(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
比較信号のパルスエッジでスイッチ素子をオンしてタイマ信号により前記スイッチ素子をオフするように非線形制御方式による前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行うことにより入力電圧から出力電圧を生成するスイッチング制御部と、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と所定の基準電圧とを比較して前記比較信号を生成するメインコンパレータと、
前記比較信号のパルスエッジで前記スイッチ素子がオフからオンに切り替えられてから所定の固定時間が経過した時点で前記タイマ信号をワンショット出力するタイマ部と、
前記スイッチ素子への逆流電流を検出して前記スイッチ素子を強制的にオフさせる逆流検出部と、
を有し、
前記タイマ部及び前記逆流検出部は、前記比較信号のパルスエッジが生じた時点でオンされ、各々の動作が完了した時点でオフされることを特徴とするスイッチング電源装置。
前記遅延部は、前記遅延比較信号のワンショット出力を行った後、所定のマスク時間に亘り前記比較信号を無視することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
前記タイマ部及び前記逆流検出部は、スリープモードでは必要に応じてオン/オフ制御され、非スリープモードでは常時オンされることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスイッチング電源装置。
前記遅延部は、前記スリープモードでは前記遅延比較信号のワンショット出力を行い、前記非スリープモードでは前記遅延比較信号として前記比較信号のスルー出力を行うことを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。
前記逆流検出部は、前記スリープモードでは通常時よりも大きい駆動電流で動作し、前記非スリープモードでは通常時の駆動電流で動作することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のスイッチング電源装置。
前記ゼロクロス検出信号のパルスエッジで第1論理レベルにセットされて前記比較信号のパルスエッジで第2論理レベルにリセットされるスキップ信号を生成するラッチ部をさらに有し、
前記スイッチング制御部は、前記スキップ信号が前記第1論理レベルとされている間、前記スイッチ素子を強制的にオフさせることを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は、スイッチング電源装置の第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態のスイッチング電源装置Aは、非線形制御方式(ここではボトム検出オン時間固定方式)により入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する降圧型DC/DCコンバータである。スイッチング電源装置Aは、半導体装置1と、半導体装置1に外付けされる種々のディスクリート部品(インダクタL1、キャパシタC1、抵抗R1及びR2)とを有する。
【0021】
半導体装置1は、外部との電気的な接続を確立するために、少なくとも外部端子T1〜T5を有する。半導体装置1の外部において、外部端子(電源端子)T1は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。外部端子(スイッチ端子)T2は、インダクタL1の第1端に接続されている。インダクタL1の第2端、キャパシタC1の第1端、及び、抵抗R1の第1端は、いずれも出力電圧Voutの印加端に接続されている。キャパシタC1の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1の第2端、及び、抵抗R2の第1端は、いずれも半導体装置1の外部端子(帰還端子)T4に接続されている。抵抗R2の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1及びR2は、互いの接続ノードから出力電圧Voutを分圧した帰還電圧Vfbを出力する帰還電圧生成部として機能する。半導体装置1の外部端子(接地端子)T3は、接地端に接続されている。半導体装置1の外部端子(スリープ端子)T5は、スリープ信号SLEEPの印加端に接続されている。
【0022】
半導体装置1は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ11及び12と、メインコンパレータ13と、タイマ部14と、逆流検出部15と、ラッチ部16と、スイッチング制御部17と、を集積化したモノリシック半導体集積回路装置(いわゆるスイッチング電源IC)である。
【0023】
トランジスタ11は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続され、スイッチング制御部17から入力されるゲート信号G1に応じてオン/オフ制御されるスイッチ素子(出力トランジスタ)である。接続関係について述べると、トランジスタ11のドレインは、外部端子T1に接続されている。トランジスタ11のソースは、外部端子T2に接続されている。トランジスタ11のゲートは、ゲート信号G1の印加端に接続されている。
【0024】
トランジスタ12は、外部端子T2と接地端との間に接続され、スイッチング制御部17から入力されるゲート信号G2に応じてオン/オフ制御されるスイッチ素子(同期整流トランジスタ)である。接続関係について述べると、トランジスタ12のドレインは、外部端子T2に接続されている。トランジスタ12のソースは、接地端に接続されている。トランジスタ12のゲートは、ゲート信号G2の印加端に接続されている。
【0025】
メインコンパレータ13は、外部端子T4を介して反転入力端(−)に印加される帰還電圧Vfb(出力電圧Voutの分圧電圧)と、非反転入力端(+)に印加される所定の基準電圧Vrefとを比較して比較信号S1を生成する。比較信号S1は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときにハイレベルとなる。なお、基準電圧Vrefとしては、入力電圧Vinや周囲温度の変動に依存しない一定電圧(バンドギャップ電圧など)を用いることが望ましい。
【0026】
タイマ部14は、トランジスタ11がオンされてから所定のオン時間tonが経過した時点で、タイマ信号S2をワンショット出力する。なお、トランジスタ11のオンタイミングを知るためには、スイッチング制御部17の内部信号(例えば、ゲート信号G1を生成するドライバの駆動信号)を監視するとよい。
【0027】
逆流検出部15は、トランジスタ12のオン期間中において外部端子T2に現れるスイッチ電圧Vswと接地電圧GNDを比較してゼロクロス検出信号S3を生成する。ゼロクロス検出信号S3は、スイッチ電圧Vswが接地電圧GNDよりも低いときにローレベルとなり、スイッチ電圧Vswが接地電圧GNDよりも高いときにハイレベルとなる。つまり、ゼロクロス検出信号S3は、インダクタ電流ILが接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れているときにローレベルとなり、インダクタ電流ILがインダクタL1からトランジスタ12を介して接地端に逆流しているときにハイレベルとなる。
【0028】
ラッチ部16は、ゼロクロス検出信号S3の立上りエッジでスキップ信号S2をハイレベルにセットし、比較信号S1の立上りエッジでスキップ信号S2をローレベルにリセットする。すなわち、スキップ信号S2は、トランジスタ12への逆流電流が検出されたときにハイレベルにラッチされ、トランジスタ11が次にオンされる直前でローレベルにリセットされる。
【0029】
スイッチング制御部17は、SRフリップフロップやドライバを含んで成り、比較信号S1とタイマ信号S2に応じて非線形制御方式によるトランジスタ11及び12のオン/オフ制御(ゲート信号G1及びG2の生成処理)を行うことにより、入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する。また、スイッチング制御部17は、スキップ信号S4がハイレベルとされている間、トランジスタ12を強制的にオフさせる機能(スイッチング停止機能)を備えている。このような機能を備えることにより、トランジスタ12への逆流電流を遮断して、軽負荷時の効率を向上することが可能となる。
【0030】
また、半導体装置1には、スイッチング電源装置Aの動作モード(スリープモード/非スリープモード)を切り替えるためのスリープ信号SLEEPが入力されている。例えばスリープ信号SLEEPがローレベルであるときには、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされ、スリープ信号SLEEPがハイレベルであるときには、スイッチング電源装置Aがスリープモード(必要最低限の回路ブロックのみに電力供給を行うことで、スイッチング電源装置Aの消費電力を低減する動作モード)とされる。
【0031】
特に、スリープ信号SLEEPは、タイマ部14と逆流検出部15双方に入力されており、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされている場合には、出力帰還制御の安定性向上を優先すべく、タイマ部14及び逆流検出部15が常時オンとされる。一方、スイッチング電源装置Aがスリープモードとされている場合には、軽負荷時の効率向上を優先すべく、タイマ部14及び逆流検出部15が必要に応じてオン/オフ制御される。
【0032】
図2は、第1実施形態のスリープ動作(スリープ信号SLEEPがハイレベルである場合の動作)を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、基準電圧Vref、比較信号S1、タイマ信号S2、ゲート信号G1及びG2、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw、ゼロクロス検出信号S3、スキップ信号S4、並びに、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ状態が描写されている。
【0033】
時刻t11において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefを下回り、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられると、ゲート信号G1がハイレベルに立ち上げられてトランジスタ11がオンされる。一方、時刻t11〜t12では、ゲート信号G2がローレベルに維持されており、トランジスタ12はオフされたままとなる。その結果、時刻t11〜t12では、スイッチ電圧Vswがほぼ入力電圧Vinまで上昇し、インダクタ電流ILが増大していく。
【0034】
また、時刻t11において、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられると、その立上りエッジをトリガとして、タイマ部14及び逆流検出部15がオンされる。なお、トランジスタ11は、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられた時点で遅滞なくオンされているので、タイマ部14は、時刻t11のオン直後からオン時間tonの計時を開始する。
【0035】
時刻t12において、タイマ部14によるオン時間tonの計時が完了し、タイマ信号S2にトリガパルスが生成されると、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。このとき、インダクタL1には、それまでと同一の方向にインダクタ電流ILを流し続けようとする誘導起電力が生じるので、インダクタ電流ILは、接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れ込む。従って、スイッチ電圧Vswは、接地電圧GNDよりもトランジスタ12での電圧降下分だけ低い負の電圧値まで低下する。
【0036】
なお、
図2では、トランジスタ11及び12のオン/オフ遷移タイミングが完全に一致しているが、貫通電流防止の観点から、トランジスタ11及び12のオン/オフ遷移タイミングに遅延を与えて、トランジスタ11及び12の同時オフ期間を設けても構わない。
【0037】
また、タイマ部14は、オン時間tonの計時が完了した時点で遅滞なくオフとなる。より具体的に述べると、タイマ部14は、タイマ信号S2をワンショット出力した後、自身への電力供給経路を遮断する。このようなオン/オフ制御を行うことにより、タイマ部14の消費電力を削減して、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。
【0038】
ここで、負荷に流れる出力電流Ioutが十分に大きい重負荷時には、インダクタL1に蓄えられているエネルギが大きいので、ゲート信号G1が再びハイレベルに立ち上げられる時刻t14まで、インダクタ電流ILはゼロ値を下回ることなく負荷に向けて流れ続け、スイッチ電圧Vswは負の電圧値に維持される。一方、負荷に流れる出力電流Ioutが小さい軽負荷時には、インダクタL1に蓄えられているエネルギが少ないので、時刻t13において、インダクタ電流ILがゼロ値を下回り、トランジスタ12への逆流電流が発生して、スイッチ電圧Vswの極性が負から正に切り替わる。このような状態では、キャパシタC1に蓄えられた電荷を接地端に捨てていることになるので、軽負荷時における効率低下の原因となる。
【0039】
そこで、スイッチング電源装置Aは、逆流検出部15を用いて逆流電流(スイッチ電圧Vswの極性反転)の有無に応じたゼロクロス検出信号S3を生成し、その立上りエッジでハイレベルにラッチされるスキップ信号S4のハイレベル期間(時刻t13〜t14)において、トランジスタ12を強制的にオフさせる構成とされている。このような構成とすることにより、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することができるので、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。
【0040】
なお、逆流検出部15は、逆流検出動作が完了した時点で遅滞なくオフとなる。より具体的に述べると、逆流検出部15は、ゼロクロス検出信号S3をハイレベルに立ち上げた後、自身への電力供給経路を遮断する。このようなオン/オフ制御を行うことにより、逆流検出部15の消費電力を削減して、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。
【0041】
時刻t15以降も、上記と同様に、逆流検出時のスイッチング停止処理と、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ制御が繰り返される。すなわち、スリープモードのスイッチング電源装置Aは、出力電圧Voutが基準電圧Vrefを上回っている間、トランジスタ11及び12のスイッチング動作を停止した上で、メインコンパレータ13以外の回路ブロックをオフすることにより、自己消費電流をできる限り低減する。その後、メインコンパレータ13で出力電圧Voutの低下が検知されると、オフしていた回路ブロックを復帰して、トランジスタ11及び12のスイッチング動作を再開する。このような構成とすることにより、スイッチング電源装置Aの平均消費電流を引き下げることができるので、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。
【0042】
ところで、上記の第1実施形態において、タイマ部14及び逆流検出部15は、比較信号S1がハイレベルに立ち上がるまで完全にオフされているので、比較信号S1がハイレベルに立ち上がった後、各々の動作を復帰するまでには比較的長い時間を要する。一方、スイッチング制御部17は、比較信号S1がハイレベルに立ち上がった時点で、遅滞なくトランジスタ11をオンさせる。そのため、上記の第1実施形態では、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰遅れが問題となり得る。
【0043】
例えば、タイマ部14は、一般に、定電流を用いてキャパシタの充電を行い、充電開始から充電電圧が所定の閾値に達するまでの所要時間をオン時間tonとして計時する。このとき、タイマ部14の復帰時間(タイマ部14をオンしてから上記の定電流が所定の目標値(一定値)に達するまでの所要時間)は、オン時間tonの目標値よりも十分に短くなければならない。しかしながら、完全にオフされていたタイマ部14の復帰時間は、オン時間tonの目標値と大差なくなるので、トランジスタ11のオン時間tonが不必要に長くなり、出力電圧Voutのオーバーシュートを生じるおそれがある。
【0044】
また、逆流検出部15の復帰が遅れると、トランジスタ12への逆流が生じた時点で遅滞なくトランジスタ12をオフさせることができなくなるので、キャパシタC1に蓄えられた電荷を接地端に捨ててしまうことになり、効率の低下を招いてしまう。特に、デューティの小さいアプリケーション(出力電圧Voutの低いアプリケーション)では、逆流検出部15の復帰に許された時間が短くなるので、上記の不具合を生じやすい。
【0045】
図3は、逆流検出部15の復帰遅れによる不具合を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、基準電圧Vref、比較信号S1、タイマ信号S2、ゲート信号G1及びG2、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw、ゼロクロス検出信号S3、スキップ信号S4、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ状態が描写されている。
【0046】
本来、逆流検出部15は、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられる時刻t21にオンされた後、トランジスタ12への逆流電流が生じる時刻t23までに復帰を完了していなければならない。仮に時刻t23の時点で逆流検出部15の復帰が完了していない場合には、
図3で示したように、時刻t23においてゼロクロス検出信号S3をハイレベルに立ち上げることができないので、トランジスタ12に逆流電流が流れ続けてしまう。
【0047】
また、時刻t23以降、トランジスタ12に逆流電流が流れている状態では、出力電圧Voutが急峻に低下して基準電圧Vrefを下回るので、比較信号S1が本来よりも早いタイミング(時刻t24)でハイレベルに立ち上げられてしまい、トランジスタ11のオンタイミングが本来よりも早まる。
【0048】
なお、
図3の例では、トランジスタ12に2回目の逆流電流が流れる時刻t26までに逆流検出部15の復帰が完了しており、時刻t26においてトランジスタ12への逆流電流が遮断される様子を示したが、仮に時刻t26の時点で逆流検出部15の復帰が完了していない場合には、先と同じくトランジスタ11のオンタイミングが早まることになる。
【0049】
このように、逆流検出部15の復帰遅れが生じると、軽負荷時のスイッチング停止機能やスリープ機能が十全に働かなくなるので、効率の低下が引き起こされる。
【0050】
以下では、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰に時間が掛かることを想定に入れて更なる改良が加えられたスイッチング電源装置について、具体例を挙げながら詳述する。
【0051】
<第2実施形態>
図4は、スイッチング電源装置の第2実施形態を示すブロック図である。第2実施形態は、先出の第1実施形態とほぼ同様の構成であり、メインコンパレータ13とスイッチング制御部17との間に遅延部18を追加した点に特徴を有している。そこで、第1実施形態と同様の構成部分については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0052】
遅延部18は、比較信号S1の立上りエッジが生じてから所定の遅延時間tdが経過した時点で遅延比較信号S1dをワンショット出力する。なお、遅延時間tdについては、例えば、タイマ部14の復帰時間に設定すればよい。
【0053】
スイッチング制御部17は、比較信号S1に代えて遅延比較信号S1dの入力を受けており、遅延比較信号S1dとタイマ信号S2に応じて非線形制御方式によるトランジスタ11及び12のオン/オフ制御を行う。
【0054】
図5は、第2実施形態のスリープ動作(スリープ信号SLEEPがハイレベルである場合の動作)を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、基準電圧Vref、比較信号S1、遅延比較信号S1d、タイマ信号S2、ゲート信号G1及びG2、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw、ゼロクロス検出信号S3、スキップ信号S4、並びに、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ状態が描写されている。
【0055】
時刻t31において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefを下回り、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられると、その立上りエッジをトリガとして、遅延部18による遅延時間tdの計時動作が開始される。
【0056】
また、時刻t31では、比較信号S1の立上りエッジをトリガとして、タイマ部14及び逆流検出部15がオンされる。なお、時刻t31の時点では、トランジスタ11及び12がいずれもオフされたままであり、タイマ部14によるオン時間tonの計時動作(定電流を用いたキャパシタの充電動作)は開始されない。
【0057】
時刻t32において、遅延部18による遅延時間tdの計時が完了し、遅延比較信号S1dにトリガパルスが生成されると、ゲート信号G1がハイレベルに立ち上げられてトランジスタ11がオンされる。一方、時刻t32〜t33では、ゲート信号G2がローレベルに維持されており、トランジスタ12はオフされたままとなる。その結果、時刻t32〜t33では、スイッチ電圧Vswがほぼ入力電圧Vinまで上昇し、インダクタ電流ILが増大していく。
【0058】
また、時刻t32では、トランジスタ11がオンされた後、タイマ部14によるオン時間tonの計時が開始される。このように、第2実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられる時刻t31ではなく、遅延比較信号S1dにトリガパルスが生成される時刻t32までに、タイマ部14の復帰が完了していれば足りる。従って、第1実施形態よりも遅延時間tdの分だけタイマ部14の復帰時間に余裕を持たせることができるので、タイマ部14の復帰遅れを解消して、出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することが可能となる。
【0059】
なお、トランジスタ11のオンタイミングを遅延時間tdだけ遅らせたことに伴い、時刻t31〜t32では、出力電圧Vout(延いては帰還電圧Vfb)が目標値を下回って低下する。しかしながら、軽負荷時には負荷に流れる出力電流Ioutが小さいので、出力電圧Voutの低下も小さくなる。例えば、遅延時間tdを1μsとし、出力電流Ioutを1mAとし、キャパシタC1の容量値を22μFとした場合、出力電圧Voutは45μV(=Iout×td/C1)しか低下しない。従って、第2実施形態の構成を採用した場合であっても、負荷の動作に支障が生じるケースは少ないと考えられる。
【0060】
時刻t33において、タイマ部14によるオン時間tonの計時が完了し、タイマ信号S2にトリガパルスが生成されると、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。このとき、インダクタL1には、それまでと同一の方向にインダクタ電流ILを流し続けようとする誘導起電力が生じるので、インダクタ電流ILは、接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れ込む。従って、スイッチ電圧Vswは、接地電圧GNDよりもトランジスタ12での電圧降下分だけ低い負の電圧値まで低下する。なお、タイマ部14は、第1実施形態と同様、オン時間tonの計時が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0061】
時刻t34において、インダクタ電流ILがゼロ値を下回り、トランジスタ12への逆流電流が発生して、スイッチ電圧Vswの極性が負から正に切り替わると、ゼロクロス検出信号S3がハイレベルに立ち上げられ、さらには、スキップ信号S4がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ12は強制的にオフされる。このような構成とすることにより、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することができるので、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。ここで、第2実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、第1実施形態よりも遅延時間tdの分だけ逆流検出部15の復帰時間に余裕を持たせることができるので、逆流検出部15の復帰遅れを解消して、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することが可能となる。なお、逆流検出部15は、第1実施形態と同様、逆流検出動作が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0062】
時刻t35以降も、上記と同様にして、逆流検出時のスイッチング停止処理と、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ制御が繰り返される。
【0063】
このように、第2実施形態のスイッチング電源装置Aでは、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefを下回った時点で、まずタイマ部14及び逆流検出部15の復帰だけが行われ、さらに所定の遅延時間tdが経過した時点で初めて、トランジスタ11及び12のスイッチング動作が再開される。このような構成とすることにより、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰遅れを解消して、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。
【0064】
なお、遅延部18にはスリープ信号SLEEPが入力されており、スイッチング電源装置Aがスリープモードとされている場合には、先に述べた遅延比較信号S1dのワンショット出力が行われる。一方、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされている場合には、遅延比較信号S1dとして比較信号S1のスルー出力が行われる。すなわち、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされている場合には、比較信号S1が遅延部18をバイパスしてスイッチング制御部17に直接入力される。
【0065】
このような構成とすることにより、負荷への出力電流Ioutが大きくなり、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされた場合には、先述の遅延時間tdが0となるので、出力電圧Voutの低下を抑えることが可能となる。なお、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされている場合には、タイマ部14及び逆流検出部15がいずれも常時オンされるので、各々の復帰遅れが問題となることはない。
【0066】
図6は、遅延部18における比較信号S1のマスク動作を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、基準電圧Vref、比較信号S1、遅延比較信号S1d、及び、タイマ信号S2が描写されている。
【0067】
先にも述べたように、第2実施形態のスイッチング電源装置Aでは、トランジスタ11のオンタイミングを遅延時間tdだけ遅らせたことに伴い、時刻t41〜t43において帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefを下回り、比較信号S1がハイレベルに維持される。ここで、オン時間tonの計時が完了する時刻t44までに比較信号S1がローレベルに立ち下がっていれば特に問題は生じないが、メインコンパレータ13の内部遅延などに起因して、時刻t44以降も比較信号S1がハイレベルに維持されていた場合には、その入力を受け付ける遅延部18が遅延比較信号S1dに意図しないトリガパルスを生成してしまい、トランジスタ11が不必要にオンされてしまうおそれがある。
【0068】
そこで、第2実施形態のスイッチング電源装置Aにおいて、遅延部18は、遅延比較信号S1のワンショット出力を行った後、所定のマスク時間tmaskに亘り比較信号S1を無視する構成とされている。このような構成とすることにより、トランジスタ11を不必要に複数回オンさせてしまうことがなくなるので、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。
【0069】
図7は、逆流検出部15の一構成例を示すブロック図である。本構成例の逆流検出部15は、コンパレータ150と、電流源151及び152と、スイッチ153〜155と、抵抗156と、ロジック部157と、を含む。
【0070】
コンパレータ150の非反転入力端(+)は、スイッチ155の第1端と抵抗156の第1端に各々接続されている。スイッチ155の第2端は、スイッチ電圧Vswの印加端(外部端子T2)に接続されている。コンパレータ150の反転入力端(−)と抵抗156の第2端は、いずれも接地電圧GNDの印加端(外部端子T3)に接続されている。
【0071】
なお、スイッチ155は、トランジスタ12と同期してオン/オフされる。従って、コンパレータ150の非反転入力端(+)は、トランジスタ12がオンされているときにはスイッチ155を介してスイッチ電圧Vswの印加端と導通され、トランジスタ12がオフされているときには抵抗156を介して接地電圧GNDの印加端にプルダウンされる。
【0072】
電流源151及び152の第1端は、いずれも電源ラインに接続されている。電流源151の第2端(駆動電流I1の出力端)は、スイッチ153の第1端に接続されている。電流源152の第2端(駆動電流I2の出力端)は、スイッチ154の第1端に接続されている。スイッチ154の第2端は、スイッチ153の第1端に接続されている。スイッチ153の第2端は、コンパレータ150の電源端に接続されている。
【0073】
ロジック部157は、比較信号S1、ゼロクロス検出信号S3、及び、スリープ信号SLEEPの入力を受けて、スイッチ153及び154のオン/オフ制御を行う。より具体的に述べると、スリープ信号SLEEPがローレベルである場合、ロジック部157は、比較信号S1及びゼロクロス検出信号S3に依ることなく、スイッチ153を常時オンとし、スイッチ154を常時オフとする。すなわち、スイッチング電源装置Aが非スリープモードとされている場合には、コンパレータ150の駆動電流I0として、駆動電流I1のみが常時供給される。
【0074】
一方、スリープ信号SLEEPがハイレベルである場合、ロジック部157は、スイッチ154を常時オンすると共に、比較信号S1の立上りエッジをトリガとしてスイッチ153をオンとし、ゼロクロス検出信号S3の立上りエッジをトリガとしてスイッチ153をオフとする。すなわち、スイッチング電源装置Aがスリープモードとされている場合には、コンパレータ150の駆動電流I0として、駆動電流I1及びI2の合算電流が断続的に供給される。
【0075】
上記したように、本構成例の逆流検出部15は、スリープモードでは通常時よりも大きい駆動電流I0(=I1+I2)で動作し、非スリープモードでは通常時の駆動電流I0(=I1)で動作するので、スリープモードにおける逆流検出部15の復帰時間を短縮することがが可能となる。
【0076】
<第3実施形態>
図8は、スイッチング電源装置の第3実施形態を示すブロック図である。第3実施形態は、先出の第1実施形態とほぼ同様の構成であり、メインコンパレータ13と並列に起動コンパレータ19を追加した点に特徴を有している。そこで、第1実施形態と同様の構成部分については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0077】
起動コンパレータ19は、反転入力端(−)に印加される帰還電圧Vfbと非反転入力端(+)に印加される閾値電圧Vref0(>Vref)とを比較して起動信号S0を生成する。起動信号S0は、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vref0よりも高いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vref0よりも低いときにハイレベルとなる。閾値電圧Vref0としては、起動信号S0の立上りエッジが生じてから所定の準備時間tpreが経過した時点で比較信号S1の立上りエッジが生じるように設定すればよい。なお、準備時間tpreについては、例えばタイマ部14の復帰時間に設定すればよい。また、閾値電圧Vref0としては、基準電圧Vrefと同様、入力電圧Vinや周囲温度の変動に依存しない一定電圧(バンドギャップ電圧など)を用いることが望ましい。
【0078】
タイマ部14及び逆流検出部15は、比較信号S1に代えて起動信号S0の入力を受けており、比較信号S1の立上りエッジが生じる前に起動信号S0の立上りエッジが生じた時点でオンされる。
【0079】
図9は、第3実施形態のスリープ動作(スリープ信号SLEEPがハイレベルである場合の動作)を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、閾値電圧Vref0、基準電圧Vref、起動信号S0、比較信号S1、タイマ信号S2、ゲート信号G1及びG2、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw、ゼロクロス検出信号S3、スキップ信号S4、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ状態が描写されている。
【0080】
時刻t51において、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vref0を下回り、起動信号S0がハイレベルに立ち上げられると、その立上りエッジをトリガとして、タイマ部14及び逆流検出部15がオンされる。なお、時刻t51の時点では、トランジスタ11及び12がいずれもオフされたままであり、タイマ部14によるオン時間tonの計時動作(定電流を用いたキャパシタの充電動作)は開始されない。
【0081】
時刻t52において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefを下回り、比較信号S1がハイレベルに立ち上げられると、ゲート信号G1がハイレベルに立ち上げられてトランジスタ11がオンされる。一方、時刻t52〜t53では、ゲート信号G2がローレベルに維持されており、トランジスタ12はオフされたままとなる。その結果、時刻t52〜t53では、スイッチ電圧Vswがほぼ入力電圧Vinまで上昇し、インダクタ電流ILが増大していく。
【0082】
また、時刻t52では、トランジスタ11がオンされた後、タイマ部14によるオン時間tonの計時が開始される。このように、第3実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、オン時間tonの計時を開始すべき時刻t52よりも準備時間tpreだけ早い時刻t51において、タイマ部14の事前復帰が開始される。従って、第1実施形態よりも準備時間tpreの分だけタイマ部14の復帰時間に余裕を持たせることができるので、タイマ部14の復帰遅れを解消して、出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することが可能となる。
【0083】
時刻t53において、タイマ部14によるオン時間tonの計時が完了し、タイマ信号S2にトリガパルスが生成されると、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。このとき、インダクタL1には、それまでと同一の方向にインダクタ電流ILを流し続けようとする誘導起電力が生じるので、インダクタ電流ILは、接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れ込む。従って、スイッチ電圧Vswは、接地電圧GNDよりもトランジスタ12での電圧降下分だけ低い負の電圧値まで低下する。なお、タイマ部14は、第1実施形態と同様、オン時間tonの計時が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0084】
時刻t54において、インダクタ電流ILがゼロ値を下回り、トランジスタ12への逆流電流が発生して、スイッチ電圧Vswの極性が負から正に切り替わると、ゼロクロス検出信号S3がハイレベルに立ち上げられ、さらには、スキップ信号S4がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ12は強制的にオフされる。このような構成とすることにより、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することができるので、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。ここで、第3実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、第1実施形態よりも準備時間tpreの分だけ逆流検出部15の復帰時間に余裕を持たせることができるので、逆流検出部15の復帰遅れを解消して、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することが可能となる。なお、逆流検出部15は、第1実施形態と同様、逆流検出動作が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0085】
時刻t55以降も、上記と同様にして、逆流検出時のスイッチング停止処理と、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ制御が繰り返される。
【0086】
このように、第3実施形態のスイッチング電源装置Aでは、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vref0(>Vref)を下回った時点で、まずタイマ部14及び逆流検出部15の復帰だけが行われ、さらに帰還電圧Vfbが低下して基準電圧Vrefを下回った時点で初めて、トランジスタ11及び12のスイッチング動作が再開される。このような構成とすることにより、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰遅れを解消して、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。また、第3実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、第2実施形態と異なり、トランジスタ11のオンタイミングを遅らせることがないので、出力電圧Voutの低下を招くこともない。
【0087】
<第4実施形態>
図10は、スイッチング電源装置の第4実施形態を示すブロック図である。第4実施形態は、先出の第1実施形態とほぼ同様の構成であり、基準電圧Vrefを可変値とした上で、メインコンパレータ13とスイッチング制御部17との間にパルス分配部20を追加した点に特徴を有している。そこで、第1実施形態と同様の構成部分については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第4実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0088】
パルス分配部20は、基準電圧Vrefの可変制御に伴って比較信号S1に生じる2つのパルス(詳細は後述)を第1比較信号S1aと第2比較信号S1bに分配する。
【0089】
タイマ部14及び逆流検出部15は、比較信号S1に代えて第1比較信号S1aの入力を受けており、第2比較信号S1bの立上りエッジが生じる前に第1比較信号S1aの立上りエッジが生じた時点でオンされる。
【0090】
スイッチング制御部17は、比較信号S1に代えて第2比較信号S1bの入力を受けており、第2比較信号S1bとタイマ信号S2に応じて非線形制御方式によるトランジスタ11及び12のオン/オフ制御を行う。
【0091】
図11は、第4実施形態のスリープ動作(スリープ信号SLEEPがハイレベルである場合の動作)を示すタイムチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、基準電圧Vref、比較信号S1、第1比較信号S1a、第2比較信号S1b、タイマ信号S2、ゲート信号G1及びG2、インダクタ電流IL、スイッチ電圧Vsw、ゼロクロス検出信号S3、スキップ信号S4、並びに、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ状態が描写されている。
【0092】
基準電圧Vrefは、電圧Va及びVb(ただしVa>Vb)の2段階に切り替えられる可変値である。電圧Vaは、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰タイミングを定めるための電圧であり、第1比較信号S1aの立上りエッジが生じてから所定の準備時間tpreが経過した時点で、第2比較信号S1bの立上りエッジが生じるように設定すればよい。なお、準備時間tpreについては、例えば、タイマ部14の復帰時間に設定すればよい。また、電圧Vbは、出力電圧Voutの目標値を定めるための電圧である。
【0093】
基準電圧Vrefは、第1比較信号S1aの立上りエッジをトリガとして、電圧Vaから電圧Vbに引き下げられる一方、タイマ信号S2の立上りエッジをトリガとして、電圧Vbから電圧Vaに引き上げられる。ただし、基準電圧Vrefの可変タイミングはこれに限定されるものではなく、例えば、第2比較信号S1bの立上りエッジやゼロクロス検出信号S3の立上りエッジをトリガとして、基準電圧Vrefを電圧Vbから電圧Vaに引き上げるようにしてもよいし、或いは、比較信号S1の立上りエッジ毎に、基準電圧Vrefを電圧Vaと電圧Vbの交互に切り替える構成としてもよい。
【0094】
時刻t61において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(=Va)を下回り、比較信号S1に生じた一つ目のパルスが第1比較信号S1aとして分配されると、第1比較信号S1aの立上りエッジをトリガとして、タイマ部14及び逆流検出部15がオンされる。なお、時刻t61の時点では、トランジスタ11及び12がいずれもオフされたままであり、タイマ部14によるオン時間tonの計時動作(定電流を用いたキャパシタの充電動作)は開始されない。
【0095】
時刻t62において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(=Vb)を下回り、比較信号S1に生じた二つ目のパルスが第2比較信号S1bとして分配されると、ゲート信号G1がハイレベルに立ち上げられてトランジスタ11がオンされる。一方、時刻t62〜t63では、ゲート信号G2がローレベルに維持されており、トランジスタ12はオフされたままとなる。その結果、時刻t62〜t63では、スイッチ電圧Vswがほぼ入力電圧Vinまで上昇し、インダクタ電流ILが増大していく。
【0096】
また、時刻t62では、トランジスタ11がオンされた後、タイマ部14によるオン時間tonの計時が開始される。このように、第4実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、オン時間tonの計時を開始すべき時刻t62よりも準備時間tpreだけ早い時刻t61において、タイマ部14の事前復帰が開始される。従って、第1実施形態よりも準備時間tpreの分だけタイマ部14の復帰時間に余裕を持たせることができるので、タイマ部14の復帰遅れを解消して、出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することが可能となる。
【0097】
時刻t63において、タイマ部14によるオン時間tonの計時が完了し、タイマ信号S2にトリガパルスが生成されると、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。このとき、インダクタL1には、それまでと同一の方向にインダクタ電流ILを流し続けようとする誘導起電力が生じるので、インダクタ電流ILは、接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れ込む。従って、スイッチ電圧Vswは、接地電圧GNDよりもトランジスタ12での電圧降下分だけ低い負の電圧値まで低下する。なお、タイマ部14は、第1実施形態と同様、オン時間tonの計時が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0098】
時刻t64において、インダクタ電流ILがゼロ値を下回り、トランジスタ12への逆流電流が発生して、スイッチ電圧Vswの極性が負から正に切り替わると、ゼロクロス検出信号S3がハイレベルに立ち上げられ、さらには、スキップ信号S4がハイレベルに立ち上げられる。その結果、トランジスタ12は強制的にオフされる。このような構成とすることにより、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することができるので、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。ここで、第4実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、第1実施形態よりも準備時間tpreの分だけ逆流検出部15の復帰時間に余裕を持たせることができるので、逆流検出部15の復帰遅れを解消して、トランジスタ12への逆流電流を速やかに遮断することが可能となる。なお、逆流検出部15は、第1実施形態と同様、逆流検出動作が完了した時点で遅滞なくオフとなる。
【0099】
時刻t65以降も、上記と同様にして、逆流検出時のスイッチング停止処理と、タイマ部14及び逆流検出部15のオン/オフ制御が繰り返される。
【0100】
このように、第4実施形態のスイッチング電源装置Aでは、基準電圧Vrefが電圧Va及びVbの2段階に切り替えられる可変値とされており、帰還電圧Vfbが電圧Vaを下回った時点で、まずタイマ部14及び逆流検出部15の復帰だけが行われ、さらに帰還電圧Vfbが低下して電圧Vbを下回った時点で初めて、トランジスタ11及び12のスイッチング動作が再開される。このような構成とすることにより、タイマ部14及び逆流検出部15の復帰遅れを解消して、軽負荷時の効率向上を実現することが可能となる。また、第4実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、第3実施形態と異なり、別途の起動コンパレータ19を設ける必要がないので、回路規模を不必要に増大せずに済む。
【0101】
<テレビへの適用>
図12は、スイッチング電源装置Aを搭載したテレビの一構成例を示すブロック図である。また、
図13A〜
図13Cは、それぞれ、スイッチング電源装置Aを搭載したテレビの正面図、側面図、及び、背面図である。本構成例のテレビXは、チューナ部X1と、デコーダ部X2と、表示部X3と、スピーカ部X4と、操作部X5と、インタフェイス部X6と、制御部X7と、電源部X8と、を有する。
【0102】
チューナ部X1は、テレビXに外部接続されるアンテナX0で受信された受信信号から所望チャネルの放送信号を選局する。
【0103】
デコーダ部X2は、チューナX1で選局された放送信号から映像信号と音声信号を生成する。また、デコーダ部X2は、インタフェイス部X6からの外部入力信号に基づいて、映像信号と音声信号を生成する機能も備えている。
【0104】
表示部X3は、デコーダ部X2で生成された映像信号を映像として出力する。
【0105】
スピーカ部X4は、デコーダ部で生成された音声信号を音声として出力する。
【0106】
操作部X5は、ユーザ操作を受け付けるヒューマンインタフェイスの一つである。操作部X5としては、ボタン、スイッチ、リモートコントローラなどを用いることができる。
【0107】
インタフェイス部X6は、外部デバイス(光ディスクプレーヤやハードディスクドライブなど)から外部入力信号を受け付けるフロントエンドである。
【0108】
制御部X7は、上記各部X1〜X6の動作を統括的に制御する。制御部X7としては、CPU[central processing unit]などを用いることができる。
【0109】
電源部X8は、上記各部X1〜X7に電力供給を行う。電源部X8としては、先述のスイッチング電源装置Aを好適に用いることができる。
【0110】
<その他の変形例>
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、ボトム検出オン時間固定方式を採用したスイッチング電源装置を例に挙げて説明を行ったが、本発明は、アッパー検出オフ時間固定方式を採用したスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
【0111】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。