(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミドは、ポリアミド−6,ポリアミド6,6、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,12、ポリアミド−6/6,6、ポリアミド−6/6,12、ポリアミドMXD,6、ポリアミド−6,T、ポリアミド−6,I、ポリアミド−6/6,T、ポリアミド−6/6,I、ポリアミド−6,6/6,T、ポリアミド−6,6/6,I、ポリアミド−6/6,T/6,I、ポリアミド−6,6/6,T/6,I、ポリアミド−6/12/6,T、ポリアミド−6,6/12/6,T、ポリアミド−6/12/6,I、ポリアミド−6,6/12/6,Iおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)95〜99.5質量部と、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された酸官能化剤0.5〜5質量部と、の溶融混合生成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、の組み合わせであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本組成物は、難燃性と引張弾性率が向上した、ポリアミド、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)およびポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーのブレンドである。従って、一実施形態は、組成物の合計質量に対して、ポリアミド40〜73質量%と、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)20〜50質量%と、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー5〜40質量%と、金属ジアルキルホスフィネート2〜15質量%と、の溶融混合生成物を含む組成物である。
【0008】
溶融混合されて該組成物を形成する成分としては、ポリアミドが挙げられる。一部の実施形態では、該ポリアミドとしては、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド−6/6,12、ポリアミドMXD,6(MXD:m−キシリレンジアミン)、ポリアミド−6,T、ポリアミド−6,I、ポリアミド−6/6,T、ポリアミド−6/6,I、ポリアミド−6,6/6,T、ポリアミド−6,6/6,I、ポリアミド−6/6,T/6,I、ポリアミド−6,6/6,T/6,I、ポリアミド−6/12/6,T、ポリアミド−6,6/12/6,T、ポリアミド−6/12/6,I、ポリアミド−6,6/12/6,Iまたはこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、ポリアミドは,ポリアミド−6、ポリアミド−6,6またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、ポリアミドはポリアミド−6を含む。
【0009】
一部の実施形態では、ポリアミドの相対粘度は、ASTM D789−07に準拠し、温度23℃、90%ギ酸中で測定して100〜150である。一部の実施形態では、ポリアミドのアミン末端基濃度は、ポリアミド1g当たり100μeq/g未満である。アミン末端基濃度は、20〜100μeq/gであり得、具体的には30〜80μeq/gであり得、より具体的には40〜70μeq/gであり得る。アミン末端基含有量は、適切な溶媒にポリアミドを溶解させ、適切な表示方法を用いて0.01N塩酸(HCl)溶液で滴定することにより求められる。アミン末端基の量は、サンプルに添加したHCl溶液の容積、ブランクで使用したHCl容積、HCl溶液のモル濃度およびポリアミドサンプルの質量から算出される。ポリアミドの調製方法は既知であり、多くのポリアミドが市販されている。
【0010】
ポリアミドの使用量は、組成物の合計質量(すなわち、溶融混合成分の合計質量)に対して40〜73質量%である。この範囲内で、ポリアミドの量は、41〜65質量%であってもよく、具体的には42〜55質量%であってもよく、より具体的には42〜52質量%であってもよい。
【0011】
溶融混合されて組成物を形成する成分としては、ポリアミドに加えて、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)が挙げられる。酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテルと、カルボン酸およびまたは無水カルボン酸と脂肪族炭素−炭素二重結合または三重結合とを含む酸官能化剤と、の溶融混合生成物である。該酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の調製に好適なポリ(フェニレンエーテル)としては、下式の繰り返し構造単位を含むものが挙げられる:
【化4】
式中、Z
1は、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシであり;Z
2は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書での「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含む残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和あるいは不飽和であってもよい。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでいてもよい。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換であると記載された場合、それは任意に、置換残基の炭素と水素員上にヘテロ原子を含んでいてもよい。従って、置換であると特定的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、1個または複数個のカルボニル基、アミノ基、水酸基などを含んでいてもよく、あるいはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含んでいてもよい。一例として、Z
1は、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応で形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0012】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基(類)を有する分子を含んでいてもよい。また、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるTMDQ末端基類が存在することも多い。ポリ(フェニエンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、ブロックコポリマー、あるいはこれらの組合せの形態であってもよい。
【0013】
一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の形成に使用されるポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。本明細書での「ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー」は、少なくとも1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックと、を含むブロックコポリマーを指す。
【0014】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、酸化共重合法で調製される。この方法では、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含むモノマー混合物を酸化共重合するステップを備えるプロセスの生成物である。一部の実施形態では、モノマー混合物は、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの合計質量に対して、70〜99質量部の一価フェノールと、1〜30質量部のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと、を含む。ヒドロキシアリール−二末端ポリシロキサンは、下記の構造を有する複数の繰り返し単位を含み得る:
【化5】
式中、R
8は、それぞれ独立に水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビルであり;2つの末端単位は下式の構造
【化6】
(式中、Yは、水素、C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシまたはハロゲンであり、R
9は、それぞれ独立に水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビルである)を有する。非常に特定的な実施形態では、R
8とR
9はそれぞれメチルであり、Yはメトキシである。
【0015】
一部の実施形態では、一価フェノールは2,6−ジメチルフェノールを含み、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは下式の構造を有する:
【化7】
式中、nは平均で5〜100である。
【0016】
該酸化共重合法では、所望の生成物としてのポリフェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、副生成物としてのポリ(フェニレンエーテル)(取り込まれたポリシロキサンブロックを含まない)が生成される。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーからポリ(フェニレンエーテル)を分離する必要はない。従って、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)とポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを共に含む「反応生成物」として利用できる。イソプロパノールからの析出などのある単離方法によって、反応生成物が残留ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発材料を本質的に含まないことが保証される。言いかえれば、こうした単離方法によって、反応生成物中のポリシロキサン含有は、本質的にすべてがポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの形態であることが保証される。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの詳細な形成方法は、Carrilloらの米国特許第8,017,697号および2011年6月27日出願のCarrilloらの米国特許出願第13/169,137号に記載されている。
【0017】
一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の形成に使用されるポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中、ウベローデ粘度計で測定して0.25〜1dL/gである。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、0.3〜0.65dL/gであり得、より具体的には0.35〜0.5dL/gであり得、さらにより具体的には0.4〜0.5dL/gであり得る。ポリ(フェニレンエーテル)と酸官能化剤との反応では、ポリ(フェニレンエーテル)出発材料の固有粘度は、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)生成物のそれに等しい。従って、この段落で記載した固有粘度範囲は、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)およびポリ(フェニレンエーテル)にも同様に当てはまる。
【0018】
前述のように、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)と、カルボン酸およびまたは無水カルボン酸と脂肪族炭素−炭素二重結合または三重結合とを含む酸官能化剤と、の溶融混合生成物である。一部の実施形態では、酸官能化剤としては、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)95〜99.5質量部と、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された酸官能化剤0.5〜5質量部と、の溶融混合生成物である(ここで、該ポリ(フェニレンエーテル)と酸官能化剤の合計は100質量部である)。95〜99.5質量部の範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の量は、96〜99質量部であってもよく、具体的には97〜98.5質量部であってもよい。0.5〜5質量部の範囲内で、酸官能化剤の量は、1〜4質量部であってもよく、具体的には1.5〜3質量部であってもよい。
【0019】
一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の形成に使用されるポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノールおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の形成に使用されるポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。これらの実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、組成物に全体として、例えば0.4〜4質量%の、具体的には0.8〜3質量%の、より具体的には1.2〜2質量%のシロキサン基を提供し得る。
【0020】
酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の量は、組成物の合計質量に対して、20〜50質量%であってもよい。この範囲内で、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の量は、24〜44質量%であってもよく、具体的には28〜38質量%であってもよい。
【0021】
溶融混合されて該組成物を形成する成分としては、ポリアミドと酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーが挙げられる。ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、少なくとも1つのポリイミドブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックと、を含む。一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーのポリシロキサン含有量は、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの合計質量に対して、1〜40質量%であり、そのポリイミド含有量は60〜99質量%である。
【0022】
一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造
【化8】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族二価単環式基、C
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族二価多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキレン基、およびC
2−C
30置換または未置換アルケニレン基から構成される群から選択された二価基であり;R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立にC
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族一価単環式基、C
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族一価多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、およびC
2−C
30置換または未置換アルケニル基から構成される群から選択された一価基であり;Vは、C
5−C
50置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族単環式基および多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、C
2−C
30置換または未置換アルケニル基、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された四価リンカーであり;gは、それぞれ独立に2〜30であり;dは2〜20である)を有するポリシロキサンブロックと、下記の構造
【化9】
{式中、aは10〜1,000であり;Uは、それぞれ独立にC
5−C
50置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族単環式基および多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、およびC
2−C
30置換または未置換アルケニル基から構成される群から選択された四価リンカーであり;R
7は、それぞれ独立にC
6−C
20置換または未置換二価芳香族炭化水素部分、C
2−C
20直鎖または分枝鎖アルキレン部分、C
3−C
20シクロアルキレン部分、および下記一般式
【化10】
[式中、Qは−O−、−S−、−C(O)−、−S(O)
2−、−S(O)−および−C
yH
2y−(y:1〜20)から構成される群から選択される]の二価部分から構成される群から選択された二価基である}を有するポリイミドブロックと、を含む。
【0023】
一部の実施形態では、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは、下式の構造を有しており;gは、それぞれ独立に5〜15である。
【化11】
【0024】
ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの形成法は既知であり、例えば、Gallucciらの米国特許出願公報第2008/0223602A1号およびBhandariらの米国特許第8,013,251号に記載されている。また、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、例えば、Sabic Innovative Plastics社からSILTEM樹脂STM1500、STM1600およびSTM1700として市販もされている。
【0025】
拡張シロキサンブロックを有するポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、拡張シロキサンオリゴマーを形成後、これを用いてブロックコポリマーを作ることにより製造される。この拡張シロキサンオリゴマーは、ジアミノシロキサンと二無水物のいずれかの量が10〜50%モル過剰、具体的には10〜25%モル過剰であるこの2つの物質の反応で製造される。この文脈における「モル過剰」は、もう1つの反応物質より過剰であるとして定義される。例えば、ジアミノシロキサンが10%モル過剰で存在する場合、100モルの二無水物に対して、110モルのジアミノシロキサンが存在する。
【0026】
ジアミノシロキサンは下式の構造を有する:
【化12】
式中、R
1〜R
6およびgは、上記で定義したものである。一実施形態では、R
2、R
3、R
4およびR
5はメチル基であり、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基である。ジアミノシロキサンの合成は当分野では既知であり、例えば、Proberの米国特許第3,185,719号およびCellaらの同第4,808,686号に教示されている。
【0027】
拡張シロキサンオリゴマーの形成に有用な二無水物は下式の構造を有していてもよい:
【化13】
式中、Vは、上記で定義した四価リンカーである。好適な置換基およびまたはリンカーとしては、炭素環基、アリール基、エーテル、スルホン、スルフィドアミド、エステル、およびこれらの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。典型的なリンカーとしては、下記の構造などの四価芳香族ラジカルが挙げられる:
【化14】
式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(y:1〜20の整数)、およびパーフルオロアルキレン基を含むこれらのハロゲン化誘導体などの二価部分、あるいは式−O−Z−O−{式中、−O−または−O−Z−O−基の二価結合は、隣接する無水フタル酸基の3,3’、3,4’、4,3’および4,4’位置にあり、Zは、下式の二価部分
【化15】
[式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(y:1〜8)あるいは−C
pH
qF
r(p:1〜8、q:0〜15、r:1〜16、q+r=2p)であり得る二価部分である]}の基である。一部の実施形態では、四価リンカーVはハロゲンを含まない。
【0028】
一部の実施形態では、二無水物は芳香族ビス(エーテル無水物)を含み、ポリイミドはポリエーテルイミドである。芳香族ビス(エーテル無水物)の具体例は、例えば、Heathらの米国特許第3,972,902号およびGilesの同第4,455,410号に開示されている。芳香族ビス(エーテル無水物)の具体的な例としては、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、(4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物およびこれらの混合物が挙げられる。ビス(エーテル無水物)は、二極性非プロトン溶媒の存在下、ニトロ置換フェニルジニトリルと二価フェノール化合物の金属塩との反応生成物を加水分解後、脱水させることによって調製できる。
【0029】
二無水物の化学的等価物も使用できる。二無水物の化学的等価物の例としては、二無水物を形成可能な四官能性カルボン酸、および該四官能性カルボン酸のエステルまたは部分エステル誘導体が挙げられる。混合酸無水物またはエステル無水物も、二無水物の等価物として使用できる。本明細書と請求項全体における「二無水物」は、二無水物とそれらの化学的等価物を指す。
【0030】
ジアミノシロキサンと二無水物は、任意に、例えばフェニルホスホネートナトリウムなどのアルカリ金属アリールホスフィネートまたはアルカリ金属アリールホスホネートなどの重合触媒の存在下、例えばo−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族溶媒などの好適な溶媒中で反応させられる。一部の例では、該溶媒は、ポリマーから除去され易くするために、分子量が500以下の非プロトン性極性溶媒であろう。反応温度は100℃以上であってもよく、その反応は、反応で形成された水を除去するために共沸条件下で行われてもよい。一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの残留溶媒含有量は、ポリマーの質量に対して、500質量ppm以下であり、具体的には250質量ppm以下であり、より具体的には100質量ppm以下である。残留溶媒含有量は、例えばガスクロマトグラフィを含む多くの方法で求められる。
【0031】
ジアミノシロキサンと二無水物は、任意に、例えばフェニルホスホネートナトリウムなどのアルカリ金属アリールホスフィネートまたはアルカリ金属アリールホスホネートなどの重合触媒の存在下、例えばo−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族溶媒などの好適な溶媒中で反応させられる。一部の例では、該溶媒は、ポリマーから除去され易くするために、分子量が500以下の非プロトン性極性溶媒であろう。反応温度は100℃以上であってもよく、その反応は、反応で形成された水を除去するために共沸条件下で行われてもよい。一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの残留溶媒含有量は、ポリマーの質量に対して、500質量ppm以下であり、具体的には250質量ppm以下であり、より具体的には100質量ppm以下である。残留溶媒含有量は、例えばガスクロマトグラフィを含む多くの方法で求められる。
【0032】
シロキサンオリゴマー形成反応におけるジアミノシロキサンと二無水物の化学量論比によって、拡張シロキサンオリゴマーの鎖拡張度(すなわち、下式
【化16】
のd+1)が決定される。例えば、ジアミノシロキサンと二無水物とのモル比が4:6の場合、d+1が4のシロキサンオリゴマーが生成されるであろう。当業者には理解されるように、d+1は、ブロックコポリマーのシロキサン含有部分の平均値であり、d+1の値は、最も近い整数に四捨五入されたものである。例えば、d+1が4の値は3.5〜4.5の値を含む。一部の実施形態では、dは、50以下であり、具体的には25以下であり、より具体的には10以下である。
【0033】
上記の拡張シロキサンオリゴマーを非シロキサンジアミンおよび追加の二無水物とさらに反応させて、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーを製造する。ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの製造に使用される二無水物の合計量とジアミン(シロキサン含有ジアミンと非シロキサン含有ジアミンとの合計)との全体のモル比は、ポリマーが高分子量になるまで重合できるようにほぼ等しくなければならない。一部の実施形態では、ジアミンの合計量と二無水物の合計量との比は0.9〜1.1であり、具体的には0.95〜1.05である。一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィとポリスチレン標準を用いて測定して、5,000〜50,000ダルトンであり、具体的には10,000〜30,000ダルトンであろう。追加の二無水物は、拡張シロキサンオリゴマーの形成に用いた二無水物と同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
非シロキサンポリイミドブロックは、下記の一般式の構造を有する:
【化17】
式中、aは2以上であり、典型的には10〜1,000以上であり、具体的には10〜500であり得;R
7は、それぞれ独立にC
6−C
20置換または未置換二価芳香族炭化水素部分、C
2−C
20直鎖または分枝鎖アルキレン部分、C
3−C
20シクロアルキレン部分、および下記一般式の構造
【化18】
[式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−S(O)
2−、−S(O)−および−C
yH
2y−(y:1〜20)から構成される群から選択される]を有する二価部分から構成される群から選択された二価基であり;Uは、ポリイミドオリゴマーの合成を妨げない限り、限定なく四価リンカーである。好適なリンカーとしては、(a)C
5−C
50置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族単環式基および多環式基;(b)C
1−C
30置換または未置換、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和アルキル基;およびこれらのリンカーの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。好適な置換基およびまたはリンカーとしては、炭素環基、アリール基、エーテル、スルホン、スルフィドアミド、エステル、およびこれらの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。典型的なリンカーとしては、下式の四価芳香族ラジカルが挙げられる:
【化19】
式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(y:1〜20の整数)、およびパーフルオロアルキレン基を含むこれらのハロゲン化誘導体、あるいは式−O−Z−O−{式中、−O−または−O−Z−O−基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’および4,4’位置にあり、Zは、下式
【化20】
[式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(y:1〜8)あるいは−C
pH
qF
r(p:1〜8、q:0〜15、r:1〜16、q+r=2p)の二価部分であり得る二価部分である]の二価部分を含む}の基などの二価部分である。一部の実施形態では、四価リンカーUはハロゲンを含まない。一部の実施形態では、ポリシロキサンブロックのVとポリイミドブロックのUは同じである。一部の実施形態では、VとUは異なる。
【0035】
一部の実施形態では、非シロキサンポリイミドブロックは、ポリエーテルイミドブロックを含む。ポリエーテルイミドブロックは、下式の繰り返し単位を含む:
【化21】
式中、Tは、−O−または式−O−Z−O−(式中、−O−または−O−Z−O−基の二価結合は、フタルイミド基の3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にあり、ZとR
7は上記に記載のものである)の基である。一部の実施形態では、R
7は、それぞれ独立にp−フェニレンまたはm−フェニレンであり、Tは、下式の二価部分である。
【化22】
ポリエーテルイミドオリゴマーを含むポリイミドオリゴマーの多くの製造法には、Heathらの米国特許第3,847,867号、Takekoshiらの同第3,850,885号、Whiteの同第3,852,242号、Williamsらの同第3,983,093号、およびSchmidtらの同第4,443,591号に開示されたものが含まれる。
【0036】
非シロキサンポリイミドブロックの繰り返し単位は、二無水物とジアミンとの反応で形成される。該繰り返し単位の形成に有用な二無水物は、下式の構造を有する:
【化23】
式中、Uは上記で定義したものである。前述のように、二無水物は、その化学的等価物を含む。一部の実施形態では、二無水物は、芳香族ビス(エーテル無水物)を含む。特定の芳香族ビス(エーテル無水物)の例としては、例えば、Heathらの米国特許第3,972,902号およびGilesの同第4,455,410号に開示されている。芳香族ビス(エーテル無水物)の具体的な例としては、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物およびこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
非シロキサンポリイミドブロックの繰り返し単位の形成に有用なジアミンは下式の構造を有する:
【化24】
式中、R
7は上記で定義したものである。特定の有機ジアミンの例は、例えば、Heathらの米国特許第3,972,902号およびGilesの同第4,455,410号に開示されている。典型的なジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(p−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンおよびこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、ジアミンは芳香族ジアミンであり、より具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、スルホニルジアニリンまたはこれらの混合物である。
【0038】
一般に、該反応は、100℃〜250℃の温度における二無水物とジアミンとの反応を達成させるために、例えば、o−ジクロロベンゼンおよびm−クレゾール/トルエンなどの種々の溶媒を用いて行える。あるいは、ポリイミドブロックは、例えば、芳香族ビス(無水物)とジアミンの出発材料の混合物を撹拌しながら高温に加熱することにより溶融重合させるなどの溶融重合または界面重合によって調製できる。一般に、溶融重合での温度は200℃〜400℃である。
【0039】
連鎖停止剤を用いて、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの分子量を制御できる。アニリンなどの単官能性アミン、あるいは無水フタル酸などの単官能性無水物を使用できる。
【0040】
ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、最初に拡張シロキサンオリゴマーを形成し、次に、この拡張シロキサンオリゴマーを非シロキサンジアミンおよび二無水物とさらに反応させることによって製造できる。あるいは、非シロキサンジアミンと二無水物を反応させてポリイミドオリゴマーを形成でき、このポリイミドオリゴマーと拡張シロキサンオリゴマーを反応させてポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーを形成できる。
【0041】
ポリイミドオリゴマーと拡張シロキサンオリゴマーを用いてブロックコポリマーを形成する場合、末端無水物官能基と末端アミン官能基との化学量論比は、0.90:1.10であってもよく、具体的には0.95:1.05であってもよい。一部の実施形態では、拡張シロキサンオリゴマーはアミン末端であり、非シロキサンポリイミドオリゴマーは無水物末端である。他の実施形態では、拡張シロキサンオリゴマーは無水物末端であり、非シロキサンポリイミドオリゴマーはアミン末端である。他の実施形態では、拡張シロキサンオリゴマーと非シロキサンポリイミドオリゴマーは共にアミン末端であり、それらを共に十分な量の二無水物と反応させて、所望の分子量のコポリマーを得る。他の実施形態では、拡張シロキサンオリゴマーと非シロキサンポリイミドオリゴマーは共に無水物末端であり、これらを共に十分な量のジアミンと反応させて、所望の分子量のコポリマーを得る。シロキサンオリゴマーとポリイミドオリゴマーの重合のための反応条件は、それらのオリゴマー自体の形成に必要な反応条件と同様であり、当業者であれば、過度な実験なしに決定できる。
【0042】
ブロックコポリマー中のシロキサン含有量は、重合中に使用した拡張シロキサンオリゴマーの量から求められる。シロキサン含有量は、ブロックコポリマーの合計質量に対して、例えば1〜40質量%であってもよい。一部の実施形態では、シロキサン含有量は、ブロックコポリマーの合計質量に対して、少なくとも20質量%であり、具体的には少なくとも25質量%である。一部の実施形態では、シロキサン含有量は35質量%以下である。シロキサン含有量は、拡張シロキサンオリゴマーの形成に用いたジアミノシロキサンの分子量を用いて算出できる。あるいは、シロキサン含有量は、核磁気共鳴分光法で求められる。
【0043】
一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化25】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、を含む:
【化26】
式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化27】
gは、それぞれ独立に2〜30であり;dは2〜20であり;aは10〜1,000である。
【0044】
一部の実施形態では、2つ以上のポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーを組み合わせて、所望のシロキサン含有量を達成できる。ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、任意の割合で組み合わせられる。例えば、2つのポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーが用いられる場合、第1のブロックコポリマーと第2のブロックコポリマーとの質量比は1:99〜99:1であってもよい。
【0045】
一部の実施形態では、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、組成物に全体として、0.4〜10質量%の、具体的には1〜7質量%の、より具体的には2〜5質量%のシロキサン基を提供する。一部の実施形態では、該組成物は、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーから誘導されたシロキサン基を合計で1〜6質量%と、もしあれば、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含む。この範囲内で、シロキサン基の合計質量%は、組成物の合計質量に対して、2〜5質量%であり得、具体的には2〜4質量%であり得る。
【0046】
ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの使用量は、組成物の合計質量に対して、5〜40質量%である。この範囲内で、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー量は、7〜30質量%であってもよく、具体的には7〜20質量%であってもよく、より具体的には7〜15質量%であってもよい。
【0047】
該組成物は、ポリアミド、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)およびポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーに加えて、金属ジアルキルホスフィネートを含む。本明細書での「金属ジアルキルホスフィネート」は、少なくとも1つの金属カチオンと少なくとも1つのジアルキルホスフィネートアニオンを含む塩を指す。一部の実施形態では、金属ジアルキルホスフィネートは下式の構造を有する:
【化28】
式中、R
aとR
bは、それぞれ独立にC
1−C
6アルキルであり;Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛であり;dは2または3である。R
aとR
bの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびフェニルが挙げられる。一部の実施形態では、R
aとR
bはエチル、Mはアルミニウム、dは3(すなわち、該金属ジアルキルホスフィネートはアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート))である。
【0048】
一部の実施形態では、該金属ジアルキルホスフィネートは微粒子状である。金属ジアルキルホスフィネート粒子の中央粒径(D50)は、40μm以下であってもよく、具体的には30μm以下であってもよく、より具体的には25μm以下であってもよい。また、金属ジアルキルホスフィネートをポリマー(ポリアミドの一部あるいはポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の一部など)と組み合わせて、マスターバッチを形成できる。金属ジアルキルホスフィネートマスターバッチは、組成物中に全体として存在する量を上回る量の金属ジアルキルホスフィネートを含む。組成物中の他の成分に金属ジアルキルホスフィネートを添加するマスターバッチの採用によって添加が容易となり、金属ジアルキルホスフィネートの分散が向上する。
【0049】
該組成物は、その合計質量に対して、2〜15質量%の金属ジアルキルホスフィネートを含む。この範囲内で、金属ジアルキルホスフィネートの量は、3〜12質量%であってもよく、具体的には4〜10質量%であってもよい。
【0050】
該組成物は、金属ジアルキルホスフィネートに加えて、任意に難燃剤を含んでいてもよい。こうした追加の難燃剤としては、例えば、有機リン酸エステル(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェートなど)、窒素含有難燃剤(メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンなど)、金属水酸化物(水酸化マグネシウムなど)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、該難燃剤は、金属ジアルキルホスフィネートから成る。
【0051】
該組成物はさらに任意に、2〜20質量%のガラス繊維を含んでいてもよい。一部の実施形態では、該組成物はガラス繊維を含まない。一部の実施形態では、該組成物は導電性充填剤を含まない。一部の実施形態では、組成物はすべての充填剤を含まない。
【0052】
該組成物はさらに任意に、熱可塑性分野で既知の添加剤を1種または複数種含んでいてもよい。例えば、該組成物はさらに任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、滴下防止剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤など、およびこれらの組み合わせから選択された添加剤を含んでいてもよい。こうした添加剤が存在する場合、その合計量は、組成物の合計質量に対して、典型的には5質量%以下であり、具体的には2質量%以下であり、より具体的には1質量%以下である。
【0053】
該組成物は任意に、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとのブロックコポリマー、およびアルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーの内の1つまたは複数を含まなくてもよい。一部の実施形態では、該組成物は、ポリアミド、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)およびポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー以外のいかなるポリマーも含まない。一部の実施形態では、該組成物はハロゲンフリーである。
【0054】
該組成物は、剛体物品の成形に使用できる。これらの実施形態では、該組成物は、曲げ弾性率で客観的に明示される剛性が高くなければならず、それは、ワイヤーやケーブル用の柔軟な絶縁体の形成に使用されるように意図された先行技術による組成物で得られる剛性より高いものでなければならない。具体的には、これらの実施形態では、組成物の曲げ弾性率は、ISO178:2010に準拠し、温度23℃で測定して、1800〜2500MPaである。
【0055】
非常に特定的な実施形態では、該組成物は、その合計質量に対して、ポリアミド−6,6を42〜52質量%と;酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択された酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)を28〜38質量%と;下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化29】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、
【化30】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化31】
gは、それぞれ独立に2〜30であり;dは2〜20であり;aは10〜1,000である)を含むポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーを5〜15質量%と;金属ジアルキルホスフィネートを3〜10質量%と、の溶融混合生成物を含む。一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。一部の実施形態では、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、の組み合わせである。
【0056】
本発明は、該組成物とそのすべての変形例を含む物品を包含する。該組成物は、太陽電池端子ボックスとコネクタ、インバーター筐体、自動車電気コネクタ、継電器、充電カプラ、および大量輸送車両の座席を含む部品などの電気部品用の部品形成に特に有用である。物品形成に好適な方法としては、単層および複層シート押出、射出成形、ブロー成形、フィルム押出、異型押出、引抜、圧縮成形、熱成形、圧力成形、ハイドロホーミング、真空成形などが挙げられる。これらの物品製造法の組み合わせも使用できる。当業者であれば、具体的な物品形成条件を決定できる。例えば、射出成形での溶融温度は240〜300℃に、金型温度は60〜120℃にできる。一実施形態は、組成物の合計質量に対して、ポリアミド40〜73質量%と、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)20〜50質量%と、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー5〜40質量%と、金属ジアルキルホスフィネート2〜15質量%と、の溶融混合生成物を含む組成物を含有する物品である。一部の実施形態では、ポリアミドはポリアミド−6,6であり;ポリアミド量は42〜52質量%であり;酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択され;酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の量は28〜38質量%であり;ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化32】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、
【化33】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化34】
gは、それぞれ独立に2〜30であり;dは2〜20であり;aは10〜1,000である)を含み;ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの量は5〜15質量%であり;金属ジアルキルホスフィネートは3〜10質量%である。
【0057】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0058】
実施形態1:組成物の合計質量に対して、ポリアミド40〜73質量%と、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)20〜50質量%と、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー5〜40質量%と、金属ジアルキルホスフィネート2〜15質量%と、の溶融混合生成物を含む組成物。
【0059】
実施形態2:前記ポリアミドは、ポリアミド−6,ポリアミド6,6、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,12、ポリアミド−6/6,6、ポリアミド−6/6,12、ポリアミドMXD,6、ポリアミド−6,T、ポリアミド−6,I、ポリアミド−6/6,T、ポリアミド−6/6,I、ポリアミド−6,6/6,T、ポリアミド−6,6/6,I、ポリアミド−6/6,T/6,I、ポリアミド−6,6/6,T/6,I、ポリアミド−6/12/6,T、ポリアミド−6,6/12/6,T、ポリアミド−6/12/6,I、ポリアミド−6,6/12/6,Iおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1に記載の組成物。
【0060】
実施形態3:前記ポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1に記載の組成物。
【0061】
実施形態4:前記ポリアミドは、ポリアミド−6,6を含む実施形態1に記載の組成物。
【0062】
実施形態5:前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)95〜99.5質量部と、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された酸官能化剤0.5〜5質量部と、の溶融混合生成物である実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の組成物。
【0063】
実施形態6:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノールおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む実施形態5に記載の組成物。
【0064】
実施形態7:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む実施形態5に記載の組成物。
【0065】
実施形態8:前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、前記組成物に0.4〜4質量%のシロキサン基を提供する実施形態7に記載の組成物。
【0066】
実施形態9:前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造
【化35】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族二価単環式基、C
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族二価多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキレン基、およびC
2−C
30置換または未置換アルケニレン基から構成される群から選択された二価基であり;R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立にC
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族一価単環式基、C
5−C
30置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族一価多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、およびC
2−C
30置換または未置換アルケニル基から構成される群から選択された一価基であり;Vは、C
5−C
50置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族単環式基および多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、C
2−C
30置換または未置換アルケニル基およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された四価リンカーであり;gは、それぞれ独立に2〜30であり;dは2〜20である)を有するポリシロキサンブロックと、下記の構造
【化36】
{式中、aは10〜1,000であり;Uは、C
5−C
50置換または未置換、飽和、不飽和または芳香族単環式基および多環式基、C
1−C
30置換または未置換アルキル基、C
2−C
30置換または未置換アルケニル基、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された四価リンカーであり;R
7は、それぞれ独立にC
6−C
20置換または未置換二価芳香族炭化水素部分、C
2−C
20直鎖または分枝鎖アルキレン部分、C
3−C
20シクロアルキレン部分、および下記一般式
【化37】
[式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−S(O)
2−、−S(O)−および−C
yH
2y−(y:1〜20)から構成される群から選択される]の二価部分から構成される群から選択された二価基である}を有するポリイミドブロックと、を含む実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載の組成物。
【0067】
実施形態10:前記R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは、下記の構造を有しており;
【化38】
gは、それぞれ独立に5〜15である実施形態9に記載の組成物。
【0068】
実施形態11:前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、前記組成物に0.4〜10質量%のシロキサン基を提供する実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載の組成物。
【0069】
実施形態12:1〜6質量%のシロキサン基を含む実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載の組成物。
【0070】
実施形態13:ISO178:2010に準拠し、温度23℃で測定した曲げ弾性率が1800〜2500MPaの実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載の組成物。
【0071】
実施形態14:組成物の合計質量に対して、ポリアミド−6,6を42〜52質量%と;酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)を28〜38質量%と;下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化39】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、
【化40】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化41】
gは、それぞれ独立に5〜15であり;dは2〜20であり;aは10〜1,000である)を含むポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーを5〜15質量%と;金属ジアルキルホスフィネートを3〜10質量%と、の溶融混合生成物を含む組成物。
【0072】
実施形態14a:前記ポリアミドはポリアミド−6,6であり;前記ポリアミドの量は42〜52質量%であり;前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択され;前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の量は28〜38質量%であり;前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化42】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、
【化43】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化44】
gは、それぞれ独立に5〜15であり、dは2〜20であり;aは10〜1,000である)を含み;前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの量は5〜15質量%であり;前記金属ジアルキルホスフィネートの量は3〜10質量%である。
【0073】
実施形態15:前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む実施形態14に記載の組成物。
【0074】
実施形態16:前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、の組み合わせである実施形態14に記載の組成物。
【0075】
実施形態17:組成物の合計質量に対して、ポリアミド40〜73質量%と、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)20〜50質量%と、ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマー5〜40質量%と、金属ジアルキルホスフィネート2〜15質量%と、の溶融混合生成物を含む組成物を含有する物品。
【0076】
実施形態18:前記ポリアミドはポリアミド−6,6であり;前記ポリアミドの量は42〜52質量%であり;前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)は、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、酸官能化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択され;前記酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)の量は28〜38質量%であり;前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化45】
下記の構造を有するポリイミドブロックと、
【化46】
(式中、R
1とR
6は、それぞれ独立にC
2−C
6アルキレン基であり;R
7は、それぞれ独立にm−フェニレンまたはp−フェニレンであり;R
2、R
3、R
4およびR
5はメチルであり;UとVは下記の構造を有しており;
【化47】
gは、それぞれ独立に5〜15であり;dは2〜20であり;aは10〜1,000である)を含み;前記ポリイミド−ポリシロキサンブロックコポリマーの量は5〜15質量%であり;前記金属ジアルキルホスフィネートは3〜10質量%である実施形態17に記載の物品。
【0077】
本明細書で開示された範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。本明細書で開示した範囲はそれぞれ、この開示範囲内の任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0078】
以下の非限定的実施例によって、本発明をさらに例証する。
[実施例1〜12、比較実施例1〜4]
【0079】
これらの実施例では、発明的組成物の特性バランスが向上していることを例証する。
【0080】
組成物形成用の成分を表1に示す。
【表1】
【0081】
組成物の形成に用いた成分の量を表2に示す。量の単位は、組成物の合計質量に対する質量%である。溶融温度240〜300℃、スループット15kg/時とした内径28mmのZSK二軸押出機で混合した。最初に、PPEまたはPPE−Siそれぞれ98質量部と、フマル酸2質量部と、を混合して、FPPEまたはFPPE−Siで示す官能化ポリ(フェニレンエーテル)を調製した。次に、得られたFPPEまたはFPPE−SiをPEI−SiおよびDEPALと乾燥混合し、得られた乾燥混合物を押出機の供給口に添加し、ポリアミドを下流側のサイドフィーダから添加した。押出品をペレット化し、減圧下、ペレットを120℃×5時間状態調節して、溶融粘度試験に、あるいは物性試験用サンプルの射出成形に用いた。
【0082】
特性値を表2に示す。溶融粘度試験は、ISO11443:2005に準拠し、温度300℃、せん断速度を種々変化させる多点法を用いて行った。表2の溶融粘度(Pa−s)は、せん断速度1,500秒
−1で測定した。
【0083】
メルトボリュームフローレート(cm
3/10分)は、ISO1133−2005に準拠し、手順B(変位測定、自動方式)、試験温度300℃、荷重5kg、キャピラリ径2.0955mm、キャピラリ長8.0mm、試験片形状ペレット、試験前に試験片を120℃×5.5時間状態調節、1組成物当たり5回測定として求めた。
【0084】
溶融温度270〜285℃、金型温度80〜100℃で射出成形機を作動させて、組成物から物性試験用の試験サンプルを射出成形した。試験サンプルを23℃×48時間状態調節後、試験に供した。
【0085】
引張弾性率(MPa)および引張破断ひずみ(%)は、ISO527−1:2012に準拠し、温度23℃、80mm×10mm×4mmのタイプ1A棒、ゲージ長50mm、グリップ間隔115mm、試験速度1mm/分、1組成物当たり5本のサンプルを用いて求めた。
【0086】
アイゾッドノッチなしアイゾッド衝撃強度(kJ/m
2)は、ISO180:2000に準拠し、温度23℃、タイプA半径、ノッチ付サンプルの場合には、ノッチ角45°で8mm深さ、ハンマーエネルギー2.75J、横断面寸法が10mm×4mmの棒、1組成物当たり5本のサンプルを用いて求めた。表2には、試験した5本のサンプルの破壊モードも示す:「P」は、「部分的な破断」(延性破壊に相当)の破壊モードを指し、「C」は、完全な破断(脆性破壊に相当)の破壊モードを指す。5本のサンプルすべてが「部分的な破断」の破壊モードである場合、該組成物のノッチなしアイゾッド衝撃強度は、必然的に137.39kJ/m
2である。
【0087】
曲げ弾性率(MPa)と曲げ強度(MPa)は、ISO178:2010に準拠し、温度23℃、横断面寸法が80mm×10mm×4mmの棒、支点間距離64mm,1組成物当たり3本の試験片を用いて求めた。
【0088】
ビカット軟化温度(℃)は、ISO306:2004に準拠し、方法B120、針貫入示度1mm、負荷時間(pre−loading time)5分、1組成物当たり3本の試験片を用いて求めた。
【0089】
射出成形フレイムバーの難燃性は、保険業者研究所規格94「プラスチック材料の燃焼性試験(UL94)」の20mm垂直燃焼試験に準拠して求めた。試験前に、0.8mm厚のフレイムバーを温度23℃×相対湿度50%で、少なくとも48時間状態調節した。UL94 20mm垂直燃焼試験では、5本のフレイムバーセットについて試験する。各バーに対して炎を印加して除去し、バーの自己消化に要する時間(第1残炎時間、t1)を記録する。その後、再度炎を印加・除去して、バーの自己消化に要する時間(第2残炎時間、t2)と、火炎後赤熱時間(残赤熱時間、t3)を記録する。V−0等級を達成するためには、個々の試験片それぞれの残炎時間t1、t2が10秒以内でなければならず;5本の試験片すべての残炎時間の合計(5本の試験片すべてのt2+t1)が50秒以内でなければならず;個々の試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が30秒以内でなければならず;いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱せず;また、燃焼粒子又は液滴によって綿指標が点火されてはならない。V−1等級を達成するためには、個々の試験片それぞれの残炎時間t1、t2が30秒以内でなければならず;5本の試験片すべての残炎時間の合計(5本の試験片すべてのt2+t1)が250秒以内でなければならず;個々の試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が60秒以内でなければならず;いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱せず;また、燃焼粒子又は液滴によって綿指標が点火されてはならない。V−2等級を達成するためには、個々の試験片それぞれの残炎時間t1、t2が30秒以内でなければならず;5本の試験片すべての残炎時間の合計(5本の試験片すべてのt2+t1)が250秒以内でなければならず;個々の試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が60秒以内でなければならず;また、いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱してはならないが、綿指標は、燃焼粒子または液滴によって点火されてもよい。V−2基準を満たさない組成物は破損したと考えられる。
【0090】
比較トラッキング指数(CTI)(V)は、国際電気標準会議(IEC)の標準IEC−60112第3版(1979)に準拠し、厚み3.2mm、径10cmの試験サンプル、1組成物当たり5本のサンプルを用いて求めた。報告値は、塩化アンモニウム溶液50滴を材料表面に滴下後にトラッキングを生じる電圧である。
【0091】
表2の特性結果から、発明的実施例はすべて、金属ジアルキルホスフィネートを含まない対応する比較実施例に対して難燃性が向上する(例えば、比較実施例1が破損したのに対し、実施例1はV−1等級を示しており、実施例2と3はV−0等級を示している;比較実施例2が破損したのに対し、実施例4〜6はすべてV−0等級を示しており;比較実施例3が破損したのに対し、実施例7と8はV−1等級を示し、実施例9はV−0等級を示しており;比較実施例4に対して、実施例11はV−1等級を示しており、実施例10と12はV−0等級を示している)ことがわかる。また、発明的実施例は、対応する比較実施例に対して、引張弾性率も実質的に上昇している(例えば、比較実施例1の引張弾性率が2433.2MPaであるのに対し、実施例1〜3のそれは、それぞれ2510.8MPa、2590.2MPaおよび2772.8MPaであり;比較実施例2の引張弾性率が2251.2MPaであるのに対し、実施例4〜6のそれは、それぞれ2374.0MPa、2422.8MPaおよび2598.2MPaであり;比較実施例3の引張弾性率が2276.4MPaであるのに対し、実施例7〜9のそれは、それぞれ2367.8MPa、2446.0MPaおよび2627.0MPaであり;比較実施例4の引張弾性率が2079.6MPaであるのに対し、実施例10〜12のそれは、それぞれ2228.6MPa、2274.4MPaおよび2461.2MPaである)。DEPAL含有量が比較的高く、PEI−Si含有量が比較的低い発明的実施例の、表面抵抗量である比較トラッキング指数(CTI)は、実質的に向上(上昇)している(例えば、比較実施例1のCTIが350Vであるのに対し、実施例3のそれは600Vであり;比較実施例3のCTIが300Vであるのに対し、実施例9のそれは525Vである)。FPPE−Siと比較的高含有量のDEPALとを含む実施例を除く発明的実施例すべての溶融粘度は、対応する比較実施例に対して向上している(低減している)(例えば、比較実施例1の溶融粘度が90.01Pa−sであるのに対し、実施例1〜3のそれは、76.83Pa−s、71.83Pa−sおよび62.82Pa−sであり;比較実施例2の溶融粘度が89.39Pa−sであるのに対し、実施例4〜6のそれは、74.05Pa−s、70.21Pa−sおよび75.22Pa−sであり;比較実施例3の溶融粘度が87.17Pa−sであるのに対し、実施例7のそれは75.77Pa−sであり;比較実施例4の溶融粘度が119.97Pa−sであるのに対し、実施例10〜12のそれは、103.01Pa−s、100.57Pa−sおよび103.46Pa−sである)。比較的低含有量のDEPALを含む発明的実施例のほとんどのノッチなしアイゾッド衝撃強度は、対応する比較実施例に対して向上している(例えば、比較実施例1のノッチなしアイゾッド衝撃強度が118.40kJ/m
2であるのに対し、実施例1と2のそれは137.39kJ/m
2であり;比較実施例2のノッチなしアイゾッド衝撃強度が134.16kJ/m
2であるのに対し、実施例4のそれは137.39kJ/m
2であり;比較実施例4のノッチなしアイゾッド衝撃強度が127.01kJ/m
2であるのに対し、実施例10と11のそれは137.39kJ/m
2である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】