【実施例】
【0022】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0023】
<実施例1〜3>
先ず、密着層の構成成分として、天然ゴムラテックス(固形分60質量%、製品名:ULACOL、株式会社レヂテックス社製)と、ガラス転移温度が−40℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、光洋産業株式会社製)とを用意した。次いで、上記2つの成分を質量基準で、100:5(実施例1)、100:10(実施例2)及び100:30(実施例3)の割合となるようにそれぞれ配合し、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液(株式会社スギノマシン社製 商品名:IMa−10002)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して3質量部添加し、撹拌して、3種類の密着層組成物を調製した。次に、
図1に示すように、上記密着剤層組成物を、シート状基材層11(ポリエステル不織布、製品名:ミライフ、JX日鉱日石ANCI株式会社製)の裏面側に塗工し、乾燥炉内で80℃の温度に5〜6分間保持して乾燥することにより、90μmの厚さの密着層12をシート状基材層11の裏面側に形成した。更に、シート状基材層11の裏面側に形成された密着層12表面に保護シート14を付けて、1週間〜10日間程度養生して平衡含水率にさせることで、3種類の床用再剥離型密着シート10を得た。これらの床用再剥離型密着シート10を実施例1〜3とした。
【0024】
<実施例4〜6>
ガラス転移温度が−50℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、光洋産業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして3種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例4〜6とした。
【0025】
<実施例7〜9>
ガラス転移温度が−68℃であるアクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョン(製品名:AP620、ジャパンコーティングレジン株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして3種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例7〜9とした。
【0026】
<実施例10及び11>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対してそれぞれ0.5質量部及び10質量部添加したこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例10及び11とした。
【0027】
<比較例1>
ガラス転移温度が−36℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−7034、光洋産業株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して10質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例1とした。
【0028】
<比較例2>
ガラス転移温度が−75℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:AP601、ジャパンコーティングレジン株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対して10質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例2とした。
【0029】
<比較例3及び4>
ガラス転移温度が−50℃であるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、光洋産業株式会社製)を、天然ゴムラテックス100質量部に対してそれぞれ3質量部又は35質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例3及び4とした。
【0030】
<比較例5>
アクリル樹脂エマルジョンに替えてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(ガラス転移温度:−30℃、製品名:S408HQE、住化ケムテックス株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例5とした。
【0031】
<比較例6>
アクリル酸エステル重合体樹脂エマルジョンに替えてスチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(ガラス転移温度:−27℃、製品名:L−7850、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例6とした。
【0032】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜11及び比較例1〜6の床用再剥離型密着シートについて、粘着力の経時変化を評価した。具体的には、先ず、
図4(a)に示すように、実施例1〜11及び比較例1〜6の床用再剥離型密着シートから幅25mm×長さ200mmの試験片30をそれぞれ切り出し、これらの試験片30の長さ100mm部分をプラスチック系床タイルからなる被着材(第一床仕上材の代用品)41に2kgのローラーで5往復させることで密着させた。次に、
図4(b)に示すように、40℃雰囲気下で1週間及び6ヶ月間それぞれ放置した後、90°方向へのピーリング試験をそれぞれ行った。ここで、ピーリング試験における引張り速度は300mm/分とした。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm
2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)41への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、ガラス転移温度が−36℃と高すぎるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−7034)を用いた比較例1の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ0.5N/mm
2及び0.6N/mm
2と弱くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。また、ガラス転移温度が−75℃と低すぎるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:AP601)を用いた比較例2の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)がそれぞれ『僅かに有』及び『有』であり、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ5.3N/mm
2及び8.6N/mm
2と強くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。これらに対し、ガラス転移温度が−68℃〜−40℃と適正な範囲内(−70℃〜−40℃)にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、KR−158、AP620)を用いた実施例1〜11の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、かつ40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ2.0〜3.6N/mm
2及び2.4〜4.2N/mm
2と適切な強さであり、総合評価がそれぞれ優良であった。
【0035】
一方、ガラス転移温度が適正な範囲内にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、ガラス転移温度:−50℃)を用いても、その添加量が3質量部と少なすぎた比較例3の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ0.2N/mm
2及び0.4N/mm
2と弱くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。また、ガラス転移温度が適正な範囲内にあるアクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−158、ガラス転移温度:−50℃)を用いても、その添加量が35質量部と多すぎた比較例4の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)がそれぞれ『僅かに有』及び『有』であり、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ5.5N/mm
2及び7.8N/mm
2と強くなりすぎてしまい、総合評価がそれぞれ不良であった。
【0036】
一方、アクリル樹脂エマルジョンではなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(製品名:S408HQE)を用いた比較例5の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、40℃に1週間放置した後における粘着力が2.2N/mm
2と適切な強さであったけれども、40℃に6ヶ月放置した後における粘着力が9.2N/mm
2と強くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。また、アクリル樹脂エマルジョンではなく、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(製品名:L−7850)を用いた比較例6の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、40℃に1週間放置した後における粘着力が1.9N/mm
2と適切な強さであったけれども、40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)が『有』であり、40℃に6ヶ月放置した後における粘着力が10.5N/mm
2と強くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。これらに対し、アクリル樹脂エマルジョン(製品名:KR−159、KR−158、AP620)を用いた実施例1〜11の床用再剥離型密着シートでは、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であり、かつ40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月放置した後における粘着力がそれぞれ2.0〜3.6N/mm
2及び2.4〜4.2N/mm
2と適切な強さであり、総合評価がそれぞれ優良であった。
【0037】
<比較例7>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。この床用再剥離型密着シートを比較例7とした。
【0038】
<比較例8及び9>
2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液をそれぞれ0.5質量部及び15質量部添加したこと以外は、実施例5と同様にして床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例8及び9とした。
【0039】
<比較試験2及び評価>
実施例5、実施例10、実施例11及び比較例7〜9の床用再剥離型密着シートについて、耐ワックス性を評価した。具体的には、先ず、被着材(第一床仕上材の代用品)として、水性ワックス(製品名:オール(アクリル系床用ワックス)、株式会社リンレイ製)及び油性ウレタンニス(製品名:油性ウレタン床用ニス、株式会社カンペハピオ製)をそれぞれ塗工し、十分に乾燥させた2種類の木質系フローリングを準備した。次に、実施例5、実施例10、実施例11及び比較例7〜9の床用再剥離型密着シートから幅25mm×長さ200mmの試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片の長さ100mm部分を上記被着材(第一床仕上材の代用品)に2kgのローラーで5往復させることで密着させた。更に、60℃雰囲気下で1ヶ月間放置した後、90°方向へのピーリング試験を行った。ここで、ピーリング試験における引張り速度は300mm/分とした。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm
2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表2に示す。なお、表2において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。また、表2の「糊残りの有無」の欄において、「材切れ」とは、試験片の一部が剥がれて損傷した状態をいう。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から明らかなように、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を添加しなかった比較例7の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が4.7N/mm
2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が10.5N/mm
2と強くなりすぎてしまい、試験片も『材切れ』となり、総合評価が不良であった。また、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が0.5質量部と少なすぎた比較例8の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が4.8N/mm
2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が9.7N/mm
2と強くなりすぎてしまい、試験片も『材切れ』となり、総合評価が不良であった。更に、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が15質量部と多すぎた比較例9の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材及び油性ウレタンニスを塗工した被着材がともに、60℃に1ヶ月間放置した後に密着シートを再剥離したときの糊残り(密着層の付着)は『無』であったけれども、粘着力が0.5N/mm
2及び0.6N/mm
2と弱くなりすぎてしまい、総合評価が不良であった。これらに対し、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液を、天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量が0.5〜10質量部と適切な範囲内(セルロースナノファイバの天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量:0.01〜0.2質量部)である実施例5、10及び11の床用再剥離型密着シートでは、水性ワックスを塗工した被着材に密着させた場合、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が1.6〜4.8N/mm
2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は全て『無』であり、油性ウレタンニスを塗工した被着材に密着させた場合においても、60℃に1ヶ月間放置した後における粘着力が1.5〜4.8N/mm
2と適切な強さで、糊残り(密着層の付着)は全て『無』であり、総合評価が優良であった。
【0042】
<実施例12及び13>
実施例5の密着層の厚さをそれぞれ55μm及び148μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを実施例12及び13とした。
【0043】
<比較例10及び11>
実施例5の密着層の厚さをそれぞれ41μm及び163μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして2種類の床用再剥離型密着シートを得た。これらの床用再剥離型密着シートを比較例10及び11とした。
【0044】
<比較試験3及び評価>
実施例5、実施例12、実施例13、比較例10及び比較例11の床用再剥離型密着シートについて、比較試験1と同様に、粘着力の経時変化を評価した。そして、ピーリング試験における粘着力が1.0〜5.0N/mm
2の範囲内にあるときを適切な強さとした。また、被着材(第一床仕上材の代用品)への糊残りの有無(密着層の付着の有無)を目視で判断し、再剥離性を評価した。その結果を表3に示す。なお、表3において、「CNF」は、2質量%のセルロースナノファイバーを98質量%の水に分散させたセルロース水分散液であり、「CNFの添加量」は、セルロース水分散液の天然ゴムラテックス100質量部に対する添加量(質量部)である。
【0045】
【表3】
【0046】
表3から明らかなように、密着層を所定の厚さ(50〜150μmの適切な範囲内)とした実施例5、12及び13では、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月間放置した後における粘着力は1.1〜3.6N/mm
2で、糊残り(密着層の付着)は『無』であり、総合評価がそれぞれ優良であった。一方、密着層の厚さが41μmと薄すぎた比較例10では、40℃に1週間放置した後及び40℃に6ヶ月間放置した後における粘着力は0.1N/mm
2と弱すぎ、総合評価は不良であった。また、密着層の厚さが163μmと厚すぎた比較例11では、乾燥工程において気泡が発生して表面に凹凸ができたため、密着層を成膜できなかった。