該電極間に位置する該領域の上記組織内における細胞外液の量の推定値を決定するステップ;
上記細胞外液の該量の代謝成分の増分を:
上記流体の該量に関する前回測定された値に対して相対的な前記流体の該量の上記推定値の増分を決定すること;
上記細胞外液の該量に関する前回測定された値に対して相対的な前記細胞外液の該量の上記推定値の増分を決定すること;
上記流体の該量の上記推定値の該増分と上記細胞外液の該量の上記推定値の該増分との間での差異を決定すること;
により決定するステップ;
上記細胞外液の該量の上記代謝成分の該増分を正規化することによって上記血液グルコースの該濃度の増分を決定するステップ;および
上記血液グルコースの該濃度の上記増分と前回決定された該血液グルコースの濃度とを合算することにより、前記血液グルコースの該濃度を決定するステップ;
を含み、ここで、
第1の時間間隔において上記血液グルコースの濃度を決定するステップが、前記第1の時間の間隔における該濃度の増分と予め決定された初期血液グルコース濃度とを合算するステップを含む;
ヒトの血液グルコースの濃度を測定する方法。
【請求項2】
上記予め決定された初期血液グルコース濃度が、侵襲的に予め決定された初期血液グルコース濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ヒトの該身体の上記領域に間隔をあけて取り付けられた少なくとも2つの電極が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記少なくとも2つの間隔をあけて設けられる電極が、腕または指の末梢の身体領域に取り付けられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記予め定められた時間間隔が1秒間から10分間までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
当該方法において:
sum(t)が以下の式:
sum(t)=A・L/ZHF(t
に従って決定される、上記電極間に位置する該領域の組織内における上記流体の量であって、ここで:
Lは前記2つの電極間の距離であり;
HF(t)は時点tにおいて測定された上記高周波HFインピーダンスであり; Aは:
A=Vsum・ZHF/L
として決定される校正係数であって、ここで:
sumは前記電極間に位置する上記領域内の該組織中における上記流体の量に関する予備的に決定された値であり;
HFは予備的に決定された高周波HFインピーダンスであり;
out(t)が以下の式:
out(t)=B・L/ZLF(t
に従って決定される、前記電極間に位置する上記領域の該組織中における上記細胞外液の該量であって、ここで:
LF(t)は時点tにおいて測定された上記低周波LFインピーダンスであり; Bは:
B=Vout・ZLF/L
として算出される校正係数であって、ここで:
outは領域内における上記細胞外液の予備的に決定された量であり;
LFは予備的に決定された低周波LFインピーダンスであり;
ΔWosm(t)が:
ΔWosm(t)=[Wsum(tk−1)−Wsum(t)]−K[Wout(tk−1)−Wout(t)]
として決定される上記代謝成分の該増分であって、ここで:
sum(tk−1)は時点tk−1において測定された上記組織内における前記流体の該量であり;
out(tk−1)は時点tk−1において測定された上記細胞外液の該量であり; Kは、1.2から2.1までの範囲から選択される、ヒト・ヘマトクリット量に依存する係数であり;
ΔG(t)が:
ΔG(t)=ΔWosm(t)・K・KPR/K
として決定される上記血液グルコースの前記濃度の該増分であって、ここで:
は0.005lミリモル−1から0.006lミリモル−1までの範囲の正規化係数であり;
は、食事を摂取する前には0.23から0.4までの範囲から選択され、そして、該食事の後には0.6から1.0までの範囲から選択される係数であり;
PRは、前記食事を摂取してから20分後から45分後までに血液中の上記グルコースの該濃度を測定することに対応した係数であって、ここで:
ΔWosm(t)が0より大きい場合には、KPR=1であり;そして
ΔWosm(t)が0より小さい場合には、KPR=−1である;請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの健康状態を医学的に検査するための非外科的な方法、すなわち、ヒト身体部分のインピーダンスの測定結果としてヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト身体部分の電気的なインピーダンスまたはインピーダンス成分の測定に基づいてヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための幾つかの非侵襲的な方法が公知である。
【0003】
たとえば、ヒト血液中における糖含量を指示するための方法が公知であり[露国特許第2073242号、G01N33/4、1997年]、その方法によれば、トランスデューサの電場内に置かれた指の誘電体透磁率の変動に基づいて糖含量レベルが決定される。
【0004】
また、ヒト血液中における糖の量をモニタリングするための方法も公知であり[露国特許第2088927号、G01N33/49、1997年]、その方法によれば、発振回路素子へのヒトの直接的な作用を介して高周波発生器の二次回路に含まれている発振回路のリアクタンスを変化させることにより測定が行われる。この方法の場合、血液中の糖の量は、高周波発生器の二次回路における電流の変動に基づいて決定される。
【0005】
別の方法も公知であり[米国特許第5792668号、G01N27/00、1998年]、この方法の場合、ヒト身体により反射された高周波放射またはヒト身体を通過した高周波放射のスペクトル分析が行われる。電気的インピーダンスの反応成分を特徴付けする直接波と反射波(または透過波)との間での位相シフトがこの方法により測定されるべきパラメータである。血液中に含まれている物質の濃度(特にはグルコース濃度)がそれらの測定された位相スペクトルのパラメータに基づいて決定される。
【0006】
更に別の方法が公知であり、その方法は、露国特許第9703U1号、A61B5/00、1999年に記載されている装置において具現化されたものである。グルコース濃度は、2つの周波数におけるヒト身体領域のインピーダンスの測定に基づき、インピーダンスの容量成分を決定し、その得られた容量成分の値を患者の血液中におけるグルコース濃度に変換することにより、この装置によって決定される。
【0007】
ヒト血液中におけるグルコース濃度を非侵襲的に測定するための方法が公知である[米国特許第6517482号、A61B5/00、2003年]。その方法は、数多くの周波数において2つの電極間におけるインピーダンスを測定し、それらの測定値に基づいてグルコース濃度の値を導出することに基づく。
【0008】
また、血液中におけるグルコース濃度を非侵襲的に決定するための別の方法も公知であり、その方法は、2対の四電極センサを用いて電気伝達関数を測定するステップを含んでいる[露国特許第2342071号、A61B5/053、2008年]。血液中におけるグルコースの濃度は、前以って特定された数理モデルに基づいて決定される。
【0009】
また、ヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するための別の方法も公知であり[米国特許第7050847号、A61B5/00、2006年]、この方法によれば、センサを用いてヒト身体領域のインピーダンスが複数の異なる周波数において測定される。高い周波数におけるインピーダンス値は身体組織に含まれている液量に関係しており、一方、低い周波数におけるインピーダンス値は細胞外液の量に関係している。それらの測定値に基づいてヒト身体における生体液のパラメータが決定され、その後、これらのパラメータからヒト血液中におけるグルコース濃度が導出される。
【0010】
しかしながら、上で説明されている種々の方法は1つの共通した欠点により特徴付けられ、すなわち、これらの方法を用いることにより得られるヒト血液中のグルコース濃度の値は、測定精度の観点からすると、直接的な侵襲的方法を用いて得られた値よりも下位にランク付けされるという共通の欠点を特徴としている。その反面、血液サンプルの採取を必要とする侵襲的な方法は、利便性および安全性の観点からすると、非侵襲的な方法よりも下位にランク付けされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明により解決されるべき技術的な問題は、現在公知の非侵襲的な方法と比べてより精度が高いことを特徴とする、ヒト血液中におけるグルコース濃度を連続的に決定するための非侵襲的な方法を考案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ヒトにおける血液グルコースの濃度を測定する方法であって、その方法は:
ヒトの身体のある領域に間隔をあけて取り付けられた電極を使用して、予め定められた時間間隔で前述の領域の高周波インピーダンスの値および低周波インピーダンスの値を連続的に測定するステップ;
高周波インピーダンスの測定値を用いて、それらの電極間に位置する領域の組織内における流体の量の推定値を決定するステップ;
低周波インピーダンスの測定値を用いて、それらの電極間に位置する領域の組織内における細胞外液の量の推定値を決定するステップ;
その細胞外液の量の代謝成分の増分を:
その流体の量に関して前回測定された値に対して相対的なその流体の量の推定値の増分を決定すること;
細胞外液の量に関して前回測定された値に対して相対的な細胞外液の量の推定値の増分を決定すること;
その流体の量の推定値の増分と細胞外液の量の推定値の増分との間での差異を決定すること;
により決定するステップ;
上述の細胞外液の量の代謝成分の増分を正規化することによって血液グルコースの濃度の増分を決定するステップ;および
上述の血液グルコースの濃度の増分と前回決定されたその血液の濃度とを合算することにより、血液グルコースの濃度を決定するステップ;
を含み、ここで、
第1の時間間隔において血液グルコースの濃度を決定するステップは、その第1の時間の間隔におけるその濃度の増分と初期血液グルコース濃度とを合算するステップを含む。
【0013】
本方法の主要な物理学は、あるヒト身体領域における流体の量を測定することにある。ヒト身体における水分は体重の70%を占めていて、且つ、単一の区域としてはヒト身体中に存在せず、あまねく身体組織に分布している。血管壁および細胞膜(ヒト身体のすべての組織がこれらの材料から成っている)は流体に対する境界としての機能を果たしている。一般的に、3つの水分区域を区別することが容認されている:細胞内液、血管内液(血漿液)および細胞間液(細胞間区域を満たしている流体)。
【0014】
細胞内液または組織細胞および赤血球内に包含されている流体は、ヒト体重の大凡30−40%を占めている。
【0015】
血管内液および細胞間液は細胞外液の区域を形成しており、ヒト体重の約20%を占めている。
【0016】
ヒト身体の内部において処分または再処理されることとなる、細胞または細胞の生命活動の生成物の寿命を維持することを目的とした物質がそれぞれのタイプの流体中に存在する。これらの物質は、ヒト身体の生命活動のプロセス中に細胞膜を通じて1つの区域から別の区域へ移動する。その膜の異なる側での物質の濃度における差異(濃度勾配)に依存する浸透圧は、この動きに対する駆動力の1つを表す。
【0017】
静止状態においては代謝プロセスの動的平衡状態が観測される。(たとえば、食物の摂取後における胃腸管からのグルコースの流入とともに)浸透圧の濃度勾配の出現は、そこに溶解している固体の濃度が比較的高いことにより特徴付けされる区域の方向へ水分が細胞膜を通じて移動することを押し進める。このプロセスの結果として水分セクタの量が変化する。しかし、その後、これらの区域の乱された平衡状態を修復しようと努める調節機構が作動し始める。言い換えれば、ヒト身体の水分区域量の変化は特徴的な(周期的な)固有の特性を有している。これらの固有の特性は、ヒト身体における代謝プロセスの特徴の指標、たとえば食物摂取後のヒト血液中におけるグルコース濃度の増加の指標として使用することができる。
【0018】
本方法の基礎は、あるヒト身体領域のインピーダンスを定期的に測定する過程で決定される経時的なヒト身体の水分区域の変化に基づいて、血液中におけるグルコース濃度の増加または減少を推定することにある。
【0019】
本方法の特定の実施形態においては以下のステップが実行される。
【0020】
測定の始めにヒト血液中のグルコース濃度の初期値が決定される(侵襲的な方法または非侵襲的な方法のうちのどちらか二者択一的な方法を用いて)。この絶対値はあらゆる人間に対して個別的なものであり、且つ、グルコース濃度変化の動態に関する性状を決定するだけでなく、人間の生活活動の異なる時期中におけるその絶対値をも決定する。
【0021】
具体的には、相互に特定の距離を隔てて(好適には末梢の身体領域に−たとえば指または腕に)取り付けられた少なくとも2つの電極を用いて、あるヒト身体領域のインピーダンスを測定することができる。
【0022】
高い周波数および低い周波数におけるヒト身体領域のインピーダンスの測定が1秒間から10分間までの予め定められた時間間隔で行われる。本方法のハードウェア実装の便宜上、これらの時間間隔は等しくあるべきである。
【0023】
測定を行っている間に食物摂取の瞬間が記録され、この事実を利用して、ヒト身体へのグルコース供給の動態に関する指標を調節する。
【0024】
詳細には、本方法を実行したときに、時点tにおいて高い周波数および低い周波数で測定されたヒト身体領域インピーダンスの値に基づいて以下のパラメータが決定される:
1)電極間に位置するヒト身体領域の組織に含有されている流体の量Wsum(t)が次の式:
sum(t)=A・L/ZHF(t
から算出され、ここで:
Lは2つの電極間の距離であり;
HF(t)は時点tにおいて測定された高周波HFインピーダンスであり;
Aは:
A=Vsum・ZHF/L
として決定される校正係数であって、ここで:
sumは電極間に位置する領域内の組織中における流体の量に関する予備的に決定された値であり;
HFは予備的に決定された高周波HFインピーダンスであり;
2)Wout(t)は電極間に位置する領域の組織中における細胞外液の量であって、以下の式:
out(t)=B・L/ZLF(t
に従って決定され、ここで:
LF(t)は時点tにおいて測定された低周波LFインピーダンスであり;
Bは:
B=Vout・ZLF/L
として算出される校正係数であって、ここで:
outは電極間に位置する領域内における細胞外液の予備的に決定された量であり;
LFは予備的に決定された低周波LFインピーダンスであり;
3)ΔWosm(t)は:
ΔWosm(t)=[Wsum(tk−1)−Wsum(t)]−K[Wout(tk−1)−Wout(t)]
として決定される代謝成分の増分であって、ここで:
sum(tk−1)は時点tk−1において測定された電極間に位置するヒト身体領域の組織内における流体の量であり;
out(tk−1)は時点tk−1において測定された電極間に位置するヒト身体領域の組織内における細胞外液の量であり;
は、1.2から2.1までの範囲から選択される、ヒト・ヘマトクリット量に依存する係数であり;
4)ΔG(t)は:
ΔG(t)=ΔWosm(t)・K・KPR/K
として決定される血液グルコースの濃度の増分であって、ここで:
は0.005lミリモル−1から0.006lミリモル−1までの範囲の正規化係数であり;
は、食事を摂取する前には0.23から0.4までの範囲から選択され、そして、食事の後には0.6から1.0までの範囲から選択される係数であり;
PRは、食事を摂取してから20分後から45分後までに血液中のグルコースの濃度を測定することに対応した係数であって、ここで:
ΔWosm(t)が0より大きい場合には、KPR=1であり;
ΔWosm(t)が0より小さい場合には、KPR=−1である。
【0025】
本発明が以下の図式的な図面により例証されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1のボランティアに対する、血液中におけるグルコース濃度決定の結果を示している。図1aは、本発明の方法を含めた種々の異なる方法の使用を通じて決定されたグルコース濃度の変動のグラフを示している。図1bは、インピーダンスおよび温度の測定値のグラフを示している。
図2図2は、第2のボランティアに対する、血液中におけるグルコース濃度決定の結果を示している。図2aは、本発明の方法を含めた種々の異なる方法の使用を通じて決定されたグルコース濃度の変動のグラフを示している。図2bは、インピーダンスおよび温度の測定値のグラフを示している。
図3図3は、第3のボランティアに対する、血液中におけるグルコース濃度決定の結果を示している。図3aは、本発明の方法を含めた種々の異なる方法の使用を通じて決定されたグルコース濃度の変動のグラフを示している。図3bは、インピーダンスおよび温度の測定値のグラフを示している。
【発明の詳細な説明】
【0027】
本方法は以下のような仕方で実行される。
【0028】
2つの電極が相互に間隔(距離L)を隔ててヒト身体領域に確保される。それらの電極を末梢の身体領域(たとえば腕、特には前腕または指)に確保するのが好適である。前腕または指を取り囲む環状の電極を用いた場合に最良の結果が得られるであろう。
【0029】
本明細書において特許請求されている本発明による方法は、ヒト血液中におけるグルコース濃度の増分の値を算出し、続いて、それらの算出された値を合計することに基づくため、インピーダンスの測定を行う前に、血液グルコース濃度を(侵襲的な方法または非侵襲的な方法のいずれかにかかわらず、何らかの他の方法を用いて)測定すべきであり、そして、そのようにして測定されたインピーダンスの値が初期値として採用される。
【0030】
ヒト身体領域のインピーダンスが2つの周波数:高い周波数HFおよび低い周波数LF;において電極間で測定される。高い周波数HFは200kHzから2MHzまでの範囲から選ばれ;低い周波数LFは20kHzから80kHzまでの範囲から選ばれる。身体領域組織の電気的インピーダンスの成分の電気的インピーダンスは、公知の方法の1つを使用して、詳細には、高周波振動を放射し、その後、容量センサを用いてインピーダンスを測定することにより、測定することができる。ヒト身体領域のインピーダンスは1秒間から10分間までの範囲から選ばれる時間間隔で測定される。
【0031】
測定の過程において、食物摂取(外部からヒト身体内へのグルコースの供給を意味する)の瞬間が記録される。これは、記録された食物摂取開始の瞬間から経過した時間を考慮に入れて、グルコースに関連した細胞外液の量の代謝成分の増分を導出するために行われる。
【0032】
ヒト血液中における初期グルコース濃度量、ならびに高い周波数および低い周波数においてヒト身体領域のインピーダンスに関して現在行われている連続的な測定に基づいて、且つ、食物摂取の経時的な瞬間を考慮に入れて、ヒト血液中におけるグルコース濃度が以下のようにして導出される。
【0033】
1.電極間に位置するヒト身体領域に含有されている流体の量Wsum(t)は、それらの電極間の距離Lを考慮に入れて、時点tにおいて高周波HFで測定されたそのヒト身体領域でのインピーダンス値[ZHF(t)]に基づいて、以下のようにして導出される:
sum(t)=A・L/ZHF(t
ここで、Aは次の式:
A=Vsum・ZHF/L
から算出される校正係数である。
【0034】
上の式において、Vsumは、それらの電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている流体の量の(前以って得られた)値である。この値は、たとえば、インピーダンス測定用に選定されたそのヒト身体領域の解剖学的関係を用いて算出することができる。また、高周波ZHFで測定された(且つ、本明細書において特許請求されている本発明に従ってヒト血液中におけるグルコース濃度を決定することを目的とした測定の開始に先立って前以って得られた)ヒト身体領域のインピーダンスの値を用いて、校正係数Aも導出される。
【0035】
2.電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている細胞外液の量Wout(t)は、それらの電極間の距離Lを考慮に入れて、時点tにおいて低周波LFで測定されたそのヒト身体領域でのインピーダンス値[ZLF(t)]に基づいて、以下のようにして導出される:
out(t)=B・L/ZLF(t
ここで、Bは次の式:
B=Vout・ZLF/L
から算出される校正係数である。
【0036】
上の式において、Voutは、それらの電極間に位置するヒト身体領域に含有されている細胞外液の量の(前以って得られた)値である。この値は、たとえば、インピーダンス測定用に選定されたそのヒト身体領域の解剖学的関係を用いて算出することができる。また、低周波ZLFで測定されたヒト身体領域のインピーダンスの値を用いて、校正係数Bも決定される。このインピーダンス値は、本発明に従って行われるヒト血液中におけるグルコース濃度の測定に先立って前以って決定される。
【0037】
3.この後、電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている流体の量に関する得られた値、および電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている細胞外液の量に関する得られた値は、細胞外液量の代謝成分の増分ΔWosm(t)を算出するために使用される。時点tにおけるインピーダンスの測定で得られた流体量の値および時点tk−1における前回の測定で得られた流体量の値がこの算出で使用される。細胞外液量の代謝成分の増分は、次の式:
ΔWosm(t)=[Wsum(tk−1)−Wsum(t)]−K[Wout(tk−1)−Wout(t)]
から算出され、ここで:
sum(t)は、時点tにおいて行われた現在の測定での、電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている流体の量であり;
sum(tk−1)は、時点tk−1において行われた前回の測定での、電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている流体の量であり;
out(t)は、時点tにおいて行われた現在の測定での、電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている細胞外液の量であり;
out(tk−1)は、時点tk−1において行われた前回の測定での、電極間に位置するヒト身体領域の組織中に含有されている細胞外液の量であり;
は、ヒト・ヘマトクリット値に依存する係数である(この係数は1.2から2.1までの範囲から選ばれる)。
【0038】
4.ヒト血液中におけるグルコース濃度の増分の値は、食物摂取の瞬間を考慮に入れて、上述のΔWosm(t)の得られた値に基づいて決定される:
ΔG(t)=ΔWosm(t)・K・KPR/K
ここで:
は0.005lミリモル−1から0.006lミリモル−1までの範囲から選ばれる正規化係数であり;
は食物摂取に依存する係数であって;食物を摂取する前にヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するときには、K値は0.23から0.4までの範囲から選ばれ、そして、食物を摂取した後にヒト血液中におけるグルコース濃度を決定するときには、K値は0.6から1.0までの範囲から選ばれ;
PRは食物を摂取してから20分後から45分後までの時間枠内でヒト血液中におけるグルコースの濃度を決定する場合に使用される係数であって、この係数は、以下のルール:
細胞外液量の代謝成分に関する上述の増分ΔWosm(t)が0より大きい場合には、KPR=1;
細胞外液量の代謝成分に関する上述の増分ΔWosm(t)が0より小さい場合には、KPR=−1;
に従って、細胞外液量の代謝成分に関する上述の増分の符号に依存して、1もしくは−1のいずれかの値をとる。
【0039】
5.時点tによるヒト血液中におけるグルコース濃度の最終的な値は、以下のようにして導出される:
【0040】
ここで:
は、ヒト血液中におけるグルコース濃度の初期値であり;
ΔG(t)は、測定を開始してから時点tまでに得られたヒト血液中におけるグルコース濃度のすべての増分の値であって、ここで、i={1、k}である。
【0041】
このようにして、ヒト血液中におけるグルコース濃度の初期値Gを知り、且つ、高い周波数と低い周波数においてヒト身体領域のインピーダンス−ZHF(t)およびZLF(t)の測定を定期的に行うことにより、ヒト血液中におけるグルコース濃度の現在の値を導出することができる。本発明は、人間の個別的な生理学的特徴および食物摂取の瞬間を考慮に入れるというオプションを含め、ヒト組織における水分区域の量の変化を特徴付けする上述のパラメータを算出することが可能であり、そして最終的には、ヒト血液中におけるグルコース濃度の現在の値を算出することが可能な、かなり簡単な測定装置として具現化することができる。
【実施例】
【0042】
実施例1.健常なボランティア#1に関する測定データの処理
300gの甘味飲料(Pepsi Cola)からなる食事(食物負荷)を摂取した、38歳の健常な男性。図1bは、前腕に設置されたセンサによって記録されたインピーダンス値の変動ZHFおよびZLFならびに温度T℃のグラフを示しており、一方、図1aは、ボランティア#1の血液中におけるグルコース濃度の変動のグラフを示している。ドットは、測定の間に取られた血液サンプルの値を指し示している(Roche Accu−Chek Activeグルコメータが使用された)。150分間の測定間隔での平均誤差は6.8%であった。
【0043】
実施例2.健常なボランティア#2に関する測定データの処理
2杯の200g入りのグラスに入った甘味飲料(Pepsi Cola)からなる食事(食物負荷)を摂取した、45歳の健常な男性。図2bは、前腕に設置されたセンサによって記録されたインピーダンス値の変動ZHFおよびZLFならびに温度T℃のグラフを示しており、一方、図2aは、ボランティア#2の血液中におけるグルコース濃度の変動のグラフを示している。ドットは、測定の間に取られた血液サンプルの値を指し示している(Roche Accu−Chek Activeグルコメータが使用された)。140分間の測定間隔での平均誤差は7.2%であった。
【0044】
実施例3.健常なボランティア#3に関する測定データの処理
200gの甘味飲料(Pepsi Cola)およびバナナからなる複合型の食事(食物負荷)を摂取した、42歳の健常な男性。図3bは、前腕に設置されたセンサによって記録されたインピーダンス値の変動ZHFおよびZLFならびに温度T℃のグラフを示しており、一方、図3aは、ボランティア#3の血液中におけるグルコース濃度の変動のグラフを示している。ドットは、測定の間に取られた血液サンプルの値を指し示している(Roche Accu−Chek Activeグルコメータが使用された)。150分間の測定間隔での平均誤差は9.5%であった。
【0045】
実施された試験は、ヒト血液中におけるグルコース濃度の値を決定する場合、本明細書で特許請求されている本方法が、公知の非侵襲的な方法と比べて、誤差が少ないことにより特徴付けられることを示した。
図1
図2
図3