【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
(接着剤組成物の作製)
以下に示す原料を攪拌機付の容器にて混合し、接着剤組成物を作製した。
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3000B」、重量平均分子量18000)5質量部(以下、単に「部」という)、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−5700」)65部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BDK)10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製「サイクロマーM100」)25部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキメチル)オキセタン(東亜合成社製「OXT212」)10部、
(E)光カチオン重合開始剤として、(4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(サンアプロ社製「CPI−110P」)0.7部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」、平均粒径100μm、標準偏差0.063)1部、
を使用して接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物を使用して、以下に示す評価方法にて引張剪断接着強さ、剥離試験および硬化試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
[引張剪断接着強さ]
耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、長さ25mm、幅25mm、厚さ2.0mm)上に、接着部位が直径8mmの円形となるよう、作製した接着剤組成物を塗布し、2枚の耐熱ガラスを貼り合わせた。
次に、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量が、2000mJ/cm
2となる条件にて160秒間硬化させ、引張剪断接着強さ用試験片を作製した。作製した試験片を、JIS K 6850に従い、温度23℃、相対湿度50%の環境下、万能試験機にて10mm/分の速度で引張り、引張剪断接着強さを測定した。
【0050】
[剥離試験:80℃温水剥離時間]
引張りせん断接着強さの測定に用いた試験片と同様な方法で硬化させた試験片を作製した。試験片を80℃の温水に浸漬させ、温水中で耐熱ガラスが自然に剥離する時間を測定した。
【0051】
[光不透過部硬化試験]
図2に示す青板ガラス(長さ80mm、幅80mm、厚さ0.7mm)22上の中央部に、黒色インクを、長さ80mm、幅14mmの帯状に塗布し乾燥させ、青板ガラス上に、紫外線が透過しない黒色インクからなる帯状の層21を形成した2枚の青板ガラスを作製した。
次に黒色インクを塗布した反対側の青板ガラス全面に、接着剤組成物2gを均一に塗布し、塗布した接着剤組成物上にPETフィルム(長さ100mm×幅100mm×厚さ0.188mm)を載せた。
PETフィルム上に、他方の黒色インクを塗布した青板ガラスを黒色インク塗布面が重なるように載せ、試験片を作製し、次に、365nmの波長の積算光量が、2000mJ/cm
2となる条件にて、青板ガラス上面より紫外線を160秒間照射した。紫外線照射後、試験片よりPETフィルムを剥し、黒色インク塗布面の中央部24の接着剤組成物の硬化率を用いて、光不透過部の接着剤組成物の硬化性を以下の基準により判定した。
良 :硬化率70%以上
可 :硬化率30%以上〜70%未満
不可:硬化率30%未満
【0052】
光不透過部の接着剤組成物の硬化率は以下の手順で測定した。
まず、黒色インク塗布面の中央部の接着剤組成物をスパチュラで掻き取り測定試料とし、赤外分光装置(サーモサイエンティフィック社製、Nicolet is5、DTGS検出器、分解能4cm
−1)を用い、該測定試料に赤外光を入射して赤外分光スペクトルを測定した。
得られた赤外分光スペクトルにて、硬化前後でピーク変化を生じない、2950cm
−1付近に観測されるメチレン基の炭素−水素結合の伸縮振動ピークを内部標準とし、この内部標準の硬化前後のピーク面積と、(メタ)アクリレートの炭素−炭素二重結合に結合する炭素−水素結合の面外変角振動のピークおよびエポキシ化合物のエポキシ基のピークが重なったものに帰属される、810cm
−1付近のピークの硬化前後の面積より、次式を用い硬化率を算出した。
硬化率(%)=[1−(Ax/Bx)/(A0/B0)]×100
ここで、
Ao:2950cm
−1付近の硬化前のピーク面積、
Ax:2950cm
−1付近の硬化後のピーク面積、
Bo:810cm
−1付近の硬化前のピーク面積、
Bx:810cm
−1付近の硬化後のピーク面積、
を表す。
【0053】
<実施例2〜6>
表1に示す配合に従い、(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの組成を変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
尚、実施例1で使用した以外の配合原料としては、以下のものを使用した。
(A)多官能(メタ)アクリレート
トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製「NKエステル3G」)
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルA−TMPT」)
(B)単官能(メタ)アクリレート
2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」)
【0054】
<実施例7〜9>
実施例4の(B)単官能(メタ)アクリレートである、フェノキシジエチレングリコールアクリレートと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートの組成を変更した以外は、実施例1と同様に各種評価を実施した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
<実施例10〜12>
表2に示す配合に従い、接着剤組成物を作製し、実施例1と同様に各種評価を実施した。結果を表2に示す。
【0057】
<実施例13>
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−7000B」、重量平均分子量3500)20部と、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDCP−A」)25部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート25部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート30部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート5部と、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(東亜合成社製「OXT121」)1部、
(E)光カチオン重合開始剤として、4−(フェニルチオ) フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、(サンアプロ社製「CPI−210S」)0.7部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1部、
を使用して接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
<実施例14〜18>
表3に示した(A)多官能(メタ)アリレートを使用した以外は、実施例13と同様な方法で接着剤組成物を作製した。結果を表3に示す。
尚、表1および表2に示した以外の(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、以下のものを使用した。
ポリエステル系ウレタンアクリレート(根上工業社製「KHP−17」、重量平均分子量40000)
ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学社製「NKエステルNPG」)
トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学社製「NKエステルTMPT」)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「NKエステルA−PMTG−65」)
1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート1,9−ND−A」)
【0060】
<実施例19>
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3000B」、重量平均分子量18000)15部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート25部と、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート45部およびジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート15部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(東亜合成社製「C2021P」)4部と、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製「OXT101」)1部、
(E)光カチオン重合開始剤として、(4−(フェニルチオ) フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート0.05部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1部、
を使用して接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
<実施例20〜24>
(D)カチオン重合性化合物および(E)アリールスルホニウム塩の配合量を変更した以外は、実施例19と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表4に示す。
【0063】
<実施例25>
(C)光ラジカル重合開始剤として、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物(チバ・ジャパン社製「IRGACURE754」)を8部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
<実施例26>
(E)アリールスルホニウム塩として、テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアリールスルホニウム塩(BASF社製「IRGACURE−290」)を0.5部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0066】
<実施例27>
(E)アリールスルホニウム塩として、(4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製「CPI−210S」)を1部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0067】
<実施例28>
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−220」、平均粒径20μm、標準偏差0.058)を2部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0068】
<実施例29>
(F)架橋ポリマー粒子として、球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−L200」、平均粒径200μm、標準偏差0.064)を0.1部使用した以外は、実施例5と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0069】
<実施例30>
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(根上工業社製「アートパールGR−200」、平均粒径33μm、標準偏差0.22)を1部使用した以外は、実施例5と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
【0070】
<比較例1>
実施例4で(A)多官能(メタ)アクリレートを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、80℃温水剥離試験において60分経過後も剥離することはなかった。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
<比較例2>
実施例4で(B)単官能(メタ)アクリレートを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、80℃温水剥離試験において60分経過後も剥離することはなかった。結果を表6に示す。
【0073】
<比較例3>
実施例5で(C)光ラジカル重合開始剤を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、いずれの試験においても、接着剤が硬化しなかったため、評価を行うことができなかった。
【0074】
<比較例4>
実施例5で(D)カチオン重合性化合物を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、光不透過部硬化試験においては、光が透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
【0075】
<比較例5>
実施例5で(D)カチオン重合性化合物として、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、光不透過部硬化試験においては、光が透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
【0076】
<比較例6>
実施例5で(E)アリールスルホニウム塩を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、引張剪断接着強さは低く、光不透過部硬化試験において、光を透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
【0077】
尚、表1〜表5に示す以外の、各種接着剤組成物についても同様な評価を行ったところ、多官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、光ラジカル重合開始剤、エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物およびアリールスルホニウム塩の種類によらず評価結果は良好であった。
【0078】
表1〜表5の結果から、本発明の接着剤組成物は、接着強度が高く、水中での剥離性に優れ、光が透過しない部位の硬化性も良好であることが分かる。