特許第6063595号(P6063595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6063595
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】魚群探索システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/96 20060101AFI20170106BHJP
   G01S 15/87 20060101ALI20170106BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20170106BHJP
   A01K 79/00 20060101ALI20170106BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20170106BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20170106BHJP
   B64D 1/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   G01S15/96
   G01S15/87
   G01S19/14
   A01K79/00 Z
   B64C27/08
   B64C39/02
   B64D1/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-116312(P2016-116312)
(22)【出願日】2016年6月10日
【審査請求日】2016年6月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101674
【氏名又は名称】株式会社緑星社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳津 一彰
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−190787(JP,A)
【文献】 特開2012−010599(JP,A)
【文献】 特開2008−189032(JP,A)
【文献】 特表2013−539729(JP,A)
【文献】 ドローンで魚釣り−ソナー機能付きで初心者でも簡単に釣れる(?)「Aguadrone」,[online],2015年 6月 4日,URL,http://ennori.jp/3181/aguadrone-drone-with-sonar-fish-finder
【文献】 水産進化論 ヘリ・GPSで魚群探して効率操業,[online],2015年 3月 3日,URL,http://www.nikkei.com/article/DGXLZO83853610S5A300C1X13000/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
G01S 19/00−19/55
A01K 79/00
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体と、該無人飛行体の制御手段を備えた船舶とを含む魚群探索システムであって、
前記制御手段は、通信回線を介して外部の通信機器と通信する通信手段を備え、
前記無人飛行体は、自機の外部を撮影するための撮影手段と、海上に着水して浮揚するための浮力体と、前記制御手段と通信回線を介して通信する通信手段と、を備えており、
前記無人飛行体から通信回線を介して送信される情報には、当該無人飛行体の位置情報及び前記撮影手段により撮影された映像情報が含まれ、
前記制御手段は、前記映像情報に基づく映像を表示する表示手段を備え
前記無人飛行体は、追跡体と、該追跡体を外部に投下する投下機構とをさらに備え、前記追跡体は、海上に浮揚可能に構成されるとともに、前記追跡体と魚とを結合する結合手段と、通信回線を介して前記制御手段と通信する通信手段と、を備えており、前記追跡体から通信回線を介して送信される情報には、当該追跡体の位置情報が含まれる、ことを特徴とする魚群探索システム。
【請求項2】
前記無人飛行体は、海水をみ上げて周囲に散水する散水手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の魚群探索システム。
【請求項3】
前記無人飛行体は、魚群探知を行うための超音波送受波手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の魚群探索システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚群探索システム魚群を発見及び追尾するための魚群探索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、能動的に魚群を追って操業するタイプの漁業(例えば、まき網漁)では、広範な海域から捕獲する魚群を効率良く発見することが重要である。従来、このような魚群の探索として、双眼鏡を用いた目視による探索、ソナーによる探索、魚群に集まる鳥の探鳥レーダーによる探索等が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−95426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、海外漁場における入漁料の高騰など、漁業の操業条件は厳しさを増しており、低コストかつ高効率に魚群を探索できるシステムが強く望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストかつ高効率に魚群を探索可能な魚群探索システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、または、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)無人飛行体と、該無人飛行体の制御手段を備えた船舶とを含む魚群探索システムであって、前記制御手段は、通信回線を介して外部の通信機器と通信する通信手段を備え、前記無人飛行体は、自機の外部を撮影するための撮影手段と、海上に着水して浮揚するための浮力体と、前記制御手段と通信回線を介して通信する通信手段と、を備えており、前記無人飛行体から通信回線を介して送信される情報には、当該無人飛行体の位置情報及び前記撮影手段により撮影された映像情報が含まれ、前記制御手段は、前記映像情報に基づく映像を表示する表示手段を備え、前記無人飛行体は、追跡体と、該追跡体を外部に投下する投下機構とをさらに備え、前記追跡体は、海上に浮揚可能に構成されるとともに、前記追跡体と魚とを結合する結合手段と、通信回線を介して前記制御手段と通信する通信手段と、を備えており、前記追跡体から通信回線を介して送信される情報には、当該追跡体の位置情報が含まれる、ことを特徴とする魚群探索システム。
【0009】
)(1)項に記載の魚群探索システムにおいて、前記無人飛行体は、海水をみ上げて周囲に散水する散水手段をさらに備えていることを特徴とする魚群探索システム。
【0010】
)(1)または(2)項に記載の魚群探索システムにおいて、前記無人飛行体は、魚群探知を行うための超音波送受波手段をさらに備えることを特徴とする魚群探索システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成したため、海上の広範な範囲において、低コストかつ高効率の魚群探索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における魚群探索システムの構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における無人飛行体の要部を模式的に示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態における追跡体を模式的に示す図であり、(a)は、追跡体と魚とが結合された状態を示す側面図、(b)は、追跡体の上面図である。
図4】本発明の一実施形態における無人飛行体の内部構成の要部を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態における追跡体の内部構成の要部を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態における魚群探索システムの通信構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明の一実施形態における魚群探索システムは、船舶10と、無人飛行体20とを含む。本実施形態において、無人飛行体20は、遠隔操作及び/または自動操縦により飛行させることができる無人飛行機(いわゆる、ドローン)である。また、船舶10は、無人飛行体の制御手段(図示は省略する)を備えており、この制御手段は、通信回線を介して無人飛行体20と通信する。本実施形態において、通信回線は、通信衛星(例えば、インマルサット衛星)30及び地上局40を含む衛星通信システムと、この衛星通信システムとインターネット60を介して接続する制御サーバ70(図6参照)とが含まれる。
【0014】
また、本実施形態において、無人飛行体20には、海上に投下可能な追跡体50が搭載されており、図1には、追跡体50が、海上に投下された状態で示されている。
【0015】
以下、図2図6を参照して、本実施形態における魚群探索システムについて詳述する。ここで、図3図5は、それぞれ無人飛行体20、追跡体50の内部構成を示すブロック図である。これらの図中に示す各ブロックは、以下に説明される所定の動作を達成するように機能するものであり、その構成は、任意の適切なハードウェアもしくはソフトウェア、またはそれらの組合せによって構成される。
【0016】
本実施形態において、無人飛行体20は、例えば、図示を省略する1以上の回転翼を備えるヘリコプターまたはマルチコプター型の無人小型飛行機であってもよい。但し、本発明は、無人飛行体20の飛行体としての構成、動力、飛行制御等によって限定されるものではなく、使用状況に応じて要求される飛行性能に応じて任意の適切な構成とすることができる(したがって、以下では、このような無人飛行体20の飛行体としての構成、動力、飛行制御等についての説明は省略する)。
【0017】
本実施形態において、無人飛行体20は、図2に示すように、本体21を備えており、本体21の前方には、自機の外部を撮影するためのカメラ(本実施形態における撮影手段)23が取り付けられ、本体21の後方には、散水ポンプ25a及び散水ホース25bを含む散水手段25が取り付けられている。また、本体21の下方には、海上に着水して浮揚するための浮力体24が任意の適切な結合手段241により本体21に結合される。この浮力体24は、例えば発泡ウレタンからなるものであってもよい。さらに、本体21の下面側から、超音波送受波器26a及び上下移動機構26bを含むソナー(本実施形態における超音波送受波手段)26が延びている。また、図2には、本体21の上方に、後述する衛星通信アンテナ22が示されている。尚、図2への図示は省略するが、無人飛行体20の本体21には、後述する追跡体50(図4参照)が搭載されており、無人飛行体20は、この追跡体50を海上に投下するための追跡体投下機構27(図3参照)も備えている。
【0018】
ここで、図2とともに図3を参照して、無人飛行体20の構成について詳述すれば、次の通りである。本実施形態において無人飛行体20は、その全体の動作を統括する制御部200と、散水ポンプ25aを制御するポンプ制御部250と、カメラ23を制御するカメラ制御部230と、ソナー26を制御するソナー制御部260と、追跡体投下機構27を制御する追跡体投下制御部270とを備えている。ここで、図3には、ポンプ制御部250、カメラ制御部230、ソナー制御部260、及び追跡体投下制御部270が、制御部200とは別のブロックとして示されているが、これらの個別の制御部250、230、260、270の一部または全部は、それぞれ制御部200の一機能として制御部200と一体に構成されるものであってもよい。勿論、この場合、以下で個別の制御部250、230、260、270と制御部200との間の入出力として記載されている情報の移動は、不必要であるか、または、制御部200内での機能間の情報の移動である。
【0019】
無人飛行体20において、散水ポンプ25aは、ポンプ制御部250によって制御されて、無人飛行体20の海上への着水時に散水ホース25bの下端側から海水を汲み上げる。汲み上げられた海水は、散水ホース25bの上端側から、周囲に散水される。その際、本発明に係る散水手段は、散水される海水にウラニン色素等の染料を混入させることが可能なように構成されていてもよい。
【0020】
カメラ23は、カメラ制御部230によって制御されて、無人飛行体20の外部を撮影する。撮影された映像情報は、カメラ制御部230から制御部200に入力される。ここで、本実施形態において、カメラ23は、静止画もしくは動画、またはその両方であってもよい。本発明において、映像という用語は、静止画及び動画の両方を含む意味で使用される。
【0021】
ソナー26は、超音波送受波器26aから超音波を送信し、その超音波の反射波を受信するように構成される。また、上下移動機構26bは、超音波送受波器26aを上下に移動させるものであり、ソナー26の未使用時には、上下移動機構26bにより超音波送受波器26aを上昇させ、無人飛行体20の本体21内に格納することができる(図2に破線で示す(26))。この際、ソナー26は、超音波送受波器26aのチルト角(俯角)およびスキャン角(方位角)のいずれか一方または両方を調整可能なように構成され、ソナー26の真下だけでなく、広い範囲にわたって水中を探知可能なものであることが好ましい。ソナー制御部260は、これらの超音波送受波器26a及び上下移動機構26bの動作を制御するものである。また、超音波送受器26aによって受信された反射波情報は、ソナー制御部260から制御部200に入力される。
【0022】
追跡体投下機構27は、典型的には無人飛行体20の海上への着水後、追跡対投下制御部270によって制御されて、無人飛行体20に搭載されている追跡体27を海上に投下する。
【0023】
また、無人飛行体20は、制御手段と通信回線を介して通信する通信手段として、衛星通信アンテナ22及び衛星通信部220からなる衛星通信手段を備えている。無人飛行体20の衛星通信部220から衛星通信アンテナ22を使用して送信された情報は、図6に示すように、通信衛星30を介して地上局40で受信される。地上局40で受信された情報は、インターネット60を介して制御サーバ70に送信され、制御サーバ70は、受信した情報を(必要に応じて保存及び/または処理した後)、船舶10に向けて送信する。そして、本実施形態において、船舶10が備える制御手段は、通信回線を介して外部の通信機器と通信する通信手段として、無人飛行体20が備える衛星通信手段と同様の衛星通信手段を備えており、制御サーバ70から送信された情報は、インターネット60、地上局40、通信衛星30を介して、船舶10の制御手段で受信される。
【0024】
無人飛行体20は、上述した構成要素に加えて、GPS(Global Positioning system)アンテナ28とGPS受信部280とからなるGPS受信手段を備えており、これによってGPS衛星から送信されるGPS衛星信号を受信する。典型的には、GPS受信部280は、受信したGPS衛星信号を制御部200に出力し、制御部200は、GPS受信部280から入力したGPS衛星信号を使用して測位計算を行い、無人飛行体20の現在位置を、例えば緯度及び経度からなるGPS位置情報として算出する。
【0025】
本実施形態において、無人飛行体20の衛星通信手段から通信回線を介して送信される情報には、無人飛行体20のGPS位置情報、カメラ撮影手段により撮影された映像情報が含まれており、これらの情報が、船舶10の制御手段に送信される。また、無人飛行体20において、ソナー26が使用されている場合には、無人飛行体20の衛星通信手段から通信回線を介して送信される情報には、ソナー26からの反射波情報が含まれる。
【0026】
次に、図4及び図5を参照して、追跡体50の構成について説明する。追跡体50は、海上に浮揚可能に構成されており、通信回線を介して船舶10上の制御手段と通信する通信手段と、追跡体50と魚Aとを結合する結合手段53とを備えている。本実施形態において、追跡体50は、小型の船体の形状に構成されている。
【0027】
追跡体50は、制御手段と通信回線を介して通信する通信手段として、無人飛行体20と同様の衛星通信アンテナ52及び衛星通信部520からなる衛星通信手段を備えている。追跡体50の衛星通信部520から衛星通信アンテナ52を使用して送信された情報は、図6に示すように、通信衛星30を介して地上局40で受信される。地上局40で受信された情報は、インターネット60を介して制御サーバ70に送信され、制御サーバ70は、受信した情報を(必要に応じて保存及び/または処理した後)、船舶10に向けて送信する。そして、制御サーバ70から送信された情報は、インターネット60、地上局40、通信衛星30を介して、船舶10の制御手段で受信される。
【0028】
また、追跡体50は、無人飛行体20と同様のGPS(Global Positioning system)アンテナ54とGPS受信部540とからなるGPS受信手段を備えており、これによってGPS衛星から送信されるGPS衛星信号を受信する。典型的には、GPS受信部540は、受信したGPS衛星信号を制御部500に出力し、制御部500は、GPS受信部540から入力したGPS衛星信号を使用して測位計算を行い、追跡体50の現在位置を、例えば緯度及び経度からなるGPS位置情報として算出する。そして、追跡体50の衛星通信手段から通信回線を介して送信される情報には、追跡体50のGPS位置情報が含まれている。
【0029】
追跡体50において、追跡体50と魚Aとを結合する結合手段53は、糸巻き部53a、糸巻き部53aに巻回された釣り糸53b、及び釣り糸53bの先端部に取り付けられた疑似餌53cが含まれている。糸巻き部53aは、回転軸が鉛直方向となるように横置きに配置された巻枠からなり、糸巻き制御部53は、必要に応じて(典型的には、無人飛行体20から追跡体50が海上に投下された後)、糸巻き部53を制御して、糸巻き部53aに巻回された釣り糸53bを繰り出すものである。この結合手段53では、捕獲対象の魚Aが、繰り出された釣り糸53bの先端の疑似餌53cに掛かることによって、追跡体50と魚Aとが結合されるものである。
【0030】
これによって、追跡体50は、魚Aの移動に従って、海上を曳行されることになる。ここで、適切な釣り糸53bの長さは、魚Aによって追跡体50が水中に引きこまれることを避けること等を勘案の上、捕獲対象の魚の種類に応じて適切に設定される。例えば、捕獲対象の魚が、カツオの場合、100〜150m程度が好ましいものである。
【0031】
次に、船舶10上の制御手段の構成について説明すれば、次の通りである。この制御手段は、無人飛行体20のカメラ23で撮影され、上述したように通信回線を介して送信された映像情報に基づく映像を表示する表示手段と、ソナー26で受信され、上述したように通信回線を介して送信された反射波情報に基づく映像を表示する表示手段とを備えている。さらに、制御手段は、通常、無人飛行体20のGPS位置情報及び追跡体50の位置情報を、制御手段のユーザに報知する報知手段(典型的には、表示手段)も備えるものである。ユーザは、これらの表示及び/または報知手段に示される情報に応じて、船舶10の航行計画を決定することができる。
【0032】
さらに、この制御システムは、典型的は、無人飛行体20の操作手段を備えており、無人飛行体20の飛行及び着水(及び着船)を船舶10から制御可能なものである。加えて、制御システムは、無人飛行体20のカメラ23、散水ポンプ25a、ソナー26、追跡体投下機構27の一部または全部を操作する操作手段を備えるものであってもよい。この場合、制御手段は、ユーザからの制御手段への入力に応じて必要な操作指令を生成し、この操作指令は上述した通信回線を介して、制御手段の衛星通信手段から送信される。送信された操作指令は、上述した通信回線を介して無人飛行体20の衛星通信手段で受信され、無人飛行体20の制御部200は、この操作指令に応じて、無人飛行体20の飛行制御、並びに、カメラ23、散水ポンプ25a、ソナー26、及び追跡体投下機構27の動作制御を実行する。
【0033】
但し、本発明において、無人飛行体20は、操作指令を受け取らなくても、自動操縦による飛行が可能なものであってもよく、同様に、無人飛行体20の制御部200は、操作指令を受け取らなくても、予め保存されたプログラムに従って、カメラ23、散水ポンプ25a、ソナー26、追跡体投下機構27の一部または全てを動作させることが可能なものであってもよい。これらの動作のうち、船舶10上の制御手段からの操作指令に基づく動作と、自動的またはプログラムに従った動作とを、どのように組み合わせるかは、システムのコスト及び/または使用状況に応じて要求される仕様等を勘案の上、適切に設定されるものである。
【0034】
以上のように構成された魚群探索システムの作用効果を説明すれば、次の通りである。本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20が配備された船舶10が漁場に到達した後、魚群を探索するために、無人飛行体20を飛行させるものである。その際、無人飛行体20を、カメラ23で自機の周囲を撮影させながら飛行させることにより、船舶10上のユーザは、表示手段に表示される映像を観察することにより、魚群を探索することができる。この際、無人飛行体20を用いることによって、より広い範囲の海域で魚群を低コストかつ高効率に探索し、ひいては容易に発見することが可能となる。
【0035】
例えば、甲板上の人間が目視で魚群を探索する場合、水平線までの距離(約16km)という可視範囲の限界があるのに対して、無人飛行体の飛行範囲を少なくとも50km程度とすることにより、魚群探索の効率を顕著に向上させることができる。
【0036】
この際、本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20と船舶10との通信回線が、通信衛星30及び地上局40を含む衛星通信システムと、この衛星通信システムとインターネット60を介して接続する制御サーバ70とから構成されているため、カメラ23で動画を撮影する場合、ストリーム配信技術を用いて、制御手段の表示手段に映像(動画)をリアルタイムに表示することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20が、浮力体24を備えることによって、魚群が発見されたときに、魚群上または魚群の近傍に、無人飛行体20を着水させることができる。そして、無人飛行体20は、自機のGPS位置を船舶10に送信するものであることから、着水後は、魚群の位置を示すブイ(この場合、衛星ブイ)と同等の機能を果たすことになる。これによって、船舶10は、比較的遠隔地で魚群が発見された場合でも、無人飛行体20のGPS位置情報に基づいて船舶10を航行させ、容易に魚群に到達することができる。
【0038】
さらに、本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20が散水手段25a、25bを備えているため、魚群が発見されて無人飛行体20が着水した後、魚群上に海水を散水することができる。周知のように、このような散水は、魚群をその場に留めておくことに役立つものである。特に、本実施形態における探索システムでは、従来よりも広範囲の海域で魚群を探索するため、このような散水手段を備えることは、船舶10から比較的遠い個所で魚群が発見された場合、船舶10が魚群に到達するまでの間、魚群を留めておくために有利である。
【0039】
さらに、本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20がソナー26を備えているため、例えばカメラ23による撮影により魚群を発見できない場合、無人飛行体20を着水させてソナー26により魚群を探索することが可能となる。無人飛行体20は、船舶10よりも遥かに高い機動性を有するため、船舶10に備えられた魚群探知機またはソナーにより魚群を探索する場合と比較して、より短時間でより多数の個所を探索することが可能となり、ひいては魚群探索の効率性を向上させることができる。
【0040】
加えて、本実施形態における魚群探索システムは、追跡体50を備えるものであり、この特徴の作用効果について説明すれば、次の通りである。一般に、魚群を漁網により捕獲するタイプの漁業(典型的には、まき網漁)では、魚群を構成する魚を全て捕獲することはなく、魚群中に、捕獲されずに逃げる魚が必ず存在する。一方、このような逃げた魚は、多くの場合、他の魚群を探して移動し、発見した新たな魚群に合流することが知られている。
【0041】
そして、本実施形態における魚群探索システムでは、無人飛行体20には追跡体50が配備されており、魚群を発見して着水した後、適切なタイミングで、魚群中または魚群の近傍(典型的には、漁網の外)に追跡体50を投下するものである。そして、追跡体50は、結合手段53を上述したように動作させることによって、疑似餌53cに掛かった魚Aと結合され、魚Aの移動に従って魚Aに曳行されることになる。この魚Aは、上述したように新たな魚群に合流する可能性が高く、その場合、追跡体50は、魚Aにより新たな魚群まで誘導されることになる。
【0042】
そして、追跡体50は、自機のGPS位置を船舶10に送信する衛星ブイと同等の機能を果たすものであるから、船舶10は、現在の魚群の漁が終了した後、直ちに、追跡体10のGPS位置情報に基づいて、次の魚群を探索し、ひいては比較的高確率で発見することが可能となる。これによって、魚群探索の効率が大幅に向上させることができる。
【0043】
この際、本実施形態における追跡体50は、船体の形状を有するように構成されているため、追跡体50に結合された魚Aによって曳行される際に、水の抵抗が小さくなり、ひいては魚Aが体力を消耗することなく新たな魚群に到達するために有利なものである。また、本発明において、追跡体50は、自走機能を備えていてもよい。但し、無人飛行体20に配備される点、並びに、海上を魚Aにより曳行される点を勘案すれば、軽量化の観点からは、自走機能を備えないことが望ましい。
【0044】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではない。例えば、本発明に係る無人飛行体20及び船舶10は、衛星通信手段の代わりにまたは衛星通信手段に加えて、他の無線通信手段を備えており、無人飛行体20と船舶10との間の通信の一部または全てを、この無線通信手段により直接実施するものであってもよい。同様に、追跡体50は、衛星通信手段の代わりにまたは衛星通信手段に加えて、他の無線通信手段を備えており、追跡体50と船舶10との間の通信の一部または全てを、この無線通信手段により直接実施するものであってもよい。
【0045】
また、無人飛行体20は、GPS受信手段の代わりにまたは加えて、位置情報として所定の電波を発信する電波発信手段を備えており、船舶10は、無人飛行体20から発信される電波の発信源を探索することにより、無人飛行体20の位置を特定するものであってもよい。同様に、追跡体50は、GPS受信手段の代わりにまたは加えて、位置情報として所定の電波を発信する電波発信手段を備えており、船舶10は、追跡体50から発信される電波の発信源を探索することにより、追跡体50の位置を特定するものであってもよい。
【0046】
また、ソナー26は、浮力体24に結合されるものであってもよい。ソナー26を、浮力体24に結合することにより、超音波送受波器26aを上下移動させない簡易な構成により、無人飛行体20の着水後直ちに魚群の探索を開始することができる。但し、上述した実施形態におけるソナー26のように、超音波送受波器26aを上下移動機構26bによって下降させる構成は、海面上の泡、ゴミ等によるノイズを拾うことなく、魚群を探索できる点で有利である。
【符号の説明】
【0047】
10:船舶、20:無人飛行体、23:カメラ(撮影手段)、25:散水手段、26:ソナー(超音波送受波手段)、30:通信衛星、40:地上局、50:追跡体
【要約】
【課題】低コストかつ高効率に魚群を探索可能な魚群探索システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る魚群探索システムは、無人飛行体20と、無人飛行体20の制御手段を備えた船舶とを含む。制御手段は、通信回線を介して外部の通信機器と通信する通信手段を備え、無人飛行体20は、自機の外部を撮影するための撮影手段23と、海上に着水して浮揚するための浮力体24と、制御手段と通信回線を介して通信する通信手段とを備えており、無人飛行体20から通信回線を介して送信される情報には、無人飛行体20の位置情報及び撮影手段23により撮影された映像情報が含まれ、制御手段は、この映像情報に基づく映像を表示する表示手段を備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6