特許第6063740号(P6063740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063740ノボラック樹脂、その製造方法、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063740
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ノボラック樹脂、その製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/08 20060101AFI20170106BHJP
   C08G 59/04 20060101ALI20170106BHJP
   G03F 7/023 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   C08G8/08
   C08G59/04
   !G03F7/023 511
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-286335(P2012-286335)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-129430(P2014-129430A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591018707
【氏名又は名称】明和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 貞昭
(72)【発明者】
【氏名】古本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】篠田 教一
(72)【発明者】
【氏名】木村 絵梨奈
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−190689(JP,A)
【文献】 特開2011−252037(JP,A)
【文献】 特開2010−197887(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007827(WO,A1)
【文献】 特開2006−335797(JP,A)
【文献】 特開2013−133345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00− 2/38
C08G 4/00−16/06
C08G 59/00−59/72
C08G 61/00−61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるノボラック樹脂がエポキシ化されたエポキシ化ノボラック樹脂。
【化1】

(ここで、一般式(1)において、Aはそれぞれ独立に下記一般式(2−1)又は一般式(2−2)で表される1価又は2価の基からなり、Bはそれぞれ独立に下記一般式(3−1)又は一般式(3−2)で表される2価の基からなり、nは0〜100の整数であり、
樹脂中に含まれる一般式(2−1)と一般式(2−2)との割合[一般式(2−1)/一般式(2−2)]が10/90〜90/10であり、一般式(3−1)と一般式(3−2)との割合[一般式(3−1)/一般式(3−2)]が10/90〜90/10である。)
【化2】

(ここで、qはそれぞれ独立に2〜3の整数を表す。)
【化3】

(ここで、R1はそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基を表し、pはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。)
【化4】

【化5】
【請求項2】
下記一般式(4)及び一般式(5)で表されるフェノール類と、下記一般式(6)で表される化合物及びホルムアルデヒドとを縮合反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【化6】

(ここで、qは2〜3の整数を表す。)
【化7】

(ここで、R1は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。)
【化8】

(ここで、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、耐熱性、溶解性などが良好であって、種々の用途に好適に使用することができるノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ化してエポキシ化ノボラック樹脂を得るための原料、ポジ型フォトレジスト組成物のアルカリ可溶性樹脂としてなどの種々の用途で使用されている。
例えば、ノボラック樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、作業性が良好であり、その硬化物が優れた特性を有するので、電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で使用されている。しかし、例えば半導体封止材や積層板等の電気・電子分野では、鉛フリーのハンダの採用によってリフロー温度がより高温になったために、積層板、層間絶縁材料、封止材料などの半導体パッケージに用いられるエポキシ樹脂組成物に対して、従来品に比較してより高い耐熱性が求められている。また、環境問題への対策として、燃焼時にダイオキシンを発生する可能性があるハロゲンや、発ガン性が疑われるアンチモン等の難燃剤を使用することなしに耐燃焼性(難燃性)を向上することが求められている。さらに、エポキシ樹脂組成物を積層板のマトリックス材料や層間絶縁材料として用いる時には、エポキシ樹脂組成物を溶媒に均一に溶解したワニスとして用いるために、エポキシ樹脂組成物には溶媒に対する可溶性が求められている。
【0003】
また、アルカリ可溶性樹脂としてノボラック樹脂が用いられているポジ型フォトレジスト組成物は、例えば0.3μm程度の微細な線幅から数十〜数百μm程度の大きな線幅のパターンを、多種多様な基材表面に形成することができる。しかし、ポジ型フォトレジスト組成物が使用される半導体製造分野やLCD等の分野では、TFT、STNなどの技術の進展に伴い、形成すべきパターンの線幅がますます微細化され、最近の高精細なTFT表示素子では、線幅の設計寸法が数μmレベルまで要求されつつある。
ところで、携帯電話などのフレキシブルプリント配線基板の分野では、ネガ型のドライフィルムフォトレジストが広く使用されている。このドライフィルムフォトレジストの解像度は低く、線幅は30〜300μm程度である。一方、ポジ型フォトレジスト組成物は、解像度は高いけれども、ドライフィルム化しようとすると、膜質が脆くて柔軟性に欠けるために、それをロール状の製品とすることが難しく、また使用時の取扱いが容易ではない。このためにポジ型のドライフィルムフォトレジストは実用化に至っていない。即ち、ポジ型フォトレジストでは柔軟性の改良が求められている。
【0004】
特許文献1には、フェノール類をビフェニルジイルジメチレン基及びメチレン基で架橋(結合)した化学構造からなるフェノールノボラック樹脂が開示されている。
特許文献2は、メチルフェノール類と、グルタルアルデヒド及びアジプアルデヒドのうちの少なくとも一つを含有するジアルデヒド類との縮重合によって、高い柔軟性を示し、且つ高感度や高解像度を可能にするフォトレジスト組成物用のフェノール樹脂を得ることを提案している。
特許文献3は、ポジ型感光性樹脂積層シート及びその製造方法に関する。この文献には、ノボラック型フェノール樹脂を構成するフェノール類とアルデヒド類について記載があり、多数の化合物が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/026553号
【特許文献2】国際公開第2010/050592号
【特許文献3】特開2006−267660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、より高い耐熱性、溶解性、柔軟性を得るための具体的な態様が必ずしも十分に開示されてはいない。
また、特許文献2のノボラック型フェノール樹脂は、柔軟性の改良は見られるものの、フォトレジスト組成物としては柔軟性が必ずしも十分に改良されたとはいえず、実用化のためには更に柔軟性について改良の余地がある。
さらにまた、特許文献3は、ノボラック型フェノール樹脂の膜質の脆さなどを、クッション層を積層することなどの手段で解決しようとするものであって、ノボラック型フェノール樹脂の化学組成を検討して、膜質の脆さを改良したものではない。そのため実施例でもノボラック型フェノール樹脂の化学組成については記載されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、柔軟性、耐熱性、溶解性などが良好であって、種々の用途に好適に使用することができるノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)、及びその用途について提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の事項に関する。
1. 下記一般式(1)で表される化合物を含有するノボラック樹脂。
【0008】
【化1】
ここで、一般式(1)において、Aはそれぞれ独立に下記一般式(2−1)又は一般式(2−2)で表される1価又は2価の基からなり、Bはそれぞれ独立に下記一般式(3−1)又は一般式(3−2)で表される2価の基からなり、nは0〜100の整数であり、
樹脂中に含まれる一般式(2−1)と一般式(2−2)との割合[一般式(2−1)/一般式(2−2)]が10/90〜90/10であり、一般式(3−1)と一般式(3−2)との割合[一般式(3−1)/一般式(3−2)]が10/90〜90/10である。
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【0013】
2. 前記項1に記載のノボラック樹脂をエポキシ化したことを特徴とするエポキシ化ノボラック樹脂。
【0014】
3. 前記項1に記載のノボラック樹脂及び前記項2に記載のエポキシ化ノボラック樹脂のうちいずれか1以上の樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
4. 得られる硬化物のガラス転移温度が160℃以上である前記項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
5. さらに溶媒を含有し、樹脂成分が溶媒中に均一に溶解してなる前記項3又は4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
6. 前記項3〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【0016】
7. 前記項5に記載のエポキシ樹脂組成物を用いてマトリックス樹脂を形成したことを特徴とする積層板。
【0017】
8. 前記項1に記載のノボラック樹脂であって、重量平均分子量が6000以上〜30000未満であるノボラック樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト組成物。
【0018】
9. 下記一般式(4)及び一般式(5)で表されるフェノール類と、下記一般式(6)で表される化合物及びホルムアルデヒドとを縮合反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【0019】
【化6】
ここで、qは2〜3の整数を表す。
【0020】
【化7】
ここで、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。
【0021】
【化8】
ここで、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。
10. 前記一般式(4)及び下記一般式(7)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物とを縮合反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【0022】
【化9】
ここで、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。
【0023】
11. 前記一般式(4)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物とを縮合反応させる工程と、次いで、前記工程で得られた反応生成物と、前記一般式(7)で表されるフェノール類とを縮合反応させる工程と、を含んでなる前記項10に記載のノボラック樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、柔軟性、耐熱性、溶解性などが良好なノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)を得ることができる。このノボラック樹脂は、その特性を利用して、エポキシ化ノボラック樹脂の原料として好適に使用することができる。また、このノボラック樹脂或いはエポキシ化ノボラック樹脂を用いて、耐熱性や溶解性に優れるエポキシ樹脂組成物、該組成物からなる硬化物、及び該組成物によってマトリックス樹脂が形成された積層板を好適に得ることができる。更に、アルカリ可溶性樹脂として採用することによって柔軟性が改良されたフォトレジスト組成物を好適に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)は、前記一般式(1)で表されるものである。すなわち、置換基を有さない2価又は3価のフェノール類(構造)と少なくとも一つのアルキル基を置換基として有する1価のフェノール類(構造)とを、ビフェニルジイルジメチレン基及びメチレン基で架橋(結合)した化学構造からなり、置換基を有さない2価又は3価のフェノール類(構造)と少なくとも一つのアルキル基を置換基として有する1価のフェノール類(構造)との割合[2価又は3価のフェノール構造/1価のフェノール構造]が10/90〜90/10であり、ビフェニルジイルジメチレン基とメチレン基との割合[ビフェニルジイルジメチレン基/メチレン基]が10/90〜90/10のものである。
【0026】
本発明のノボラック樹脂は、使用する原料の種類によって二通りの製造方法で好適に得ることができる。
第1の製造方法は、前記一般式(4)及び一般式(5)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物及びホルムアルデヒドを縮合反応することを特徴とする。
【0027】
前記一般式(4)で表されるフェノール類は、置換基を有さない2価又は3価の多価フェノール化合物であり、2価フェノール化合物としては、例えばカテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等が挙げられ、3価フェノール化合物としては、例えばピロガロール、フロログルシノール等が挙げられる。これら置換基を有さない多価フェノール化合物のうち、入手の容易さ、反応性の高さの点から、レゾルシンが好ましい。これらの多価フェノール化合物は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記一般式(5)で表されるフェノール類は、置換基として炭素数が1〜6のアルキル基を1〜3個有する1価のフェノール化合物である。例えばm−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、4−t−ブチルカテコールなどを好適に挙げることができる。これらの炭素数が1〜6のアルキル基を1〜3個有するフェノール化合物のうち、構造の制御のしやすさから、p−クレゾールが好ましい。
【0029】
前記一般式(6)で表されるビフェニルジイルジメチレン構造を含む化合物としては、4,4’−ビス(ハロゲノメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(ハロゲノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ハロゲノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、などを好適に挙げることができる。さらに、一般式(6)で表されるビフェニルジイルジメチレン構造を含む化合物としては、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニルなどを好適に挙げることができる。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられるが、塩素原子が好ましい。また、アルコキシ基としては、特に制限はないが、炭素数1〜6個の脂肪族アルコキシ基が好ましい。具体的には、メトキシ基およびエトキシ基が挙げられる。
好ましい具体的な化合物としては、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニルが挙げられる。
これらの前記一般式(6)で表されるビフェニルジイルジメチレン構造を含む化合物は、単独で用いても、複数種の混合物を用いてもよい。
【0030】
本発明において、ホルムアルデヒドは、形態としては特に制限はなく、ホルムアルデヒド水溶液、及びパラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いることもできる。好ましくは、取り扱いの容易なホルムアルデヒド水溶液であり、市販品の42質量%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま使用することもできる。
【0031】
第2の製造方法は、前記一般式(4)及び前記一般式(7)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物とを縮合反応することを特徴とする。
【0032】
前記一般式(4)で表されるフェノール類及び前記一般式(6)で表されるビフェニルジイルジメチレン構造を含む化合物は前述のとおりである。
前記一般式(7)で表されるフェノール類は、少なくとも一つの炭素数が1〜6のアルキル基と、二つのヒドロキシメチル基とを置換基として有するフェノール化合物であって、好ましくは2,6−ジメチロール−p−クレゾール、及び他のビスヒドロキシメチル−クレゾールのような少なくとも一つのアルキル基と二つのヒドロキシメチル基とを有するフェノール類である。
本発明において、前記一般式(7)で表されるフェノール類は、市販品でもよいが、合成したものも好適に使用することができる。合成方法の一例としては、少なくとも一つの炭素数が1〜6のアルキル基を置換基として有するフェノール化合物とホルムアルデヒドとを、モル比[ホルムアルデヒド/フェノール化合物]を2以上として、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒下に反応させる方法がある。精製は、酸性物質による中和後に、水洗する方法等により行うことができる。
【0033】
本発明のノボラック樹脂の製造方法において、縮合反応は酸触媒を用いて好適に行われる。酸触媒としては、特に限定はなく、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、蓚酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸など公知のものを単独であるいは2種以上併用して使用することができるが、硫酸、蓚酸またはパラトルエンスルホン酸が特に好ましい。使用量は、概ね原料のフェノール類に対して0.01〜1重量%程度である。以下説明する1段の縮合反応でも2段の縮合反応でも、特に違いはない。例えば、蓚酸の場合は0.3〜1.0質量%程度、硫酸の場合は0.05〜0.1質量%程度、またパラトルエンスルホン酸の場合は0.01〜0.3質量%程度使用するのがよい。
なお、ノボラック樹脂をフォトレジスト組成物に用いる場合には、酸触媒は極力少ないことが好ましく、樹脂中に酸触媒が残存するとフォトレジストとしての特性に弊害が及ぶ可能性があるために、アミン類または無機アルカリを使用して酸触媒を中和することが好ましい。
縮合反応の反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜170℃である。50℃より低いと反応が進み難くなり、200℃より高いと反応の制御が難しくなるので、目的のノボラック樹脂を容易に得ることが困難となる場合がある。
【0034】
縮合反応では、必要に応じて反応に影響を及ぼさない有機溶媒を好適に使用することができる。これらの有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。これらの有機溶媒の使用量は、通常、反応原料100質量部当り、10〜1000質量部である。
また、縮合反応の反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.1〜20時間である。反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0035】
縮合反応が終了した後の後処理としては、好ましくは反応を停止するために塩基を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を行うことが好ましい。
酸触媒の中和のための塩基としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基ならびにアミンや有機アミンなどの有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。有機塩基のアミンあるいは有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。好ましくは有機アミンが使用される。使用量は酸触媒の量にもよるが、酸触媒を中和し、反応系内のpHが4〜8の範囲に入るような量で使用することが好ましい。
水洗水の量と回数は特に限定されないが、経済的観点も含めて、酸触媒を実使用に影響ない程度の量まで除去する水洗回数としては、1〜5回程度が好ましい。また、水洗温度は、特に限定されないが、触媒種除去の効率と作業性の観点から40〜95℃で行うのが好ましい。水洗中、樹脂と水洗水の分離が悪い場合は、レジンの粘度を低下させる溶媒の添加や水洗温度を上昇させることが効果的である。溶媒種は特に限定されないが、ノボラック樹脂を溶解し、粘度を低下させるものであれば使用することができる。
酸性触媒を除去した後は、通常は、反応系の温度を130〜230℃に上げて、例えば20〜50torrの減圧下、反応混合物中に残存している未反応原料、有機溶媒等の揮発分を留去することによって、目的のノボラック樹脂を好適に分離回収することができる。
【0036】
本発明のノボラック樹脂の製造方法においては、使用する全ての原料を同時に(1段で)縮合反応させてもよいが、使用する原料を適宜選択して段階的に縮合反応させることが好適である。すなわち、第1の製造方法においては、前記一般式(4)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物とを縮合反応させる工程と、次いで、前記工程で得られた反応生成物と、前記一般式(5)で表されるフェノール類及びホルムアルデヒドとを縮合反応させる工程と、を含んでなる2段の縮合反応によって行うことが好適である。また、第2の製造方法においては、前記一般式(4)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物とを縮合反応させる工程と、次いで、前記工程で得られた反応生成物と、前記一般式(7)で表されるフェノール類とを縮合反応させる工程と、を含んでなる2段の縮合反応によって行うことが好適である。
【0037】
2段の縮合反応によって縮合反応を行うと、ビフェニルジイルジメチレン構造で架橋された構造単位からなる樹脂セグメント、及びメチレン構造で架橋された構造単位からなる樹脂セグメントを、それぞれ好適に制御することができる。換言すれば、各樹脂セグメントの重合度の調節が容易になり、更に分子量分布を狭くすることができるので、樹脂全体としての分子量の制御が容易になる。このため、2段の縮合反応によって縮合反応を行うことが、本発明のノボラック型フェノール樹脂を得るうえで好適である。
一方、1段の縮合反応を行わせると、種々の反応性の原料が同時に反応するために分子量の制御が難しく、しばしばゲル化を起こすなどの問題が生じることがある。
第1の製造方法で1段の縮合反応を行うとランダム構造のノボラック樹脂を得ることができる。一方、1段の縮合反応に比べて2段の縮合反応によれば、前記の各樹脂セグメントによって、よりブロック化されたノボラック型フェノール樹脂が得られる。特に第2の製造方法において2段の縮合反応を行うとブロック構造のノボラック樹脂を得ることになる。このブロック構造のノボラック樹脂は、原料の前記一般式(7)のフェノール類に由来する化学構造(前記一般式(5)のフェノール類に由来するユニットが二つのメチレン基で架橋(結合)された化学構造に相当する)有するが、前記一般式(5)のフェノール類に由来するユニットが一つのビフェニルジイルジメチレン基と一つのメチレン基とで架橋(結合)された化学構造は持たないので、第1の製造方法によって得られるノボラック樹脂とは明らかに分子構造が異なる。
本発明のノボラック樹脂は、ランダム構造のノボラック樹脂であっても、ブロック構造のノボラック樹脂であっても構わない。いずれの場合でも、柔軟性、耐熱性、溶解性などの特性が良好なので、好適に種々の用途に使用することができる。なお、本発明においては、特に限定はされないが、ブロック構造のノボラック樹脂をフォトレジスト組成物に用いた方が、パターニングした際により高い柔軟性を達成できるので、特に柔軟性が求められる場合には好ましい。
【0038】
2段の縮合反応を行う場合には、第1工程の縮合反応が終了後、その反応混合物に第2工程の原材料を添加し、第2工程の縮合反応を好適に行うことができる。本発明においては、限定するものではないが、第1工程の縮合反応が終了後、例えば20〜50torrの減圧下で反応混合物中に残存する未反応原料や副生物を除去して第1工程の縮合反応で得られた(中間段階の)ノボラック樹脂を一旦単離し、次いで、単離した(中間段階の)ノボラック樹脂と残りの反応原料を再び混合して第2工程の縮合反応を行うことが、各工程の反応をより精密に制御することができ、ゲル化などの問題を生じさせないで容易に分子量などを調節することができるので特に好適である。
【0039】
本発明のノボラック樹脂は、前記一般式(1)で表される。そして、Bは、前記一般式(3−1)で表される2価の基(ビフェニルジイルジメチレン基)、及び前記一般式(3−2)で表される2価の基(メチレン基)からなる。前記一般式(3−1)と前記一般式(3−2)との割合[一般式(3−1)/一般式(3−2)]は、10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは40/60〜60/40である。本発明のノボラック樹脂は、この割合であることによって、高い柔軟性、高耐熱性、および良好な溶解性を有することができる。
また、本発明のノボラック樹脂において、Aは、前記一般式(2−1)で表される1価(分子末端の場合)又は2価の基(分子中の場合)、及び前記一般式(2−2)で表される1価(分子末端の場合)又は2価の基(分子中の場合)からなる。前記一般式(2−1)と前記一般式(2−2)との割合[一般式(2−1)/一般式(2−2)]は、10/90〜90/10であり、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは35/65〜65/35である。本発明のノボラック樹脂は、好ましくは、この割合であることによって、高い柔軟性、高耐熱性、および良好な溶解性を有することができる。
【0040】
本発明のノボラック樹脂を製造する縮合反応においては、得られるノボラック樹脂が、前記一般式(1)で規定されたAやBの構成や、目的とする重量平均分子量を満たすように、反応原料の使用割合や反応条件が調節される。2段の縮合反応においては、第1工程の縮合反応で得られた(中間段階の)ノボラック型フェノール樹脂を分析して、その結果に基づいて、第2工程の反応原料の割合や反応条件が更に微調節される。
当然ノボラック樹脂へ導入する割合を高くしたいユニットの原料の使用割合を高くし、また目的とする重量平均分子量によってフェノール類と他の原料との使用する割合は適宜調節されるが、それらの割合は、それぞれの原材料の反応性の大きさや採用する反応条件を加味して適宜調節される。当業者にとっては、その調節方法は自明であるが、必要なら予備的実験を行うことによって簡単に見出すことができる。
【0041】
通常、第1の製造方法の場合には、前記一般式(4)と前記一般式(5)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物及びホルムアルデヒドからなる架橋成分との使用モル比[フェノール類/架橋成分]は、40/60〜95/5程度である。また第2の製造方法の場合には、前記一般式(4)と前記一般式(7)で表されるフェノール類と、前記一般式(6)で表される化合物からなる架橋成分との使用モル比[フェノール類/架橋成分]は、50/50〜90/10程度である。
【0042】
本発明の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂は、好ましくは軟化点60〜180℃であり、より好ましくは70〜170℃である。軟化点が60℃未満ではブロッキング等の発生を生じ易くなり、170℃を超えるとハンドリング性に問題を生じることがある。
本発明のノボラック樹脂の重量平均分子量は、特に限定されない。通常は500〜30000、好ましくは500〜20000、より好ましくは500〜10000程度のである。フォトレジスト組成物に用いる場合には、フォトレジスト組成物の性能やハンドリング性から、好ましくは6000以上〜30000未満、より好ましくは6000〜20000、更に好ましくは6000〜15000、特に好ましくは6000〜12000である。重量平均分子量が6000より小さいと感度が高すぎる場合があり、30000か又はそれより大きいと感度が低い場合がある。
【0043】
本発明の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂をエポキシ化することで、本発明のエポキシ化ノボラック樹脂を得ることができる。
エポキシ化する方法は、特に限定されるものではないは、従来公知のグリシジルエーテル化反応を好適に採用することができる。すなわち、エピハロヒドリン類と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下、例えば10〜120℃で、グリシジルエーテル化することにより得られる。
【0044】
反応に使用されるエピハロヒドリン類としては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、γ−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等の置換又は非置換のエピハロヒドリン類が使用可能であるが、工業的に入手が容易であり、水酸基との反応性が良好である点から、エピクロルヒドリンを用いることが好ましい。
【0045】
エピハロヒドリン類の使用量は、特に限定されず適宜選択できるが、通常、ノボラック樹脂の水酸基に対して過剰量が使用される。低溶融粘度のエポキシ樹脂を得る点からは、エピクロルヒドリン類の使用量を、ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して3.0〜20モルとすることでき、好ましくは3.0〜10モルである。
【0046】
また、反応に使用されるアルカリ金属水酸化物は、固形物であっても、その水溶液であってもよい。水溶液を使用する場合、アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加しながら、減圧下又は常圧下において、連続的に水とエピハロヒドリン類を反応系外に流出させ、水分を除去した後、エピハロヒドリン類を反応系内に連続的に戻す方法を採用することもできる。アルカリ金属水酸化物の使用量は、ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して0.8〜2.0モルとすることができ、好ましくは0.9〜1.3モルである。
【0047】
反応に際しては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒等を存在させることが、反応の進行上好ましい。
【0048】
また、エポキシ化ノボラック樹脂は、ノボラック樹脂及びエピハロヒドリン類に、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し、これらの反応によって得られるハロヒドリンエーテル化物に、アルカリ金属水酸化物を加えて閉環させて得ることもできる。
【0049】
その際の反応温度は、特に限定されないが、通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は、反応温度にも影響されるが、通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。
【0050】
グリシジルエーテル化反応の反応混合物を、水洗後又は水洗せずに、加熱減圧下で、エピハロヒドリン類や溶媒等を留去して、エポキシ化ノボラック樹脂を得ることができる。さらに、加水分解性塩素等を低減させるために、得られた粗エポキシ化ノボラック樹脂をトルエンやメチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加して反応させることで、エポキシ環の閉環を確実にしてもよい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗等により除去し、さらに加熱減圧下で溶剤を留去することにより、エポキシ化ノボラック樹脂の精製物を好適に得ることができる。
【0051】
前記グリシジルエーテル化反応の前後で、通常、樹脂中に導入されているフェノール類が脱離することはないため、グリシジルエーテル化反応の前後で、原料のノボラック樹脂の化学構造は概ね保持される。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂及び本発明の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂のうちいずれか1以上の樹脂を含有することを特徴とする。
【0053】
前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂を硬化剤として含む場合には、エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂として、本発明の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂を用いることもできる。これらエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが、耐熱性や耐燃焼性を改良するうえで特に好適である。
【0054】
また、前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂を含むエポキシ樹脂組成物の場合には、硬化剤として本発明のノボラック樹脂を好適に用いることができるし、通常のエポキシ樹脂組成物で用いられる硬化剤、例えばアミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などの硬化剤を、単独で又は複数種併用して好適に用いることができる。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の添加割合は、硬化剤中のフェノール性水酸基の数(水酸基当量数)とエポキシ樹脂のエポキシ基の数(エポキシ当量数)が等量付近となるのが最も好ましい。また、硬化剤の水酸基当量数とエポキシ樹脂のエポキシ当量数の比率[水酸基当量数/エポキシ当量数]が、0.5〜2.0程度の範囲であることが好ましく、0.8〜1.2程度の範囲がより好まししい。この範囲外では硬化反応が十分に進行せず未反応の硬化剤やエポキシ樹脂が残存する等の理由より本発明の効果を発揮することができなくなる場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、単一のエポキシ樹脂や硬化剤を用いてもよいが、複数種のエポキシ樹脂や硬化剤を併用して用いてもよい。
本発明のノボラック樹脂を硬化剤とする場合でも、組成物の使用目的に応じて種々のエポキシ樹脂硬化剤を併用することができる。他の硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などの通常のエポキシ樹脂の硬化剤を好適に用いることができる。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤中の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂の割合は、特に限定はないが、硬化物の耐熱性や耐燃焼性を改良するためにより高い割合が好ましく、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0057】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂中の前記一般式(1)で表されるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ化ノボラック樹脂の割合は、特に限定はないが、硬化物の耐熱性や耐燃焼性を改良するためにより高い割合が好ましく、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、好ましくは、さらに溶媒を含有してなり、そして溶媒にノボラック樹脂やエポキシ樹脂などが均一に溶解していることが好ましい。
得られる硬化物の耐熱性や耐燃焼性が優れるエポキシ樹脂組成物を、高濃度で均一なワニス溶液にすることができれば、積層板のマトリックス材料や層間絶縁材料とし好適に用いることが可能になる。
【0059】
溶媒としては、エポキシ樹脂組成物を溶解させるものであれば特に限定はないが、好ましくは通常の積層板のマトリックス材料や層間絶縁材料をワニス化する際に用いられる有機溶媒を好適に用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、γ−ブチルラクトンなどのラクトン類、N−メチルピロリドンなどのピロリドン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類を好適に挙げることができる。これらの中では、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドが特に好ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をワニス化した場合は、限定するものではないが、好ましくは、樹脂成分の濃度は10〜90質量%程度であり、溶液粘度は30℃で1〜5000cP程度である。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、通常のエポキシ樹脂組成物で用いられる他の成分を、その用途に応じて好適に用いることができる。
例えば、エポキシ樹脂をフェノール樹脂で硬化させるための硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、公知の、有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びテトラフェニルボロン塩などを好適に挙げることができる。これらの中でも、硬化性や耐湿性の面からトリフェニルホスフィンが好ましい。なお、エポキシ樹脂組成物により高流動性が要求される場合には、加熱処理にて活性が発現する熱潜在性の硬化促進剤が好ましく、中でも、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルホスフォニウム誘導体がより好ましい。硬化促進剤の添加量は公知のエポキシ樹脂組成物における割合と同様でよい。
【0061】
さらに、無機充填剤などの充填剤も好適に用いることができる。無機充填剤としては非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどが使用でき、特に非晶性シリカ、結晶性シリカがより好ましい。無機充填剤の粒径としては特に制限は無いが、充填率を考慮すると0.01〜150μmであることが望ましい。
無機充填剤の配合割合については特に制限は無いが、エポキシ樹脂組成物中の70〜95質量%、好ましくは75〜90質量%、より好ましくは80〜90室量%である。無機充填剤の割合が上記範囲外であるとエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水率が増加し好ましくない。また、無機充填剤の割合が多すぎると流動性を損なわれる恐れがある。
【0062】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等を添加または予め反応して用いることができる。また、これら添加剤の配合割合は公知のエポキシ樹脂組成物における割合と同様でよい。本発明のエポキシ樹脂組成物には、この他必要に応じて、メラミン、イソシアヌル酸化合物等の窒素系難燃剤、赤リン、リン酸化合物、有機リン化合物等のリン系難燃剤を難燃助剤として適宜添加することができる。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のノボラック樹脂及び/又はエポキシ化ノボラック樹脂を含むものであるが、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤及び他の添加剤等を、例えばミキサー等を使用して均一に混合し、加熱ロール、ニーダー、又は押し出し機等の混練機を用いて溶融状態で混練し、冷却、必要に応じて粉砕することにより製造できる。
このようなエポキシ樹脂組成物は、限定するものではないが、半導体封止材料などとして好適に用いることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に、本発明のノボラック樹脂及び/又はエポキシ化ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤及び他の添加剤等を加え、必要に応じて加熱や撹拌することによって、少なくとも、樹脂成分が、溶媒に均一に溶解してなるワニス溶液を製造することができる。
このワニス化したエポキシ樹脂(溶液)組成物は、限定されるものではないが、積層板のマトリックス材料や層間絶縁材料として好適に用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて溶媒を乾燥した後で、加熱処理することによって硬化物を好適に得ることができる。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化することによって、本発明の硬化物を得ることができる。
硬化物を得るための加熱処理条件は、硬化触媒や硬化促進剤の有無、それらの添加量などにも依存するが、通常は100〜300℃程度、好ましくは120〜200℃程度の温度で1分間〜10時間程度加熱処理するのが好適である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体素子を封止する封止材料として好適に用いることができる。その場合には、例えば、該半導体素子を搭載したリードフレーム等を金属キャビティ内に設置した後に、エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形し、120〜300℃程度の温度で加熱処理等を行いエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより半導体装置を好適に得ることができる。
【0065】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、好ましくはメチルエチルケトン等の溶媒に均一に溶解してワニス化し、そのワニス溶液を、ガラス等の多孔質ガラス基材やガラス繊維、紙、アラミド繊維等に塗布或いは含浸し、次いで加熱処理(半硬化)することでプリント基板用プリプレグを製造することができる。更に、得られたプリント基板用プリプレグの複数枚を積層し、必要に応じて加圧しながら加熱処理を行なって硬化させることによって、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてマトリックス樹脂を形成した積層板を好適に製造することができる。
また、積層板或いはプリプレグは、片面または両面に金属箔を重ね合わせて、必要に応じて加圧しながら加熱処理(例えば、180℃、4MPaの圧力で60分間加熱処理)を行なって金属張積層板を得ることができる。この金属張積層板は、エッチング処理によって回路パターンを形成し、プリント配線板として好適に用いることができる。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、好ましくはメチルエチルケトン等の溶媒に均一に溶解してワニス化し、そのワニス溶液を、例えばPETフィルム若しくは銅箔等の支持体表面にダイコーター等を用いて均一に塗布し、得られた塗布膜を加熱乾燥することによって、樹脂層を有する積層体シートとし、層間絶縁材料として好適に用いることができる。
【0066】
本発明の硬化物は、優れた柔軟性と高い耐熱性を有する、耐熱性については、ガラス転移温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上である。
【0067】
本発明のノボラック樹脂は、特に高い柔軟性を示し且つ高解像度や高残膜率、高耐熱性を兼ね備えたフォトレジスト組成物用として好適に使用することができる。
本発明のフォトレジスト組成物は、限定するものではないが、本発明のノボラック樹脂を好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%含有する。本発明のレジスト組成物は、さらに感光剤を含有する。感光剤としては、ノボラック樹脂を含むフォトレジストの感光剤として従来公知のものを好適に使用できる。例えばキノンジアジド基を有するキノンジアジド化合物が好ましく、特に1,2−キノンジアジド化合物又はその誘導体が好ましい。キノンジアジド化合物を用いることで、露光した部分は溶解促進効果によりアルカリ溶解速度が大きくなり、逆に露光しない部分は溶解抑制効果によりアルカリ溶解速度が小さくなり、この露光部と未露光部の溶解速度の差によって、コントラストの高い、シャープなレジストパターンを得ることができる。
【0068】
キノンジアジド化合物としては、従来キノンジアジド−ノボラック系フォトレジスト組成物で用いられている公知の化合物を用いることができる。このようなキノンジアジド基を含む化合物としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これらの酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましい。ここで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては水酸基、アミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。酸クロライドと縮合可能な水酸基を有する化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”−ペンタヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組合せて用いてもよい。
酸クロライドであるナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドの具体例としては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0069】
感光剤の配合量は、ノボラック樹脂100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。感光剤の配合量が5質量部よりも少ないと、感光性樹組成物として十分な感度が得られないことがあり、また、50質量部よりも多いと成分の析出の問題が起こることがあるので好ましくない。
【0070】
本発明のレジスト組成物は、ノボラック樹脂及び感光剤の他に、フォトレジスト組成物の慣用成分である、酸化防止剤等の安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤、溶解阻害剤などを好適に含有することができる。
【0071】
本発明のノボラック樹脂を使用したフォトレジスト組成物は、ドライフィルム化が可能性あり、また高集積半導体を製造する際のリソグラフィー工程、液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)、フレキシブルディスプレイ及びフレキシブルプリント配線板等の微細加工工程において、好適に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。尚、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0073】
[1]ノボラック樹脂を硬化剤に用いたエポキシ樹脂組成物の調製と評価
〔実施例1〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、レゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(以下、4,4’−BMMBと略記することもある。) 82.5g(0.34モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 16g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.16gを入れ、反応温度110℃で4時間反応を行った。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 98g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール(以下、CDMと略記することもある。) 57.3g(0.34モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.16g、イオン交換水 286gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 200gを得た。
【0074】
〔比較例1〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、フェノール 470.0g(5.0モル)、92%パラホルムアルデヒド 110.9g(3.4モル)、及び触媒のシュウ酸 0.3gを加え、反応温度100℃で5時間反応を行った。反応終了後、減圧−スチーミング処理にて未反応成分のフェノールを共沸して除去し、ノボラック樹脂 329gを得た。
【0075】
〔比較例2〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、フェノール 113.5g(1.21モル)、4,4’−BMMB 200g(0.83モル)、及び触媒の50質量%硫酸 0.14gを4つ口フラスコに入れ、窒素気流下、反応温度120〜135℃で3.5時間、更に反応温度165℃で3時間反応を行った。反応終了後95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水 250gを投入し、水洗した。その後、160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分のフェノールを共沸して除去し、ノボラック樹脂 68gを得た。
【0076】
〔比較例3〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、フェノール 169.2g(1.8モル)、レゾルシン 22g(0.2モル)、4,4’−BMMB 312.3g(1.29モル)及び触媒の50重量%硫酸 0.15gを4つ口フラスコに入れ、窒素気流下、内温120〜135℃にて3.5時間、さらに165℃にて3時間反応させ、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水250gを投入し、水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分のフェノールを共沸して除去し、ノボラック樹脂 143gを得た。
【0077】
前記実施例1及び比較例1〜3で得たノボラック樹脂、及び各ノボラック樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物について分析し評価した。
なお、エポキシ樹脂組成物の評価は次のようにして行った。すなわち、硬化剤として各ノボラック樹脂を、エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン(株)製エピコート828EL(エポキシ当量186g/eq)を、硬化促進剤として四国化成(株)製キュアゾ−ル2E4MZを使用し、ノボラック樹脂とエポキシ樹脂とを同当量比で配合したエポキシ樹脂組成物について、150℃に加熱、溶融混合し、真空脱泡後150℃に加熱された金型に注形し、150℃にて5時間、200℃にて5時間硬化して得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物を得て、その硬化物について評価を行った。
【0078】
また、ノボラック樹脂の分析方法及びエポキシ樹脂組成物の評価方法は以下のとおりである。
≪重量平均分子量(GPC測定方法)≫
型式 : HLC−8220 東ソー(株)製
カラム : TSK−GEL Hタイプ G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件: カラム圧力 13.5MPa
溶離液 : テトラヒドロフラン(THF)フローレート 1ml/min
温度 : 40℃
検出器 : スペクトロフォトメーター(UV−8020)RANGE 2.56
WAVE LENGTH : 254nm とRI
インジェクション量 : 100μmL
試料濃度 : 5mg/mL
≪軟化点≫
JIS K6910に基づく環球法軟化点測定によって行った。
≪水酸基当量≫
JIS K0070に準じた水酸基当量測定によって行った。
≪溶解性≫
以下に示す方法で溶解性試験によって評価した。
溶媒:メチルエチルケトン
溶解比率(質量):フェノールノボラック樹脂/溶媒=50/50
溶解条件:密閉容器に樹脂と溶媒を加え、60℃で攪拌溶解させた。
評価判定:溶解後と常温(23℃)で12時間静置後とを目視で観察した。樹脂が均一に溶解し且つ静置後も均一な溶液が保持されたものを○、樹脂が均一に溶解したが静置後に樹脂の一部が析出したものを△、均一な溶液を得ることができなかったものを×とした。
【0079】
≪ガラス転位温度(Tg)、熱線膨張率(α)≫
150℃×5時間+180℃×3時間にて注型、硬化させた試料を(50±1)×(40±1)×(100±1)(縦×横×高;mm)のサイズにカットして試験片として用い、測定装置;TMA−60(SHIMADZU製)に試験片をセットし、N雰囲気下、昇温速度;3℃/minで350℃まで測定し、変曲点の温度をガラス転位温度(Tg)として求めた。また、ガラス転移温度以下の温度領域での熱線膨張率α、ガラス転移温度以上の温度領域での熱線膨張率αをそれぞれ測定した。
≪硬化物機械特性(弾性率・エネルギー・変位・応力・歪み)≫
150℃×5時間+180℃×3時間にて注型、硬化させた試料を(75±1)×(6±1)×(4±1)(縦×横×厚;mm)のサイズにカットして試験片として用い、測定装置;オートグラフ(型式;AG−5000D SHIMADZU製)にて、ヘッドスピード;10mm/min、2点間距離;50mm、室温下にて圧縮曲げ試験を行って、弾性率、変位、応力、歪みを求めた。
【0080】
表1及び表2に、得られたノボラック樹脂の分析結果、エポキシ樹脂組成物の配合、及びその硬化物の評価結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
[2]エポキシ樹脂組成物を用いた銅張積層板の製造と評価
以下に銅張積層板の製造に係る例で用いた材料について説明する。
(1)エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「828EL」:ジャパンエポキシレジン(株)、エポキシ当量:186g/eq
(2)硬化促進剤(硬化触媒)
2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ):四国化成社製
(3)溶媒(メチルエチルケトン):和光純薬工業社製
(4)ガラスクロス(無アルカリ処理ガラスクロス)「M7628−105」:有沢製作所社製
(5)銅箔(電解銅箔)「CF−T9B−THE」:福田金属箔粉工業社製、厚さ35μ
【0084】
以下に銅張積層板に係る評価方法について説明する。
≪耐熱性≫
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製「RSA−G2」)を用い、昇温速度3℃/分にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0085】
〔実施例2〕
希釈溶媒のメチルエチルケトン 231.2gに、実施例1で得られたノボラック樹脂 131g、ビスフェノール型エポキシ樹脂 100g、硬化促進剤の2E4MZ 0.1gを加えてワニス化し、均一に溶解した樹脂分濃度が50質量%のワニス溶液を得た。
得られたワニス溶液をガラスクロスのM7628−105に含浸させた後に130℃、15分間の条件で乾燥させ、プリプレグを得た。このプリプレグ8枚を重ねて、その両側に銅箔のCF−T9B−THEを重ね、温度170℃、圧力30kg/cmで15分間プレス機を用いてプレスした。積層体をプレス機から取り出した後、更に温度200℃で5時間アフターキュアすることで両面銅張積層板を得た。評価結果を表3に示す。
【0086】
〔比較例4〜5〕
実施例1で得られたノボラック樹脂の代わりに、比較例2〜3で調製したノボラック樹脂を用い、配合を表3のとおりにしたこと以外は、実施例2と同様にして両面銅張積層板を得た。評価結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
[3]フォトレジスト組成物の調製と評価
〔実施例3〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにレゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル 93.2g(0.385モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 14g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.14gを入れ、反応温度110℃で4時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 98g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール 42.13g(0.256モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.14g、イオン交換水 286gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 200gを得た。
【0089】
〔実施例4〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにレゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−BMMB 99.0g(0.409モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 15g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.15gを入れ、反応温度110℃で4時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 105g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール 45.82g(0.273モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.15g、イオン交換水 292gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 190gを得た。
【0090】
〔実施例5〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにレゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−BMMB 82.52g(0.341モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 16g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.16gを入れ、反応温度110℃で4時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 112g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール 57.28g(0.341モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.16g、イオン交換水 315gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 196gを得た。
【0091】
〔実施例6〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにレゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−BMMB 85.58g(0.353モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 16g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.16gを入れ、反応温度110℃で4時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 112g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール 59.4g(0.353モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.16g、イオン交換水 319gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 202gを得た。
【0092】
〔比較例6〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、m−クレゾール 80g(0.740モル)、p−クレゾール 120g(1.110モル)、42%ホルマリン 81.3g(1.137モル)、及び触媒の蓚酸 0.8gを入れ、反応温度100℃で10時間反応を行った。その後、180℃まで昇温して脱水し、次いで30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック樹脂 150gを得た。
【0093】
〔比較例7〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、m−クレゾール 100g(0.925モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液 42.6g(0.213モル)、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.2gを入れ、反応温度96℃で20時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.2g、イオン交換水 100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整して、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水し、次いで30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック樹脂 82gを得た。
【0094】
〔比較例8〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、m−クレゾール 100g(0.93モル)、42%ホルマリン 47.0g(0.67モル)、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.1gを三つ口フラスコに入れ、反応温度100℃で4時間反応を行った。その後、4,4−BMMB 18.0g(0.07モル)を入れ、反応温度140℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.3g、イオン交換水 100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック樹脂110gを得た。
【0095】
〔比較例9〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、フェノール 169.2g(1.8モル)、レゾルシン 22g(0.2モル)、4、4’−BMMB 312.3g(1.29モル)、及び触媒の50質量%硫酸 0.15gを入れ、窒素気流下、反応温度120〜135℃で3.5時間、更に反応温度165℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃まで冷却した。冷却後、イオン交換水 100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整して、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水し、次いで30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック樹脂 144gを得た。
【0096】
〔比較例10〕
温度計、仕込・留出口および攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにレゾルシン 100g(0.908モル)、4,4’−BMMB 76.69g(0.317モル)、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテル 15g、及び触媒のパラトルエンスルホン酸 0.15gを入れ、反応温度110℃で4時間反応を行った。その間、生成するメタノールを留去した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 107g、及び2,6−ジメチロール−p−クレゾール 53.2g(0,317モル)を添加し、反応温度110℃で4時間反応を行った。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン 0.15g添加し、イオン交換水 306gを添加して攪拌し、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を4回行った。その後、150℃まで昇温して脱水した後、30torrで1時間減圧蒸留を行って水分などを除去し、ノボラック樹脂 187gを得た。
【0097】
ノボラック樹脂の分析方法とその物性の評価方法は以下の通りである。
≪重量平均分子量(GPC測定方法)≫
型式 : HLC−8220 東ソー(株)製
カラム : TSK−GEL Hタイプ G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件: カラム圧力 13.5MPa
溶離液 : テトラヒドロフラン(THF)フローレート 1ml/min
温度 : 40℃
検出器 : スペクトロフォトメーター(UV−8020)RANGE 2.56
WAVE LENGTH : 254nm とRI
インジェクション量 : 100μmL
試料濃度 : 5mg/mL
【0098】
≪ノボラック樹脂のアルカリ溶解速度の評価方法≫
ノボラック樹脂3gをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)9gに溶解し、樹脂溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過した。これを4インチシリコンウェハー上に約1.5μmの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃で60秒間ホットプレート上で乾燥させた。次いで現像液(1.60%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、完全に膜が消失するまでの時間を計測した。初期膜厚を溶解するまでの時間で割った値を溶解速度とした。
【0099】
フォトレジスト組成物(感光性組成物)の調製方法、得られた組成物の感光剤溶解性、塗布性、柔軟性、残膜率(%)、及び解像度の評価方法は以下のとおりである。
≪フォトレジスト組成物の調製≫
ノボラック樹脂10gとナフトキノン1,2−ジアジド−5−スルホン酸の2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンエステル2.5gとをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)37.5gに溶解し、フォトレジスト組成物とした。
【0100】
≪フォトレジスト組成物柔軟性評価≫
得られたノボラック樹脂をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に溶解し、樹脂溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過した。これを厚さ50μmのポリイミドフィルム上に約5.0μmの厚みになるように塗布し、110℃で90秒間ホットプレート上で乾燥させた。
乾燥後、レジスト表面の状態を観察しハジキの有無で塗布性を評価した。
次いで、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間浸漬した。リンス、乾燥させた後、180度に折り曲げて、折り曲げ箇所の状態を下記基準で目視及び顕微鏡(1000倍)により観察し評価した。
○:顕微鏡観察でレジスト膜にヒビ割れはない
△:目視観察ではレジスト膜にヒビ割れはないが、顕微鏡観察ではレジスト膜にヒビ割れがある(柔軟性を有するフォトレジスト組成物として実用化は困難)
×:目視観察でレジスト膜にヒビ割れがある
【0101】
≪フォトレジスト組成物の感度、残膜率、解像度の評価方法≫
前記フォトレジスト組成物を0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過し、これを4インチシリコンウェハー上にスピンコーターで塗布し、110℃、60秒間ホットプレート上で乾燥させて、厚みが15000Åの塗膜を形成した。その後、縮小投影露光装置を用い、露光時間を段階的に変えて最適な露光量を確認したうえで、最適な露光量になるように露光した。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間現像し、リンス、乾燥を行なった。
【0102】
感度
感度は、走査型電子顕微鏡により、得たれたパターンのパターン形状を観察することにより、以下の基準で評価を行なった。
AA:3mJ/cm未満で画像が形成出来る。
A:5mJ/cm未満で画像が形成出来る。
B:5〜60mJ/cmで画像が形成出来る。
【0103】
残膜率
未露光部の残膜厚から残膜率を求めた。残膜率とは、現像後の感光性樹脂の膜厚と現像前の感光性樹脂の膜厚の比であり、下記式により表される値である。
【0104】
【数1】
【0105】
解像度
また、解像度は、テストチャートマスクを用い、下記基準で評価した。
◎:4μライン&スペースが解像できる。
○:5μライン&スペースが解像できる。
×:5μライン&スペースが解像できない。
【0106】
実施例3〜6、及び比較例6〜10で得られたノボラック樹脂について、それぞれの化学組成、モル比、樹脂としての分析評価結果、フォトレジスト組成物としての評価結果を、下記の表4〜5にまとめて示した。
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
実施例3〜6のノボラック樹脂は柔軟性が改良されていた。一方、従来の一般的なノボラック型フェノール樹脂である比較例6では柔軟性がなかった。特許文献2のノボラック型フェノール樹脂に相当する比較例9のノボラック樹脂は、柔軟性が改良されているが更に改良の余地があった。実施例3〜6のノボラック樹脂は、フォトレジスト組成物としての評価においても、比較例6〜10で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物に比べ、柔軟性に加え、残膜率や解像度の性能をバランスよく満足した。特に、実施例3で得られたノボラック樹脂は、重量平均分子量が6000〜12000の特に好ましい範囲にあるために、それを用いて調製したフォトレジスト組成物の柔軟性と解像度とが良好であると共に、残膜率が特に良好であるなど、フォトレジストとしての特性が極めて優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によって、柔軟性、耐熱性、溶解性などが良好なノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)を得ることができる。このノボラック樹脂は、その特性を利用して、エポキシ化ノボラック樹脂の原料として好適に使用することができる。また、このノボラック樹脂或いはエポキシ化ノボラックを用いて、耐熱性や溶解性に優れるエポキシ樹脂組成物、該組成物からなる硬化物、及び該組成物によってマトリックス樹脂が形成された積層板を好適に得ることができる。更に、アルカリ可溶性樹脂として採用することによって柔軟性が改良されたフォトレジスト組成物を好適に得ることができる。