特許第6063838号(P6063838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063838
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/08 20060101AFI20170106BHJP
   F16J 15/34 20060101ALI20170106BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20170106BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20170106BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20170106BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   F16L27/08 Z
   F16J15/34 K
   F16J15/447
   F16J15/34 B
   F16C17/02 Z
   F16C17/04 Z
   F16C33/20 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-158793(P2013-158793)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31297(P2015-31297A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】西 崇伺
(72)【発明者】
【氏名】山野井 毅
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇人
(72)【発明者】
【氏名】木久山 貴規
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−084691(JP,A)
【文献】 特開2011−202695(JP,A)
【文献】 特開2011−202694(JP,A)
【文献】 特開2009−168068(JP,A)
【文献】 特開2004−270915(JP,A)
【文献】 特開2002−323185(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3118508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/08
F16C 17/02
F16C 17/04
F16C 33/20
F16J 15/34
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に回転部材を取付可能で、かつ、軸心方向に沿う貫通流路を有する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持し、かつ、前記回転軸の他端における前記貫通流路に対向して開口する流体路を備える支承体と、前記貫通流路と前記流体路とを軸封状態で連通接続させるためのシール機構と、を有してなるロータリジョイントであって、
前記支承体は、前記流体路を備える他端側のフランジ部と、軸受を介して前記回転軸が内装される一端側の支承本体部とを有して構成され、
前記回転軸は、前記支承本体部における前記一端側に位置する基端軸部と、前記支承本体部に対して前記他端側から装脱可能な状態で前記基端軸部と相対固定される先端軸部とを有してなり、
前記シール機構は、前記先端軸部の他端側に一体回転状態で装備される回転密封輪と、前記フランジ部に軸封状態にて前記軸心方向に相対移動可能で、かつ、前記回転密封輪に向けて押圧付勢される状態で支持される静止密封輪とでなる環状シール部を有して構成され、
前記軸受は、前記先端軸部と前記支承本体部との前記軸心方向間に装備されるスラスト軸受と、前記先端軸部と前記支承本体部との前記軸心に関する径方向間に装備されるラジアル軸受とを有して構成されるとともに、
前記フランジ部と前記先端軸部とを分離不能にすることが可能に構成されているロータリジョイント。
【請求項2】
前記フランジ部と前記先端軸部とを分離不能にする手段が、前記フランジ部に前記軸心方向に沿う状態で形成されている孔と、前記孔に対応する位置状態で前記先端軸部に形成されているナット部と、前記孔を通して前記ナット部に螺合可能なボルトと、により構成されている請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記孔が前記流体路であり、かつ、前記ナット部が前記先端軸部における前記貫通流路に形成されている請求項2に記載のロータリジョイント。
【請求項4】
前記シール機構は、前記基端軸部に一体回転状態で装備される第2回転密封輪と、前記支承本体部に軸封状態にて前記軸心方向に相対移動可能で、かつ、前記第2回転密封輪に向けて押圧付勢される第2静止密封輪とでなる状態で支持される第2環状シール部を有するとともに、
前記軸受は、前記基端軸部と前記支承本体部との前記軸心方向間に装備されるスラスト軸受を有しているとともに、
前記支承本体部と前記基端軸部とを分離不能にすることが可能に構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載のロータリジョイント。
【請求項5】
前記支承本体部は、前記第2静止密封輪を前記第2回転密封輪に向けて押圧付勢する状態で支持する基端支承部と、前記基端支承部に相対固定される蓋フランジとを有して構成されるとともに、
前記支承本体部と前記基端軸部とを分離不能にする手段が、前記基端軸部に形成される大径フランジと、この大径フランジを挟むように前記基端支承部と前記蓋フランジとを前記軸心方向に振り分け配置してなるラビリンス部を有して構成されている請求項4に記載のロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置、粉砕機、攪拌機、医療用機器、食品用機器、その他回転機器全般に使用されるロータリジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のロータリジョイント、即ち、「一端に回転部材を取付可能で、かつ、軸心方向に沿う貫通流路を有する回転軸と、回転軸を回転可能に支持し、かつ、回転軸の他端における貫通流路に対向して開口する流体路を備える支承体と、貫通流路と流体路とを軸封状態で連通接続させるためのシール機構と、を有してなるロータリジョイント」としては、特許文献1や特許文献2などにおいて開示されたものが知られている。
【0003】
回転部分のシールであるロータリジョイントにおいては、経時に伴う磨耗などによって軸受の交換が必要とされる。特許文献1において開示されるロータリジョイントでは、ジョイント下端部に装備されるベアリング(13)、(13)や、第2ジョイント構成部材(2)の第1ジョイント構成部材(2)の主体部(20)に外嵌されて、静止密封環(43)との間に軸受部(48)を形成する円筒形状の蓋部(23)を、経時による磨耗により交換することがある(特許文献1の図1,2を参照)。
【0004】
上記のようにベアリング(軸受)などの部品を交換する場合、ジョイント内部を露出させるべく、まずは外装部品である第1ジョイント構成部材(1)の分解、具体的には、上端の端部壁(11)を側部壁(10)から取り外す作業が必要になるのである。しかしながら、そのことにより下記のような不都合(面倒)を伴う場合がある。
即ち、特許文献1のロータリジョイントでは、端部壁(11)に支持される回転密封輪(可動密封輪:31)と、主体部(20)に支持される静止密封環(固定密封環:30)とによる端面側メカニカルシール(3)が構成されている。
【0005】
従って、部品交換などの軸受のメンテナンスを行う際には、回転密封輪(31)と静止密封輪(30)とが押圧接触する摺動部を解いての端面側メカニカルシール(3)の分解、並びに再組付けも余儀なくされてしまう。
しかしながら、ロータリジョイントの運転後に上記摺動部を分解すると、再組付けの際に摺動面の位置(回転密封輪と静止密封輪との押圧接触面)が微妙にずれてしまう不都合である。このずれが生じると、回転密封輪と静止密封輪との接触状態が分解前後で変化してしまい、それに起因して漏れが生じるおそれも出てくる。
【0006】
また、特許文献2に示されるロータリジョイント(図8参照)でも、同様の問題がある。即ち、上下の各端部に配備されるベアリング(14a),(14b)や、上端部に配備される弾性材製シールリング(23),(24)を交換するなどのメンテナンス時には、ケース体(1)を分解する必要がある。
ケース(1)を分解するには、最上部のカバー板(6c)をはずして、第2流路フランジ(6b)、第2シールフランジ(6a)、第1流路フランジ(5b)…といった具合に上から順に取り外していくことになる。その際、上下に配列されている複数のメカニカルシール(16)そのものが分解並びに再組付けされるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−287371号公報
【特許文献2】特開2011−202694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のロータリジョイントにおいては、ベアリング(軸受)の交換などの内部メンテナンスする際の分解時には、最も重要な箇所であるシール機構自体も分解されてしまうものであったため、その分解及び再組付けによる摺動部の微妙なずれによって漏洩のおそれがある、という問題があった。適用温度範囲が広く、ベアリングとして転がり軸受に代えて滑り軸受を用いる仕様では、磨耗による滑り軸受の交換時期が転がり軸受より早くなるので、上記問題がより顕在化し易い。
【0009】
本発明の目的は、構造の見直しや再検討により、軸受などの部品交換やメンテナンスを行うべく分解及び再組付け時にシール機構は分解しなくて済むように工夫し、シール機構の分解組付けに起因する漏洩のおそれが生じないように改善されたロータリジョイントを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、一端に回転部材を取付可能で、かつ、軸心P方向に沿う貫通流路1wを有する回転軸1と、前記回転軸1を回転可能に支持し、かつ、前記回転軸1の他端における前記貫通流路1wに対向して開口する流体路2wを備える支承体2と、前記貫通流路1wと前記流体路2wとを軸封状態で連通接続させるためのシール機構Sと、を有してなるロータリジョイントにおいて、
前記支承体2は、前記流体路2wを備える他端側のフランジ部2Aと、軸受Bを介して前記回転軸1が内装される一端側の支承本体部20とを有して構成され、
前記回転軸1は、前記支承本体部20における前記一端側に位置する基端軸部13と、前記支承本体部20に対して前記他端側から装脱可能な状態で前記基端軸部13と相対固定される先端軸部14とを有してなり、
前記シール機構Sは、前記先端軸部14の他端側に一体回転状態で装備される回転密封輪15と、前記フランジ部2Aに軸封状態にて前記軸心P方向に相対移動可能で、かつ、前記回転密封輪15に向けて押圧付勢される状態で支持される静止密封輪16とでなる環状シール部s1を有して構成され、
前記軸受Bは、前記先端軸部14と前記支承本体部20との前記軸心P方向間に装備されるスラスト軸受sbと、前記先端軸部14と前記支承本体部20との前記軸心Pに関する径方向間に装備されるラジアル軸受rbとを有して構成されるとともに、
前記フランジ部2Aと前記先端軸部14とを分離不能にすることが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のロータリジョイントにおいて、
前記フランジ部2Aと前記先端軸部14とを分離不能にする手段Dが、前記フランジ部2Aに前記軸心P方向に沿う状態で形成されている孔2wと、前記孔2wに対応する位置状態で前記先端軸部14に形成されているナット部1bと、前記孔2wを通して前記ナット部1bに螺合可能なボルト35と、により構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のロータリジョイントにおいて、
前記孔2wが前記流体路であり、かつ、前記ナット部1bが前記先端軸部14における前記貫通流路1wに形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のロータリジョイントにおいて、
前記シール機構Sは、前記基端軸部13に一体回転状態で装備される第2回転密封輪21と、前記支承本体部20に軸封状態にて前記軸心P方向に相対移動可能で、かつ、前記第2回転密封輪21に向けて押圧付勢される状態で支持される第2静止密封輪22とでなる第2環状シール部s2を有するとともに、
前記軸受Bは、前記基端軸部13と前記支承本体部20との前記軸心P方向間に装備されるスラスト軸受sbを有しているとともに、
前記支承本体部20と前記基端軸部13とを分離不能にすることが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のロータリジョイントにおいて、
前記支承本体部20は、前記第2静止密封輪22を前記第2回転密封輪21に向けて押圧付勢する状態で支持する基端支承部2Eと、前記基端支承部2Eに相対固定される蓋フランジ2Fとを有して構成されるとともに、
前記支承本体部20と前記基端軸部13とを分離不能にする手段Eが、前記基端軸部13に形成される大径フランジ1dと、この大径フランジ1dを挟むように前記基端支承部2Eと前記蓋フランジ2Fとを前記軸心P方向に振り分け配置してなるラビリンス部31を有して構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
ロータリジョイントにおいては、回転軸を支承体に回転可能に支持するためのラジアル軸受やスラスト軸受に関して交換などのメンテナンスを行う際には、フラン時部を支承体本体から分離させ、かつ、先端軸部を基端軸部から離脱させて、軸受の装着部位を露出させる必要あがる。
請求項1の発明によれば、回転密封輪を支持する先端軸部と、静止密封輪を支持するフランジ部とを分離不能にすることが可能であるから、軸受の装着部位を露出させるときには、先端軸部とフランジ部とを分離不能な状態、即ち一体の状態として支承本体部及び基端軸部から分離させることが可能になる。
つまり、軸受の装着部位を露出させる際に、環状シール部を分解することなく、即ち、回転密封輪と静止密封輪とを接触したままの状態でフランジ部及び先端軸部を分離して取り出すことが可能になる。従って、軸受のメンテナンスを行う場合であってもシール機構は組付け状態を維持したままで良いものとなる。
その結果、構造の見直しや再検討により、軸受などの部品交換やメンテナンスを行うべく分解及び再組付け時にシール機構は分解しなくて済むように工夫し、シール機構の分解組付けに起因する漏洩のおそれが生じないように改善されたロータリジョイントを提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ボルトを用いた分離不能手段の採用により、ボルトをフランジ部の孔を通して先端軸部のナット部に螺合させれば、フランジ部と先端軸部との分離不能が可能になる。つまり、ボルトを螺合操作するだけの簡単で時間の掛からない作業によりフランジ部と先端軸部との一体化が行える利点が追加される。
【0017】
請求項3の発明によれば、ボルトを通す孔が流体路であり、かつ、ナット部が先端軸部の貫通流路に形成されているから、分離不能手段の大部分が既存の構成を利用した構造になっている。従って、機能の兼用化ができて、構造の簡素化や廉価化を図りながら分離不能手段を構成できる合理的なロータリジョイントを提供できている。
【0018】
請求項4の発明によれば、第2回転密封輪を支持する基端軸部と、第2静止密封輪を支持する支承本体部とを分離不能にすることが可能であるから、基端軸部と支承本体部との間のスラスト軸受の装着部位を露出させるときに、基端軸部と支承本体部とを分離不能な状態、即ち一体の状態としておくことができる。
従って、基端軸部と支承本体部とに跨って構成される第2環状シール部を有するシール機構であっても、軸受のメンテナンスを行う場合に第2環状シール部は組付け状態を維持したままで良いものとなり、第2回転密封輪と第2静止密封輪との接触状態が微妙にずれてしまうことが生じないようになる。
その結果、一対のスラスト軸受とラジアル軸受とによるシール機構を有する場合でも、軸受などの部品交換やメンテナンスを行うべく分解及び再組付け時にシール機構は分解しなくて済み、シール機構の分解組付けに起因する漏洩のおそれが生じないように改善されたロータリジョイントを提供することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、支承本体部と基端軸部との分離不能手段が、基端軸部の大径フランジと、これを挟むように基端支承部と蓋フランジとを軸心方向に振り分け配置してなるラビリンス部を有して構成されている。従って、先端軸部を基端軸部から分離しても基端軸部はらラビリンス部によって支承本体部に一体化され続けるとともに、ラビリンス部はシール対象流体やパージ流体などの機外排出を可能としながら、ごみや異物の支承体内部への浸入を規制することが可能になる、という利点が追加される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ロータリジョイントの構造を示す断面図(実施例1)
図2】第1シール構造体を分離して取り出した状態を示す状況説明図
図3】上側のスラスト軸受の取外し方を示す作用図
図4】支承本体部の分解初期状態を示す作用図
図5】ラジアル軸受や下側のスラスト軸受の取外し方を示す作用図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明によるロータリジョイントの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。このロータリジョイントRJに使用されるシール対象流体としては、液体アルゴン(封液)や、スラリーを含む液体アルゴンなどがあり、パージ流体としては冷却水、その他である。
【0022】
〔実施例1〕
図1に示すように、ロータリジョイントRJは、下端(一端の一例)に回転部材(図示省略)を取付可能で、かつ、上下向きの軸心P方向に沿う貫通流路1wを有する回転軸1と、回転軸1を回転可能に支持し、かつ、回転軸1の上端(他端の一例)における貫通流路1wに対向して開口する流体路2wを備える支承体2と、貫通流路1wと流体路2wとを軸封状態で連通接続させるためのシール機構Sと、を有して構成されている。回転軸1や支承体2は、ステンレス材などの鋼材で形成されている。
ロータリジョイントRJは、貫通流路1wと流体路2wとの何れか一方から他方に流れるシール対象流体を、回転軸1を支承体2で回転可能に支承する構造部位からの漏洩を制限又は回避する。
【0023】
支承体2は、平面視で円形を呈する上端のフランジ部2A、円筒状の第1ケース2B、円筒状の第2ケース2C、円筒状の第3ケース2D、環状の押えケース2E、及び環状の蓋フランジ2Fを上から下に順に連ねてボルト止め一体化することで構成されている。フランジ部2Aに形成されている流体路2wの上端には、他の機器や配管などを接続するための内ネジ(テーパーネジ)2aが形成されている。
【0024】
フランジ部2Aは複数の第1ボルト3により第1ケース2Bに連結固定されている。第1ケース2Bは複数の第2ボルト4により第2ケース2Cに連結固定されている。第2ケース2Cは複数の第3ボルト5により第3ケース2Dに連結固定されている。第3ケース2Dは複数の第4ボルト6により押えケース2Eに連結固定されている。そして、押えケース2Eは複数の第5ボルト7により蓋フランジ2Fに連結固定されている。
支承体2からフランジ部2Aを除いた状態のもの、即ち、第1ケース2Bと第2ケース2Cと第3ケース2Dと押えケース2Eと蓋フランジ2Fとで支承本体部20が形成されている。
【0025】
回転軸1は、上ホルダ1A、上シャフト1B、下ホルダ1C、下シャフト1D、及び下端に位置する円形のプレート1Eを上から下に順に重ねて一体化することで構成されている。上ホルダ1Aは複数の皿ビス8により上シャフト1Bに連結固定されている。下ホルダ1Cは複数の皿ビス9により下シャフト1Dに連結固定されている。プレート1Eは複数のボルト(六角穴付きボルト)10により下シャフト1Dの下側に連結固定されている。そして、上シャフト1Bは、プレート1Eに内嵌される中蓋1Fから下シャフト1D及び下ホルダ1Cを通される長尺ボルト(六角穴付きボルト)12により、下ホルダ1Cを介して下シャフト1Dに連結固定されている。
【0026】
プレート1Eの外周部分に形成されている上下貫通の孔1eは、前記回転部材(図示省略)をボルトなどにより互いに取付けるためのものである。また、プレート1Eの下側における左右片側のみに断面形状として描かれている11は、前記の回転部材(図示省略)に埋設装備されるリップシールである。
上ホルダ1Aと上シャフト1Bとで先端軸部14が形成され、下ホルダ1Cと下シャフト1Dとプレート1Eと中蓋1Fとで基端軸部13が形成されている。
【0027】
このロータリジョイントRJは、一対の環状シール部s1,s2によるシール機構Sと、上下一対のスラスト軸受sb及びラジアル軸受rbにより、回転軸1を回転自在に支承体2に支承する軸受Bとが装備されている。
まず、上側の第1環状シール部(「環状シール部」の一例)s1は、先端軸部14の上側に一体回転状態で装備される回転密封輪15と、フランジ部2Aに軸封状態で軸心P方向に相対移動可能で、かつ、先端軸部14に向けてベローズ17により押圧付勢される静止密封輪16などを有して構成されている。
【0028】
上側の第1環状シール部s1について説明する。
フランジ部2Aは、上下厚みの比較的薄くて大径の外周部2gと、中心に流体路2wを有する上下厚みの比較的厚く小径のボス部2nとからなる。外周部2gの径中間部分には、ベローズ17の上端部に密嵌合するリング状でステンレス材などによるアダプタ18が嵌合配備されている。ベローズ17は、静止密封輪16を下方に押圧付勢する弾性手段であって、例えばニッケル-クロム系の合金(インコネル:商標)により形成されている。
蛇腹状のベローズ17の下端側には、第1ケース2Bの内周面2bに軸心Pに関して芯出し可能に摺接内嵌又は密内嵌されるリング状のリテーナ19が装備されており、そのリテーナ19にリング状の静止密封輪16が内嵌装備されている。
【0029】
一方、上ホルダ1Aの厚肉外周部1aの上側に、上ホルダ1Aと一体回転するリング状の回転密封輪15が内嵌収容されており、その上側の表面15aと、静止密封輪16の下面である突出表面16aとが、ベローズ17が伸びようとする弾性力で押圧付勢される状態で摺接されている。この相対回転する両表面15a,16aどうしが摺接するメカニカルシール構造により、貫通流路1w及び流体路2wに通ずる流体側空間部rsと、支承体内部空間nsとをシールする第1環状シール部s1が形成されている。
【0030】
フランジ部2Aのボス部2nをできるだけ下方に伸ばしてあって、フランジ部2Aと上ホルダ1Aとが接触せんばかりに近接させる機械的な工夫がされている。従って、流体は貫通流路1wからその殆どが流体路2wにスムーズに流れて行くようになり、流体が極力第1環状シール部s1には及ばないものとなる効果が得られる。
なお、図示は省略するが、Oリングを伴うなどしてボス部2nにリテーナ19を液密で軸心P方向に相対摺動可能に外嵌し、リテーナ19を下方に押圧付勢する複数のコイルバネを支承体内部空間nsに配置してなる構造としても良い。
【0031】
次に、下側の第2環状シール部s2は、外部に連通している外部側空間部gsと前述の支承体内部空間nsとをシールするものであって、下ホルダ1Cの下側に支持される第2の回転密封輪21と、押えケース2Eに上方への押圧付勢状態で支持される第2の静止密封輪22とを備えて構成されている。
【0032】
下ホルダ1Cの厚肉外周部1cの下面には、この下ホルダ1Cと一体回転するリング状の第2の回転密封輪21が内嵌保持されている。
押えケース2Eの突出内周部2eに載置支持されるリング状の第2のアダプタ23と、第3ケース2Dの内周面2dに芯出し可能に摺接内嵌又は密内嵌により装備されるリング状の第2のリテーナ24とに亘り、蛇腹状の第2のベローズ25が架設装備されている。リテーナ24には、リング状の第2の静止密封輪22が内嵌載置されており、その上方への突出表面22aと第2の回転密封輪21の下側の表面21aとが、第2のベローズ25が伸びようとする弾性力により互いに接近する方向に押圧付勢されている。
【0033】
上述の構成により、相対回転する第2の回転密封輪21と第2の静止密封輪22とが摺接されることで、メカニカルシール構造の第2環状シール部s2が形成されている。つまり、第1環状シール部s1が主として流体のシールを行い、第2環状シール部s2は第1環状シール部s1から漏れ出た流体のシールを行う、という一対のメカニカルシールでなる構成のシール機構Sとされている。
【0034】
次に、軸受Bについて説明する。図1に示すように、上ホルダ1Aと第2ケース2Cとの上下間、及び第2ケース2Cと下ホルダ1Cとの上下間のそれぞれにスラスト軸受sbが設けられている。そして、上ホルダ1Aにおける上シャフト1Bに外嵌する部分であるボス部1vと、第2ケース2Cとの径方向間にラジアル軸受rbが設けられている。
一対のスラスト軸受sbは、例えばふっ素樹脂製で扁平リング状の滑り軸受に構成されており、ラジアル軸受rbは、例えばふっ素樹脂製で筒状の滑り軸受に構成されている。
【0035】
上側のスラスト軸受sbの取付構造は次の通りである。上ホルダ1Aの厚肉外周部1aの下方側には、上シャフト1Bに外嵌する円筒状のボス部26が形成されており、そのボス部26の上端側(根元側)の外周には雄ねじ27が形成されている。その雄ねじ27に螺合するリング状雌ねじであるナット輪28を上方へ螺進させての締付けにより、厚肉外周部1aの下面(符記省略)に当接する状態で上側のスラスト軸受sbが嵌着固定されている。29は、スラスト軸受sbを軸心Pに対する芯出し状態で組付けるための位置決めピンである。
【0036】
下側のスラスト軸受sbの取付構造は、上下反転しているだけで上側のものと基本同じである。即ち、ナット輪28を下ホルダ1Cの外周上部に形成されている雄ねじ30に螺合させ、そして下方へ螺進させての締付けにより、下ホルダ1Cの厚肉外周部1cの上面(符記省略)に当接する状態で下側のスラスト軸受sbが嵌着固定されている。
また、ラジアル軸受rbは、これが上ホルダ1Aのボス部1vに密外嵌される状態となるように、第2ケース2Cの内周面2cに圧入内嵌されている。なお、ラジアル軸受rbは、ボス部1vに圧入外嵌され、かつ、内周面2cに密内嵌される構成でも良い。
【0037】
次に、種々の構造について説明する。
下シャフト1Dの下部には、大径フランジ1dが形成されており、この大径フランジ1dを僅かな隙間をあけて取り囲むように押えケース2Eと蓋フランジ2Fとが配置することでラビリンス部31が形成されている。このラビリンス部31は、下シャフト1Dの支承体2に対する上下への抜け止め機能も兼ねる構成とされている。
【0038】
シール機構Sに対する冷却や潤滑の役割を行うパージ流体の取込路32が第3ケース2Dに、そして、パージ流体の排出路33が第1ケース2Bにそれぞれ形成されている。この構造により、取込路32から供給されるパージ流体が支承体内部空間nsを通って排出路33に向かう際に、第2環状シール部s2、下側のスラスト軸受sb、ラジアル軸受rb、上側のスラスト軸受sb、第1環状シール部s1をこの順で通過するようになる。なお、第1環状シール部s1から漏れ出たシール対象流体を、第2環状シール部s2に導くための垂下流路34が第2ケース2Cに上下貫通孔として形成されている。
【0039】
取込路32から下方の支承体内部空間nsに入ったパージ流体は、第2環状シール部s2や下側のスラスト軸受sbに向かうとともに、トンネル状の垂下流路34を通って上側の支承体内部空間nsに入って第1環状シール部s1に向かい、そして排出路33から排出される。また、第1環状シール部s1において流体側空間部rsから支承体内部空間nsに漏れ出たシール対象流体は、パージ流体と共に排出路33から排出されるので、第2環状シール部s2からの漏洩の殆どはパージ流体であり、ラビリンス部31を通って機外に排出可能である。
【0040】
次に、ロータリジョイントRJを、メンテナンスなどによる分解や再組付けについて説明する。滑り軸受であるスラスト軸受sb、ラジアル軸受rbの交換時には分離不能手段Dを用いる。分離不能手段Dは、図1に仮想線で示す治具ボルト35と、流体路(孔の一例)2wと、ナット部1bとにより構成されている。
つまり、機器や配管などの接続路(図示省略)が外された状態の流体路2wに、フランジ部2Aの他端側外部からの操作により治具ボルト35を挿入し、そしてボルト先端のネジ部35aを上シャフト1Bの貫通流路1wに形成されている雌ネジでなるナット部1bに螺合させることにより、フランジ部2Aと上シャフト1Bとを連結することができる(図2を参照)。
【0041】
それから、又はその前に、複数(例:4個)の第1ボルト3を緩めて外して、フランジ部2Aと支承本体部20との連結を解くとともに、複数の長尺ボルト12を緩めて上シャフト1Bとの螺合を解除し、上シャフト1Bを上方に抜き出し移動可能とする。これら第1ボルト3や長尺ボルト12の外し操作の順番は特に問わない。
【0042】
さて、第1ボルト3の全部が外され、かつ、治具ボルト35が螺着された分離不能手段Dの機能状態において、フランジ部2Aを持ち上げると、図2に示すように、フランジ部2Aと第1環状シール部s1と先端軸部14とが一体となった状態のもの、即ち、第1シール構造体B1を支承本体部20から取り出すことができる。
すると、図3に示すように、取り出された第1シール構造体C1における上ホルダ1Aの雄ねじ27からナット輪28を緩めて取り外すことにより、厚肉外周部1aの下面(符記省略)に当接している上側のスラスト軸受sbを取り出すことができる。
従って、新品などに交換する場合には、その交換されたスラスト軸受sbを位置決めピン29による厚肉外周部1aの下面(符記省略)への位置決めセット状態として、ナット輪28を雄ねじ27に螺合させて締付けることにより、第1シール構造体C1を組付け状態にすることができる。
【0043】
上述のように、上側のスラスト軸受sbの交換は、第1シール構造体C1を支承本体部20から分離した状態で、即ち、第1環状シール部s1を分解することなく組付け状態のままで行うことができる。故に、軸受の交換時には回転密封輪と静止密封輪との分離及び再組付けを必要とした従来構造のものに比べて、本発明によるロータリジョイントRJでは回転密封輪15と静止密封輪16との接触状態が微妙にずれてしまうことが起こり得ない。従って、ロータリジョイントRJ全体としての分解及び再組付けが余儀なくされる軸受の交換後においても、環状シール部s1の良好なシール状態を維持することができるという効果がある。
【0044】
ラジアル軸受rbの交換については、次のように作業する。第1シール構造体C1が除去され、図2に示される支承本体部20において、複数の(例:8本)の第2ボルト4を外すことにより、図4に示すように、第1ケース2Bを第2ケース2Cから分離することができる。
次いで、図4に示す状態において、複数(例:8個)の第3ボルト5を外すことにより、図5に示すように、第2ケース2Cを第3ケース2Dから分離することができる。
図5に示すように、単体となった状態の第2ケース2Cからは、プーラーなどの外し工具を用いることが可能になり、圧入されているラジアル軸受rbを容易に取り外すことができる。また、交換された新品のラジアル軸受rbは、容易に第2ケース2Cの内周面2cに圧入内嵌し再組付けすることができる。
【0045】
このラジアル軸受rbの交換作業時においても、第1シール構造体C1はそのまま(図2の紙面上側に描かれている状態)で良いから、ラジアル軸受rbの交換に伴うメンテナンスを行う前後においても、第1環状シール部s1における回転密封輪15と静止密封輪16との良好な接触状態を維持することができている。
【0046】
ところで、図5に示す状態においては、ラビリンス部31の存在により、下シャフト1Dが支承本体部20から上下いずれかの方向に移動して分離してしまう、ということが生じないようになっている。つまり、支承本体部20は、第2の静止密封輪22を第2の回転密封輪21に向けて第2のベローズ25で押圧付勢する状態で支持する押えケース(基端支承部の一例)2Eと、押えケース2Eが装脱可能に固定される第3ケース(本体支承部の一例)2Dとを有して構成されるとともに、分離不能手段であるラビリンス部31により、基端軸部13と押えケース2Eとを分離不能にすることが可能に構成されている。
【0047】
下側のスラスト軸受sbの交換は次のように行う。第2ケース2Cが外された状態のもの、即ち、基端軸部13を含む第2シール構造体C2においては、図5に示すように、下側のスラスト軸受sbを含む下ホルダ1Cが上方露出される。従って、下ホルダ1Cの雄ねじ30からナット輪28を緩めて外し、厚肉外周部1cの上側に装備されているスラスト軸受sbを簡単に取り外すことができる。
また、新品などのスラスト軸受sbを再組付けする場合には、そのスラスト軸受sbを位置決めピン29による厚肉外周部1c上面への位置決めセット状態として、ナット輪28を雄ねじ30に螺合させて締付ければ良い。
【0048】
図5に示す第2シール構造体C2が上方露出されている状態から、元の組付け状態(ロータリジョイントRJ)に再組付けするには、上述した分解作業の逆順序で連結作業を行えば良い。即ち、複数の第3ボルト5を用いて第2ケース2Cを第3ケース2Dの上側に重ねて連結し、それから、複数の第2ボルト4を用いて第1ケース2Bを第2ケース2Cの上側に重ねて連結し、図2に示される支承本体部20とする。そして、その支承本体部20に第1シール構造体C1を落とし込み配置してから、複数の第1ボルト3を締付けて一体化し、図1に示すロータリジョイントRJが再構成される。
【0049】
下側のスラスト軸受sbの交換作業も、第2環状シール部s2は組付け状態としたままで行うことができる。このとき、当然ながら第1環状シール部s1には無関係である。このように、本発明によるロータリジョイントRJにおいては、一対のスラスト軸受sb,sbとラジアル軸受rbとでなる軸受Bの交換時に、いずれの環状シール部s1,s2も分解する必要がないように構造工夫されている。その結果、軸受の交換による分解・再組付けに起因した漏洩おそれのないシール機構Sが実現されており、より改良されたロータリジョイントを提供することができている。
【0050】
〔別実施形態〕
上述の実施形態では、一対のスラスト軸受sb,sbと一つのラジアル軸受rbとにより軸受Bが構成されているが、各一つのスラスト軸受sbと一つのラジアル軸受rbとにでなる軸受Bでも良い。本発明は、上述の実施形態における第2環状シール部s2を持たないロータリジョイントRJにも適用可能である。
また、上述の実施形態では、軸心Pが上下向きのものであったが、左右向きなど、上下以外の方向に向く軸心Pを有するロータリジョイントRJでも良い。
【符号の説明】
【0051】
1 回転軸
1b ナット部
1d 大径フランジ
1w 貫通流路
2 支承体
2A フランジ部
2E 基端支承部
2F 蓋フランジ
2w 流体路、孔
13 基端軸部
14 先端軸部
15 回転密封輪
16 静止密封輪
20 支承本体部
21 第2回転密封輪
22 第2静止密封輪
31 ラビリンス部
35 ボルト
B 軸受
D,E 分離不能手段
P 軸心
S シール機構
s1 環状シール部
s2 第2環状シール部
rb ラジアル軸受
sb スラスト軸受
図1
図2
図3
図4
図5