特許第6063601号(P6063601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6063601
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】床用再剥離型密着シート
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   E04F15/00 601D
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-190651(P2016-190651)
(22)【出願日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390001339
【氏名又は名称】光洋産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】木村 光一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康三
(72)【発明者】
【氏名】板橋 さおり
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−122146(JP,A)
【文献】 特開2015−189205(JP,A)
【文献】 特開2014−196114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04F 15/02
E04F 15/16
C09J 7/02
C09J 7/04
C09J 201/00
C09J 107/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面の表面に設けられた第一床仕上材と、この第一床仕上材の表面側に設けられた第二床仕上材との間に介在する、シート状基材層の裏面側に密着層が形成されてなる床用再剥離型密着シートにおいて、
前記密着層が、天然ゴムラテックス100質量部に対して、アクリル樹脂エマルジョンを5〜30質量部と、セルロースナノファイバーを0.01〜0.2質量部とを含み、
前記アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−40℃であり、
前記密着層の厚さが50〜150μmである
ことを特徴とする床用再剥離型密着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の床下地材等の床面の表面に設けられた第一床仕上材表面に、プラスチック系床タイル等の第二床仕上材を貼着するために用いられ、優れた密着力を有し、かつ再剥離性に優れた床用再剥離型密着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、商業施設をはじめとする各種施設から一般住宅まで幅広い用途において、置敷き型プラスチック系床タイルが施工される。このプラスチック系床タイルには、ポリ塩化ビニル樹脂製タイル(いわゆるPタイル)、タイルカーペット(50cm×50cm等)やプラスチック系長尺床タイル(15cm×900cm等)がある。これらのプラスチック系床タイルは、既存の床(木質等の第一床仕上材)の上にそれらを貼着して、簡易リフォーム、模様替え、そして広告等の目的で、第二床仕上材として使用される。リフォームの際に補修が必要なとき、全面貼り替えは不要で、補修を必要とする箇所のシートを剥離して新しいシートに交換するような部分貼替工法が採用されている。
【0003】
一般的に、床仕上材(第二床仕上材)を既存の床(第一床仕上材)に施工する場合には、ピールアップボンド(再剥離性接着剤)が用いられる。しかし、貼り替え時に床仕上材(第二床仕上材)を剥がした後の床(第一床仕上材)表面に接着剤が残留するため、これを洗剤等を加えたぬるま湯や専用の除去剤を用いて除去する工程が加わるので作業性が極めて悪い問題点があった。
【0004】
上記問題点を解消するために、床仕上材(第二床仕上材)の更新の際の再剥離性が良好であり、取替え作業性を向上できる、床用再剥離型シート及びこれを用いた床仕上施工方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に示された床用再剥離型シートでは、床面の表面に設けられた第一床仕上材(木質又はブラスチック系床タイル)と、木質床材、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる第二床仕上材との間に介在する、シート状基材層の裏面側に密着層が形成されてなる床用再剥離型シートが開示されている。この床用再剥離型シートでは、密着層が天然ゴムラテックス100質量部に対して合成樹脂エマルジョン5〜90質量部を含むことにより構成される。また、合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、密着層の厚さが50〜150μmである。更に、天然ゴムラテックスがアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスである。
【0006】
このように構成された床用再剥離型シートでは、密着層が天然ゴムラテックスに対して合成樹脂エマルジョンを所定の割合で含むように構成され、合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−15℃であって、密着層の厚さが50〜150μmであるので、床面の表面に設けられた第一床仕上材との優れた密着力を有することにより、施工後の第二床仕上材(木質床材やプラスチック系床タイル、タイルカーペット、表示シート)に剥がれや反りを生じることがなく、また再剥離性に優れることにより、第二床仕上材の更新の際の取替え作業が良好であり、べたつきが無い(タック値が低い)ことにより、第二床仕上材を施工する際の位置調整が容易である。また、高温環境下での長期間使用であっても床仕上材の更新の際の再剥離性が十分で取替え作業性が良好であり、上記構成成分からはホルムアルデヒドのような有害ガスを発生することがないため、環境にも優しい。更に、天然ゴムラテックスがアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル変性天然ゴムラテックスであると、塗工安定性が向上するとともに、保存安定性も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−053509号公報(請求項1,3、段落[0022]、[0024]、図3
【特許文献2】特開2013−122146号公報(請求項1,3、段落[0018]、[0020]、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の特許文献1及び2に示された床用再剥離型シートでは、短期間の使用後における第二床仕上材の第一床仕上材に対する再剥離性に問題はないけれども、長期間の使用後においては第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力が強くなり、第二床仕上材の更新の際にこの第二床仕上材を第一床仕上材から剥離し難くなる不具合があった。このため、第二床仕上材の再剥離時の作業効率が悪くなり、更に第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力が強くなりすぎると、床用再剥離型シートが材料破壊してしまい、その破片の除去等が極めて煩わしくなる問題点があった。また、被着面となる既存の床(第一床仕上材)の表面に油性のニス等が塗工されていた場合、上記従来の特許文献1及び2に示された床用再剥離型シートでは、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力が上昇して剥離し難くなり、その密着力が強くなりすぎると、上記と同様に、床用再剥離型シートが材料破壊してしまい、その破片の除去等が極めて煩わしくなる問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れることにより、第二床仕上材が第一床仕上材に対して剥がれ難いとともに、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好であり、第二床仕上材の取替え作業性を向上できる、床用再剥離型密着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、床面の表面に設けられた第一床仕上材と、この第一床仕上材の表面側に設けられた第二床仕上材との間に介在する、シート状基材層の裏面側に密着層が形成されてなる床用再剥離型密着シートにおいて、密着層が、天然ゴムラテックス100質量部に対して、アクリル樹脂エマルジョンを5〜30質量部と、セルロースナノファイバーを0.01〜0.2質量部とを含み、アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度が−70℃〜−40℃であり、密着層の厚さが50〜150μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の観点の床用再剥離型密着シートでは、密着層が天然ゴムラテックス100質量部に対してアクリル樹脂エマルジョンを5〜30質量部含むことにより、高い密着力と高い再剥離性の双方の性質を兼ね備えた配合割合となり、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れるとともに、時間が経過しても上記密着力の上昇が少なく、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好である。この結果、第二床仕上材が第一床仕上材に対して剥がれ難くなるとともに、第二床仕上材の取替え作業性を向上できる。なお、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れるのは、天然ゴムラテックスの弾性により、第一床仕上材との間に同伴される空気を押し出して空隙を作らずに固定させることができるためである。また、時間が経過しても上記密着力の上昇が少なく、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好であるのは、アクリル樹脂エマルジョンと天然ゴムラテックスとの混和性が良く、密着層の成分が第一床仕上材に殆ど移行しないためである。
【0012】
また、密着層が天然ゴムラテックス100質量部に対してセルロースナノファイバーを0.01〜0.2質量部含むことにより、被着面となる既存の床(第一床仕上材)の表面に油性のニス等のワックスが塗工されていた場合であっても、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れるとともに、時間の経過による上記密着力の上昇が少なく、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好である。この結果、第二床仕上材が第一床仕上材に対して剥がれ難くなるとともに、第二床仕上材の取替え作業性を向上できる。なお、第一床仕上材表面に油性のワックスが塗工されていても、第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れるのは、天然ゴムラテックスの弾性により、第一床仕上材との間に同伴される空気を押し出して空隙を作らずに固定させることができるためである。また、第一床仕上材表面に油性のワックスが塗工されていても、時間の経過による上記密着力の上昇が少なく、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好であるのは、アクリル樹脂エマルジョンと天然ゴムラテックスとの混和性が良いため、密着層の成分が第一床仕上材に殆ど移行せず、かつセルロースナノファイバーの比表面積が大きいため、少量の添加でもガスバリア性が向上し、これにより上記油性ワックスが密着層に殆ど移行しないためである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】シート状基材の裏面側に密着層が形成されかつ密着層表面に保護シートが積層された本発明の床用再剥離型密着シートの断面図である。
図2】シート状基材の表面側に更に粘着層が形成されかつ密着層及び粘着層の各表面に保護シートが積層された別の実施形態の床用再剥離型密着シートの断面図である。
図3】本発明の床用再剥離型密着シートを用いた床仕上施工方法の説明図である。
図4】90°ピーリング試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図3に示すように、本発明の床用再剥離型密着シート11は、床面13の表面に設けられた木質の第一床仕上材21と、この第一床仕上材21の表面側に設けられた第二床仕上材22との間に介在する再剥離型の密着シートである。本発明で「床面13」とは、合板、パーティクルボード、根太、床下地材、スラブ、モルタル、石材から構成されていてもよく、「第一床仕上材21」とは、合板フローリング、繊維板フローリング、無垢材フローリング等の木質系フローリング、或いはクッションフロアや硬質ビニールタイル(別称:Pタイル)、軟質ビニールタイル等のプラスチック系床タイルである。また、第二床仕上材22は、木質床材(フローリング)、プラスチック系床タイル、タイルカーペット又は表示シートからなる。ここで、第二床仕上材22の「木質床材」とは、合板フローリングや繊維板フローリング、無垢材フローリングで、一般的には厚さが3mm〜40mmであるが、更に薄いものや、木質の第一床仕上材21と同等の厚みでもよい。また、第二床仕上材22の「プラスチック系床タイル」とは、クッションフロア、硬質ビニールタイル(別称:Pタイル)、軟質ビニールタイルである。また、第二床仕上材22の「タイルカーペット」とは、400mm×400mmや500mm×500mmのタイル状のカーペットである。更に、第二床仕上材22の「表示シート」とは、例えばgoo!ステップ(登録商標;商標登録第5246641号;光洋産業株式会社)のような床面広告用シートである。
【0015】
図1に示すように、本発明の床用再剥離型密着シート10は、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成される。そして、この密着層12が、天然ゴムラテックス100質量部に対して、アクリル合成樹脂エマルジョンを5〜30質量部、好ましくは5〜15質量部含む。ここで、天然ゴムラテックス100質量部に対してアクリル合成樹脂エマルジョンの含有割合を5〜30質量部の範囲内に限定したのは、5質量部未満では第二床仕上材22の第一床仕上材21からの再剥離性は高くなるけれども第二床仕上材22の第一床仕上材21に対する密着力に乏しくなり、30質量部を超えると上記密着力は高くなるけれども上記再剥離性に乏しくなるからである。即ち、上記配合割合の密着層は、高い密着力と高い再剥離性の双方の性質を兼ね備える。このように、シート状基材層11の裏面側に形成された密着層12が天然ゴムラテックスに対してアクリル合成樹脂エマルジョンを上記配合割合で含むと、床面13の表面に設けられた木質の第一床仕上材21との優れた密着力を有するため、施工後の第二床仕上材22に剥がれや反りを生じることがなく、また再剥離性に優れるため、第二床仕上材22の更新の際の取替え作業が良好になる。なお、本発明で「密着」とは、高弾性又はゲル状の固体であるがべたべたしておらず、組成物の弾性で被着体との間に同伴される空気を押し出して空隙を作らずに固定させるものをいい、具体的には、シート状基材層11上に形成された天然ゴムラテックス皮膜が、床仕上材のように平滑性に富んだ表面に対して、低圧力で高い密着性を発現する状態となるものをいう。上記密着性を示す皮膜は、再剥離時に通常の粘着剤のような粘着成分の基材(第一床仕上材)表面への移行を全く伴わないことも大きな特徴である。
【0016】
また、上記密着層12は、天然ゴムラテックス100質量部に対して、セルロースナノファイバーを0.01〜0.2質量部、好ましくは0.02〜0.1質量部含む。ここで、天然ゴムラテックス100質量部に対してセルロースナノファイバーの含有割合を0.01〜0.2質量部の範囲内に限定したのは、0.01質量部未満では密着層による第二床仕上材22の第一床仕上材21に対する密着力は高くなるけれども第一床仕上材21表面に塗布した油性ニス等のワックスの密着層12への移行を阻止できず、0.2質量部を超えると上記ワックスの密着層12への移行を阻止できるけれども上記密着力に乏しくなるからである。なお、セルロースナノファイバーを天然ゴムラテックスに均一に分散させるには、例えば2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を調製し、このセルロース水分散液を天然ゴムラテックス100質量部に対して、1〜10質量部噴霧等により添加することが好ましい。また、天然ゴムラテックスとしては、未変性のULACOL(株式会社レヂテックス社製)が例示される。ここで、未変性の天然ゴムラテックスを使用すると、適度な柔軟性があるため、密着性が向上するという優れた特徴がある。
【0017】
密着層12に含まれるアクリル合成樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−70℃〜−40℃の範囲内にあるものが用いられる。ここで、アクリル合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度を−70℃〜−40℃の範囲内に限定したのは、−70℃未満では密着層12が軟らかくなりすぎ、再剥離性が低下し、−40℃を超えると密着層12が硬くなり密着性が低下するからである。また、アクリル合成樹脂エマルジョンとしては、アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン等が挙げられる。アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンとしては、KR−158(光洋産業株式会社製)、KR−159(光洋産業株式会社製)、AP620(ジャパンコーティングレジン株式会社製)が例示される。更に、密着層12の厚さは、50〜150μmの範囲内、好ましくは80〜100μmの範囲内に設定される。ここで、密着層12の厚さを50〜150μmの範囲内に限定したのは、50μm未満では密着力が低下し、150μmを超えると乾燥工程において密着層12の塗膜の表面に皮が張り、その塗膜内部の水抜けが悪い状態となり気泡が発生するためである。
【0018】
一方、シート状基材層11としては、不織布を使用することが好適である。不織布としては、麻などのセルロース系不織布、ポリオレフィン系やポリエステル系などの熱可塑性樹脂系繊維からなる不織布等が挙げられる。セルロース系不織布としては、ベンリーゼ(旭化成株式会社製)やTCF(フタムラ化学株式会社製)が例示される。ポリオレフィン系不織布としては、エルベス(ユニチカ株式会社製)が例示される。ポリエステル系不織布としては、ミライフ(JX日鉱日石ANCI株式会社製)やエルタス(旭化成株式会社製)が例示される。また、不織布の坪量は20〜70g/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、不織布の坪量を20〜70g/m2の範囲内に限定したのは、20g/m2未満では密着層組成物の塗工が困難であり、70g/m2超えるとこの坪量の大きい不織布を用いて作製したシートを第一床仕上材21に貼り付けて剥がそうとするときに、不織布が裂けてしまい、再剥離できない不具合が生じるためである。
【0019】
本発明の別の実施形態として、図2に示すように、床用再剥離型密着シート10は、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成され、シート状基材層11の表面側に粘着層13が形成されても良い。粘着層はエマルジョン型粘着剤或いは溶剤型粘着剤から構成される。エマルジョン型粘着剤としてはアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンKR−159(光洋産業株式会社製)やBPW6111(東洋インキ株式会社製)が例示される。溶剤型粘着剤としては、SKダインシリーズSK1717,SK1760(綜研化学株式会社製)が例示される。この粘着剤層に使用する組成物は、強粘着タイプの硬い組成物である。これは、密着層に使用するような密着力が比較的弱く軟らかい組成物を用いると、第二床仕上材との密着力に劣り、施工後、第二床仕上材が剥離してしまうおそれがあるからである。
【0020】
このように構成された床用再剥離型密着シート10を用いた床仕上げ施工方法を図1図3に基づいて説明する。上記床用再剥離型密着シート10には、その使用前に密着層12の表層及び粘着層13の表面を保護するために、密着層12の表面に保護シート14が積層されている(図1及び図2)。先ず、工場等で第二床仕上材22(例えば、幅約450mm、長さ約450mmのタイルカーペットなど)の裏面全面に床用再剥離型密着シート10のシート状基材層11を貼り合わせて一体化させておく。第二床仕上材22と床用再剥離型シート10のシート状基材層11を貼り合わせる方法としては、両面粘着テープ又は接着層15等を用いて貼り合わせても良いし、床用再剥離型密着シート10のシート状基材層11表面側に、予め粘着層13を形成しておき(図2)、第二床仕上材22と貼り合わせても良い。次に、施工現場において、床用再剥離型密着シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、密着層12を床面16の表面に設けられた第一床仕上材21の表面に当接するように固定する。このように予め第二床仕上材22と床用再剥離型密着シート10を一体化させておくと、床材施工の際の位置調整及び、床材更新の際の再剥離の作業を行い易い。
【0021】
なお、上記以外の床仕上げ施工方法としては、下記のような床仕上げ施工方法が挙げられる。先ず、床用再剥離型密着シート10の密着層12側の保護シート14を剥がし、露出した密着層12を第一床仕上材21の表面に当接するように固定する。次に、床用再剥離型密着シート10のシート状基材層11表面側に第二床仕上材22裏面側を固定する。この場合、床用再剥離型密着シート10のシート状基材層11表面側又は第二床仕上材22裏面側に接着剤を塗布し、この接着剤により第二床仕上材22を固定する方法や、床用再剥離型密着シート10のシート状基材層11表面側と第二床仕上材22裏面側との間に両面粘着テープ15などを貼り付け、この両面粘着テープ15などにより第二床仕上材22を固定する方法がある。
【実施例】
【0022】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0023】
<実施例1〜3>
先ず、密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)と、ガラス転移温度が−40℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)とを用意した。次いで、上記2つの成分を質量基準で、100:5(実施例1)、100:10(実施例2)及び100:30(実施例3)の割合となるようにそれぞれ配合し、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液(株式会社スギノマシン社製 商品名:IMa−10002)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して3質量部添加し、撹拌して、3種類の密着層組成物を調製した。次に、図1に示すように、上記密着剤層組成物を、シート状基材層11(ポリエステル不織布、製品名:ミライフ、JX日鉱日石ANCI株式会社製)の裏面側に塗工し、乾燥炉内で80℃の温度に5〜6分間保持して乾燥することにより、90μmの厚さの密着層12をシート状基材層11の裏面側に形成した。更に、シート状基材層11の裏面側に形成された密着層12表面に保護シート14を付けて、1週間〜10日間程度養生して平衡含水率にさせることで、3種類の床用再剥離型密着シート10を得た。これらの床用再剥離型密着シート10を実施例1〜3とした。
【0024】
<実施例4〜6>
ガラス転移温度が−50℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、光洋産業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして3種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例4〜6とした。
【0025】
<実施例7〜9>
ガラス転移温度が−68℃であるアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(製品名:AP620、ジャパンコーティングレジン株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして3種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例7〜9とした。
【0026】
<実施例10及び11>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対してそれぞれ0.5質量部及び10質量部添加したこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例10及び11とした。
【0027】
<比較例1>
ガラス転移温度が−36℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−7034、光洋産業株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して10質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例1とした。
【0028】
<比較例2>
ガラス転移温度が−75℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:AP601、ジャパンコーティングレジン株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して10質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例2とした。
【0029】
<比較例3及び4>
ガラス転移温度が−50℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、光洋産業株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対してそれぞれ3質量部又は35質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例3及び4とした。
【0030】
<比較例5>
アクリル樹脂エマルジョンに替えてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(ガラス転移温度:−30℃、製品名:S408HQE、住化ケムテックス株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例5とした。
【0031】
<比較例6>
アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンに替えてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(ガラス転移温度:−27℃、製品名:L−7850、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例6とした。
【0032】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜11及び比較例1〜6の床用再剥離型密着シートについて、粘着力の経時変化を評価した。具体的には、先ず、図4(a)に示すように、実施例1〜11及び比較例1〜6の床用再剥離型密着シートから幅25mm×長さ200mmの試験片30をそれぞれ切り出し、これらの試験片30の長さ100mm部分をプラスチック系床タイルからなる被着材(第一床仕上材の代用品)41に2kgのローラーで5往復させることで密着させた。次に、図4(b)に示すように、40℃雰囲気下で1週間及び6ヶ月間それぞれ放置した後、90°方向へのピーリング試験をそれぞれ行った。ここで、ピーリング試験における引張り速度は300mm/分とした。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)41への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、ガラス転移温度が−36℃と高すぎるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−7034)を用いた比較例1の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ0.5N/mm2及び0.6N/mm2と弱くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。また、ガラス転移温度が−75℃と低すぎるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:AP601)を用いた比較例2の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)がそれぞれ『僅かに有』及び『有』であり、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ5.3N/mm2及び8.6N/mm2と強くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。これらに対し、ガラス転移温度が−68℃〜−40℃と適正な範囲内(−70℃〜−40℃)にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、KR−158、AP620)を用いた実施例1〜11の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、かつ40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ2.0〜3.6N/mm2及び2.4〜4.2N/mm2と適切な強さであり、総合評価がそれぞれ優良であった。
【0035】
一方、ガラス転移温度が適正な範囲内にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、ガラス転移温度:−50℃)を用いても、その添加量が3質量部と少なすぎた比較例3の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ0.2N/mm2及び0.4N/mm2と弱くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。また、ガラス転移温度が適正な範囲内にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、ガラス転移温度:−50℃)を用いても、その添加量が35質量部と多すぎた比較例4の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)がそれぞれ『僅かに有』及び『有』であり、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ5.5N/mm2及び7.8N/mm2と強くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。
【0036】
一方、アクリル樹脂エマルジョンではなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(製品名:S408HQE)を用いた比較例5の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、40℃に1週間放置した後における粘着力が2.2N/mm2と適切な強さであったけれども、40℃に6ヶ月放置した後における粘着力が9.2N/mm2と強くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。また、アクリル樹脂エマルジョンではなく、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(製品名:L−7850)を用いた比較例6の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、40℃に1週間放置した後における粘着力が1.9N/mm2と適切な強さであったけれども、40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)が『有』であり、40℃に6ヶ月放置した後における粘着力が10.5N/mm2と強くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。これらに対し、アクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、KR−158、AP620)を用いた実施例1〜11の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、かつ40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ2.0〜3.6N/mm2及び2.4〜4.2N/mm2と適切な強さであり、総合評価がそれぞれ優良であった。
【0037】
<比較例7>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例7とした。
【0038】
<比較例8及び9>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液をそれぞれ0.5質量部及び15質量部添加したこと以外は、実施例5と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例8及び9とした。
【0039】
<比較試験2及び評価>
実施例5、実施例10、実施例11及び比較例7〜9の床用再剥離型密着シートについて、耐ワックス性を評価した。具体的には、先ず、被着材(第一床仕上材の代用品)として、水性ワックス(製品名:オール(アクリル系床用ワックス)、株式会社リンレイ製)及び油性ウレタンニス(製品名:油性ウレタン床用ニス、株式会社カンペハピオ製)をそれぞれ塗工し、十分に乾燥させた2種類の木質系フローリングを準備した。次に、実施例5、実施例10、実施例11及び比較例7〜9の床用再剥離型密着シートから幅25mm×長さ200mmの試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片の長さ100mm部分を上記被着材(第一床仕上材の代用品)に2kgのローラーで5往復させることで密着させた。更に、60℃雰囲気下で1ヶ月間放置した後、90°方向へのピーリング試験を行った。ここで、ピーリング試験における引張り速度は300mm/分とした。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表2に示す。なお、表2において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。また、表2の「糊残りの有無」の欄において、「材切れ」とは、試験片の一部が剥がれて損傷した状態をいう。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から明らかなように、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を添加しなかった比較例7の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が4.7N/mm2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が10.5N/mm2と強くなりすぎてしまい、試験片も『材切れ』となり、総合評価が不良であった。また、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が0.5質量部と少なすぎた比較例8の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が4.8N/mm2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が9.7N/mm2と強くなりすぎてしまい、試験片も『材切れ』となり、総合評価が不良であった。更に、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が15質量部と多すぎた比較例9の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材及び油性ウレタンニスを塗工した被着材がともに、60℃に1ヶ月間放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、粘着力が0.5N/mm2及び0.6N/mm2と弱くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。これらに対し、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が0.5〜10質量部と適切な範囲内(セルロースナノファイバの天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量:0.01〜0.2質量部)である実施例5、10及び11の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が1.6〜4.8N/mm2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は全て『無』であり、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合においても、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が1.5〜4.8N/mm2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は全て『無』であり、総合評価が優良であった。
【0042】
<実施例12及び13>
実施例5の密着層の厚さをそれぞれ55μm及び148μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例12及び13とした。
【0043】
<比較例10及び11>
実施例5の密着層の厚さをそれぞれ41μm及び163μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例10及び11とした。
【0044】
<比較試験3及び評価>
実施例5、実施例12、実施例13、比較例10及び比較例11の床用再剥離型密着シートについて、比較試験1と同様に、粘着力の経時変化を評価した。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表3に示す。なお、表3において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。
【0045】
【表3】
【0046】
表3から明らかなように、密着層を所定の厚さ(50〜150μmの適切な範囲内)とした実施例5、12及び13では、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月間放置した後における粘着力は1.1〜3.6N/mm2で、糊残り(密着層の付着)は『無』であり、総合評価がそれぞれ優良であった。一方、密着層の厚さが41μmと薄すぎた比較例10では、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月間放置した後における粘着力は0.1N/mm2と弱すぎ、総合評価は不良であった。また、密着層の厚さが163μmと厚すぎた比較例11では、乾燥工程において気泡が発生して表面に凹凸ができたため、密着層を成膜できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の床用再剥離型密着シートは、コンクリート製の床下地材等の床面の表面に設けられた第一床仕上材表面に、プラスチック系床タイル等の第二床仕上材を貼着するために利用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 床用再剥離型密着シート
11 シート状基材層
12 密着層
16 床面
21 第一床仕上材
22 第二床仕上材
【要約】
【課題】第二床仕上材の第一床仕上材に対する密着力に優れることにより、第二床仕上材が第一床仕上材に対して剥がれ難いとともに、第二床仕上材の更新の際の再剥離性が良好であり、第二床仕上材の取替え作業性を向上する。
【解決手段】床用再剥離型密着シート10は、床面13の表面に設けられた第一床仕上材21と、この第一床仕上材21の表面側に設けられた第二床仕上材22との間に介在する、シート状基材層11の裏面側に密着層12が形成されてなる。密着層12は、天然ゴムラテックス100質量部に対して、アクリル樹脂エマルジョンを5〜30質量部と、セルロースナノファイバーを0.01〜0.2質量部とを含む。また、アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度は−70℃〜−40℃であり、密着層の厚さは50〜150μmである。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4