(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の正極活物質は、下記式(1)で表される組成を有する非水電解質二次電池用正極活物質である。
Li
x−yNa
yCo
wAl
aMg
bM
cO
2+α・・・(1)
(式(1)中、x、y、w、a、b、c及びαは、それぞれ、1.005<(x―y)<1.050、0<y≦0.020、1.010<x≦1.050、0.990≦w≦1.015、0.005≦a≦0.020、0.001≦b≦0.020、0.0005≦c≦0.005、−0.1≦α≦0.1である。Mは、Ca、Y、希土類元素、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Cu、Ag、Zn、B、Ga、C、Si、Sn、N、P、S、F、Clから選択される1種以上の元素を示す。)
【0013】
上記式において、x、y、w、a、b及びcは、各元素の含有割合(モル比)を表し、αはOのモル比の調整を表す値である。詳細は以下のとおりである。以後、当該含有割合を、「含有量」又は単に「量」と称することもある。
【0014】
上記式において、xはLiとNaの合計含有量を表す。xの範囲は1.010<x≦1.050で、好ましくは1.010<x≦1.030である。xが1.010以下の場合、Li脱離状態に於ける安定性、特に連続充電特性が著しく低下し、1.050を超える場合、結晶性が低下することにより、充放電容量およびサイクル特性が低下する。
【0015】
上記式において(x−y)はLi量を表す。該Liは、電池に用いて充放電した際、ディインターカレーション又はインターカレーションにより変動する。(x−y)の範囲は1.005<(x−y)<1.050で、好ましくは1.005<(x−y)<1.030である。Liが1.005以下の場合、Li脱離に伴う結晶構造の安定性が乏しく、1.050以上の場合、結晶性が低下することにより、充放電容量およびサイクル特性が低下する。
【0016】
上記式において、yはNa量を表す。該Naは、層状化合物であるLiCoO
2の層間に固溶し、Liが脱離した状態となる充電時に、結晶構造の崩壊を抑制することができる。これは、NaがLiと比べて移動度が小さく電圧印加による引き抜きに時間がかかるため、層間にとどまり、結晶構造の崩壊を抑制し、充電時の耐久性を向上させているためであると推測される。
y量を最適化することで、特に連続充電時や4.3V以上の高電圧充電時におけるLiの脱離による結晶構造の崩壊を抑制することができ、最終的に高容量や高サイクル特性に寄与する。NaはLiと比べてイオン半径が大きいため、Liの一部をNaで置換すると層間が拡大する。これは粉末X線回折(XRD)で観察されるピークがNaを含まない材料と比べると低角側へシフトしていることで確認できる。yの範囲は、0<y≦0.020が好ましく、さらに好ましくは0.002≦y≦0.018である。0.020を超えるとLi層にNaが入りきらず、Na過多となり、結晶構造を維持できなくなるなど最終的に電池特性に悪影響を及ぼすと推測される。
【0017】
上記式において、wはCo量を表す。該Coは本発明のリチウム含有複合酸化物を構成する主要元素の一つである。wの範囲は、0.990≦w≦1.015である。0.990未満では、容量およびサイクル特性が低下し、1.015を超えると、結晶構造の安定性が低下する。
【0018】
上記式において、aはAl量を表す。該Alは結晶構造の安定化により熱安定性および連続充電特性が向上する。また正極活物質粒子のバルクのAl量よりも表面のAl量が多く存在する場合、サイクル特性が向上する。aの範囲は0.005≦a≦0.020で、好ましくは0.010≦a≦0.016である。0.005未満では、連続充電特性が著しく低下し、0.020を超えると、容量が低下する。
【0019】
上記式において、bはMg量を表す。該Mgは結晶構造の安定化により熱安定性および連続充電特性が向上する。bの範囲は0.001≦b≦0.020で、好ましくは0.005≦b≦0.012である。0.001未満では、上述の効果が十分にあらわれない場合があり、0.020を超えると、比表面積が小さくなりすぎることがある。
【0020】
上記式において、cはM元素の量を表す。該M元素は、Ca、Y、希土類元素、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Cu、Ag、Zn、B、Ga、C、Si、Sn、N、P、S、F、Clから選択される1種以上の元素を示す。cの範囲は0.0005≦c≦0.005が好ましく、0.001≦c≦0.003がより好ましい。0.0005以上であれば、結晶構造の安定性向上に寄与する。一方、0.005を超えると、詳細な機構は不明だが、サイクル特性が低下する場合がある。
【0021】
MとしてZrを含む場合、結晶構造の安定性がより向上する。Zrの量は0.0001以上、0.005未満が好ましい。さらに好ましくは0.0005以上、0.003以下である。Zrが0.0001未満であると上述の効果が十分にあらわれない場合があり、0.005以上だと比表面積が小さくなりすぎることがある。
【0022】
MとしてTiを含む場合、充放電時におけるLiのディインターカレーションまたはインターカレーションの速度が速くなるため、負荷特性が高くなる。Tiの量は0.0001以上、0.005未満が好ましい。さらに好ましくは0.0005以上、0.003以下である。Tiが0.0001未満であると上述の効果が十分にあらわれない場合があり、Tiが0.005以上だと、一次粒子の成長が抑制され、二次粒子を形成する一次粒子の数が増加することがある。
Mとして、TiとZrをともに含有することが好ましい。MがTiおよびZrの場合、高負荷特性、かつ高容量の電池を安定した品質で製造することが可能な正極活物質を得ることができる。
【0023】
上記式において、「2+α」は酸素量を表す。Li、Co、Al、Mg、M元素の含有量によりその範囲が決定される。αの範囲は−0.1≦α≦0.1である。
【0024】
(x)/(w+a+b+c)は(Li+Na)と(Co+Al+Mg+M元素)とのモル比を表す。(x)/(w+a+b+c)が0.990以上であることが好ましい。この比が0.990未満の場合、連続充電時間が著しく低下する。
【0025】
本発明の正極活物質は、リチウム含有複合酸化物粒子の表面に、Al、Mg及びM元素(式(1)中のM元素と同じ)から選ばれる少なくとも1種を含有する化合物(以下、「付着化合物」と称する場合がある)が付着している。当該付着化合物は当該各元素の水酸化物、酸化物、炭酸化物等の無機化合物である。当該無機化合物の付着においては、当該複合酸化物粒子の表面に均一に分散して付着させることが好ましい。正極活物質の粒子径はとくに限定されないが、極板に塗布したときに十分な密度を得ることができるよう、平均粒子径が2〜50μm程度が好ましい。密度向上のため、当該平均粒子径範囲内で平均粒子径が異なる正極活物質を二以上混合してもよい。
【0026】
次に、本発明の正極活物質を製造する方法について説明する。
まず本発明の正極活物質におけるリチウム含有複合酸化物を製造する方法は、本発明のリチウム含有複合酸化物が得られれば、とくに限定されない。例えば、リチウム源となるリチウム化合物、ナトリウム源となるナトリウム化合物、コバルト源となるコバルト化合物、アルミニウム源となるアルミニウム化合物、マグネシウム源となるマグネシウム化合物、及びM元素源となるM元素化合物を混合し、焼成する方法等により本発明の正極活物質を得ることができる。
【0027】
リチウム化合物としては、例えば水酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、及び硫酸リチウム等の無機塩、並びに蟻酸リチウム、酢酸リチウム、及び蓚酸リチウム等の有機塩等が挙げられる。
【0028】
ナトリウム化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び硫酸ナトリウム等の無機塩、並びに蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び蓚酸ナトリウム等の有機塩等が挙げられる。
【0029】
コバルト化合物としては、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、及びオキシ水酸化物等が挙げられる。好ましくはコバルトの酸化物が用いられる。正極活物質の形状は、コバルト化合物の形状を継承する。したがって、球状または楕円球状とし、粒径、粒度分布等を調整することにより正極活物質の形状を制御することができる。
【0030】
アルミニウム化合物としては、例えば水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び蟻酸アルミニウム等が挙げられる。
【0031】
マグネシウム化合物としては、例えば水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、過酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
M元素化合物としては、選択される元素により異なるが、M元素を含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、及びM元素を含有するガス等が挙げられる。
【0033】
上記各化合物を原料とし、まず、リチウム化合物、ナトリウム化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、及び所望によりM元素化合物をそれぞれ所定量秤量して、混合する。混合はボールミル等を用いる公知の方法により行うことができるが、分散性を高めるため、高速攪拌型ミキサーで行うことが好ましい。
次いで、当該混合物の焼成を行う。焼成は台車炉、キルン炉、メッシュベルト炉等を用いて公知の方法により行うことができる。焼成は950〜1050℃で1〜24時間行う。好ましくは1030〜1050℃で行う。当該焼成の温度より低温で仮焼成した後、本焼成の温度まで昇温したり、本焼成後、それより低い温度で焼鈍したりすることができる。仮焼成または焼鈍する場合は500〜800℃で30分〜6時間程度行うことが好ましい。
【0034】
上述のようにLi、Na、Co、Al、Mg、M元素を、それぞれ別々の化合物を用いて混合及び焼成する以外に、Co、Al、Mg、M元素を共沈法等により複合化した複合化合物を用い、Li化合物及びNa化合物と混合及び焼成する方法も好ましく行われる。
【0035】
このようにして得たリチウム含有複合酸化物の粒子表面に付着化合物を付着させる方法としては、以下の工程を例示することができる。
(工程1)リチウム含有複合酸化物(粒子状)、付着化合物の原料、pH調整剤である水酸化リチウム一水和物をそれぞれ秤量する。
(工程2)純水100mLに水酸化リチウム一水和物を溶解させてから、リチウム含有複合酸化物を投入して第一スラリー液を調製する。
(工程3)付着化合物の原料を純水10mLに溶解させて、付着化合物原料液を調製する。
(工程4)付着化合物原料液を第一スラリー液に投入し、第二スラリー液を調製する。
(工程5)工程4で得られた第二スラリー液を撹拌し、pHを安定させる。
(工程6)pHを安定化した第二スラリー液をろ過し、得られたケーキ(ろ過物)を純水で洗浄する。
(工程7)洗浄したケーキを上記した方法で焼成することにより、付着化合物がリチウム含有複合酸化物粒子表面に付着した正極活物質を得る。
【0036】
上述の方法においては、洗浄を行ってもよい。洗浄することでリチウム含有複合酸化物の層間に固溶しきれなかったNaを除去することができる。これにより電解液中に溶出するNaを減らし、電解液中で発生するリチウムイオンの挿入脱離を阻害する副反応を抑制することができ、Naによる充放電特性の低下を最小限にできる。なお、洗浄工程は該副反応が抑制できるのであれば、リチウム含有複合酸化物粒子表面に付着化合物を付着させる工程の前後どちらで行ってもよい。
【0037】
次に、本発明の非水電解質二次電池用正極について説明する。
本発明の非水電解質二次電池用正極は、上記説明した本発明の正極活物質を含有する。本発明の正極活物質を含有することで、充電時の正極活物質の結晶構造が安定するため、連続充電や高電圧での充電による劣化が少なく、高容量で、高サイクル特性を有する非水電解質二次電池用の正極として好適である。
【0038】
本発明の正極の作製方法として、本発明の正極活物質を使用し、これと、導電剤、結着剤等を分散媒と混錬、スラリー化して電極板に塗布、乾燥後、ローラで圧延、所定の寸法に裁断する公知の方法を採用することができる。本発明の正極活物質を用いた場合、得られる電極スラリーは、正極活物質、導電剤、結着剤等が均一に分散し、適度な流動性があり、経時変化が少ないものとすることができる。一般的には正極は40〜120μmの厚さとする。
【0039】
正極を作製するための導電剤、結着剤、分散媒、電極板等も公知のものが使用でき、例えば導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ケッチェンブラック、及びアセチレンブラック等の炭素質材が挙げられる。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、並びにカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。分散媒としては、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0040】
電極板としては多孔性や無孔の導電性基板が用いられる。当該導電性基板として、Al、Cu、Ti、ステンレス等の金属箔が挙げられる。その中で好ましくはAlで、厚みが10〜30μmのアルミニウム金属箔が好ましい。
【0041】
つづいて、本発明の非水電解質二次電池について説明する。
本発明の非水電解質二次電池は、上記説明した本発明の非水電解質二次電池用正極を用いる。本発明の非水電解質二次電池用正極を用いることで、充電時の正極活物質の結晶構造が安定するため、連続充電や高電圧での充電による劣化が少なく、高容量で、高サイクル特性を有する非水電解質二次電池とすることができる。
【0042】
本発明の非水電解質二次電池は主に、電池ケース、正極、負極、有機溶媒、電解質、及びセパレータで構成される。なお、有機溶媒と電解質(電解質溶液)の代わりに固体電解質を用いてもよい。負極、有機溶媒、電解質、及びセパレータは公知のものが使用できる。
【0043】
例えば、負極はCuなどの金属箔等からなる集電体上に負極活物質、結着剤、導電剤及び分散媒などを混合した負極合剤を塗布した後、圧延、乾燥することにより得られる。負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金、ソフトカーボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素人造黒鉛、及び天然黒鉛といった炭素質材等が用いられる。必要に応じ、結着剤及び分散媒などは正極と同様のものが使用される。
【0044】
有機溶媒は、その種類は特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等のカーボネート類、1,2,1,3−ジメトキシプロパン、テトラヒドロフラン、及び2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル及びΓ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトニトリル及びブチロニトリル等のニトリル類、並びにN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
有機溶媒に溶解させる電解質としては、例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAlCl
4、LiSbF
6、LiSCN、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li(CF
3SO
2)
2、LiAsF
6、LiB
10Cl
10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラクロロホウ素酸リチウム、テトラフェニルホウ素酸リチウム、及びイミド類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、固体電解質を使用する場合は、例えば、ポリエチレンオキサイド系等の高分子電解質、Li
2S−SiS
2、Li
2S−P
2S
5、及びLi
2S−B
2S
3等の硫化物系電解質等が挙げられる。また、高分子に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲルタイプの電解質を用いることもできる。
【0047】
セパレータとしては、例えば、大きなイオン透過度、所定の機械的強度、及び電気絶縁性を有する微多孔性薄膜の使用が好ましい。電解質に対する耐性と疎水性に優れていることから、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、及びポリイミド等の材質からなる微多孔性薄膜の使用が好ましく、これらの材質は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。製造コストの観点からは、安価なポリプロピレン等を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の非水電解質二次電池の形状としては、円筒型、積層型、及びコイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状であっても、上述の構成要素を電池ケースに収納し、正極及び負極から正極端子及び負極端子までの間を集電用リード等を用いて接続し、電池ケースを密閉する。
【0049】
本発明の正極活物質の特徴である連続充電時及び高電圧時の結晶構造安定性の評価において、満充電後の漏れ電流が発生するまでの時間を評価指標とした。二次電池が満充電されると電流値は0mA付近まで低下する。しかし、さらに充電を継続することで、Coやその他元素の溶出による正極活物質の構造崩壊や、それに伴うマイクロショートに起因する電流(漏れ電流)が観測される。この漏れ電流が発生するまでの時間が連続充電条件における結晶構造の安定性の指標である。具体的には、一度0mA付近まで低下した電流値が漏れ電流のために再び増加していき、基準ラインとして設定した0.06mAに到達するまでにどれくらいの時間が掛かったかを評価した。この時間が長いほど結晶構造の安定性が優れており、逆に短いと結晶構造の安定性が低いと考えられる。
なお、具体的な評価方法の詳細については後述する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
実施例1
(正極活物質の製造)
最終的に得られる正極活物質が、表1の組成となるように炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、酸化コバルト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、及び酸化ジルコニウムをそれぞれ秤量し、高速撹拌ミキサーを用いて混合し、混合物を得た。
次に、箱型の電気炉を用いて混合物を700℃で4時間仮焼した後、1030℃で5時間焼成を行い、リチウム含有複合酸化物(以後、単に複合酸化物と称する)を得た。
次にこの複合酸化物100gに対して、複合酸化物表面に付着させる化合物の原料として硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業株式会社製、一級)を0.383gと、pH調整剤として水酸化リチウム一水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)を0.129g秤量した。硝酸アルミニウム九水和物の量は複合酸化物に対して0.1モル%で、水酸化リチウム一水和物の量は複合酸化物に対して0.3モル%に相当する。
純水100mLに水酸化リチウム一水和物を溶解させてから、複合酸化物を投入して第一スラリー液を作製した。一方で硝酸アルミニウム九水和物を純水10mLに溶解させて付着化合物原料液を作製した。付着化合物原料液はピペッターを用いて、5mL/分の速度で第一スラリー液に投入した後、5分以上撹拌し、pHが10.7付近で安定することを確認し、第二スラリー液を得た。
得られた第二スラリー液をろ過し、得られたケーキを純水200mLで洗浄した。洗浄したケーキを500℃、3時間、昇温速度5℃/minで焼成し、表面にAl化合物が付着した複合酸化物粒子である正極活物質を得た。当該正極活物質の組成を表1に示す。
またX線回折装置(Rigaku社製、UltimaIV)を用いて粉末X線回折(XRD)した正極活物質の2θ=18.5〜19.3°の回折ピークの結果を
図1に示す。
【0052】
(電池の製造)
次に、得られた正極活物質、導電剤としてグラファイト及びアセチレンブラック、並びに結着剤としてポリフッ化ビニリデンを、質量比で200:4:1:10の割合で混合し、N−メチルピロリドンを用いて混練してスラリー化した。得られた電極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後、プレス機で加圧成型し、厚さ40μmとした。所定の寸法に裁断した後、端子をスポット溶接し、正極を製造した。
上記で得られた正極を用いて、試験用コインセル二次電池を次のように作製した。対極(負極)として金属リチウム箔、試験極として上記で得られた正極を、セパレータを介して、電池ケース内に配置した。その中に電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との1:2(体積比)の混合溶媒中に、支持電解質のLiPF
6を1M濃度で溶解させた電解液を注入し、コインセル二次電池を作製した。
【0053】
(充放電試験)
上記で作製したコインセル二次電池を用いて充放電試験を行った。
(1)測定温度を25℃とし、1サイクル目および2サイクル目は、充電上限電圧4.5V、放電下限電圧3.0V、0.3mA/cm
2の条件で充放電を行った。
(2)3サイクル目以降は、充電上限電圧4.5V、放電下限電圧3.0V、1.5mA/cm
2で充放電を行った。
(3)充放電電流0.3mA/cm
2に於いての充電容量及び放電容量、並びに充放電電流1.5mA/cm
2に於いての22サイクル後の下記式に示す容量維持率(%)を測定した。
容量維持率(%)=(22サイクル目の放電容量/3サイクル目の放電容量)×100
1サイクル目の放電容量および容量維持率の結果を表1に示す。
【0054】
(連続充電試験)
連続充電時の結晶構造の安定性の評価として、以下の電気化学測定を行った。電気化学測定装置(BLS5516 計測器センター製)を用いて、上記と同様に作製したコインセル二次電池について測定した。
(1)最初に、コインセル二次電池の活性化処理を行った。活性化処理の条件は、定電流定電圧方式(CVCC)により、0.36mA/cm
2、4.5Vにて充電し、電流値が0.03mAを示すまで継続する。
(2)次に、30分の停止処理後に定電流方式(CC)により、0.36mA/cm
2にてセル電圧が3.0Vを示すまで放電した。
(3)最後に、定電流定電圧方式(CVCC)により、1.8mA/cm
2、4.5Vにて充電処理を継続した。
(4)この最後の充電処理で、満充電され、電流値は0mA付近まで低下する。さらに充電を継続すると、0mA付近まで低下した電流値が漏れ電流のために再び増加する。この漏れ電流の電流値が0.06mAに到達するまでの時間(連続充電時間)を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
実施例2〜5
原料の配合を変更し、最終的に表1に示す組成の正極活物質を得た以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質について、実施例1と同様にコインセル二次電池を作製し、充放電試験及び連続充電試験を行った。その結果を表1に示す。また、実施例2及び3について、粉末X線回折(XRD)の結果を
図1に示す。
【0056】
比較例1〜3、5
原料の配合を変更し、最終的に表1に示す組成の正極活物質を得た以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質について、実施例1と同様にして、比較例用のコインセル二次電池を作製し、充放電試験及び連続充電試験を行った。その結果を表1に示す。また、比較例1の粉末X線回折(XRD)の結果を
図1に示す。
【0057】
比較例4
実施例3で得られた複合酸化物粒子表面にAl化合物の付着処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質の組成を表1に示す。得られた正極活物質について、実施例1と同様にして、比較例用のコインセル二次電池を作製し、充放電試験及び連続充電試験を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明確なように、各実施例は比較例1〜3と比較して、連続充電時間が極めて優れている。また、比較例4は、各実施例と同等の連続充電時間を示しているが、粒子表面にAl化合物が付着されていないので、容量維持率が各実施例に比較して大幅に低い。さらに、比較例5は、Na量が上限を超えているので、全体的な電池性能が各実施例に対して劣っている。
図1から明確なように、NaがLiと置換した量が増えるにつれて、C軸を示すピークが低角側へシフトしている。これはLiよりもイオン半径が大きいNaがLiと置換したため層間を拡大したことに起因する。これによりLiが脱離してもNaが層間にとどまり、結晶構造の崩壊を抑制していると推測される。