(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に位置しながら占める体積が、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記マトリックス全体に分布しながら占める体積に対して少なくとも90%を有することを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体。
(a)熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の化学的結合を誘導し、熱可塑性ポリマービーズに均一にコーティングするために、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末をカップリング剤で表面処理する段階と、
(b)熱可塑性ポリマービーズに対して非溶解性を示す溶媒に熱可塑性ポリマービーズと表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末を添加して分散させる段階と、
(c)前記溶媒を蒸発させて、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズの表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末を形成する段階と、
(d)前記セラミック−ポリマー複合粉末に圧力をかけて成形する段階と、を含み、
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズの1/10より小さく、
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドのうちから選択された1種以上の物質よりなり、
前記熱可塑性ポリマービーズは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリメチルシルセスキオキサンのうちから選択された1種以上の物質よりなり、
前記カップリング剤は、シリコン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうちから選択された1種以上のカップリング剤を使用し、
前記(b)段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比で添加されることを特徴とする、
熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法。
前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上であり且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法。
前記(a)の段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末とカップリング剤を溶媒に添加し、前記表面処理を行い、前記(a)の段階で使用する溶媒は、pHが2.0〜6.5範囲であることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化、高機能化などを目的に機器の内部に発熱素子を密集させて効率的に冷却する方法が要求されている。また、2次電池を動力源とする電気自動車において、走行時に2次電池で発生する熱を効果的に制御するための方法が要求されている。
【0003】
一般的に、電子機器や2次電池から発生する熱は、空気中に放熱されるが、一般的な放熱方法は、主にアルミニウムや銅のような熱伝導度が優れた金属で製造された放熱機器を利用して行われる。しかし、絶縁性が確保されないため、ヒューズ(fuse)のような別途の装置が必要であり、金属の特性上、全体的に素子が重くなる短所がある。
【0004】
このような短所を克服するために、シリコン系樹脂やエポキシ系樹脂などのマトリックスよりなる樹脂に高い熱伝導率を有する無機物粒子を分散させて複合素材を製造する方法が多く研究されている。
【0005】
熱伝導性ポリマー複合素材内の熱伝導性フィラーの材料的な観点から見れば、金属粒子などは、熱伝導性の向上に効果的であるが、電気絶縁性がないため、通常、熱伝導性フィラーとして使用されず、主に金属酸化物や金属チッ化物のうち熱伝導度に優れかつ電気絶縁性を有する材料が主に使用されている。
【0006】
高い熱伝導率を得るために相当な量の熱伝導性フィラーをエポキシやシリコン系樹脂に分散させて複合素材を製造するが、第一に、費用が増加する短所があり、第二に、粘度が急激に増加し、機械的物性及び成形性が急激に減少し、実際の熱伝導性高分子複合素材の長所を生かしにくくなる短所がある。したがって、現在熱伝導性高分子複合素材の開発は、射出成形が可能な流動性と適正水準の物性を確保するために、最小の熱伝導性フィラーの含量で最適な熱伝導度を得るための方向で行われている。
【0007】
最小の熱伝導性フィラーの含量で最適な熱伝導度を得るためには、熱の移動中に発生するフォノン散乱(phonon−scattering)が最小化されなければならない。また、ポリマーマトリックス内に熱伝導性フィラーが直接的な接触を成している熱伝導経路(thermal pathway)が形成されなければならず、より具体的には、所望の位置に熱伝導性フィラーを配列させなければならない。
【0008】
しかし、既存の熱伝導性セラミック−高分子複合素材の製造技術、例えば熱伝導性セラミックと液体ポリマーあるいはポリマー粉末を単純に混合する方式では、十分な熱伝導経路(thermal pathway)を構築しにくいのが実情である。
【0009】
したがって、最小の熱伝導性フィラーの含量で最適な熱伝導度を得るために、複合素材の高分子マトリックス内に熱伝導性フィラーの熱伝導経路を構築し、セラミックフィラー及び高分子マトリックスとの間の界面に化学的結合が発現される方式を利用する熱伝導性高分子複合素材を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、熱伝導性セラミックフィラーの分散及び界面親和力が極大化され、少ない含量の熱伝導性セラミックフィラーを有しながらも、優れた電気絶縁性と共に、優れた熱伝導性を示し、電子機器や2次電池などへの使用時に電気絶縁性が確保されるので、ヒューズ(fuse)のような別途の装置が不要であり、重さの軽い特徴を有する熱伝導性セラミック−ポリマー複合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱可塑性ポリマーがマトリックスを構成し、熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が均一に分散して熱伝導経路を形成し、前記熱可塑性ポリマー粒子は、角形の形態を有し、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズの1/10より小さいことを特徴とする熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を提供する。
【0012】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、カップリング剤で表面処理され、前記熱可塑性ポリマー粒子と化学的結合を成し、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドのうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。
【0013】
前記熱可塑性ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリメチルシルセスキオキサンのうちから選択された1種以上の物質よりなることができ、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマーは、1:3〜30の体積比を有することが好ましい。
【0014】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に位置しながら占める体積が、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記マトリックス全体に分布しながら占める体積に対して少なくとも90%である。
【0015】
また、本発明は、(a)熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の化学的結合を誘導し、熱可塑性ポリマービーズに均一にコーティングするために、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末をカップリング剤で表面処理する段階と、(b)熱可塑性ポリマービーズに対して非溶解性を示す溶媒に熱可塑性ポリマービーズと表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末を添加して分散させる段階と、(c)前記溶媒を蒸発させて、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズの表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末を形成する段階と、(d)前記セラミック−ポリマー複合粉末に圧力をかけて成形する段階とを含み、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズの1/10より小さいことを特徴とする熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法を提供する。
【0016】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドのうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。
【0017】
前記熱可塑性ポリマービーズは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリメチルシルセスキオキサンのうちから選択された1種以上の物質よりなることができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0018】
前記(b)段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比で添加されることが好ましい。
【0019】
前記カップリング剤は、シリコン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうちから選択された1種以上のカップリング剤を使用することができ、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末100重量部に対して0.1〜5.0重量部を添加して前記表面処理することが好ましい。
【0020】
前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上であり且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることが好ましい。
【0021】
前記(a)段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末とカップリング剤を溶媒に添加して前記表面処理を行い、前記(a)段階で使用する溶媒は、pHが2.0〜6.5範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電気絶縁性熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、成形体の製造時に高分子内に熱伝導性セラミックフィラーの分散及び界面親和力が極大化され、少ない含量の熱伝導性セラミックフィラーを有しながらも、優れた電気絶縁性とともに、すべての面で優れた熱伝導性を示し、電子機器や2次電池などへの使用時に電気絶縁性が確保されるので、ヒューズ(fuse)のような別途の装置が不要であり、重さが軽いという長所がある。
【0023】
本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、高い電気絶縁性と熱伝導性が要求される製品に応用することができ、高容量の電気自動車用バッテリーパッケージ(battery pack)の寿命(life cycle)を延ばし、安定性(safety)を確保する放熱パッケージング、無線通信中継器、LCD(Liquid Crystal Display),PDP(Plasma Display Panel),LED(Light Emitting Diode)TV、コンピュータ、ノートパソコンなどの小型化、集積化された電子機器に積載されている発熱素子の安定性を確保するために、これを冷却させるのに使用される放熱部品あるいはそのインターフェースなどに適用が可能である。
【0024】
また、本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、高速電気自動車用バッテリーのように、発熱量が大きい素材の放熱効率と絶縁効率を画期的に増進させることができ、高速走行用電気自動車(Electric Vehicle)のエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System;ESS)の熱制御部品素材にも適用が可能である。
【0025】
また、本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、将来、高付加価値を創出する電気自動車の電装品、マイクロ演算処理装置(Mpu)、ナビゲーション、電気自動車エンジンなどを包むハウジングなどにも適用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施例による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、熱可塑性ポリマーがマトリックスを構成し、熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が均一に分散して熱伝導経路を形成し、前記熱可塑性ポリマー粒子は、角形の形態を有し、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズの1/10より小さい。
【0028】
本発明の好ましい実施例による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法は、(a)熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の化学的結合を誘導して熱可塑性ポリマービーズに均一にコーティングするために、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末をカップリング剤で表面処理する段階と、(b)熱可塑性ポリマービーズに対して非溶解性を示す溶媒に熱可塑性ポリマービーズと表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末を添加して分散させる段階と、(c)前記溶媒を蒸発させて熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズ表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末を形成する段階と、(d)前記セラミック−ポリマー複合粉末に圧力をかけて成形する段階とを含み、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズの1/10より小さい。
【0029】
以下、添付の図面を参照して本発明による好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、当該技術分野における通常的な知識を有する者に本発明が充分に理解されるように提供されるものであって、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が次に記述される実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明は、セラミック(ceramic)−ポリマー(polymer)複合粉末(composite powder)の界面結合力の向上による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を提示し、また、電気絶縁性熱伝導性セラミック−高分子複合粉末を形成し、これを利用して熱放出材料、界面放熱素材(heat sink,Thermal interface material)などに使用され得る熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を製造する方法を提示する。
本発明では、熱伝導性セラミック断片(fragment)または熱伝導性セラミック粉末(powder)をポリマー(polymer)ビーズの表面に化学的結合を利用してコーティングしたセラミック−ポリマー複合粉末(composite powder)を製造した後、熱可塑性ポリマーマトリックス内に均一な熱伝導経路が確保され、優れた界面結合力が発現される熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を製造する。
【0031】
本発明の好ましい実施例による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、熱可塑性ポリマーがマトリックス(matrix)を構成し、熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に熱伝導性セラミック板状断片(fragment)または熱伝導性セラミック粉末(powder)が均一に分散して熱伝導経路を形成し、前記熱可塑性ポリマー粒子は、角形の形態を有し、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズの1/10より小さい。
【0032】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、カップリング剤(coupling agent)で表面処理され、前記熱可塑性ポリマー粒子と化学的結合を成し、窒化ホウ素(boron nitride)、窒化アルミニウム(aluminium nitride)、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、酸化アルミニウム(aluminium oxide)、シリコンカーバイド(silicon carbide)及びシリコンナイトライド(silicon nitride)のうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。
【0033】
前記熱可塑性ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene;ABS)、ポリメチルメタクリレート(poly methyl methacrylate;PMMA)、ポリアミド(polyamide)、ポリブタジエンテレフタレート(polybutadieneterephtalate;PBT)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephtalate;PET)、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone;PEEK)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリスチレン(polystyrene;PS)、ポリメチルシルセスキオキサン(polymethylsilsesquioxane;PMSQ)のうちから選択された1種以上の物質よりなることができ、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマーは、1:3〜30の体積比を有することが好ましい。
【0034】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に位置しながら占める体積が、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記マトリックス全体に分布しながら占める体積に対して少なくとも90%である。
【0035】
本発明の好ましい実施例による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の製造方法は、(a)熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の化学的結合を誘導して熱可塑性ポリマービーズ(bead)に均一にコーティングするために、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末をカップリング剤で表面処理する段階と、(b)熱可塑性ポリマービーズに対して非溶解性を示す溶媒に熱可塑性ポリマービーズと表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末を添加して分散させる段階と、(c)前記溶媒を蒸発させて、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズの表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末を形成する段階と、(d)前記セラミック−ポリマー複合粉末に圧力をかけて成形する段階とを含み、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズの1/10より小さい。
【0036】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドのうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。
【0037】
前記熱可塑性ポリマービーズは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリメチルシルセスキオキサンのうちから選択された1種以上の物質よりなることができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0038】
前記(b)段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比で添加されることが好ましい。
【0039】
前記カップリング剤は、シリコン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうちから選択された1種以上のカップリング剤を使用することができ、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末100重量部に対して0.1〜5.0重量部を添加し、前記表面処理することが好ましい。
【0040】
前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上であり且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行うことが好ましい。
【0041】
前記(a)段階で、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末とカップリング剤を溶媒に添加して前記表面処理を行い、前記(a)段階で使用する溶媒は、pHが2.0〜6.5範囲であることが好ましい。
【0042】
以下では、本発明の好ましい実施例による熱伝導性セラミック−ポリマー複合体及びその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0043】
前記熱伝導性セラミック板状断片(fragment)または熱伝導性セラミック粉末(powder)をカップリング剤(coupling agent)で表面処理する。このために、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の分散性が確保され得る溶媒に熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末とカップリング剤を添加して撹拌しながら表面処理を実施する。
前記表面処理は、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の化学的結合を誘導し、後述する熱可塑性ポリマービーズ(bead)の表面に均一にコーティングするために実施する。前記表面処理を通じて化学的界面結合が発現された熱伝導性セラミック−ポリマー複合粉末を製造することができ、最終的に製造される熱伝導性セラミック−ポリマー複合体において熱可塑性ポリマーマトリックス内の窒化ホウ素の分散性及び界面間の親和力を極大化することができる。
【0044】
フィラー(filler)として添加される前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、電気絶縁性を有し且つ熱伝導性に優れたセラミック物質である窒化ホウ素(boron nitride)、窒化アルミニウム(aluminium nitride)、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、酸化アルミニウム(aluminium oxide)、シリコンカーバイド(silicon carbide)及びシリコンナイトライド(silicon nitride)のうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。
【0045】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の平均サイズは、後述する熱可塑性ポリマービーズの平均サイズの1/10より小さいもの(例えば、1nm以上且つ10μm未満のもの)を使用することが好ましい。
【0046】
前記カップリング剤は、シリコン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうちから選択された1種以上のカップリング剤を使用することができ、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末100重量部に対して0.1〜5.0重量部を添加し、前記表面処理することが好ましい。
前記シリコン系カップリング剤の例としては、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(γ−glycidoxypropyl−tri methyoxysilane;GPS),3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。前記チタン系カップリング剤の例としては、シクロ(ジオクチル)パイロホスフェートジオクチルチタネート(Cyclo(dioctyl)pyrophosphate dioctyltitanate)などをあげることができる。前記ジルコニウム系カップリング剤の例としては、テトラノルマル−プロピルジルコネート、テトラノルマル−ブチルジルコネート、トリエタノールアミンジルコネート、カルボキシジルコアルミネートなどをあげることができる。
【0047】
前記溶媒は、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の表面を改質して分散性を確保するために、適切な種類の溶媒が要求され、前記溶媒としては、揮発性があるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)、水(water)などを使用することができる。前記溶媒は、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末の分散が安定化するためにpHが2.0〜6.5範囲であるものを使用することが好ましい。前記表面処理は、前記溶媒の沸騰点より低い温度である30〜99℃で行うことが好ましい。
【0048】
カップリング剤を表面処理する前に、熱伝導性セラミック物質を粉砕し、板状の断片に作るか、または熱伝導性セラミック粉末を微分化するために、粉砕工程を行うことができる。例えば、窒化ホウ素は、板状構造を有し、粉砕工程を通じて剥離(exfoliation)して、板状の断片に作ることができる。剥離された板状セラミックフィラーや微細化されたセラミックフィラーを利用することによって、高分子マトリックス内で熱伝導性セラミックフィラーの分散を極大化させることができる。前記粉砕工程を多様な方式で行うことができ、ここでは、乾式ボールミリング工程を利用する例を説明する。
【0049】
ボールミリング工程について説明すると、熱伝導性セラミック物質をボールミリング器(ball milling machine)に装入する。ボールミリング器を利用して一定の速度で回転させて、前記熱伝導性セラミック物質を機械的に混合しながら粉砕する。前記ボールミリングに使用されるボールは、アルミナ、ジルコニアのようなセラミック材質のボールを使用することが好ましく、ボールは、いずれも同じサイズのものであってもよく、2種以上のサイズを有するボールを一緒に使用してもよい。ボールのサイズ、ミリング時間、ボールミリング器の分当たり回転速度などを調節して粉砕する。例えば、ボールのサイズは、1mm〜50mm程度の範囲に設定し、ボールミリング器の回転速度は、50〜500rpm程度の範囲に設定することができる。ボールミリングは、1〜48時間実施することが好ましい。ボールミリングによって熱伝導性セラミック物質は、板状の断片形態に粉砕されるか、微細なサイズの粉末形態に粉砕され、均一な粒子サイズ分布を有するようになる。
【0050】
熱可塑性ポリマービーズに対して非溶解性を示す溶媒に熱可塑性ポリマービーズと表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末を添加して分散させる。この際、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比で添加されることが好ましい。表面処理された熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末と熱可塑性ポリマービーズは、前記溶媒内で互いに異なる表面電荷を帯びるようになる。
熱可塑性ポリマーは、ビーズ(Bead)の形態で製造可能であり、熱伝導性セラミック−ポリマー複合体において比較的規則的な形態の粒界面を提供するために、ビーズ形態の熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。
【0051】
前記熱可塑性ポリマービーズは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadienestyrene;ABS)、ポリメチルメタクリレート(poly methyl methacrylate;PMMA)、ポリアミド(polyamide)、ポリブタジエンテレフタレート(polybutadieneterephtalate;PBT)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephtalate;PET)、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone;PEEK)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリスチレン(polystyrene;PS)、ポリメチルシルセスキオキサン(polymethylsilsesquioxane;PMSQ)のうちから選択された1種以上の物質よりなることができる。前記熱可塑性ポリマービーズは、熱可塑性ポリマービーズの製造容易性と熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の熱伝導特性などを考慮して、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0052】
前記溶媒は、熱可塑性ポリマービーズを溶解しない溶媒である。前記溶媒としては、揮発性があるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)、水(water)などを使用することができる。
【0053】
前記溶媒を蒸発させて、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズの表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末を形成する。前記溶媒の蒸発は、真空蒸発装置(vacuum evaporator)を利用することが好ましい。前記溶媒が蒸発すれば、熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記熱可塑性ポリマービーズの表面にコーティングされた形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末が得られる。
熱可塑性ポリマービーズ(bead)の表面に熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が化学的に結合されて均一にコーティングされたセラミック−ポリマー複合粉末を得ることができる。熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、熱可塑性ポリマービーズに比べて粒子サイズが1/10より小さいものが使用されるので、熱可塑性ポリマービーズの表面に沿って複数個の熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が分布する形態を有するセラミック−ポリマー複合粉末が得られる。
【0054】
前記セラミック−ポリマー複合粉末に圧力をかけて成形して熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を形成する。前記成形は、射出成形、押出成形、圧縮成形などの多様な方式を利用することができ、好ましくは、熱加圧異方成形を使用して、応用対象に適した形態に成形する。前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズの間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上であり且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることが好ましい。前記成形時に熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上で圧力が印加されることによって、球形のビーズ形態から角形の形態に変化するようになる。
【0055】
熱伝導性セラミック−ポリマー複合粉末を利用してマトリックスを構成する熱可塑性ポリマーと熱伝導性セラミックの直接的な接触と熱伝導性セラミックと熱可塑性ポリマーの向上した界面結合に起因して、少量の熱伝導性セラミックの含量でも熱伝導経路(Thermal pathway)が発現される高い熱伝導率が発現される熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を製造することができる。
従来のセラミック−ポリマー複合体の製造方法とは差別化された方法で少量の熱伝導性セラミックフィラーだけでも、熱伝導経路(thermal pathway)を構築し、熱伝導性セラミック−ポリマー複合体の垂直及び水平方向で高い熱伝導度を発現することができる。
【0056】
このように製造された熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、熱可塑性ポリマーがマトリックス(matrix)を構成し、熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に熱伝導性セラミック板状断片(fragment)または熱伝導性セラミック粉末(powder)が均一に分散して熱伝導経路を形成し、前記熱可塑性ポリマー粒子は、角形の形態を有する。前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、カップリング剤(coupling agent)で表面処理され、前記熱可塑性ポリマー粒子と化学的結合を成す。
【0057】
前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末は、熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に主に分布するようになる。前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に位置しながら占める体積が、前記熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が前記マトリックス全体に分布しながら占める体積に対して少なくとも90%(例えば、90.0〜99%)を有する。
【0058】
熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、ポリマーマトリックス(polymer matrix)内にポリマー粒子間の粒界面に沿って熱伝導性セラミック板状断片または熱伝導性セラミック粉末が分布することによって、ポリマー粒子間の粒界面に沿って均一に分布する熱伝導経路(Thermal pathway)が形成され、少ない熱伝導性フィラー(filler)の含量でも複合体の垂直及び水平方向で優れた熱伝導性を示す。
熱放出素材に使用される場合、熱可塑性高分子マトリックス内で熱伝導性セラミックの熱伝導経路が極大化されるようになる。その結果、電気絶縁性と共に優れた熱伝導性が要求される多様な用途に有用に使用することができる。
【0059】
本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、熱放出素材(Heat sink)部品やインターフェース(interface)の製造に適用することができる。
【0060】
本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、高い電気絶縁性と熱伝導性が要求される製品に応用されることができ、高容量の電気自動車用バッテリーパッケージ(battery pack)の寿命(lifecycle)を延ばし、安定性(safety)を確保する放熱パッケージング、無線通信中継器、LCD(Liquid Crystal Display),PDP(Plasma Display Panel),LED(Light Emitting Diode)TV、コンピュータ、ノートパソコンなどの小型化、集積化された電子機器に積載されている発熱素子の安定性を確保するために、これを冷却させるのに使用される放熱部品あるいはそのインターフェースなどに適用が可能である。
【0061】
電気自動車バッテリーをパッケージングするために、熱放出素材の製造技術が必要であるが、本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体を利用する場合、高速電気自動車用バッテリーのように発熱量が大きい素材の放熱効率と絶縁効率を画期的に増進させることができ、高速走行用電気自動車(Electric Vehicle)のエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System;ESS)の熱制御部品素材にも適用が可能である。
【0062】
また、本発明の熱伝導性セラミック−ポリマー複合体は、将来高付加価値を創出する電気自動車の電装品、マイクロ演算処理装置(Mpu)、ナビゲーション、電気自動車エンジンなどを包むハウジングなどにも適用が可能である。
【0063】
以下では、本発明による実施例を具体的に提示するが、提示する実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0064】
〈実施例1〉
pH4のイソプロピルアルコールに窒化ホウ素断片とガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランを添加し、窒化ホウ素断片を表面処理した。80℃の温度条件で2時間撹拌しながら窒化ホウ素断片及びガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランを混合してガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランで表面処理された窒化ホウ素断片を製造した。ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランと窒化ホウ素断片は、それぞれ0.5:99.5,1:99,3:97,5:95の重量比で添加して混合した。前記撹拌は、50rpm程度の回転速度で行われた。
【0065】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズに対して非溶解性を示す溶媒にポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズと表面処理された窒化ホウ素断片を添加して分散させた。このために、イソプロピルアルコール500mlで表面処理された窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズをそれぞれ1:9,2:8の体積比で添加し、10時間の撹拌過程を通じて混合した。前記撹拌は、50rpm程度の回転速度で行われた。
【0066】
溶媒であるイソプロピルアルコールを効果的に迅速に蒸発させるために、真空蒸発装置を利用してイソプロピルアルコールと粉末を分離させて、窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末を補集した。
【0067】
このように得られた窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末に熱加圧異方成形(Hot press)を行った。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズ間の接触界面が増加するようにポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズのガラス転移温度(glass transition temperature)以上の200℃,200MPaの条件で10分間熱加圧成形し、窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体を得た。
【0068】
図1は、実施例1で使用された窒化ホウ素断片を透過顕微鏡で観察した写真である。
図1を参照する。窒化ホウ素断片は、基本的に板状形状の微細断片で構成されており、0.52μmのサイズ及び20nmの厚さよりなることを確認できる。
【0069】
図2は、実施例1で使用されたポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)で観察した写真であり、
図3は、実施例1で使用されたポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズの直径分布度を示すグラフである。
【0070】
図2及び
図3を参照する。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズは、球形の形状よりなるビーズであって、単分散しており、平均直径は、20.19μmであることが確認できる。
【0071】
図4は、実施例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランと窒化ホウ素断片は、3:97の重量比で添加して混合し、窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを1:9の体積比で添加した場合に関するものである。
【0072】
図4を参照する。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズの表面に窒化ホウ素の板状粒子が均一に分布している。
【0073】
図5は、実施例1によって熱加圧成形して得られた窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体断面の走査電子顕微鏡写真を示し、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランと窒化ホウ素断片は、3:97の重量比で添加して混合し、窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを1:9の体積比で添加した場合に関するものである。
【0074】
図5を参照する。熱加圧成形以後の窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体において基本的に角形(facet)の微細組織を観察することができ、前記の角形の粒界面に窒化ホウ素が分布することが確認された。一方、窒化ホウ素粒子がポリメチルメタクリレートマトリックス全体で均一に分散していることを確認した。窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体内で窒化ホウ素断片は、ポリメチルメタクリレート粒界面に均一に分散し、熱伝導経路を形成しており、窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の熱伝導度の向上が予想できる。
【0075】
前記の実施例1の特性を容易に把握できるように本発明の実施例と比較することができる比較例を提示する。後述する比較例1及び比較例2は、実施例1の特性と単純に比較するために提示するものであって、本発明の先行技術ではないことを明示しておく。
【0076】
〈比較例1〉
ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズに対して非溶解性を示す溶媒にポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズと窒化ホウ素断片を添加して分散させた。このためにイソプロピルアルコール500mlに窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを1:9の体積比で添加し、10時間の撹拌過程を通じて混合した。前記窒化ホウ素断片は、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランで表面処理しないものを使用した。
【0077】
溶媒であるイソプロピルアルコールを効果的に迅速に蒸発させるために、真空蒸発装置を利用してイソプロピルアルコールと粉末を分離させて、窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末を補集した。
【0078】
このように得られた窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末に熱加圧異方成形(Hot press)を行った。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズ間の接触界面が増加するように、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズのガラス転移温度(glasstransition temperature)以上の200℃,200MPaの条件で10分間熱加圧成形し、窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体を得た。
【0079】
〈比較例2〉
ポリメチルメタクリレートを溶解することができる溶媒であるジメチルホルムアミド(dimethylformamide;DMF)に実施例1で使用したポリメチルメタクリレートビーズを添加して溶解した後、実施例1で使用した窒化ホウ素断片を添加して分散させた。窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズをそれぞれ1:9,2:8の体積比で添加し、10時間の撹拌過程を通じて分散させた。
【0080】
窒化ホウ素断片がポリメチルメタクリレートに分散した結果物を成形し、窒化ホウ素断片がポリメチルメタクリレートマトリックス全体に均一に分布する窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体を得た。このように得られた窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体は、窒化ホウ素がポリメチルメタクリレートマトリックスに単純分散した複合体であって、窒化ホウ素がポリメチルメタクリレートの粒界面に主に分布するものではなく、マトリックス全体で均一に分布する形態を有する。
【0081】
図6は、比較例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図6を参照する。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズの表面に窒化ホウ素板状粒子が均一に分布しないことが確認できる。
【0082】
図7は、比較例1によって熱加圧成形して得られた窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体断面の走査電子顕微鏡写真を示す。
図7を参照する。熱加圧成形以後の窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体において実施例1と同一の角形(facet)の微細組織を観察することができ、角形の粒界面に窒化ホウ素が偏在して分布することが確認されたが、全体的な様態で窒化ホウ素粒子がポリメチルメタクリレートマトリックス全体で不均一に分散していることが確認された。窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体内で窒化ホウ素断片は、ポリメチルメタクリレート粒界面に存在し、不均一な熱伝導経路を形成していることが分かり、実施例1より熱伝導度が低いことが予想できる。
【0083】
以下の実験例は、本発明による実施例1の特性を容易に把握できるように本発明による実施例1と比較例1及び比較例2の特性を比較した実験結果を示すものである。
【0084】
〈実験例1〉
ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)による窒化ホウ素の表面処理が複合体の放熱特性にどんな影響を及ぼすかを調べるために、実施例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体と比較例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の放熱特性を比較した。
【0085】
図8は、実施例1及び比較例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体を熱流れ方式(heat flow method)を利用してガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)の添加有無による熱伝導度を測定して示すグラフであり、窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを1:9の体積比で添加した場合に関するものである。
【0086】
図8を参照する。ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)を使用せずに製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の場合(
図8でGPSの含量が0の場合であって、比較例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の場合)、0.42W/mKの熱伝導度が発現した。3重量%のガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)を添加して製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の場合(
図8でGPSの含量が3重量%の場合であって、実施例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の場合)、熱伝導度が1.313W/mKであり、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)を使用せずに製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体に比べて約300%程度増加することが確認された。一方、5重量%のガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)を添加すると、3重量%のガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(GPS)を添加した場合に比べて、熱伝導度が減少することを確認した。
【0087】
〈実験例2〉
複合体のセラミックフィラーの配列が熱伝導度の上昇にどんな影響を及ぼすかを調べるために、実施例1を通じて製造された整列された窒化ホウ素(BN)の配列を有する複合体(実施例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体)と単純分散した複合体(比較例2によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体)の放熱特性を比較した。
【0088】
図9は、熱流れ方式(heat flow method)を利用して測定した窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体内の窒化ホウ素の含量によって測定した熱伝導度を比較したグラフである。
【0089】
図9を参照する。すべての条件で窒化ホウ素の投入によって熱伝導度の上昇が観察された。一方、窒化ホウ素が規則的な配列を形成せずに単純分散した複合体の場合(
図9でPMMA(R)で表示された場合であって、
図9の(a)の場合)、10体積%の窒化ホウ素投入量(窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを1:9の体積比で添加した場合)で0.228W/mK,20体積%の窒化ホウ素投入量(窒化ホウ素断片とポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズを2:8の体積比で添加した場合)で0.526W/mKの熱伝導度が発現することを確認した。
【0090】
なお、実施例1によって製造された窒化ホウ素−ポリメチルメタクリレート複合体の熱伝導度の場合(
図9でPMMA(B)で表示された場合であって、
図9の(b)の場合)、10体積%の窒化ホウ素の投入量で1.317W/mK,20体積%の窒化ホウ素の投入量で2.489W/mKの熱伝導度が発現することを確認した。これは、純粋ポリメチルメタクリレートの熱伝導度より略1232%向上した放熱特性を有することを確認することができた。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施例をあげて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当該分野における通常の知識を有する者によってさまざまな変形が可能である。