(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部と、前記本体部に軸線方向の移動が禁止されると共に回転自在に支持されたナット部材と、前記ナット部材に螺合したねじ軸と、前記ナット部材を回転させる第1の駆動系と、前記ねじ軸を回転させる第2の駆動系と、前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系の動作を制御する制御部と、を備えた軸駆動装置における前記ねじ軸を駆動する軸駆動方法であって、
前記ねじ軸を前記軸線方向の一方側に移動させる際に、
前記第2の駆動系の動作により、前記ねじ軸を、前記ナット部材に対して前記軸線方向の一方側にねじ送りされる方向に回転させるねじ軸駆動ステップと、
前記第1の駆動系の動作により、前記ナット部材を、前記ねじ軸が前記ナット部材に対して前記軸線方向の他方側にねじ送りされる方向に回転させるナット部材回転ステップと、
を同時に実行し、
前記ねじ軸の前記一方側への移動を停止する際に、
同時に動作している前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系を、前記第2の駆動系の動作を停止した後に前記第1の駆動系の動作を停止することを特徴とする軸駆動方法。
前記ねじ軸又は前記ねじ軸と一体的に上下移動する部材の前記軸線方向の位置を検出し、前記位置の変化度合いに基づいて前記第1の駆動系の動作を停止させることを特徴とする請求項5記載の軸駆動方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プレス機械には、作業者保護等のために種々の安全装置が搭載されている。その一つとして、作業者の指や腕等が上テーブルと下テーブルとの間の加工エリア内へ進入した際に、その進入を各種センサで検出し、アプローチ移動中のテーブルを急停止させる安全装置がある。
【0007】
安全装置を備えた従来のプレス機械において、安全装置の動作等によってテーブルのアプローチ動作を急停止させた際には、テーブル及びテーブルと共に移動する部材の慣性力により、少なからず惰走が生じる。
例えば、プレス機械が、上テーブルを昇降動作させるタイプの場合、センサで指等の進入を検出したときの上テーブルの位置よりも、惰走で移動した分、低い位置で上テーブルが停止する。そのため、より高い安全性を確保するために惰走で移動する距離(惰走距離)はできるだけ短い方がよい。
【0008】
特許文献1に記載された軸駆動装置及びプレス機械は、ねじ軸及びねじ軸と一体的に上下動する上テーブルの、アプローチ時の移動速度を高速にできるものであるが、高速にできる分、急停止における惰走距離が長くなる傾向にある。
そのため、ねじ軸及び上テーブルの移動を高速で行えると共に急停止の際の惰走距離が短いものであることが望まれる。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ねじ軸を高速移動可能であり、急停止の際のねじ軸の惰走距離が短い軸駆動方法及び軸駆動装置を提供することにある。
また、軸駆動装置でテーブルを昇降させるプレス機械であって、テーブルを高速移動可能であり、急停止の際のテーブルの惰走距離が短いプレス機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成及び手順を有する。
1) 本体部と、
前記本体部に、軸線を上下方向とする姿勢で、前記軸線方向の移動が禁止されると共に回転自在に支持されたナット部材と、
前記ナット部材に螺合したねじ軸と、
前記ナット部材を回転させる第1の駆動系と、
前記ねじ軸を回転させる第2の駆動系と、
前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系の動作を制御する制御部と、
前記ねじ軸の下端側に連結されると共に下面側にパンチが着脱自在とされた上テーブルと、
前記上テーブルに対する下方側に配置され上面側にダイが着脱自在とされた下テーブルと、
を備え、
前記制御部は、
前記上テーブルを下降させる際に、
前記第2の駆動系が、前記ねじ軸を、前記ナット部材に対して下方側にねじ送りされる方向に回転させると同時に、前記第1の駆動系が、前記ナット部材を、前記ねじ軸が前記ナット部材に対して上方側にねじ送りされる方向に回転させるよう制御し、
前記上テーブルの下降を停止する際に、
同時に動作している前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系を、前記第2の駆動系の動作を停止した後に前記第1の駆動系の動作を停止するよう制御することを特徴とするプレス機械である。
2) 前記ねじ軸又は前記上テーブルを含む前記ねじ軸と一体的に上下移動する部材の上下方向の位置を検出して位置情報として出力するセンサを備え、
前記制御部は、前記位置情報に基づいて前記第1の駆動系の動作を停止することを特徴とする
1)に記載のプレス機械である。
3) 本体部と、
前記本体部に、軸線方向の移動が禁止されると共に回転自在に支持されたナット部材と、
前記ナット部材に螺合したねじ軸と、
前記ナット部材を回転させる第1の駆動系と、
前記ねじ軸を回転させる第2の駆動系と、
前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ねじ軸を前記本体部に対して前記軸線方向の一方側に移動させる際に、
前記第2の駆動系が、前記ねじ軸を、前記ナット部材に対して前記軸線方向の一方側にねじ送りされる方向に回転させると同時に、前記第1の駆動系が、前記ナット部材を、前記ねじ軸が前記ナット部材に対して前記軸線方向の他方側にねじ送りされる方向に回転させるよう制御し、
前記ねじ軸の前記一方側への移動を停止する際に、
同時に動作している前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系を、前記第2の駆動系の動作を停止した後に前記第1の駆動系の動作を停止するよう制御することを特徴とする軸駆動装置である。
4) 前記ねじ軸又は前記ねじ軸と一体的に上下移動する部材の前記軸線方向の位置を検出して位置情報として出力するセンサを備え、
前記制御部は、前記位置情報に基づいて前記第1の駆動系の動作を停止することを特徴とする
3)に記載の軸駆動装置である。
5) 本体部と、前記本体部に軸線方向の移動が禁止されると共に回転自在に支持されたナット部材と、前記ナット部材に螺合したねじ軸と、前記ナット部材を回転させる第1の駆動系と、前記ねじ軸を回転させる第2の駆動系と、前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系の動作を制御する制御部と、を備えた軸駆動装置における前記ねじ軸を駆動する軸駆動方法であって、
前記ねじ軸を前記軸線方向の一方側に移動させる際に、
前記第2の駆動系の動作により、前記ねじ軸を、前記ナット部材に対して前記軸線方向の一方側にねじ送りされる方向に回転させるねじ軸駆動ステップと、
前記第1の駆動系の動作により、前記ナット部材を、前記ねじ軸が前記ナット部材に対して前記軸線方向の他方側にねじ送りされる方向に回転させるナット部材回転ステップと、
を同時に実行し、
前記ねじ軸の前記一方側への移動を停止する際に、
同時に動作している前記第1の駆動系及び前記第2の駆動系を、前記第2の駆動系の動作を停止した後に前記第1の駆動系の動作を停止することを特徴とする軸駆動方法である。
6) 前記ねじ軸又は前記ねじ軸と一体的に上下移動する部材の前記軸線方向の位置を検出し、前記位置の変化度合いに基づいて前記第1の駆動系の動作を停止させることを特徴とする
5)に記載の軸駆動方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸駆動方法及び軸駆動装置において、ねじ軸を高速移動可能であり、急停止の際のねじ軸の惰走距離が短い、という効果が得られる。
また、軸駆動装置を備えたプレス機械において、テーブルを高速移動可能であり、かつ急停止の際のテーブルの惰走距離が短い、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例であるプレス機械1により
図1〜
図8を参照して説明する。
まず、プレス機械1の構成について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1はプレス機械1の全体構成を説明するための正面図であり、
図2はプレス機械1の構成を示すブロック図である。
【0014】
プレス機械1は、床FLに設置される本体部HTを有している。
本体部HTは、下テーブル2と、下テーブル2に連結されて立設する一対の側板3a,3bと、側板3aと側板3bとを上方部で連結する上ベース4と、側板3aと側板3bとを中央部で連結する中ベース5と、を含んで構成されている。
下テーブル2は、上面にダイDが着脱自在に取り付けられるようになっている。
上ベース4は、ナット部材6を支持している。
具体的には、ナット部材6は、後述するねじ軸10と共にボールねじを構成する部材であり、上ベース4による支持において、軸線CL1を上下方向とする姿勢でその軸線方向の移動が規制されつつベアリング4aを介して回転自在とされている。
【0015】
ナット部材6の上方端側には、プーリ7が一体的に連結されている。
側板3bにおける上方側には、駆動プーリ8aを有するモータ8が取り付けられている。
プーリ7と駆動プーリ8aとには、ベルト9が掛け回されている。
これにより、モータ8の正逆回転に連動してナット部材6は正逆回転するようになっている。
【0016】
ナット部材6には、ねじ軸10が螺合し、両部材によりボールねじが構成されている。
ねじ軸10の上方端部はプーリ7を貫通し、支持軸10aが一体的に連結されている。支持軸10aの上方端部には、プーリ11が一体的に連結されている。
【0017】
一方、側板3aには、モータ支持部MSが設けられている。
モータ支持部MSは、側板3aに連結した支持ブラケット12と、上下方向に延びる姿勢で支持ブラケット12に取り付けられた一対のガイドシャフト12a,12bと、ガイドシャフト12a,12bに上下方向に移動自在に取り付けられた連結バー13と、駆動プーリ14aを有し連結バー13の一端側(
図1の左方側)に一体的に支持されたモータ14と、を有している。
また、連結バー13は、他端側(
図1の右方側)において、ねじ軸10の支持軸10aを回動自在に支持している。また、駆動プーリ14aとプーリ11とには、ベルト15が掛け回されている。
これにより、モータ14の正逆回転に連動してねじ軸10は正逆回転する。
【0018】
ナット部材6は、上べース4によって上下動が規制されているので、ねじ軸10は、回転することでその回転方向に応じてナット部材6に対し上方又は下方に移動する(
図1の矢印DR1)。そして、モータ支持部MSも、ねじ軸10の上下動に連動して一体的に上下動する(矢印DR2)。
【0019】
中ベース5には、上下方向に延びる姿勢で一対のガイドシャフト16a,16bが平行に設けられている。
上テーブル17は、この一対のガイドシャフト16a,16bにより上下動自在に支持されている。
上テーブル17は、下端部にパンチPを着脱自在に取り付けることができるようになっている。
上テーブル17の上方端部とねじ軸10の下端部とにより、上テーブル17とねじ軸10とを連結する連結部18が構成されている。
具体的には、連結部18において、上テーブル17は、ねじ軸10に対し、その回転を許容しつつ一体的に上下動するように連結されている。
【0020】
本体部HTの例えば下テーブル2内には、制御装置CTと、操作部20及び情報出力部21(
図2参照)と、が設けられている。
制御装置CTは、制御部19a及び記憶部19bを備えている。
操作部20は、作業者が、データの入力やこのプレス機械1の操作等を行う際に用いられる。情報出力部21は、作業内容や加工内容等を画面表示や音声によって出力する。
【0021】
本体部HTは、上テーブル17の上下方向の位置を検出する位置センサ22(
図2及び
図3参照)を備えている。位置センサ22は、検出した上テーブルの位置を位置情報J1として含む信号を制御部19aに向け出力する。
【0022】
制御部19aには、
図2に示されるように、外部のサーバGS等から、加工を施すワークの情報,上テーブル17の動作を制御するための情報,及び加工プログラム等を含む加工情報J2が供給される。
制御部19aは、供給された加工情報J2を記憶部19bに記憶させておき、プレス機械1の制御に際し適宜参照する。
制御部19aは、モータ8,モータ14,及び情報出力部21の動作を制御する。
【0023】
上述構成のプレス機械1において、ナット部材6を回転させる駆動系であるモータ8,駆動プーリ8a,ベルト9,及びプーリ7を駆動系Z6と称し、ねじ軸10を回転させる駆動系であるモータ14,駆動プーリ14a,ベルト15,及びプーリ11を駆動系Z10と称することとする。
また、プレス機械1において、駆動系Z6及びナット部材6と、駆動系Z10,モータ支持部MS,ねじ軸10,支持軸10a,及び制御装置CTと、で、軸駆動装置ZKが構成されている。
軸駆動装置ZKの動作は、上述のように制御部19aにより制御される。その際、駆動系Z6と駆動系Z10とは独立して制御される。
【0024】
プレス機械1は、制御部19aの制御の下、軸駆動装置ZKの駆動により、下テーブル2に装着されたダイDに対して上テーブル17に装着されたパンチPを離接し、パンチPとダイDとの間に作業者等により挿入されたワークWに対して曲げ加工を施すようになっている。
【0025】
軸駆動装置ZKにおいて、駆動系Z6の減速比Gaは、駆動系Z10の減速比Gbよりも大きく設定されている。すなわち、各モータ8,14を同じ仕様のものとして同じ回転数で回転させたときに、ナット部材6がねじ軸10よりも低速・高回転トルクで回転するようになっている。
【0026】
制御部19aは、軸駆動装置ZKに、上テーブル17のアプローチ動作と加圧加工動作において以下に説明する動作を実行させる。
特に、アプローチ動作において、第1の動作モード及び第2の動作モードを選択的に実行させる。
第1の動作モードは従来同様のモードであり、第2の動作モードは実施例特有の急停止時の惰走距離が短縮するモードである。
このアプローチ動作と加圧加工動作について、
図3〜
図5を参照して説明する。
図3〜
図5は、
図1に示されたプレス機械1を動作毎に模式的に示した正面図であり、
図1で示されたプレス機械1の正面図に対し、構成部材の一部を省略すると共に記載部材も簡略化してある。
【0027】
<アプローチ動作>
まず、アプローチ動作における第1の動作モード及び第2の動作モードを順次説明する。
(第1の動作モード:
図3参照)
上テーブル17のアプローチ動作において、制御部19aは、駆動系Z10の駆動によりねじ軸10を下方へねじ送りすることで、上テーブル17をナット部材6に対する相対速度である速度V1aで高速下降させる。
また、駆動系Z10のみではなく、駆動系Z10と同時に駆動系Z6も駆動して、ねじ軸10をナット部材6に対して相対速度である速度V1bで下方に送る方向に回転させることで、速度V1aと速度V1bとを合成した速度V1cで上テーブル17を下降させる。
制御部19aは、この第1の動作モードにおける各速度を、例えば次の(式1)及び(式2)の条件下で設定する。
V1c=V1a+V1b ・・・ (式1)
V1b<V1a ・・・ (式2)
【0028】
制御部19aは、第1の動作モードにおいて、駆動系Z6を非駆動とし駆動系Z10のみ駆動させる第1aの動作モードとしてもよい。
この場合の速度V1cは、
V1c=V1a ・・・ (式3)
となる。
【0029】
(第2の動作モード:
図4参照)
上テーブル17のアプローチ動作において、第2の動作モードを選択した場合、制御部19aは、駆動系Z10と駆動系Z6とを以下のように同時駆動させる。
具体的には、駆動系Z10については、モータ8を回転させて、ねじ軸10をナット部材6に対して下方へ移動するようにねじ送りさせる。
このねじ送りによるねじ軸10の移動は、ナット部材6に対する下方への相対高速移動であって、その相対速度は速度V2aである。
一方、駆動系Z6に対しては、モータ14を回転させて、ナット部材6を、ねじ軸10がナット部材6に対して上方に移動する方向に回転させる。この回転によるねじ軸10のナット部材6に対する相対移動の相対速度は速度V2bである。
ここで制御部19aは、駆動系Z10と駆動系Z6とを同時駆動させる際に、ねじ軸10の移動が軸駆動装置ZKの外部(例えば本体部HT)を基準とする絶対位置系において、下方に速度V2cで移動するように速度V2a及び速度V2bを設定する。
すなわち、下方移動を(+)とした場合、絶対位置系におけるねじ軸10の移動は、速度V2cでの移動方向が下方(V2a−V2bが正数)となるよう(式3)のように設定する。
0<V2c=V2a−V2b ・・・ (式3)
【0030】
制御部19aは、アプローチ動作における下降により、上テーブル17が所定の位置に達したことを位置センサ22からの位置情報J1で把握したら、次に加圧加工動作を実行する。
【0031】
<加圧加工動作:
図5参照>
上テーブル17の加圧加工動作では、制御部19aは、駆動系Z10を停止し、駆動系Z6のみの駆動によりナット部材6を回転させてねじ軸10をねじ送りして下方へ速度V1dで移動させる。すなわち、上テーブル17を低速下降移動させつつ高い加圧トルクが得られるように制御する。
【0032】
制御部19aは、軸駆動装置ZKを、加圧加工動作の実行後、リターン動作を実行するよう制御する。
<リターン動作>
加圧加工動作による曲げ加工が実施され、上テーブル17が下死点に達したら、制御部19aは、駆動系Z6及び駆動系Z10に対し、モータ8及びモータ14の回転方向を第1の動作モードでの方向とは反対の方向に回転させてリターン動作を実行させる。これにより、上テーブル17は、上方に向け高速で移動する。上テーブル17が上死点に相当する待機位置に達したら、次の加工指示があるまで停止状態で待機させる。
【0033】
上述のアプローチ動作から加圧加工動作を経てリターン動作に至る一連の加工動作を実行するプレス機械1は、
図1及び
図2に示されるように、安全装置ASを備えている。
この安全装置ASは、いわゆる光線式安全装置であり、側板3a,3bにそれぞれ設けられた一対の送受光部ASa,ASbと、それらとは別体のコントローラAScと、を有して構成されている。
一対の送受光部ASa,ASbは、両送受光部間に略スクリーン状に光を投光するものである。プレス機械1における一対の送受光部ASa,ASbは、両者間のスクリーン状の光が、下テーブル2及び上テーブル17の移動範囲を含む加工エリアの前方側を覆うように設けられている。
【0034】
作業者の一部(服や指等)が加工エリア内に進入すると、スクリーン状の光の一部が遮られてその進入が検知される。
コントローラAScは、進入を検知したら進入検知情報J3を含む信号を制御部19aに向け出力する。
制御部19aは、進入検知情報J3が入来したら、安全確保のため、警告モードの動作を実行する。
【0035】
警告モードの動作は、プレス機械1に移動中の部位があればその移動を直ちに停止させる緊急停止動作、情報出力部21からアラーム音声の出力又はアラーム画像の表示を行うアラーム出力動作、等である。例えば、上テーブル17がアプローチ動作での高速下降中であれば、直ちに下降を停止させる。
【0036】
制御部19aは、第2の動作モードを実行中に進入検知情報J3が入来した場合、警告モードの動作として駆動系Z6と駆動系Z10とに対し、次に説明する緊急停止動作を実行するよう停止指令を出す。この緊急停止動作によって上テーブル17の下降移動が停止する。説明は
図6〜
図8を主に参照する。
【0037】
図6は、アプローチ動作の第2の動作モード実行途中で加工エリア内に手が進入して時間T2に緊急停止動作を実行した場合の動作シーケンス図である。また、
図6には、上テーブル17のアプローチ動作及び緊急停止動作における上下方向位置が推移TS1として示されている。
図7は、
図6における時間T2と時間T3との間におけるプレス機械1の動作状態を説明するための模式図であり、
図3〜
図5と対比可能である。
図8は、
図6におけるDT部の詳細図である。
【0038】
<A1:待機ステップ(時間T1迄)>
上テーブル17は、昇降ストロークの上方の待機位置で停止している。
この状態は、操作部20又は外部から加工指示がまだされていない状態であり、制御部19aは、駆動系Z6のモータ8及び駆動系Z10のモータ14を停止させる停止指令を、待機停止指令としてONの状態で維持する。
【0039】
<A2:アプローチ動作ステップ(時間T1〜時間T2)>
時間T1で、操作部20又は外部から加工指示が入来すると、制御部19aは、停止指令をOFFにすると共に下降動作指令をONにし、駆動系Z6及び駆動系Z10に対し、第2の動作モードでのアプローチ動作の実行を指示する。
具体的には、駆動系Z6に対しては、モータ8を、ねじ軸10がナット部材6に対して相対速度である速度V2bで上昇する方向にそのナット部材6を回転させる指示を出し、駆動系Z10に対しては、モータ14を、ねじ軸10がナット部材6に対して速度V2bよりも速い相対速度である速度V2aで下降するようにそのねじ軸10を回転させる指示を出す。
ねじ軸10の下降の速度V2cは、(式3)で示される。
これにより、ねじ軸10及びねじ軸10に連結された上テーブル17は、速度V2c(=V2a−V2b)で下降する。
【0040】
<A3:第1停止指令ステップ(時間T2)>
時間T2において進入検知情報J3が制御部19aに入来すると、制御部19aは、下降動作指令をOFFにすると共に緊急停止指令をONにする。具体的には、駆動系Z10のモータ14を停止させる一方、駆動系Z6のモータ8の回転は継続維持させる。
【0041】
<A4:第1惰走ステップ(時間T2〜時間T3)>
時間T2における制御部19aの指令によりモータ14が停止しても、ねじ軸10は、その慣性に回転が継続し、上テーブル17と共に惰性で下方に向け移動する。
一方で、モータ8の回転は継続しているため、ナット部材6は回転が継続し、ねじ軸10がナット部材6に対して上方に相対速度である速度V3dで移動する。
このときのモータ8の回転速度は、ねじ軸10の速度V3dを速度V2bと等しくする速度に限らず、異なるものとする速度であってもよい。
【0042】
図8には、時間T2以降において、ナット部材6の回転が継続せずにモータ14と共に停止した場合の、上テーブル17の位置の推移TS2が破線で併記されている。この推移TS2は従来のプレス機械における上テーブルの惰走に相当する。
【0043】
図8において、モータ8の回転を停止した場合の惰走距離(従来の惰走距離)は、破線の推移TS2に示されるように、ねじ軸10を上方に移動させない状態の位置P2から惰走最下点の位置P5までの距離となる。
一方、実施例のプレス機械1では、実線の推移TS1に示されるように、ねじ軸10の下方への惰性による移動速度、すなわち上テーブル17の下方への惰性による移動速度は、時間T2(位置P2)を過ぎると、モータ8の回転によるねじ軸10の上方への移動速度を減じたものとなるため速やかに低下し、時間T3で0(ゼロ)(位置P3)となる。
これにより、惰走開始から時間T3で速度0(ゼロ)となるまでの惰走距離が、位置P2から、従来の惰走最下点の位置P5よりも位置P2に近い惰走最下点の位置P3までの間の距離ΔPとなり、惰走距離が短縮される。
【0044】
<A5:第2停止指令ステップ(時間T3)>
位置センサ22からの位置情報J1の推移に基づき、制御部19aは、上テーブル17の速度を算出してその下降を監視する。
上テーブル17の下降速度が0(ゼロ)になって下降が上昇に転じる時間T3において、制御部19aは、駆動系Z6のモータ8を停止させる。
【0045】
<A6:第2惰走ステップ(時間T3〜時間T4)>
時間T3における制御部19aの指令でモータ8が停止すると、ねじ軸10は慣性により回転が継続し、上テーブル17と共に上方に向け惰性的に移動する。
この惰性による移動の速度は、(式3)の関係から、第1惰走ステップの移動速度よりも低速であり惰性距離も短い。
従って、上テーブル17は、位置P3と位置P2との間の位置P4で時間T4にて停止する。
制御部19aは、位置センサ22からの位置情報J1により、上テーブル17の移動が停止したことを把握し、緊急停止指令におけるモータ8及びモータ14の停止状態をそのまま維持する。
【0046】
上述から明らかなように、プレス機械1は、従来のプレス機械と同様に上テーブル17を高速移動可能でありながら、急停止の際の上テーブル17の惰走距離を、従来のプレス機械の惰走距離よりも距離ΔPだけ短くすることができる。
また、惰走距離は、時間T2以降のナット部材6の回転速度が速い程短縮する。
そこで、制御部19aは、時間T2以前のナット部材6の回転速度よりも時間T2以降のナット部材6の回転速度を速くするように駆動系Z6を制御してもよい。
【0047】
また、第2の動作モードは、モータ8とモータ14との二つのモータを同時駆動するため、一つのモータのみ駆動する第1の動作モードよりも電力消費が大きくなる場合がある。
そこで、アプローチ動作の時間短縮よりも消費電力低減を特に優先する状況下においては、制御部19aは、アプローチ動作における上テーブル17の位置に応じて、モータ8の回転数を変えてもよい。
具体例としては、上テーブル17が上方にあるアプローチ動作の初期の段階においては、パンチPとダイDとの間の距離が大きいため、ある程度の惰走距離を許容するものとしてモータ8を停止する又は低速で回転させるものとする。そして、アプローチ動作が進行するに従って、停止していたモータ8を駆動する又は回転速度を大きくする、などの制御をする。
【0048】
また、軸駆動装置ZKは、ねじ軸10を高速移動可能でありながら、急停止の際のねじ軸10の惰走距離をより短縮することができる。
惰走距離は、時間T2以降のナット部材6の回転速度が速い程短縮する。
そこで、制御部19aは、時間T2以前のナット部材6の回転速度よりも時間T2以降のナット部材6の回転速度を速くするように駆動系Z6を制御してもよい。
【0049】
また、モータ8とモータ14との二つのモータを同時駆動させる第2の動作モードに相当する動作を実行すると、一つのモータのみ駆動するモードよりも電力消費が大きくなる場合がある。
そこで、消費電力低減を優先する状況下においては、制御部19aは、ねじ軸10やねじ軸10に連結された部材の移動における、軸線CL1方向の位置に応じて、モータ8の回転数を変えてもよい。
具体例としては、ねじ軸10が移動ストロークの一方端側にある移動初期の段階においてある程度の惰走距離が許容される場合、モータ8を停止する又は低速で回転させるものとする。そして、ねじ軸10の他方端側への移動に従って、停止していたモータ8を駆動する又は回転速度を大きくする、などの制御をする。
【0050】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において別の変形例としてもよい。
【0051】
第2の動作モードにおける、駆動系Z6の駆動によるねじ軸10の速度V2bは、プレス機械1の仕様に応じて任意に設定してよい。
具体的には、アプローチ動作における上テーブル17の下降速度,アプローチ動作時間,安全装置の形態,及び消費電力によって最適となるよう設定する。
【0052】
アプローチ動作において、第1の動作モードを実行するか、第2の動作モードを実行するかを、制御部19aが判断し自律的に設定してもよい。
例えば、ワークWの搬入搬出等の作業に人が全く拘わらず、ロボットのみで行われる場合には、第1の動作モードを実行し、次の加工作業で人が拘わることが操作部20からの入力や加工情報J2により把握されたら、第2の動作モードを実行する、等である。
【0053】
制御部19a,操作部20,及び情報出力部21は、いずれかが本体部HTとは別体に設けられていてもよい。
緊急停止動作は、安全装置ASのコントローラAScから供給される進入検知情報J3をトリガーとするものに限定されない。他の安全装置や、サーバGS等の外部機器からの信号により実行されてもよい。
位置センサ22は、上テーブル17の上下方向位置を検出するものに限定されない。ねじ軸10や、ねじ軸10と一体的にその軸線方向に移動する駆動系Z10の部材及び連結バー13のいずれかの部材の軸線方向位置を検出するものであってもよい。
軸駆動装置ZKは、プレス機械1への適用に限定されるものではなく、種々の機械に適用することができる。