特許第6063574号(P6063574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063574クロストークを識別するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063574
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】クロストークを識別するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/22 20060101AFI20170106BHJP
   H04M 3/18 20060101ALI20170106BHJP
   H04B 3/487 20150101ALI20170106BHJP
   H04L 29/14 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   H04M3/22
   H04M3/18
   H04B3/487
   H04L13/00 313
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-531500(P2015-531500)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2015-536060(P2015-536060A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】EP2013065454
(87)【国際公開番号】WO2014040782
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】12306114.5
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルーガーグ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ワッヒービ,イサーム
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0072722(US,A1)
【文献】 特表2008−516474(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0151742(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0268601(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0206101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M3/22
H04M3/18
H04B3/487
H04L29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク(11)の妨害通信回線(55)から被害通信回線(13)への遠端クロストークを識別するための方法(67)であって、識別は、被害通信回線(13)に関連する静穏回線雑音測定データ(QLN)に依存し、方法(67)は、
合長(L)を推定(73)、推定は、静穏回線雑音測定データ(QLN)に依存することと、
クロストークが被害通信回線(13)の区間(52)に平行して伸長する妨害通信回線(55)によって引き起こされることを、結合長(L)が被害通信回線(13)の物理的な全長(Lrealよりも小さいとの決定に基づいて検出すること(83、87)と、
を含
前記静穏回線雑音測定データ(QLN)は、被害通信回線(13)がデータ信号を搬送していない場合における被害通信回線(13)上での電力スペクトル密度であり、
前記結合長(L)は、被害通信回線(13)と妨害通信回線(55)とが平行して伸びる被害通信回線(13)の区間(52)の長さである、方法(67)。
【請求項2】
被害通信回線(13)が、通信ネットワーク(11)の中央局に位置するアクセスノード(17)において終端され、妨害通信回線(55)が、ネットワーク(11)のリモートサイト(49)に位置するさらなるアクセスノード(45)において終端され、区間(52)が、リモートサイト(49)と被害通信回線(13)の顧客側の端部(21)との間の被害通信回線(13)の区間である、請求項1に記載の方法(67)。
【請求項3】
クロストークが前記妨害通信回線(55)によって引き起こされることを検出することが、妨害通信回線(55)について、さらなるアクセスノード(45)によって実行されるダウンストリームパワーバックオフのための少なくとも1つのパラメータが不正確に設定されていると結論づけること(89)を含む、請求項1または2に記載の方法(67)。
【請求項4】
前記検出することが、結合長(L)と物理的な全長(Lreal)とを互いに比較すること(77)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(67)。
【請求項5】
物理的な全長(Lreal)から結合長(L)の相対偏差(q)を計算することと、相対偏差(q)が許容閾値(ε)以上である場合、クロストークは前記妨害回線(55)によって引き起こされることを検出することとを含む、請求項4に記載の方法(67)。
【請求項6】
物理的な長(Lreal)と結合長(L)との間の差が、さらなる許容閾値以上である場合、クロストークは前記妨害回線(55)によって引き起こされることを検出することを含む、請求項に記載の方法(67)。
【請求項7】
結合長(L)を推定すること(73)が、目的関数(Fcost)を最小化することによって、静穏回線雑音のモデルを静穏回線雑音測定データ(QLN)にフィッティングさせることを含み、結合長(L)が、モデルのパラメータである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(67)。
【請求項8】
モデルが静穏回線雑音測定データ(QLN)にどれだけよくフィッティングされるかを示す目的関数(Fcost)の値が、許容可能なフィッティング結果に対応する、予め定義される許容可能な範囲(Fcost,max)に到達したかをチェックすること(75)と、前記チェックすることの結果が、値は許容可能な範囲(Fcost,max)外であるということである場合、被害回線(13)は妨害回線(55)からのクロストークよりも他のノイズ源によって影響を与えられると結論づけることとを含む、請求項7に記載の方法(67)。
【請求項9】
モデルが、遠端クロストークの電力スペクトル密度についての数学的モデルである、請求項7または8に記載の方法(67)。
【請求項10】
モデルが、ITU−T勧告G.996.1において仕様化されたモデルである、請求項7または8に記載の方法(67)。
【請求項11】
前記物理的な長(Lreal)が、予め定義され、または、方法(67)が、前記物理的な長(Lreal)をデータベースから取得することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(67)。
【請求項12】
前記被害通信回線(13)に関連するさらなる測定データを決定することと、さらなる測定データに応じて前記物理的な長(Lreal)を決定することとを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(67)。
【請求項13】
通信ネットワーク(11)の妨害通信回線(55)から被害通信回線(13)への遠端クロストークを識別するための装置(25、31、43)であって、識別は、被害通信回線(13)に関連する静穏回線雑音測定データ(QLN)に依存し、装置(25、31、43)は、
合長(L)を推定し(73)、前記推定は、静穏回線雑音測定データ(QLN)に依存し、
クロストークが被害通信回線(13)の区間(52)に平行して伸長する妨害通信回線(55)によって引き起こされることを、結合長(L)が被害通信回線(13)の物理的な長(Lrealよりも小さいとの決定に基づいて検出する(83、87)、
ように動作可能であ
前記静穏回線雑音測定データ(QLN)は、被害通信回線(13)がデータ信号を搬送していない場合における被害通信回線(13)上での電力スペクトル密度であり、
前記結合長(L)は、被害通信回線(13)と妨害通信回線(55)とが平行して伸びる被害通信回線(13)の区間(52)の長さである、装置(25、31、43)。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法(67)を実行するためのプロセッサを備える、請求項13に記載の装置(25、31、43)。
【請求項15】
監視ノード(39)をネットワーク(11)に接続するための通信インタフェースを備える監視ノード(39)であって、請求項13または14に記載の装置(25、31、43)を備え、
前記通信インタフェースが、装置(25、31、43)に接続されている、監視ノード(39)。
【請求項16】
コンピュータ(25、31、43)上で実行される場合に、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法(67)を実行させるコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読取可能な記憶媒体(29)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークの妨害通信から被害通信回線へのクロストークを識別する方法に関し、識別は、被害通信回線に関連する静穏回線雑音測定データに依存する。本発明は、対応する装置、対応する監視ノード、および対応するコンピュータプログラム製品にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
今日のデジタル加入者回線(DSL:digital subscriber line)の配備においては、DSL技法の種々の変形が使用される。例えば、ADSLx、例として、ADSL、ADSL2、ADSL2+、またはREADSLなどの、やや低いビットレートを提供するDSL技法、および、超高速デジタル加入者回線(VDSL:Very High Speed Digital Subscriber Line)、例として、VDSL1またはVDSL2などの比較的高いビットレートを提供する他のDSL技法は、建物とネットワーク事業者のキャビネットとの間に配置される単一のバインダにグループ化される種々の通信回線上でしばしば使用される。やや低いビットレートの通信用に構成される通信回線は、典型的には、ネットワーク事業者の中央局または市内交換局に設置されるDSLモデム回路において終端する。これらの低ビットレートの通信回線の場合、キャビネットは、主として、中央局または市内交換局とキャビネットとの間の配線を、キャビネットと個々の建物との間の配線に電気的に接続するためのクロスコネクトとしての機能を果たす。
【0003】
高ビットレートのDSL技法は、ネットワーク事業者のモデム回路と顧客構内設備(CPE:customer’s premises equipment)のモード回路との間の通信回線が、典型的には、約数百メートルの最大長を超えないことを必要とするため、これらの高ビットレートの通信回線の事業者のモデム回路は、キャビネットにしばしば設置される。換言すれば、キャビネットは、高ビットレートの通信回線のためのアクセスノードを含み得る。アクセスノードは、光リンクなどの高ビットレートのバックホールリンクを介して、事業者の通信ネットワークに接続され得る(ファイバートゥザキャビネット(FTTC:Fiber To The Cabinet))。そのようなアクセスノードを有するキャビネットは、リモートユニットまたはフレキシビリティポイントとも称される。
【0004】
低ビットレート回線と高ビットレート回線とが平行して伸びる、低ビットレート回線の区間(即ち、キャビネットと建物との間のバインダ)における、高ビットレート回線から低ビットレート回線への過度のクロストークを回避するために、ダウンストリームパワーバックオフ(DPBO:Downstream Power Back−Off)メカニズムが、高ビットレートの通信回線に適用される。DPBOは、キャビネットにおけるモデム回路からCPEのモデム回路への下り信号の電力スペクトル密度(PSD:Power Spectral Density)を整形することを可能にする。中央局または市内交換局から引かれ、同じバインダにおいて共存する低ビットレート回線を保護するために、DPBOは、基本的には、VDSL2回線によって生成される遠端クロストーク(FEXT:far−end crosstalk)が、やや低いビットレートの回線によって生成されるFEXTと等しくなるように、VDSL2回線についての下り送信PSDを調整する。そのため、VDSL2からADSLxへの影響は、ADSLx自体からの影響と等しくなる。
【0005】
高ビットレート回線によって引き起こされるクロストークから低ビットレート回線を効果的に保護するために、DPBOについての構成パラメータは、正確に設定されなければならない。不正確に設定された構成パラメータの場合、高ビットレート回線に由来するクロストークは、異常に高くなり、低ビットレート回線の性能に深刻な影響を与えるであろう。DPBOは、例えば、ITU−T勧告G.997.1において、特に、この勧告の付録IIにおいて、詳細に説明される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ITU−T勧告G.997.1、付録II
【非特許文献2】ITU−T勧告G.996.1(02/2001)
【非特許文献3】ITU−T勧告G.977.1(04/2009)、付録II
【非特許文献4】ITU−T勧告G.993.2(02/2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低ビットレートの通信回線の区間と平行に伸びる高ビットレートの通信回線によって引き起こされる異常に高いクロストークを検出することを可能にする、クロストークを識別するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、通信ネットワークの妨害通信回線から被害通信回線へのクロストークを識別するための方法が提供され、識別は、被害通信回線に関連する静穏回線雑音測定データに依存し、本方法は、静穏回線雑音測定データに応じて結合長を推定することと、クロストークが被害通信回線の区間に平行して伸長する妨害通信回線によって引き起こされることを、結合長および通信回線の物理長に応じて検出することとを含む。換言すれば、結合長は、静穏回線雑音測定データから推定され、前記方法は、クロストークが被害通信回線の区間に平行して伸長する妨害通信回線によって引き起こされることを、通信回線の物理長および結合長に応じて検出する。妨害回線は、被害回線全体に沿ってではなく、被害回線の区間においてのみ、被害回線と平行して伸びるので、妨害回線に由来する過度のクロストークは、被害回線の物理的な回線長と推定される結合長との双方を考慮することによって識別することができる。
【0009】
一実施形態において、被害通信回線は、通信ネットワークの中央局に位置するアクセスノードにおいて終端され、妨害回線は、ネットワークのリモートサイトに位置するさらなるアクセスノードにおいて終端され、区間は、リモートサイトと被害通信回線の顧客側の端部との間の被害通信回線の区間である。典型的には、双方の回線が、これらの顧客側の端部において、例えば、それぞれのCPEの端末側の終端ノード(例えば、DSLモデム)において終端する。多くの場合において、市内交換局ともしばしば称される中央局は、CPEからリモートサイトよりも遠く離れて位置する。つまり、リモートサイトは、中央局に対して遠く離れている。その結果、妨害回線は、被害回線よりも短い。リモートサイトは、リモートノードとも称されるキャビネット、フレキシビリティポイント、リモートユニット等を含み得る。
【0010】
一実施形態において、クロストークが前記妨害回線によって引き起こされることを検出することは、妨害回線について、第2のアクセスノードによって実行されるダウンストリームパワーバックオフ(DPBO)のための少なくとも1つのパラメータが不正確に設定されていると結論づけることを含む。DPBOパラメータの不正確な設定が検出された後、過度のクロストークを除去するために、これらのDPBOパラメータを訂正することができる。被害回線の事業者が妨害回線を所有する場合、事業者は、事業者自身によってDPBOパラメータを訂正することができる。そうでない場合、事業者は、妨害回線を所有する別の事業者に連絡し得る。
【0011】
一実施形態において、前記検出することは、結合長と物理長とを互いに比較することを含む。
【0012】
一実施形態において、比較することは、物理長から結合長の相対偏差を計算することと、相対偏差が許容閾値以上である場合、クロストークは前記妨害回線によって引き起こされることを検出することとを含む。
【0013】
別の実施形態において、比較することは、物理的な回線長と結合長との間の差が、さらなる許容閾値以上である場合、クロストークは前記妨害回線によって引き起こされることを検出することを含む。
【0014】
結合長は、被害回線の測定値に基づいて、推定され得る。結合長を推定するための任意の適切な手法が適用され得る。好適な実施形態において、結合長を推定することは、静穏回線雑音のモデル、好適には、数学的モデルを、静穏回線雑音測定データにフィッティングさせることを含み、結合長は、モデルのパラメータである。
【0015】
このフィッティング手法を使用する実施形態において、本方法は、モデルが静穏回線雑音測定データにどれだけよくフィッティングされるかを示す目的関数の値が、許容可能なフィッティング結果に対応する、予め定義される許容可能な範囲に到達したかをチェックすることと、前記チェックすることの結果が、値は許容可能な範囲外であるということである場合、被害回線は前記妨害回線からのクロストークよりも他のノイズ源によって影響を与えられると結論づけることとを含み得る。例えば、範囲は、単一の閾値を用いて特定され得る。目的関数の値と閾値とを比較することによって、本方法は、フィッティング結果が許容可能であるか否かを判定し得る。一実施形態において、目的関数は、モデルをノイズ測定データにフィッティングさせる場合に最小化されるべき費用関数であり、フィッティング結果は、費用関数の値が閾値以下である場合、許容可能とみなされ得る。
【0016】
一実施形態において、数学的モデルは、遠端クロストークの電力スペクトル密度についてのモデル、好適には、ITU−T勧告G.996.1において仕様化されるモデルである。
【0017】
一実施形態において、本方法は、被害通信回線の物理長を決定することを含み得る。前記決定することは、本方法を実行する装置がアクセス可能であり得る、物理的な回線長の予め定義される値に基づき得る。別の実施形態において、物理的な回線長を決定することは、物理的な回線長をデータベースから取得することを含む。
【0018】
また別の実施形態において、本方法は、被害回線に関連するさらなる測定データを決定することと、さらなる測定データに基づいて、物理的な回線長を決定することとを含む。一実施形態において、さらなる測定データは、被害回線の減衰を記述する減衰データを含み得る。換言すれば、物理的な回線長は、減衰データに応じて推定され得る。
【0019】
別の実施形態によれば、通信ネットワークの妨害通信回線から被害通信回線へのクロストークを識別するための装置が提供され、識別は、被害通信回線に関連する静穏回線雑音測定データに依存し、装置は、静穏回線雑音測定データに応じて結合長を推定し、クロストークが被害通信回線の区間に平行して伸長する妨害通信回線によって引き起こされることを、通信回線の物理長および結合長に応じて検出するように動作可能である。
【0020】
一実施形態において、本装置は、本発明による方法を実行するように動作可能であり、好適にはそのようにプログラムされ、この方法の実施形態は、本明細書において説明される。
【0021】
また別の実施形態によれば、監視ノードをネットワークに接続するための通信インタフェースを備える監視ノードが提供され、監視ノードは、妨害通信回線から被害通信回線へのクロストークを識別するための装置を備える。例えば、本装置は、本明細書において説明される方法を実行するために配置され、好適には、プログラムされ得る監視ノードのコントローラであり得る。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、コンピュータプログラム製品、好適には、コンピュータ読取可能な記憶媒体が提供され、このコンピュータプログラム製品は、本発明による方法を実行するようにプログラムされるコンピュータプログラムを含み、この方法の実施形態は、本明細書において説明される。記憶媒体は、磁気媒体、光媒体または半導体媒体、例えば、ディスク、テープ、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を含み得る。さらに、コンピュータプログラム製品、特に、コンピュータプログラムは、インターネットなどのネットワーク上でのダウンロードのためにサーバによって提供され得る。
【0023】
本発明の例示的な実施形態およびさらなる利点は、図面において示され、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】通信ネットワークを示す図である。
図2図1の通信ネットワークの詳細を示す図である。
図3】クロストークを識別するための方法のフローチャートである。
図4図1および図2に示されるネットワークの通信回線の静穏回線雑音、ならびに静穏回線雑音の成分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本説明および図面は、本発明の原理を解説するものにすぎない。したがって、当業者は、本明細書においては明示的に説明または図示されないが、本発明の原理を具現化し、本発明の精神および範囲内含まれる様々な構成を案出することが可能であることが認識されるであろう。さらに、本明細書において記載される全ての例は、主に、読者が本発明の原理および本技術を前進させるために本発明者らによってもたらされる概念を理解することを支援するための教育的な目的のためだけにあることが明確に意図され、そのように具体的に記載される例および条件への限定なしに解釈されるべきものである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態を記載する、本明細書における全ての記述、ならびにそれらの具体的な例は、それらの均等物を包含することが意図される。
【0026】
図1は、第1の通信回線13を含む通信ネットワーク11を示す。通信回線13の第1の端部16は、アクセスノード17とさらに称される、ネットワーク11のネットワーク側の終端ノードに接続され、回線13の第2の端部18は、ネットワーク11の端末側の終端ノード19に接続される。端末側の終端ノード19は、ネットワーク11の顧客構内設備(CPE21)の一部であり得る。
【0027】
第1の通信回線13は、ADSLxまたはVDSL等などの任意のタイプのデジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)であり得る。その結果、アクセスノード17は、DSLアクセスマルチプレクサ(DSLAM:DSL Access Multiplexer)または別のタイプのDSLアクセスノードであり得る。図示される実施形態において、第1の通信回線13は、ADSLx回線、即ち、VDSL(例えば、VDSL1またはVDSL2)のような他のDSLの変形と比較して、やや低いビットレートを有するDSLの変形について使用される回線である。端末側の終端ノード19は、DSLモデムであり、またはDSLモデムを含み得る。
【0028】
アクセスノード17は、第1の回線13の第1の端部16が接続される第1のモデム回路23を有する。また、アクセスノード17は、アクセスノード17の動作を制御するために構成された第1のコントローラ25を有する。一実施形態において、第1のコントローラ25は、プロセッサ27、例えば、マイクロプロセッサと、記憶素子29、例えば、半導体メモリとを備えるプログラム可能なコンピュータである。
【0029】
端末側の終端ノード19は、第1の回線13の第2の端部18が接続される第2のモデム回路33を含む。さらに、端末側の終端ノード19は、第2のコントローラ31を備える。第2のコントローラ31は、第1のコントローラ25と同じ基本構成を有し得る。即ち、第2のコントローラ31は、プログラム可能なコンピュータであり、プロセッサ27および/または記憶素子29を備え得る。
【0030】
図示される実施形態において、第1の回線13の少なくとも一区間は、バインダ35の一部であり、少なくとも1つのさらなる通信回線36と平行して伸長する。さらなる回線36は、例えば、任意のタイプのDSL回線であり得る。図示される実施形態において、少なくとも1つのさらなる回線36は、別のADSLx回線である。バインダ35は、図1に描かれるように接地され得る、導電性の、好適には、金属製のシールディング38を備え得る。
【0031】
さらに、ネットワーク11は、たとえば相互接続ネットワーク41を介してノード17、19のうちの少なくとも1つに接続された、任意選択の監視局39を備えることができ、局39はノード17、19のうちの少なくとも1つ、好ましくはアクセスノード17と通信できるようになっている。局39は、第3のコントローラ43を備える。第3のコントローラ43は、第1のコントローラ25と同じ基本構成を有し得る。即ち、第3のコントローラ43は、プログラム可能なコンピュータであり、プロセッサ27および/または記憶素子29を備え得る。例示的な実施形態において、局39は、サーバ、パーソナルコンピュータ、PDAなどのハンドヘルドコンピュータ、または携帯電話等であり得る。一実施形態において、測定データの収集および処理は、携帯電話またはラップトップにおいてではなく、プラットフォームサーバによって行われ得る。本実施形態において、電話機は、サーバから収集および処理の結果を取得することができるクライアントである。
【0032】
図1に示されるように、ネットワーク11は、キャビネット49を備えるリモートサイトに位置し得るさらなるアクセスノード45を備える。キャビネット49は、リモートノード、フレキシビリティポイント、リモートユニット等とも称されることがある。図示される実施形態において、キャビネット49を有するリモートサイトは、CPE21が設置される建物の近くに位置する。換言すれば、リモートサイトは、中央局51よりも第1の回線13の第2の端部に近い。
【0033】
アクセスノード17は、中央局51に位置し得る。その結果、第1の通信回線13は、中央局51において開始し、キャビネット49を通過し、顧客構内21において終端する。一実施形態において、キャビネット49は、中央局とキャビネット51との間に配置される、回線13の第1の区間50を、キャビネット49と顧客構内設備21との間に配置される、回線13の第2の区間52に接続する受動的なクロスコネクトである。特に、第1の通信回線13の第1の区間50は、第1のバインダ35内で伸長し、通信回線13の第2の区間52は、第2のバインダ53内で伸長し得、第2のバインダ53がキャビネット49と、例えば、CPE21が位置する建物との間に設置されている。
【0034】
第2の通信回線55は、さらなるアクセスノード45において開始し、第2のバインダ53を通過し、さらなる端末側の終端ノード57、例えば、別の顧客のCPE21の一部であるさらなるDSLモデム57において終端する。つまり、第1の通信回線13の第2の区間52は、2つの回線13、55が第2のバインダ53内で少なくとも実質的には平行して伸びる、回線13の区間に対応する。さらなるアクセスノード45は、高ビットレートのバックホールリンク、例えば、光リンクに接続され得る。そのため、その結果得られるアクセスアーキテクチャは、ファイバートゥザキャビネット(FTTC:Fiber To The Cabinet)と呼ばれる。別の実施形態において、キャビネット49は、異なる場所に位置し得る。例えば、キャビネット49は、CPE21が位置する建物に位置してもよい(ファイバートゥザビルディング(FTTB:Fiber To The Building))。キャビネット49が位置するリモートサイトは、中央局51よりもCPE21に近いため、第2の通信回線55は、VDSLのような高ビットレートのサービスを第2の回線55上で提供することができるように、第1の回線13よりも短い。
【0035】
第1の通信回線13は、その第2の区間52に沿った回線55によって引き起こされるクロストークの影響を受け得る。第2の通信回線55は、キャビネット49において終端されるため、第1の回線13の第1の区間50において、第2の回線55から第1の回線13へのクロストークは存在しない。つまり、第2の回線55から第1の回線13へのクロストークに関する結合長Lは、少なくともおよそ第2の区間52の長さである。そのため、この結合長は、少なくともおよそ第1の区間50の長さと第2の区間52の長さとの和である、第1の回線13の物理的な全長Lrealよりも小さい。
【0036】
図2に示されるように、複数の回線が、さらなるアクセスノード45と種々の顧客のCPE21との間に配置され得る。さらなるアクセスノード45とCPE21のうちの1つとの間の少なくとも1つの回線は、中央局51とそれぞれのCPE21との間の回線13、36上よりも高い最大ビットレートを有するDSL送信のために使用される。図示される実施形態において、より高いビットレートを有するこの少なくとも1つの回線は、VDSL2回線である。これらのVDSL2回線のうちの1つは、図1に示される第2の回線55に対応する。第2の回線55は、第1の回線13へのクロストークを引き起こし得るため、妨害回線55とさらに称される。
【0037】
中央局においてアクセスノード17に接続される回線13、36は、さらなるアクセスノード45に接続される上記少なくとも1つの第2の回線55よりも小さい最大ビットレートを有するDSL技法を使用する。図示される実施形態において、中央局51に接続されるこれらの回線13、36は、ADSL、ADSL2、ADSL2+、READSL等などのADSLの変形(ADSLx)を使用する。第1の回線13は、他の回線によって、特に、妨害回線55によって引き起こされるクロストークの影響を受け得るため、被害回線13ともさらに称される。
【0038】
ネットワーク11を動作させる際、さらなるアクセスノード45に接続される少なくとも1つの高ビットレート回線55から、中央局51に接続される低ビットレート回線13、36への過度のクロストークを回避するために、ダウンストリームパワーバックオフ(DPBO)が、さらなるアクセスノード45に接続される回線55に適用される。この目的のために、DPBOメカニズムは、電力スペクトル密度(PSD)マスクを下り送信に適用する。これは、下り方向においてさらなるアクセスノード45によって送られた信号が、中央局51に接続される回線13、36、例えば、被害回線13への、回線13の最大ビットレートを深刻に低下させ得る過度のクロストークを引き起こすことができないように、これらの信号の一定の周波数範囲が減衰されるという効果を有する。修正されたPSDマスクは、図2においてグラフ61として例示される。PSDマスク61の減衰量は、図示される例において、DPBOが、さらなるアクセスノード45によって放出される下り信号のより高い周波数をより低い周波数信号よりも高い程度で減衰させることを例示する。中央局51のアクセスノード17は、未修正のPSDマスク(グラフ63を参照)を使用する。その結果、中央局51のアクセスノード17によって送られる下り信号のPSDは、より高い周波数について比較的高い。しかしながら、アクセスノード17に接続される回線13、36の第1の区間50内における減衰に起因して、アクセスノード17によって送信される信号のPSDは、キャビネット49において、より高い周波数について低下したPSDを有する(グラフ65を参照)。さらなるアクセスノード45が未修正のPSDマスク(例えば、PSDマスク63)を用いて下り信号を送信する場合、例えば、妨害回線55から被害回線13の間の過度のクロストークの危険性が存在する。なぜなら、さらなるアクセスノード45によって放出される下り信号のPSDは、少なくともより高い周波数について、キャビネット49において被害回線13に存在する信号のPSDよりも高くなるためである。しかしながら、DPBOによるPSDマスク61を適用することによって、妨害回線21から被害回線13へのそのような過度のクロストークを回避することができる。
【0039】
クロストークを回避するこの手法は、DPBOに関連する幾つかの構成パラメータが正確に設定されることを必要とする。これらのパラメータは、第1の区間50内の回線13の長さLES、第1の区間50内の回線のモデルのパラメータ、および下り方向において第1の区間50を介してアクセスノード17によって送信される信号の特性などの、第1の区間50内の回線13の特性を含む。DPBOは、ITU−T勧告G.977.1(04/2009)において、特に、その付録IIにおいて、詳細に説明される。
【0040】
コントローラ25、31または43のうちの少なくとも1つは、妨害回線55から被害回線13へのクロストークを識別するための、本明細書において説明される方法を実行するために配置される。本方法は、本方法が妨害回線55から被害回線13への過度のクロストークを検出する際、DPBO構成パラメータが不正確に設定されていると結論づけることを可能にする。コンピュータプログラムを実行する場合に、コントローラ25、31、43のうちの少なくとも1つが本方法を実行するようにプログラムされるコンピュータプログラムが提供され得る。換言すれば、本方法は、アクセスノード17上、局39上、または端末側の終端ノード19上で実行され得る。コンピュータプログラムは、少なくとも1つの記憶素子29に記憶され得る。また、コンピュータプログラムは、磁気ディスクもしくは光ディスクまたは半導体記憶媒体などの、任意のタイプのデータ記憶媒体に記憶され得る。さらに、プログラムは、ネットワーク、好適には、インターネット上での送信のためにサーバによって提供され得る。
【0041】
図3は、被害回線13が妨害回線55によって引き起こされる過度のクロストークの影響を受ける状況を検出することを可能にする方法67のフローチャートを示す。この状況は、不正確に設定されたDPBO構成パラメータの結果であり得る。したがって、方法67は、中央局51のアクセスノード17に接続される回線13、36のうちの1つを所有するネットワーク11の事業者が、キャビネット49のさらなるアクセスノード45に接続される回線、即ち、妨害回線55などのVDSL2回線上のDPBOパラメータの不良な構成を診断することを可能にする。方法67は、例えば、監視ノード39上で実行され得る。この監視ノード39は、さらなるアクセスノード45に接続される回線からの過度のクロストークを検出するために配置され、付加的なネットワーク分析および試験動作を任意選択で実行するためのネットワーク分析器の一部であり得る。別の実施形態において、方法67は、アクセスノード17、45のうちの1つなどの、任意の他のノードまたはネットワークの要素上で実行される。
【0042】
方法67の開始69の後、回線13に接続される終端ノード17、19からの被害回線13に関連する広帯域ノイズ測定データを取得するステップ71が実行される。特に、方法67が監視局39上で実行される場合、SNMPなどの通信プロトコルが、広帯域ノイズ測定データを取得するために使用され得る。図示される実施形態において、広帯域ノイズ測定データは、被害回線13に関連する静穏回線雑音(QLN)データを含む。静穏回線雑音QLNは、被害回線がデータ信号を搬送していない場合における被害回線13の電力スペクトル密度である。静穏回線雑音QLNは、周波数依存のベクトルとして表され得る。
【0043】
QLNがステップ71において取得された後、ステップ73は、被害回線13の結合長Lを推定する。結合長Lは、回線13の区間の長さであり、回線13は、この区間に沿って、妨害回線55などの別の通信回線によって引き起こされるクロストークの影響を受ける。図示される実施形態において、妨害回線からのクロストークによって影響を及ぼされ得る被害回線13の区間は、第2の区間52に、即ち、キャビネット49と、例えば、CPE21が設置される建物との間の第2のバインダ53に対応する。
【0044】
DPBO構成パラメータの不正確な設定の場合において、QLNは、第2の区間52に沿った妨害回線55によって引き起こされるクロストークによって支配される。その結果として、ステップ73において推定された結合長Lは、第2の区間52の長さLCSに少なくとも実質的には対応する。そうでない場合、中央局51のアクセスノード17に接続されるさらなる通信回線36によって引き起こされるクロストークは、QLN全体に対して重要な影響を有し、ステップ73は、被害回線13の物理的な全長Lreal=LES+LCSに少なくとも実質的には対応する結合長Lを推定する。したがって、妨害回線55から被害回線13への過度のクロストークは、結合長Lと回線13の物理的なループ長Lrealとを互いに比較することによって検出され得る。
【0045】
結合長Lは、任意の適切な手法によって推定され得る。図示される実施形態において、結合長Lを推定することは、QLNの数学的モデルをステップ71において決定された測定データにフィッティングすることを含む。結合長Lは、数学的モデルのパラメータである。図示される実施形態では、ITU−T勧告G.996.1(02/2001)において記述された遠端クロストーク(FEXT)結合を記述するモデルが適用される。このモデルは、クロストークを結合長Lと周波数fの関数として以下のように説明する:
【0046】
【数1】
【0047】
ただし、方法67は、別のモデルを代わりに使用してもよい。例えば、少なくとも結合長の関数としてのクロストークが測定値によって決定されてもよく、対応するサポートする点が生成されてもよい。少なくとも結合長Lの関数としてのクロストークFEXT(f,L)は、測定値によって生成されたこれらのサポートする点を使用する補間によって決定され得る。方程式(1)によるモデルパラメータNdistは、ディスターバの数である。PSD(f)は、ディスターバの電力スペクトル密度であり、HLOG(L,f)は、以下のように近似することができる伝達関数である:
【0048】
【数2】
【0049】
方程式(2)において、定数kは、ケーブルの線形減衰率を表す。
【0050】
上記に議論されるように、中央局51のアクセスノード17に接続される回線13、36、例えば、ADSLx回線によって引き起こされるクロストークについて、結合長は:
L=LES+LCS (3)
である。ただし、LESは、第1の区間50の長さ(キャビネット49の交換機側の回線13の長さ)であり、LCSは、第2の区間52(キャビネット49に関して顧客側の回線13)内の回線13の長さである。
【0051】
ステップ71において取得されたQLN測定データによって表される測定された静穏回線雑音は、3つのタイプのノイズ:中央局51のアクセスノード17に接続される他の回線36に由来するクロストークFEXTCO、キャビネット49のさらなるアクセスノード45に接続される回線のうちの少なくとも1つ、特に、妨害回線55に由来するクロストークFEXTRT、およびCPEノイズフロアminQLNから成る。測定されたQLNの3つの成分全ては、以下のようにdBm/Hz単位で表現され得る:
【0052】
【数3】
【0053】
成分FEXTRTおよびFEXTCOは、上記方程式(1)を使用し、PSDをそれぞれPSDRTおよびPSDCOに、LをそれぞれLCSおよびLES+LCSに置き換えて表現される。PSDRTは、最悪の場合によって近似され得、これは、上述された標準ITU−T勧告G.993.2(02/2001)において定義されるPSDマスクである。PSDCOは、例えば、アクセスノード17からPSDCOを記述するデータを取得することによって、直接測定され得る。
【0054】
図4は、DPBOが全く使用されない例示的なシナリオにおける、成分FEXTRT(破線)およびFEXTCO(点線)ならびに結果として得られるQLN(実線)を示す。DPBOが全く使用されないこのシナリオは、さらなるアクセスノード45に接続される回線、例えば、VDSL2回線に由来するクロストークが、主として支配的であり、アクセスノード17に接続される回線13、37に由来するクロストークを完全に隠す極端なケースである。そのため、方程式(4)におけるFEXTCOの項は、少なくともほとんど完全に消失する。その結果、方程式(4)は、期待される結合長が第2の区間52の長さLCSに等しい、単一のFEXT源(FEXTRT)に単純化することができる。この長さは、中央局51のアクセスノード17に接続される回線、例えば、ADSLx回線の物理長Lrealよりもかなり短い。図4から分かるように、アクセスノード17に接続される回線13、37からのクロストークFEXTCOは、妨害回線55などの、キャビネット49のさらなるアクセスノード45に接続される回線のクロストークFEXTRTをかなり下回る。その結果として、曲線FEXTRTおよびQLNは、特に、より高い周波数において、互いに近接して伸びる。
【0055】
図4に示されるシナリオでは、未修正の電力スペクトル密度マスク63が、アクセスノード17、45に適用された(PSDCO=PSDADSL+、PSDRT=PSDVDSL2BM2)。これらのPSDマスクは、ADSLxおよびVDSLに関するITU−T勧告において仕様化される。
【0056】
別の極端なケースは、DPBO構成パラメータが等FEXT仮説によって正確に設定されたシナリオに対応する。等FEXT仮説によれば、さらなるアクセスノードに接続される回線、例えば、VDSL2回線に由来するクロストークは、中央局51のアクセスノード17に接続される回線13、37、例えば、ADSLx回線に由来するクロストークと同一に見える。そのため、FEXTRTの項は、方程式(4)から少なくともほとんど消失すべきである。その結果、方程式(4)は、期待される結合長Lが被害回線13の物理長Lreal=LES+LCSに等しい、単一のクロストーク源(FEXTCO)のケースに単純化することができる。
【0057】
図示される実施形態において、ステップ73は、方程式(1)のモデルを、このモデルのパラメータL、Ndistを最適化することにより、ステップ71において取得された測定されたQLNデータにフィッティングさせることによって結合長Lを決定する。特に、モデルのパラメータL、Ndistの値は、適切な最適化アルゴリズムを使用して、費用関数Fcostを最小化することによって決定され得る。図示される実施形態では、以下の費用関数が使用される:
【0058】
【数4】
【0059】
一実施形態において、モデルを測定されたQLNデータにフィッティングさせる際、DPBOが適用されない極端なシナリオがクロストークをモデリングするために使用され、即ち、FEXT(f,L)=FEXTRT(f,L)である。つまり、さらなるアクセスノード45によって送信されるべき信号のための未修正の標準化されたPSDマスクは、方程式(1)においてPSD(f)として使用され、静穏回線雑音成分FEXTCOは無視される。その結果、方程式(1)は、方程式(5)において式FEXT(f,L)=FEXTRT(f,L)を計算するために使用される。
【0060】
ステップ73の最適化アルゴリズムがパラメータL、Ndistの最適な値を見つけた後、方法67の分岐75が実行される。分岐75は、費用関数Fcostの値が、予め定義される閾値Fcost,max以下であるかをチェックする。費用関数Fcostの値が、予め定義される閾値Fcost,max以下である場合(Y)には、ステップ77が実行され、そうでない場合には、被害回線13が無線周波数干渉(RFI:Radio Frequency Interference)またはシングルペア高速デジタル加入者回線(SHDSL:Single−Pair High−Speed Digital Subscriber Line)のような他のノイズ源によって影響を与えられることを結論づけるステップ79が実行され、妨害回線55によって引き起こされるクロストークが過度であるか否かについてのさらなる結論が出されることはできない。ステップ79の後、方法67は、ステップ81において終了される。
【0061】
費用関数Fcostが充分に最小化される場合、ステップ77は、推定された結合長Lを物理的な回線長Lrealと比較する。物理的な回線長Lrealは、長さLrealの手動で入力される値などの予め定義される値に応じて、または、通信ネットワーク11に関するデータを格納するデータベースから物理的な回線長Lrealを取得することによって、決定され得る。代替案として、物理長は、被害回線13の測定された減衰に応じて決定されてもよい。さらに、物理的な回線長Lrealは、被害回線13と少なくともほとんど完全に平行して伸びる回線36に由来するクロストークFEXTCOによってクロストークが支配されることが知られている場合において結合長Lが決定される、ステップ73に関連して上述された曲線フィッティング手法を用いて決定され得る。この場合において、推定される結合長Lは、物理的な回線長Lrealに少なくとも実質的に対応する。
【0062】
結合長Lと物理的な回線長Lrealとを比較するために、任意の適切な比較演算が実行され得る。例えば、結合長Lと物理的な回線長Lrealとの間の差が、閾値と比較され得る。あるいは、方法67は、物理的な回線長Lrealが結合長Lよりも大きいか否かだけをチェックし得る。図示される実施形態において、方法67の分岐83は、物理長Lrealから結合長Lの相対偏差qを計算する。分岐83は、相対偏差qが許容閾値εよりも小さいかをチェックする。相対偏差qが許容閾値εよりも小さい場合(Y)、方法67は、被害回線13が妨害回線55によって引き起こされる過度のクロストークの影響を受けないと結論づけるステップ85に続く。分岐83においてチェックされる条件は、以下のように表現することができる:
【0063】
【数5】
【0064】
許容閾値εは、0パーセントから50パーセントまでの範囲、好適には、2パーセントから20パーセントまでの範囲、好適には、5パーセントから15パーセントまでの範囲、好適には10パーセントまでの範囲であり得る。
【0065】
そうでない場合(N),方法67のさらなる分岐87は、結合長Lが物理的な回線長Lrealよりも小さいかをチェックする。結合長Lが物理的な回線長Lrealよりも小さい場合(Y)、被害回線13は過度のクロストークの影響を受けており、DPBOパラメータは正確に構成されていないと結論づけるステップ89が実行される。そうでない場合(N)、ステップ91が実行されて、被害回線13が妨害回線55によって引き起こされる過度のクロストークの影響を受けるかについての有効な結論が不可能であると断定される。ステップ89および91の後、方法は、ステップ81において終了される。
【0066】
方法67は、個々の回線13、36が過度のクロストークの影響を受けるか否かをチェックするために、中央局51のアクセスノード17に接続されるあらゆる回線13、36について繰り返し実行され得る。
【0067】
要約すれば、方法67は、第2の区間52の長さLCSが被害回線13の物理的な全長Lreal=LES+LCSよりも小さいという事実、および、アクセスノード45のDPBO構成パラメータが不正確に設定される場合、キャビネット49のアクセスノード45に接続される任意の妨害回線55に由来するクロストークは、中央局51のアクセスノード17に直接接続される任意の回線13の測定された静穏回線雑音QLNを支配するという事実を利用する。その結果、任意の妨害回線55から被害回線13への過度のクロストークは、推定される結合長Lと被害回線13の物理長Lrealとを比較することによって検出され得る。結合長Lが物理長Lrealよりも大幅に小さい場合、キャビネット49のアクセスノード45に接続される妨害回線によって引き起こされる過度のクロストークは、ステップ89において検出され得る。方法67を使用することによって、ネットワーク11の事業者は、異常なクロストークが検出される場合に、はるかに完全な診断を有することができる。特に、事業者は、例えば、VDSL2隣接回線55における、DPBO構成の不正確な設定を検出することが可能である。事業者がこれらの隣接回線55の所有者である場合、事業者は、これらのDPBOパラメータの設定を訂正し得る。別の事業者がこれらの回線の所有者である場合、被害回線13の事業者は、この別の事業者に連絡し、または隣接回線の事業者がスペクトル規制を尊重しないことを理由に規制機関に訴えることが可能である。
図1
図2
図3
図4