特許第6063796号(P6063796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6063796-帯電防止シート 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063796
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】帯電防止シート
(51)【国際特許分類】
   H05F 1/00 20060101AFI20170106BHJP
   H05F 1/02 20060101ALI20170106BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20170106BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170106BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   H05F1/00 K
   H05F1/02 K
   C08K5/053
   C09J7/02 Z
   C09J133/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-71330(P2013-71330)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194903(P2014-194903A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一希
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康博
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275504(JP,A)
【文献】 特開2004−218219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 1/00
C08K 5/053
C09J 7/02
C09J 133/00
H05F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止処理を施した基材シートに高分子ゲルを積層した積層体を形成する帯電防止シートであって、
高分子ゲルが、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を1つ有する重合性単量体と分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体を共重合架橋した高分子マトリックス内に、少なくともポリビニルアルコール系重合体を溶解した水と該ポリビニルアルコール系重合体以外の多価アルコールが保持されたゲルであり、
接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×1012Ω以下であり、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下である帯電防止シート。
【請求項2】
接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満であり、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満である請求項1記載の帯電防止シート。
【請求項3】
基材シートの一方面に帯電防止コートを設け、他方面に高分子ゲルを積層した積層体である請求項1または請求項2記載の帯電防止シート。
【請求項4】
高分子ゲルの高分子マトリックスがアクリル系であり、高分子ゲルの表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満である請求項1〜請求項3何れか1項記載の帯電防止シート。
【請求項5】
高分子ゲルのC型硬度が5〜80であり、SUSに対する水平方向の保持力が5N/(20mm×120mm)以上であり、SUSからの剥離力が1N/20mm以下である請求項1〜請求項4何れか1項記載の帯電防止シート。
【請求項6】
基材シートがオレフィン系の透明または白色シートである請求項1〜請求項5何れか1項記載の帯電防止シート。
【請求項7】
静電気対策が必須なクリーンルーム内の作業台や搬送台に置く卓上シートとして用いる請求項1〜請求項6何れか1項記載の帯電防止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームでの半導体製造プロセスなど、電子部品に対する静電対策が必要な作業に使われる帯電防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや有機ELのガラス等では静電気放電(Electro-Static-Discharge)による損傷、誤動作が問題になることがある。特に、製造時における静電気放電は、非常に精密で高価な製品の歩留まりに多大な影響を与えることから、製造環境における静電気対策は必須条件となっている。また、IEC(国際電気標準化会議)の規格であるIEC61340-5-1/5-2によると表面抵抗(表面抵抗率)と点間抵抗(接地抵抗)が厳しく規定されており、近年では静電気拡散性を有する資材を使うことが望ましいとされている。
【0003】
静電気の主な発生原因としては、1)外部からの静電気流入、2)製品の摩擦帯電等による自己放電、が挙げられる。外部からの静電気流入については、特に人体の帯電による影響が大きいが、ヒトの手首にリストストラップを付けて作業することで改善することができる。
また、自己放電についての対策としては、i)製品を加工する作業台をアース接地すること、ii)作業空間を加湿すること、iii)イオナイザー等の除電機により製品にイオンを吹き付けること、iv)製品を載せるマット等に帯電防止スプレーを塗布すること、などが挙げられる。しかし、アース接地は金属等の導体にしか使えず、ガラスなどの絶縁素材を接地しても効果が無いこと、作業環境への加湿は水分による製品の汚染が懸念されること、イオナイザ―では局所的な静電対策に対しては効果が薄いこと、マット等にスプレーする方法は手軽ではあるが、表面の乾燥や汚染等が問題になり、また耐久性に欠ける欠点があること、などが問題になる。
したがって、それぞれの静電対策についてそれぞれに問題がある中で、トータル的な解決策としては、導電素材を作業環境に敷き詰めることで対応していることが多い。
【0004】
導電素材の例として、例えば、国際公開第2011/155492号(特許文献1)には帯電防止コートPETが提案されている。表面への帯電防止剤の塗布が均一で、表面抵抗率を低く抑えることができるが、接地抵抗が高くアース効果がないため、IECの規格から外れてしまう。また、作業面に固着させるには粘着テープ等が必要であり、さらに作業台への接触面に浮き面があると接触面積が一定でなく帯電し易い場合がある。
【0005】
また、特開平10−114886号公報(特許文献2)には、帯電防止層を有する粘着テープが提案されている。こうした粘着テープは、易剥離性がなく作業面への汚染や操作性の低下を起こしやすい。また、帯電防止性能として抵抗値が大きく、さらには非常に薄くクッション性を有さないという欠点がある。
特開2010−275504号公報(特許文献3)では、帯電防止性置敷マットとして、塩ビのマットにカーボンブラックなどの導電性インキを塗布した方法が提案されている
。しかしこの方法は、導電性フィラーの分散安定性に課題があり、局所的に表面抵抗率の高い、もしくは低い箇所が発生し、帯電レベルが異なる物質が接触した時に電流が流れ易い環境となる。また、着色によりシート材の下の部分が見えない状態にあるため、作業面を視認することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/155492号
【特許文献2】特開平10−114886号公報
【特許文献3】特開2010−275504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、半導体製造プロセスなどの静電対策における従来の問題に対して鋭意検討してなされたものであり、帯電防止性能の発現、向上、安定を企図するとともに、製造現場での作業効率の高い製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため以下の発明を提供する。
即ち、帯電防止処理を施した基材シートに高分子ゲルを積層した積層体を形成する帯電防止シートであって、高分子ゲルが、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を1つ有する重合性単量体と分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体を共重合架橋した高分子マトリックス内に、少なくともポリビニルアルコール系重合体を溶解した水と該ポリビニルアルコール系重合体以外の多価アルコールが保持されたゲルであり、接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×1012Ω以下であり、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下である帯電防止シートである。
【0009】
高分子ゲルを用いるため、基材シート単体では困難であった作業台や搬送キャリアー、卓上への取付けと固定が簡単であり、また再剥離が容易である。さらに、高分子ゲルが、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を1つ有する重合性単量体と分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体を共重合架橋した高分子マトリックス内に、少なくともポリビニルアルコール系重合体を溶解した水と該ポリビニルアルコール系重合体以外の多価アルコールが保持されたゲルであるため、自己粘着性があり、作業台等の被着体へ固定し易く、また引き剥がす際には糊残りなく剥すことができる。そのため、被着体を汚すこと無く、簡単に取付け、取り外しができ、使い回しをすることもできる。
【0010】
そして、こうした高分子ゲルと帯電防止処理を施した基材シートとを積層した積層体を形成するため、基材シートや高分子ゲルの硬さや厚みを簡単に変えることができ、それにより使用用途に応じた硬さや感触を適宜調整することができる。例えば、作業台や搬送キャリアに載せるマット、壁材は硬めにし、PCのキーボードにかぶせるカバーは柔らかめするなど、使い分けが容易である。
また、高分子ゲルの導電性と帯電防止処理を施した基材シートとの組合せで抵抗コントロールが可能である。表面抵抗率については、低すぎず、高すぎない数値にすることが容易であり、接地抵抗についても、高分子ゲルと基材シートを組合せ所定の範囲に収めることができる。
【0011】
抵抗値については、接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×1012Ω以下であり、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下とすることができる。接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×1012Ω以下、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下としたため、最低限の静電対策に対する対応が可能である。
あるいは、接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満であり、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満である帯電防止シートとすることができる。接地抵抗が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満、基材シート表面側の表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満であれば、IECの規格に準じることができる。
【0012】
基材シートの一方面に帯電防止コートを設け、他方面に高分子ゲルを積層した積層体を構成する帯電防止シートとすることができる。高分子ゲルを積層した側とは反対側に帯電防止コートを施したため、帯電防止シートの表面側の表面抵抗率を所望の抵抗範囲に調整し易い。また、基材シートと高分子ゲルとを積層した積層体の接地抵抗を所望の抵抗範囲に調整し易い。
【0013】
高分子ゲルの高分子マトリックスがアクリル系であり、高分子ゲルの表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満である帯電防止シートとすることができる。
高分子ゲルの高分子マトリックスがアクリル系であるため、水を含ませ易く、またポリビニルアルコール系重合体との間で密な構造を取りやすい。そのため、被着体への固定性や糊残りなく剥離できる再剥離性に優れる。さらに所望の表面抵抗率に調整し易い。そして、高分子ゲルの表面抵抗率を1.0×10Ω/□以上1.0×10Ω/□未満としたため、IECの基準に準じることができ、また、接地抵抗も所望の抵抗範囲に調整することが容易である。
【0014】
高分子ゲルのC型硬度が5〜80であり、SUS(ステンレス鋼板を意味し、以下同様である)に対する水平方向の保持力が5N/(20mm×120mm)以上であり、SUSからの剥離力が1N/20mm以下である帯電防止シートとすることができる。
高分子ゲルのC型硬度を5〜80としたため、硬すぎず柔らかすぎず作業台に置くマットなどとして好適に用いることができる。また、SUSに対する水平方向の保持力が5N/(20mm×120mm)以上であり、SUSからの剥離力が1N/20mm以下としたため、作業台等の被着体に固定し易くまた取り外すときには容易に引き剥がすことができる。そのため、使い勝手に優れる帯電防止シートである。
【0015】
基材シートがオレフィン系の透明または白色シートである帯電防止シートとすることができる。基材シートをオレフィン系の樹脂としたため、表面抵抗率を所望の抵抗範囲に調整し易い。また、表面が傷つきにくく経時劣化を起こしにくい。
そして、透明とすることで、PCのキーボードや操作板の表面を覆うように使うことができ、また、机の下の位置合わせを行うことや指示書など資料を見ながら行う作業が可能となる。また、白色とすることで外観を改善することができる。
【0016】
こうした帯電防止シートは、電子部品の静電対策が必要な場面、箇所に好適に用いることができ、例えば、ダイジング工程中やガラス研磨時の静電対策として、また、クリーンルーム内の作業台や搬送台に置く卓上シートや、クリ―ンルーム内の床材、壁材、そして操作盤やタッチパネル表面、PCキーボード上などを覆うシートとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の帯電防止シートによれば、帯電防止性能に優れ、クリーンルーム内の作業台などの被着体に簡単に固定し、また取り外しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】各実験例で用いる試料を表す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
帯電防止シート: 本発明の帯電防止シートは、基材シートと高分子ゲルとからなるものである。
高分子ゲルは、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を1つ有する重合性単量体と分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体を共重合架橋した高分子マトリックス内に、少なくともポリビニルアルコール系重合体を溶解した水とポリビニルアルコール系重合体以外の多価アルコールが保持されている。
【0020】
高分子マトリックスを形成する重合性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水溶性アクリルエステル、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等のビニルアミド系単量体、アリルアルコール等の非イオン性単量体のほか、(メタ)アクリル酸又はその塩、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基含有アニオン性単量体又はその塩、ジメチルアミノメチルプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基又はアンモニウム基含有カチオン性単量体等の単独または複数が挙げられる。
【0021】
上記重合性単量体の中で、後述するポリビニルアルコール系重合体の溶解に水が必要なことから、水溶性を有する重合性単量体が好ましく、重合反応性が良好なことからアクリルアミド系単量体または水溶性アクリルエステルがより好ましい。中でも、高分子ゲル中の他の成分との親和性が良好なことからアクリルアミド系単量体がより好ましい。
重合性単量体の濃度は、高分子ゲル全量100重量部に対して13重量部〜30量部であることが好ましい。重合性単量体の濃度を13重量部未満にして高分子ゲルを作成した場合、ゲル中の高分子マトリックスの密度が低いため、十分に腰強度の大きな高分子ゲルを得ることが出来ず、被着体から剥離する際に千切れが生じ、被着体表面に糊残りが生じやすくなる。一方、重合性単量体の濃度が30重量部を超える場合は、ゲルの腰強度が高くなる反面、柔軟性が損なわれると同時に脆いゲルとなるため、ゲルカスが異物として被着体に付着しやすくなる。
【0022】
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体であれば特に限定されないが、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート等のアクリルアミド系または多官能アクリル系単量体が好ましい。
この架橋性単量体の濃度は、高分子ゲル全量100重量部に対して0.001重量部〜1.0重量部であることが好ましく、0.01重量部〜0.5重量部であることがより好ましい。架橋性単量体の濃度が1.0重量部を超えた場合、高分子マトリックスの架橋密度が高くなりすぎ、腰強度が高い反面、脆い高分子ゲルとなり、ゲルカスが異物として被着体に付着しやすくなる。一方、架橋性単量体の濃度が0.001重量部未満では架橋密度が低くなりすぎ、高分子ゲルが得られ難い。
【0023】
ポリビニルアルコール系重合体は、帯電防止シートの粘着性を高めるとともに千切れや糊残りを防止するために添加される。重合性単量体と架橋性単量体の含有量を調整するだけでは、粘着性が伴わなかったり、硬く脆いゲルとなったりするだけで千切れや糊残りの問題を解消することができないからである。ポリビニルアルコール系重合体を加えることで、重合性単量体と架橋性単量体とで架橋された高分子マトリックスをポリビニルアルコール系重合体が貫通し、S-IPN (Semi-Interpenetrating Polymer Network) 構造というゲル構造が形成されることで、こうした効果が得られるものと推測させる。
また、ポリビニルアルコール系重合体を溶解した水を高分子マトリックス内に保持させることにより、高分子ゲル中の水分の乾燥が抑制され、経時での帯電防止性能が維持されるという効果も得られる。
【0024】
ポリビニルアルコール系重合体の重合度は、粘度平均重合度において500〜3000であることが好ましい。重合度が500未満の場合は、機械的強度が向上し難く、逆に、重合度が3000を超える場合は、溶解する際に粘度が上昇し均一なモノマー配合液が得られ難い。
【0025】
ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、80%〜98%であることが好ましい。ケン化度が80%未満であると、モノマー配合液を調製する際の溶解性は向上するが、得られた高分子ゲルの安定性が低下し易い。逆に、ケン化度が98%を超えると、溶解性が低下しモノマー配合液の調製が難しくなる。
【0026】
ポリビニルアルコール系重合体の含有量は、重合性単量体と架橋性単量体とが共重合架橋した高分子マトリックス100重量部に対して、0.15重量部〜30重量部であることが好ましい。0.15重量部未満では、機械的強度が向上し難く、30重量部を超えると、ポリビニルアルコール系重合体の溶解性が悪くなり均一な高分子ゲルが得られ難い。
【0027】
ポリビニルアルコール系重合体には、例えば、ポリビニルアルコールやエチレンポリビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールの誘導体、ポリビニルアルコールの変性体等が例示できる。
また、ポリビニルアルコール系重合体は、直鎖状高分子で構成されたものであることが好ましい。S-IPN構造が得られ易いからである。
【0028】
高分子ゲル中に含まれる水は、高分子マトリックス100重量部に対して、40重量部〜460重量部であることが好ましい。水の濃度が40重量部未満ではポリビニルアルコール系重合体を溶解し難くなる場合がある。一方、水の濃度が460重量部を超えると、ポリビニルアルコール系重合体の溶解は容易である反面、高分子マトリックスが保持可能な水分量を超え易いため、乾燥による物性変動が生じ易くなる。
【0029】
こうした高分子ゲルは、保湿性、可塑性を向上させるために上記ポリビニルアルコール系重合体とは別に多価アルコールを含有させている。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリプロピレンオキシド等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレンポリグリセリンエーテル等の多価アルコール変成体等を例示できるが、常温で液状、詳細には、高分子ゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状の多価アルコールが好ましい。
【0030】
多価アルコールの濃度は、高分子マトリックス100重量部に対して580重量部以下であることが好ましい。中でも、100重量部〜580重量部用いた場合は、得られた高分子ゲルに保湿性を付与し、乾燥による物性変化を抑え、高分子ゲル本来の柔軟性や帯電防止性能をより長時間発揮させることができる点でより好ましい。多価アルコールの濃度が580重量部を超える場合は、相対的に水分量が少なくなり、ポリビニルアルコール系重合体を溶かし込む事が難しくなり、高強度な高分子ゲルが得られ難い。
【0031】
重合開始剤は特に限定されないが、加熱により重合架橋させる場合は、アゾビスシアノ吉草酸やアゾビスアミジノプロパン2塩酸塩等のアゾ重合開始剤を用いることができる。また、光の照射によって重合させる場合は、アゾ系、アセトフェノン系をはじめとする公知の光重合開始剤を使用する事ができる。また、これらの重合開始剤の複数を混合し、光の照射と加熱を同時に行なっても良い。
【0032】
また、硫酸第1鉄やピロ亜硫酸塩等の還元剤と過酸化水素やペルオキソ2硫酸塩等の過酸化物からなるレドックス重合開始剤等も用いることができる。これらのレドックス重合開始剤を用いる場合、加熱をしなくても反応を行なう事が可能であるが、残存モノマーの低減化や反応時間の短縮のため、加熱を行なうことが好ましい。
【0033】
さらに高分子ゲルには、必要に応じて各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、着色剤、染料等が挙げられる。
【0034】
高分子ゲルの製造方法としては、次のような方法が例示できる。
分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を1つ有する重合性単量体と、分子内に重合性を有する炭素―炭素二重結合を2つ以上有する架橋性単量体と、ポリビニルアルコール系重合体と、水と、ポリビニルアルコール系重合体以外の多価アルコールと、必要により重合開始剤や添加剤とを均一に混合溶解し、モノマー配合液を製造する。そして、重合性単量体と架橋性単量体を重合架橋させることで高分子ゲルが得られる。モノマー配合液は液状のため、例えば樹脂型などに流し込んで重合架橋させると、任意の形状の高分子ゲルを製造することができる。また、一定の間隔に保持した2枚のフィルムの間にモノマー配合液を流し込んで重合架橋させれば、シート状の高分子ゲルが得られる。
重合性単量体と架橋性単量体との重合架橋は、加熱または光照射する方法、電子線やガンマ線など放射線を照射する方法が挙げられるが、放射線照射はそのための特殊な設備を要するため加熱または光照射の方が好ましい。こうした製造方法を用いると製造工程が簡素であり、連続生産も可能であるため、非常に経済的であると同時に、安定した物性の高分子ゲルを得ることができる。
【0035】
高分子ゲルの粘着性能は、SUSに対する水平方向の保持力とSUSからの剥離力である90°方向へ引き剥がすときの応力で規定することができる。
SUSに対する水平方向の保持力は、20mm×120mmの短冊状に高分子ゲルを切断してSUSに貼りつけ、滑車とおもりの付いた治具にこの高分子ゲルを取り付けて、高分子ゲルに対して水平方向にかかる荷重を測定した。この際、5Nのおもりを吊り下げてその自重で高分子ゲルを20mmの幅に対して垂直の水平方向に引張り、30分後にゲルがずれていないかを確認し、ずれていなければ5N/(20mm×120mm)以上の保持力があるとし、ずれていれば5N/(20mm×120mm)未満の保持力したないとそれぞれ判断した。
SUSに対する水平方向の保持力は5N/(20mm×120mm)以上が好ましい。5N/(20mm×120mm)未満であると、作業台等の被着体に置いたときに動き易く、作業性が悪くなるおそれがあるからである。
【0036】
また、90度方向へ引きはがす応力(SUSからの剥離力)は、SUSに対して、20mm×120mmの短冊状の面積で貼りつけた高分子ゲルをその20mm幅の端面から90度方向に300mm/minの速度で引きはがした時の最大応力で規定し、その値は1N/20mm以下(下限としては0.05N/20mm)が好ましい。
【0037】
高分子ゲルの電気性能は、表面抵抗率で1.0×10Ω/□以上1.0×10 Ω/□未満であることが好ましい。1.0×10Ω/□以上1.0×10 Ω/□未満の範囲内であれば、IEC(国際電気標準会議)規格に準じた範囲となる。
高分子ゲルの厚みは、0.01mm〜5.00mmとすることができる。厚みが厚いほどクッション性が高まり、接地抵抗も低くなる傾向にある。
【0038】
基材シートは、高分子ゲルを担持し、形態を保持して帯電防止シートとしての取扱い性を高める部材である。
基材シートとしては、樹脂フィルムを用いれば高分子ゲルを補強し、またテープ状の形態を保持することができるため好ましい。樹脂フィルムには、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等からなる樹脂フィルムが挙げられるが、二軸延伸したPETフィルムや、PEフィルムがより好適に用いられる。
【0039】
基材シートに帯電防止処理を施す方法には、樹脂フィルムの表面に帯電防止剤や導電性ポリマーを塗布やスプレーして帯電防止層を形成する方法、樹脂フィルムの形成時に耐電防止剤を混合したり、導電粒子等を練り込んだりする方法、導電性樹脂を基材に重合させる方法等が挙げられる。こうした基材シートの中では、帯電防止処理を表面に施した基材シートが好ましい。練り込み方式によると、導電粒子の分散不良等に起因して局所的な電位による静電放電の悪影響が考えられるのに対し、帯電防止層形成による表面処理は帯電処理が均一化されるため、局所的な電位差が起きるリスクを低減することができるからである。
【0040】
帯電防止剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性イオン系の各種界面活性剤や、カーボン、金属酸化物等が挙げられる。
また、導電性ポリマーとしては、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系等が挙げられる。なお、帯電防止処理を施した基材シートには、上記のような帯電防止処理が既になされている市販のシートを利用しても良い。
【0041】
基材シートの帯電防止性能としては、表面抵抗率で1×10Ω/□以上1×10Ω/□未満であることが好ましい。被着体から剥離した際に帯電することを防止して、製品に埃を寄せ付けないためであり、また、抵抗が低すぎて電子部品に悪影響を及ぼすことが無いようにするためである。
【0042】
基材シートの厚みは、使用箇所等に応じて適宜変更が可能であるが、10μm〜200μmとすることができる。接地抵抗を低くするためには薄くする方が良いが、厚みをコントロールすることで所望の接地抵抗を得ることができる。また、厚みが厚いほど硬く剛性が出る。柔軟性が必要な場合は、PEフィルムのような柔らかい素材でなるフィルムや薄いフィルムを用いることが好ましく、剛性が必要な場合は、PETフィルムのような剛性のある素材でなるフィルムや厚いフィルムを用いることが好ましい。
【0043】
また基材シートは、透明または白色であることが好ましい。透明であれば、操作盤などのタッチパネルに貼りつけても上から作業することが可能であるし、作業台では指示書や位置合わせなどが簡略化できる。白色であれば、汚れがはっきり見えるため、交換時期等の目安になるし、外観が美麗で見た目が良い。
【0044】
高分子ゲルと基材シートを合わせた帯電防止シートの接地抵抗は、1×10Ω以上1×1012Ω以下とすることができ、1×10Ω以上1×10Ω未満とすることが好ましい。1.0×10Ω以上1.0×1012 Ω以下の範囲は静電対策が求められる様々な場面で要求される数値であり、1.0×10Ω以上1.0×10 Ω未満の範囲内であれば、IEC(国際電気標準会議)規格に準じた範囲となる。
また、高分子ゲルと基材シートを合わせた帯電防止シートの基材シート表面側の表面抵抗率は、1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下とすることができ、1×10Ω/□以上1×10Ω/□未満とすることが好ましい。1.0×10Ω/□以上1.0×1012 Ω/□以下の範囲は静電対策が求められる様々な場面で要求される数値であり、1.0×10Ω/□以上1.0×10 Ω/□未満の範囲内であれば、IEC(国際電気標準会議)規格に準じた範囲となる。
【0045】
帯電防止シートの製造方法としては、次のような方法が例示できる。
高分子ゲルとなる重合前のモノマー配合液を作製し、この組成物を所定の形状の型枠に流し込み、次いで重合させることで高分子ゲルを得る。得られた高分子ゲルと基材シートは、基材シート上に高分子ゲルを載せることや、高分子ゲルに基材シートを貼り合わせたりすることで一体化させる。こうして帯電防止シートを得ることができる。
また、基材シート上に高分子ゲルとなる重合前のモノマー配合液を塗布し、一定の厚みに保持した状態で重合させることもできる。あるいは、基材シートとそれとは別のシートを一定間隔に保持した間に先のモノマー配合液を流し込み重合させて帯電防止シートを得ることもできる。
【0046】
上記帯電防止シートは帯電防止性能に優れ、クリーンルーム内の作業台などの被着体に簡単に固定し、また取り外しすることができる。
【実施例】
【0047】
以下に実験例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。
実験例1: 重合性単量体としてアクリルアミドを24重量部 、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.3重量部 、湿潤剤として多価アルコールであるグリセリンを45重量部、粘度平均重合度1800でありケン化度88%のポリビニルアルコールを3重量部に、溶媒としての水を足して合計で99.8重量部になるように混合し溶解攪拌した。次に、この組成物99.8重量部に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(BASFジャパン社製「IRUGACURE2959(商品名)」)を0.2重量部加え、更に攪拌して溶解しモノマー配合液を得た。得られたモノマー配合液を帯電防止剤を塗布して帯電防止処理を施してある100μm厚の透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材シート)(長岡産業社製「NAS−PET(商品名)」)の帯電防止処理を施した面とは反対面に薄く展開し、その上からシリコーンコーティングされた38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)を被せた。そして、これらのフィルムの間で配合液が均一に押し広げられ、高分子ゲルの厚さが0.3mmになるように固定した。これにメタルハライドランプを使用して、エネルギー量2000mJ/cmの紫外線を照射し、重合架橋反応を行って、一方面にベース基材、他方面にセパレータが貼り付けられた試料1となる厚さ438μmの仮固定材を得た。
【0048】
実験例2〜実験例10: 実験例2〜実験例10では、上記実験例1のモノマー配合液に代えて、表1に示した配合に変更したモノマー配合液を用いた。また、実験例5では白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(長岡産業社製の白色PET)とし、実験例6では高分子ゲル厚を1000μmとし、実験例8では基材シート厚を38μmとし、実験例9ではシート厚を60μmのポリエチレンフィルムとし、実験例10では帯電防止剤をフィルムに練り込んであるやや黒色透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(タニムラ社製クリーンルーム用帯電防止透明テープ「MK-APT(商品名)」)を用いている。それ以外は、実験例1と同様にしてそれぞれ試料2〜試料10となる帯電防止シートを作製した。
【0049】
実験例11,12: 実験例11では上記実験例1の帯電防止シートに代えて帯電防止処理を施してある基材シートにアクリル系粘着剤を積層してある粘着テープを利用した。また、実験例12では、上記実験例1でモノマー配合液を重合架橋反応した高分子ゲルに代えてシリコンゲルを用い、実験例1と同様の基材シート上に貼着した。こうして試料11および試料12となる帯電防止シートを作製した。ここで、試料11の粘着テープには帯電防止粘着シート6671 #25(寺岡製作所社製)を、試料12のシリコンゲルはGel film 0(Gel-Pak社製)をそれぞれ用いている。
【0050】
実験例13: 実験例13では上記実験例1の帯電防止シートに変えて市販の帯電防止シートとしてアキレス社製セイデンクリスタルを利用した。全体の厚みが2000μmであり、透明で、表面抵抗率が1×1010Ω/□であるが、SUSへの密着性、保持性がなく、易剥離はするが、SUSとの間に隙間があるため、接地抵抗が安定しない。
【0051】
上記実験例1〜実験例13で得た試料1〜試料13の各組成について図1で示す一覧表に示した。一覧表(図1)において高分子ゲルを構成する組成、粘着テープを構成するアクリル系粘着剤、シリコンゲルのそれぞれの重量は全て重量部で表している。
【0052】
〔性能評価の方法〕
上記実験例1〜実験例13で得られた試料1〜試料13の帯電防止シートの有する帯電防止性、粘着性、ゲルの硬さ、外観について、以下に示す測定や観察を行い評価した。それらの結果も表1に示した。
【0053】
(1)粘着性
粘着性は、各試料を構成する高分子ゲル(高分子ゲルを用いない試料は基材シート以外の部分)について、SUSからの剥離力とSUSに対する水平方向の保持力とを測定し評価した。即ち、各試料から基材シートを取り除いたのと同じ厚みの高分子ゲルを形成して以下の実験を行った。
【0054】
i)SUSからの剥離力(90°方向へ引き剥がすときの応力):
各試料を幅20mm、長さ120mmとなるように裁断し、セパレータ―であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したベース基材と高分子ゲルからなる試験片を作製し、被着体を800番で鏡面仕上げされたSUS304の鋼板(SUS)として、試験片の高分子ゲル面を被着体に貼付し、2kgの圧着ローラーを1往復して圧着させた。試験片の端(短辺側)をチャックで固定し、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、「RTE−1210(商品名)」)により、温度23±5℃、湿度55±10%、試験速度300mm / min.の条件で90度方向に引き剥がした際の応力(剥離力)(N/20mm)を測定した。剥離力が0.1N/20mm以上1.0N/20mm以下である場合を“○”、0.1/20mm未満であるか、1.0N/20mmを超える場合を“×”とした。
【0055】
ii)SUSに対する水平方向の保持力:
各試料の基材シートを貼り付けた高分子ゲルを20mm×130mmの短冊状に裁断し、SUS304の鋼板(SUS)に20mm×120mmの面積で張り合わせた。次に、SUSからはみ出させた20mm×10mmの高分子ゲルの端をクリップで挟み、クリップから水平方向に伸びた糸を滑車を通じて下方向に吊り下がるおもりにつなげ、SUSと帯電防止シートの接触面に対して水平方向に5Nの引張荷重がかかるようにした。そして、30分後に高分子ゲルがSUSからずれていないを確認し、ずれていなければ5N/(20mm×120mm)以上の保持力があり“○”と判断し、ずれていればその保持力がなく“×”と判断した。
【0056】
(2)高分子ゲルのゲル硬度
各試料の高分子ゲルを幅44mm×奥行18mm×厚み10mm以上の大きさに形成し、アスカーゴム硬度計C型にて1kgの荷重をかけて1分後の硬度値を読み取った。
その硬度が5〜80である場合を“○”、5未満であるか80を超える場合を“×”とし
た。なお、試料11〜試料13については、粘着性や帯電防止性が優れないことから測定を行っていない。
【0057】
(3)外観
各試料の基材シート側からみた外観を観察した。透けて反対側が見える場合を“透明”とし、透けることなく白く見える場合を“白色”とした。即ち、無色透明に限らず、白色透明を含め着色透明の場合は“透明”とした。
【0058】
(4)帯電防止性
帯電防止性は、高分子ゲルだけで計った表面抵抗率(Ω/□)と、各試料のシート基材側の表面抵抗率(Ω/□)および各試料の接地抵抗(Ω)について測定し評価した。
iii)高分子ゲルの表面抵抗率:
各試料について100mm角以上の面積に裁断し、セパレータであるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した試験片の高分子ゲル面上の表面抵抗率(Ω/□)を表面抵抗計(トレック・ジャパン社製、本体:Model−152、プローブ:152P−CR)を用いて測定した。測定環境は、温度23±5℃、湿度55±10%で実施した。表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上1.0×109Ω/□未満である場合を“○”、1.0×1012Ω/□を超える場合を“×”とした。また、1.0×10Ω/□未満である場合や1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下を“△”とした。“△”としたのは、帯電防止性能としては良好であるが、表面抵抗率が低いため電子部品に悪影響を及ぼすおそれや高度な静電気除去が必要な電子機器ではESD特性が満足に得られないケースがあるからである。なお、試料11、試料13については、粘着性が優れないことから測定を行っていない。
【0059】
iv)帯電防止シートの表面抵抗率:
各試料について100mm角以上の面積に裁断し、PET面試験片上の表面抵抗率(Ω/□)を表面抵抗計(トレック・ジャパン社製、本体:Model−152、プローブ:152P−CR)を用いて測定した。測定環境は、温度23±5℃、湿度55±10%で実施した。表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上1.0×109Ω/□未満である場合を“○”、1.0×109Ω/□を超える場合を“×”とした。また、1.0×10Ω/□未満である場合を“△”とした。“△”としたのは、帯電防止性能としては良好であるが、表面抵抗率が低いため電子部品に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
【0060】
v)帯電防止シートの接地抵抗:
各試料の接地抵抗は次のようにして測定した。
幅200mm、長さ200mmの面積の試料を作成し、SUS(300mm×400mm)に高分子ゲルが接触するように各試料の帯電防止シートをSUSに貼り合わせ、基材シート上とSUS上にそれぞれ水平方向の間隔が30cmとなるように抵抗計(トレック・ジャパン社製、本体:Model−152、プローブ:152AP−5P)を取り付けて、距離を30cmとした接地抵抗(点間抵抗)を測定した。測定環境は、温度23±5℃、湿度55±10%で実施した。その接地抵抗の値が、1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満の場合を“○”、1.0×10Ω以上1.0×1012Ω以下の場合を“△”、1.0×10Ω未満であるか1.0×1012Ωを超える場合を“×”とした。
【0061】
〔性能評価の結果〕
各試料の性能評価結果は表1に示したとおりであるが、これらから以下の検討を行った。
試料1〜試料9の帯電防止シートは、何れも粘着性や帯電防止性に優れた帯電防止シートであった。これに対して、基材シートとなる樹脂に帯電防止剤を練り込んだ試料10は帯電防止性の評価となる表面抵抗率が1×10Ω/□を超え接地抵抗が1×10Ωを超えており、試料1〜試料9よりはやや帯電防止性に劣る結果となった。
【0062】
また、高分子ゲルに代えてアクリル系粘着剤からなる粘着テープを用いた試料11は、剥離力が5N/20mmを超え引き剥がしし難く再剥離性が悪かった。高分子ゲルに代えてシリコンゲルを用いた試料12は、シリコンゲルの表面抵抗率が1.0×1012Ω/□を超えてしまい、帯電防止性が悪かった。そして試料13は、保持力、帯電防止性に劣る結果となった。
図1