特許 6063802 耐火二層管の防火構造および防火装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6063802

(24)【登録日】2016年12月22日

(45)【発行日】2017年1月18日

(54)【発明の名称】耐火二層管の防火構造および防火装置

(51)【国際特許分類】

   F16L 5/04 20060101AFI20170106BHJP

   F16L 9/14 20060101ALI20170106BHJP

【ＦＩ】

   F16L5/04

   F16L9/14

【請求項の数】7

【全頁数】11

(21)【出願番号】特願2013-81063(P2013-81063)

(22)【出願日】2013年4月9日

(65)【公開番号】特開2014-202330(P2014-202330A)

(43)【公開日】2014年10月27日

【審査請求日】2016年2月23日

(73)【特許権者】

【識別番号】000187194

【氏名又は名称】昭和電工建材株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100109911

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 義仁

(74)【代理人】

【識別番号】100071168

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 久義

(72)【発明者】

【氏名】関口 尊文

(72)【発明者】

【氏名】山本 信治

【審査官】 黒石 孝志

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１２−９２６４４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−５６５３８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−２３６６７７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−２２５８１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００５−２０１３０６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ１６Ｌ ５／０４

Ｆ１６Ｌ ９／１４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

熱融解性の内管の外周に、耐火性材料によって構成された耐火層が設けられた耐火二層管の防火構造であって、
過熱時に膨張して管路を閉塞する断熱性熱膨張部材を含む防火装置が、前記耐火二層管における前記耐火層の外周に設けられていることを特徴とする耐火二層管の防火構造。

【請求項2】

前記防火装置は、前記熱膨張部材の外周を覆い、かつ熱膨張部材を保持する金属製の保持部材を備える請求項１に記載の耐火二層管の防火構造。

【請求項3】

前記耐火二層管の端部に接続された管継手を備え、
前記管継手に前記防火装置が支持されている請求項１または２に記載の耐火二層管の防火構造。

【請求項4】

垂直方向に沿って配置された前記耐火二層管の上端部が前記管継手に接続され、
前記防火装置がその外周面に取り付けられたフックを前記管継手の外周部に引っ掛けることにより、前記管継手に吊持されている請求項３に記載の耐火二層管の防火構造。

【請求項5】

前記耐火層は、耐火性材料が含浸された多孔質シートによって形成されている請求項１〜４のいずれか１項に記載の耐火二層管の防火構造。

【請求項6】

前記耐火二層管における前記内管と前記耐火層との間に、多孔質シートによって形成された吸音層が設けられている請求項１〜５のいずれか１項に記載の耐火二層管の防火構造。

【請求項7】

熱融解性の内管の外周に、耐火性材料によって構成された耐火層が設けられた耐火二層管に取り付けられる防火装置であって、
前記耐火二層管における前記耐火層の外周に設けられ、かつ
過熱時に膨張して管路を閉塞する断熱性熱膨張部材を含むことを特徴とする防火装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、集合住宅等の建築物において排水用や換気用として用いられる耐火二層管の防火構造および防火装置に関する。

【背景技術】

【0002】

集合住宅やオフィスビル等の多人数が生活する建築物において、出火に際して延焼を起こしてはならない防火区画として、床壁や天井壁の上下仕切（コンクリートスラブ）等が挙げられる。

【0003】

一方、排水用配管や換気用配管は、防火区画を貫通して配置されるため、その貫通部を貫通する配管には、防火区画を越えて隣接する区域に火炎や煙が伝わらないように防火構造が採用されている。

【0004】

例えば下記特許文献１，２に示す配管の防火構造は、防火区画としてのコンクリートスラブの貫通部に、管継手が配置されるとともに、この管継手に接続される配管の接続端部の外周に、過熱時に膨張する断熱性の熱膨張部材が装着されている。そして万が一、火災が発生したような場合、火災の熱によって、熱膨張部材が膨張することにより、配管の管路が閉塞されて火炎や煙が隣接区間に伝達するのを防止するようにしている。

【0005】

この防火構造に用いられる配管は、例えばポリ塩化ビニル樹脂等の硬質合成樹脂によって構成されており、出火時には、燃焼によって炭化した配管材料（合成樹脂）と、熱膨張した熱膨張部材とによって、遮炎性や断熱性を確保するようにしている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開平９−１５２０６５号公報

【特許文献2】特開２０１０−９０５４２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

従来より、集合住宅用の配管の防火に関する技術分野においては、言うまでもなく、出火時における遮炎性や断熱性等の防火性の向上が可及的に求められている。例えば出火時の防火性を向上させるには、上記の熱膨張部材の以外に、他の防火手段を別途組み込むことが考えられる。しかしながらそうすると、他の防火手段を組み込む分、構造の複雑化およびコストの増大を来してしまうという課題が発生する。

【0008】

この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、構造の簡素化およびコストの削減を図りつつ、出火時の遮炎性および断熱性を向上させることができる耐火二層管の防火構造および防火装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。

【0010】

［１］熱融解性の内管の外周に、耐火性材料によって構成された耐火層が設けられた耐火二層管の防火構造であって、
過熱時に膨張して管路を閉塞する断熱性熱膨張部材を含む防火装置が、前記耐火二層管における前記耐火層の外周に設けられていることを特徴とする耐火二層管の防火構造。

【0011】

［２］前記防火装置は、前記熱膨張部材の外周を覆い、かつ熱膨張部材を保持する金属製の保持部材を備える前項１に記載の耐火二層管の防火構造。

【0012】

［３］前記耐火二層管の端部に接続された管継手を備え、
前記管継手に前記防火装置が支持されている前項１または２に記載の耐火二層管の防火構造。

【0013】

［４］垂直方向に沿って配置された前記耐火二層管の上端部が前記管継手に接続され、
前記防火装置がその外周面に取り付けられたフックを前記管継手の外周部に引っ掛けることにより、前記管継手に吊持されている前項３に記載の耐火二層管の防火構造。

【0014】

［５］前記耐火層は、耐火性材料が含浸された多孔質シートによって形成されている前項１〜４のいずれか１項に記載の耐火二層管の防火構造。

【0015】

［６］前記耐火二層管における前記内管と前記耐火層との間に、多孔質シートによって形成された吸音層が設けられている前項１〜５のいずれか１項に記載の耐火二層管の防火構造。

【0016】

［７］熱融解性の内管の外周に、耐火性材料によって構成された耐火層が設けられた耐火二層管に取り付けられる防火装置であって、
前記耐火二層管における前記耐火層の外周に設けられ、かつ
過熱時に膨張して管路を閉塞する断熱性熱膨張部材を含むことを特徴とする防火装置。

【発明の効果】

【0017】

発明［１］の耐火二層管の防火構造によれば、熱膨張部材を耐火二層管における耐火層の外側に設けているため、出火時に熱膨張部材の膨張に伴って耐火層の耐火性材料が破砕し、その破砕した耐火性材料が熱膨張部材に混入した混合部材によって管路が閉塞される。混合部材中の耐火性材料は、十分な耐火性を備えるため、耐火性および遮炎性を向上できるとともに、骨材や補強材としても機能するため、混合部材の形態が安定し、崩壊等の不具合を防止でき、一層防火性を向上させることができる。さらに耐火二層管を構成している耐火性材料を利用して防火性を向上させているため、防火用の材料を新たに用いる必要がなく、その分、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。

【0018】

発明［２］の耐火二層管の防火構造によれば、熱膨張部材を確実に保持できるとともに、出火時に保持部材によって熱膨張部材が外側に膨張するのを抑制でき、熱膨張部材を確実に内側に膨張させることができ、管路をより確実に閉塞することができる。

【0019】

発明［３］［４］の配管の防火構造によれば、管継手のフランジ等を利用して、防火装置を所定位置に確実に取り付けることができる。

【0020】

発明［５］［６］の耐火二層管の防火構造によれば、出火時に熱膨張部材の膨張に伴って多孔質シートが破砕し、その破砕した多孔質シートが耐火性材料と共に熱膨張部材に混入した混合部材によって管路が閉塞される。混合部材中の多孔質シートは、耐火性材料や熱膨張部材を保持する保持基材や補強材としても機能するため、管路を閉塞した混合部材の形態が安定し、崩壊等の不具合を防止でき、より一層防火性を向上させることができる。

【0021】

発明［７］の防火装置によれば、耐火二層管に採用した際に、上記と同様に同様の効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0022】

【図1】図１はこの発明の実施形態である耐火二層管の防火構造が適用された配管接続構造を示す断面図である。

【図2】図２は実施形態の配管接続構造に適用された防火装置を示す斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0023】

図１はこの発明の実施形態である耐火二層管の防火構造が適用された配管接続構造を示す断面図である。同図に示すように、この配管接続構造においては、防火区画としてのコンクリートスラブの配管用貫通孔周辺に配置される集合管継手７と、その集合管継手７に接続される配管としての耐火二層管１と、耐火二層管１における集合管継手７の近傍に設けられる防火装置５とを基本的な構成要素として備えている。

【0024】

耐火二層管１は、内管２と、内管２の外周面に積層された被覆管３とを備えている。被覆管３は、内周側に配置される吸音層３１と、外周側に配置される耐火層３２との２つの層を備えている。後に詳述するが、耐火層３２は、耐火性材料が含浸した耐火層用多孔質シート４２によって構成されるとともに、吸音層３１は、耐火性材料が含浸していない（耐火性材料が非含浸の）吸音層用多孔質シート４１によって構成されている。

【0025】

内管２は、合成樹脂製管によって構成されている。合成樹脂製管としては、硬質ポリ塩化ビニル管（ＰＶＣ管）、ポリエチレンテレフタレート管（ＰＥＴ管）、ポリプロピレン管（ＰＰ管）等の熱可塑性樹脂製管を好適なものとして例示することができる。なお、本発明においては、内管２の寸法や、管形状が限定されるものではなく、例えば直管形状、曲がり管形状、分岐管形状のもの等も支障なく使用することができる。

【0026】

本実施形態においては、合成樹脂製の内管２が、熱融解性の内管を構成するものであり、火災時等の過熱によって融解するものである。なお本発明においては、熱により軟化する場合も、熱融解に含まれる。

【0027】

被覆管３の外周側に配置される耐火層用多孔質シート４２は、耐火性材料を含浸させた際にその耐火性材料を保持する基材となり、耐火性材料を養生させた後は耐火層３２の補強材として機能するものであるから、十分な耐火性材料を含浸させるために、多数の気孔が立体的（三次元的）に存在して所要の厚みを有していることが求められる。具体的には、繊維を結合または絡ませて形成した不織布（フェルトを含む）、連続気泡フォームを推奨できる。なお本発明において、多孔質シート４２としては、所要の厚みを有し耐火性材料を保持できるものであれば織物や編み物も使用することができる。

【0028】

不織布は、繊維がランダムに配向しているため、耐火性材料をムラなく均一に含浸させることができ、引っ張りや曲げに対する強度が三次元的に均等であるため、耐衝撃性に優れ、割れにくい耐火層３２を形成することができる。不織布の材料となる繊維の材質は、有機系、無機系のいずれであっても良い。有機系繊維としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート系（ＰＥＴ系ポリエステル）、ポリアミド（６−ナイロン、６，６ナイロン等）、アクリル系、ポリビニルアルコール系（ビニロン等）、ポリオレフィン系、木綿、羊毛等を例示できる。無機系繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維を例示することができる。これらのうち、耐火性向上の観点からは無機系繊維が好ましいが、価格、取り扱いの容易性の観点からはポリエステルやポリプロピレン等の合成繊維製の不織布を用いることが好ましい。耐火層３２の耐火性能は不織布に含浸させた耐火性材料によって十分に得られるので、合成繊維製不織布を用いても何ら不都合はない。

【0029】

不織布はそのままの状態で使用することもできるが、不織布を圧縮したフェルト、ニードルパンチした不織布またはフェルトを用いるが好ましい。不織布は、圧縮したり、ニードルパンチすることによって保形性が高まるので、耐火性材料含浸後の保形性も高まり、ひいては耐火二層管１の真円度を高めることができる。

【0030】

連続気泡フォームとしては、発泡ウレタンフォーム等を例示でき、不織布と同様に気泡内に耐火性材料を含浸させることによって高強度の耐火層３２を形成することができる。

【0031】

上記の耐火層用多孔質シート４２のなかでも、補強効果が最も優れているのは不織布である。

【0032】

一方、被覆管３における内側の吸音層３１を構成する吸音層用多孔質シート４１としては、その素材が、耐火層３２を構成する上記耐火層用多孔質シート４２と同種のものを、好適に用いることができる。

【0033】

本実施形態において、被覆管３の厚さ（耐火層３２の厚さと吸音層３１の厚さとの合計）は、求められる耐火性能に応じて調整される。通常、この厚さの合計は、３〜３０ｍｍが好ましい。

【0034】

本実施形態において、耐火層３２は、耐火層用多孔質シート４２に耐火性材料を含浸させることによって形成するものである。

【0035】

耐火性材料の含浸方法として、例えば吹き付けによる方法を好適例として挙げることができる。すなわち内管２に多孔質シート４１，４２を巻き付けた管状複合部材４に、外側から耐火性材料を吹き付けて、耐火層用多孔質シート４２に耐火性材料を含浸させる方法を好適に採用することができる。

【0036】

具体的には、管状複合部材１０を、軸心回りに回転駆動する一方、耐火性材料噴射装置の噴射ノズルからモルタル等の耐火性材料を管状複合部材１０の外周面に吹き付けつつ、噴射ノズルを管状複合部材１０の軸方向に沿って移動させる。これにより、管状複合部材１０の外周面全域に均等に耐火性材料が吹き付けられて、その耐火性材料が耐火層用多孔質シート４２に含浸して、耐火層３２が形成される。

【0037】

本実施形態においては、耐火性材料の含浸方法は特に限定されず、上記の吹き付けによる方法以外にも、塗布、注入、浸漬等の方法を用いることができる。

【0038】

耐火性材料としては、モルタル、特に、硬化後の強度や密度、耐火性等の観点からセメント系モルタルを採用するのが好ましい。セメント系モルタルに用いられるセメントとしては、例えば普通、早強、中庸熱および超早強の各種ポルトランドセメント、またはこれらのポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグを混合した高炉セメントを例示することができる。またこれらに適宜骨材や各種添加剤を混合することもできる。これらの固体材料に水を混合し、湿式材料として、耐火層用多孔質シート４２に含浸させる。湿式状態の耐火性材料の粘度は固体材料と水との混合比によって調整し、多孔質シート４１，４２の材質、面密度、厚さ、浸透速度、硬化時間等に応じて適宜設定する。なお、一般的には強度向上を目的としてセメントに繊維を混合した繊維モルタルが使用されるが、本発明の耐火層３２は、耐火層用多孔質シート４２が補強材として機能するため、繊維を混合する必要はない。繊維モルタルは耐火層用多孔質シート４２への浸透を妨げることがあるので、むしろ繊維を混合しないことが好ましい。

【0039】

耐火層３２は、耐火性材料中に耐火層用多孔質シート４２を構成する繊維や樹脂を均一に含んでおり、繊維や樹脂が補強材として機能する。このため、耐火層３２は強度が高く、耐衝撃性に優れ、割れにくいという特性を有している。

【0040】

耐火層３２の厚みは、被覆管３の厚み（吸音層３１および耐火層３２の総厚み）、使用目的、施工場所等に応じて、適宜設定すれば良い。耐火層３２は、厚いほど耐火性が向上するが、重量の問題もあり、少なくとも３ｍｍ以上、好ましくは５ｍｍ〜１０ｍｍ程度に設定するのが良い。耐火層３２を厚くし過ぎると、耐火二層管１全体の重量が増加してしまい、輸送や施工が困難になるおそれがある。

【0041】

なお本実施形態においては、耐火層３２の型崩れを防止するためや、耐火性材料の脱落を防止するため等に、管状複合部材１０の外周に、伸縮性のある筒状メッシュシート等を被せておくようにしても良い。

【0042】

また本実施形態において、吸音層３１は、耐火性材料が含浸していない吸音層用多孔質シート４１によって構成されるものである。この吸音層３１は、良好な吸音性を確保するため、厚みを少なくとも１ｍｍ以上、好ましくは３ｍｍ〜１５ｍｍ程度に設定するのが良い。

【0043】

本実施形態においては、耐火層用多孔質シート４２の密度を、吸音層用多孔質シート４１の密度よりも低く設定するのが好ましい。すなわち、耐火層用多孔質シート４２は、耐火性材料を含浸させて耐火層３２を形成するものであるため、耐火性材料を含浸させたい耐火層用多孔質シート４２を、密度の低い不織布等の低密度層によって構成し、耐火性材料を含浸させたくない吸音層用多孔質シート４１を、密度の高い不織布等の高密度層によって構成する。低密度層は高密度層に比べて耐火性材料が含浸し易いため、低密度の耐火層用多孔質シート４２のみに、耐火性材料を確実に含浸させることができる。このように低密度層および高密度層の多孔質シート４１，４２を用いることによって、耐火性材料の含浸度合を正確に制御することができ、所望の部分に的確に耐火層３２および吸音層３１を形成することができる。

【0044】

また本実施形態においては、後に詳述するように、吸音層用多孔質シート４１と、耐火層用多孔質シート４２とを、物理的に繋がっている１枚の多孔質シートによって構成するようにしても良い。

【0045】

以上の構成の本実施形態の耐火二層管１は、例えばマンション等の集合住宅における排水管として使用する。この場合、内部を流れる水によって発生する音（水流音）は、吸音層３１で吸音されるとともに、吸音層３１を透過した水流音は、耐火層３２で遮音反射される。従って水流音が管外に漏れることはない。さらに吸音層３１の外周面に設けられた耐火層３２によって所定の耐火性能を確実に得ることができる。

【0046】

上記耐火二層管１が接続される集合管継手７は、コンクリートスラブの貫通孔内に取り付けられている。この集合管継手７は、下端部に上記耐火二層管１が接続される管接続部７１が設けられるとともに、図示しない上側部には、複数の管接続部が設けられ、各管接続部にそれぞれ上記と同様な耐火二層管等の配管を接続できるようになっている。

【0047】

管接続部７１は、下向きに開放されており、内径寸法が耐火二層管１における内管２の外径寸法に対応して形成されており、この管接続部７１の内部に、内管２の接続端部２５を挿入できるようになっている。また、管接続部７１の開口端部（下端）外周には、外方に突出するようにフランジ部７２が一体に形成されている。

【0048】

この集合管継手７に耐火二層管１を接続するには、耐火二層管１における内管２の接続端部２５の外側に金属製の押し輪７５を嵌め込む一方、集合管継手７における管接続部７１の開口縁部内周にリング状のゴムパッキン７６を配置しておく。そして、耐火二層管１の接続端部２５を集合管継手７の管接続部７１に挿入して、ゴムパッキン７６を耐火二層管１の接続端部２５の外周面と、集合管継手７における管接続部７１の開口縁部内周面との間に配置する。その状態で、ボルトおよびナットからなる締結手段７７によって、押し輪７５をフランジ部７２側に圧締し、ゴムパッキン７６を管接続部７１の開口縁部内周と内管２の外周面との間に圧入する。これにより、耐火二層管１が集合管継手７に接続固定される。

【0049】

こうして集合管継手７に連結固定された耐火二層管１は、その被覆管３が集合管継手７における押し輪７５の近傍まで配置されている。

【0050】

なお本実施形態においては、押し輪７５は、集合管継手７を構成する部材の一つとして取り扱っている。

【0051】

図２は本実施形態の配管接続構造に採用された防火装置５を示す斜視図である。図１および図２に示すように耐火二層管１における集合管継手７の近傍に設けられる防火装置５は、熱膨張部材５０と、その熱膨張部材５０を保持する保持枠６とを備えている。

【0052】

保持枠６は、円環状の金属製枠本体６１と、枠本体６１を集合管継手７に支持するためのフック６５とを備えている。なお本実施形態においては、保持枠６によって保持部材が構成されている。

【0053】

枠本体６１は、その内側の上下両端の全周に内方に向けて突出するリブ６２，６２が形成されている。さらに上下のリブ６２，６２間には周方向に連続し、かつ内側に向けて開放する溝状の熱膨張部材収容凹部６３が形成されている。

【0054】

そしてこの凹部６３内に、円環状に成形された熱膨張部材５０が収容されて保持されている。本実施形態において、熱膨張部材５０の内周面は、上下のリブ６２，６２の先端（内端）よりも内側に配置されている。

【0055】

この熱膨張部材５０において、その内径寸法は上記耐火二層管１の被覆管３の外径寸法よりも大きく形成されており、熱膨張部材５０を、つまり熱膨張部材５０を保持した枠本体６１を耐火二層管１の被覆管３の外側に嵌め込むことができるようになっている。

【0056】

本実施形態において、熱膨張部材５０は、火災時の熱によって加熱されると、つまり過熱時には、発泡して３〜５０倍に膨張し、かつ膨張した状態で耐火性を保有するものである。

【0057】

本実施形態において、このような熱膨張部材５０としては、エポキシ樹脂やポリエチレン樹脂等の合成樹脂に熱膨張性カーボン（熱膨張性黒鉛）が含有された合成樹脂系のものや、ＥＰＤＭ等の合成ゴムに熱膨張性カーボン（熱膨張性黒鉛）が含有された合成ゴム系のものを好適に用いることができる。

【0058】

なお言うまでもなく、本発明においては、熱膨張部材５０には必要に応じて充填材等の添加剤を適宜配合するようにしても良い。

【0059】

本実施形態において、熱膨張部材５０は、断熱性を備え、火災の熱によって膨張する熱膨張ゴム等によって構成されている。

【0060】

フック６５は、枠本体６１の外周面に周方向に間隔をおいて複数、本実施形態では３つ設けられている。各フック６５は、その下端が枠本体６１の外周面にそれぞれ固定されて、上方に延びて上方に突出するように配置されている。さらに各フック６５の上端には、その上端が内側に折り曲げられることによって爪６６が形成されている。各フック６５は、弾力性を備えており、下端を支点にして、上部側が外側に開くように弾性変形可能に構成されている。

【0061】

この防火装置５を、上記の配管接続構造に取り付けるに際しては、耐火二層管１を集合管継手７に接続する前に予め、耐火二層管１の接続側端部の外周に防火装置５を嵌め込んでおく。この場合、フック６５が突出している側を上側、つまり集合管継手７との接続側として配置する。その状態で既述したように、耐火二層管１を集合管継手７に接続する。

【0062】

その後、防火装置５の各フック６５を弾性力に抗して外側に押し開きつつ、爪６６を集合管継手７のフランジ部７２および押し輪７５間に対応する位置まで、防火装置５を持ち上げて、各フック６５の押し開きを解除し、各フック６５の弾性復元力によって、各爪６６を集合管継手７のフランジ部７２および押し輪７５間に挿入して引っ掛ける。これにより、防火装置５を、その熱膨張部材５０を耐火二層管１の端部における被覆管３の外周面に配置した状態に配管接続構造に組み付ける。

【0063】

なお上記の説明では、耐火二層管１を集合管継手７に連結する前に予め、防火装置５を耐火二層管１に外嵌しておくようにしているが、本発明においては、耐火二層管１や防火装置５の組付手順は限定されるものではない。例えば耐火二層管１を集合管継手７に連結した後、防火装置５を組み付けるようにしても良い。すなわち上端部（一端部）が集合管継手７に連結された耐火二層管１の下端部（他端部）から、防火装置５を外嵌して耐火二層管１の上端部までスライド移動させてから、その防火装置５を耐火二層管１の上端部に上記と同様に組み付けるようにしても良い。

【0064】

以上のように、本実施形態の配管接続構造によれば、熱膨張部材５０を合成樹脂製配管である内管２の外周面に直接巻き付けるものではなく、熱膨張部材５０を耐火二層管１における被覆管３の外側、つまり多孔質シート４１，４２である不織布等や、耐火性材料であるモルタル等の外側に配置している。このため、火災の発生により熱膨張部材５０が内側に向けて膨張した際には、その膨張に伴って、被覆管３が押し潰されて、被覆管３を構成する不織布やモルタルが熱膨張部材５０に混合し合い、その混合した部材によって管路が閉塞される。

【0065】

この混合部材のうち例えば不織布は、破砕したモルタルや断熱性の熱膨張部材５０の保持基材や補強材として機能するため、混合部材の形態が確実に保持されて管路を閉塞した状態が維持される。このため、管路を閉塞した混合部材が崩壊して遮炎性が低下するのを防止でき、優れた遮炎性を確実に維持することができる。さらに混合部材のモルタルは、それ自体に十分な耐火性を備えるため、耐火性を向上させつつ、混合部材の骨材や補強材としても機能するため、管路を閉塞した混合部材が崩壊するような不具合をより確実に防止でき、十分な耐火性をより確実に維持することができる。このように遮炎性および耐火性を向上させることでき、防火性を向上させることができる。

【0066】

さらに熱膨張部材５０は、保持枠６の枠本体６１によって外側から拘束されているため、外側に膨張することなく、確実に内側に膨張して管路を確実に閉塞でき、防火性を一層向上させることができる。

【0067】

また本実施形態の防火装置５は、そのフック６５を集合管継手７に引っ掛けるだけで簡単に取り付けることができ、ひいては配管接続構造全体の組付作業を簡単に行うことができる。

【0068】

さらに本実施形態の防火装置５は、耐火二層管１の被覆管３を構成している材料、例えば不織布やモルタルを、出火時における保持基材、耐火性材料、骨材、補強材等の防火用の材料として利用するものであるため、耐火性材料を増量したり、防火用の材料を新たに組み込む必要がなく、その分、構造の簡素化および装置の小型軽量化を図ることができ、コストも削減することができる。

【0069】

なお、上記実施形態においては、防火装置５をフック掛けにより配管に取り付けるようにしているが、本発明において、防火装置５の配管への取付手段は特に限定されるものではない。例えば防火装置５を集合管継手７または耐火二層管１に針金等の線材によって巻き付けるようにして取り付けても良い。

【0070】

さらに上記実施形態においては、防火装置５のフック６５を集合管継手７のフランジ部７２と押し輪７５との間に差し込むようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、防火装置５のフック６５を、集合管継手７のフランジ部の上面に引っ掛けるように構成しても良い。

【0071】

また上記実施形態においては、防火装置５に、熱膨張部材５を保持する保持枠６を装えるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、防火装置を、保持枠を含まずに熱膨張部材だけで構成し、その熱膨張部材（防火装置）を耐火二層管１に巻き付けるようにしても良い。

【0072】

さらに上記実施形態においては、耐火二層管１として、被覆管３が吸音層３１および耐火層３２の二層構造に形成されたものを使用しているが、それだけに限られず、本発明においては、耐火二層管として、内管２の外周にモルタル等の耐火層だけが積層されたものも採用することができる。この場合には、出火時においてモルタル等の耐火層が、膨張した熱膨張部材に破砕して混入するため、混入した耐火層が、耐火性を向上させるとともに、骨材や補強材としても機能し、防火性を向上させることができる。

【0073】

また上記実施形態においては、吸音層用多孔質シート４１と、耐火層用多孔質シート４２とを物理的に繋がっていない別部材によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、吸音層用多孔質シート４１と、耐火層用多孔質シート４２とを物理的に繋がっている同一の多孔質シート（一枚の多孔質シート）によって構成することもできる。すなわち、内管２の外周に、厚みのある多孔質シートを巻回し、その多孔質シートの外周側半分の領域にのみ耐火性材料を含浸させる。そして、厚みのある多孔質シートのうち耐火性材料が含浸した外周部分を耐火層として構成するとともに、耐火性材料が含浸していない内周部分を吸音層として構成することもできる。

【0074】

また上記実施形態においては、耐火二層管を、３本以上の耐火二層管等の配管が接続される集合管継手に連結する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限れず、本発明は、２本の配管を繋ぎ合わせるだけの直線状やエルボー型の管継手にも適用することができる。

【0075】

また上記実施形態においては、防火装置５を耐火二層管１における管継手の近傍に配置する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、防火装置を耐火二層管における管継手から離間した位置に配置するようにしても良い。

【産業上の利用可能性】

【0076】

この発明の耐火二層管の防火構造は、集合住宅等の建造物における排水管や換気管に適用することができる。

【符号の説明】

【0077】

１：耐火二層管
２：内管
２５：接続端部（上端部）
３：被覆管
３２：耐火層
４１：吸音層用多孔質シート
４２：耐火層用多孔質シート
５：防火装置
５０：熱膨張部材
６：保持枠（保持部材）
６５：フック
７：集合管継手（管継手）

【図1】

【図2】