【文献】
CERVERA ANTONIO,MECHANISM OF ACTION OF EXENATIDE TO REDUCE POSTPRANDIAL HYPERGLYCEMIA IN TYPE 2 DIABETES,AM J PHYSIOL ENDOCRINOL METAB,2008年 3月10日,V294,P.E846-E852
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2記載の溶液。
前記溶液の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、該共溶媒が、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2記載の溶液。
約0.1mg/mLから約100mg/mLの前記乾燥させたグルカゴン、または約1mg/mLから約30mg/mLの該乾燥させたグルカゴンを含む、請求項1または2記載の溶液。
前記非プロトン性極性溶媒中の約0.1mg/mLから約100mg/mLの前記乾燥したグルカゴン、または該非プロトン性極性溶媒中の約1mg/mLから約30mg/mLの該乾燥したグルカゴンを添加する段階を含む、請求項13記載の方法。
前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項13記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
I. 序論
ペプチドは、脱アミド、酸化、加水分解、ジスルフィド交換、およびラセミ化を含む、いくつかの異なるメカニズムを介して分解しうる。さらに、水は、可塑剤として作用し、タンパク質分子の変性および不可逆的分子凝集を促進する。したがって、ある期間にわたり周囲温度または生理的温度で安定なペプチド製剤を提供するために、非水性または実質的に非水性のペプチド製剤が一般に必要とされている。
【0033】
乾燥粉末にした製剤への水性ペプチド製剤の変形は、薬学的ペプチド製剤の安定性を高めるための1つの方法である。例えば、ペプチド製剤を、噴霧乾燥、凍結乾燥またはフリーズドライ、および乾燥を含む、様々な技術を用いて乾燥させることができる。そのような技術によって得られた乾燥粉末ペプチド製剤は、ある期間にわたり、周囲温度において、または生理的温度においてさえも、安定性の有意な増大を示す。
【0034】
本発明は部分的に、まず不揮発性緩衝液中の1つまたは複数のペプチド(例えば、グルカゴンペプチド)を乾燥ペプチド粉末になるまで凍結乾燥することにより、安定なペプチド製剤(例えば、安定なグルカゴン救急製剤)が容易に調製されうるという驚くべき発見に基づいている。乾燥させたペプチドは、ペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHの規定された「pH記憶」を有する。いったん乾燥させると、得られるペプチド粉末、例えば、フリーズドライしたグルカゴンを非プロトン性極性溶媒に溶解し、それにより、安定な製剤を生成し、該製剤の水分含有量は、5%未満であり、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.15%未満、または0.1%未満である。乾燥させたペプチドは、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合にその規定されたpH記憶を維持し、すなわち、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合のペプチドのpHは、ペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しい。都合のよいことに、いったん調製されると、製剤(例えば、グルカゴン製剤)は、長期間安定であり、再構成の必要なしにすぐに使え、かつ広範囲の温度で機能的である。
【0035】
重要なことには、本発明の製剤技術は、グルカゴンのように水性環境で安定性および溶解性が低いかまたは限られている、多くの他のペプチドを送達するために広範囲にわたって適用可能である。事実、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO、NMP、酢酸エチル、またはそれらの混合物)による高濃度の非水性溶液へのペプチドの製剤化は、治療剤−治療ペプチドの重要なクラスのための貴重な送達プラットフォームである。本明細書に記載の安定な製剤は、ペプチド薬物の均一な送達を有利に促進し、凝集、酸化、および加水分解に関連する分解経路に対するさらなる貯蔵安定性を提供する。
【0036】
特定の好ましい態様において、本明細書に記載の安定な製剤は、ペプチド薬物を長期間、例えば、使用前に治療剤の許容されないレベルの分解を起こすことなく製剤の所望の貯蔵寿命を提供するのに十分な期間、安定な形で保存する。注射可能製剤の所望の性質は、それらが非水性であり、かつ、ペプチドに関して非反応性であることである。そのような態様において、注射可能製剤を注射装置自体に直接保存することも可能である。
【0037】
本発明の安定な注射可能製剤は、1つの治療ペプチドまたは複数の治療ペプチドの必要な送達用量(例えば、薬物療法に必要な用量)を含み、好ましくは少量である。例えば、いくつかの態様において、ペプチド(例えば、グルカン)の治療的用量を含む注射可能製剤は、少なくとも約1.0マイクロリットル(充填器具の機能の下限)、より好ましくは約10ミリリットルから約250マイクロリットルの量を有する。ペプチドの治療的用量の少量での送達は、特定の好ましい態様において、治療ペプチド(例えば、グルカゴン)の用量を、本発明による注射に適した非プロトン性極性溶媒中の安定な形で濃縮することにより達成される。
【0038】
さらに、本発明の安定な製剤は、注射前に希釈の必要がない投与に適している。多くの現在利用可能な治療ペプチドおよびワクチン製品は、貯蔵中の安定性を促進するために固形微粒子の形で生成される。これらの製剤は注射前に滅菌水、リン酸緩衝溶液、または等張食塩水で希釈する。これに対し、本発明の特定の好ましい態様において、治療ペプチドは、注射用の製剤を調製するために薬学的産業によって日常的に用いられる粒子製剤加工技術(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥など)を用いて濃縮する。好ましい態様において、ペプチド薬物の治療的投薬量は、まず残留水分含有量をほとんど有さない乾燥した粉末になるまで不揮発性緩衝液(および任意で安定化賦形剤などの追加の成分)と共にフリーズドライしたペプチドを溶解することによって得られる。いったん調製されると、乾燥したペプチド粉末は、DMSO、NMP、酢酸エチル、またはこれらの溶媒のブレンドなどの非プロトン性極性溶媒中に溶解される。したがって、本発明の目標に従って、少量の本発明の安定な製剤を、ほとんどの再構成製品によって必要とされるとおり、まず注射前に製剤を希釈することなく、動物(例えば、ヒト患者)に注射、注入、またはそれ以外で投与する。したがって、好ましい態様において、少量の本発明の製剤は、最初に希釈または再構成または冷蔵されることなく、投与可能である。
【0039】
II. 定義
本開示の目的のために、以下の用語は以下の意味を有する。
【0040】
「治療剤」なる用語は、ペプチド化合物をその薬学的に許容される塩と一緒に含む。有用な塩は当業者には公知であり、無機酸、有機酸、無機塩基、または有機塩基との塩を含む。本発明において有用な治療剤は、単独または他の薬学的賦形剤もしくは不活性成分との組み合わせのいずれであろうと、ヒトまたは動物への投与後に所望の効果に、有益な効果に、および多くの場合に薬理学的な効果に影響をおよぼすペプチド化合物である。
【0041】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および/または「ペプチド化合物」なる用語は、アミド(CONH)連結によって共に結合した最大約80アミノ酸残基のポリマーを意味する。本明細書に開示する任意のペプチド化合物の類似体、誘導体、アゴニスト、アンタゴニスト、および薬学的に許容される塩がこれらの用語に含まれる。この用語は、D-アミノ酸、D-立体配置もしくはL-立体配置の改変、誘導体化もしくは非天然アミノ酸、および/またはペプトミメチック(peptomimetic)単位をそれらの構造の一部として有する、ペプチドおよび/またはペプチド化合物も含む。
【0042】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、本発明のペプチド化合物を動物またはヒトなどの哺乳動物に送達するための、薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤、または媒体を意味する。現在好ましい態様において、薬学的に許容される担体は非プロトン性極性溶媒である。
【0043】
「非プロトン性極性溶媒」なる用語は、酸性水素を含まず、かつ水素結合供与体として作用しない、極性溶媒を意味する。非プロトン性極性溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、および炭酸プロピレンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。非プロトン性極性溶媒なる用語は、2つまたはそれ以上の非プロトン性極性溶媒の混合物、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、および炭酸プロピレンの2つまたはそれ以上の混合物も含む。
【0044】
「薬学的に許容される」成分、賦形剤または成分なる用語は、妥当な便益/リスク比に見合った、過度の有害副作用(毒性、刺激およびアレルギー反応など)のない、ヒトおよび/または動物による使用に適したものである。
【0045】
「化学的安定性」なる用語は、治療剤に関して、酸化または加水分解などの化学的経路によって生じる許容されるパーセンテージの分解産物が形成されることを意味する。特に、生成物の所期の保存温度(例えば、室温)で1年間の保存;または30℃/60%相対湿度で1年間の生成物の保存;もしくは40℃/75%相対湿度で1ヶ月、好ましくは3ヶ月の生成物の保存の後、分解産物の生成が約20%以下の場合に、製剤は化学的に安定と考える。いくつかの態様において、化学的に安定な製剤は、生成物の所期の保存温度で長期間の保存後に生成した、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の分解産物を有する。
【0046】
「物理的安定性」なる用語は、治療剤に関して、許容されるパーセンテージの凝集物(例えば、二量体、三量体およびそれよりも大きい形)が形成されることを意味する。特に、生成物の所期の保存温度(例えば、室温)で1年間の保存;または30℃/60%相対湿度で1年間の生成物の保存;もしくは40℃/75%相対湿度で1ヶ月、好ましくは3ヶ月の生成物の保存の後、凝集物の生成が約15%以下の場合に、製剤は物理的に安定と考える。いくつかの態様において、物理的に安定な製剤は、生成物の所期の保存温度で長期間の保存後に生成した、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の凝集物を有する。
【0047】
「安定な製剤」なる用語は、室温で2ヶ月の保存後に、少なくとも約65%の化学的および物理的に安定な治療剤が残ることを意味する。特に好ましい製剤は、これらの保存条件下で、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の化学的および物理的に安定な治療剤が残るものである。特に好ましい安定な製剤は、滅菌放射線照射(例えば、ガンマ線、ベータ線、または電子ビーム)後に分解を示さないものである。
【0048】
「本質的に〜からなる」なる語句は、本明細書において、その語句が言及する安定な製剤の本質的性質を実質的に変更する任意の要素を除外するために用いる。
【0049】
「バイオアベイラビリティ」なる用語は、本発明の目的のために、ペプチド化合物などの治療剤が製剤から吸収される程度と定義される。
【0050】
「全身性」なる用語は、ペプチド化合物などの治療剤の対象への送達または投与に関して、治療剤が対象の血漿中に生物学的に有意なレベルで検出可能であることを意味する。
【0051】
「制御放出」なる用語は、本発明の目的のために、約1時間またはそれ以上、好ましくは12時間またはそれ以上の期間にわたり、血液(例えば、血漿)濃度が治療的範囲内に維持されるが、毒性濃度未満であるような速度での、治療剤の放出と定義される。
【0052】
「非経口注射」なる用語は、ヒトなどの動物の皮膚または粘膜の1つまたは複数の層の下またはそれを通じた注射による、ペプチド化合物などの治療剤の投与を意味する。標準的な非経口注射は動物、例えば、ヒト患者の皮内、皮下、または筋肉内領域に投与する。いくつかの態様において、本明細書に記載の治療剤の注射のために深い部位を標的とする。
【0053】
「処置する」または「処置」なる用語は、用語が適用される疾患もしくは状態のいずれか、またはそのような疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状の、発症を遅らせる、その進行を遅延もしくは逆転させる、またはそれを軽減もしくは予防することを意味する。
【0054】
「患者」、「対象」、または「個体」なる用語は交換可能に、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはモルモットを意味する。
【0055】
III. 安定なペプチド製剤
1つの局面において、本発明は、非経口注射用の安定な製剤を提供する。都合のよいことに、いったん調製されると、製剤は、長期間安定であり、再構成の必要なしにすぐに使え、かつ、広範囲の温度で機能的である。さらに、本発明の安定な製剤は、水性環境で安定性および溶解性が限られているかまたは低い、任意のペプチドの非経口注射のために有用である。いくつかの態様において、本発明の製剤は、例えば、ペプチドの凝集物の生成を防止または減少することにより、製剤のペプチドの物理的安定性を高める。
【0056】
いくつかの態様において、製剤は、(a)ペプチドが不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ乾燥させた該ペプチドが、該不揮発性緩衝液中の該ペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する、該ペプチドまたはその塩と;(b)非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ該乾燥させたペプチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する。
【0057】
いくつかの態様において、製剤は、(a)第一のペプチドが第一の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、第一の乾燥させたペプチドが、該第一の不揮発性緩衝液中の該第一のペプチドのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を有する、該第一のペプチドまたはその塩と;(b)第二のペプチドが第二の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、第二の乾燥させたペプチドが、該第二の不揮発性緩衝液中の該第二のペプチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を有する、該第二のペプチドまたはその塩と;(c)非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が5%未満であり、該第一の乾燥させたペプチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第一の不揮発性緩衝液中の第一のペプチドのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を維持し、かつ、該第二の乾燥させたペプチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第二の不揮発性緩衝液中の第二のペプチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を維持する。
【0058】
いくつかの態様において、製剤は、(a)ペプチドが不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ乾燥させた該ペプチドが、該不揮発性緩衝液中の該ペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する、該ペプチドまたはその塩と;(b)非プロトン性極性溶媒とから本質的になり、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたペプチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する。
【0059】
A. ペプチド
本発明の安定な製剤は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のペプチドまたはその塩、類似体、および/もしくは混合物を含む。本発明の製剤において用いるのに適したペプチド(ならびにその塩)には、グルカゴン、プラムリンチド、インスリン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、アミリン、ボツリヌス毒素、ヘマタイド、アミロイドペプチド、コレシスチキニン、胃抑制ペプチド、インスリン様成長因子、成長ホルモン放出因子、抗菌因子、グラチラマー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1アゴニスト、エキセナチド、それらの類似体、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、ペプチドは塩酸塩または酢酸塩である。
【0060】
好ましい態様において、ペプチドは、グルカゴンもしくはグルカゴン類似体もしくはペプチド様物質、またはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)である。別の態様において、ペプチドは副甲状腺ホルモンである。さらに別の態様において、ペプチドはロイプロリドである。さらに別の態様において、ペプチドはグラチラマーである。他の態様において、ペプチドはアミリンまたはアミリン様物質(例えば、プラムリンチド)である。さらに他の態様において、ペプチドはインスリンまたはインスリン類似体(例えば、リスプロ)である。いくつかの態様において、インスリンまたはインスリン類似体調製物は低亜鉛または無亜鉛の調製物である。
【0061】
いくつかの態様において、製剤は2つのペプチドを含み、第一のペプチドはアミリンまたはアミリン様物質であり、かつ、第二のペプチドはインスリンまたはインスリン類似体である。いくつかの態様において、第一のペプチドはプラムリンチドであり、かつ、第二のペプチドはインスリンである。いくつかの態様において、第一のペプチドはプラムリンチドであり、かつ、第二のペプチドは低亜鉛インスリン調製物または無亜鉛インスリン調製物である。
【0062】
いくつかの態様において、製剤は2つのペプチドを含み、第一のペプチドはグルカゴンであり、第二のペプチドはグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)またはGLP-1類似体もしくはアゴニスト(例えば、エキセナチド)である。いくつかの態様において、第一のペプチドはグルカゴンであり、かつ、第二のペプチドはGLP-1である。いくつかの態様において、第一のペプチドはグルカゴンであり、かつ、第二のペプチドはエキセナチドである。
【0063】
ペプチドの任意の適切な投薬量を、本発明の製剤を用いて投与することができる。投与する投薬量は、当然のことながら、特定のペプチド、塩、もしくはその組み合わせの薬力学的特徴;対象の年齢、健康、もしくは体重;症状の性質および程度;治療剤および患者の代謝的特徴、併用処置の種類;処置の頻度;または所望の効果などの、公知の因子に応じて変動することになる。一般に、ペプチド(または、安定な製剤が2つまたはそれ以上のペプチドを含む場合は、それぞれのペプチド)は、製剤中に約0.5mg/mLから約100mg/mLの範囲(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mg/mL)の量で存在する。
【0064】
いくつかの態様において、ペプチドは製剤中に約0.5mg/mLから約60mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの態様において、ペプチドは製剤中に約10mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。他の態様において、ペプチドは製剤中に約20mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。さらに他の態様において、ペプチドは約5mg/mLから約15mg/mLの範囲の量で存在する。さらに他の態様において、ペプチドは製剤中に約0.5mg/mLから約2mg/mLの範囲の量で存在する。ここでも、当業者には、ペプチド投薬量は、用いるペプチドおよび治療する疾患、障害、または状態に応じて変動しうることが容易に明らかであると考えられる。
【0065】
好ましい態様において、ペプチドを、不揮発性緩衝液、および任意で安定化賦形剤と混合し、次いで乾燥ペプチド粉末になるまで乾燥させる。安定な製剤が2つまたはそれ以上のペプチドを含む態様において、それぞれのペプチドを別々に不揮発性緩衝液、および任意で安定化賦形剤と混合し、次いで乾燥ペプチド粉末になるまで乾燥させる。ペプチドは、アスパラギン残基との結合での加水分解およびメチオニンの酸化を受けやすく、したがって本発明の製剤における不揮発性緩衝液の使用は化学的安定性に有益な影響をおよぼす。以下にさらに詳細に記載するとおり、pHは、非プロトン性極性溶媒中では関係ないが、非プロトン性極性溶媒中のペプチドの電荷特性は、その安定性に影響をおよぼすと考えられる。非プロトン性極性溶媒中のペプチドの電荷特性が、ペプチドを前もって乾燥させた水溶液のpHの関数となり、すなわち、非プロトン性極性溶媒に溶解または再構成後には「pH記憶」がある。非プロトン性極性溶媒中に溶解したペプチドの所望の電荷特性を得るために、非プロトン性極性溶媒中で最適な安定性、最適な溶解性、および最小の分解をもたらすpHの緩衝水溶液からペプチドを乾燥させる。
【0066】
したがって、本明細書に記載の製剤において有用な不揮発性緩衝液は、最大の安定性、最大の溶解性、および最小の分解というpHを確立するのに役立つもの、ならびに、乾燥させたペプチド粉末から残留水分または水分含有量を除去するのに役立つものである。不揮発性緩衝液には、乾燥/凍結乾燥により水と類似の様式で蒸発しない緩衝液が含まれる。適切な不揮発性緩衝液には、例えば、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液またはクエン酸緩衝液である。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液である。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液およびクエン酸緩衝液の混合物である。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液の混合物である。
【0067】
B. 安定化賦形剤
特定の好ましい態様において、本明細書に記載の製剤は、その中に組み込まれたペプチドの安定性を確保するために、さらに安定化されてもよい。いくつかの態様において、ペプチドの乾燥前に、1つまたは複数の安定化剤または安定化賦形剤を製剤に含めることによって、注射可能製剤の安定性を向上させる。他の態様において、乾燥させたペプチドを安定化剤または安定化賦形剤と共に非プロトン性極性溶媒中で再構成することによって、注射可能製剤の安定性を向上させる。
【0068】
いくつかの態様において、安定化賦形剤は凍結保護物質である。下記の実施例の節に示すとおり、トレハロースなどの凍結保護物質の添加は、本発明のペプチド製剤を凍結融解サイクルに伴う不安定性に対して保護する。さらに、本明細書において、凍結保護物質のトレハロースの添加は、凍結したペプチド製剤の増大した融解も促進することが明らかにされている。この増強された融解の性質は、特に、本発明のペプチド製剤は、凍結されており、かつ、素早く投与される必要がある、救急の医学的状況において、驚くほど有利である。したがって、本発明の別の局面において、安定な製剤は、改善された凍結融解安定性、増大した融解速度、および/または増強された融解特性を有する。
【0069】
いくつかの態様において、安定化賦形剤は、糖質、デンプン、糖アルコール、およびそれらの混合物から選択される。安定化賦形剤のための適切な糖質の例には、トレハロース、グルコース、スクロースなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。安定化賦形剤のための適切なデンプンの例には、ヒドロキシエチルデンプン(HES)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。安定化賦形剤のための適切な糖アルコールの例には、マンニトールおよびソルビトールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、少なくとも1つの安定化賦形剤(例えば、糖質、デンプン、糖アルコール、またはそれらの混合物)は、凍結融解工程中のペプチドの安定性を向上させること、製剤の融解速度を増加させること、または製剤の融解特性を増強させることが可能である。
【0070】
いくつかの態様において、安定化賦形剤は、製剤中に約1%(w/v)から約60%(w/v)、約1%(w/v)から約50%(w/v)、約1%(w/v)から約40%(w/v)、約1%(w/v)から約30%(w/v)、約1%(w/v)から約20%(w/v)、約5%(w/v)から約60%(w/v)、約5%(w/v)から約50%(w/v)、約5%(w/v)から約40%(w/v)、約5%(w/v)から約30%(w/v)、約5%(w/v)から約20%(w/v)、約10%(w/v)から約60%(w/v)、約10%(w/v)から約50%(w/v)、約10%(w/v)から約40%(w/v)、約10%(w/v)から約30%(w/v)、または約10%(w/v)から約20%(w/v)の範囲の量で存在する。いくつかの態様において、安定化賦形剤は、製剤中に約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%(w/v)の量で存在する。
【0071】
2つまたはそれ以上のペプチドを含む製剤において、いくつかの態様において、不揮発性緩衝液および安定化賦形剤を含む混合物中でそれぞれのペプチドを乾燥させる。不揮発性緩衝液および安定化賦形剤の混合物は各ペプチドについて同じであってもよいか、または、各ペプチドを乾燥させるために用いる不揮発性緩衝液、安定化賦形剤、もしくは不揮発性緩衝液および安定化賦形剤の両方は異なっていてもよい。他の態様において、不揮発性緩衝液および安定化賦形剤を含む混合物中でいくつかであるがすべてではないペプチドを乾燥させ、その一方で、不揮発性緩衝液中、安定化賦形剤非存在下で他のペプチドを乾燥させてもよい。
【0072】
いくつかの態様において、製剤は、例えば、抗酸化剤、キレート剤および保存剤を含む、追加の安定化剤をさらに含む。適切な抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、システイン、メチオニン、モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウム、サルファイト、BHT、BHA、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル、N-アセチル-L-システイン(NAC)、およびビタミンEが含まれるが、それらに限定されるわけではない。適切なキレート剤の例には、EDTA、酒石酸およびその塩、グリセリン、ならびにクエン酸およびその塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。適切な保存剤の例には、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0073】
いくつかの態様において、製剤は安定化ポリオールをさらに含む。そのような製剤および材料は、例えば、米国特許第6,290,991号および第6,331,310号に記載されており、そのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
C. 乾燥させたペプチドの再構成
本発明の安定な製剤において、いったんペプチドおよび不揮発性緩衝液(および任意で安定化賦形剤)を粉末になるまで乾燥させると、または製剤が2つまたはそれ以上のペプチドを含む場合、いったんペプチドおよび不揮発性緩衝液のそれぞれ(それぞれ任意で安定化賦形剤も含む)を粉末になるまで乾燥させると、乾燥したペプチド粉末を非プロトン性極性溶媒中に溶解するかまたは該溶媒中で再構成する。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、炭酸プロピレン、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、および炭酸プロピレンのうちの2つまたはそれ以上の混合物である。ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、およびn-メチルピロリドン(NMP)が特に好ましい非プロトン性極性溶媒であり、そのそれぞれは生体適合性溶媒である。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)である。他の態様において、非プロトン性極性溶媒はn-メチルピロリドン(NMP)である。他の態様において、非プロトン性極性溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)およびn-メチルピロリドン(NMP)の混合物である。さらに他の態様において、非プロトン性極性溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)および酢酸エチルの混合物である。いくつかの態様において、「ニート(neat)」である、すなわち共溶媒を含まない、非プロトン性極性溶媒中で、乾燥したペプチド粉末を再構成する。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒を含み、共溶媒として水を含まない溶液中で、乾燥したペプチド粉末を再構成する。
【0075】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、製剤の凍結点を低下させる少なくとも1つの共溶媒をさらに含む。共溶媒は極性プロトン性溶媒である。いくつかの態様において、共溶媒は、エタノール、プロピレングリコール(PG)、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、共溶媒はエタノールまたはプロピレングリコール(PG)である。共溶媒は、製剤中に約10%(w/v)から約50%(w/v)の範囲、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%(w/v)の量で存在する。いくつかの態様において、共溶媒は製剤中に約10%(w/v)から約50%(w/v)、約10%(w/v)から約40%(w/v)、約10%(w/v)から約30%(w/v)、約10%(w/v)から約25%(w/v)、約15%(w/v)から約50%(w/v)、約15%(w/v)から約40%(w/v)、約15%(w/v)から約30%(w/v)、または約15%(w/v)から約25%(w/v)の範囲の量で存在する。いくつかの態様において、少なくとも1つの共溶媒は、共溶媒を含まないがそれ以外は同じ製剤と比べて、製剤の凍結点を少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃またはそれ以上低下させる。いくつかの態様において、少なくとも1つの共溶媒は、製剤の凍結点を約3℃まで、約2℃まで、約1℃まで、または約0℃もしくはそれ以下まで低下させる。
【0076】
D. 水分含有量
本発明の製剤は残留水分をほとんど含まず、したがってそのような製剤中のペプチドは長期間にわたって安定なままである。いくつかの態様において、本発明の安定な製剤は5%未満の水分含有量を有する。いくつかの態様において、水分含有量は、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.25%未満、0.2%未満、0.15%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、または0.01%未満である。いくつかの好ましい態様において、本発明の製剤の水分含有量は、約0.01%から約5%、約0.01%から約4%、約0.01%から約3%、約0.01%から約2%、約0.01%から約1.5%、または約0.01%から約1%である。他の好ましい態様において、本発明の製剤の水分含有量は、約0.1%から約5%、約0.1%から約4%、約0.1%から約3%、約0.1%から約2%、約0.1%から約1.5%、または約0.1%から約1%である。他の好ましい態様において、本発明の製剤の水分含有量は、約0.25%から約5%、約0.25%から約4%、約0.25%から約3%、約0.25%から約2%、または約0.25%から約1.5%である。さらに他の好ましい態様において、製剤の水分含有量は約0.5%から約1%である。
【0077】
E. pH記憶
ペプチドの「pH記憶」は、ペプチドを緩衝水溶液から(例えば、不揮発性緩衝液から)乾燥させた後に得られる電荷特性(プロトン化状態)である。水分量が非常に低いか、またはゼロの非水性溶媒中における、プロトン化状態と、したがってペプチドの溶解性および安定性とは、乾燥前のペプチド溶液の水性pHおよび用いる乾燥条件によって影響を受ける。酸性成分および塩基性成分の両方が不揮発性である緩衝液種中で、ペプチドを乾燥させる場合、乾燥させたペプチドのpH記憶は不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しくなる。例えば、Enzymatic Reactions in Organic Media, Koskinen, A.M.P., and Klibanov, A.M., eds., Springer (1996)参照。さらに、水溶液中でペプチドを乾燥させる緩衝水溶液(例えば、不揮発性緩衝液)のpHを最適化して、その後非プロトン性極性溶媒中で、乾燥させたペプチドを再構成する場合に、最適なペプチド安定性、最大の溶解性、および最小の分解をもたらすペプチドのpH記憶を得ることができる。乾燥させたペプチドが非プロトン性極性溶媒中に再構成される場合、非プロトン性極性溶媒は交換可能なプロトンを持たないため、再構成される製剤は最適なpH記憶の溶解性および安定性の特徴を維持することになる。
【0078】
2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のペプチドを含む安定な製剤のために、各ペプチドが最大の溶解性、最大の安定性、および最小の分解のために最適化されたそれ自体のpHを有するように、各ペプチドを乾燥させる。製剤中に2つまたはそれ以上のペプチドがある態様において、第一のペプチドのpH記憶範囲は第二のペプチドのpH記憶範囲と部分的に重複してもよいか(例えば、第一のペプチドのpH記憶は約4.0から約6.0であってもよく、第二のペプチドのpH記憶は約6.0から約8.0であってもよく)、または第一のペプチドのpH記憶範囲は第二のペプチドのpH記憶範囲と重複していなくてもよい(例えば、第一のペプチドのpH記憶は約4.0から約5.0であってもよく、第二のペプチドのpH記憶は約6.0から約8.0であってもよい)。
【0079】
ペプチドのpH記憶はいくつかの方法で測定することができる。1つの方法において、乾燥させたペプチドを非緩衝水中で再構成し、再構成されたペプチドのpHをpH紙または較正したpH電極などのpH指示物で測定することにより、ペプチドのpH記憶を測定する。または、少なくとも20%の水を非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO)に添加し、pH指示物でpHを測定することにより、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO)中で再構成されているペプチドについて、ペプチドのpH記憶を決定することもできる。例えば、Baughman and Kreevoy, ''Determination of Acidity in 80% Dimethyl Sulfoxide-20% Water,'' Journal of Physical Chemistry, 78(4):421-23 (1974)参照。適切な非プロトン性極性溶媒中のpHの測定は、わずかな補正(すなわち、Baughman and Kreevoy、上記により、0.2 pH単位以下)を必要とすることもある。
【0080】
いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合のペプチドのpH記憶が、緩衝液からペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHの1pH単位以内である場合、乾燥させたペプチドは、緩衝液からペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する(したがって、例えば、緩衝液からペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中でpH 3.0を有するペプチドについて、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合、2.0から4.0のペプチドのpH記憶は1pH単位以内となり、したがって、乾燥させたペプチドのpH記憶は不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しくなる)。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合のペプチドのpH記憶が、ペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHのpH単位の半分以内である場合、乾燥させたペプチドは、緩衝液からペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する(したがって、例えば、緩衝液からペプチドを乾燥させた不揮発性緩衝液中でpH 3.0を有するペプチドについて、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合、2.5から3.5のペプチドのpH記憶はpH単位の半分以内となり、したがって、乾燥させたペプチドのpH記憶は不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しくなる)。
【0081】
いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約1.5から約2.5のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約2.0から約3.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約2.0から約4.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチは約2.5から約4.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約2.5から約3.5のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約3.0から約5.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約3.0から約4.5のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約4.0から約5.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約4.0から約6.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約6.0から約8.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約6.5から約8.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約6.5から約7.5のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約6.5から約9.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約7.0から約9.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約7.5から約9.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約8.0から約10.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、安定な製剤のペプチドは約8.5から約10.0のpH記憶を有する。いくつかの態様において、ペプチドのpH記憶は、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、または約10.0でありうる。
【0082】
F. 例示的な製剤
いくつかの特定の態様において、本発明は、安定なグルカゴン製剤であって、グルカゴンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該グルカゴンが約2.0から約3.0のpH記憶を有する、グルカゴンペプチドまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、約2.0から約3.0のpH記憶を維持する、グルカゴン製剤を提供する。いくつかの態様において、グルカゴンは、製剤中に約0.5mg/mLから約100mg/mL、または約1mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの態様において、製剤の水分含有量は約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.01%未満である。いくつかの態様において、製剤の水分含有量は約0.01%から約3%である。いくつかの態様において、製剤は、糖質(例えば、トレハロース)、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))、およびそれらの混合物から選択される安定化賦形剤をさらに含む。安定化賦形剤は製剤中に約1%(w/v)から約60%(w/v)の範囲の量で存在しうる。いくつかの態様において、製剤は、製剤の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、共溶媒は、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。共溶媒は製剤中に約10%(w/v)から約50%(w/v)の範囲の量で存在しうる。
【0083】
他の特定の態様において、本発明は、安定なグルカゴン製剤であって、グルカゴンペプチドまたはその塩(またはグルカゴン類似体もしくはペプチド様物質)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が3%未満である、グルカゴン製剤を提供する。好ましい態様において、製剤の水分含有量は2%未満、1%未満、0.5%未満および0.25%未満である。他の好ましい態様において、水分含有量は0.25%から約3%、好ましくは約0.25%から約2%、より好ましくは約0.25%から約1.5%、より好ましくは約0.25%から約1%、より好ましくは約0.5%から約1%である。
【0084】
他の特定の態様において、安定なグルカゴン製剤は、不揮発性緩衝液および糖質、デンプン、または糖アルコールである安定化賦形剤をさらに含む。例えば、いくつかの態様において、グルカゴン製剤は、グリシン緩衝液およびマンニトール、またはクエン酸緩衝液およびマンニトール、またはリン酸緩衝液およびマンニトールをさらに含む。いくつかの態様において、グルカゴン製剤は、グリシン緩衝液およびトレハロース、またはクエン酸緩衝液およびトレハロース、またはリン酸緩衝液およびトレハロースをさらに含む。これらの態様において、非プロトン性極性溶媒はDMSO、NMP、酢酸エチル、またはそれらの混合物でありうる。例えば、1つの好ましい態様において、非プロトン性極性溶媒はDMSOであり、かつ、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液である。別の好ましい態様において、非プロトン性極性溶媒はDMSOであり、不揮発性緩衝液はクエン酸緩衝液であり、かつ、安定化賦形剤はマンニトールである。別の好ましい態様において、非プロトン性極性溶媒はDMSOであり、かつ、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液であり、安定化賦形剤はトレハロースである。さらに別の好ましい態様において、非プロトン性極性溶媒はDMSOであり、かつ、不揮発性緩衝液はクエン酸緩衝液である。さらに別の好ましい態様において、非プロトン性極性溶媒はNMPであり、かつ、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液である。
【0085】
他の特定の態様において、本発明は、安定な製剤であって、グルカゴンが不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該グルカゴンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される該不揮発性緩衝液中の該グルカゴンのpHとほぼ等しいpH記憶を有し、該乾燥させたグルカゴンのpH記憶が約2.0から約3.0である、該グルカゴンまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が1%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のグルカゴンのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する、製剤を提供する。いくつかの態様において、グルカゴン製剤は製剤の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、共溶媒はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、グルカゴン製剤は、糖質、デンプン、およびそれらの混合物から選択される安定化賦形剤をさらに含む。いくつかの態様において、グルカゴンは製剤中に約1mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。
【0086】
他の特定の態様において、本発明は、安定なグルカゴン製剤であって、グルカゴンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該グルカゴンが約2.0から約3.0のpH記憶を有する、グルカゴンペプチドまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、非プロトン性極性溶媒とから本質的になり、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、約2.0から約3.0のpH記憶を維持する、グルカゴン製剤を提供する。
【0087】
他の特定の態様において、本発明は、安定なグルカゴン製剤であって、グルカゴンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該グルカゴンが約2.0から約3.0のpH記憶を有する、グルカゴンペプチドまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;非プロトン性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物からなる群より選択され、かつ、共溶媒がエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される、該非プロトン性極性溶媒、および該製剤の凍結点を低下させる共溶媒の混合物とから本質的になり、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、約2.0から約3.0のpH記憶を維持する、グルカゴン製剤を提供する。
【0088】
他の特定の態様において、本発明は、安定なグルカゴン製剤であって、グルカゴンが、不揮発性緩衝液および安定化賦形剤の混合物中において乾燥されており、該不揮発性緩衝液がグリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択され、かつ該安定化賦形剤が糖質(例えば、トレハロース)、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))、およびそれらの混合物から選択され、かつ、乾燥させた該グルカゴンが約2.0から約3.0のpH記憶を有する、グルカゴンペプチドまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、非プロトン性極性溶媒とから本質的になり、該製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、約2.0から約3.0のpH記憶を維持する、グルカゴン製剤を提供する。
【0089】
さらに他の特定の局面において、本発明は、安定な製剤であって、インスリンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される第一の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該インスリンが、該第一の不揮発性緩衝液中の該インスリンのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を有し、該第一のpH記憶が約1.5から約2.5、または約6.0から約8.0である、該インスリンと;プラムリンチドが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される第二の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該プラムリンチドが、該第二の不揮発性緩衝液中の該プラムリンチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を有し、該第二のpH記憶が約3.0から約5.0、または約4.0から約6.0である、該プラムリンチドと;ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が1%未満であり、該乾燥させたインスリンが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第一の不揮発性緩衝液中のインスリンのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を維持し、かつ、該乾燥させたプラムリンチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第二の不揮発性緩衝液中のプラムリンチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を維持する、製剤を提供する。いくつかの態様において、インスリンおよびプラムリンチド製剤は製剤の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、共溶媒はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液中のインスリンおよび第二の不揮発性緩衝液中のプラムリンチドの一方または両方は、糖質、デンプン、およびそれらの混合物から選択される安定化賦形剤をさらに含む。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液および第二の不揮発性緩衝液は同じである。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液および第二の不揮発性緩衝液は異なる。いくつかの態様において、インスリンおよびプラムリンチドのそれぞれは、製剤中に約1mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約1.5から約2.5である。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約6.0から約8.0である。いくつかの態様において、第二のpH記憶は約3.0から約5.0である。いくつかの態様において、第二のpH記憶は約4.0から約6.0である。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約1.5から約2.5であり、第二のpH記憶は約3.0から約5.0である。
【0090】
IV. 安定なペプチド製剤を作製する方法
さらに別の局面において、本発明は、非経口注射用の安定な製剤を作製するための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、乾燥ペプチド粉末になるまでペプチドおよび不揮発性緩衝液を乾燥させる段階と;該乾燥したペプチド粉末を非プロトン性極性溶媒で再構成し、それにより安定な製剤を作製する段階とを含み、該安定な製剤の水分含有量は5%未満である。いくつかの態様において、乾燥したペプチド粉末は、不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有し、かつ、該乾燥したペプチド粉末は、非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する。
【0091】
安定なペプチド製剤を作製するための方法は、水性環境で安定性または溶解性が限られているかまたは低い、任意のペプチドを製剤化するために用いることができる。本発明の製剤において用いるのに適したペプチド(またはその塩)には、グルカゴン、インスリン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、プラムリンチド、副甲状腺ホルモン(PTH)、アミリン、ボツリヌス毒素、コノトキシン、ヘマタイド、アミロイドペプチド、コレシスチキニン、胃抑制ペプチド、インスリン様成長因子、成長ホルモン放出因子、抗菌因子、グラチラマー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1アゴニスト、エキセナチド、およびそれらの類似体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましい態様において、ペプチドはグルカゴンまたはグルカゴン類似体またはペプチド様物質である。別の態様において、ペプチドは副甲状腺ホルモンである。さらに別の態様において、ペプチドはロイプロリドである。さらに別の態様において、ペプチドはグラチラマーである。
【0092】
いくつかの態様において、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のペプチドを安定な製剤に製剤化する。2つまたはそれ以上のペプチドを安定な製剤に製剤化する態様において、それぞれのペプチドを別々に不揮発性緩衝液と共に乾燥ペプチド粉末になるまで乾燥させ、それぞれの乾燥したペプチド粉末は、不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する(すなわち、第一のペプチドは、第一の不揮発性緩衝液中の第一のペプチドのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を有し、かつ、第二のペプチドは、第二の不揮発性緩衝液中の第二のペプチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を有する)。2つまたはそれ以上の乾燥したペプチド粉末は、非プロトン性極性溶媒で再構成され、それにより安定な製剤を作製し、該安定な製剤の水分含有量は5%未満であり、かつ乾燥したペプチド粉末が該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、それぞれの乾燥したペプチド粉末は、不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する(すなわち、第一の乾燥させたペプチドは、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、第一のpH記憶を維持し、かつ、第二の乾燥させたペプチドは、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、第二のpH記憶を維持する)。
【0093】
安定なペプチド製剤を作製するためのプロセスにおいて、適切な不揮発性緩衝液には、例えば、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はグリシン緩衝液またはクエン酸緩衝液である。いくつかの態様において、不揮発性緩衝液はクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液の混合物である。いくつかの態様において、ペプチドを、不揮発性緩衝液および安定化賦形剤(糖質、デンプン、またはそれらの混合物など)の両方と共に混合し、次いで、乾燥したペプチド粉末になるまで乾燥させる。他の態様において、安定化賦形剤(糖質、デンプン、糖アルコール、またはそれらの混合物など)を、非プロトン性極性溶媒中の再構成されたペプチドに添加する。いくつかの態様において、安定化賦形剤は、製剤中に約1%(w/v)から約60%(w/v)の範囲、例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%(w/v)の量で存在する。いくつかの態様において、安定化賦形剤はトレハロースである。いくつかの態様において、安定化賦形剤はHESである。いくつかの態様において、安定化賦形剤はトレハロースおよびHESの混合物である。
【0094】
前述のとおり、ペプチドを不揮発性緩衝液と混合する場合、不揮発性緩衝液は、ペプチドが水性環境で最大の安定性を有する/最小の分解を受けるpHを有するように選択される。いったん乾燥させると、ペプチドは、最大の安定性を有する/最小の分解を受けるpH記憶を有することになり、非プロトン性極性溶媒中で溶解または再構成される場合にそのpH記憶を保持することになる。したがって、1つの態様において、不揮発性緩衝液のpHは、乾燥したペプチド粉末が約2から約3のpH記憶を有するようなpHである。別の態様において、不揮発性緩衝液のpHは、乾燥したペプチド粉末が約4から約6のpH記憶を有するようなpHである。さらに別の態様において、不揮発性緩衝液のpHは、乾燥したペプチド粉末が約4から約5のpH記憶を有するようなpHである。さらに別の態様において、不揮発性緩衝液のpHは、乾燥したペプチド粉末が約6から約8のpH記憶を有するようなpHである。
【0095】
いったんペプチドおよび不揮発性緩衝液(および任意で、乾燥前にペプチドおよび不揮発性緩衝液に添加される、安定化賦形剤などの他の成分)を粉末になるまで乾燥させると、本明細書に記載の非プロトン性極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物)中で、乾燥したペプチド粉末を溶解または再構成する。いくつかの態様において、非プロトン性極性溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)である。他の態様において、非プロトン性極性溶媒はn-メチルピロリドン(NMP)である。
【0096】
いくつかの態様において、乾燥したペプチド粉末を再構成する段階は、非プロトン性極性溶媒と製剤の凍結点を低下させる共溶媒とを含む混合物を用いて、乾燥させたペプチドを希釈または再構成することを含む。いくつかの態様において、共溶媒はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、共溶媒は、製剤中に約10%(w/v)から約50%(w/v)の範囲の、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%(w/v)の量で存在する。
【0097】
本発明の製剤は残留水分をほとんど含まず、したがってそのような製剤中のペプチドは長期間にわたって安定なままである。好ましい態様において、本発明のプロセスによって作製した安定な製剤の水分含有量は、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.25%未満、0.2%未満、0.15%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、または0.01%未満である。
【0098】
前述のプロセスにおいて、ペプチド化合物の不揮発性緩衝液(および任意で安定化賦形剤)との乾燥は、噴霧乾燥技術、フリーズドライ技術、または凍結乾燥技術を用いて実施する。噴霧乾燥技術は当業者には周知である。噴霧乾燥は、1つまたは複数の固体(例えば、治療剤)を含む溶液を、回転盤ノズルまたは他の装置によって噴霧する段階と、続いて液滴から溶媒を蒸発させる段階を含む。得られる粉末の性質は、初期溶質濃度、生じる液滴のサイズ分布、および溶質除去の速度を含む、いくつかの変数の関数である。生じる粒子は、溶媒除去の速度および条件に応じて、結晶および/またはアモルファス固体からなる一次粒子の凝集物を含みうる。
【0099】
タンパク質、オリゴペプチド、高分子量多糖、および核酸などの生体高分子の超微細粉末を調製するための噴霧乾燥プロセスは、例えば、米国特許第6,051,256号に記載されている。フリーズドライ手順は当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,608,764号および米国特許第4,848,094号に記載されている。噴霧-フリーズドライプロセスは、例えば、米国特許第5,208,998号に記載されている。他の噴霧乾燥技術は、例えば、米国特許第6,253,463号;同第6,001,336号;同第5,260,306号;およびPCT国際公開番号WO91/16882およびWO96/09814に記載されている。
【0100】
凍結乾燥技術は当業者には周知である。凍結乾燥は、生成物が凍結状態にある間(減圧下での氷の昇華)に減圧下(緩やかな加熱により乾燥)で行う脱水技術である。これらの条件は生成物を安定化し、酸化および他の分解プロセスを最小化する。フリーズドライの条件は、プロセスを低温で実行することを可能にし、したがって熱に不安定な生成物を保存することができる。フリーズドライの段階は、予備処理、凍結、一次乾燥および二次乾燥を含む。予備処理は、凍結前に生成物を処理する任意の方法を含む。これは、生成物を濃縮すること、製剤の修正(すなわち、安定性を高めるための、および/または加工を改善するための成分の追加)、高蒸気圧溶媒を減少すること、または表面積を増大させることを含みうる。予備処理の方法は、凍結濃縮、液相濃縮、および、特に生成物の外観を保存するためにまたは反応性生成物に凍結保護を提供するために製剤化することを含み、例えば、米国特許第6,199,297号に記載されている。「標準的」凍結乾燥条件は、例えば、米国特許第5,031,336号、および''Freeze Drying of Pharmaceuticals'' (DeLuca, Patrick P., J. Vac. Sci. TechnoL, Vol. 14, No. 1, January/February 1977);ならびに''The Lyophilization of Pharmaceuticals: A Literature Review'' (Williams, N. A., and G. P. Polli, Journal of Parenteral Science and Technology, Vol. 38, No. 2, March/April 1984)に記載されている。
【0101】
特定の好ましい態様において、治療剤製剤のガラス転移温度(Tg)よりも高温で凍結乾燥サイクルを部分的に実施して、残留水分を含む高密度のケークを形成する塊の崩壊を誘導する。他の態様において、粒子の完全な乾燥を達成するために、凍結乾燥サイクルをガラス転移温度よりも低温で行って、崩壊を避ける。
【0102】
V. 治療法
別の局面において、本発明は、疾患、状態、または障害を処置、軽減、または予防するのに有効な量の本明細書に記載の安定な製剤を対象に投与することにより、該疾患または該状態を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の安定な製剤で治療する疾患、状態、または障害は糖尿病状態である。糖尿病状態の例には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、前糖尿病、高血糖、低血糖、および代謝症候群が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、疾患、状態、または障害は低血糖である。いくつかの態様において、疾患、状態、または障害は糖尿病である。
【0103】
いくつかの態様において、本発明の治療法は、低血糖を処置するのに有効な量の本明細書に記載の安定な製剤を、低血糖を有する対象に投与することにより、低血糖を処置する段階を含む。いくつかの態様において、対象は、グルカゴンを含む安定な製剤を投与される。
【0104】
いくつかの態様において、本発明の治療法は、糖尿病を処置するのに有効な量の本明細書に記載の安定な製剤を、糖尿病を有する対象に投与することにより、糖尿病を処置する段階を含む。いくつかの態様において、対象はインスリンを含む安定な製剤を投与される。いくつかの態様において、対象はプラムリンチドを含む安定な製剤を投与される。いくつかの態様において、対象はインスリンおよびプラムリンチドを含む安定な製剤を投与される。いくつかの態様において、対象はエキセナチドを含む安定な製剤を投与される。いくつかの態様において、対象はグルカゴンおよびエキセナチドを含む安定な製剤を投与される。
【0105】
疾患、状態、障害(例えば、糖尿病状態、例えば、低血糖または糖尿病)を処置するために投与する本明細書に記載のペプチド薬物の投与される投薬量は、当業者によって実施される投薬量および治療計画に従う。本発明の方法において用いるすべての薬理学的作用物質の適切な投薬量についての一般的指標は、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Edition, 2006、上記、およびPhysicians' Desk Reference (PDR)、例えば、65th (2011)または66th (2012) Eds., PDR Network, LLCに示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。疾患、状態、または障害を処置するためのペプチド薬物の適切な投薬量は、組成物の製剤、患者の反応、状態の重症度、対象の体重、および処方する医師の判断を含むいくつかの因子に応じて変動することになる。記載の製剤の有効用量は、ペプチド薬物の医学的に有効な量を送達する。投薬量は、個々の患者の必要に応じて、経時的に増加または減少することができる。
【0106】
有効な量または用量の決定は、特に本明細書において提供する詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、これらの用量を送達するための製剤は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のペプチドまたはペプチド類似体(ペプチド類似体が明白に除外されないかぎり、総称して「ペプチド」)を含んでいてもよく、各ペプチドは、製剤中に約0.1mg/mLからペプチドの溶解性限度までの濃度で存在する。この濃度は、好ましくは約1mg/mLから約100mg/mL、例えば、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、または約100mg/mLである。
【0107】
本発明の製剤は、皮下投与用製剤、皮内投与用製剤、または筋肉内投与(例えば、注射または注入による)用製剤でありうる。いくつかの態様において、製剤を皮下投与する。
【0108】
本開示の製剤を、任意の適切な装置を用いる注入または注射により投与する。例えば、シリンジ、ペン型注射装置、自動注入装置、またはポンプ装置に本発明の製剤を入れてもよい。いくつかの態様において、注射装置は多用量注入ポンプ装置または多用量自動注入装置である。ペプチド薬物を送達するために、自動注入などの注射装置の始動後、製剤が針から容易に流出しうるような様式で、製剤は装置中に与えられる。適切なペン型/自動注入装置には、Becton-Dickenson、Swedish Healthcare Limited(SHL Group)、YpsoMed Ag製などのペン型/自動注入装置が含まれるが、それらに限定されるわけではない。適切なポンプ装置には、Tandem Diabetes Care, Inc.、Delsys Pharmaceuticalss製などのポンプ装置が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0109】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、バイアル、カートリッジ、またはあらかじめ充填したシリンジにおいてすぐに投与できるように提供される。
【0110】
別の局面において、本発明は、製剤のペプチドで処置しうる任意の疾患、状態、または障害の処置用の薬剤を製剤化するための、本明細書に記載の安定な製剤の使用を提供する。いくつかの態様において、糖尿病状態、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、前糖尿病、高血糖、低血糖、または代謝症候群の処置用の薬剤を製剤化するために、安定な製剤を用いる。
【0111】
いくつかの態様において、低血糖の処置用の薬剤を製剤化するために、安定な製剤を用いる。いくつかの態様において、安定な製剤はグルカゴンまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)を含む。いくつかの態様において、安定な製剤はグルカゴンおよびエキセナチドを含む。
【0112】
いくつかの態様において、糖尿病の処置用の薬剤を製剤化するために、安定な製剤を用いる。いくつかの態様において、安定な製剤はインスリンを含む。いくつかの態様において、安定な製剤はエキセナチドを含む。いくつかの態様において、安定な製剤はプラムリンチドを含む。いくつかの態様において、安定な製剤はインスリンおよびプラムリンチドを含む。
【0113】
VI. キット
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の疾患、状態または障害を処置するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、ペプチドが不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該ペプチドが、該不揮発性緩衝液中の該ペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を有する、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の該ペプチドまたはその塩と、非プロトン性極性溶媒とを含み、製剤の水分含有量が5%未満であり、かつ、該乾燥させたペプチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のペプチドのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する、安定な製剤;ならびに、該安定な製剤を対象に投与するためのシリンジを含む。
【0114】
いくつかの態様において、キットは、対象の低血糖を処置する際に用いるための、本明細書に記載の安定なグルカゴン製剤を含む。いくつかの態様において、キットは、グルカゴン製剤であって、グルカゴンが不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該グルカゴンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される該不揮発性緩衝液中の該グルカゴンのpHとほぼ等しいpH記憶を有し、該乾燥させたグルカゴンのpH記憶が約2.0から約3.0である、該グルカゴンまたはその塩(例えば、酢酸グルカゴン)と;ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、該製剤の水分含有量が1%未満であり、かつ、該乾燥させたグルカゴンが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該不揮発性緩衝液中のグルカゴンのpHとほぼ等しいpH記憶を維持する、製剤を含む。いくつかの態様において、グルカゴン製剤は製剤の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、共溶媒はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、グルカゴン製剤は、糖質、デンプン、およびそれらの混合物から選択される安定化賦形剤をさらに含む。いくつかの態様において、グルカゴンは製剤中に約1mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。
【0115】
いくつかの態様において、キットは、対象の糖尿病を処置する際に用いるための、本明細書に記載の安定なインスリンとプラムリンチド製剤とを含む。いくつかの態様において、キットは、インスリンが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される第一の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ、乾燥させた該インスリンが、該第一の不揮発性緩衝液中の該インスリンのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を有し、該第一のpH記憶が約1.5から約2.5、または約6.0から約8.0である、該インスリンと;プラムリンチドが、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびそれらの混合物から選択される第二の不揮発性緩衝液中において乾燥されており、かつ乾燥させた該プラムリンチドが、該第二の不揮発性緩衝液中の該プラムリンチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を有し、該第二のpH記憶が約3.0から約5.0、または約4.0から約6.0である、該プラムリンチドと;ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、非プロトン性極性溶媒とを含み、製剤の水分含有量が1%未満であり、該乾燥させたインスリンが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第一の不揮発性緩衝液中のインスリンのpHとほぼ等しい第一のpH記憶を維持し、かつ、該乾燥させたプラムリンチドが、該非プロトン性極性溶媒中で再構成される場合に、該第二の不揮発性緩衝液中のプラムリンチドのpHとほぼ等しい第二のpH記憶を維持する、インスリンおよびプラムリンチド製剤を含む。いくつかの態様において、インスリンおよびプラムリンチド製剤は製剤の凍結点を低下させる共溶媒をさらに含み、該共溶媒はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液中のインスリンおよび第二の不揮発性緩衝液中のプラムリンチドの一方または両方は、糖質、デンプン、およびそれらの混合物から選択される安定化賦形剤をさらに含む。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液および第二の不揮発性緩衝液は同じである。いくつかの態様において、第一の不揮発性緩衝液および第二の不揮発性緩衝液は異なる。いくつかの態様において、インスリンおよびプラムリンチドのそれぞれは、製剤中に約1mg/mLから約50mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約1.5から約2.5である。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約6.0から約8.0である。いくつかの態様において、第二のpH記憶は約3.0から約5.0である。いくつかの態様において、第二のpH記憶は約4.0から約6.0である。いくつかの態様において、第一のpH記憶は約1.5から約2.5であり、かつ、第二のpH記憶は約3.0から約5.0である。
【0116】
いくつかの態様において、キットは、ペン型注射装置、自動注入装置、またはポンプの一部であるシリンジを含む。いくつかの態様において、シリンジは安定な製剤をあらかじめ充填している。いくつかの態様において、キットは説明書をさらに含み、該説明書は、それを必要としている対象(例えば、低血糖または糖尿病を有する対象)を処置するための安定な製剤の投与を指示する。
【実施例】
【0117】
VII. 実施例
本発明を具体的な実施例によってさらに詳細に記載する。以下の実施例は例示のために示され、いかなる様式でも本発明を限定する意図はない。当業者であれば、本質的に同じ結果を生じよう変更または改変しうる様々な非決定的パラメーターを容易に認識すると考えられる。
【0118】
実施例1:フリーズドライにおいて用いるためのグルカゴン溶液の調製
グルカゴンを10mg/mLの濃度で含むように様々な溶液を調製した。または、溶液は、5mMのグリシン、シトレートまたはフォスフェートを含み、一般にはpH3を確立する緩衝液を提供した。溶液は、グルカゴンのw/v量と等しい(1:1)量のまたはグルカゴンの量の200%(2:1)の量の糖質も、単独または組み合わせで含んでいた。糖質は、トレハロース、HES、およびβ-シクロデキストリン(β-CD)であった。いくつかの溶液は、界面活性剤として0.10%w/vのトゥイーン20も含んでいた。様々な製剤を、以下の表1に記載する量において実質的に均質になるまで混合した。
【0119】
(表1)その後の凍結乾燥のためのグルカゴン混合物
【0120】
混合物を調製するために、グルカゴンをそれぞれの緩衝液(リン酸、クエン酸、および/またはグリシン緩衝液、5mM、pH3.0)に10mg/mLで溶解した。次いで、溶液を、対応する緩衝液を用いて所望の濃度の2倍に調製した様々な溶質と、1:1(v/v)比で混合して、最終グルカゴン濃度5mg/mLおよび最終の所望の溶質濃度を得た。次いで、溶液を0.2μm Millipore PES膜を通してろ過し、不溶性材料を除去した。試料調製は4℃の低温室で行った。グルカゴン濃度および純度をRP-およびサイズ排除(SE)-HPLCにより測定した。
【0121】
実施例2:フリーズドライによる乾燥グルカゴン粉末の調製
上記の表1の製剤を3-mL凍結乾燥バイアル(内径13mm)中にピペッティング(0.3mL)した。製剤をFTS Durastop凍結乾燥器(Stoneridge、NY)で凍結乾燥した。試料を2.5℃/分の勾配により-40℃で凍結し、十分に凍結させるため2時間(h)維持した。次いで、試料温度を2℃/分の勾配で-5℃まで上昇させ、アニーリング段階として2時間保持した。次いで、温度を1.5℃/分の勾配で30℃まで低下させ、減圧を60ミリトルで開始した。一次乾燥を24時間に設定した。温度を0.5℃/分の勾配で40℃まで徐々に上昇させ、さらに10時間保持した。乾燥が完了した後、バイアルを減圧下でWest Pharmaceutical companyのXX栓(製品番号 10123524)を用いてふたをした。製剤はどれもフリーズドライ後にケーク崩壊のいかなる証拠も示さなかった。最終の乾燥した生成物の水分含有量は1%w/w未満であった。
【0122】
実施例3:非プロトン性極性溶媒中のグルカゴン製剤の調製
表1の溶液から作製した乾燥粉末の6つを、極性非プロトン性溶媒中の製剤のために選択した。
1. 緩衝液(グリシン)+トレハロース(グルカゴンに対して200%)(製剤番号 3)
2. 緩衝液(グリシン)+HES(グルカゴンに対して200%)(製剤番号 4)
3. 緩衝液(グリシン)+トレハロース(グルカゴンに対して100%)+HES(グルカゴンに対して100%)(製剤番号 5)
4. 緩衝液(グリシン)+トゥイーン-20(0.01%w/v)+トレハロース(グルカゴンに対して200%)(製剤番号 19)
5. 緩衝液(グリシン)+トゥイーン-20(0.01%w/v)+HES(グルカゴンに対して200%)(製剤番号 20)
6. 緩衝液(グリシン)+トゥイーン-20(0.01%w/v)+トレハロース(グルカゴンに対して100%)+HES(グルカゴンに対して100%)(製剤番号 21)
【0123】
実施例4:pH記憶4〜5を有するグルカゴン溶液の調製
グルカゴンを10〜20mg/mLの濃度で含むように溶液を調製した。溶液は、クエン酸緩衝液を含み、pH4〜5を確立した。溶液は50〜100mg/mLの濃度の糖アルコール、マンニトールも含んでいた。製剤は、実質的に均質になるまで混合され、実施例2に記載の乾燥サイクルにより残留水分が0.5%w/w未満になるまでフリーズドライされた。グルカゴン10〜20mg/mLおよびマンニトール50〜100mg/mLの濃度まで、乾燥粉末をDMSOに溶解する。
【0124】
実施例5:低水分および低凍結点を有するPTH(1〜34)溶液の調製
PTH(1〜34)を10〜20mg/mLの濃度で含むように溶液を調製した。溶液は、クエン酸緩衝液を含み、pH4〜5を確立した。溶液は50mg/mLの濃度の糖アルコール、マンニトールも含んでいた。製剤は、実質的に均質になるまで混合され、実施例2に記載の乾燥サイクルにより残留水分が0.5%w/w未満になるまでフリーズドライされた。PTH(1〜34)10〜20mg/mLおよびマンニトール50〜100mg/mLの濃度まで、乾燥粉末をDMSOに溶解する。
【0125】
実施例6:グルカゴン製剤投与後の血中グルカゴンレベルおよび血糖値の両方における増加
NMPまたはDMSOに溶解したグルカゴン-グリシン-トレハロース粉末を基本とする、非プロトン性極性溶媒中の二種の非水性グルカゴン製剤を、ラット薬物動態および薬力学的試験で試験し、水性製剤と比較した。ラットにはすべて10μgグルカゴン/ラットの割合で投与した。非水性グルカゴン溶液を、水性対照溶液と同様、10μLの皮下注射で投与した。試験したすべての製剤は、血中グルカゴン濃度の急速な上昇を示した(
図1参照)。
【0126】
薬物動態(PK)パラメーターを、4つの処置群および水性対照群について解析した。非コンパートメントPK解析を各ラットについて実施した。C
maxおよびT
maxを観察データから算出した。曲線下面積(AUC)推定値を外挿なしで算出した。データを5群ANOVAを用いて解析し、群間のPKパラメーターを比較した。3つの群のC
max、T
max、またはAUCのいずれにおいても有意差は見られなかった。NMPおよびDMSO製剤の水性対照群に対する相対的バイオアベイラビリティはすべて100%に近かった(それぞれ76%および92%)。したがって、これらのラットPK試験の結果に基づき、非水性製剤は水性グルカゴン製剤と本質的に生物学的等価である。
【0127】
薬物動態結果から予想されるとおり、非水性グルカゴン製剤は、水溶液中で再構成されたグルカゴン製剤と同じ用量レベルで本質的に等価の薬力学的プロファイルを示した(
図2参照)。
【0128】
実施例7:水溶液と比較した、非プロトン性極性溶媒中のグルカゴンの向上した溶解性
グルカゴンを以下の緩衝液の1つに溶解することにより1.0mg/mLで調製した。
1. 2mMクエン酸、pH2.0(濃HClで滴定)(「C2.0」)
2. 2mMクエン酸、pH3.0(濃HClで滴定)(「C3.0」)
【0129】
各製剤を滅菌2ccバイアルに1mL充填量で入れた。低い残留水分になるまで試料をフリーズドライし、かつ、DMSO、NMP、またはDMSO/NMP 50/50共溶媒中で様々な公称濃度に再構成した。再構成濃度は1〜30mg/mLの範囲であった。溶解性を清澄度の目視検査、A
630での濁度、およびRP-HPLCで測定した。
【0130】
以下の表2に示すとおり、pH記憶2.0および3.0のクエン酸緩衝液とともに凍結乾燥したグルカゴンは、30mg/mLの濃度まで容易に可溶であった。同じ製剤はH
2O中ではより低い濃度でしか完全に可溶ではなかった。pH記憶3.0では、完全な再構成はH
2O中5mg/mLでのみ達成された。さらに、H
2O中で可溶化したグルカゴンは準安定でしかなく、すなわち、これは数時間しか可溶性を維持せず、次いでpHおよび濃度に依存した速度でゲル化またはフィブリル化し始めたが、非プロトン性極性溶媒中/共溶媒中で可溶化したグルカゴンはいつまでも安定であった。
【0131】
(表2)pH記憶2.0および3.0のグルカゴンの溶解性
【0132】
実施例8:非プロトン性極性溶媒中のグルカゴンの溶解性に対するpHの影響
実施例8および表2に示すデータをpH記憶の視点から見ると、グルカゴンのより高い溶解性が、非プロトン性極性溶媒中、高いpHよりも低いpH(例えば、pH2.0)で達成しうることは明らかである。さらに、表2における回収率は公称濃度が本質的に100%であることを示すにもかかわらず、A
630測定値はニートNMP中およびDMSO/NMP共溶媒中でpH記憶3.0のグルカゴン(C3.0)の30mg/mL溶液の濁度上昇を示したが、pH記憶2.0のC2.0製剤は本質的に濁りがないままであった。
【0133】
別の実施例において2mLのグリシンまたは2mMクエン酸緩衝液のいずれかと共に2mg/mLでH
2Oに溶解し、かつ、所望の値までpH調節した、酢酸グルカゴンについて、非プロトン性極性溶媒中のグルカゴンの溶解性に対するpHの影響を測定した。試料をフリーズドライし、DMSO中、NMP中、またはDMSO/NMP 50/50共溶媒中、様々な公称濃度に再構成した。清澄度の目視検査、A
630での濁度、およびRP-HPLCによって、溶解性を測定した。
【0134】
凍結乾燥からの「pH記憶」はグルカゴン安定性に大きい影響を有することが判明した。グルカゴンは、「G2.5」(pH記憶2.5)凍結乾燥物については、DMSO中、DMSO/NMP中、およびNMP中、30mg/mLの再構成まで可溶であった。「G3.5」(pH記憶3.5)凍結乾燥物では、有意に低い溶解性が観察された。G3.5凍結乾燥物は、10mg/mLの公称再構成濃度でもすべて混濁し、回収率は完全にはいたらなかった。DMSOおよびDMSO/NMP共溶媒は約95%の回収率を示したが、NMPは約60%の回収率を示すにとどまった。
【0135】
実施例9:DMSO中のグルカゴンの安定性に対する緩衝液種の影響
以下の緩衝液の1つに溶解することにより、酢酸グルカゴンを1.0mg/mLで調製した。
1. 2mM L-グリシン、pH3.0(濃HClで滴定)。
2. 2mMクエン酸、pH3.0(濃HClで滴定)。
【0136】
これらの製剤を凍結乾燥し、DMSO中、5mg/mLグルカゴンの公称濃度で再構成した。製剤を5℃、25℃、および40℃の安定性インキュベーターに入れた。グルカゴン純度を逆相HPLC法で測定した。
【0137】
グリシン緩衝液中の製剤の安定性は、様々な温度での1ヶ月間のインキュベーション後に有意により高かった。表3は、40℃でのインキュベーションの様々な時点におけるRP-HPLC純度を示す。
【0138】
(表3)DMSO中のグルカゴンの安定性に対する緩衝液種の影響
【0139】
実施例10:DMSO中のグルカゴンの安定性に対する水分の影響
酢酸グルカゴンを以下の緩衝液の1つに溶解することにより1.0mg/mLで調製した。
1. 2mM L-グリシン、pH3.0(濃HClで滴定)。
2. 2mM L-グリシン、pH3.0(濃HClで滴定)。
【0140】
これらの製剤を凍結乾燥し、DMSO中、5mg/mLグルカゴンの公称濃度で再構成した。第二の製剤に追加の水分を添加した。水分含有量をカールフィッシャー法を用いて測定した。第一の製剤は0.13%(w/w)の水分含有量を有し、一方、第二の製剤は0.54%(w/w)の水分含有量を有していた。製剤を5℃、25℃、および40℃の安定性インキュベーターに入れた。グルカゴン純度を逆相HPLC法で測定した。
【0141】
低水分量の製剤の安定性は、様々な温度での1ヶ月間のインキュベーション後に有意により高かった。表4は、40℃でのインキュベーションの様々な時点におけるRP-HPLC純度を示す。1%未満の水分含有量でも、安定性における有意差を検出することができた。
【0142】
(表4)DMSO中のグルカゴンの安定性に対する残留水分の影響
【0143】
実施例11:DMSO溶液の凍結点の低下
PerkinElmer Instruments PYRIS Diamond Differential Scanning Calorimetry(「DSC」)を用いて、試料を-40℃まで冷却し、スクリーニングのために8℃/分で40℃まで加熱した。
【0144】
DMSO/NMPブレンド
下記を含む様々なDMSOおよびNMPブレンドを試験した。
1. 90%DMSO+10%NMP
2. 80%DMSO+20%NMP
3. 70%DMSO+30%NMP
4. 60%DMSO+40%NMP
5. 50%DMSO+50%NMP
【0145】
DSCスキャンは、溶媒の結晶化の温度が、ニートDMSOの約18℃から50%NMP/50%DMSOブレンドの-5.7℃へと漸進的に低下することを示した。酢酸グルカゴン、グリシン凍結乾燥物のグルカゴン濃度5mg/mLまでの添加は、凍結点のさらなる約1℃の低下を引き起こした。
【0146】
DMSO/酢酸エチルブレンド
下記を含む様々なDMSOおよび酢酸エチルブレンドを試験した。
1. 80%DMSO+20%酢酸エチル(T
c=16℃)
2. 70%DMSO+30%酢酸エチル
3. 60%DMSO+40%酢酸エチル(T
c=6.5℃)
4. 50%DMSO+50%酢酸エチル(T
c=2.9℃)
5. 40%DMSO+60%酢酸エチル(T
c=観察されなかった)
【0147】
DSCスキャンは、溶媒の結晶化の温度がニートDMSOの約18℃から50%NMP/50%DMSOブレンドの2.9℃へと漸進的に低下することを示した。40%DMSO/60%酢酸エチルブレンドは結晶化ピークは観察されなかった。加えて、これらの製剤を冷蔵温度(4℃)で数日間保存し、凍結の証拠について目視観察した。共溶媒中に30%または30%超の酢酸エチルを含むすべての製剤は、液体のままであり、かつ、凍結しなかった。これはDSC試験で観察されたT
cとは幾分異なっている。
【0148】
アルコール共溶媒を含むDMSO溶液
アルコール共溶媒(エタノール、グリセロール、またはプロピレングリコール)を添加した、下記を含む様々なDMSO溶液を試験した。
1. 95%DMSO+5%アルコール
2. 90%DMSO+10%アルコール
3. 80%DMSO+20%アルコール
4. 70%DMSO+30%アルコール
5. 60%DMSO+40%アルコール
6. 50%DMSO+50%アルコール
7. 40%DMSO+60%アルコール
8. 30%DMSO+70%アルコール
9. 20%DMSO+80%アルコール
10. 10%DMSO+90%アルコール
【0149】
これらの製剤を冷蔵温度(4℃)で数日間保存し、凍結の証拠について目視観察した。20%または20%超のアルコール共溶媒を含むすべての製剤は、液体のままであり、かつ、凍結しなかった。DSCスキャンは、20%アルコール共溶媒の凍結点が、エタノール、グリセロール、およびプロピレングリコールについてそれぞれ2.3℃、0.6℃、および3.3℃であることを示した。
【0150】
実施例12:グルカゴンの凍結融解安定性
酢酸グルカゴンを2mM L-グリシン、pH3.0(濃HClで滴定)に溶解することにより1.0mg/mLで調製した。グルカゴン製剤を凍結乾燥し、DMSO中、5mg/mLグルカゴンの公称濃度で再構成した。溶液試料を分割し、トレハロースを1つの溶液に5%の濃度まで添加した。これらの製剤の一定量をバイアルに分注し、5℃の安定性インキュベーターに入れた。5℃で、これらの溶液は凍結することが観察された。グルカゴン溶液を様々な間隔で融解し、濁度を630nmの吸光度を用いて測定した。
【0151】
以下の表5は、5℃でのインキュベーションの様々な時点におけるグルカゴン溶液の濁度を示す。トレハロースを含まない溶液は、インキュベーションの様々な時点で濁度の増加を示した。しかし、トレハロースを含む溶液では濁度の増加は見られなかった。濁度測定は目視観察により確認した。凍結し、トレハロースなしでインキュベートした試料は観察すると混濁またはかすんでいた。
【0152】
(表5)5℃でのインキュベーション後のグルカゴン溶液の濁度
【0153】
驚くことに、DMSO中のペプチド溶液においてトレハロースなどの炭水化物添加物を用いると、凍結融解工程中のペプチドの安定性が向上する。
【0154】
実施例13:トレハロースによる融解速度の増加
実施例13について前述したとおり、酢酸グルカゴンを2mM L-グリシン、pH3.0(濃HClで滴定)に溶解することにより1.0mg/mLで調製した。5℃での保存から取り出した後、トレハロースを含むグルカゴン溶液の試料は、トレハロースを含まない溶液よりもはるかに短時間で完全に融解されることが観察された。トレハロース含有試料は30秒未満で完全に融解されることが観察され、これに対してトレハロースを含まないグルカゴン溶液は、典型的には、数分間かけて完全に融解されることが観察された。ペプチド製剤を速やかに融解する能力は、溶液を凍結し、迅速に注射しなければならない場合、救急医学の状況において特に好都合でありうる。
【0155】
実施例14:インスリン溶解性に対するpHの影響
インスリンをH
2Oに10mg/mLで、pH2またはpH7いずれかの10mMリン酸/クエン酸-1mM EDTA緩衝液と共に溶解した。これらの溶液を、保存的サイクルを用いて凍結乾燥(残留水分1%超)し、DMSO中、様々な公称濃度に再構成した。溶解性を清澄度の目視検査およびA
630での濁度により測定した。
【0156】
pH2では、インスリンは少なくとも100mg/mLの濃度まで可溶性であることが観察された。しかし、pH記憶7では、試験した最低濃度の10mg/mLでさえ、光散乱(A
630)の増加を伴う混濁溶液またはかすんだ溶液として、インスリンの難溶性が観察された。ある低濃度、例えば、10mg/mLで、pH記憶7のインスリン溶液は、約24時間かけてゆっくり溶解し、透明な溶液となることが観察された。
【0157】
実施例15:プラムリンチド溶解性に対するpHの影響
酢酸プラムリンチドをH
2Oに2mg/mLで、10mMクエン酸緩衝液、pH4または10mMリン酸緩衝液、pH7のいずれかと共に溶解した。これらの溶液を、保存的サイクルを用いて凍結乾燥(残留水分1%超)し、DMSO中、様々な公称濃度に再構成した。溶解性を清澄度の目視検査およびA
630での濁度により測定した。
【0158】
どの濃度においてもpH記憶7のプラムリンチドはDMSOに溶解性ではなかった。しかし、pH記憶4のプラムリンチドの低濃度はDMSOに溶解性であった。
【0159】
実施例16:非プロトン性極性溶媒中のペプチド共製剤
非プロトン性極性溶媒中で再構成した後に最適な溶解性/安定性を提供する共製剤の調製物を、個々の化合物の製剤を水溶液から別々に乾燥させることによって調製する。溶液pHはペプチド溶解性に影響をおよぼす性質であり、乾燥させたペプチドは、非プロトン性極性溶媒中で再構成されると、不揮発性緩衝液を用いる場合に水性製剤から乾燥させた水性製剤の「pH記憶」を保持することになる。非プロトン性極性溶媒は交換可能なプロトンを持たないため、個々のペプチドは最適なpH記憶の溶解性および安定性の特徴を維持することになる。
【0160】
現行のプラムリンチドおよびインスリン製剤は、それらの緩衝系中で相容れず、混合製剤の適合性を困難にしている。ほとんどのインスリンおよびインスリン類似体は、5〜6の範囲の等電点を有し、したがって7付近のpHまたはより低い2付近のpHで製剤化される。プラムリンチドは10.5より大きい等電点を有し、最も安定な4付近のpHで製剤化される。異なるpHでのプラムリンチド製剤とインスリン製剤との相互作用および異なる緩衝能力はしばしば、可溶性インスリン成分の沈澱または結晶インスリン成分の可溶化を引き起こす。プラムリンチドを用いたならびに短期作用性および長期作用性インスリン製剤を用いたインビトロ試験から、様々な量のインスリンを固定量のプラムリンチドと混合した場合にインスリン溶解性の相当な変動が見られた。
【0161】
したがって、本発明は、急速作用インスリン種およびアミリン類似体の両方が、安定であり、かつ、単一の注射用製剤または製剤から同時投与されうる、製剤を提供する。この製剤は、食後の血糖値上昇に対する自然な生理的反応を先行技術よりも厳密忠実に模倣する。
【0162】
共製剤化されうるペプチドの例には、(1)インスリン-アミリン(pH記憶約2.0または約7.0のインスリン、およびpH記憶約4.0のアミリンまたはアミリン類似体(例えば、プラムリンチド));ならびに(2)グルカゴン-GLP-1(pH記憶約3.0またはそれ以下のグルカゴン、およびpH記憶約4.0〜5.0のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)またはそれらの類似体(例えば、エキセナチド))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0163】
インスリンおよびプラムリンチドの共製剤を以下のとおりに調製した。100mg/mLインスリン、pH記憶2のインスリン製剤を、実施例14において前述したとおりに作製した。1mg/mLプラムリンチド、pH記憶4のプラムリンチド製剤を、実施例15において前述したとおりに作製した。5μlのインスリン製剤を95mlのプラムリンチド溶液と混合した。得られた溶液は透明であることが観察され、したがって、それぞれpH記憶2および4を有するインスリンおよびプラムリンチドの可溶性共製剤が作製された。
【0164】
前述の記載は例示を意図するものであり、限定的ではないことが理解されるべきである。前述の記載を読めば、当業者には多くの態様が明らかになると考えられる。したがって、本発明の範囲は前述の記載に関して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲、ならびにそのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲に関して決定されるべきである。特許出願、特許およびPCT公報を含むすべての論文および参照文献の開示は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。