【実施例】
【0036】
(実施例1)
上記表面処理装置及びそれを用いた表面処理方法にかかる実施例について、図を用いて説明する。
図1、
図2に示すように、本例の表面処理装置1は、反応性ガスを含む気体が封入される反応室51と反応室51内において被処理物60を保持する保持部52とを有する反応部5と、反応部5の反応室51内に電子ビームAを出力して反応性ガスをプラズマ化する電子ビーム出力部2と、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAを制御する制御部70とを備えている。
【0037】
同図に示すように、反応室51は、物理的蒸着法を用いて、保持部52に保持された被処理物60の表面に硬質膜を形成することができるよう構成されている。また、制御部70は、反応室51内での硬質膜の形成に最適なプラズマ状態となるように、電子ビーム出力部2から反応室51内に出力される電子ビームAの出力波形を制御するよう構成されている。
以下、これを詳説する。
【0038】
図1、
図2に示すように、表面処理装置1は、1つの容器10を備えている。容器10は、蓋部111を有すると共に電子ビーム出力部2の一部を収容し、円筒状に形成された円筒部11と、底部121を有すると共に反応室51を形成し、円筒部11の径よりも大きな径の円筒状に形成されたチャンバー部12とを備えている。円筒部11とチャンバー部12とは、一体的に形成されている。
【0039】
図2に示すように、電子ビーム出力部2は、希ガスプラズマを生成する生成部3と、生成部3で生成された希ガスプラズマから電子を抽出し、電子ビームAとして導出する加速部4とを備えている。
生成部3は、加熱されることで熱電子を放出するフィラメント31と、負電圧が印加される放電用陰極32と、正電圧が印加される放電用陽極33と、フィラメント31に電圧を印加してフィラメント31を加熱するフィラメント電源34と、放電用陰極32及び放電用陽極33に電圧を印加する放電電源35と、アルゴンガスを供給するための希ガス導入ポート36とを備えている。
【0040】
容器10の円筒部11内には、蓋部111に近い位置からフィラメント31、放電用陰極32、放電用陽極33の順にこれらが配置されている。円筒部11の内壁と放電用陽極33とで囲まれた部位には、生成室13が形成されている。
希ガス導入ポート36は、アルゴンガスが貯蔵された希ガス貯蔵タンク(図示略)に接続され、流量調整機構(図示略)によって生成室13に流入されるアルゴンガスの量を調整可能に構成されている。
【0041】
フィラメント電源34及び放電電源35は、容器10外に配置されている。この生成部3では、希ガス導入ポート36を介して生成室13に流入したアルゴンガスは、電圧が印加されたフィラメント31から放出された熱電子が衝突することにより、プラズマ化してアルゴンイオンと電子とを生成する。
【0042】
同図に示すように、加速部4は、負電圧が印加される加速用陰極41と、正電圧が印加される加速用陽極42と、加速用陰極41及び加速用陽極42に電圧を印加する加速電源43と、導出される電子ビームAの方向性を制御するコイル状の電磁石44(電子ビーム制御手段)と、真空ポンプが接続された加速室排気ポート45とを備えている。
【0043】
容器10の円筒部11内には、放電用陽極33に近い位置から加速用陰極41、加速用陽極42の順にこれらが配置されている。円筒部11と放電用陽極33と加速用陰極41とで囲まれた部位には、中間室14が形成されており、円筒部11と加速用陰極41と加速用陽極42とで囲まれた部位には、加速室15が形成されている。
加速室排気ポート45には、加速室15が生成室13よりも低圧となるように加速室15の内圧を調整する真空ポンプである加速室排気ポンプ(図示略)が接続されている。
【0044】
コイル状の電磁石44は、加速室15の外壁(円筒部11)の中間室14側端に巻き付けるように配置された上流側電磁石44aと、加速室15の外壁(円筒部11)の反応部3側端に巻き付けるように配置された下流側電磁石44bとにより構成されている。上流側電磁石44a及び下流側電磁石44bにより、円筒部11内に電子ビームAの出射方向に沿った方向の磁力線を有した磁界を発生する。
【0045】
加速電源43は、加速用陰極41及び加速用陽極42に直流状又はパルス状(直流パルス状)の電圧を出力するものである。また、加速電源43は、パルス電圧のパルス幅及びパルス印加周期の少なくとも一方を設定することができるよう構成されている。これにより、パルス状の波形の電子ビームAのデューティー比を設定することができる。
【0046】
なお、加速部4では、加速室15が生成室13よりも低圧に調整されているため、生成室13で生成されたアルゴンプラズマ39が中間室14を経て加速室15に流入する。そして、加速電源43により、加速用陽極42に正の電圧が印加されている期間では、アルゴンプラズマ39から電子のみが引き出され、印加された電圧に応じたビーム強度を有した電子ビームAが生成される。電子ビームAは、コイル状の電磁石44に電流を流すことにより発生した磁界により、ビーム状を維持したまま反応部5へと導かれる。
【0047】
図1に示すように、反応部5は、反応室51内に配置されると共に被処理物60を保持する保持部52と、反応室51内のプラズマを制御するコイル状の電磁石53(プラズマ制御手段)と、保持部52にバイアス電圧を印加するバイアス電源54と、反応室51内に発生するプラズマの状態及び被処理物60の表面状態を測定する測定機器群55と、測定機器群55の一部が接続される測定用ポート56と、反応性ガス等を供給するための反応性ガス導入ポート57と、反応室51の内圧を調整するための反応室排気ポート58とを備えている。
【0048】
反応室51内には、被処理物60の表面を加熱するためのヒータ511が設けられている。被処理物60が活性化する活性化温度以上となるように被処理物60を加熱する加熱手段を備えていてもよい。
バイアス電源54は、予め定められた周期で正負極性が切り替わる高周波電圧を出力するものである。
【0049】
反応性ガス導入ポート57は、反応性ガスが貯蔵された反応性ガス貯蔵タンク(図示略)に接続され、流量調整機構(図示略)によって反応室51に流入される反応性ガスの量を調整可能に構成されている。
反応室排気ポート58には、反応室51の内圧を調整する真空ポンプである反応室排気ポンプが接続されている。
【0050】
保持部52は、導電材料によって形成され、チャンバー部12の底部121に沿った平面、かつ、電子ビームAの出射方向に沿った平面を移動するように構成されている。保持部52は、全体を回転させることができるよう構成されている。また、保持部52は、保持した被処理物60を回転させることができるよう構成されている。また、保持部52の被処理物60を保持する保持面には、被処理物60を加熱するヒータ(図示略)が設けられている。
【0051】
コイル状の電磁石53は、反応室51での電子ビームAの出射方向の上流に配置された第1電磁石53aと、反応室51での電子ビームAの出射方向の下流に配置された第2コ電磁石53bとにより構成されている。電磁石53は、第1電磁石53a及び第2電磁石53bに予め定められた方向の電流を流すことで、荷電粒子をチャンバー部12の底部121の方向へと導くための磁界を発生するように構成されている。
【0052】
また、反応部5において、反応性ガス導入ポート57を介して反応室51内に封入された反応性ガスは、電子ビーム出力部2から出力された電子ビームA(より正確には、電子ビームAを形成する電子)が衝突することで、プラズマ化して、電子及びイオンが生成される。この電子及びイオンは、第1電磁石53a及び第2電磁石53bが発生する磁界により、被処理物60の近傍に集束させられる。
【0053】
制御部70は、CPU、ROM及びこれらを接続するバスからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。制御部70は、測定機器群55で測定した結果に基づき、電子ビーム出力部2、反応部5の各部(具体的には、放電電源35、希ガス導入ポート36、加速電源43、コイル状の電磁石44(電子ビーム制御手段)、保持部52、コイル状の電磁石53(プラズマ制御手段)、バイアス電源54、反応性ガス導入ポート57等)を制御するよう構成されている。
【0054】
なお、表面処理装置1は、測定用ポート56に接続されている測定機器群55として、保持部52の可動範囲内である予め規定された特定領域の反応性ガスによるイオンの量を計測する発光分光器、特定領域内に存在する反応性ガスの原子の密度を計測するラジカルモニタ、被処理物60に対してエリプソメトリを行う構造解析機器、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて被処理物60の表面を計測する表面モニタ等を備えている。そして、表面処理装置1は、その他の測定機器群55として、被処理物60の温度を計測する被処理物温度計測部を有している。
【0055】
次に、本例の表面処理方法について説明する。
ここでは、鉄基材(被処理物60)の表面に、密着性向上のための窒化処理(中間処理)を行った後、cBN膜(硬質膜)を形成する例について説明する。
【0056】
まず、被処理物60を保持した保持部52を真空排気された反応室51内に設置し、保持部52及び被処理物60を回転させて位置を調整する。そして、反応室51内に設けられたヒータ511の加熱により、保持部52及び被処理物60の表面の油分を除去する。
【0057】
次いで、反応室51内が所定の圧力となるように、反応室51内に窒素ガス(反応性ガス)を導入する。そして、コイル状の電磁石53(第1電磁石53a及び第2電磁石53b)に電流を流し、所定の磁場環境とする。
【0058】
次いで、電子ビーム出力部2から反応室51内に電子ビームAを出力する。そして、反応室51内において窒素ガスをプラズマ化し、窒素プラズマを生成する。その後、バイアス電源54から保持部52及び被処理物60にバイアス電圧を印加し、被処理物60の表面に対して窒化処理を行う。これにより、被処理物60の表面に窒化膜が形成される。
【0059】
次いで、反応室51内が所定の圧力となるように、反応室51内に窒素ガス、ジボラン等のホウ素系ガス(反応性ガス)を導入する。このとき、窒素ガスに対するホウ素系ガスの分圧割合が所定の割合となるように、窒素ガス及びホウ素系ガスの流量調整を行う。また、プラズマ生成及び成膜時のアシスト効果用として、反応室51内にアルゴン等の希ガスを導入する。このとき、窒素ガス及びホウ素系ガスに対する希ガスの分圧割合が所定の割合となるように、希ガスの流量調整を行う。
【0060】
次いで、電子ビーム出力部2から反応室51内に電子ビームAを出力する。そして、反応室51内において窒素ガス、ホウ素系ガス及び希ガスをプラズマ化し、窒素プラズマ、ホウ素プラズマ及び希ガスプラズマを生成する。その後、バイアス電源54から保持部52及び被処理物60にバイアス電圧を印加し、被処理物60の表面にcBN膜(硬質膜)を成膜する。
【0061】
以下に、実際に行った表面処理の条件と成膜状態の結果の一例を示す。
cBN膜の成膜に当たり、反応室51内に導入する、窒素ガス、ジボランガス、アルゴンガスの合計圧力が0.05Paとなるよう、それぞれのガス比率を
窒素ガス:ジボランガス:アルゴンガス=1:1:0.5とした。
【0062】
また、反応室へ出力する電子ビームの電圧(加速電圧)を85Vとした。放電用陰極32と放電用陽極33との間における放電電流は15Aとした。そして、加速電圧のデューティー比をそれぞれ20%、50%、80%とした3つの条件で、電子ビームを出力して、窒素ガス,ジボランガス,アルゴンガスをプラズマ化した。
そして、膜中にcBNを得るたにRF(高周波)バイアス電力を60W印加した。
【0063】
上記3つの条件(印加電圧のデューティー比)によってそれぞれcBN膜を成膜した。電子ビームの加速電圧のデューティー比を20%とした場合に得られたcBN膜を試料1、デューティー比を50%とした場合に得られたcBN膜を試料2、デューティー比を80%とした場合に得られたcBN膜を試料3とした。
そして、各試料における膜中cBN含有率を測定したところ、試料1は10%、試料2は50%、試料3は95%であった。
【0064】
なお、反応室51内のプラズマ密度をマイクロ波干渉計にて測定した。その結果、プラズマ密度は、電子ビームの加速電圧のデューティー比を20%とした場合には、3.6(×10
11/cm
3)、デューティー比を50%とした場合には、6.8(×10
11/cm
3)、デューティー比を80%とした場合には、9.2(×10
11/cm
3)であった。
このように、電子ビームAの出力波形を制御することで、反応室51内のプラズマ状態を制御して、硬質膜(cBN膜)の状態を制御することが可能である。
【0065】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例の表面処理装置1において、反応室51は、物理的蒸着法を用いて、保持部52に保持された被処理物60の表面に硬質膜を形成することができるよう構成されている。そして、制御部70は、反応室51内での硬質膜の形成に最適なプラズマ状態となるように、電子ビーム出力部2から反応室51内に出力される電子ビームAの出力波形を制御するよう構成されている。
【0066】
すなわち、電子ビーム出力部2から反応室51内に電子ビームAを出力(照射)することにより、反応室51内の反応性ガスをプラズマ化する。そして、制御部70がその電子ビームAの出力波形を制御することにより、反応室51内のプラズマ状態を硬質膜の形成に最適な状態にすることができる。そのため、物理的蒸着法を用いて硬質膜を成膜する際の成膜反応性や成膜速度を向上させることができる。
【0067】
これにより、反応室内において、所望の方法(物理的蒸着法)により、所望の硬質膜(cBN膜)を精度良く、効率的に、薄膜で形成することができる。
また、成膜時の成膜反応性や成膜速度の向上を図ることができるため、従来困難であった低温環境下での硬質膜の成膜が可能となる。よって、被処理物60として一般的な鋼材等を用いて硬質膜を成膜することも可能となる。
【0068】
また、本例において、反応室51は、物理的蒸着法を用いて、保持部52に保持された被処理物60の表面に対して中間処理(本例では窒化処理)を行うことができるよう構成されており、制御部70は、反応室51内での中間処理に最適なプラズマ状態となるように、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAの出力波形を制御するよう構成されている。そのため、被処理物60の表面に対する中間処理を精度良く、効率的に行うことができる。
【0069】
また、制御部70は、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAの出力波形を直流状又はパルス状の波形に制御するよう構成されている。そのため、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAの出力波形の制御や反応室51内のプラズマ状態の調整を精度良く行うことができる。
【0070】
また、電子ビーム出力部2は、反応室51内に出力される電子ビームAの方向性を制御する電子ビーム制御手段(コイル状の電磁石44)を備えている。そのため、電子ビームAの方向性を制御することにより、反応室51内のプラズマ状態の調整が容易となる。これにより、反応室51内での被処理物60に対する硬質膜形成や中間処理をより一層効率良く行うことができる。
【0071】
また、反応部5は、反応室51内で生成された反応性ガスのプラズマ密度を反応室51内の予め規定された特定領域において制御するプラズマ制御手段(コイル状の電磁石53)を備えており、保持部52は、被処理物60が特定領域内に位置するように配置されている。そのため、反応室51内の特定領域に被処理物60が配置された状態でその特定領域におけるプラズマ密度を制御することにより、反応室51内の特定領域のプラズマ状態の調整が容易となる。これにより、反応室51内の特定領域での被処理物60に対する硬質膜形成や中間処理を効率良く行うことができる。
【0072】
また、表面処理装置1は、反応室51内のプラズマ状態を検知するプラズマ状態検知手段(測定機器群55)をさらに備え、制御部70は、プラズマ状態検知手段における検知結果に基づいて、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAの出力波形を制御するよう構成されている。そのため、反応室51内のプラズマ状態に応じて電子ビームAの出力波形を制御することにより、反応室51内のプラズマ状態を硬質膜形成や中間処理に最適な状態で維持することができる。これにより、常時、硬質膜形成や中間処理を精度良く、効率的に行うことができる。
【0073】
また、表面処理装置1は、被処理物60の表面状態を検知する表面状態検知手段(測定機器群55)をさらに備え、制御部70は、表面状態検知手段における検知結果に基づいて、電子ビーム出力部2から出力される電子ビームAの出力波形を制御するよう構成されている。そのため、被処理物60の表面状態(例えば、硬質膜の構造状態、中間処理が施された部分の状態)に応じて電子ビームAの出力波形を制御することにより、反応室51内のプラズマ状態を硬質膜形成や中間処理に最適な状態で維持することができる。これにより、常時、硬質膜形成や中間処理を精度良く、効率的に行うことができる。
【0074】
このように、被処理物60を選ぶことなく、硬質膜を精度良く、効率的に、薄膜で形成することができる表面処理装置1及びそれを用いた表面処理方法を提供することができる。
【0075】
(実施例2)
本例は、
図3に示すように、鉄基材(被処理物60)の表面に、密着性向上のためのチタン膜、窒化チタン膜を形成(中間処理)した後、cBN膜(硬質膜)を形成する例について説明する。
【0076】
本例の表面処理装置1は、反応部5の反応室51内にスパッタ蒸発源512が設けられている。スパッタ蒸発源512には、スパッタ電源513が接続されている。
その他の基本的な構成は、実施例1と同様である。また、実施例1と同様の構成については、同様の符号を付し、その説明を省略している。
【0077】
次に、本例の表面処理方法について説明する。
まず、被処理物60を保持した保持部52を真空排気された反応室51内に設置し、保持部52及び被処理物60を回転させて位置を調整する。そして、反応室51内に設けられたヒータ511の加熱により、保持部52及び被処理物60の表面の油分を除去する。
【0078】
次いで、反応室51内が所定の圧力となるように、反応室51内にアルゴン等の希ガス(反応性ガス)を導入する。そして、反応室51内において希ガスのイオン化を行い、被処理物60にバイアス電圧(負電圧)を印加することで、被処理物60の表面に希ガスイオンを衝突させ被処理物60の表面の酸化膜除去・新生面生成を行う。
【0079】
次いで、反応室51内が所定の圧力となるように、反応室51内にアルゴン等の希ガス(反応性ガス)を導入する。そして、チタンが備え付けられたスパッタ蒸発源512に直流又は交流電力を印加し、希ガスのイオン化及びスパッタ蒸発源512からのチタン放出を行う。このとき、チタンの放出量については、所定の放出量となるように電力を制御する。
【0080】
これと同時に、コイル状の電磁石53(第1電磁石53a及び第2電磁石53b)に電流を流し、チタン蒸発及びチタン膜生成に最適な磁場環境とする。また、電子ビーム出力部2から反応室51内に電子ビームAを出力する。そして、反応室51内において窒素ガスをプラズマ化し、窒素プラズマを生成する。その後、バイアス電源55から保持部52及び被処理物60にバイアス電圧を印加し、被処理物60の表面にチタン膜を成膜する。
【0081】
次いで、反応室51内が所定の圧力となるように、反応室51内に窒素ガス、アルゴン等の希ガス(反応性ガス)を導入する。このとき、窒素ガスに対する希ガスの分圧割合が所定の割合となるように、窒素ガス及び希ガスの流量調整を行う。そして、スパッタ蒸発源512に直流又は交流電力を印加し、希ガスのイオン化及びスパッタ蒸発源512からのチタン放出を行う。このとき、チタンの放出量については、すでに成膜したチタン膜上に所望の窒化チタン膜を成膜することができるように電力を制御する。
【0082】
これと同時に、電子ビーム出力部2から反応室51内に電子ビームAを出力する。そして、反応室51内においてチタン、窒素ガス及び希ガスをプラズマ化し、チタン、窒素及び希ガスによるプラズマを生成する。その後、バイアス電源54から保持部52及び被処理物60にバイアス電圧を印加し、被処理物60の表面に形成されたチタン膜上に窒化チタン膜を成膜する。
【0083】
その後、被処理物60の表面に形成された窒化チタン膜上に、硬質膜であるcBN膜を成膜する。なお、硬質膜の形成は、上述した実施例1と同様の方法を用いて行う。
また、本例の表面処理装置1及びそれを用いた表面処理方法における基本的な作用効果は、実施例1と同様である。