(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、飲料を提供する飲料提供装置は、飲料を収容する飲料収容容器と飲料収容容器に収容された飲料をジョッキに注出するカランとが一対一に対応した構成を備えている。また、複数の液種を混合した混合飲料を提供する飲料提供装置は、飲料収容容器とカランとが一対一に対応した構成を複数備えている。混合飲料を提供する場面では、それぞれの液種の飲料が順番にジョッキに注出された結果、ジョッキ内で飲料が混合されることとなる。
【0007】
ここで、当技術分野では、混合飲料を提供する場合に複数種の飲料を同時に注出することが望まれている。
【0008】
しかし、複数種の飲料を同時に注出すると、ジョッキに注出される単位時間当たりの飲料の流量が大きくなる。このため、ジョッキから飲料が溢れることなどが起こりやすく、いわゆる好適な状態で混合飲料を提供することが困難である。一方、混合飲料を提供することに適した状態にするために、1つの液種からなる飲料の流量を小さくすると、1つの液種からなる飲料単体を短時間で提供することが困難となる。
【0009】
そこで、本発明は、混合飲料を好適な状態で提供することを可能とし、さらに1つの液種からなる飲料単体を短時間で提供することが可能な飲料提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る飲料提供装置は、第1の飲料と第2の飲料とを含む2種以上の飲料を提供する飲料提供装置であって、第1の飲料を収容する第1の飲料収容容器から第1の飲料を注出する第1の注出機構と、第2の飲料を収容する第2の飲料収容容器から第2の飲料を注出する第2の注出機構とを備え、第1の注出機構は、第1の飲料を注出する第1のカラン及び第2のカランと、第1のカランと第2のカランと第1の飲料収容容器とに接続されて第1の飲料が流れる第1の飲料回路と、を有し、第2の注出機構は、第2の飲料を注出する第3のカランと、第3のカランと第2の飲料収容容器とに接続されて第2の飲料が流れる第2の飲料回路と、を有し、第1のカランと第3のカランとが互いに隣接しており、第1の飲料回路は、第1の飲料収容容器と第1のカランとの間に設けられる第1の分岐部と、一端が第1の飲料収容容器に接続され他端が第1の分岐部に接続される第1の流路と、一端が第1の分岐部に接続され他端が第1のカランに接続される第2の流路と、一端が第1の分岐部に接続され他端が第2のカランに接続される第3の流路と、を含み、第2の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗は、第3の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗よりも大きい。
【0011】
本発明に係る飲料提供装置によれば、第1の飲料収容容器に接続される第1の飲料回路が、第1のカランに接続される第2の流路と、第2のカランに接続される第3の流路を有しているので、第1の飲料収容容器に収容される第1の飲料を互いに異なる設定のもとで注出することが可能となる。そして、第2の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗が第3の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗よりも大きい。このため、第2の流路に接続される第1のカランから注出される第1の飲料の流量は、第3の流路に接続される第2のカランから注出される第1の飲料の流量よりも抑制される。従って、第1の飲料を提供する場合には、第2のカランから第1の飲料を注出することにより、短時間で第1の飲料を提供することができる。また、第1の飲料及び第2の飲料を含む飲料を提供する場合には、第1のカランから流量を抑制しつつ第1の飲料を注出することにより、好適な状態で飲料を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、第2の流路の流路長が、第3の流路の流路長よりも長いものとすることができる。このような構成によれば、第2の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗を、第3の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗よりも大きくすることができる。従って、流動抵抗を制御するための構成物を追加する必要がないので、第1の飲料回路の構成を簡易にすることができる。
【0013】
また、本発明は、第2の流路が、第2の流路を流れる第1の飲料の流動抵抗を高める流量調整バルブを含むことができる。このような構成によれば、第2の流路を流れる第1の飲料の流量を、周囲環境に応じてきめ細かく設定することができる。
【0014】
また、本発明は、第1の飲料回路を冷却する冷却部を更に備え、第1の流路、第2の流路、第3の流路及び第1の分岐部は、冷却部の内部に配置されるものとすることができる。このような構成によれば、第1の飲料収容容器内の第1の飲料が室温状態であっても、第1のカラン及び第2のカランからは冷却された第1の飲料を注出することができる。
【0015】
また、本発明の第1の流路と第2の流路と第3の流路とは、それぞれの内径が略同一であることができる。このような構成によれば、第1の流路、第2の流路及び第3の流路の内部にスポンジ等を挿入して第1の流路、第2の流路及び第3の流路の内壁を洗浄することができる。
【0016】
また、本発明の第1の飲料及び第2の飲料のいずれもが穀物性発泡飲料とすることができる。第1のカランから第1の飲料を注出すると同時に第3のカランから第2の飲料を注出する場合に、第1の飲料の流量が抑制されているので、ジョッキ内における第1の飲料の発泡を抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係る飲料提供装置は、第2の注出機構が、第2の飲料を注出する第4のカランを有し、第2の飲料回路が、第2の飲料収容容器と第3のカランとの間に設けられる第2の分岐部と、一端が第2の飲料収容容器に接続され他端が第2の分岐部に接続される第4の流路と、一端が第2の分岐部に接続され他端が第3のカランに接続される第5の流路と、一端が第2の分岐部に接続され他端が第4のカランに接続される第6の流路と、を含み、第5の流路を流れる第2の飲料の流動抵抗が、第6の流路を流れる第2の飲料の流動抵抗よりも大きくすることができる。このような構成によれば、第2の飲料を提供する場合には、第4のカランから第2の飲料を注出することにより、短時間で第2の飲料を提供することができる。また、第1の飲料及び第2の飲料を含む飲料を提供する場合には、第3のカランからも流量を抑制しつつ第2の飲料を注出することにより、より好適な状態で飲料を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2種以上の飲料を好適な状態且つ短時間で提供することが可能な飲料提供装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る飲料提供装置を備えた飲料提供システムの外観を示す図である。飲料提供システム100は、2種の飲料を提供するものである。なお、飲料提供システム100は、2種以上の飲料を提供するものであってもよい。
図1に示すように、飲料提供システム100は、サーバー(飲料提供装置)1と、飲料収容容器20と、ガスボンベ30と、を備えている。飲料提供システム100は、飲料収容容器20及びガスボンベ30が床上に配置され、後述する冷却装置40及び注出機構4A,4Bが支持台2の上に配置された、いわゆる台上式と呼ばれる構成を有している。
【0022】
それぞれの飲料収容容器(第1の飲料収容容器)20A及び飲料収容容器(第2の飲料収容容器)20Bには、異なる液種の飲料が収容されている。本実施形態では、飲料収容容器20Aには液種Aの発泡飲料が収容され、飲料収容容器20Bには液種Bの発泡飲料が収容されているものとする。ここで、発泡飲料として、ビール及びビール系飲料等の穀物性発泡飲料が例示される。穀物性発泡飲料とは、ビールやビール系飲料等といった穀物を原料とする発泡性の飲料であり、穀物には例えば、大麦、小麦、米類、とうもろこし、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上が含まれる。また、発泡飲料は、アルコール飲料の他、アルコールを含まない飲料を含む。また、以下では、発泡飲料としてビールを例に説明する。飲料収容容器20Aに収容された液種Aの発泡飲料をビールA(第1の飲料)とし、飲料収容容器20Bに収容された液種Bの発泡飲料をビールB(第2の飲料)とする。さらに、液種A及び液種Bがそれぞれ異なるカランからジョッキに注出され、ジョッキ内で混合した発泡飲料をビールCという。すなわち、飲料提供システム100は、ビールA、ビールB及びビールCを提供するものである。
【0023】
飲料収容容器20Aを例に、飲料収容容器について説明する。飲料収容容器20Aは、ビールAを収容するための収容部21と、ガスボンベ30から炭酸ガスを収容部21に送り込むと共に収容部21のビールAを冷却装置40へ送り出すヘッド部22とを有している。収容部21は、金属製であり略円筒状の形状を有するいわゆるビール樽である。収容部21は、10リットルのビールAを収容可能な大きさ、又は20リットルのビールAを収容可能な大きさを有している。ヘッド部22は、収容部21の上面に設けられた口金を介して収容部21に対して着脱可能に取り付けられている。ヘッド部22は、ガスボンベ30からの炭酸ガスを収容部21へ導入するための継手部22aと、収容部21のビールAを冷却装置40に送り出すための継手部22bとを有している。
【0024】
ガスボンベ30は、ガス回路31を介してそれぞれの飲料収容容器20A,20Bに一対一に接続されている。ガスボンベ30には、高圧の炭酸ガスが収容されている。炭酸ガスは、液体の状態で充填され、ガスボンベ30内部は6MPa〜8MPaとされている。この高圧炭酸ガスを飲料収容容器20A,20Bへ導入することにより、飲料収容容器20A,20B内のビールA,Bを冷却装置40へ押し出すと共に、飲料収容容器20A,20B内のビールA,Bに含まれる炭酸ガスのバランスを調整する。ガスボンベ30には、飲料収容容器20A,20Bに供給する炭酸ガスの圧力を調整するための減圧弁32が設けられている。炭酸ガスは、この減圧弁32により所定の圧力に減圧され、飲料収容容器20A,20Bに導入される。炭酸ガスの圧力は、ビールA,Bの液温に基づいて調整される。炭酸ガスの圧力は、ビールA,Bの液温が15℃〜30℃であるとき0.20MPa〜0.35MPaとされる。一例として、ビールA,Bの液温が30℃であるとき、0.35MPaとされる。
【0025】
図2は、サーバー1の内部構造を示すための
図1のII−II線に沿った端面図である。
図2に示すように、サーバー1は、飲料収容容器20Aから受け入れたビールA及び飲料収容容器20Bから受け入れたビールBを冷却し、冷却したビールA,Bを提供する装置である。このようなサーバー1は、常温のビールA,Bを瞬間的に冷却する機能を有するいわゆる瞬間冷却式サーバーと呼ばれる。
図3は、サーバー1の構成を模式的に示す図である。
図3に示すように、サーバー1は、ビールAを注出するための注出機構(第1の注出機構)4Aと、ビールBを注出するための注出機構(第2の注出機構)4Bと、ビールA,Bを冷却するための冷却装置40と、を備えている。注出機構4Aと注出機構4Bとは同一構成であるため、以下、注出機構4Aを例に説明をし、注出機構4Bについては説明を省略する。
【0026】
注出機構4Aは、第1のカラン62A、第2のカラン61A、及び飲料回路(第1の飲料回路)41Aを有している。飲料回路41Aは、分岐した流路を有し、飲料収容容器20Aから導入されたビールAを第1のカラン62A及び第2のカラン61Aのそれぞれに導く。飲料回路41Aは、分岐部44と、第1の流路46と、第3の流路47と、第2の流路48とを有している。なお、飲料回路41Aの分岐部44、第1の流路46、第2の流路48及び第3の流路47は、それぞれ、特許請求の範囲の第1の分岐部、第1の流路、第2の流路、第3の流路に対応する。また、飲料回路(第2の飲料回路)42Aの分岐部44、第1の流路46、第2の流路48及び第3の流路47は、それぞれ、特許請求の範囲の第2の分岐部、第4の流路、第5の流路、第6の流路に対応する。
【0027】
分岐部44は、飲料収容容器20Aと第1のカラン62A及び第2のカラン61Aとの間に設けられている。分岐部44には、一般的なY分岐管などを用いることができる。
【0028】
第1の流路46は、ビールAを冷却するための部分である。第1の流路46は、一端が飲料収容容器20Aのヘッド部22に接続され、他端が分岐部44に接続されている。第1の流路46は、内径が3mm〜7mmであり一例として5mmの中空パイプである。また、第1の流路46は、流路長が5m〜20mであり、一例として12mの長さを有する。第1の流路46は、ビールAを冷却する部分であるため、冷却槽42の温度と第1のカラン62A及び第2のカラン61Aから注出されるビール温度とに基づいてその流路長が設定されている。このように第1の流路46は、長い流路長を有しているのでコイル状に巻き回されたコイル部46aを含んでいる。
【0029】
第3の流路47は、冷却されたビールAを第2のカラン61Aに導くための部分である。第3の流路47は、一端が分岐部44に接続され、他端が第2のカラン61Aに接続されている。第3の流路47は、内径が3mm〜6mmであり、一例として5mmの中空パイプである。また、第3の流路47は、流路長が1m〜10mであり、一例として2mの長さを有する。第2のカラン61Aから注出されるビールAの単位時間あたりの流量は、10g/s〜60g/sであり、一例として50g/sである。
【0030】
第2の流路48は、冷却されたビールAを第1のカラン62Aに導くための部分である。また、第2の流路48は第1のカラン62Aから注出されるビールAの流量を制御するブレーキラインとして機能する。第2の流路48は、一端が分岐部44に接続され、他端が第1のカラン62Aに接続されている。第2の流路48は、内径が3mm〜6mmであり、一例として4.5mmの中空パイプである。また、第2の流路48は、流路長が1m〜20mであり、一例として10mの長さを有する。
【0031】
第2の流路48は、内部を流動するビールAの流動抵抗を高めてビールAの流量を制御する。例えば、第2の流路48では、第2の流路48に接続された第1のカラン62Aから注出されるビールAの単位時間あたりの流量を、第3の流路47に接続された第2のカラン61Aから注出されるビールAの単位時間あたりの流量の略1/2になるように設定する。第1のカラン62Aから注出されるビールAの単位時間あたりの流量は、10g/s〜40g/sであり、一例として25g/sである。
【0032】
本実施形態の第2の流路48は、第2の流路48の流路長を長くして管摩擦抵抗を高めることによりビールAの流動抵抗を高めている。第2の流路48の流路長は第3の流路47の流路長よりも長い。例えば、第2の流路48の流路長は第3の流路47の流路長の2倍〜10倍であり、一例として10倍である。第2の流路48の流路長は、第2の流路48に接続された第1のカラン62Aから注出されるビールAの単位時間当たりの流量に基づいて設定されている。また、ビールAの単位時間当たりの流量は、ガスボンベ30から供給される炭酸ガスの圧力にも影響される。炭酸ガスの圧力は、ビールAの液温に影響される。従って、ビールAの液温が使用環境において変動し、その変動に応じて炭酸ガスの圧力が調整された場合であっても、ビールAの単位時間当たりの流量が上述した範囲に含まれるように、第2の流路48の流路長が設定される。
【0033】
なお、第2の流路48の流路長は、第2の流路48を流動する液種に応じて微調整してもよい。異なる飲料回路41A,41Bにおいて、第2の流路48の構成が同様であっても、内部を流動する液種が異なる場合には、流動抵抗が異なる場合がある。従って、第2の流路48を流動する液種に応じて第2の流路48の流路長を微調整することにより、第1のカラン62Aから注出されるビールAの単位時間当たりの流量を更に精度よく調整することができる。また、第2の流路48は、第1の流路46のように長い流路長を有しているので楕円コイル状に巻き回されたコイル部48aを含んでいる。そして、第2の流路48のコイル部48aは、第1の流路46のコイル部46aに隣接するように並設されている。
【0034】
図2に示すように、冷却装置40は、冷却槽42と、冷却ユニット43とを有している。冷却槽42は、第1の流路46を流動するビールA,Bを冷却するためのものである。冷却槽42の内部は冷却水が満たされ、この冷却水に第1の流路46、第2の流路48、第3の流路47及び分岐部44が浸されている。冷却水は、撹拌モータに接続されたプロペラにより撹拌され、冷却水中の温度が均一になるようにされている。冷却水の温度は、0℃〜5℃とされ、一例として1℃である。第1の流路46が冷却水に浸されていることにより、第1の流路46を流動するビールA,Bが冷却される。また、第2の流路48が冷却水に浸されていることにより、第1の流路46において冷却されたビールA,Bの温度が上昇することを抑制することができる。なお、分岐部44及び第3の流路47は、冷却水に浸されていなくてもよい。また、冷却水中には、氷が入っていてもよい。
【0035】
冷却ユニット43は、冷却水の温度を所定の温度に制御するための装置である。冷却ユニット43は、冷却水中に浸された冷却管43aと、冷却管に冷媒を供給するための冷却部43bを備えている。冷却部43bには、コンプレッサー、凝縮器等を用いた一般的な冷凍サイクル機構を用いることができる。冷却部43bからは、一例として、−8℃の冷媒が供給される。
【0036】
図1に示すように、第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bは、冷却されたビールA,B及び泡を別々にジョッキに注出するためのものである。第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bは、それぞれ同様の構成を有している。第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bは、ビールを注出するための注出口61aと、泡を注出するための注出口61bと、を有している。また、第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bは、注出されるビールA,B及び泡の切り替えと停止とを操作するためのレバー61cを有している。本実施形態のサーバー1は、4つの第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bを備えている。第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B、及び第4のカラン61Bは、冷却装置40の正面40aにおいて横方向に並設されている。なお、第1のカラン62A、第2のカラン61A、第3のカラン62B及び第4のカラン61Bをまとめて注出部60と称する。
【0037】
最も右端に配置された第2のカラン61Aは、液種AからなるビールAを注出するためのものである。この第2のカラン61Aは、ビールAが流動する飲料回路41Aの第3の流路47に接続されている(
図3参照)。
【0038】
最も左端に配置された第4のカラン61Bは、液種BからなるビールBを注出するためのものである。この第4のカラン61Bは、ビールBが流動する飲料回路41Bの第3の流路47に接続されている(
図3参照)。
【0039】
第2のカラン61Aと第4のカラン61Bとの間に配置された第1のカラン62A及び第3のカラン62Bは、ビールA及びビールBをジョッキに同時に注出することにより、ジョッキ内でビールA及びビールBを混合させてビールCを提供するためのものである。
【0040】
第2のカラン61Aの左側に配置された第1のカラン62Aは、液種AからなるビールAを注出するためのものである。この第1のカラン62Aは、ビールAが流動する飲料回路41Aの第2の流路48に接続されている。従って、第1のカラン62Aから注出されるビールAの単位時間当たりの流量は、第2のカラン61Aから注出されるビールAの単位時間当たりの流量よりも小さい。
【0041】
第4のカラン61Bの右側に配置された第3のカラン62Bは、液種BからなるビールBを注出するためのものである。この第3のカラン62Bは、ビールBが流動する飲料回路41Bの第2の流路48に接続されている。従って、第3のカラン62Bから注出されるビールBの単位時間当たりの流量は、第4のカラン61Bから注出されるビールBの単位時間当たりの流量よりも小さい。
【0042】
第1のカラン62A及び第3のカラン62Bは、互いに隣接している。一例として、第1のカラン62A及び第3のカラン62Bのビール注出口61a間の距離は1mm〜90mmである。この距離は、0.1cm以上4.5cm以下であることが好ましく、0.1cm以上3.0cm以下であることが、さらに好ましい。このように、第1のカラン62A及び第3のカラン62Bを隣接させることにより、1つのジョッキに第1のカラン62Aのビール注出口61aと、第3のカラン62Bのビール注出口61aとを挿入することができる。従って、1つのジョッキに対して第1のカラン62A及び第3のカラン62Bから同時にビールA,Bを注出することができる。なお、第1のカラン62A及び第3のカラン62Bのビール注出口61aの間の距離はより近接していることが好ましい。ビール注出口61aの間の距離が近接していることにより、ビール注出口61aに対するジョッキの角度の設定範囲が拡大される。従って、ビールA,Bを好適な状態で注出可能な角度に設定することができる。
【0043】
飲料提供システム100を用いてビールAを提供する方法について説明する。なお、ビールBを提供する場合はビールAと同様であるため、説明を省略する。まず、第2のカラン61AからビールAが注出される方向と、ジョッキの内面とのなす角度が約45度となるように、ジョッキを配置する。次に、レバー61cを操作してビールAを発泡させないようにビールAを注出する。このとき、ビール注出口61aから注出されたビールAがジョッキの内壁面を流れるようにジョッキを保持することにより、泡の発生を抑制することができる。続いて、レバー61cを操作して、泡注出口61bから泡を注出しビールAの上に載せる。最後に、レバー61cを操作して泡の注出を停止する。
【0044】
次に、飲料提供システム100を用いてビールCを提供する方法について説明する。まず、ジョッキをサーバー1に配置する。このとき、第1のカラン62Aのビール注出口61aと第3のカラン62Bのビール注出口61aとをジョッキ内に配置する。次に、第1のカラン62Aのレバー61c及び第3のカラン62Bのレバー61cを同時に操作してビールA及びビールBを発泡させないように注出する。このとき、第1のカラン62Aのビール注出口61aから注出されたビールAがジョッキの内壁面を流れるようにジョッキを保持することにより、泡の発生を抑制することができる。また、第3のカラン62Bのビール注出口61aから注出されたビールBがジョッキの内壁面を流れるようにジョッキを保持することにより、泡の発生を抑制することができる。続いて、第1のカラン62Aのレバー61c及び第3のカラン62Bのレバー61cを同時に操作して、ビールA及びビールBの注出を停止する。次に、第1のカラン62Aの泡注出口61bと第3のカラン62Bの泡注出口61bとをジョッキ内に配置する。そして、第1のカラン62Aのレバー61c及び第3のカラン62Bのレバー61cを同時に操作して、第1のカラン62Aの泡注出口61b及び第3のカラン62Bの泡注出口61bから泡をそれぞれ同時に注出し、ビールCの上に載せる。最後に、第1のカラン62Aのレバー61c及び第3のカラン62Bのレバー61cを同時に操作して泡の注出を停止する。
【0045】
本実施形態に係るサーバー1によれば、飲料収容容器20Aに接続された飲料回路41Aが、第1のカラン62Aに接続された第2の流路48と、第2のカラン61Aに接続された第3の流路47とを有しているので、1つの飲料収容容器20Aに収容されたビールAを互いに異なる流量設定のもとで注出することが可能となる。
【0046】
ここで、サーバー1からビールA,B,Cを提供する場合には、ジョッキにビールA,B,Cを注出するときに泡を発生させないことが求められる。なお、ビールA,B,Cの注出時に生じる泡を初期泡と称する。発明者らの知見によれば、初期泡の発生には単位時間あたりにジョッキに注出されるビールA,Bの流量が影響を及ぼし、流量が小さい場合には初期泡の発生が抑制される傾向があることがわかっている。
【0047】
そして、本実施形態のサーバー1によれば、第2の流路48を流れるビールAの流動抵抗が第3の流路47を流れるビールBの流動抵抗よりも大きい。このため、飲料回路41Aの第2の流路48に接続された第1のカラン62Aから注出されるビールAの流量が、第3の流路47に接続された第2のカラン61Aから注出されるビールAの流量よりも小さくされる。同様に、飲料回路41Bの第2の流路48に接続された第3のカラン62Bから注出されるビールBの流量が、第3の流路47に接続された第4のカラン61Bから注出されるビールBの流量よりも小さくされる。従って、ビールCを提供する場合には、第1のカラン62AからビールAを注出すると共に第3のカラン62BからビールBを注出することにより、初期泡の発生を抑制したビールCを提供することができる。また、ビールA及びビールBを同時にジョッキに注出した場合に、ジョッキからビールA及びビールBが溢れることを抑制することができる。より詳細には、第1のカラン62Aから注出されるビールAの流量が第2のカラン61Aから注出されるビールAの流量の略1/2とされ、第3のカラン62Bから注出されるビールBの流量が第4のカラン61Bから注出されるビールBの流量の略1/2とされている。従って、ジョッキに同時に注出されるビールA,Bの合計流量は、第2のカラン61AからビールAを注出する場合の流量又は第4のカラン61BからビールBを注出する場合の流量と略同じになる。従って、初期泡の発生が抑制された好適な状態で、ビールA,BからなるビールCを提供することができる。
【0048】
一方、液種AからなるビールAを提供する場合には、飲料回路41Aの第3の流路47に接続された第2のカラン61AからビールAを注出することにより、短時間でビールAを提供することができる。同様に、液種BからなるビールBを提供する場合には、飲料回路41Bの第3の流路47に接続された第4のカラン61BからビールBを注出することにより、短時間でビールBを提供することができる。
【0049】
また、本実施形態のサーバー1は、流動抵抗を第2の流路48の流路長に基づいて設定している。流路長による流動抵抗の設定によれば、第2の流路48に流入したビールA,Bの流速が徐々に減速されることになる。従って、ビールA,Bの流速の急激な変化を生じさせることなく、流量を抑制できるので第1のカラン62A及び第3のカラン62Bから注出されるビールA,Bの初期泡の発生を一層抑制することができる。
【0050】
また、流路長に基づいて流動抵抗を設定する構成によれば、飲料回路41A,41Bを構成する第1の流路46、第2の流路48及び第3の流路47のそれぞれの内径を略同一にすることができるため、飲料回路41A,41Bの内部に同一のスポンジ等を挿入して第1の流路46、第2の流路48及び第3の流路47の内壁を洗浄することができる。また、流路長に基づいて流動抵抗を設定する構成によれば、飲料回路41A,41Bに取り付ける部材を少なくできるので、液だまりの発生を抑制することができる。さらに、流路長に基づいて流動抵抗を設定する構成によれば、工場出荷時に予め所定の流量を得るための流動抵抗に設定できるので、ユーザー側における調整作業を不要とすることができる。従って、サーバー1を容易に扱うことができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、サーバー1は、ビールAを提供することなく、ビールBとビールCとを提供するものであってもよい。
図4は、変形例に係るサーバー1Bの構成を模式的に示す図である。この変形例のサーバー1Bは、飲料回路41Aを有する注出機構4Aに代えて、飲料回路41Cを有する注出機構4Cを備えている点でサーバー1と相違する。飲料回路41Cは、第1の流路46と第2の流路48とを有している。すなわち、飲料回路41Cは、分岐部44と第3の流路47を有していない点で、飲料回路41Aと相違する。このようなサーバー1Bによれば、需要の高いビールB及びビールCを提供しつつ、装置の構成を簡易にすることができる。
【0053】
また、分岐部44に接続される第2の流路48の数は、2つ以上であってもよい。また、サーバー1が備える注出機構4A,4Bの数は、3以上であってもよい。この場合、飲料提供システム100が備える飲料収容容器20の数は3つ以上となる。
【0054】
また、第2の流路48を流動するビールA,Bの流動抵抗を設定する構成は、流路長に基づく管摩擦抵抗を用いた構成に限定されることはない。例えば、ビールA,Bの流動抵抗は、いわゆるマスフローコントローラ(流量調整バルブ)を用いて高められてもよい。マスフローコントローラによれば、バルブの開度に応じて第1のカラン62A及び第3のカラン62Bから注出されるビールA,Bの流量を細かく調整することができる。また、第2の流路48の一部の流路径を変更して、第1のカラン62A及び第3のカラン62Bから注出されるビールA,Bの流量を調整する構成であってもよい。
【0055】
また、本実施形態のサーバー1は、飲料収容容器20A,20Bを冷蔵庫内に格納し、飲料収容容器20A,20B及び飲料回路41A,41Bごと冷却する樽格納式サーバーに適用してもよい。樽格納式サーバーは、ビールA,Bが流動する飲料回路41A,41B全体を冷却しているので、ビールA,Bの品質を容易に維持することができる。
【0056】
また、本実施形態のサーバー1は、冷却装置40と注出部60が別々の位置に配置されたいわゆる台下式の構成に適用してもよい。台下式の構成では、冷却装置40が支持台2の下に配置され、注出部60が支持台2に配置されたタワーに配置される。このような台下式の構成によれば、冷却装置40を支持台2の上に配置する必要がないので、注出部60の配置の自由度を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態のサーバー1から提供される発泡飲料は、液体上に泡が載置されたビールA,B,Cに限定されない。発泡飲料は、液体上に発泡体が載置されたものであってもよく、発泡体そのものであってもよい。この発泡体は、上記実施形態の泡のように液体の膜により気体を包んだ液体発泡体と、凍結発泡体(フローズン泡)とを含む。
【0058】
[実施例1]
サーバー1が備える第2の流路48の流路長さと、初期泡の関係について確認した。
図5は、実施例1の結果を示す図である。
図5に示すように、実施例1では、第2の流路48に内径が4.5mmであり流路長さが5mである中空パイプを用いた。また、ガスボンベ30から供給される炭酸ガスの圧力を0.35MPaに設定した。また、発泡飲料としてビールを用いた。その結果、飲料回路41Aを介して第1のカラン62Aから注出されるビールの流量は、1秒間あたり30.5gであった。また、飲料回路41Bを介して第3のカラン62Bから注出されるビールの流量は、1秒間あたり30.1gであった。このとき、発生した初期泡は、ビールの液面からの高さが5.3mmであった。
【0059】
[実施例2]
実施例2では、第2の流路48に内径が4.5mmであり流路長さが6mである中空パイプを用いた。また、ガスボンベ30から供給される炭酸ガスの圧力を0.35MPaに設定した。また、発泡飲料としてビールを用いた。その結果、飲料回路41Aを介して第1のカラン62Aから注出されるビールの流量は、1秒間あたり28.9gであった。また、飲料回路41Bを介して第3のカラン62Bから注出されるビールの流量は、1秒間あたり28.6gであった。このとき、発生した初期泡は、ビールの液面からの高さが1.7mmであった。従って、第2の流路48の流路長を大きくすることにより、第1のカラン62A,62Bから注出されるビールの流量が減少することがわかった。また、流量が減少することにより、初期泡の発生が抑制される傾向にあることがわかった。