(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、主として老朽化した高架道路の橋桁の架け替えに利用される。以下に説明する実施の形態では、橋梁は3径間連続鈑桁橋である。すなわち、4本の橋脚の上に1つの連続する鈑桁を含む橋桁が位置する。3径間連続鈑桁橋は、都市部における高架道路である、いわゆる都市高速道路で最も一般的な構造である。また、道路の車線数は4車線である。架け替え対象となる橋桁の長さや車線数は、本実施の形態にて例示するものには限定されない。
【0014】
また、橋桁の下は一般道として使用されてもよい。一般道は、短期間の交通制限は可能であるが、長期間の交通制限はできない。本実施の形態に係る橋桁の架け替えは、橋桁の下に長期間資材や構造物を設置することができない条件であっても可能である。また、橋桁上での仮設設備の組立、解体、並びに、橋桁の解体および架設期間中においても、常に高速道路の2車線、すなわち、上り下り各1車線の交通動線が確保される。
【0015】
図1.Aないし
図1.Cは、橋桁の架け替え工程の全体の流れを示す図である。
図2.Aおよび
図2.Bは、工程の一部を示す図である。
【0016】
図3.Aは、架け替え対象となる橋桁11の車線に垂直な断面図であり、
図3.Bは、車線に平行な側面図である。橋桁11は、
図3.Bに示すように、4つの橋脚12の上に沓121を介して架設されている。橋桁11の架け替えでは、まず、準備作業(ステップS11)として、橋脚12に端縁拡幅装置31が取り付けられる。端縁拡幅装置31は、橋脚12の車線方向の幅を拡大する。また、端縁拡幅装置31の真上において、橋桁11に補強リブ32が溶接または高力ボルトにより取り付けられる。補強リブ32は、後の工程にて端縁拡幅装置31上で橋桁11を支持する際の橋桁の補強部材である。橋脚12の車線方向の幅が十分に広く、橋桁11の強度も十分である場合は、これらの準備作業は不要である。
【0017】
次に、架け替え対象となる橋桁11を含む交通規制区間において、
図4に示すように、中央側の2つの車線と両端の車線との間にガードレール33が設置される。中央分離帯側の2車線(以下、「内側車線群13」という。)の交通は停止され、片側1車線通行となる(ステップS12)。以下、通行止めとなった範囲を、「常設規制帯」と呼ぶ。内側車線群13の外側の2車線(以下、「外側車線群14」という。)では、交通が維持される。すなわち、互いに逆となる2方向の通行が維持される。以下、通行が維持される車線を「通行帯」と呼ぶ。中央分離帯111(
図3.A参照)は、撤去される(ステップS13)。
【0018】
常設規制帯にはクレーンが搬入され、
図5.Aおよび
図5.Bに示すように、仮橋41が内側車線群13の上方に設置される(ステップS14)。仮橋41は2車線を含み、架け替え対象となる橋桁11を縦断する。仮橋41は、橋桁11の上方で橋桁11に平行に延びる本体部411と、本体部411の長手方向両側に位置するアプローチ部412とを有する。アプローチ部412は、橋桁11に隣接する橋桁11a上に位置し、橋桁11aの走行面から本体部411に向かって傾斜して本体部411に繋がる。
【0019】
仮橋41が組み立てられると、仮橋41の交通が開始されて仮橋41が通行帯となり、外側車線群14の交通が停止されて外側車線群14が常設規制帯となる(ステップS15)。そして、
図6.Aおよび
図6.Bに示すように、外側車線群14に移動仮支持構造42が設置される(ステップS16)。移動仮支持構造42は、橋桁11の全長に亘って存在する。
図6.Bは外側車線群14のみを示す側面図であり、内側車線群13の側面は
図5.Bに示す通りである。後述するように、移動仮支持構造42は、仮橋41から離れた位置で組み立てられた後、
図6.Bに示すように、送り出し設備37の軌条に沿って移動して仮橋41の側方に設置される。設置後は、送り出し設備37は撤去される。
【0020】
移動仮支持構造42には、車線に沿って移動するクレーン422が設けられる。また、
図6.Aおよび
図5.Bに示すように、仮橋41の下方には、車線に垂直かつ水平方向に移動するクレーン413が設けられる。クレーン413,422を用いて、
図7.Aおよび
図7.Bに示すように、3径間のうち両側の径間(以下、「側径間132」といい、中央の径間を「中央径間131」という。)の舗装や床版のコンクリート等が撤去される(ステップS17)。これにより、鈑桁の側径間132の部位(以下、鈑桁の各径間部分を「径間鈑桁2」という。)の上部が露出する。なお、この時点で、中央径間131の舗装や床版のうち、撤去可能な部位は撤去されてもよい。
【0021】
次に、クレーン413,422を用いて、側径間132における径間鈑桁2の解体および撤去が行われる(ステップS18)。径間鈑桁2の撤去は、
図8に示すように、最も内側の横桁22から行われる(
図2.A:ステップS101)。
図7.Aに示すように、本実施の形態では、主桁21により径間鈑桁2は横方向に6つの区画20に分かれており、
図8に示すように、内側の2つの区画20の横桁22が撤去される。すなわち、側径間132において、最も内側の横桁22が、橋桁11の長手方向に沿って撤去される。さらに、
図9.Bに示すように、端縁拡幅装置31上に必要に応じて仮沓35が設置されて元の沓121(
図3.B参照)が撤去され、
図9.Aおよび
図9.Bに示すように橋脚12上に横取り設備36が設置される(ステップS102)。
【0022】
主桁21の側径間132の部位は、橋脚12上の位置で中央径間131の部位から切断される。さらに、側径間132における主桁21および横桁22の残りの部分、すなわち、残りの4つの区画20は、横取り設備36により内側に移動される(ステップS103)。これにより、
図10.Aに示すように、移動仮支持構造42の下方に空間が生じる。この空間を利用して、
図10.Aおよび
図10.Bに示すように、クレーン422により下方から桁支持梁423が吊り上げられる。その後、桁支持梁423は、主桁21を下方から支持する状態で移動仮支持構造42から吊り下げられて支持される(ステップS104)。
【0023】
側径間132において、桁支持梁423は、主桁21の連結部の両側を支持するように配置される。
図11は、桁支持梁423が配置された様子を示す斜視図である。この状態で主桁21および横桁22の残りの部分、すなわち、4つの区画20の側径間132の部位の解体および撤去が行われる(ステップS105)。まず、
図12に示すようにボルトを外すことにより外側の区画20の横桁22が撤去され、その後、桁支持梁423に支持される状態で外側の主桁21の一部が撤去される。この作業を繰り返すことにより、外側の区画20が撤去された状態になる。その後、
図13に示すように、残りの部位が外側に移動される。そして、同様の解体作業を繰り返すことにより、側径間132における残りの区画20を構成する主桁21および横桁22が撤去される。なお、
図10.Aおよび
図11に示す中央の主桁21が最後に撤去される。
【0024】
以上の作業により、
図14.Aないし
図14.Cに示すように、側径間132において桁が存在せず、桁支持梁423が吊り下げられた状態となる。
図14.Bは、移動仮支持構造42の位置における側面図であり、
図14.Cは仮橋41の位置における側面図である。
【0025】
次に、解体作業とは逆の作業により、桁支持梁423を利用して側径間132に新たな径間鈑桁2が組み立てられる(
図1.A:ステップS19)。具体的には、
図15に示すように、新しい主桁21の一部が搬入されて桁支持梁423を利用して1つの主桁21が組み立てられる。主桁21は横取り設備36により内側へと移動される。さらに、桁支持梁423を利用して1つ目の区画20が組み立てられる。横取り設備36を利用して区画20は内側へと移動され、隣接する区画20がさらに組み立てられる(
図2.B:ステップS111)。
【0026】
この段階で、
図16.Aおよび
図16 .Bに示すように、桁支持梁423が下降し(ステップS112)、桁支持梁423が撤去される。
図17に示すように、2対の区画20は横取り設備36により最も外側へと移動される(ステップS113)。その後、橋脚12から横取り設備36が撤去され(ステップS114)、中央の主桁21と区画20との間に横桁22が取り付けられる(ステップS115)。これにより、側径間132における径間鈑桁2の組立が完了する。このように、橋桁11の径間部分を解体して撤去し、新橋桁の径間部分を架設する作業は、移動仮支持構造42を利用しつつ行われる。後述の中央径間131における作業においても同様である。
【0027】
図18.Aおよび
図18.Bに示すように、移動仮支持構造42の脚部424および仮橋41の脚部414は、側径間132から中央径間131へと移設される(
図1.A:ステップS20)。正確には、側径間132に新たな脚部424,414が組み立てられた後、中央径間131上の元の脚部424,414が撤去される。
【0028】
次に、側径間132の場合と同様にして、中央径間131の桁の撤去および新設が行われる。すなわち、中央径間131において舗装や床版等が撤去され(
図1.B:ステップS31)、
図2.Aと同様の工程を経て
図19.Aおよび
図19.Bに示すように、桁支持梁423を利用して中央径間131の径間鈑桁2が解体され、撤去される(ステップS32)。さらに、
図2.Bと同様の工程を経て中央径間131に新たな径間鈑桁2が組み立てられる(ステップS33)。側径間132の径間鈑桁2と中央径間131の径間鈑桁2とは連結される(ステップS34)。正確には、作業の都合上、側径間132の径間鈑桁2は元のものより若干短く、中央径間131の径間鈑桁2は少し長い。そのため、連結位置は、橋脚12の中央から若干側径間132側に偏る。
【0029】
以上の作業により、
図20に示すように、3径間に亘る一繋がりの鈑桁200が完成する。また、端縁拡幅装置31上の仮沓35に代えて、橋脚12上に沓121が設置される。
【0030】
鈑桁200上には、型枠が組み立てられ、移動仮支持構造42および仮橋41の脚部424,414の周囲以外の領域において、
図21に示すように、鈑桁200上に床版23用のコンクリートが打設される(ステップS35)。その後、
図22.Aおよび
図22.Bに示すように、脚部424,414は、新しく設けられた床版23上に移設される(ステップS36)。正確には、新たな脚部424,414が組み立てられた後、元の脚部424,414が撤去される。脚部424,414が存在した位置には、コンクリートが打設され(ステップS37)、3径間全長に亘る床版23が完成する。また、
図23に示すように、壁高欄24もコンクリートにより打設される(ステップS38)。端縁拡幅装置31は適宜撤去される。
【0031】
次の新工区、すなわち、次の架け替え対象となる橋桁11が存在する場合(ステップS39)、架け替え直後の橋桁11に隣接する橋桁11を架け替え対象として新工区での同様の作業へと移行する。
【0032】
まず、
図24.Aおよび
図24.Bに示すように、移動仮支持構造42の下に送り出し設備37が敷設される。移動仮支持構造42は、送り出し設備37の軌条に沿って、新工区とは反対側へと退避するようにして外側車線群14上から撤去される(ステップS40)。退避後の領域は舗装される。
図25に示すように外側車線群14の交通が開始され、外側車線群14は通行帯となる。一方、仮橋41の交通は停止され、仮橋41は常設規制帯となる(ステップS41)。
【0033】
その後、既述のステップS11〜S20,S31〜S38の作業に準じて新工区の橋桁11の架け替えが行われる。ただし、仮橋41および移動仮支持構造42は組立済みであるため、これらの設置は移動のみにて実現される。具体的には、ステップS14の仮橋41の設置では、まず、旧工区に位置する仮橋41の床版等を撤去して、仮橋41の幅が、
図26.Aに示すように狭められる。さらに、
図26.Aおよび
図26.Bに示すように、仮橋41の下には送り出し設備38が敷設される。この状態で仮橋41は送り出し設備38の軌条上を新工区へと移動する。新工区に到着すると、送り出し設備38は撤去され、仮橋41の幅が広げられて走行面が整えられる。以上の作業により、旧工区の内側車線群13上からの仮橋41の撤去および新工区の内側車線群13への仮橋41の設置が実現される。
【0034】
図27に示すように、旧工区上の仮橋41が存在した領域には中央分離帯111のコンクリートが打設され、舗装が施される。新工区での作業のステップS15において、仮橋41が通行帯とされ、外側車線群14が常設規制帯とされる際には、旧工区の内側車線群13の交通が開始される。この時点では、旧工区の外側車線群14の交通は停止される。なお、工区がある程度先へと進むと、旧工区の全車線の交通は回復する。
【0035】
新工区でのステップS16の移動仮支持構造42の設置では、退避していた移動仮支持構造42が、送り出し設備37により新工区まで移動し、送り出し設備37が撤去される。
【0036】
仮橋41および移動仮支持構造42を移動しつつ、工区毎の橋桁11の架け替えを繰り返し、全ての工区での作業が完了すると(ステップS39)、移動仮支持構造42を退避させて分解および撤去が行われる(
図1.C:ステップS51)。外側車線群14には舗装が行われる。そして、外側車線群14が通行帯とされ、仮橋41が常設規制帯へと変更される(ステップS52)。仮橋41は分解および撤去され(ステップS53)、中央分離帯111のコンクリートが打設されて内側車線群13に舗装が施される。その後、交通規制は解除され(ステップS54)、全ての橋桁11の架け替えが完了する。
【0037】
次に、上記工法における交通動線の切り替えの様子について、
図28ないし
図35を参照して説明する。
【0038】
図28は、4車線における自動車の交通動線を矢印にて示す図である。3径間の範囲81は、架け替え対象となる橋桁11の範囲である。
図29は、ステップS12において内側車線群13を常設規制帯とした状態を示す。範囲821は規制帯であり、範囲822は導流帯である。規制帯821および導流帯822の全体が、交通規制区間に対応する。規制帯821は、仮橋41を組み立てる範囲として利用される。そのため、規制帯821は、仮橋41よりも十分に長く設定される。仮橋41は、範囲81よりも左右に1径間延長した範囲に設置される。もちろん、より長いアプローチ部412が設けられてもよい。
【0039】
図30は、移動仮支持構造42が組み立てられる際の交通動線を示す図である。仮橋41の右側の導流帯822のさらに右側に規制帯821が設定される。そして、平行斜線を付して示すように、2車線分の幅の組立領域が設定され、移動仮支持構造42が組み立てられる。その後、
図31に示すように、移動仮支持構造42は、仮橋41の側方へと送り出される。仮橋41の反対側の移動仮支持構造42が設置される際にも同様の作業が行われる。すなわち、
図30の場合とは反対側の2車線にて移動仮支持構造42が組み立てられ、仮橋41の側方へと送り出される。以上の作業により、ステップS16が完了し、
図32に示すように、仮橋41の両側に移動仮支持構造42が位置する。
【0040】
新工区に移動する前に、ステップS40にて移動仮支持構造42を退避させる際には、
図33に示すように、1対の移動仮支持構造42は、新工区とは反対側に十分に退避する。そして、
図34に示すように、仮橋41が存在する規制帯821が左側に延ばされ、
図35に示すように、仮橋41が架け替え済みの新橋桁11から、新工区の架け替え対象の橋桁11へと移動する。すなわち、仮橋41が左側に3径間分移動する。この作業が、2回目以降のステップS14である。仮橋41が通行帯とされ、外側車線群14が常設規制帯とされた後、1対の移動仮支持構造42は、仮橋41の側方へと移動される。すなわち、移動仮支持構造42が、架け替え済みの橋桁11から、最終的に、新工区の架け替え対象の橋桁11へと移動する。この作業が、2回目以降のステップS16である。
【0041】
最後の工区の橋桁11の架け替えが完了すると、最初に行われるステップS14,S16とは逆の手順により、移動仮支持構造42および仮橋41が順に撤去される(ステップS51〜S53)。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、2車線以上の交通を維持つつ橋桁11を架け替えることが実現される。または、仮橋41および移動仮支持構造42を移動しつつ複数の橋桁11を順次架け替えることにより、複数の橋桁11を速やかに架け替えることができる。
【0043】
橋桁の架け替えは、上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0044】
橋桁11の車線数は4以上であればよく、例えば、6車線でもよい。この場合、最も外側の2つの車線よりも内側にて2以上の車線が内側車線群13として定められ、内側車線群13以外の車線が外側車線群14として定められる。内側車線群13の車線数が3以上の場合は、仮橋41が含む車線数も3以上とすることが可能である。
【0045】
鈑桁2の解体では、中央の2つの区画20の横桁22ではなく、中央のいずれか1つの区画20の横桁22のみが取り外されて、残りの部位が内側に寄せられてもよい。すなわち、内側車線群13の下方に位置する横桁22の少なくとも一部を橋桁11の長手方向に沿って撤去し、外側車線群14の下方に位置する部位を含む残りの主桁21および横桁22を内側へと移動することができるのであれば、横桁22の撤去方法は適宜変更されてよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、鈑桁2は、最初に内側が解体されて残部が内側に寄せられるが、桁支持梁423を吊り下げるために必要な部位だけ先に解体し、その後、桁支持梁423にて支持しつつ鈑桁2の解体が行われてもよい。例えば、桁支持梁423を吊り下げるために必要最小限の外側の横桁22が最初に撤去されてもよい。
【0047】
橋桁11は、3径間に亘って連続するものには限定されない。1径間のみでもよく、2以上の径間に亘って連続するものでもよい。橋桁11が2以上の径間に亘って連続する場合、1つまたは隣接しない複数の径間における部分的な橋桁の架け替えが繰り返されることにより、橋桁11全体の架け替えが行われる。
【0048】
移動仮支持構造42は、退避する際に、上記実施の形態とは反対方向に向かって新工区を通り過ぎる位置まで退避してもよい。仮橋41および移動仮支持構造42の両方または一方は、移動式でなくてもよい。
【0049】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。