特許第6063752号(P6063752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063752
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】埋め立て方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   E02D3/10 103
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-5653(P2013-5653)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136896(P2014-136896A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】北本 幸義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】▲からさき▼ 和孝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 京太郎
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭42−015273(JP,B1)
【文献】 特開平11−323897(JP,A)
【文献】 特開昭56−041913(JP,A)
【文献】 特開昭62−225619(JP,A)
【文献】 特開昭55−122914(JP,A)
【文献】 特開2001−271336(JP,A)
【文献】 特開2005−139667(JP,A)
【文献】 特開平05−093417(JP,A)
【文献】 実開昭54−162113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00〜 3/115
E02D 17/00〜 17/20
E02B 3/04〜 3/14
D03D 1/00〜 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め立て予定地に、ドレーン材を有する事前設置ドレーンを設置する工程(a)と、
前記埋め立て予定地に埋め立て土を投入し、前記ドレーン材からの排水を行いつつ、埋め立て地盤を形成する工程(b)と、
前記事前設置ドレーンを用いて、埋め立て地盤の補強を行う工程(c)と、
を具備し、
前記事前設置ドレーンは、剛性を有する浮体を更に有し、
前記ドレーン材は、前記浮体の下方向に巻出し可能に前記浮体に連結され、
前記工程(a)では、前記ドレーン材の下端を前記埋め立て予定地の底に設置し、
前記工程(b)では、前記埋め立て土の投入に伴って、前記埋め立て土の表面に前記浮体が位置した状態で前記ドレーン材が巻き出されて前記埋め立て土中に伸長することを特徴とする埋め立て方法。
【請求項2】
記工程(c)において、前記浮体を用いて地盤の表層補強を行うことを特徴とする請求項1記載の埋め立て方法。
【請求項3】
前記ドレーン材は、スライド機構を介して前記浮体に連結され、前記浮体に対して上下方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の埋め立て方法。
【請求項4】
前記浮体は、格子状枠であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の埋め立て方法。
【請求項5】
前記工程(a)では、前記浮体が仮支え材により所定の高さに支持されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の埋め立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の埋め立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土などの超軟弱土で造成された埋立て地盤上に建設を行う場合には、地盤の安定性が問題となるため、地盤の改良が必要となる。地盤の改良方法として、例えば、人工的な排水層を設けて圧密促進を図るものがある。透水係数の小さい粘性土では、層厚が大きくなると圧密に要する時間が長くなることから、軟弱粘性土中にサンドドレーンに代表されるバーチカルドレーンを地表から鉛直方向に多数打設して、排水距離の短縮を図って圧密を促進させている。
【0003】
ドレーンを多数打設すると、工期が長くなる。そこで、多数のドレーンを一度に設置することを目的として、複数のドレーン材をこれと交差する方向の線状体で連結し、ドレーン材を折り畳んだ状態で下部を埋立地の底に定置させ、上部を浮体を用いて埋立地内の水や軟弱土の上面に浮上させて、ドレーン材を伸展させる方法が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−323897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような地盤では、より効率良く地盤改良を行うことが求められている。例えば軟弱な粘性土地盤にバーチカルドレーンを打設する場合、重機の進入や地盤造成のための足場確保などを目的として、バーチカルドレーン打設に先立って仮設的な表層改良が必要であった。また、表層上に土砂を撒出したりする際にも、土砂の荷重あるいは撒出し機械の重量によって地盤が破壊して陥没したり軟弱土と混合したりしないよう細心の注意が必要であり、施工に困難を要していた。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、効率良く埋め立て地の地盤改良を行うことが可能な埋め立て方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、埋め立て予定地に、ドレーン材を有する事前設置ドレーンを設置する工程(a)と、前記埋め立て予定地に埋め立て土を投入し、前記ドレーン材からの排水を行いつつ、埋め立て地盤を形成する工程(b)と、前記事前設置ドレーンを用いて、埋め立て地盤の補強を行う工程(c)と、を具備し、前記事前設置ドレーンは、剛性を有する浮体を更に有し、前記ドレーン材は、前記浮体の下方向に巻出し可能に前記浮体に連結され、前記工程(a)では、前記ドレーン材の下端を前記埋め立て予定地の底に設置し、前記工程(b)では、前記埋め立て土の投入に伴って、前記埋め立て土の表面に前記浮体が位置した状態で前記ドレーン材が巻き出されて前記埋め立て土中に伸長することを特徴とする埋め立て方法である。
【0008】
埋め立て予定地にドレーン材を有する事前設置ドレーンを設置した後、埋め立て土を投入することにより、埋め立て地盤の造成中に排水を行い超軟弱粘土などの埋め立て土の自重圧密を促進させることができる。したがって、造成が終了した時点で、軟弱地盤の自重圧密がかなり進行して地盤の安定性が向上する。また、事前設置ドレーンを補強材に転用することにより、埋め立て地盤を容易に補強できる。その後に載荷等で圧密が生じる場合でも、既にドレーンが打設されている状態にあるので、圧密促進に対しても効率的である。本発明では、上記のようにして埋め立て予定地内に事前設置ドレーンを設置し、埋め立てに伴ってドレーン材を伸展させることができる。また、浮体にドレーン材を取付けるとともに、ドレーン材の下端の設置位置を定めることで、ドレーン材の離隔管理が好適に行える。
【0009】
記工程(c)において、前記浮体を用いて地盤の表層補強を行うことが望ましい。
事前設置ドレーンの一部である浮体を用いて地盤の表層補強を行うことにより、表層補強の施工性を大きく改善することが可能である
【0010】
前記ドレーン材は、スライド機構を介して前記浮体に連結され、前記浮体に対して上下方向にスライド可能であることが望ましい。
スライド機構を設けることにより、波等により浮体が揺れた場合に、ドレーン材に負担がかかることを防ぐことができる。また、埋め立て土の自重圧密による沈下に伴ってドレーン材に作用する張力を緩和することもできる。
【0011】
前記浮体は、例えば格子状枠とすることが望ましい。
格子状枠とすることにより、剛性を確保しつつ軽量とでき、施工性が高まる。
【0015】
前記工程(a)では、前記浮体が仮支え材により所定の高さに支持されることが望ましい。
これにより、埋め立て予定地に初期に投入された埋め立て土が浮体を押し上げる形となり、浮体を確実に上昇させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、効率良く埋め立て地の地盤改良を行うことが可能な埋め立て方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】事前設置ドレーン1を示す図
図2】埋め立て方法を示す図
図3】埋め立て地盤18の補強を示す図
図4】浮体3を水中に浮遊させた例を示す図
図5】事前設置ドレーン33を示す図
図6】埋め立て方法を示す図
図7】埋め立て地盤44の補強を示す図
図8】事前設置ドレーン59を示す図
図9】埋め立て方法を示す図
図10】埋め立て方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
(1.事前設置ドレーン1の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る事前設置ドレーン1を示す図である。図1に示すように、事前設置ドレーン1は、浮体3、鉛直方向ドレーン材5、錘11、スライド機構13、チェーン15等からなる。
【0022】
浮体3は、例えば、竹等の木材類やプラスチック材を縦横に組んだ格子枠状の部材である。ただし、浮体3は、比重が小さく水に浮き、十分な剛性を有するものであれば、これに限らない。
【0023】
鉛直方向ドレーン材5は、埋め立て土の排水を行うための部材であり、例えば既知のバーチカルドレーンなどを用いることができる。鉛直方向ドレーン材5の上端7付近は、スライド機構13を介して浮体3の格子の交点に連結され、隣り合う鉛直方向ドレーン材5の上端同士の間隔が所定の値に保たれる。この間隔は、期待する圧密促進効果に応じて定められ、例えば2〜6m程度とする。
【0024】
鉛直方向ドレーン材5の上端7は、スライド機構13により、浮体3に対して上下方向にスライド可能である。鉛直方向ドレーン材5は、スライド機構13の上方に、想定される沈下量に応じてある程度の余長を確保しておく。
【0025】
錘11は、鉛直方向ドレーン材5の下端9に設けられる。錘11は、十分な重量を有する鉄筋棒等の棒材とし、複数の鉛直方向ドレーン材5の下端9を所定間隔で取り付け、隣り合う鉛直方向ドレーン材5の下端9間の間隔を、前記の上端7間の間隔に合わせて確保する。
【0026】
ただし、錘11は棒材に限らない。例えば前記の浮体3と同様の格子枠状のものであってもよい。この場合は、各鉛直方向ドレーン材5の下端9を格子の交点に取り付けることで、隣り合う鉛直方向ドレーン材5の下端9同士の間隔が、前記の上端7間の間隔に合わせて確保される。
【0027】
チェーン15は、浮体3と錘11とを接続する接続材である。チェーン15によって浮体3と錘11を接続することで、浮体3の移動が限定でき、浮体3の移動によって鉛直方向ドレーン材5に過度な張力がかかったり、鉛直方向ドレーン材5が浮体3あるいは錘11から外れるのを防ぐ。なお、チェーン15に代えてその他の接続材を用いることも可能である。
【0028】
(2.埋め立て方法)
次に、この事前設置ドレーン1を用いた埋め立て方法について、図2図3を参照して説明する。ここでは、周囲に堤体等が構築されており内部に水が溜まった状態にある埋め立て予定地にて、水中埋め立てを行う例について説明する。なお、図2図3ではチェーン15の図示を省略している。
【0029】
本実施形態では、まず図2(a)に示すように、事前設置ドレーン1を運搬し、水面21に浮体3を浮遊させた状態で錘11を水底の地盤19上に沈設し、鉛直方向ドレーン材5を水中に懸垂させた状態で埋め立て予定地17に事前設置ドレーン1を設置する。前記した通り、隣り合う鉛直方向ドレーン材5同士の間隔は、浮体3および錘11により保たれる。
【0030】
なお、事前設置ドレーン1は、後工程を考慮し、埋め立て予定地17の全域で配置するのが望ましい。このため、例えば事前設置ドレーン1は施工性のよい適当な大きさを1単位とし、浮体3を平面的に並置・結合して拡大することができる。但し、埋め立て土の運搬を土運船によらざるをえないなど、施工条件の制約を受ける場合には、部分的な配置も考えられる。
【0031】
次いで、図2(b)に示すように、埋め立て予定地17に埋め立て土25を投入してゆき、図2(c)に示すように所定高さまで埋め立て土25を投入して埋め立て地盤18を形成する。
【0032】
埋め立て土25は、例えば浚渫土砂などの超軟弱粘土であり、排砂管などを用いて投入できる。この際、予め設置した鉛直方向ドレーン材5から排水が行われ、埋め立て土25の自重圧密が促進される。なお、鉛直方向ドレーン材5からの排水は、鉛直方向ドレーン材5にポンプ等を取付けて強制的に行うことも可能である。また、排水に伴い埋め立て土25の上方の水量が多くなるので、必要に応じて別の箇所へ排出するようにしておく。
【0033】
本実施形態では、水面21の波浪等による浮体3の移動、埋め立て土25の自重圧密による沈下、あるいは水面21の上昇などの要因により、鉛直方向ドレーン材5に張力が作用する場合がある。しかし、事前設置ドレーン1には、前記のようにチェーン15(図1参照)を設けているので、浮体3と錘11の距離が一定内に保たれ、鉛直方向ドレーン材5に過度な負担が生じるのを防ぐことができる。また、スライド機構13(図1参照)により、浮体3に対し鉛直方向ドレーン材5が上下方向にスライドすることによっても、張力は緩和され、鉛直方向ドレーン材5の破断等を防ぐことができる。
【0034】
なお、鉛直方向ドレーン材5は、スライド機構13の上方に余裕長を見込んであるが、それでも上端7が抜け落ちる恐れがある。そこで、スライド機構13には、鉛直方向ドレーン材5を適度な把持力で把持して鉛直方向ドレーン材5の抜け落ちを防ぐ把持機構を備えてもよい。
【0035】
以上のようにして埋め立て地盤18を形成すると、最後に、図3に示すように埋め立て地盤18の補強を行うことも可能である。
【0036】
ここでは、浮体3の下方で、埋め立て土25との間にシート27を敷設する。シート27は、例えば透水性の一般的な土木シートである。浮体3により埋め立て地盤18のさらなる表層補強効果が発揮され、浮体3上に覆土29を安全かつ確実に施工することができる。なおシート27は浮体3の上に配置してもよい。
【0037】
このように、第1の実施形態では、埋め立て予定地17に事前設置ドレーン1を設置した後、埋め立て土25を投入することにより、埋め立て施工中の排水距離が短縮され、埋め立て地盤18の造成中に埋め立て土25の自重圧密を促進させることができる。したがって、造成が終了した時点で、埋め立て土25の自重圧密がかなり進行し、埋め立て地盤18の安定性が向上する。また、剛性を有する浮体3の下にシート27を敷設して表層補強を行うことができ、浮体3上に覆土29を安全かつ確実に施工できる。以上により、水中埋め立て時に簡易に埋め立て地盤18の補強が行える。その後に載荷等で圧密が生じる場合でも、既にドレーンが打設されている状態にあるので、圧密促進に対しても効率的である。
【0038】
また、水面21に浮体3を浮遊させ、鉛直方向ドレーン材5の下端9に設けた錘11を埋め立て予定地17の水底に配置することにより、水が溜まっている埋め立て予定地17内に鉛直方向ドレーン材5を懸垂させて事前設置ドレーン1を好適に設置することができる。
【0039】
さらに、鉛直方向ドレーン材5を浮体3や錘11に所定間隔で取り付けることで、鉛直方向ドレーン材5間の離隔管理が好適に行える。
【0040】
なお、第1の実施形態では、浮体3を水面21に浮遊させたが、浮体3の位置はこれに限らない。図4は、浮体3を水中に浮遊させた例を示す図である。埋め立て予定地17への浚渫土砂の運搬を排砂管ではなく土運船によらざるをえないなど、施工条件の制約を受ける場合、図4に示すように、浮体3の位置を水面21から下げてもよい。浮体3の位置は、例えばチェーン15(図1参照)の長さなどにより定めることができる。浮体3を水中に配置して土運船の喫水線を確保することができれば、施工条件の制約を受ける場合でも、事前設置ドレーン1を埋め立て予定地17の全域に配置することが可能となる。
【0041】
また、第1の実施形態では、格子枠状の浮体3を用いたが、浮体3の形状はこれに限らない。例えば板状のものであってもよい。ただし格子枠状にすると軽量となり施工性が高まる効果がある。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なる点について主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0043】
(1.事前設置ドレーン33の構成)
図5は、第2の実施形態に係る事前設置ドレーン33を示す図である。図5に示すように、事前設置ドレーン33は、浮体3、鉛直方向ドレーン材5、錘11、スライド機構13等を有する。また、本実施形態では、鉛直方向ドレーン材5が、図のロール状部分39に示すように、スライド機構13の上方で巻かれた状態である。このロール状部分39は、浮体3の下方向に巻出し可能である。
【0044】
(2.埋め立て地盤の改良方法)
次に、この事前設置ドレーン33を用いた埋め立て方法について説明する。本実施形態では、気中埋め立てを行う例について説明する。
【0045】
本実施形態では、まず図6(a)に示すように、気中の埋め立て予定地43の底の地盤45に、事前設置ドレーン33を設置する。
【0046】
この際、埋め立て予定地43の地盤45上に錘11を配置する。錘11は、固定具を用いて地盤45に固定することも可能である。そして、仮支え材49を用いて、地盤45から所定の高さに浮体3を支持する。
【0047】
次いで、図6(b)に示すように、埋め立て予定地43に高含水状態の埋め立て土25を投入してゆく。これとともに、浮体3は埋め立て土25の上面に位置した状態で上昇する。本実施形態では、予め浮体3を地盤45からある程度の高さに配置するので、埋め立て予定地43に初期に投入された埋め立て土25が浮体3を押し上げる形となり、浮体3を確実に上昇させることができる。
【0048】
浮体3の上昇に伴い、鉛直方向ドレーン材5がロール状部分39から浮体3の下方に巻き出されて、埋め立て土25中に伸展する。前記と同様、鉛直方向ドレーン材5は、埋め立て土25中の排水を促し、自重圧密を促進する。
【0049】
なお、必要に応じてウィンチなどを補助的に用いて浮体3を上昇させることも可能である。また浮体3の上に鉄板等の板材を設け、脱水設備や重機等必要な設備を配置させることも可能である。
【0050】
こうして図6(c)に示すように所定の高さまで埋め立て土25を投入して埋め立て地盤44を形成すると、最後に、図7に示すように埋め立て地盤44の補強を行うこともできる。本実施形態においても、前記と同様に、浮体3の下方で、埋め立て土25との間にシート27を敷設すれば、浮体3により埋め立て地盤44の表層補強ができ、浮体3上に覆土29を安全かつ確実に施工することができる。
【0051】
このように、第2の実施形態でも、気中の埋め立て予定地43に事前設置ドレーン33を設置して埋め立てを行うことで、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0053】
(1.事前設置ドレーン59の構成)
図8は、第3の実施形態に係る事前設置ドレーン59を示す図である。図8に示すように、事前設置ドレーン59は、ドレーン材61、補強材63等からなる。
【0054】
ドレーン材61は、筒状織布を用いて形成された立体格子状の袋体である。このような袋体としては、例えば特許第4115922号に記載のものを適用することができる。
【0055】
ドレーン材61は、水平方向ドレーン材61a、鉛直方向ドレーン材61bから構成される。水平方向ドレーン材61aの内部と鉛直方向ドレーン材61bの内部は連通している。
【0056】
補強材63は例えば鉄筋棒であり、鉛直方向に配置してドレーン材61の立体形状を保持する。補強材63は、例えばドレーン材61の平面隅部の鉛直方向ドレーン材61bに沿って配置し、この鉛直方向ドレーン材61bに取り付ける。
【0057】
(2.埋め立て方法)
次に、この事前設置ドレーン59を用いた埋め立て方法について図9図10を参照して説明する。本実施形態では、水中埋め立てを行う例を説明する。なお、図9図10では補強材63の図示を省略している。
【0058】
本実施形態では、まず図9(a)に示すように、水が溜まっている埋め立て予定地65に事前設置ドレーン59を設置する。事前設置ドレーン59は、例えば補強材63(図8参照)の下端に錘(不図示)を設け、埋め立て予定地65の底の地盤67上に沈設することにより設置できる。
【0059】
次いで、図9(b)に示すように、埋め立て予定地65に、埋め立て土25を事前設置ドレーン59の高さ程度まで投入してゆく。この際も、ドレーン材61からの排水により、埋め立て土25の自重圧密が促進される。
【0060】
このように所定高さまで埋め立て土25を投入して埋め立て地盤66を形成すると、図9(c)に示すように、最後に埋め立て地盤66の補強を行うこともできる。
【0061】
ここでは、ドレーン材61である立体格子状の袋体の内部にモルタル等の充填材81を注入・充填して、埋め立て地盤66を立体的に補強する。さらに、事前設置ドレーン59の上面の水平方向ドレーン材61a(図8参照)の上方にシート27を敷設すれば埋め立て地盤66の表層補強を行うことができ、シート27上に覆土29を安全かつ確実に施工することができる。
【0062】
なお、必要に応じて、ドレーン材61である袋体に、埋め立て時の土圧等により筒形状が潰れないように保形するための補強材を設けることも可能である。これによって、充填材81の注入を円滑に行える。
【0063】
なお、水深と事前設置ドレーン59の自立高さとの関係から、水深が深い場合には、図10(a)、(b)に示すように前記と同様の手順により事前設置ドレーン59を設置してその高さ程度まで埋め立て土25を投入した後、図10(c)に示すように、最初に配置した事前設置ドレーン59の上に、次の事前設置ドレーン59を設置する。
【0064】
この際、まず、最初に配置した事前設置ドレーン59の上面の水平方向ドレーン材61aの上方にシート77を敷設する。シート77としては、例えば透水性を有する土木シートを用い、埋め立て済みの埋め立て土25と、後ほど投入する埋め立て土25との排水の連続性を保つようにしておく。
【0065】
その後、この事前設置ドレーン59の上に、次の事前設置ドレーン59を設置する。この際、シート77を介して排水の連続性は保たれるが、両事前設置ドレーン59の鉛直方向ドレーン材61b同士は、内部が連通するように、ソケット(不図示)などによって上下に連結することもできる。
【0066】
なお、事前設置ドレーン59として、予め上面の水平方向ドレーン材61aの上または下にシート77を取付けたものを用いてもよい。
【0067】
このようにして次の事前設置ドレーン59を設置すると、続いて先程と同様に埋め立て土25を投入し、図10(d)に示すように所定高さまで埋め立て土25を投入して埋め立て地盤66を形成する。最後に、埋め立て地盤66の補強を図に示すように前記と同様にして行うこともできる。
【0068】
このように、第3の実施形態でも、埋め立て予定地65に事前設置ドレーン59を設置して埋め立てを行うことで、第1、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、埋め立て地盤66の形成後にドレーン材61である立体格子状の袋体内に充填材81を充填することにより、埋め立て地盤66を立体的に補強することができる。
【0069】
なお、第3の実施形態では、水中埋め立ての例を説明したが、これに限らず、事前設置ドレーン59を気中の埋め立て予定地に設置し、上記と同様の手順で埋め立て地盤を形成することも可能である。
【0070】
また、第3の実施形態では、事前設置ドレーン59を1段あるいは2段に配置したが、事前設置ドレーン59の設置段数はこれに限らない。事前設置ドレーン59の設置段数は、埋め立て地盤の厚さなどを考慮して設定することができる。
【0071】
また、事前設置ドレーン59では、補強材63を隅部の鉛直方向ドレーン材61bに沿って設置したが、その配置はこれに限ることはない。さらに、事前設置ドレーン59の袋体自らの浮力あるいは剛性により立体格子を維持できる場合には補強材63を省略することも考えられる。また、第1の実施形態のように浮体3から事前設置ドレーン59を懸垂させたり、第2の実施形態のように、浮体3を用いて、埋め立てとともに立体格子を伸展させることも可能である。
【0072】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
1、33、59………事前設置ドレーン
3………浮体
5、61b………鉛直方向ドレーン材
11………錘
13………スライド機構
15………チェーン
17、43、65………埋め立て予定地
18、44、66………埋め立て地盤
19、45、67………地盤
21………水面
25………埋め立て土
27、77………シート
29………覆土
39………ロール状部分
81………充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10