(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性基板と、患者の嚥下プロファイルに関連する複数の非侵襲性パラメータを検知するように設計されたプリンテッドセンサと、を備えるセンサデバイスであって、前記可撓性基板および前記プリンテッドセンサはプラスチックフォイル内に包囲される、前記センサデバイスと、
前記センサデバイスと通信してそのセンサ出力を受け取り当該センサ出力を評価して結果を得るように構成された処理デバイスと、
を備え、
前記センサ出力の評価は、少なくとも1つの嚥下プロファイルに関する統計的に有意なデータを含み前記センサデバイスおよび前記処理デバイスから遠隔位置に位置している中央患者データベース内に記憶された既知の嚥下障害又は嚥下機能障害に対してセンサ出力を比較することを含み、
前記処理デバイスはさらに前記結果を出力するように構成される、
嚥下検査装置。
前記可撓性基板が、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1または2に記載の嚥下検査装置。
前記処理デバイスは、プロセッサを有し、コンピュータ、iPod(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、携帯電話、携帯情報端末、ポケットベル、ショートメッセージサービス、BlackBerry(登録商標)またはそれらの組み合わせからなる群より選択された、電子デバイスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の嚥下検査装置。
前記データベースの前記複数の嚥下プロファイルは、健康な患者の嚥下プロファイルおよび嚥下障害患者の嚥下プロファイルの両方を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の嚥下検査装置。
前記センサデバイスは、前記検知されたパラメータデータを無線により処理デバイスに送信するための送信機としての役割を果たすように設計されたアンテナを備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の嚥下検査装置。
前記処理デバイスに電子信号を送信し得る第2のデバイスを備え、前記第2のデバイスは前記センサデバイスに有線接続されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の嚥下検査装置。
前記第2のデバイスは、iPod(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、携帯電話、携帯情報端末、ポケットベル、ショートメッセージサービス、BlackBerry(登録商標)のような、電子情報を送信および/または受信し得る電子装置である、請求項9に記載の嚥下検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、便利で、使用が容易であり、費用対効果が高く、結果が即座に得られ、より一般的に利用可能な、嚥下機能障害を診断するための装置及び方法を提供することが有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本開示は、嚥下障害又は嚥下機能障害を診断するためのデバイスを提供する。これらのデバイスは、例えば、マイクロコントローラ、少なくとも1つのプリンテッドセンサ、アンテナ、又はそれらの組合せからなる群より選択されるプリンテッドエレクトロニクスを有する可撓性基板を備える。可撓性基板及びプリンテッドエレクトロニクスは、プラスチックフォイル内に包囲されてもよい。
【0005】
[0005]一実施形態においては、可撓性基板は、可撓性ポリマーを含む。この可撓性ポリマーは、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、又はそれらの組合せからなる群より選択されてもよい。センサは、使い捨て式であってもよい。
【0006】
[0006]一実施形態においては、センサのプリンテッドエレクトロニクスは、複数のプリンテッドセンサを備える。これらのセンサは、音、音響、加速度、速度、距離、筋電図検査法、機械的筋運動記録法、電気関係、ビデオ蛍光透視法、サーモグラフィ、温度、又はそれらの組合せを感知するように構成されてもよい。アンテナは、データを受信及び/又は送信するように構成されてもよい。
【0007】
[0007]一実施形態においては、センサは、接着剤をさらに備える。この接着剤は、皮膚に対する使用に関して安全なものであるべきであり、皮膚から容易に除去可能である。
【0008】
[0008]別の実施形態においては、障害を診断する方法が提供される。この方法は、評価すべき患者にセンサ出力を受け取るデバイスと通信するセンサを配置することと、センサ出力を評価して第1の結果を得ることと、評価の第1の結果を出力することとを含む。この方法は、第1の結果を評価して第2の結果を得ることと、第2の結果を出力することとをさらに含んでもよい。第1の結果及び第2の結果は、ディスプレイに出力されてもよい。
【0009】
[0009]一実施形態においては、センサは、有線接続を介して、又は無線接続を介して通信する。また、この接続は、Bluetooth(登録商標)、電波、又は携帯電話網を介して行われてもよい。
【0010】
[0010]一実施形態においては、この評価は、患者データベースにおいて行われる。患者データベースは、患者と同一の建物内に位置してもよい。この評価は、センサがデバイスと通信してから10分以内に、又は実質的に即座に行われ得る。この評価は、費用対効果が高く、有効であり、高感度であり、特定的であり、確実な様式で行われ得る。また、この評価は、臨床医ごとのばらつきを伴うことなく、及び非専門家の使用向けに簡易化された様式で行われ得る。この評価は、患者データベース内の既知の障害/機能障害に対してセンサ出力を比較することを含むことが可能である。一実施形態においては、この評価は、アルゴリズムを使用してセンサ出力を解釈する。
【0011】
[0011]患者データベースは、更新することが可能である。このデータベースは、データベースに新規検査の結果を入力することにより、更新することが可能である。患者データベースは、申し込みにより更新されてもよい。患者データベースの更新は、インターネット、物理的手段、並びにインターネット及び物理的手段の中の少なくとも1つにより受信されてもよい。物理的手段は、コンパクトディスク、DVD、フラッシュドライブ、テープ、他の物理的データ記憶デバイス、又はそれらの組合せの中の少なくとも1つであることが可能である。患者データベースは、統計的に有意なデータを含んでもよい。患者データベースは、約5000件の検査結果を含んでもよく、複数の患者検査サイトにより使用され得る。
【0012】
[0012]一実施形態においては、この評価は、中央データベースにおいて行われる。中央データベースは、更新され得るものであり、申し込みにより更新されてもよい。中央データベースの更新は、インターネット、物理的手段、並びにインターネット及び物理的手段の中の少なくとも1つにより受信されてもよい。物理的手段は、コンパクトディスク、DVD、フラッシュドライブ、テープ、他の物理的データ記憶デバイス、又はそれらの組合せの中の少なくとも1つであることが可能である。中央データベースは、統計的に有意なデータを含んでもよい。中央データベースは、約5000件の検査結果を含んでもよく、複数の患者検査サイトにより使用され得る。
【0013】
[0013]一実施形態においては、中央データベースは、ユーザサイトからデータを収集するように構成されてもよい。中央データベースは、データを収集して学習するように構成されてもよく、この学習は、正常変例又は複合正常を含む。中央データベースは、データを収集して、科学的知識を進歩させ、この評価を継続的に向上させるように、構成されてもよい。中央データベースは、病院又は専門診療所に位置してもよい。
【0014】
[0014]一実施形態においては、さらなる評価は、既知の治療及び/又は標準的な処置に対して評価出力を比較することである。このさらなる評価は、アルゴリズムを使用して第2の出力を解釈し、1つ又は複数の適切な治療を決定することを含んでもよい。このさらなる評価は、患者データベースにおいて行うことが可能である。患者データベースは、上記の患者データベースと同一の特徴を有してもよい。
【0015】
[0015]一実施形態においては、第1の結果を評価して第2の結果を得ることは、中央データベースにおいて行われる。第1の結果及び/又は第2の結果は、視覚的なもの、可聴的なもの、ブライユ点字、少なくとも1つの電子信号、障害又は機能障害の診断、障害又は機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、障害又は機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、「患者は障害/機能障害を有するか?」、力学的機能障害、力学的機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、力学的機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、生体力学的機能障害、生体力学的機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、生体力学的機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、神経学的機能障害、神経学的機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、神経学的機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、嚥下障害、嚥下の低下、嚥下の悪化、安全性の悪化、及び/又は有効性の悪化の定性的尺度、嚥下障害、嚥下の低下、嚥下の悪化、安全性の悪化、及び/又は有効性の悪化の定量的尺度、嚥下機能障害の分類、嚥下機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、嚥下機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、障害の分類、障害の少なくとも1つの定性的尺度、障害の少なくとも1つの定量的尺度、嚥下障害タイプの分類、正常パラメータの範囲内で機能していない解剖学的構造の診断、1つ又は複数の解剖学的構造の1つ又は複数の機能の様々なパラメータの定量的尺度、1つ又は複数の解剖学的構造の1つ又は複数の機能の様々なパラメータの定量的尺度、障害による後遺症のリスクであってもよい。
【0016】
[0016]一実施形態においては、後遺症は、誤嚥性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、栄養失調症、サルコペニア、脱水症、起立性低血圧症、機能低下、発作、圧迫潰瘍、尿路感染症、皮膚感染症、特定の栄養の欠乏症状態、窒息、咳、不安、抑うつ、又はそれらの組合せからなる群より選択される。後遺症は、救急医療、又は、入院訪問、診療室訪問、内科治療、若しくは投薬の中の少なくとも1つを必要としてもよい。後遺症は、脱水症及びそれに関連する問題、並びに健康管理上の負担であってもよい。
【0017】
[0017]一実施形態においては、障害は、嚥下障害である。第1の結果及び/又は第2の結果は、嚥下障害による誤嚥性肺炎のリスクであってもよい。
【0018】
[0018]一実施形態においては、センサデバイスは、患者データベースから遠い位置に位置する。一実施形態においては、この遠隔位置は、介護者のオフィス、熟練介護施設、及び長期療養施設の中の少なくとも1つである。介護者のオフィスは、内科診療室、病院、診療所であってもよい。また、遠隔位置は、移動可能な位置であってもよい。この移動可能な位置は、在宅看護提供者であってもよい。また、この可動位置は、自動車移動診療所又は飛行移動治療室であってもよい。
【0019】
[0019]一実施形態においては、評価は、推奨される治療法を含む結果を出力する。推奨される治療法は、患者の疾患又は機能障害に基づき患者に対して調製された製品、ツール、及びサービスの中の少なくとも1つであってもよい。推奨される治療法は、理学療法、作業療法、言語療法、栄養調合物、食事の変更、口腔衛生の改善、電気刺激、バイオフィードバック、及び薬理学的治療の中の少なくとも2つを含む治療プランであってもよい。食事の変更は、高凝集化、高粘度化、三叉神経刺激物、嚥下刺激物、食物の温度変更、食物の食感変更、及び食物の知覚変更の中の少なくとも1つを含むことが可能である。口腔衛生の改善は、うがい、歯磨き粉、プロバイオティクス、唾液刺激物、歯ブラシ、デンタルフロス、及び舌のスクレーピングの中の少なくとも1つの利用を含むことが可能である。
【0020】
[0020]一実施形態においては、第1の結果は、障害自体により診断又は分類され得る任意の病理、症状、疾患、又はそれらの組合せからなる群より選択される障害である。第1の結果は、少なくとも1つの関節症である障害、一過性下顎骨機能不全、疝痛、過敏性腸症候群(「IBS」)、過敏性腸障害(「IBD」)、少なくとも1つの腸障害、少なくとも1つの病理である障害、嚥下障害を発現し得る症候群又は疾患であってもよい。
【0021】
[0021]一実施形態においては、これらの方法は、障害又は機能障害を診断することを含む。この診断は、障害又は機能障害の早期段階で実施することが可能である。これらの方法は、障害又は機能障害の早期段階で患者に対して治療を行うことをさらに含んでもよい。早期段階で患者を診断及び治療する結果として、保健コスト、救急治療室の訪問、入院、医師の訪問、又は内科治療の中の少なくとも1つが減少する。
【0022】
[0022]一実施形態においては、保健コストの減少は、障害又は機能障害による後遺症の減少によるものである。後遺症は、誤嚥性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、栄養失調症、サルコペニア、脱水症、起立性低血圧症、機能低下、発作、圧迫潰瘍、尿路感染症、皮膚感染症、特定の栄養の欠乏症状態、窒息、咳、不安、抑うつ、又はそれらの組合せからなる群より選択され得る。
【0023】
[0023]一実施形態においては、保健コストの減少は、健康管理、内科治療、及び施設収容の中の少なくとも1つの必要性が低下することによるものである。
【0024】
[0024]一実施形態においては、保健コストの減少は、障害/機能障害の進行の遅滞化、クオリティオブライフの最適化、抑うつの減少、疼痛の減少、及び不安の減少の中の少なくとも1つによるものである。
【0025】
[0025]一実施形態においては、早期段階での患者の診断及び治療は、栄養失調症、脱水症、及びそれらに関連する問題の中の少なくとも1つのリスクの低下に繋がる。早期段階での患者の診断及び治療は、栄養失調症の早期治療に繋がり得るものであり、これは、患者の免疫系を強化させ、サルコペニア及びそれに関連する問題の発生の低下に繋がり、筋ジストニーの発生の低下に繋がり、障害又は機能障害の症状の低下に繋がり得る。
【0026】
[0026]さらに別の実施形態においては、医療支出コストを削減するための方法が提供される。これらの方法は、患者にセンサを配置することと、このセンサを使用して患者の嚥下プロファイルに関するデータを収集することと、複数の嚥下プロファイルを含むデータベースに対してセンサ出力を比較することと、嚥下機能障害を診断することと、嚥下機能障害又はその症状を治療することとを含む。医療支出コストの削減は、病院滞在期間の短縮化、医療施設滞在期間の短縮化、嚥下機能障害に関連する併発症又は症状の減少、病院、診療所、内科診療室、又はそれらの組合せからなる群より選択される医療センターへの患者の訪問回数の減少によるものが可能である。また、医療支出コストの削減は、嚥下機能障害の早期診断及び嚥下機能障害の早期治療によるものも可能である。
【0027】
[0027]嚥下機能障害の早期治療は、嚥下機能障害の治療に有効であることが知られている製品、ツール、及びサービスの中の少なくとも1つを含む治療プランを含むことが可能である。また、早期治療は、理学療法、作業療法、言語療法、栄養調合物、食事の変更、口腔衛生の改善、電気刺激、バイオフィードバック、及び薬理学的治療の中の少なくとも2つを含む治療プランを含むことが可能である。食事の変更は、高凝集化、高粘度化、三叉神経刺激物、嚥下刺激物、食物の温度変更、食物の食感変更、及び食物の知覚変更の中の少なくとも1つを含んでもよい。口腔衛生の改善は、うがい、歯磨き粉、プロバイオティクス、唾液刺激物、歯ブラシ、デンタルフロス、及び舌のスクレーピングの中の少なくとも1つを含むことが可能である。
【0028】
[0028]一実施形態においては、医療支出コストの削減は、嚥下障害による後遺症の減少によるものである。この後遺症は、誤嚥性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、栄養失調症、サルコペニア、脱水症、起立性低血圧症、機能低下、発作、圧迫潰瘍、尿路感染症、皮膚感染症、特定の栄養の欠乏症状態、窒息、咳、不安、抑うつ、又はそれらの組合せからなる群より選択され得る。
【0029】
[0029]一実施形態においては、医療支出コストの削減は、機能障害の進行の遅滞化、クオリティオブライフの最適化、抑うつの減少、疼痛の減少、及び不安の減少の中の少なくとも1つによるものである。
【0030】
[0030]さらに別の実施形態においては、機能障害を診断する方法が提供される。これらの方法は、患者の上にセンサを配置することと、嚥下に関与する解剖学的構造の機能レベルを計測することと、センサが機能レベルに相当するセンサ出力を受け取るデバイスと通信することと、センサ出力を評価して結果を得ることと、評価の結果を出力することとを含む。
【0031】
[0031]一実施形態においては、センサは、可撓性基板、プリンテッドエレクトロニクス、アンテナ、及びマイクロプロセッサを有してもよい。センサは、ビデオ蛍光透視法、筋電図検査法、機械的筋運動記録法、サーモグラフィ、又はそれらの組合せからなる群より選択される公知の感知デバイスであってもよい。
【0032】
[0032]一実施形態においては、解剖学的構造は、顎、口唇、軟口蓋、舌、舌骨、喉頭蓋、喉頭、咽頭、上部食道括約筋、又はそれらの組合せからなる群より選択される。
【0033】
[0033]一実施形態においては、機能レベルは、低、正常、高、又はそれらの組合せからなる群より選択される。また、機能レベルは、悪、正常、良、又はそれらの組合せからなる群より選択されてもよい。機能レベルは、口唇の閉鎖、顎の閉鎖、舌の固定、舌の引き上げ、舌の制御、舌のスウィーピング、舌の封止、軟口蓋の封止、口呼吸、鼻呼吸、舌の推進力、舌の圧力、喉頭の上昇、舌骨の運動、舌骨喉頭の偏倚運動、上部食道括約筋の開き、喉頭蓋の運動、喉頭の開き、声帯襞の閉鎖、喉頭の知覚、咽頭の収縮、咽頭の疲労、喉頭内転筋の反射、喉頭の疲労、呼吸の停止、呼吸の再開、及び咽頭の知覚の中の少なくとも1つに関するものであってもよい。
【0034】
[0034]一実施形態においては、デバイスは、プロセッサを有する電子デバイスである。この電子デバイスは、コンピュータ、iPod(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ポケットベル、ショートメッセージサービス(「SMS」)システム、BlackBerry(登録商標)、又はそれらの組合せからなる群より選択されてもよい。
【0035】
[0035]一実施形態においては、評価することは、複数の嚥下プロファイルを含むデータベースに対してセンサ出力を比較することを含む。複数の嚥下プロファイルは、健康な患者の嚥下プロファイル及び嚥下障害患者の嚥下プロファイルの両方を含んでもよい。複数の嚥下プロファイルは、統計的に有意なデータ量を含む。
【0036】
[0036]一実施形態においては、結果は、患者により容易に理解される形式で出力される。出力結果は、可視形式、可聴形式、テクスチャ形式、及びそれらの組合せからなる群より選択される形式であることが可能である。例えば、出力結果は、可視的なものであり、印刷物、電子ディスプレイ、明滅する発光ダイオード(「LED」)、カラーコードLED、又はそれらの組合せからなる群より選択される。また、出力結果は、ブライユ点字であってもよい。出力結果は、可聴的なものであってもよく、スピーカから出力される。
【0037】
[0037]別の実施形態においては、嚥下機能障害を治療する方法が提供される。この方法は、センサを使用して患者の嚥下プロファイルを計測することと、プロセッサ及び嚥下プロファイルデータベースを有するデバイスに対してセンサ出力を送信することと、嚥下プロファイルデータベースとセンサ出力を比較して第1の結果を得ることと、推奨される治療法データベースに対して第1の結果を比較して第2の結果を得ることと、第2の結果に従って患者を治療することとを含む。
【0038】
[0038]一実施形態においては、比較は、デバイスのプロセッサを使用して実現される。
【0039】
[0039]一実施形態においては、第1の結果は、嚥下機能障害の示度である。第1の結果は、電子信号であってもよい。
【0040】
[0040]一実施形態においては、推奨される治療法データベースは、嚥下プロファイルデータベースと同一のデバイス内に位置する。
【0041】
[0041]一実施形態においては、この方法は、第2のデバイスに第1の結果を送信することをさらに含む。
【0042】
[0042]一実施形態においては、第2の結果は、推奨される治療法である。
【0043】
[0043]一実施形態においては、センサは、可撓性基板、プリンテッドエレクトロニクス、アンテナ、及びマイクロプロセッサを備える。また、センサは、ビデオ蛍光透視法、筋電図検査法、機械的筋運動記録法、サーモグラフィ、又はそれらの組合せからなる群より選択される公知の感知デバイスを備えてもよい。
【0044】
[0044]一実施形態においては、デバイスは、コンピュータ、iPod(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ポケットベル、ショートメッセージサービス(「SMS」)システム、BlackBerry(登録商標)、又はそれらの組合せからなる群より選択される。
【0045】
[0045]一実施形態においては、嚥下プロファイルデータベースは、健康な患者の嚥下プロファイル及び嚥下障害患者の嚥下プロファイルの両方を含む。嚥下プロファイルデータベースは、統計的に有意なデータ量をさらに含んでもよい。
【0046】
[0046]一実施形態においては、結果は、患者により容易に理解される形式で出力される。結果は、可視形式、可聴形式、テクスチャ形式、及びそれらの組合せからなる群より選択される形式で出力されてもよい。また、結果は、可視形式で出力されてもよく、印刷物、電子ディスプレイ、明滅する発光ダイオード(「LED」)、カラーコードLED、及びそれらの組合せからなる群より選択される。出力結果は、ブライユ点字であってもよい。出力結果は、スピーカから出力される可聴信号であってもよい。
【0047】
[0047]さらなる特徴及び利点が、本明細書において説明されるが、それらは、以下の詳細な説明及び図面から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[0051]本開示は、潜在的な嚥下機能障害の可能性の示度となり得る、患者の嚥下プロファイルに関連する非侵襲性パラメータを計測及び分類することにより、嚥下機能障害を診断するための装置及び方法に関する。これらの装置には、例えば、プラスチックフォイル内のマルチパラメータ嚥下障害分析システムなどが含まれる。この分析システムは、低コストのプリンテッドエレクトロニクス技術を搭載したポリマー基板に基づく可撓性の軽量センサである、スマートセンシングシステムであってもよい。別の実施形態においては、センサは、例えばビデオ蛍光透視鏡(「VF(videofluouroscope)」)などの公知の感知デバイスである。これらの方法は、嚥下に関連する少なくとも1つのパラメータを計測するために患者にセンサを配置することを含み得る。計測されたパラメータは、評価され、既知の嚥下機能障害データと比較され、この評価は、潜在的な嚥下機能障害の可能性の示度を提供する。
【0050】
[0052]本開示及び添付の特許請求の範囲においては、「1つの(a、an)」及び「その(the)」という単数形は、別様のことが文脈により明示されない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば、「アミノ酸(an amino acid)」という言及は、2つ以上のアミノ酸の混合物等々を含む。
【0051】
[0053]本明細書においては、「約」は、ある数値範囲内の複数の数を指すものと理解される。さらに、本明細書においては、全ての数値範囲が、その範囲内の全ての整数、全体、又は部分を含むように理解されるべきである。本出願内に含まれる全ての投与量範囲は、前記範囲内に含まれる全ての数、全体、又は部分を含むように意図される。
【0052】
[0054]本明細書においては、「動物」は、哺乳動物を含むがそれらに限定されず、この哺乳動物は、齧歯類動物、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどのペット、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがそれらに限定されない。「動物」又は「哺乳動物」という用語、或いはそれらの複数形が使用される場合には、これらは、その節の文脈により示される又は示されることが意図される効果を可能にするあらゆる動物にも該当することが予期される。
【0053】
[0055]本明細書においては、「有効量」は、不全を防止する、個人の疾患又は病状を治療する、或いはより一般的には、症状を低下させる、疾患の進行を管理する、又は個人に対して栄養学的利点、生理学的利点、若しくは医学的利点をもたらす量である。治療は、患者関与の又は医者関与のものであることが可能である。
【0054】
[0056]本明細書においては、「高齢の」は、65歳以上、又は少なくとも75歳以上のヒトを意味する。
【0055】
[0057]本明細書においては、「個人」及び「患者」という用語が、ヒトを指すためにしばしば使用されるが、本開示は、それに限定されない。したがって、「個人」及び「患者」は、治療による恩恵を受け得る病状を有するか又はその病状のリスクがある、あらゆる動物、哺乳動物、又はヒトを指す。
【0056】
[0058]本明細書においては、「食品用微生物」は、食物において使用される、及び食物における使用が安全であると一般的に見なされる微生物を意味する。
【0057】
[0059]本明細書においては、「哺乳動物」は、齧歯類動物、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどのペット、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがそれらに限定されない。「哺乳動物」という用語が使用される場合には、これは、哺乳動物により示される又は示されることが意図される効果を可能にする他の動物にも該当することが予期される。
【0058】
[0060]「微生物」という用語は、細菌、酵母及び/又は真菌、微生物を含む細胞成長培地、又は微生物が培養された細胞成長培地を含むように意図される。
【0059】
[0061]本明細書においては、「栄養組成」は、例えば、1つ又は複数の、酸味料、添加増粘剤、緩衝剤若しくはpH調整剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、賦形剤、着香剤、ミネラル、浸透圧剤、薬学的に許容され得る担体、保存料、安定化剤、砂糖、甘味料、調質剤、及び/又はビタミンなどの、従来的な食品添加物を含む任意数の任意選択の追加成分を含むように理解される。これらの任意選択の成分は、任意の適切な量で添加することが可能である。
【0060】
[0062]本明細書においては、プロバイオティクス微生物(以下「プロバイオティクス」)は、食品用微生物(半生存可能若しくは脆弱を含む生菌、及び/又は非複製菌)、代謝物質、微生物細胞調製物、又は、十分な量において投与された場合に宿主に対して健康上の利益をもたらし得る、より具体的には、腸の微生物バランスを向上させることにより宿主に有益に影響して、宿主の健康又は健全さに対して効果をもたらす、微生物細胞の構成要素である。Salminen S、Ouwehand A、Benno Y等、「Probiotics:how should they be defined?」Trends Food Sci. Technol. 1999: 10、107〜110頁を参照されたい。一般的には、これらの微生物は、腸管内において、病原性細菌の成長及び/又は代謝を阻止するか或いはそれらに影響を及ぼすと考えられている。また、これらのプロバイオティクスは、宿主の免疫機能を活性化させ得る。こうした理由で、食品中にプロバイオティクスを組み込むための多数の様々なアプローチが存在する。プロバイオティクスの非限定的な例には、エロコッカス属(Aerococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バチルス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カンジダ属(Candida)、クロストリジウム属(Clostridium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストク属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ケカビ属(Mucor)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、アオカビ属(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、ピキア属(Pichia)、プロピオン酸菌属(Propionibacterium)、シュードカテヌラータム(Pseudocatenulatum)、リゾープス属(Rhizopus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、トルロプシス属(Torulopsis)、ワイセラ属(Weissella)、又はそれらの組合せが含まれる。
【0061】
[0063]本明細書においては、「治療」、「治療する」、及び「緩和する」という用語は、予防治療(対象となる病理学的状態又は病理学的障害の発現を防止する及び/又は遅滞化する)と、診断された病理学的状態又は病理学的障害を治癒する、遅滞化する、それらの症状を弱める、及び/又はそれらの進行を止める治療手段を含む、治癒的処置、治療的処置、又は疾患修飾性処置と、疾患に罹患するリスクのある若しくは疾患に罹患していると疑われる患者、並びに病気であるか又は疾患若しくは病状を患っていると診断された患者の治療との全てを含む。この用語は、対象者が完全に回復されるまで治療されることを必ずしも示唆しない。また、「治療」及び「治療する」という用語は、疾患に罹患していないが、窒素失調若しくは筋力低下などの不健康状態の発現がしやすい可能性のある個人の健康の維持及び/又は促進も指す。また、「治療」、「治療する」、及び「緩和する」という用語は、1つ又は複数の一次予防措置若しくは一時治療措置の効果助長又は他の方法による強化を含むようにも意図される。さらに、「治療」、「治療する」、及び「緩和する」という用語は、疾患若しくは状態の食事管理、或いは疾患若しくは状態を予防又は防止するための食事管理を含むようにさらに意図される。
【0062】
[0064]
嚥下障害及び誤嚥
[0065]嚥下障害は、嚥下困難の症状に対する医学用語であり、例えば嚥下の口腔期、咽頭期、及び食道期における異常などを含み得るあらゆる飲み込み(嚥下)障害を指す。嚥下障害は、脳性麻痺、脳血管発作、パーキンソン病、脳損傷、脳卒中、及び多発性硬化症により神経障害を有する個人において一般的なものである。また、嚥下障害は、喉頭がん、舌がん及び/又は口腔がん、或いは治療のために口腔手術を必要とする他の状態などの、既往症のための外科的治療を受けている個人においても一般的である。
【0063】
[0066]食道嚥下障害は、あらゆる年齢の多数の個人に影響を及ぼすが、薬剤での治療が一般的に可能であり、嚥下障害としては比較的重症ではない形態と見なされる。食道嚥下障害は、しばしば粘膜疾患、縦隔疾患、又は神経筋疾患の結果である。
【0064】
[0067]他方において、口咽頭嚥下障害は、非常に重症な状態であり、薬剤による治療は一般的には不可能である。また、口咽頭嚥下障害は、やはりあらゆる年齢の個人に影響を及ぼすが、より高齢の個人においてはより一般的なものとなる。しばしば、口咽頭嚥下障害は、例えば脳卒中、脳損傷、又は口腔がん手術若しくは喉頭がん手術などの急性事象の結果である。さらに、放射線療法及び化学療法は、筋肉を弱め、生理作用に関連する神経及び嚥下反射の神経支配を悪化させる場合がある。また、パーキンソン病などの進行性神経筋疾患を有する個人は、嚥下開始の困難の増大を一般的に被る。
【0065】
[0068]口咽頭嚥下障害が治療されないか又は管理が不十分であることにより、その結果は、脱水症、栄養失調症による機能障害性免疫反応、機能性の低下、及び固形食物による気道閉塞(窒息)を含め、深刻なものとなる恐れがある。重度の口咽頭嚥下障害は、経管栄養法による栄養の供給が必要となる場合がある。嚥下障害は、しばしば誤嚥を引き起こし得るため、危険となり得る。
【0066】
[0069]誤嚥は、吸気中に気道内に異物が進入することを指し、様々な様式で兆候が現れ得る。例えば、個人が、発汗し始める場合があり、顔が、紅潮状態になる場合がある。或いは、個人が、嚥下後に咳こむ場合がある。「無症候性」誤嚥においては、食塊吸入の明らかに臨床的な又は容易に認識可能な徴候は、全く存在しない。誤嚥により、慢性肺疾患、誤嚥性肺炎、脱水症、及び栄養失調症を含む、深刻な健康上の懸念が引き起こされる恐れがある。そのため、嚥下障害及び誤嚥は、あらゆる年齢の人々の、医学的健全さのみならず社会的、感情的、及び物理的な健全さを含むクオリティオブライフを低下させ得る。
【0067】
[0070]
嚥下障害に関連する解剖学的構造
[0071]嚥下安全性の低下に最も関連しやすく、患者の誤嚥リスクを示すものとなる、いくつかの解剖学的構造がある。これらの解剖学的構造のいくつかには、例えば、呼吸、顎、口唇、軟口蓋、舌、舌骨、喉頭蓋、喉頭、咽頭、及び上部食道括約筋(「UES(upper esophageal sphincter)」)が含まれる。嚥下パラメータの充足性を判定するために、口唇の閉鎖、顎の閉鎖、舌の固定、舌の引き上げ、舌の制御、舌のスウィーピング、舌の封止、軟口蓋の封止、口呼吸、鼻呼吸、舌の推進力、舌の圧力、喉頭の上昇、舌骨の運動、舌骨喉頭の偏倚運動、上部食道括約筋の開き、喉頭蓋の運動、喉頭の開き、声帯襞の閉鎖、喉頭の知覚、咽頭の収縮、咽頭の疲労、喉頭内転筋の反射、喉頭の疲労、呼吸の停止、呼吸の再開、及び咽頭の知覚を含む、複数のパラメータを調査することが可能である。安全且つ効率的な嚥下系は、気道を迂回しつつ、口腔及び咽頭を通過して食道内に食塊を迅速且つ効率的に通過させることを必要とする。
【0068】
[0072]
呼吸
[0073]呼吸器系は、厳密には、嚥下系の一部ではない。しかし、呼吸器系と嚥下系との間の相関関係は、個人の誤嚥リスクを判定するためには非常に重要である。嚥下の前後の両方において、呼吸の呼気期と嚥下との間には優先的な結びつきが存在する。舌骨及び舌骨に、ひいては喉頭に、顎及び舌根を連結する舌骨下筋の生体力学作用により、これらの筋肉は、身体が呼気期にある場合に、嚥下中に効率的に作動するように最善の配置をされる。また、舌骨下筋にもたらされる生体力学的「支援」に加えて、嚥下後呼気により、咽頭のいかなる可能性のある残留物も、口腔及び咽頭の方に上方へと、並びに気道から離れる方向へとスウィーピングすることが可能となる。呼吸速度、又は迅速な高速度パターン若しくは無秩序パターンなどの、安静時呼吸の任意の異常により、誤嚥の可能性が増大する。
【0069】
[0074]嚥下後の吸気は、大量(例えば100ml)の嚥下を伴う状況を除いては、健康な個人においてはめったに見られない。しかし、吸気は、嚥下障害を有する個人においては見受けられる。呼気によりいずれの側においても範囲画定されない嚥下は、一般的には異常を示す可能性がより高い。また、同一個人における嚥下間の嚥下−呼吸パターンの非一貫性は、異常と見なされる。
【0070】
[0075]肺気量は、嚥下効率において、わずかにしか知られていないが重要な役割を果たす。これに関連して、咽頭通過時間は、肺気量が低い場合には悪化する。肺気量は、嚥下が行われる呼吸期(吸気期又は呼気期)により影響を受ける。
【0071】
[0076]呼吸は、食塊が咽頭を通過する嚥下動作の最中には停止する(「無呼吸」)。無呼吸期間は、年齢の上昇と共に増大するものであり、高齢者の間では一般的な状態であり、声帯襞の閉鎖の結果ではない。喉頭を除去され、咽頭から気道が切り離され、誤嚥が不可能となった個人は、嚥下中に無呼吸を示し続ける。無呼吸は、声帯襞の閉鎖前に生じ、声帯襞の閉鎖又は喉頭蓋の偏倚とは全く無関係である。殆どの個人は、1つの動作で20mlの液塊を飲み込むことが可能であり、その嚥下中の全体にわたって無呼吸を維持する。20mlの食塊が複数の嚥下に分割されることは、機能異常を示す場合がある。
【0072】
[0077]この領域から誤嚥を最も良く予測するものは、肺機能、肺気量、嚥下呼吸期の結びつきの異常、嚥下プロセス中の任意の時点にて食塊が咽頭に留まる期間、及び無呼吸期間の変動性の組合せである。
【0073】
[0078]呼吸機能の計測は、以下の2つのカテゴリ、すなわち、(a)胸壁機能の計測(胸郭及び腹部の周囲の歪み計)及び(b)鼻気流計測に分類される。胸壁計測は、非常に具合が悪い人々、又は立位になるのを妨げる筋力低下を伴う(脳卒中後など)人々には困難な場合がある。2つの異なるタイプの鼻カニューレが、報告されている。一方の例は、気流方向の変化を計測するための微圧計を使用し、他方の例(サーミスタ)は、吸気及び呼気の際の温度変化を検出する。呼気は、吸気よりも温かい。サーミスタは、2つのデバイスから構成されることでより良いものとなる。習慣的に口呼吸を行っている患者、又は鼻に欠陥を有する患者は、異常なデータを示す。また、鼻カニューレを介した酸素供給が必要な患者は、このタイプの技術の使用が困難となる。ある調査者達は、鼻気流の計測及び呼吸労力(胸壁)の計測の同時利用を推奨している。また、呼吸音及び嚥下音の音響分析も報告されている。2つのタイプの信号を差別化し得る信号処理の利用は、呼吸期(例えば呼気終末、吸気/呼気、吸気終末等々)を決定するためのスクリーニング方法としては有益なものとなる場合がある。
【0074】
[0079]
口唇及び顎
[0080]顎(又は下顎骨)は、咀嚼及び嚥下の際に歯同士及び口唇同士の接近を促進させる。口唇は、器から食物を取り去り、口腔内に液体を運ぶ役割を果たす。口唇は、嚥下中には能動的に関与し、口腔への格納及び推進の際には受動的に閉じられる。口唇の運動振幅及び運動期間は、個人間で大きく異なる。口唇が開かれた状態に留まる状態(例えば脳性麻痺で見られる顎の筋力低下)は、高口蓋、舌突出、及び口呼吸の発生の高まりと同時に生ずる。
【0075】
[0081]口唇が、開いたままに留まる場合に、顎の筋肉は、評価されなければならない。なぜならば、顎の閉鎖により、口唇の閉鎖が促進されるからである。また、口蓋を人工的に下げ、舌−口蓋間の接触を改善する補綴具は、口唇の閉鎖、並びに嚥下の効率及び安全性を向上させることが判明している。義歯の存在及び「適合」は、口唇及び下顔の筋肉が、義歯を安定化させるために用いられることにより、口腔通過時間を増大させ得る。これらの筋肉が、安定化活動に関与するため、これらの筋肉の食物プロセシング及び食物嚥下における役割は、より複雑化し、したがって口腔期が、遅滞化する。口腔通過時間の増加は、義歯を着用している高齢者、及び特に義歯が不適合な高齢者の場合に予期されるべきものである。
【0076】
[0082]顎の閉鎖により、舌は、口蓋の身体的近位内に、すなわち嚥下に必要な生物学的位置に置かれる。顎は、舌が独立して移動し得るための土台のような役割を果たす。嚥下中に、顎の運動は、最小限に留まり、舌を安定化させる役割を果たす。顎の安定性が低い場合には、舌の効率及び正確さに影響が及ぶ。咀嚼及び液体嚥下の際には、舌及び顎の運動は、連動されるが、厳密な同期状態には必ずしもない。
【0077】
[0083]咀嚼中に、歯の存在により、顎の生体力学的安定性が得られる。歯及び歯周受容器からの知覚情報は、咀嚼を促進又は阻止する。固体の咀嚼については、咀嚼反応を決定するのは、粒子サイズではなく粒子体積のようである。
【0078】
[0084]顎は、嚥下メカニズムの残りの部分に対して複雑な関係を有する。開口位(例えば5〜6mm)は、呼吸速度を上昇させる。舌骨の上下の(舌骨上及び舌骨下)舌骨下筋は、顎の運動により影響を受ける。
【0079】
[0085]口唇筋は、正中線からの位置離間度を計測するために、表面筋電図検査法又は水準器と同種のデバイスを利用して調査されてきた。顎の機能は、顎を動かすために使用される筋肉の筋電図検査法、顎マーカの複数のカメラ画像、及びビデオ蛍光透視法により評価されてきた。当然ながら、開口位及び筋力低下を示唆する軟質顔特徴の単純な観察は、無視されるべきではない。
【0080】
[0086]
軟口蓋
[0087]軟口蓋は、嚥下において、以下の3部からなる役割を有する。(a)軟口蓋は、鼻腔と口腔との間に物理的障壁をもたらす。(b)軟口蓋は、舌による食塊の推進の際に下方向圧力勾配を促進する加圧シールを形成する。(c)軟口蓋は、咀嚼中の、及び嚥下中の口唇及び顎の閉鎖の際の、気道の鼻経路を形成する。鼻呼吸よりも口呼吸を患者が優先する場合には、これは、鼻通路にかかわる何らかのレベルの呼吸障害を示唆する場合がある。また、これは、「呼吸仕事量」を低下させる生理学的必要性を示唆する場合がある。開口位は、呼吸仕事量を低下させるのを助ける。例えば、ランニング時に健康な人々に生ずる心臓負荷の上昇に関しては、口を閉じた状態での鼻呼吸よりも、口、若干離間された口唇を通して呼吸する方が容易である。同様に、心臓病の場合には、患者は、呼吸仕事量を低下させるために口呼吸に戻る。
【0081】
[0088]軟口蓋は、速筋線維及び遅筋線維の両方を収容する。嚥下により、速筋性の速疲労性の線維が優先的に活性化され、発語により、遅筋性の耐疲労性の線維が優先的に活性化される。発語のための軟口蓋機能を評価する方法は、嚥下の際の軟口蓋機能を予測するためには不適切である。
【0082】
[0089]口蓋舌筋は、効果的な吸引に必要な閉鎖圧力システムの形成には非常に重要である。口蓋舌筋は、軟口蓋の下面にその起始部を、及び舌の側部にその着点を有する。口蓋舌筋は、軟口蓋と舌の基部(口峡又は舌口蓋の交点)との間の通路の狭窄に関与する。軟口蓋と舌との間における筋肉の連結により、嚥下の安全性及び効率のために最も重要な舌の機能が確保される。嚥下における軟口蓋の主な役割は、鼻経路を閉鎖し、そうする際に、咽頭方向へと下方に食塊を優先的に送る加圧領域の形成を支援することである。軟口蓋の上昇及び閉鎖が不能になることにより、鼻への逆流が可能となり、嚥下効率が低下する。食塊を推進するためには、舌に対してより大きな要求がなされ、残留物を残さずに尾部をきれいにするためには、咽頭収縮筋に対してより大きな要求がなされる。
【0083】
[0090]軟口蓋機能は、例えばビデオ蛍光透視法などを利用して見ることが可能であり、鉤状ワイヤ電極を使用してより侵襲的に調査がなされてきた。「アー」音を生成する際などの発語中の機能は、嚥下用の速筋性の速疲労性(スプリント)線維及び発語用の遅筋性の遅疲労性(ロングディスタンス)線維の作動の違いにより、嚥下中の機能の有効な示度とはならない。
【0084】
[0091]
舌
[0092]舌は、嚥下の口腔期及び咽頭期の両方において非常に重要な役割を果たす。液体については、口腔期の際に、舌尖(又は舌葉)は、「ディッパー」位置において下顎歯の背後に位置するか、又はより通常的にはいわゆる「ティッパー」位置において上顎歯の背後に位置して歯槽隆線に接触するものと説明できる。これらの両位置は、健康な個人において実現されるものだが、近年では、「嚥下命令」を使用することにより、ティッパー位置が誘発される可能性がより高いと認識されている。また、舌の裏は、口蓋の方向に引き上げられて、括約筋状の高圧区域を形成する。ポケット状室が、舌の溝に沿って正中線上に形成されて、液塊を収容する。咽頭の方向へと後方に液塊を移動させるためには、舌体と舌背(舌の裏)が、口蓋に沿って前方に移動して、舌葉の方向に丸くなる。この動作は、コンベヤベルトのように機能して、舌の背面と口蓋との間において後方に液塊を狭窄する。
【0085】
[0093]舌は、臼歯の咬合面上に食塊を位置決めし、プロセシングされた食物の粒子を収集し、それらを正中線へと戻すのを補助する。咀嚼中には、舌及び顎は、逆位相関係において循環し、これにより、舌に対する外傷が回避される。顎の開閉間において循環パターンで突出及び後退するこのピストン状構造(舌)の力学的動作は、上咽頭内に咀嚼された粒子を「引き戻す」役割を果たし、上咽頭において、これらの粒子は、窩空間内に収集される。また、液体は、咀嚼されると、舌により後方に狭窄されるよりも、むしろ窩空間内に収集されるようであり、さらに、一連の嚥下における及びストロー飲みの際の初期嚥下後の各嚥下について、乳児の授乳又は哺乳瓶による授乳の際には、及び成人の順次の連続的な嚥下の際には、咽頭内に収集されるようである。
【0086】
[0094]喉頭の上昇は、連続的な一連の嚥下においてはその全体にわたって維持されるため、誤嚥のリスクは、低く、したがって咽頭内への液体収集を回避するために生物学的作用が不要となるという主張がある。同様に、ストロー飲みにおいては、複数の嚥下全体にわたり無呼吸が維持されるため、液塊が咽頭内に収集される場合に、誤嚥のリスクはより低くなり得る。単一の嚥下又は連続的な嚥下のいずれが調査されるかを示すことは、それぞれの生理学的作用が若干異なるため、重要となる。連続食塊から分離した食塊が区別されない場合には、正常な事象が病理学的な何かとして分類されてしまう場合がある。
【0087】
[0095]液体刺激及び固体刺激の両方により、嚥下の咽頭期は、舌の後下方向へのスウィーピングを伴う。液体の場合には、圧縮された口舌が、その全長まで再び延伸する。舌体及び舌背は、後方に移動し、後方口蓋に対して、次いで食塊の尾部の後に収縮した咽頭壁に対して、空洞収縮を実現する。咽頭内腔との咬合は、状況によっては、上唇及び下唇の可変的寄与を伴う口唇の閉鎖に類似した、舌根及び咽頭筋組織の可変的な及び差異のある寄与を伴い得る現象であるといういくつかの証拠が存在する。特に、舌の表が歯の間の前方位置に固定される場合には、これにより、舌根によって実現され得る後方運動の度合いが限定され、その結果、後方咽頭筋組織による補強によって舌−咽頭壁間収縮が実現されることが、判明している。
【0088】
[0096]侵入−誤嚥リスクに関して、舌機能の2つの主な側面を考慮する必要がある。第1は、口内に液塊を収容し、この液塊が制御されずに咽頭内に漏れるのを防止する舌の能力である。第2は、舌−口蓋及び舌−咽頭壁の接触並びに圧力生成により発生する食塊駆動力が、嚥下後に残留物を残すことなく咽頭を通して全ての食塊を推進させるのに十分なものとなる度合いである。これらの理由から、舌−口蓋圧力発生能力の計測に対する特定の関心が、文字通り生じた。
【0089】
[0097]舌機能の計測は、何らかの侵襲的手段を利用して行うことが可能である。変換器をアクリル製口蓋中に組み込み、舌がこの変換器に沿ってスウィーピングする際に計測を行ってもよく、又は、生体医用接着剤を使用してペレットを舌に接着し、X線マイクロビーム又は電磁的方法を利用してこのペレットを追跡する。
【0090】
[0098]
舌骨
[0099]舌骨は、上方位置においては口底及び舌に対して連結されることにより保持され、下方位置においては喉頭及び首の主要舌骨下筋により保持され、後方位置においては中間咽頭収縮筋により保持される固定点である。舌骨は、嚥下中には、上方に(上に)、次いで前方に(前に)移動する。前方移動は、特に非常に重要である。この前方移動は、後方舌−口蓋圧力、オトガイ舌骨筋収縮、喉頭蓋偏倚、UESの開き、及び嚥下安全性に繋がりがある。顎、舌、及び舌骨の間の関連性は、舌の「運動部位」が舌の役割を果たし得るように顎及び舌骨の「土台」を持ち上げ安定化させるために、この一式の同期運動を必要とする。舌骨から喉頭までの滑車状連結は、UESの開きを促進するように続く。舌骨喉頭の偏倚運動がない場合には、UESの開きは最小限となり、残留物が梨状洞内にしばしば見られる。前方舌骨運動が著しく低下すると、侵入−嚥下のリスクが増大する。
【0091】
[00100]表面筋電図検査法(「sEMG」)は、嚥下における舌骨運動と関連した筋肉活動を計測する非侵襲的な方法である。この信号は、時間的に正確な筋肉活動の合成写真を生成する。これらの信号からの振幅計測値の有意な抽出は不可能である。
【0092】
[00101]二軸嚥下加速度測定法は、時間領域及び規模領域の両方における舌骨運動の正確な計測を獲得するための非侵襲的な技術として期待できるものである。しかし、これらの計測は、運動アーチファクトを除去するための適切なフィルタリング後になされなければならない。信号処理分類器は、二軸加速度測定法を利用して誤嚥を識別するために期待できるものである。
【0093】
[00102]
喉頭蓋
[00103]喉頭蓋は、喉頭前庭から舌根を分離する葉状軟骨質構造である。嚥下の際には、喉頭蓋は、直立位置から水平位置をとり、喉頭蓋葉の先端部は、気道への入口に折り重なる。しかし、それにより、気密シールは形成されない。喉頭蓋は、流れの中の岩のような役割を果たし、その周囲において流れを方向付けるような構造となっている。液塊流は、圧力下におけるその推進力により乱流となる傾向が強い。咽頭においては、喉頭蓋の偏倚により、この液塊は、喉頭の周囲を流れて梨状洞内に送られる。次いで、喉頭を通過すると、この液塊は、UESを通過し続ける。これらの喉頭蓋運動は、殆どにおいて嚥下における他の構造運動の受動的結果であり、中でも特に、舌根、舌骨、及び喉頭の運動の受動的結果である。嚥下中の喉頭蓋運動を計測するための非侵襲的な方法は、存在しない。
【0094】
[00104]
喉頭
[00105]喉頭は、咽頭へと上方に開く。喉頭は、気管を経由して肺に接続する。喉頭内に収容された声帯襞は、物質が気道に進入すること(誤嚥)を防止するための、嚥下中の弁状障壁と考えられてきた。しかし、声帯襞は、それらの長さに沿って完全なシールを常に形成するわけではない。実際に、舌骨喉頭偏倚運動は、嚥下の安全性にとって、声帯襞の閉鎖よりも重要である。この点で、前方舌骨喉頭偏倚運動に問題がある場合には、侵入/誤嚥及び咽頭残留物がもたらされる傾向が強い。
【0095】
[00106]おそらく、ビデオ蛍光透視法などの嚥下を評価するために一般的に利用される技術により、評価は、主に運動に焦点が置かれる。喉頭に関して、知覚は、同等に重要である。喉頭知覚と咽頭収縮の両方の低下は、液体及びピューレの両方について誤嚥及び侵入のリスクを著しく増大させる。喉頭知覚が維持され、咽頭収縮に問題がある場合には、侵入及び誤嚥の両方の発症率はより低くなる。したがって、喉頭知覚は、侵入/誤嚥リスクにとって非常に重要な要因のようである。
【0096】
[00107]侵入は、健康な個人においても珍しいものではなく、50歳を超える個人、特に高齢者において見られる傾向が強い。健康な個人においては、侵入した食塊は、しばしば自発的に排出される。侵入の頻度及び深さ(声帯襞への近さ)は、食事中には重要なものとなり、ここでは、疲労が一要因となる。単一の嚥下における誤嚥は、誤嚥頻度を予測するものとはならない。一部の個人からは、一連の6つの嚥下中に1つの誤嚥のみが認められた。
【0097】
[00108]誤嚥の喉頭リスク要因の階層には、(a)咽頭収縮及び喉頭知覚の低下、(b)喉頭知覚の低下(喉頭内転筋反射の不在又は低下)、(c)偽声帯の閉鎖の低下、(d)真声帯の閉鎖の低下、及び(e)年齢(例えば50歳超)が含まれる。
【0098】
[00109]評価に関して、ビデオ蛍光透視法は、侵入、誤嚥、及び喉頭運動を記録するための最も良く知られた方法であるが、喉頭領域の知覚検査が、文献に基づき1つの必要な共同評価として浮上している。上記のように、喉頭知覚の低下は、喉頭誤嚥の主要なリスク要因である。現行では、知覚検査を用いた嚥下のファイバ内視鏡検査評価(「FEESST(fiberoptic endoscopic evaluation of swallowing with sensory testing)」が、これを目的として利用される。しかし、この処置を実施しても、中程度の評定者間信頼性が得られるに過ぎず、結果の解釈には注意が必要となる。
【0099】
[00110]
咽頭及び上部食道括約筋
[00111]咽頭は、漏斗形状の管状空洞であり、前方においては舌根、喉頭蓋、及び喉頭/気管の後方(披裂)表面により境界画定される。咽頭の後壁及び側壁は、斜子織りタイプの構成の、垂直方向、水平方向、及び斜め方向に配向された筋肉から構成される。咽頭収縮筋(上方、中間、下方)は、咽頭の円形内腔の周囲に水平方向に巻きつく。
【0100】
[00112]解剖学的には、咽頭が食塊残留物を収集し得るポケットを有することを指摘しておくことが大事である。窩空間は、舌根と喉頭蓋との間の咽頭の前壁に沿ったポケットである。梨状洞は、UESの上方の咽頭の底部のポケットであり、両側に位置する。UES(又は咽頭食道セグメント)自体は、筋肉のリングであり、休止時には典型的には収縮され閉じられる輪状咽頭筋を含む。健康な嚥下においては、EMG検査は、UESが開く直前には輪状咽頭筋の活動が阻止されるのを示す。これは、括約筋の前壁に対する舌骨上筋及び舌骨下筋の収縮の生体力学的効果に主に起因する。UESが開くことにより、負圧区域が形成され、これは、食道内への食塊の移動を助長する吸引のような効果を生み出し得るが、下咽頭吸引吸上げが存在するか否かに関する問題に関しては、見識がある程度分かれるところである。
【0101】
[00113]咽頭を通る食塊の搬送は、主に舌の推進力(駆動力)及び咽頭の短縮化の結果として行われる。この咽頭の短縮化は、舌骨上筋、舌骨下筋、及び垂直方向に配向された咽頭筋の収縮により生じる。咽頭収縮筋の収縮により、咽頭を通り下方へと食塊の尾部を追う内腔閉鎖の蠕動状の波が生ずる。これらの2つの作用(短縮化及び狭窄)のうち、短縮化は、効率的な食塊搬送及び嚥下の安全性にとってより重要である。
【0102】
[00114]現行では、咽頭における食塊の搬送及び除去の有効且つ確実な非侵襲的計測は、存在しないようである。舌骨及び喉頭の運動を計測することにより、咽頭の短縮化に関する合理的な代替情報が得られ、後方舌圧の計測により、咽頭における食塊除去の主要要素であるらしい食塊駆動力に関する合理的な情報を得ることができる。
【0103】
[00115]
嚥下障害の検出
[00116]嚥下障害患者の約80%が未診断のままであると推定される。この多数の診断見落としの主要な理由は、一般開業医及び養護施設においてはこれらのタイプの状態を診断するための設備が比較的整っていないという点である。多くの場合、これらの場所で利用可能な検査は、高額であり、多大な時間を必要とし、侵襲性のものであり、専門医センターでしか利用可能でなく、及び/又は、電離放射線に患者を被曝させるものである。例えば、嚥下障害及び誤嚥についての現行の代表的な診断は、ビデオ蛍光透視法である。この場合には、患者は、バリウムコーティングされた材料を摂取し、X線を利用して放射線画像の動画像シーケンスが取得される。この検査は、侵襲性であり且つ時間及び労力の点で高コストであるばかりでなく、有害な可能性のある電離放射線に患者を被曝させる。
【0104】
[00117]ファイバ内視鏡検査、パルスオキシメトリ、頸部聴診、及び嚥下加速度測定法は、嚥下障害/誤嚥を検出するために利用される追加的な検査のごく数例である。ファイバ内視鏡検査は、もう1つの侵襲的な技術であり、可撓性の内視鏡が、下咽頭内に経鼻的に挿入される。このファイバ内視鏡検査は、誤嚥識別の感度及び特定性の点で、変性バリウム嚥下と一般的に共通する。パルスオキシメトリは、誤嚥の臨床評価にとって非侵襲的な診断補助となるものであり、頸部聴診は、首上に配置された喉頭マイク、聴診器、又は加速度計を介して喉頭付近の呼吸音を聴診することを伴う。頸部聴診は、一般的には、長期治療における誤嚥検出及び嚥下障害評価にとって有限ではあるが有用なツールとして認識されている。
【0105】
[00118]嚥下加速度測定法は、頸部聴診に類似するが、訓練された臨床医ではなく、デジタル信号処理及び判別ツールとしての人工知能を必要とする。加速度測定法は、誤嚥リスクの特定においてビデオ蛍光透視法とある程度一致するものであることが実証されているが、信号規模は、喉頭の上昇度に関連があった。しかし、先行技術の嚥下加速度測定法は、「嚥下障害のある」嚥下と正常な嚥下との区別において、限定的な情報を提供するに過ぎず、患者の臨床状態に関するより広範な情報は提供しない。
【0106】
[00119]舌、及び特に呼吸機能を標的とする技術は、嚥下障害及び/又はそれに関連する誤嚥の検出に必要となる。肺機能は、診療所において見受けられる既にその有効性が認められた技術(例えば肺活量計)を使用して、ルーチンである医師との面会の一部として評価が行われ得る。総肺気量及び最大吸気量に関して肺活量計で異常が見られる個人は、食物、液体、及び薬剤の嚥下能力に関して疑うべきである(例えばEAT−10を利用して)。安静時呼吸速度の計測は、観察により1分間の呼吸数を計数することによって行うことが可能である。これは、標準的な医学的観察であるが、以前は、医者は、これを嚥下−人工呼吸器間の調整と結びつけることはなかった。
【0107】
[00120]二軸加速度測定法は、異常な嚥下から正常な嚥下を判断するためにさらに展開するためのスクリーニングツールとして認識されている。この技術は、小児の、若年層の、中年層の、及び健康な個人の評価のために使用されている。健康な個人及び嚥下障害を有する個人の両方の評価が行われてきた。この技術は、ビデオ蛍光透視法及び内視鏡検査に対して有効性を有するものであった。この技術は、嚥下における舌骨喉頭運動の定量化、及び信号処理分類器の使用による誤嚥検出の両方にとって有効なようである。
【0108】
[00121]また、舌の機能に関する情報を提供する技術が必要となる。舌は、嚥下効率にとって非常に重要な要素として認識されている。アクリル製口蓋(マウスガードなど)内に歪み計を配置することを可能にするデバイスにより、舌−口蓋間接触及び口蓋に対する加圧タイミングに関する有効な情報が得られる。しかし、このタイプのデバイスは、口蓋の形状の個人差、並びにアクリル製口蓋の作製及び滅菌化要件に伴う時間及びコストの理由により、医師の外科手術においては有用ではない。空気充填された圧力バルブは、1つの代替となるものであり、舌−口蓋間の完全な接触がない場合でも、食塊が被る圧力と同様の口腔内圧力の振幅及びタイミングの記録が得られる。しかし、食塊サイズの空気充填されたバルブシステムを圧力計測のために使用するのは、唾液嚥下の文脈におそらく限定されるべきである。なぜならば、バルブ及び食塊の組合せは、嚥下障害を患う患者において安全性リスクを悪化させ得るからである。
【0109】
[00122]オトガイの下方及び首に沿った筋肉の表面筋電図検査法(「sEMG」)は、筋肉収縮タイミングに関する、及び代替として構造運動に関する情報を提供し得る。しかし、この技術は、誤嚥のキーとなるリスク要因として認識されている前方舌骨喉頭運動に関与する特定の筋肉の収縮に関する情報を提供するだけの十分な感度を有さない。さらに、sEMG振幅は、個人間で多様な信号配置要素及び信号減衰要素が存在するため、容易に解釈することができない。電極の適用並びにこの技術を利用及び解釈するための訓練に伴う時間は、一般診療又は高齢者病専門の殆どの医師にとって大きな障壁となる傾向がある。喉頭知覚の低下は、誤嚥のリスク要因として認められているが、これを非侵襲的に計測することは、現行では不可能である。
【0110】
[00123]嚥下障害を診断するための先行技術のデバイスのこれらの欠点を鑑みると、可撓性であり、軽量であり、非侵襲性であり、費用対効果が高く、電子技術と協働し得る、嚥下障害を診断及び検出する改良された方法を開発することが、有利となる。
【0111】
[00124]
改良された嚥下障害診断法
[00125]出願人は、嚥下機能障害に関連するパラメータを検出し嚥下障害及び/又は誤嚥を診断するための、新規の装置及び方法を開発した。一般的な一実施形態においては、本開示は、嚥下機能障害を診断するために協働するセンサ及びデータベースを規定する。データベースは、多数の健康な患者及び嚥下障害を患う患者の嚥下プロファイルから導出した統計的に有意なデータ量を含むデータベースであってもよい。センサは、ビデオ蛍光透視法(「VF」)、筋電図検査法(「EMG」)等々の公知の感知デバイスであってもよく、又は本明細書に開示される改良されたセンサであってもよい。
【0112】
[00126]一実施形態においては、及び
図1に図示するように、本開示は、マルチパラメータ嚥下障害分析のために使用し得るスマートセンサデバイス10を提供する。デバイス10は、例えば、様々な電子素子が追加される可撓性基板12を備える。これに関して、基板12は、通信能力を備えるマイクロコントローラ14と、アンテナ16と、プリンテッドセンサ18とを備えてもよい。デバイス10は、潜在的な嚥下障害の示度となり得る、患者の嚥下プロファイルに関連する非侵襲性パラメータ(例えば音響、運動、EMG等々)を感知するために、個人の皮膚に直接配置されてもよい。
【0113】
[00127]一実施形態においては、デバイス10は、個人が装着可能なものであり、首、喉部、又は周辺部位に直接配置されて、例えば嚥下中に発生する表皮振動、嚥下音、圧力変化等々を検出する。そのため、デバイス10は、患者にデバイス10を接着するために接着剤層(図示せず)を備えてもよい。この接着剤は、食品医薬品局(「FDA」)により認可されたものであるべきであり、診断検査中に定位置に留まるのに十分な接着性を有しながらも、皮膚から取外し可能なものであるべきである。また、デバイス10は、接着剤を使用して接着される必要はなく、代わりにゴムバンド、ストラップ等々の他の手段を使用して固定されてもよいことが、当業者には理解されよう。
【0114】
[00128]デバイス10は、複数の有利な物理的特性を有する。例えば、デバイス10は、患者の首、喉部、又は周辺部位に合った形状を取るように可撓性及び快適性を有するものであり、使用時の自由度のために薄く、平面状で、平坦なものである。また、デバイス10は、使用時の計測の妨害を回避するために、軽量であることが重要である。これらの有利な物理的特性により、低コストでありながら大量に生産されるデバイス10を製造することが可能となる。デバイス10は、
図3において概略的に示されるように、及び以下においてさらに論じるように、ロールツーロール製造プロセスを利用して製造することができる。
【0115】
[00129]本開示のデバイス10を製造するために使用される材料は、比較的低コストであってもよい。例えば、デバイス10は、ポリマー及びプリンテッドエレクトロニクスを使用して製造されてもよい。ポリマーは、典型的には、例えばポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、及び/又は同様のポリマーを含み、可撓性を有し製造コストの低いデバイス10を実現する。
【0116】
[00130]また、デバイス10は、プリンテッドエレクトロニクス技術を利用して製造されてもよい。上述のように、デバイス10の電子構成要素には、例えばマイクロコントローラ14、アンテナ16、及び少なくとも1つのプリンテッドセンサ18が含まれる。プリンテッドセンサ18は、患者の嚥下プロファイルに関連し、患者が潜在的な嚥下機能障害を有する可能性の示度となり得る、任意の個数の非侵襲性パラメータを感知することが可能である。例えば、プリンテッドセンサ18は、圧力、音波、加速度、速度、距離、電流又は電圧、電磁放射、温度等々を感知し得る。一実施形態においては、プリンテッドセンサ18は、加速度計である。別の実施形態においては、プリンテッドセンサ18は、マイクロフォンである。別の実施形態においては、プリンテッドセンサ18は、温度計である。本明細書においては、「音響」は、少なくとも振動、音、超音波、及び可聴下音響を含む。
【0117】
[00131]デバイス10は、再利用可能なものか又は使い捨て式のものであってもよい。デバイス10が再利用可能なものである一実施形態においては、デバイス10は、デバイス10が異なる患者間における使用の間で洗浄及び滅菌される場合に、滅菌条件に耐え得るものでなければならない。デバイス10が使い捨て式のものである一実施形態においては、デバイス10のコストは、1回のみの使用後に、又は同一患者による限定回数の使用後に、デバイス10を処分するのが可能で経済的であるのに十分な低さであることが重要となる。一実施形態においては、デバイス10は、使い捨て式である。別の実施形態においては、デバイス10は、約50セント〜約2ドルの値段で販売され得る。一実施形態においては、デバイス10は、1ドルで販売され得る。
【0118】
[00132]デバイス10のアンテナ16は、電子信号を送受信するための送信機及び/又は受信機としての役割を果たしてもよい。例えば、一実施形態においては、アンテナ16は、送信機としての役割を果たす。かかる実施形態においては、デバイス10は、患者の首/喉部に配置され、患者の嚥下プロファイルに関連する少なくとも1つのパラメータを検出するために使用され得る。嚥下パラメータが計測されると、アンテナ16は、計測されたパラメータデータを無線により処理デバイス20に送信してデータを記録及び評価するための送信機としての役割を果たし得る。代替的には、アンテナ16は、送信機又は処理ユニット20から電子信号を受信するための受信機としての役割を果たし得る。
【0119】
[00133]しかし、デバイス10に送受信機能を備えることは、幾分か高コストとなり、デバイス10の使い捨て性の妨げとなり得ることが、当業者には理解されよう。したがって、デバイス10に関連するコストを削減するために、及び
図2に示すような別の実施形態においては、デバイス10は、処理デバイス20に電子信号を送信し得る第2のデバイス22に有線接続されてもよい。第2のデバイス22は、iPod(登録商標)、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ポケットベル、ショートメッセージサービス(「SMS」)システム、BlackBerry(登録商標)等々の(これらに限定されない)、電子情報の送信及び/又は受信が可能な任意の電子デバイスであってもよい。この実施形態においては、デバイス10は、計測されたパラメータを取得し、第2のデバイス22にこの計測されたパラメータを伝送し、第2のデバイス22は、処理ユニット20にこの計測されたパラメータを送信する。
【0120】
[00134]そのため、デバイス10は、有線接続又は無線接続によりデータを通信し得ることが、当業者には理解されよう。本明細書において開示される任意の無線通信は、例えば高周波、赤外光、レーザ光、可視光、音響エネルギー、電波等々を含む、任意の無線通信経路(例えばエネルギー形態)を含むことが理解されよう。一実施形態においては、無線通信は、Bluetooth(登録商標)技術である。別の実施形態においては、無線通信は、携帯電話網である。
【0121】
[00135]本開示の処理デバイス20は、本明細書において論じられるプロセスの多くを実行するように構成されたソフトウェアと協働するように構築及び構成されることが、当業者には理解されよう。例えば、ソフトウェアは、とりわけデータ取得及びデータ収集、データベース更新、データ点の評価及び比較、データ記憶、並びにデータの有線送信及び無線送信用に構成されてもよい。
【0122】
[00136]上記において簡単に述べたように、本開示のセンサは、デバイス10である必要はなく、当技術において公知であり、患者の嚥下プロファイルに関連するパラメータを感知するために有用な、任意の他のセンサであってもよい。公知のセンサデバイスが使用される場合には、嚥下信号(例えば嚥下音、圧力、速度等々)は、公知のセンサデバイスにより発生され、次いで上述の編集されたデータベースか、又はセンサ出力を評価し得る解釈アルゴリズムのいずれかに対して出力される。嚥下信号を計測するために使用し得る公知のデバイスには、ビデオ蛍光透視法、音響、加速度、速度、距離、筋電図検査法、機械的筋運動記録法、電気、サーモグラフィック/温度、又はそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。この実施形態においては、信号発生デバイス(EMG)は、その計測値を実際に受信して処理する。これは、本開示のデバイス10の使用とは区別し得る点であり、デバイス10は、信号を計測し、例えば遠隔サーバに存在するアルゴリズムなどの、デバイス10から遠い位置に位置し得る信号処理ユニットへと信号を送信する。さらに、本明細書において論じられる「センサ」は、別様に明言されない限りは、デバイス10のセンサ18か、又はEMGなどの公知のデバイス内に組み込まれたセンサであってもよい。
【0123】
[00137]使用時に、センサは、患者の皮膚に配置され、患者の嚥下プロファイルから嚥下データを取得するために使用される。このデータは、上述のように、患者の固有の嚥下力学作用の音響、速度、及び温度を含んでもよい。表皮振動、嚥下音、及び圧力変化は、センサにより検出される、患者の嚥下の音響プロファイルを構成するデータのごくわずかな例に過ぎない。センサは、患者の固有の嚥下特徴に関する計測値を取得するために、及び嚥下機能障害を特徴づけ予測するために、様々な様式で使用されてもよい。
【0124】
[00138]例えば、第1の実施形態においては、センサは、患者の嚥下プロファイルの特徴に対応する電子信号を既知の嚥下機能障害データとの比較のために既存データベースへと出力し、嚥下の低下の可能性を診断するためのデバイスと組み合わせて使用されてもよい。この点に関して、患者の嚥下プロファイルは、較正され、患者の嚥下における任意の機能障害の示度となり得る包括的データベースと比較されてもよい。したがって、センサ及びデータベースの組合せは、患者の嚥下困難の性質の正確な診断及び推奨される治療法を提示することが可能となる。その結果、センサ及びデータベースを含む完全システムを、バイオフィードバックとして嚥下リハビリテーションにおいて使用することが可能となる。
【0125】
[00139]別の実施形態においては、デバイスと組み合わされたセンサは、嚥下機能障害に関してデータを評価することが可能である解釈アルゴリズムに供給される、患者の嚥下プロファイルの少なくとも1つの嚥下パラメータに対応する信号を出力するために使用されてもよい。したがって、データベースが存在しない場合には、センサを使用して取得された計測値は、潜在的な嚥下機能障害及び嚥下障害のリスクの可能性をモデリングする解釈アルゴリズムを構築するために使用することが可能となる。
【0126】
[00140]データベース及びアルゴリズムは共に、多数の健康な患者及び多数の嚥下障害患者の嚥下プロファイルを記録及び評価するために使用される。健康な患者の嚥下プロファイルをモデリングすることにより、嚥下に関連する様々なパラメータについての「正常」範囲を決定することが可能となる。次いで、嚥下障害患者の嚥下プロファイルをモデリングすることにより、嚥下障害患者が正常範囲外でどの程度まで外れるか、及び代替的には、嚥下障害患者の嚥下プロファイルに関連する個々のパラメータについての「正常」範囲を構成するものが何であるかを判断することが可能となる。
【0127】
[00141]既存のデータベースは、任意の場所に位置してもよく、長年にわたり取得された、嚥下障害及び誤嚥に関する情報を含んでもよい。データベースは、任意のタイプのデータベースであってもよく、患者の近傍に又は遠隔位置に位置してもよい。例えば、データベースは、患者検査デバイスの中に又はその近くに位置するコンピュータ又は処理デバイスのデータベースであってもよい。同様に、データベースは、患者及び患者検査デバイスと同一の建物内に位置してもよい。代替的には、データベースは、患者検査デバイスから遠い位置に位置する中央データベースであってもよい。かかる中央データベースは、計測されたパラメータを有する遠隔ユーザサイトからのデータを、及び任意数の患者に固有のデータを収集することが可能である。処理デバイスのハードウェア及びソフトウェアと協働し得る任意のデータベースを使用し得ることが、当業者には理解されよう。患者検査が実施される場所に応じて、これらの隣接位置及び/又は遠隔位置は、例えば介護者のオフィス、内科診療室、診療所、病院、介護施設、専門診療所、又は長期療養施設などであってもよい。一実施形態においては、遠隔位置は、移動可能である。かかる移動可能な位置は、例えば在宅看護提供者、自動車移動診療所、飛行移動診療室等々を指す。そのような位置にかかわらず、データベースは、1つの患者検査場所により使用され得るか、又は2つ以上の検査場所により使用され得る。
【0128】
[00142]上述のように、データベースは、長年にわたって取得された、健康な患者と、嚥下障害及び誤嚥などの嚥下機能障害を有する患者との両方に関する情報を含んでもよい。データベースは、例えば複数年にわたって実施されたビデオ蛍光透視法(「VF」)検査などを用いてなされた計測から取得されたデータから構成されてもよく、複数の健康な患者及び嚥下障害患者からのデータを含んでもよい。
【0129】
[00143]一実施形態においては、データベースに含まれるデータは、少なくとも5年、又は少なくとも10年、又は少なくとも20年の期間にわたり累加されたものである。別の実施形態においては、データベース内に含まれるデータは、少なくとも500人の患者、又は少なくとも1000人の患者、又は少なくとも3000人の患者、又は少なくとも5000人の患者の患者母集団から取得したものである。実施される検査数又は検査される患者数にかかわらず、データベースは、十分なサイズであり、科学に基づき、差を有する/相対的な絶対計測値を含む、統計的に有意なデータセットを含むべきである。データベースが既に確立されており、デバイス10の製造が比較的安価となり得るため、かかるシステムは、診療室での使用向けに例えば一般開業医に対して比較的安価に提供される。
【0130】
[00144]上述のように、健康な患者の嚥下プロファイルは、潜在的な嚥下障害患者の嚥下プロファイルについてのベースライン比較としての役割を果たすべく、記録及び評価される。嚥下プロファイルに関漣する様々なパラメータがデータベース内に含まれ得る。各パラメータ(例えば飛行時間)について、例えば少なくとも5000件の計測値が存在してもよい。同一曲線上の各計測値をプロット化することにより、潜在的嚥下障害の少数のガウス分布が得られる。すなわち、25件の潜在的疾患に相当する5000件の嚥下障害患者の計測値が、3つ又は4つの離散ガウス曲線へと「翻訳」され得る。また、例えば、ベースライン健康データを記録する2つの方法、すなわちa)初期ビデオ蛍光透視鏡測定の際の真の健康と、b)例えば頭部がん/頸部がん患者について、首の機能不全が明白であり、例えば口唇の封止は正常な個人のように機能したままであると仮定されるような、「複合」健康とが存在してもよい。2部方法を利用することにより、データベース内に含まれる健康データのロバスト性が大幅に上昇し得る。
【0131】
[00145]さらに、データベースは、新規のデータ点(例えば嚥下プロファイル計測値)が収集後にデータベース中に入力される、継続的に変化するデータベースであってもよい。このようにすることで、データベースは、データ点の数及び多様性において成長し続けることとなり、その結果、嚥下機能障害の予測/診断精度が向上し続けることとなる。そのため、データベースの強化により、本開示の評価方法が継続的に向上し、データベースは、収集された情報を利用して、潜在的機能障害及び潜在的障害に関する「学習」をさらに行う。単に追加のデータ点を継続的に提供することにより、データベースは、嚥下機能障害及び嚥下障害の正常変例についてさらに「学習」することが可能となる。
【0132】
[00146]同様に、データベース内に含まれる情報がより多いほど、データベースは「より高性能な」ものとなる。この点に関して、データベースが、その患者の既往症に関連する情報を含む場合には、データベース及び/又はアルゴリズムは、患者の嚥下特徴が正常であるか否かをより良好に判定することが可能となり得る。例えば、患者が、患者の舌のがん部分を除去するために口腔手術を以前に受けている場合には、この患者は、舌の一部が除去されたことのない患者とは大幅に異なり得る「正常な」嚥下特徴を有することになる。センサ出力を評価し、このセンサ出力をデータと比較すると、この患者の嚥下特徴は、嚥下機能障害の示度となるものではあるが、かかる手術を受けた患者の場合には依然として「正常」であることが、この評価によって判明し得る。
【0133】
[00147]患者の嚥下プロファイルに関連するパラメータが計測されると、電子データが、有線接続又は無線接続を介して処理デバイスへと転送される。例えば、デバイス10が、第2のデバイス22から電子信号により処理デバイス20へと計測されたパラメータを送信してもよい。センサが、有線接続又は無線接続を介して、信号を処理し得るデバイス(例えばコンピュータ、任意の処理デバイス等々)へと信号を送信してもよい。次いで、信号処理ユニットは、データベース内の既存のデータとこの計測値を比較するか、又は解釈アルゴリズムを使用してデータを評価することが可能となる。解釈アルゴリズムを備える実施形態は、90°での二重加速度計測値に基づいてもよい。
【0134】
[00148]処理ユニットは、処理ユニットのソフトウェアの能力及び構成に基づき、複数の様式でセンサ出力を評価することが可能である。例えば、この評価は、信号出力を有意な値又はデータ形式へと変換するか、又は嚥下障害が存在するか否かを判定するか、又は所定の嚥下機能障害に関連する数値に信号出力を関連付けることができる。一実施形態においては、この評価により、データベース内に既に存在する既知の障害データ及び機能障害データに対してセンサ出力(例えば計測されたパラメータ)が比較される。データベースと関連付けられたソフトウェアは、既知の機能障害及び障害に関するデータベースにおいて既に確立された任意数のカテゴリへとセンサ出力を分類してもよい。また、データベースと関連付けられたソフトウェアは、解釈アルゴリズムにセンサ出力を解釈させ、患者の任意の潜在的機能障害及び潜在的障害の特徴付けを行わせてもよい。処理デバイスによる評価は、最長で10分を要し得るか、又は実質的に即時的なものであり得る。
【0135】
[00149]データベースは、大量の統計的に有意な情報を含むため、機能障害及び障害の示度となる既知のデータと計測されたデータとの比較は、費用対効果が高く、時間効率のよいプロセスとなる。評価は、有効で、高感度で、特定的で、且つ確実な様式で行われる。評価は、臨床医ごとのばらつきを伴うことなく又は伴って行われ得るものであり、非専門家の使用向けに簡易化されてもよい。さらに、評価は、患者データベースにて、又はユーザサイト若しくは任意数の患者データベースからデータを収集することが可能な中央データベースにて行われてもよい。
【0136】
[00150]データベース評価の一例は、患者の嚥下プロファイルから計測された特定のパラメータが正常範囲内に含まれるか否か、又は正常範囲よりも高いか低いかの判定、及びこれらの範囲が嚥下機能障害又は嚥下障害の示度となり得るか否かの判定である。この第1の評価により、例えば高い若しくは低い読取値、又は嚥下機能障害若しくは嚥下障害の正の示度若しくは負の示度などに相当する、第1の評価出力が得られる。第1の評価出力は、患者により容易に理解される複数の形態であってもよく、評価結果の印刷物、明滅若しくはカラーコード発光ダイオード(「LED」)、可聴出力、又は第1の評価結果に相当し得る任意の他の電子信号を含むが、それらに限定されない。
【0137】
[00151]例えば、一実施形態においては、第1の評価結果は、いくつかの嚥下パラメータについての正常な定量計測値又は定性計測値の範囲と共に、同一の嚥下パラメータについての患者の固有の計測値を示す印刷物であってもよい。これに関連して、患者及び/又は保健医療提供者は、このパラメータについての正常範囲を、及び患者がこれらの範囲内に含まれるか否か、又はこれらの範囲よりも高いか低いかを、容易に判定することが可能となる。
【0138】
[00152]第1の評価結果が確立された後に、処理デバイス及び/又は第2の処理デバイスは、第1の評価結果をさらに評価してもよい。さらなる評価が第2の処理デバイスにおいて行われる一実施形態においては、第2の処理デバイスは、患者データベース又は中央データベースとさらに協働する。第1の結果がさらに評価された後に、処理デバイスは、さらなる(又は第2の)評価の産物である第2の結果(複数可)を出力する。出力される第2の結果の形式は、出力される第1の結果の形式と同一であっても又は異なってもよい。
【0139】
[00153]一実施形態においては、第1の評価結果は、さらなる評価(例えば第2の評価)のために異なるプロセッサに送信され得る電子信号であってもよい。第2の評価の後に、別の出力(例えば第2の評価結果)が、患者に出力されてもよい。例えば、第1の処理デバイスにおける第1の評価は、特定の値の嚥下圧力に基づき嚥下障害の存在を示唆する電子信号である第1の評価結果をもたらしてもよい。第1のプロセッサは、第2の評価のために第2のプロセッサにこの値を転送してもよい。第2の評価において、データベースは、いくつかのタイプの(例えば力学的、生体力学的、神経学的等々)嚥下機能障害に相当する既知の圧力範囲に対して、特定の圧力値に相当する電子信号を比較し、患者が患っている特定のタイプの機能障害を出力する。次いで、この特定のタイプの機能障害が、第2の結果及び第2の評価の産物となる。
【0140】
[00154]さらに別の実施形態においては、さらなる評価が、第1の評価結果及び/又は第2の評価結果、並びに特定の嚥下機能障害に対する治療法推奨に関する情報を含むさらに別のデータベースを使用して実施され得る。データベースは、任意の既知の嚥下疾患及び嚥下機能障害を含み、これらの疾患及び機能障害を、それらの疾患/機能障害を治療する及び/又はそれらの疾患/機能障害に関連する症状を緩和するために利用し得る治療法に関連付けてもよい。例えば、第1の結果が嚥下障害を示唆するものであり、第2の結果が特定のタイプの機能障害となる、先述の実施形態において、第3の評価が、第1の2つの処理ユニットのいずれか、又は第3の処理ユニットかのいずれかにおいて行われてもよく、機能障害のタイプの電子信号は、評価され、最適な治療方式を決定するために治療法データベースと比較される。治療法又は複数の治療法が決定すると、治療法推奨に関する第3の出力が、患者及び/又は保健医療提供者により容易に理解される形式で出力されてもよい。
【0141】
[00155]治療法推奨が提供される一実施形態においては、治療法推奨は、診断された機能障害/障害に基づき患者に対して調製された製品、ツール、又はサービスの中の少なくとも1つであってもよい。推奨される治療プランは、例えば、理学療法、作業療法、言語療法、栄養調合物、食事の変更、口腔衛生の改善、電気刺激、バイオフィードバック、及び薬理学的治療の中の少なくとも2つを含んでもよい。食事の変更は、高凝集化、高粘度化、三叉神経刺激物、嚥下刺激物、食物の温度変更、食物の食感変更、及び食物の知覚変更の中の少なくとも1つを含んでもよい。口腔衛生の改善は、うがい、歯磨き粉、プロバイオティクス、唾液刺激物、歯ブラシ、デンタルフロス、及び舌のスクレーピングの中の少なくとも1つを含んでもよい。治療法推奨は、本明細書において開示されるものに限定されず、嚥下疾患又は嚥下機能障害を治療するための任意の公知の治療法を含み得ることが、当業者には理解されよう。
【0142】
[00156]本開示のデータベースは更新され得る点が、当業者には理解されよう。更新は、継続ベースで又は所定の時間に(例えば4半期ごと又は年ごとに)行われてもよい。更新は、申し込みにより行われてもよく、インターネット、物理的手段、並びにインターネット及び物理的手段を介してのいずれかにより受領されてもよい。物理的手段は、コンパクトディスク、DVD、フラッシュドライブ、テープ、又はそれらの組合せの中の少なくとも1つであってもよい。データベースが患者の利用サイトに若しくはその付近に位置する患者データベースであるか、又は遠い位置に位置する中央データベースであるかにかかわらず、本明細書において開示される全てのデータベースは、更新が可能である。
【0143】
[00157]上記において簡単に述べたように、処理ユニットが、患者により容易に理解され得る任意の様式で第1の結果及び/又は第2の結果を出力してもよい。例えば、第1の結果、第2の結果、及び第3の結果は、処理ユニット20若しくは第2のデバイス22のディスプレイ上において、又は発光ダイオード(「LED」)の照明を介して等々、視覚的に表示されてもよい。また、第1の結果、第2の結果、及び第3の結果は、例えばスピーカなどの音響手段により、又は例えばブライユ点字などのテクスチャ手段により出力されてもよい。出力は、電子信号、障害/機能障害の診断、障害/機能障害の少なくとも1つの定性的尺度、障害/機能障害の少なくとも1つの定量的尺度、力学的機能障害、生体力学的機能障害、神経学的機能障害、力学的機能障害、生体力学的機能障害、若しくは神経学的機能障害の定性的尺度又は定量的尺度、嚥下障害の定性的尺度又は定量的尺度、嚥下の低下、悪性の嚥下特徴、嚥下の際の悪性の口唇封止の示唆、嚥下機能障害の分類、障害の分類、嚥下障害タイプの分類、嚥下機能障害の分類、障害の分類、若しくは嚥下障害タイプの分類の定性的尺度又は定量的尺度、正常パラメータの範囲内で機能していない解剖学的構造の診断、1つ又は複数の解剖学的構造の1つ又は複数の機能の様々なパラメータの定性的尺度又は定量的尺度、及び障害による後遺症のリスクの中の1つであってもよい。別の実施形態においては、第1の結果、第2の結果、及び第3の結果は、例えば「患者は障害/機能障害を有するか?」などの可視的質問又は可聴的質問の形態であってもよい。
【0144】
[00158]一実施形態においては、第1の結果、第2の結果、及び第3の結果は、障害による後遺症のリスクの示唆である。この後遺症は、誤嚥性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、栄養失調症、サルコペニア、脱水症、起立性低血圧症、機能低下、発作、圧迫潰瘍、尿路感染症、皮膚感染症、特定の栄養の欠乏症状態、窒息、咳、不安、及び抑うつの中の少なくとも1つであってもよい。後遺症がある場合には、この後遺症は、救急医療、入院、診療室への訪問、内科治療、及び投薬の中の少なくとも1つを必要とするものであってもよい。
【0145】
[00159]本開示のセンサ、データベース、及び/又はアルゴリズムの組合せを使用することにより、様々な嚥下機能障害及び嚥下障害の診断が可能となる。また、上述の障害及び機能障害に加えて、本開示は、計測されたパラメータを使用して診断又は分類し得る任意の病理、症候群、又は疾患に関する。また、例えば、障害には、少なくとも1つの関節症、一過性下顎骨機能不全、疝痛、過敏性腸症候群、過敏性腸障害、少なくとも1つの腸障害、及び嚥下障害を発現し得る少なくとも1つの病理、症状、障害、又は疾患が含まれ得る。
【0146】
[00160]また、さらに、本開示のセンサ、データベース、及び/又はアルゴリズムの組合せを提供することにより、様々な嚥下機能障害及び嚥下障害の早期検出が可能となる。早期検出により、早期治療が可能となり、これにより、保健コストの減少、機能障害及び/又は障害のリスクの低下、並びに既存の機能障害及び/又は傷害の症状の抑制の実現が可能となる。健康管理コストは、単に、救急治療室に訪れる患者数の減少、入院の減少、医師の訪問及び/又は内科治療の減少、抑うつの減少、疼痛の減少、不安の減少等々により、並びに、嚥下障害による後遺症(例えばCOPD、誤嚥性肺炎、栄養失調症等々)の減少により、低減され得る。
【0147】
[00161]早期治療により、例えば栄養失調症、脱水症、気道閉塞等々を含む状態のリスクが低下し得る。かかる症状は、さらなる健康上の懸念につながり得るため、かかる症状を抑えることは、重要である。例えば、栄養失調症は、とりわけ、患者の免疫系の抑制、サルコペニア、筋ジストニー、及び嚥下障害の悪化に繋がり得る。脱水症は、とりわけ、食欲減退、疲労又は虚弱、心拍数及び呼吸数の増加、体温の上昇、筋痙攣、及び吐き気などに繋がり得る。
【0148】
[00162]本開示のデバイス10は、最適なコスト−性能間のトレードオフを実現するために混成集積を利用して製造されてもよい。プリンテッドエレクトロニクスは、一般的に低コストであり、より低価格の素子を使用する。プリンテッドエレクトロニクスは、スイッチング時間が長く、集積密度が低く、大面積であり、可撓性基板を有し、製造が単純であり、製造コストが極度に低い。対照的に、従来のエレクトロニクスは、一般的により高コストであり、より高価格の素子を使用する。従来のエレクトロニクスは、スイッチング時間が極度に短く、集積密度が極度に高く、小面積であり、剛性基板を有し、製造が複雑であり、製造コストが高い。しかし、本開示のデバイス10は、最適なコスト−性能間のトレードオフを実現するために、プリンテッドエレクトロニクス及び従来のエレクトロニクスの両方による素子を使用することが可能である。例えば、デバイス10の混成集積が、コスト削減のためにプリンテッドデバイス(センサ、電池、導電ライン等々)を、及び高性能化のためにシリコンデバイス(埋込み式コンピューティング)を使用してもよい。
【0149】
[00163]デバイス10は、
図3において概略的に図示されるように、ロールツーロールプロセスを利用して調製されてもよい。ロールツーロール処理は、可撓性のプラスチックフォイル又は金属フォイルのロール上に電子デバイスを作製するプロセスである。ロールツーロール処理は、新聞印刷に使用されるプロセスに類似するものであり、従来的な半導体製造方法のコストのごく一部の費用で多数のデバイスを作製するための、将来的に非常に有用なものとなる可能性のある依然として開発中の技術である。
【0150】
[00164]本開示の装置及び方法の重要な1つの利点は、このシステムが、医療専門家によりおそらく既に診断済みである潜在的疾患にではなく、潜在的嚥下機能障害(生体力学的欠陥)に対して、センサにより得られた計測値を関連付けるという点である。その結果、潜在的生体力学欠陥が、評価及び治療され得ることとなり、さらに、これにより、患者の嚥下障害及び誤嚥の症状を抑えることが可能となる。これに関連して、この生体力学欠陥の知識により、特定の診断された力学的機能障害に対して関連付けられる特性を有する特定の製品、ツール、及びサービスの利用が推奨されることによって、嚥下障害及び誤嚥のより効率的な治療が可能となる。一実施形態においては、デバイス10は、組み込まれ、使い捨て式であるように製造することが可能であり、便利で、使用が容易であり、結果が即座に得られる。
【0151】
[00165]本開示のデバイス10は、本明細書において説明される方法及び使用に限定されない点が、当業者には理解されよう。その代わりに、デバイス10は、デバイス10の使用が有益である任意の用途において使用され得る。他の用途には、例えば、インテリジェントパッケージング、低コスト無線自動識別(「RFID」)応答機、ローラブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、使い捨て式診断デバイス、プリンテッドバッテリー、ウェアラブルデバイス/スマートテキスタイル、及び様々な他のセンサ用途が含まれる。例えば、本技術は、センサとして機能し、薄膜電池を使用し、通信用にプリンテッドエレクトロニクスを使用する、プラスチックフォイルの形態のスマートRFID感知タグを製造するために使用されてもよい。さらに、本開示のデバイス10は、プラスチックフォイル上のマルチセンサプラットフォームとして使用されてもよく、それらのセンサは、例えば揮発性有機化合物容量センサ、抵抗温度センサ、容量湿度センサ等々として機能する。
【0152】
[0100]本明細書において説明される現時点において好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者には自明であろう点を理解されたい。かかる変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びにその意図される利点を低減させることなく、行い得る。したがって、かかる変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に含まれるように意図される。