【0026】
ここで、本発明が大きな効果を発揮するのが、とろみ成分によりスープにとろみを付けた場合である。
とろみ成分としては、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、カラギーナン等のガム類ないし増粘多糖類や澱粉、デキストリンなど、一般に増粘剤、安定剤、ゲル化剤などと称される種々のものを使用することができる。
このうち、とろみ成分がキサンタンガムである場合に本発明は特に大きな効果を発揮する。とろみ成分がキサンタンガムである場合、十分なとろみを付与できるものの、他方で舌にまとわりつくような不快感が現れるが、かき卵スープに梅肉を配合することにより、かかる不快感をなくして、喫食時のかき卵スープの粘度を自然で適正なものにすることができる。
上記に例示したとろみ成分は、一種類に限らず、複数のものを併用してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について、実施例及び比較例に基づいて説明する。
【0028】
還元水あめ及びデキストリン(商品名:アミコールTP)を水に溶いた糖液をニーダーで約97℃程度まで加熱し、そこに、生卵を割卵した卵液を投入して、かき卵を生成した。かき卵生成後の液温は約93℃であった。
次いで、そこに、チキンエキス、ポークエキス、ホタテエキス、オニオンエキス、砂糖、食塩、おろし生姜、香辛料等の調味と、キサンタンガム(商品名:エコーガムF)と、ねり梅とを加えて混合した。このねり梅は、梅干の果肉部分をペースト状にすり潰したもので、それをさらにざるで篩過して、1.5〜2.0mm程度の大きさに整えておいたものを使用した(以下、これを単に「ねり梅」という)。
その後、75〜80℃程度までスープ原料を冷却し、冷却が終わったら、しらす、キャベツ等の具材とともに、梅干の果肉部分を適度な大きさに刻んだもの(以下「粗梅肉」という)を加えて、さらに撹拌混合した。
このようにして出来上がったスープ原料(凍結乾燥前のかき卵スープ)を充填機で個食トレーに分注し、これをトレーごと冷凍庫で予備凍結させた。そして、予備凍結終了後、常法により減圧下で凍結乾燥させて、ブロック状に成形された凍結乾燥かき卵スープを得た。
このようにして得られたブロック状の凍結乾燥かき卵スープ一食分において、下記のように材料の配合量を変えて実施例1〜4及び比較例1〜3を調製した。
【0029】
(実施例1〜4)
上記ブロック状の凍結乾燥かき卵スープ一食分において、使用した「ねり梅」及び「粗梅肉」の配合量を表1に示すように変えて実施例1〜4とした。
実施例1〜4における凍結乾燥前後の重量、つまり分注時の一食分の重量と凍結乾燥後の一ブロックの重量は、それぞれ、66.500g/食(9.850g/食)、68.000g/食(10.833g/食)、68.700g/食(11.000g/食)、70.200g/食(11.983g/食)であった(カッコ内は凍結乾燥後の重量を表す)。実施例1〜4の重量が若干異なるのは梅肉の配合量が変化したためである。
【0030】
なお、表1中、「梅肉配合量(g/食)」という欄は、凍結乾燥前のかき卵スープ一食分に含まれる「ねり梅」、「粗梅肉」及びその合計の配合量(水分も含む)を示すものである。例えば実施例1に基づいてこの点を説明すると、実施例1には、凍結乾燥前のかき卵スープ一食当たり「ねり梅」(水分を含む)を0.7g、「粗梅肉」(水分を含む)を0.0g、したがって梅肉(水分を含む)は合計0.7g配合したことを意味する。
また、表1中の「ブロック中に占める梅肉の割合」という欄は、凍結乾燥後の製品一ブロックに占める梅肉(ねり梅と粗梅肉の合計)の固形分の割合(%)を示しており、例えば実施例1に基づいてこの点を説明すると、実施例1には、凍結乾燥後の製品一ブロック当たり梅肉(ねり梅と粗梅肉の合計)が固形分換算で2.32%含まれていることを意味する。なお、今回使用した「ねり梅」及び「粗梅肉」中の固形分と水分との割合は、それぞれ、「ねり梅」については固形分32.60%(水分67.40%)、「粗梅肉」については固形分93.20%(水分6.80%)であった。
さらに、表1中、「キサンタンガムの配合量(g/食)」という欄は、凍結乾燥前のかき卵スープ一食当たりのキサンタンガム配合量(g/食)を示しており、実施例1〜4についてはすべて0.06g/食であった。
また、表1には明示されていないが、実施例1〜4に使用したデキストリン(商品名:アミコールTP)の配合量は0.900g/食であり、かき卵の素となる卵液の配合量は13.000g/食であった(この点は以下の比較例1〜3も同様である)。
【0031】
(比較例1)
ねり梅、粗梅肉及びキサンタンガム(商品名:エコーガムF)を配合しなかった点以外は、実施例1〜4と同様に製造した。比較例1の凍結乾燥前後の重量は、65.740g/食(9.130g/食)であった(カッコ内は凍結乾燥後の重量を表す)。
【0032】
(比較例2)
ねり梅及び粗梅肉を配合しなかった点以外は、実施例1〜4と同様に製造した。比較例2の凍結乾燥前後の重量は、65.800g/食(9.467g/食)であった(カッコ内は凍結乾燥後の重量を表す)。
【0033】
(比較例3)
ねり梅及び粗梅肉の配合量、並びに凍結乾燥後の製品一ブロックに占める梅肉(ねり梅と粗梅肉の合計)の配合割合を表1のとおりにした点以外は、実施例1〜4と同様に製造した。比較例3の凍結乾燥前後の重量は、71.400g/食(12.566g/食)であった(カッコ内は凍結乾燥後の重量を表す)。
【0034】
上記のようにして準備した実施例1〜4及び比較例1〜3について、充填時の具材の沈殿の有無、充填時の分注適性、及び喫食時の粘度に関して、3名のパネラーによって評価した。評価結果は表1のとおりである。
また、実施例1〜4及び比較例1〜3における充填時のBrix及び充填時のpHは表1に示すとおりであった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すとおり、比較例1では、充填時に具材(しらす)が個食トレー内で沈殿したが、実施例1〜4、比較例2及び3では具材の沈殿は見られなかった。
【0037】
また、充填時の分注適性については、比較例1では、個食トレーに充填後のスープ原料が表面に水が浮いたように離水気味になったが、実施例1〜4並びに比較例2及び3では、そのような現象は見られなかった。
他方、比較例3では、分注時のノズルからのスープ原料の排出が切れ切れになり、かなりもたもたしていた。これは、梅肉の配合量の増加に伴って梅の繊維も増加しスープ原料の粘度が増したことによるものと推測される。この点に関して、比較例3では、充填作業に支障が出るほどであったのに対し、実施例4では、ノズルからの排出がややもたもたしていたものの、充填作業に支障ができるほどではなかった。
【0038】
さらに、お湯をかけて復元した後の喫食時の粘度に関しては、比較例2は、とろみが強過ぎて、舌にまとわりつくようなガム類特有の粘度が感じられた。
しかし、実施例1〜4及び比較例3には、そのような問題はなかった。なお、表1における実施例4及び比較例3の欄には「さらさら」と記載されているが、これは粘度が全くないという意味ではなく、比較例1よりも粘度の付いた状態であり、味覚上は十分にとろみを感じられる程度である。但し、梅肉の配合量が増えると喫食時のスープ粘度が切れていくことが観察された。
なお、お湯をかけた時の復元性及び復元後のかき卵の浮き具合については、比較例3についてのみかき卵がやや沈みやすい傾向があったが、それ以外はいずれのものも良好であり、特に差はなかった。