(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6063549
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】定規
(51)【国際特許分類】
A61B 3/024 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
A61B3/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-246037(P2015-246037)
(22)【出願日】2015年12月17日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3200572号
【原出願日】2015年8月10日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】515219388
【氏名又は名称】吉田 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅子
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭12−7203(JP,Y1)
【文献】
実公昭39−31713(JP,Y1)
【文献】
特開昭52−26793(JP,A)
【文献】
特開平1−158932(JP,A)
【文献】
米国特許第5946075(US,A)
【文献】
特開2008−246227(JP,A)
【文献】
特表2010−526623(JP,A)
【文献】
特開2011−78469(JP,A)
【文献】
特開2012−40430(JP,A)
【文献】
特表2015−500732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者における視野異常を自己確認するために用いられる定規であって、
シート体と、このシート体に設けられた前記使用者の注視点となる目印と、この目印を同心として所定の間隔で複数表示された円環状のガイド線とを備えてなり、
前記シート体が透明であり、前記使用者が前記シート体を介して物体を視認し得るように構成されている定規。
【請求項2】
前記目印から外方に向かって直線状に延び、前記ガイド線と略直交する複数の第二のガイド線を備えている請求項1記載の定規。
【請求項3】
前記シート体が、矩形状をなした合成樹脂製のものである請求項1又は2記載の定規。
【請求項4】
前記ガイド線のうち、一のガイド線の配色を隣接する他のガイド線の配色に対し異ならせた配色としている請求項1、2又は3記載の定規。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野異常の自己判断および簡易視野検査機器として好適な定規に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、緑内障等の視野異常の疾患を有した患者に対し、簡便な方法によって視野異常を自己認識させるために、種々のものが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来のものは、固視点と視対象が共通のシート体に設けられている。詳述すれば、従来のものは、患者たる使用者が注視する点となる固視点と、その固視点を注視した使用者が自己の視認可否や視認困難を覚知するための任意の絵柄や模様である視対象とがそれぞれ印刷等により一枚のシート体の上に表示されている。
【0004】
ところが、従来のものは、視対象が印刷等により予め定められたものとなるため、当該視対象に対する注意力が弱くなりやすい。しかも、従来のものは、視対象が使用者に近い位置になり易いため、軽度の視覚異常を実感させにくい使用態様に限定されたものとなっていた。また、視野異常の領域を客観的に特定する機能を有しない点も本件とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4759080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、患者等の使用者に対し、自己の視野異常の存在およびその領域を好適に実感させることに寄与し得る定規を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。本発明に係る定規は、使用者における視野異常を自己確認するために用いられる定規であって、シート体と、このシート体に設けられた前記使用者の注視点となる目印と、この目印を同心として所定の間隔で複数表示された円環状のガイド線とを備えてなり、前記シート体が透明であり、前記使用者が前記シート体を介して物体を視認し得るように構成されている。
【0008】
ここで、物体とは、シート体を介して見えるものすべてのものが含まれる。また本発明の性質上、物体は使用者に視認される際に具体的な部位が特定され易いものが望ましい。さらに好ましくは、もし視野異常に起因して使用者に視認され難い部位があったとき、当該部位がどのようなものかが分からなくても物体におけるその周囲から容易に推測し得るものであれば、使用者が主治医や検査者といった他者に容易に伝達することができる。
【0009】
また、透明とは、シート体を介してなんら色彩が変更されずに視認できる狭義の透明のみならず、何らかの色彩を呈したような半透明といった態様をも含まれる。換言すれば、シート体を介して物体が視認可能に構成されていればよい。
【0010】
このようなものであれば、シート体を透明としているので、使用者によって視認する対象である物体を任意に選択し、使用時に状況や使用者の嗜好に応じて適宜選択し得る。換言すれば、当該定規の使用時に使用者の注意を引きやすい物体を用いて使用者に集中を促
すことで、より性格且つ確実な視野異常の有無及び視野異常を来している領域の検出を行うことができる。すなわち本発明によれば、患者等の使用者に対し、自己の視野異常を好適に実感させることに寄与し得る定規を提供することができる。
【0011】
そして、視野異常を来している領域をより的確に把握し得るようにするためには、目印から外方に向かって直線状に延び、ガイド線と略直交する複数の第二のガイド線を備えているようにすることが望ましい。
【0012】
そして、取り扱いを容易なものとするための具体的な態様として、シート体が、矩形状をなした合成樹脂製のものである態様を挙げることができる。
【0013】
また、使用者が視野異常を来している領域をより把握し易くしつつ、使用者以外の他者へ当該領域を容易に伝達し得るようにするためには、複数のガイド線のうち、一のガイド線の配色を隣接する他のガイド線の配色に対し異ならせた配色とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、患者等の使用者に対し、自己の視野異常を好適に実感させること、および異常の領域を数値化、特定することに寄与する定規を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、
図1、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る定規Aは、使用者における視野異常を自己確認するために用いられるものである。具体的には、緑内障による視野異常の有無及び当該視野異常により視野内に生じた感度低下部位Z(
図3)を使用者或いは患者自身に正確に把握、認識させるためのものである。
【0018】
この定規Aは、シート体1と、このシート体1に設けられた使用者の注視点となる目印2と、この目印2を同心として所定の間隔で複数表示された円環状のガイド線3とを備えてなり、シート体1が透明であり、使用者がシート体1を介して物体を視認し得るように構成されている。また当該定規Aは
図1に示すように、使用者が予め決められた設定距離だけ離間した箇所から定規Aを介して任意の距離の物体を視認しつつ、視野異常を自己認識させ得るものである。なお同図では、物体の一例として、定規Aから離間して配置された植物Pをその一例として図示している。このように、本発明に係る定規Aは、場所や距離を選ばすにできる視野異常のセルフチェックシートとして有効に活用し得る。
【0019】
以下、定規Aの具体的な構成について説明する。この定規Aは、上記シート体1、目印2、ガイド線3に加え、目印2から外方に向かって直線状に延び、ガイド線3と略直交する複数の第二のガイド線4を備えている。
【0020】
シート体1は、
図2に示すように、矩形状をなした合成樹脂製である単一のシート本体10を主体としている。具体的に説明すると、シート本体10は、寸法が異なる長辺10a及び短辺10bを有する長方形状をなしたシートである。シート本体10を構成している素材としては、例えば透明のポリエチレンテレフタレートを適用している。
【0021】
目印2は、本実施形態ではシート体1の中心に設定されている。本発明では各ガイド線3の中心であり、且つ複数の第二のガイド線4が交差・集中させた箇所を目印2に設定している。すなわち図示の通り、当該箇所が一見して他の箇所よりも目立つため、目印2として格別のマーク等を施さなくてもよい。しかし目印2として当該箇所に対し彩色した☆等のマーク等を施すことで注視点への注視がより容易となる。
【0022】
ガイド線3は、シート体1上に目印2を中心とした真円形状に描画された線である。このガイド線3は、眼前30cmの距離に設置された場合には、互いに異なる半径3rを有した5°線3a、10°線3b、15°線3c、20°線3d、25°線3e及び30°線3fを有している。これら複数のガイド線3のうち、一のガイド線3の配色を隣接する他のガイド線3の配色に対し異ならせた配色としている。具体的には、5°線3aを赤色、10°線3bを黒色、15°線3cを緑色、20°線3dを青色、25°線3eを茶色、そして30°線3fを橙色に設定している。このように各ガイド線3の配色及び/又はパターンを変えることで、眼科医が使用者に視対象である物体(
図1では植物P)を重ねる位置を指導し易くなるようにしている。
【0023】
これらガイド線3は、
図1に示すように、肉眼Eで目印2を正面、すなわちシート体1の面方向に対し直交する方向から見たときの目印2と肉眼Eとを結んだ図示太い破線で示す仮想の線と、肉眼Eとガイド線3とを結んだ図示細い破線で示す他の仮想の線とがなす角度が常に設定角度θとなるような真円形状をなす。そして複数のガイド線3は、設定角度θが等角度間隔となるように設定された複数の同心円である。これら複数のガイド線3の半径3rは、設定距離とsinθ/cosθとの積として求めることができる。ここで本実施形態では固視点たる目印2から肉眼Eまでの設定距離を30cm、設定角度θを5°間隔にそれぞれ設定した6本のガイド線3を描画している。よって、これら6本のガイド線3の半径3rは、それぞれ約2.62cm、5.27cm、8.02cm、10.92cm、13.97cm及び17.32cmとなる。
【0024】
第二のガイド線4は、目印2から外方に向かって延び、ガイド線3と略直交する複数の直線である。この第二のガイド線4は、シート体1の長辺10a、短辺10bに沿って伸びる互いに90°の角度をなして交差する基準直線41と、この基準直線41から30°傾斜して延びる傾斜直線42とを有している。これら基準直線41及び傾斜直線42により、使用者は視野異常による感度低下部位Z(
図3)をより具体的に把握し易くなる。
【0025】
続いて、このように構成した定規Aを実際に使用するための具体的な一例について
図1及び
図3に示して説明する。
【0026】
図1に示した使用態様は、視対象としての物体として、定規Aから離間した植物Pを利用している態様である。使用者は肉眼Eで定規Aの目印2を設定距離を保ちながら直視しつつ、植物Pがシート体1における種々の位置に位置付けられるように定規Aを動かしながら視野異常の有無並びに視野異常を来した位置を検査することができる。ここで使用者は、必要に応じて目印2を中心に定規Aを回転させて長辺10a、短辺10bの位置を代えることで、視野における広い領域を検査することができる。このように本実施形態に係る定規Aによれば、定規Aから離間した植物Pや、図示しないが屋内外の風景等、視対象と定規Aとの距離を選ばずに検査を行い得る。これにより使用者は視対象として集中し易いものを選ぶこともでき、より円滑な検査の進行に資する。
【0027】
図3に示した使用態様は、視対象としての物体として、机上に置かれた壁掛けカレンダーCの上に定規Aを重ねた状態として、検査を行う態様である。使用者は、設定距離である30cmの距離で中心の目印2を注視した状態で、カレンダーCの数字たる文字C1の
見え方をチェックする。このとき使用者が、同図に示すように例えばカレンダーCの文字C1「17」の印刷が感度低下部位Zに位置することで当該数字が、「薄い(或いは見えにくい)」とき、使用者自身で視野異常を実感できます。またこのとき、物体として規則的に数字である文字C1を配列させたカレンダーCの文字C1を利用することで、使用者は当該文字C1が見えにくくとも、目印2が置かれたカレンダーC上の位置や、感度低下部位Zの周囲に見える文字C1である数字から、容易且つ速やかに「17」という事を傍にいる眼科医に伝達することができる。眼科医は、「17」上に配置されているガイド線3及び第二のガイド線4との関係から、使用者の視野における感度低下部位Zの具体的な位置を正確に知ることが出来る。このように、本実施形態の定規Aは、使用者自身に視野異常を認識させるのみならず、眼科医にとっての視野検査機器としても利用可能である。
【0028】
また勿論物体として
図3に示すカレンダーCを用いた場合の他、例えば、新聞紙面(テレビ欄)や、パソコン画面のランダムドットチラつき画像等、使用者が注意力を惹起された他の視対象を利用することによっても、同図同様の作用効果を奏する。
【0029】
以上のような構成とすることにより、本発明に係る定規Aは、シート体1を透明としている故に、使用者によって視認する対象である物体をそのときの状況や使用者の嗜好に応じて適宜選択し得る。換言すれば、植物PやカレンダーCを例にしていることからも分かる通り、当該定規Aの使用時に使用者の注意を引きやすい物体を用いて使用者に集中を促すことで、より性格且つ確実な視野異常の有無及び視野異常を来している領域の検出を行い得る。すなわち本実施形態によれば、患者等の使用者に対し、自己の視野異常を好適に実感させることに寄与し得る定規Aの提供を実現している。
【0030】
特に本実施形態では上記
図3に示すように、カレンダーC等、好適な視対象を選択することにより、使用者に視野異常を実感させるのみならず、眼科医が行う視野検査機器としての機能をも有効に果たしている。
【0031】
そして、視野異常を来している領域をより的確に把握し得るようにするために本実施形態は、目印2から外方に向かって直線状に延び、ガイド線3と略直交する複数の第二のガイド線4を設けている。
【0032】
加えて、取り扱いを容易なものとするために本実施形態では、矩形状をなした合成樹脂製のシート体1を適用している。
【0033】
特に本実施形態では、使用者が視野異常を来している領域をより把握し易くしつつ、使用者以外の他者へ当該領域を容易に伝達し得るようにすべく、複数のガイド線3のうち、一のガイド線3の配色を隣接する他のガイド線3の配色に対し異ならせた配色としている。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態の構成に限られることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で下記の如く種々変形が可能である。
【0035】
例えば、シート体は単一の透明シートとしたが、勿論、用途に応じ、複数の透明シートを重層させることにより、シート体を構成してもよい。その場合例えば、より角度間隔を小さく設定したガイド線を追加したい場合などに、上記実施形態のシート本体に対し、固視点、他のガイド線、他の第二のガイド線等が描画された他のシート本体を重層して使用する場合等が考えられる。換言すれば、シート体が複数のシート本体を有するものであってもよい。さらに、上記実施形態ではシート体が平板状をなしたものを適用したが勿論、部分円筒面形状や部分球面形状といった三次元形状をなすシート体を適用しても良い。
【0036】
その他、設定距離や設定角度の値や設定角度同士の間隔、更には傾斜直線の傾斜角度等、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
A…定規
1…シート体
2…目印
3…ガイド線
4…第二のガイド線
X…設定距離
Z…感度低下部位
【要約】
【課題】患者等の使用者に対し、自己の視野異常を好適に実感させることに寄与し得る定規を提供する。
【解決手段】本発明に係る定規は、使用者における視野異常を自己確認するために用いられる定規であって、シート体と、このシート体に設けられた前記使用者の注視点となる目印と、この目印を同心として所定の間隔で複数表示された円環状のガイド線とを備えてなり、前記シート体が透明であり、前記使用者が前記シート体を介して当該シート体から離間した物体を視認し得るように構成されている。
【選択図】
図3